(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/18 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B60N2/18
(21)【出願番号】P 2023045801
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2020195134の分割
【原出願日】2015-04-28
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】立川 陽一
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第6586770(JP,B2)
【文献】特開2013-129280(JP,A)
【文献】特開2009-202844(JP,A)
【文献】特開2009-120077(JP,A)
【文献】特開2009-195597(JP,A)
【文献】特表2011-525163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部の骨格となるクッションフレームを備え、
該クッションフレームは、シート幅方向の左右側方に配置され、シート前後方向に延びているサイドフレームと、左右の該サイドフレームの間に架け渡され、プレート状からなるパンフレームと、を有し、
前記サイドフレームと前記パンフレームとの連結部分の間には、前記パンフレームを支持するための支持ブラケットが介在し、
前記サイドフレームのうち、前記連結部分において前記パンフレームを支持するための支持面には、前記支持ブラケットを収納するための収納凹部が所定位置に形成され、
前記収納凹部は、前記サイドフレームの上面に形成される第1収納凹部と、該第1収納凹部に隣接して設けられ、前記サイドフレームの側面に形成される第2収納凹部と、を有し、
前記サイドフレームのうち、シート前後方向において前記第1収納凹部が形成された部分とは異なる部分には、貫通穴が形成されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記支持ブラケットは、前記サイドフレームに対して回転可能に取り付けられ、上下方向に回転移動することで前記パンフレームを昇降させるためのチルトブラケットであることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第1収納凹部は、前記サイドフレームの前記支持面となる上面に形成され、
前記パンフレームのシート幅方向における端部分が、上下方向において前記支持面と、前記第1収納凹部に収納された前記支持ブラケットの上面とに当接可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記第1収納凹部は、シート前後方向において所定の間隔を空けて複数形成され、前記支持面と交互に並ぶように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記支持ブラケットは、前記サイドフレームの上面に載置される上壁部と、該上壁部のシート幅方向における端部分から下方に向かって屈曲し、前記サイドフレームの側面と対向しながら延びている側壁部と、を有し、
該側壁部の後方部分が、前記サイドフレームの側面に回転軸を介して取り付けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記第1収納凹部は、前記支持ブラケットの前記上壁部を収納し、
前記第2収納凹部は、前記支持ブラケットの前記側壁部を収納し、
前記支持ブラケットが前記収納凹部に収納されたときに、前記支持ブラケットの上面と、前記サイドフレームの上面とが面一になることを特徴とする請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記側壁部のうち、前記回転軸を介して前記サイドフレームに取り付けられた部分は、シート前後方向において前記サイドフレームのうち、前記収納凹部が形成された部分と異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記側壁部は、シート幅方向において前記サイドフレームの外側面と対向しながら延びていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記貫通穴は、前記サイドフレームの前記第2収納凹部から前記サイドフレームのフレーム本体に沿って下方に延びていることを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項10】
前記パンフレームのうち、前記連結部分の所定位置には、上下方向に貫通した開口孔が形成され、
該開口孔が形成された部分は、シート前後方向において前記サイドフレームの前記支持面のうち、前記収納凹部が形成された部分と異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項
9に記載の車両用シート。
【請求項11】
前記クッションフレームと、クッション材と、表皮材とを有するシートクッションと、
背もたれ部の骨格となるバックフレームと、クッション材と、表皮材とを有するシートバックと、
前記シートクッションに対して前記シートバックを回転可能に連結するリクライニング装置と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに係り、特に、着座部の骨格となるクッションフレームの一部の高さ位置を調整することが可能なチルト装置を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クッションフレームの前方部分を構成するプレート状のパンフレームの高さ位置を調整可能なチルト装置を備えた車両用シートが知られている。
そして、チルト装置の組み付け剛性を確保するための技術や、チルト装置によるパンフレームの高さ位置の調整を円滑に行うための技術が種々提案されているところである(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のチルト装置付き車両用シートでは、クッションフレームが、左右側方に配置されるロアフレームと、左右のロアフレームの前方部分に架け渡されるクッションパンフレームと、を備えており、ロアフレームに対して回転可能に取り付けられ、上下方向に回転することでクッションパンフレームを昇降させることが可能なチルトブラケットをさらに備えている。
そして、当該チルトブラケットの曲げ剛性を向上すべく、チルトブラケットの形状を工夫したものとなっている。
【0004】
特許文献2に記載のチルト装置付き車両用シートでも同様の構成を備えており、チルトブラケットの回転中心軸の位置を決定するにあたり、着座者の着座位置を配慮している。
そうすることで、チルト装置によるパンフレームの高さ調整を円滑に行おうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-129280号公報
【文献】特開2009-195597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2のようなチルト装置付き車両用シートにおいて、例えば、チルト装置を持たない車両用シートとのフレーム共用化を果たすことができれば、コスト削減や組み付け作業の効率化につながる。
また、フレーム共用化を目指すにあたり、チルト装置の有無に関わらず着座者の座面位置を統一することができれば、シート全体の部品共用化を達成することができ、着座者の着座感も良好なものとなる。
そこで、車両用シートの仕様や種類によらず、シートフレームの共用化を果たすことが可能な車両用シート、特にチルト装置付きの車両用シートが望まれていた。
【0007】
また、特許文献1、2のようなチルト装置付き車両用シートにおいて、チルト装置の組み付け剛性を一層向上させると共に、チルト装置の組み付け位置を工夫することでコンパクトな配置を実現したものが求められていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、車両用シートの仕様や種類によらず、シートフレームの共用化を果たすことが可能な車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、シートフレームの共用化を目指すにあたり、チルト装置の有無に関わらず着座者の座面位置を統一することが可能な車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、チルト装置の組み付け剛性を向上させ、チルト装置のコンパクトな配置を実現した車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、着座部の骨格となるクッションフレームを備え、該クッションフレームは、シート幅方向の左右側方に配置され、シート前後方向に延びているサイドフレームと、左右の該サイドフレームの間に架け渡され、プレート状からなるパンフレームと、を有し、前記サイドフレームと前記パンフレームとの連結部分の間には、前記パンフレームを支持するための支持ブラケットが介在し、前記サイドフレームのうち、前記連結部分において前記パンフレームを支持するための支持面には、前記支持ブラケットを収納するための収納凹部が所定位置に形成され、前記収納凹部は、前記サイドフレームの上面に形成される第1収納凹部と、該第1収納凹部に隣接して設けられ、前記サイドフレームの側面に形成される第2収納凹部と、を有し、前記サイドフレームのうち、シート前後方向において前記第1収納凹部が形成された部分とは異なる部分には、貫通穴が形成されること、により解決される。
上記のように、サイドフレームのうち、パンフレームを支持するための支持面には、支持ブラケットを収納するための収納凹部が所定位置に形成されているため、車両用シートの仕様や種類に応じて支持ブラケットを取り外すことがあった場合にも、シートフレーム全体の組み付け位置を変更することなく、フレーム共用化を果たすことができる。
また、支持ブラケットの有無に関わらず着座者の座面位置を統一することができる。
さらに、サイドフレームの連結部分のうち、所定位置に凹部形状を形成することで、サイドフレームの剛性向上が期待できる。
また上記構成により、支持ブラケットを第1、第2収納凹部に収納することで、支持ブラケットを上下方向及びシート幅方向においてコンパクトに配置することができる。
また上記のように貫通穴の形成位置を工夫することで、サイドフレームのうち、収納凹部周辺の剛性低下を抑制できる。
【0010】
このとき、前記支持ブラケットは、前記サイドフレームに対して回転可能に取り付けられ、上下方向に回転移動することで前記パンフレームを昇降させるためのチルトブラケットであると良い。
上記構成により、チルトブラケット(チルト装置)の有無に関わらず、着座者の座面位置を統一することが可能な車両用シートを実現できる。
また、チルトブラケットを収納凹部に収納することで、チルトブラケット(チルト装置)のコンパクトな配置を実現できる。
【0011】
このとき、前記第1収納凹部は、前記サイドフレームの前記支持面となる上面に形成され、前記パンフレームのシート幅方向における端部分が、上下方向において前記支持面と、前記第1収納凹部に収納された前記支持ブラケットの上面とに当接可能な位置に配置されていると良い。
上記構成により、パンフレームが、上下方向においてサイドフレームと支持ブラケットとの両方によって支持されるため、パンフレームの組み付け剛性が向上する。
【0012】
このとき、前記第1収納凹部は、シート前後方向において所定の間隔を空けて複数形成され、前記支持面と交互に並ぶように配置されていると良い。
上記構成により、車両用シートの仕様に応じて支持ブラケットを取り外した場合にも、パンフレームがサイドフレームによってバランス良く支持される。
また、収納凹部が間隔を空けて複数形成されているため、支持ブラケットが各収納凹部に収納されて組み付けられることで、支持ブラケットの組み付け剛性を高められる。
【0013】
このとき、前記支持ブラケットは、前記サイドフレームの上面に載置される上壁部と、該上壁部のシート幅方向における端部分から下方に向かって屈曲し、前記サイドフレームの側面と対向しながら延びている側壁部と、を有し、該側壁部の後方部分が、前記サイドフレームの側面に回転軸を介して取り付けられていると良い。
上記構成により、支持ブラケットがサイドフレームに沿わせた形状を有しているため、支持ブラケットのサイドフレームに対する組み付け剛性を高められる。
【0014】
このとき、前記第1収納凹部は、前記支持ブラケットの前記上壁部を収納し、前記第2収納凹部は、前記支持ブラケットの前記側壁部を収納し、前記支持ブラケットが前記収納凹部に収納されたときに、前記支持ブラケットの上面と、前記サイドフレームの上面とが面一になると良い。
【0015】
このとき、前記側壁部のうち、前記回転軸を介して前記サイドフレームに取り付けられた部分は、シート前後方向において前記サイドフレームのうち、前記収納凹部が形成された部分と異なる位置に配置されていると良い。
上記構成により、サイドフレームの側面において支持ブラケットが取り付けられる部分の面積を確保し易くなるため、支持ブラケットの組み付け剛性を高められる。
【0016】
このとき、前記側壁部は、シート幅方向において前記サイドフレームの外側面と対向しながら延びていると良い。
上記構成により、パンフレームに着座荷重が掛かったときに、支持ブラケット及びサイドフレームがパンフレームを安定して支持できる。
【0018】
このとき、前記貫通穴は、前記サイドフレームの前記第2収納凹部から前記サイドフレームのフレーム本体に沿って下方に延びていると良い。
【0019】
このとき、前記パンフレームのうち、前記連結部分の所定位置には、上下方向に貫通した開口孔が形成され、該開口孔が形成された部分は、シート前後方向において前記サイドフレームの前記支持面のうち、前記収納凹部が形成された部分と異なる位置に配置されていると良い。
上記構成により、例えば仕様に応じて支持ブラケット(チルトブラケット)を不要とした場合には、パンフレームの開口孔を利用してパンフレームとサイドフレームとを接着剤や溶接で容易に接合できる。
また上記構成により、例えばチルトブラケットが取り付けられる仕様であっても、チルトブラケットがパンフレームを安定して昇降させることができる。
また、前記クッションフレームと、前記クッション材と、前記表皮材とを有するシートクッションと、背もたれ部の骨格となるバックフレームと、クッション材と、表皮材とを有するシートバックと、前記シートクッションに対して前記シートバックを回転可能に連結するリクライニング装置と、を備えていると良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両用シートの仕様や種類に応じて支持ブラケットを取り外すことがあった場合にも、シートフレーム全体の組み付け位置を変更することなく、フレーム共用化を果たせる。また、支持ブラケットの有無に関わらず着座者の座面位置を統一できる。また、サイドフレームの剛性向上が期待できる。
また本発明によれば、チルトブラケット(チルト装置)の有無に関わらず、着座者の座面位置を統一できる。また、チルト装置のコンパクトな配置を実現できる。
また本発明によれば、パンフレームの組み付け剛性が向上する。
また本発明によれば、車両用シートの仕様に応じて支持ブラケットを取り外した場合にも、パンフレームがサイドフレームによってバランス良く支持される。また、支持ブラケットの組み付け剛性を高められる。
また本発明によれば、支持ブラケットを上下方向及びシート幅方向においてコンパクトに配置できる。
また本発明によれば、支持ブラケットの組み付け剛性を高められる。
また本発明によれば、支持ブラケット及びサイドフレームがパンフレームを安定して支持できる。
また本発明によれば、チルト装置をコンパクトに配置できる。
また本発明によれば、サイドフレームの収納凹部周辺の剛性低下を抑制できる。
また本発明によれば、仕様に応じてチルトブラケットを不要とした場合には、パンフレームの開口孔を利用してパンフレームとサイドフレームを接着剤等で容易に接合できる。また、チルトブラケット有りの仕様であっても、チルトブラケットがパンフレームを安定して昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【
図2】車両用シートの骨格となるシートフレームの斜視図である。
【
図3】シートフレームの斜視図であって、パンフレームがサイドフレームに対して上方に移動した上昇位置を示す図である。
【
図4】
図2の要部拡大図あって、パンフレームとサイドフレームの連結部分を示す斜視図である。
【
図5】パンフレームとサイドフレームの連結部分を示す分解斜視図である。
【
図6】
図3のVI-VI断面図であって、チルト装置の詳細を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートについて、
図1~
図6を参照しながら説明する。
本実施形態は、クッションフレームの一部の高さ位置を調整可能なチルト装置を備えた車両用シートであって、シート幅方向の左右側方に配置されるサイドフレームと、左右のサイドフレームの間に架け渡されるパンフレームと、サイドフレームとパンフレームの連結部分の間に介在し、パンフレームを支持するチルトブラケットと、を備えており、サイドフレームの連結部分のうち、パンフレームを支持するための支持面には、チルトブラケットを収納するための収納凹部が形成されていることを特徴とする車両用シートの発明に関するものである。
なお、車両用シートのシートバックに対して乗員が着座する側がシート前方側となる。
【0025】
本実施形態の車両用シートSは、
図1に示すように、シートクッション1と、シートバック2とを備えるシート本体と、
図2に示すように、シートクッション1に対してシートバック2を回転可能に連結するリクライニング装置3と、シート本体を昇降可能に連結するハイトリンク装置4と、
図3に示すように、シートクッション1の前方部分の高さ位置を調整可能なチルト装置30と、から主に構成されている。
【0026】
シートクッション1は、
図1に示すように、乗員を下方から支持する着座部であって、骨格となる
図2に示すクッションフレーム10にクッション材1aを載置して表皮材1bで被覆されて構成されている。
シートバック2は、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となるバックフレームにクッションパッド2aを載置して表皮材2bで被覆されて構成されている。
【0027】
クッションフレーム10は、
図2に示すように、略矩形状の枠状体からなり、左右側方に配置されるサイドフレーム11と、左右のサイドフレーム11の前方部分の間に架け渡されるパンフレーム12と、左右のサイドフレーム11の後方部分を連結するパイプ状の後方フレーム13と、パンフレーム12と後方フレーム13とに架け渡され、蛇状に延びている複数の弾性バネ14と、から主に構成されている。
【0028】
サイドフレーム11は、縦断面略I字形状の板金部材からなり、シート前後方向に延出しており、その前方部分にはパンフレーム12が取り付けられている。
パンフレーム12は、着座者の大腿部を支持するフレームであって、略矩形状のプレート体からなり、シート幅方向における左右端部分12aが、サイドフレーム11の上面に載置されて取り付けられている。
サイドフレーム11とパンフレーム12の連結部分の間には、
図3、
図4に示すように、パンフレーム12を支持するためのチルトブラケット20が取り付けられている。
また、左右のサイドフレーム11のシート幅方向の間には、
図3に示すように、パンフレーム12の高さ位置を調整可能なチルト装置30が設けられている。
【0029】
サイドフレーム11は、
図4、
図5に示すように、フレーム本体110と、フレーム本体110の上端部分からシート幅方向の内側に屈曲して突出する上端フランジ111と、フレーム本体110の下端部分からシート幅方向の内側に屈曲して突出する下端フランジ112と、から主に構成されている。
サイドフレーム11のうち、パンフレーム12との連結部分には、
図5に示すように、チルトブラケット20を収納するための収納凹部113が形成されている。
収納凹部113は、サイドフレーム11のうち、パンフレーム12の支持面となる上端フランジ111上に形成され、チルトブラケット20の一部を収納するための第1収納凹部113aと、フレーム本体110の側面に形成され、チルトブラケット20の一部を収納するための第2収納凹部113bと、を備えている。
第1収納凹部113aは、シート前後方向に所定の間隔を空けて複数形成され、上端フランジ111の凸部分と交互に並ぶように配置されている。また、第1収納凹部113aと第2収納凹部113bとは、互いに隣接して配置されている。
【0030】
チルトブラケット20は、
図4、
図5に示すように、略L字形状のプレート体であって、サイドフレーム11の側面に回転可能に取り付けられ、上下方向に回転移動することでパンフレーム12を昇降させるための支持ブラケットである。
チルトブラケット20は、
図5に示すように、サイドフレーム11のうち、上端フランジ111上面に載置される上壁部21と、上壁部21の外側端部から下方に向かって屈曲し、本体フレーム1110の外側面と対向しながら延びている側壁部22とを備えている。
【0031】
上壁部21は、略矩形状のプレート部分であって、シート前後方向に所定の間隔を空けて複数形成されており、上端フランジ111に形成された第1収納凹部113a上にそれぞれ収納されている。
上壁部21の上面と、上端フランジ111の上面とは、互いに略面一となって配置され、それぞれパンフレーム12の左右端部分12aに当接可能な支持面として形成されている。
上壁部21の上面と、パンフレーム12の左右端部分12aとが、レーザー溶接によって接合されている。
【0032】
側壁部22は、
図4、
図5に示すように、シート前後方向に長尺なプレート部分であって、フレーム本体110に形成された第2収納凹部113b上に収納されている。
側壁部22の後方部分は、フレーム本体110の外側面に回転軸23を介して取り付けられており、側壁部22の前方部分は、後述の駆動リンク36に連結ピン24を介して取り付けられている。
側壁部22において連結ピン24(駆動リンク36)が取り付けられている部分は、シート幅方向の外側に張り出すようにオフセット配置されている。そのため、サイドフレーム11とチルトブラケット20の間にスペースを形成でき、当該スペースに他の構成部品をコンパクトに配置できる。また、側壁部22において当該部分の剛性を高められる。
【0033】
チルト装置30は、パンフレーム12の高さ位置を
図2に示す通常位置と、
図3に示す上昇位置との間で調整可能な装置である。
詳しく言うと、チルト装置30は、
図3に示すように、サイドフレーム11に対してチルトブラケット20を上下方向に回転移動させることでパンフレーム12を昇降させることが可能な装置であって、サイドフレーム11のシート幅方向の内側面に取り付けられている。
【0034】
チルト装置30は、
図6に示すように、チルト装置30の本体部分となる駆動ユニット31と、駆動ユニット31に対して回転可能に取り付けられるピニオンギア32と、先端が歯車としてピニオンギア32と噛み合わされ、末端がサイドフレーム11の内側面に回動軸33を介して取り付けられるセクターギア34と、一端がセクターギア34の外側面に回転ピン35を介して取り付けられ、他端側がサイドフレーム11の側面に形成された貫通穴114を通過して外側に屈曲して突出し、チルトブラケット20の側壁部22に取り付けられている駆動リンク36と、から主に構成されている。
【0035】
チルト装置30によってパンフレーム12が
図2に示す通常位置から、
図3に示す上昇位置まで移動する動作について
図6に基づいて説明する。
チルト装置30では、まず駆動ユニット31の駆動動作に伴ってピニオンギア32がシート幅方向に沿った軸回りに回転する。ピニオンギア32の回転動作に伴って、セクターギア34が回動軸33を中心として上方側に回転する。
セクターギア34の上方回転動作に伴って、セクターギア34と回転ピン35を介して連結された屈曲形状の駆動リンク36が上方側に移動する。駆動リンク36の上方移動動作に伴って、駆動リンク36と連結ピン24を介して連結されたチルトブラケット20が回転軸23を中心として上方回転する。
その結果、チルトブラケット20と共にパンフレーム12が通常位置から上昇位置まで回転移動することができる。
【0036】
上記構成において、
図5に示すように、パンフレーム12の左右端部分12aには、チルトブラケット20に沿ってシート前後方向に延びている第1凸状ビード12bと、第1凸状ビード12bとは直交方向(シート幅方向)に延びており、チルトブラケット20の各上壁部21に対応して配置されている第2凸状ビード12cと、が形成されている。
そのため、第1凸状ビード12bによって、パンフレーム12のうち、サイドフレーム11との連結部分、及びチルトブラケット20との連結部分においてフレーム剛性を確保することができる。
また、各第2凸状ビード12cによって、パンフレーム12のうち、チルトブラケット20(上壁部21)との連結部分においてフレーム剛性を一層確保できる。
【0037】
また上記構成において、
図5に示すように、パンフレーム12の左右端部分12aのうち、凸状ビード12b,12cを避けた部分には、サイドフレーム11に沿って所定の間隔を空けて3つ設けられ、上下方向に貫通した開口孔12dが形成されている。
開口孔が形成された部分は、シート前後方向においてサイドフレーム11の上面(支持面)のうち、第1収納凹部が形成された部分を避けた位置に配置されている。
そのため、車両用シートの仕様にチルトブラケット20を不要とした場合に、パンフレーム12の開口孔を利用してパンフレーム12とサイドフレーム11とを接着剤等で容易に接合することができる。また、チルトブラケット20が取り付けられる仕様であっても、チルトブラケット20がパンフレーム12を安定して支持できる。
【0038】
また上記構成において、
図5に示すように、サイドフレーム11において貫通穴114が形成された部分は、シート前後方向において第1収納凹部が形成された部分を避けた位置に配置されている。
そのため、サイドフレーム11のうち、チルトブラケット20の上壁部21が載置される部分となる第1収納凹部周辺のフレーム剛性を確保できる。
【0039】
また上記構成において、
図5に示すように、チルトブラケット20の側壁部22のうち、回転軸23を介してサイドフレーム11に取り付けられた部分は、シート前後方向においてサイドフレーム11の第1収納凹部が形成された部分を避けた位置に配置されている。
そのため、サイドフレーム11の側面においてチルトブラケット20が取り付けられる部分の面積を確保し易くなるため、チルトブラケット20のフレーム剛性を確保できる。
【0040】
<その他の実施形態>
上記実施形態において、
図3に示すように、車両用シートSは、チルト装置30を備えたシートであって、サイドフレーム11とパンフレーム12の連結部分の間にチルトブラケット20が取り付けられているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えばチルト装置30を備えていないシートであって、当該連結部分の間にパンフレーム12を単に補強支持するための支持ブラケットが取り付けられた構成であっても良い。
【0041】
上記実施形態において、
図5に示すように、パンフレーム12の左右端部分12aは、サイドフレーム11上面と、チルトブラケット20上面とに支持されて連結されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、パンフレーム12の左右端部分12aが、サイドフレーム11の外側面まで延びており、サイドフレーム11の外側面と、チルトブラケット20の外側面とに支持されて連結されている構成であっても良い。
【0042】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる車両用シートについて説明したが、これに限定されることなく、電車、バス等の車両用シートのほか、飛行機、船等の乗り物用シートとしても利用することができる。
【0043】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
S 車両用シート
1 シートクッション
1a,2a クッションパッド
1b,2b 表皮材
2 シートバック
3 リクライニング装置
4 ハイトリンク装置
10 クッションフレーム
11 サイドフレーム
12 パンフレーム
12a 左右両端部分
12b 第1凸状ビード
12c 第2凸状ビード
12d 開口孔
13 後方フレーム
14 弾性バネ
20 チルトブラケット
21 上壁部
22 側壁部
23 回転軸
24 連結ピン
30 チルト装置
31 駆動ユニット
32 ピニオンギア
33 回動軸
34 セクターギア
35 回動ピン
36 駆動リンク
110 フレーム本体
111 上端フランジ
112 下端フランジ
113 収納凹部
113a 第1収納凹部
113b 第2収納凹部
114 貫通穴