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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20241204BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20241204BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20241204BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B60C11/01 A
B60C11/03 100B
B60C13/00 D
B60C11/01 B
B60C11/03 300E
B60C11/13 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023169323
(22)【出願日】2023-09-29
【審査請求日】2024-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】坂本 洋佑
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-44883(JP,A)
【文献】特開2020-29120(JP,A)
【文献】特開2023-10598(JP,A)
【文献】特開2020-44882(JP,A)
【文献】特開2022-168420(JP,A)
【文献】特開2022-19563(JP,A)
【文献】特開2023-54637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/01
B60C 11/03
B60C 13/00
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部とを備えたタイヤにおいて、
前記トレッド部の表面に、タイヤ赤道の両側でタイヤ周方向に沿って延在する一対の主溝を有し、
前記主溝のタイヤ幅方向外側に位置するショルダー領域に、前記主溝からタイヤ幅方向外側に向かって延在してタイヤ周方向に間隔を置いて配置された複数本のショルダーラグ溝と、前記主溝と前記ショルダーラグ溝とによって区画されてタイヤ周方向に沿って配列された複数のショルダーブロックとが設けられ、
前記ショルダー領域のタイヤ幅方向外側に隣接するサイド領域に前記サイドウォール部の外表面から隆起する複数のサイドブロックが設けられ、
タイヤ周方向に隣り合う2つ以上の前記ショルダーブロックのタイヤ幅方向外側の位置に1つの前記サイドブロックが配置され、これら2つ以上の前記ショルダーブロックと1つの前記サイドブロックとの組み合わせをブロック群としたとき、
前記ブロック群に含まれる一対の前記ショルダーブロックの間に配置された前記ショルダーラグ溝の延長線上に前記サイドブロック内で終端する屈曲サイド溝が形成され、
前記屈曲サイド溝が、前記ショルダーラグ溝の端部位置からタイヤ径方向内側に向かって延在する接続部と、前記接続部のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ周方向の一方側に屈曲してタイヤ径方向外側に向かって延在する折り返し部とを含むことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記接続部のタイヤ周方向の他方側に隣接する位置に前記サイドブロックの表面より窪み前記屈曲サイド溝よりも隆起した第一凹部が形成され、前記折り返し部のタイヤ径方向外側に隣接する位置に前記サイドブロックの表面より窪み前記屈曲サイド溝よりも隆起した第二凹部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記サイドブロックの表面に対する前記第一凹部および前記第二凹部の窪み量が0.5mm~2.5mmであることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第二凹部の面積が前記第一凹部の面積の10%~40%であることを特徴とする請求項2または3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記折り返し部の溝幅が前記接続部の溝幅よりも小さいことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記屈曲サイド溝の溝深さが0.5mm~3mmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ショルダーラグ溝の溝底に該溝底から隆起した溝底突起を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未舗装路等を走行することを意図したタイヤに関し、更に詳しくは、優れたブロック耐久性を確保しながら悪路走破性能の更なる向上を可能にしたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
舗装路面に加えて、未舗装路(不整地、泥濘地、砂地、岩場等)を走行することを想定したタイヤ(例えば、オールテレーンタイヤ、全地形型タイヤ等)は、様々な路面における走行性能に優れることが求められ、特に、優れたオフロード性能(悪路走破性能)を備えることが求められる。このようなタイヤでは、舗装路面で路面に接触するトレッド部だけでなく、未舗装路で路面上の泥、雪、砂、石、岩等(以下、これらを総称して「泥等」と言う)と接触する可能性のあるサイド領域(トレッド部とサイドウォール部の間に位置する領域)に凹凸(サイドブロック等)を設け、これによって泥等を噛み込んでトラクション性能を得ることが行われている(例えば、特許文献1,2を参照)。近年、タイヤに対する要求性能が高度化しており、悪路走破性能の更なる改善が求められている。また、サイドブロックは未舗装路(悪路)において路面上の石、岩、異物等によって損傷を受けやすい傾向があるので耐久性を確保することも求められている。そのため、耐久性(特にブロック耐久性)を確保しながら悪路走破性能を向上し、これら性能を高度に両立することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017‐124733号公報
【文献】特開2020‐044882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、優れたブロック耐久性を確保しながら悪路走破性能の更なる向上を可能にしたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部とを備えたタイヤにおいて、前記トレッド部の表面に、タイヤ赤道の両側でタイヤ周方向に沿って延在する一対の主溝を有し、前記主溝のタイヤ幅方向外側に位置するショルダー領域に、前記主溝からタイヤ幅方向外側に向かって延在してタイヤ周方向に間隔を置いて配置された複数本のショルダーラグ溝と、前記主溝と前記ショルダーラグ溝とによって区画されてタイヤ周方向に沿って配列された複数のショルダーブロックとが設けられ、前記ショルダー領域のタイヤ幅方向外側に隣接するサイド領域に前記サイドウォール部の外表面から隆起する複数のサイドブロックが設けられ、タイヤ周方向に隣り合う2つ以上の前記ショルダーブロックのタイヤ幅方向外側の位置に1つの前記サイドブロックが配置され、これら2つ以上の前記ショルダーブロックと1つの前記サイドブロックとの組み合わせをブロック群としたとき、前記ブロック群に含まれる一対の前記ショルダーブロックの間に配置された前記ショルダーラグ溝の延長線上に前記サイドブロック内で終端する屈曲サイド溝が形成され、前記屈曲サイド溝が、前記ショルダーラグ溝の端部位置からタイヤ径方向内側に向かって延在する接続部と、前記接続部のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ周方向の一方側に屈曲してタイヤ径方向外側に向かって延在する折り返し部とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のタイヤは、サイド領域に複数のサイドブロックを設けるにあたって、タイヤ周方向に隣り合う2つ以上のショルダーブロックからなるブロック群のタイヤ幅方向外側の位置に1つのサイドブロックが配置されているので、ブロック群およびサイドブロックからなる全体が実質的に大きなブロックとして機能し、これによりブロック耐久性を向上することができる。一方で、サイドブロック内に、上述の構造の屈曲サイド溝が設けられているので、そのエッジ効果によりトラクション性能を向上することができる。特に、屈曲サイド溝は、ショルダーラグ溝の端部位置からタイヤ径方向内側に向かって延在する接続部と、接続部のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ周方向の一方側に屈曲してタイヤ径方向外側に向かって延在する(つまり接続部と逆方向に延在する)折り返し部とを含むため、その屈曲形状により様々な方向に対してエッジ効果を発揮し、効果的にトラクション性能を高めることができる。尚、この屈曲サイド溝はサイドブロック内で終端するため、ブロック内に溝を設けることによるブロック剛性の低下は抑制することができる。これらの協働により、ブロック耐久性と悪路走破性能を高度に両立することができる。
【0007】
本発明においては、接続部のタイヤ周方向の他方側に隣接する位置にサイドブロックの表面より窪み屈曲サイド溝よりも隆起した第一凹部が形成され、折り返し部のタイヤ径方向外側に隣接する位置にサイドブロックの表面より窪み屈曲サイド溝よりも隆起した第二凹部が形成された仕様にすることが好ましい。このように第一および第二凹部を設けることで、サイドブロック内に溝を増やす場合と比べてブロック剛性を維持したままサイドブロックの表面の凹凸を複雑化することができ、ブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。
【0008】
このとき、サイドブロックの表面に対する第一凹部および第二凹部の窪み量が0.5mm~2.5mmであることが好ましい。また、第二凹部の面積が第一凹部の面積の10%~40%であることが好ましい。このように凹部の窪み量や大小関係を設定することで、個々の凹部の形状や第一凹部と第二凹部の大きさのバランスが良好になり、ブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。
【0009】
本発明においては、折り返し部の溝幅が接続部の溝幅よりも小さいことが好ましい。これにより、ブロック剛性を確保しやすくなり、ブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。
【0010】
本発明においては、屈曲サイド溝の溝深さが0.5mm~3mmであることが好ましい。このように各部の溝深さや窪み量を設定することで、屈曲サイド溝や凹部のバランスが良好になり、ブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。
【0011】
本発明においては、ショルダーラグ溝の溝底に該溝底から隆起した溝底突起を有する仕様にすることもできる。この仕様では、溝底突起によるエッジ効果を付加できるため、トラクション性能を向上するには有利になる。
【0012】
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましいが、非空気式タイヤであってもよい。空気入りタイヤの場合は、その内部に空気、窒素等の不活性ガスまたはその他の気体を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態からなるタイヤの子午線断面図である。
図2】本発明の実施形態からなるタイヤのショルダー領域およびサイド領域を示す斜視図である。
図3】本発明のブロック群(ショルダーブロック(側面)およびサイドブロック(表面))を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本発明のタイヤは、図1に示すような空気入りタイヤである場合、路面に当接するトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。尚、図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0016】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。カーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側には少なくとも1層(図1では2層)のベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定されている。
【0017】
本発明は、後述のようにタイヤのショルダー領域とサイド領域に関するものであるので、タイヤの基本構造(断面構造)は上述の一般的な構造に限定されない。また、トレッド部1の表面に形成される溝やブロックの詳細な形状(トレッドパターン)は、後述のショルダー領域を除いて特に限定されない。後述のショルダー領域を除いた部分のトレッドパターンは、未舗装路に好適なブロックを主体としたパターンが好適に用いられる。本発明は、未舗装路を走行する際に路面上の泥等に接する可能性がある領域(ショルダー領域およびサイド領域に相当する部位)を備えていれば、非空気式タイヤを含む各種タイヤに適用することができる。
【0018】
図1,2に示すように、トレッド部1の表面には、タイヤ赤道CLの両側でタイヤ周方向に沿ってタイヤ全周に亘って延在する一対の主溝10が形成される。主溝10は、タイヤ周方向に対して一方向に傾斜する直線状の部分と他方向に傾斜する直線状の部分とがタイヤ周方向に交互に連なったジグザグ形状を有するとよい。一対の主溝10の間の領域がセンター領域(本発明において特に構造は限定されず任意のトレッドパターンを採用可能な領域)であり、各主溝10のタイヤ幅方向外側の領域がショルダー領域である。主溝10は、溝幅が好ましくは3mm~30mm、より好ましくは5mm~11mmであり、溝深さが好ましくは8mm~16mm、より好ましくは10mm~15mmである。
【0019】
主溝10のタイヤ幅方向外側に区画された陸部(ショルダー陸部)には、主溝10からタイヤ幅方向外側に向かって延在するショルダーラグ溝11が設けられる。ショルダーラグ溝11は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数本を設けるとよい。これらショルダーラグ溝11により、ショルダー陸部は複数のブロック(ショルダーブロック12)に区画される。主溝10がジグザグ形状を有する場合、ショルダーラグ溝11は、各主溝10のタイヤ幅方向外側の屈曲点に接続しているとよい。ショルダーラグ溝11の溝幅は特に限定されないが、主溝10の溝幅の好ましくは70%~98%、より好ましくは80%~95%であるとよい。ショルダーラグ溝11の溝深さは特に限定されないが、主溝10の溝深さの好ましくは75%~100%、より好ましくは80%~98%であるとよい。
【0020】
ショルダー領域のタイヤ幅方向外側に隣接する領域をサイド領域としたとき、このサイド領域にサイドウォール部2の外表面から隆起する複数のサイドブロック13が設けられている。各サイドブロック13のサイドウォール2の外表面からの隆起高さは特に限定されないが例えば1mm~10mmに設定することができる。図2,3に示すように、各サイドブロック13は、タイヤ周方向に隣り合う2つ以上のショルダーブロック12に対応する位置のタイヤ幅方向外側に配置される。例えば図示の例では、2つのショルダーブロック12のタイヤ幅方向外側の位置に1つのサイドブロック13が配置されている。換言すると、タイヤ周方向に隣り合うサイドブロック13の間にはタイヤ幅方向(タイヤ径方向)に沿って延在するサイド溝14が形成されるが、このサイド溝14はタイヤ周方向に間隔をおいて配置された複数のショルダーラグ溝11と少なくとも1本おきに連結している。このように連結したショルダーラグ溝11およびサイド溝14どうしの間には、1つのサイドブロック13と2つ以上のショルダーブロック12(およびサイド溝14と連結しない1本以上のショルダーラグ溝11)が配置される。
【0021】
サイドブロック13は、未舗装路走行時にタイヤが泥等に埋もれた際に、路面に適切に接するように、タイヤ径方向の適度な範囲に配置することが好ましい。具体的には、サイドブロック13のタイヤ径方向最内側端がタイヤ赤道CL位置からタイヤ径方向内側に向かってタイヤ断面高さSHの好ましくは20%~50%の範囲に存在することが好ましい。言い換えると、タイヤ赤道CL位置からサイドブロック13のタイヤ径方向最内側端までの距離Dがタイヤ断面高さSHの好ましくは20%~50%であるとよい。このようにサイドブロック13をサイドウォール部2のタイヤ径方向の適度な範囲に配置することで、未舗装路における走行性能を効果的に高めることが可能になる。また、サイドブロック13の大きさを適度に確保することができるため、ブロック剛性を確保して耐久性を向上するには有利になる。距離Dがタイヤ断面高さSHの20%未満であると、サイドブロック13が小さくなるため、ブロック耐久性を良好に維持することが難しくなる。距離Dがタイヤ断面高さSHの50%を超えると、サイドブロック13が大きくなり過ぎて、通常の走行性能に影響が出る虞がある。尚、サイドブロック13の配置に関連して、ショルダー領域とサイド領域との境界は、突条17の有無に依らず、タイヤ赤道CL位置からタイヤ径方向内側に向かってタイヤ断面高さSHの20%~25%の範囲に位置するとよい。
【0022】
尚、図示の例では、ショルダーブロック12のタイヤ幅方向外側の側面とサイドブロック13の表面との境界(ショルダー領域とサイド領域との境界)に、サイドウォール表面から隆起してタイヤ全周に亘って延在する突条15が存在している。この突条15は、金型の割り位置等に起因して形成される要素であるため必ずしも設ける必要はない。この突条15は本発明において考慮する必要のない要素であるが、製造上形成される要素であるので、突条15を基準としてショルダー領域およびサイド領域を区分してもよい。即ち、ショルダー領域は突条15のタイヤ幅方向内側に隣接する領域であり、サイド領域は突条15のタイヤ径方向内側に隣接する領域であると見做すことができる。
【0023】
上述の2つ以上のショルダーブロック12と1つのサイドブロック13との組み合わせをブロック群Bとしたとき、本発明においては、ブロック群Bに含まれる一対のショルダーブロック12の間に配置されたショルダーラグ溝11の延長線上に、サイドブロック13内で終端する屈曲サイド溝20が形成される。この屈曲サイド溝20は、ショルダーラグ溝12の端部位置からタイヤ径方向内側に向かって延在する接続部21と、接続部21のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ周方向の一方側に屈曲してタイヤ径方向外側に向かって延在する折り返し部22とを含んだ屈曲形状を有する。
【0024】
本発明のタイヤにおいては、前述のショルダーブロック12およびサイドブロック13からなる全体(ブロック群B)が実質的に大きなブロックとして機能し、十分な体積を持ったブロックとしての剛性が確保できるので、これによりブロック耐久性を向上することができる。一方で、サイドブロック13内に、上述の構造の屈曲サイド溝20が設けられているので、そのエッジ効果によりトラクション性能を向上することができる。特に、屈曲サイド溝20は、ショルダーラグ溝11の端部位置からタイヤ径方向内側に向かって延在する接続部21と、接続部21のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ周方向の一方側に屈曲してタイヤ径方向外側に向かって延在する(つまり接続部21と逆方向に延在する)折り返し部20とを含むため、その屈曲形状により様々な方向に対してエッジ効果を発揮し、効果的にトラクション性能を高めることができる。また、屈曲サイド溝20はサイドブロック13内で終端するため、溝を追加することによるブロック剛性の低下は抑制することができる。これらの協働により、ブロック耐久性と悪路走破性能を高度に両立することができる。
【0025】
屈曲サイド溝20が上述の屈曲形状を有さず、例えばショルダーラグ溝11の端部位置から直線的に延在するだけであると、溝長さを十分に確保できず、十分にトラクション性能を高めることができない。屈曲サイド溝20がブロック内で終端しないとサイドブロックが分断されてしまい、複数のショルダーブロック12と1つのサイドブロック13の組み合わせからなるブロック群Bが構成されなくなるため、ブロック耐久性を向上することができない。
【0026】
屈曲サイド溝20の溝深さは好ましくは0.5mm~3mm、より好ましくは1mm~2mmであるとよい。このような溝深さに設定することで、屈曲サイド溝20によるエッジ効果と、屈曲サイド溝20を設けることによるブロック剛性の低下のバランスが良好になり、ブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。屈曲サイド溝20の溝深さが0.5mm未満であると、溝深さが小さすぎるためエッジ効果を十分に確保することが難しくなる。屈曲サイド溝20の溝深さが3mmを超えるとブロック剛性を十分に確保することが難しくなる。尚、屈曲サイド溝20を構成する接続部21と折り返し部22は同じ溝深さに設定するとよい。
【0027】
屈曲サイド溝20は、ショルダーラグ溝12の端部位置から終端部に向かって徐々に溝幅が狭くなる先細り形状を有することが好ましい。少なくとも、折り返し部22の溝幅が接続部21の溝幅よりも小さいことが好ましい。屈曲サイド溝20の屈曲形状により折り返し部22が接続部21に接近したとしても、折り返し部22の溝幅が狭くなっているため、ブロック剛性を確保することができ、ブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。屈曲サイド溝20の最大溝幅(ショルダーラグ溝12と接続する位置における溝幅)は好ましくは25mm以下、より好ましくは5mm~20mmであるとよい。また、屈曲サイド溝20の先端(つまり折り返し部22の先端)は鋭角状であるとよい。
【0028】
本発明では、接続部21のタイヤ周方向の他方側(折り返し部22が屈曲する方向と逆側)に隣接する位置に、サイドブロック13の表面より窪み、屈曲サイド溝20よりも隆起した第一凹部31を設けることが好ましい。また、折り返し部22のタイヤ径方向外側に隣接する位置に、サイドブロック13の表面より窪み、屈曲サイド溝20よりも隆起した第二凹部32を設けることが好ましい。このように屈曲サイド溝20と別に第一凹部31および第二凹部32を設けることで、サイドブロック13内に溝を増やす場合と比べてブロック剛性を維持したままサイドブロック13の表面の凹凸を複雑化することができ、ブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。
【0029】
サイドブロック13の表面に対する第一凹部31および第二凹部32の窪み量は好ましくは0.5mm~2.5mm、より好ましくは0.5mm~2mmであるとよい。このように窪み量を設定することで屈曲サイド溝20と各凹部31,32のバランスが良好になり、ブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。第一凹部31および第二凹部32の窪み量が0.5mm未満であるとサイドブロック13の表面に十分な凹凸が付加されずトラクション性能を高める効果が限定的になる。第一凹部31および第二凹部32の窪み量が2.5mmを超えると屈曲サイド溝20との深さの差が実質的に無くなるためブロック剛性を十分に維持することが難しくなる。
【0030】
第一凹部31および第二凹部32はそれぞれ、前述のようにサイドブロック13の表面より窪むが、屈曲サイド溝20よりも隆起しているので、各凹部の窪み量は屈曲サイド溝20の溝深さよりも小さくなる。このとき、各凹部の窪み量と屈曲サイド溝20の溝深さとの差(つまり各凹部の屈曲サイド溝20の溝底からの隆起高さ)は好ましくは0mm~3mm、より好ましくは0mm~2mmであるとよい。これにより各凹部と屈曲サイド溝20とにより構成される凹凸形状がより良好になるためブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。
【0031】
第一凹部31および第二凹部32の位置関係を考慮したとき、折り返し部22に隣接する第二凹部32の方が、接続部21(つまりショルダーブロック12に近い側)に隣接する第一凹部31よりも面積が小さいことが好ましい。具体的には、第二凹部32の面積が第一凹部31の面積の好ましくは10%~40%、より好ましくは15%~30%であるとよい。これにより、第一凹部31と第二凹部32の大きさのバランスが良好になり、ブロック耐久性と悪路走破性能を両立するには有利になる。第二凹部32の面積が第一凹部31の面積の10%未満であると、第二凹部32が小さすぎるため、第二凹部32を設けることによる付加されるエッジ効果が十分に見込めなくなる。第二凹部32の面積が第一凹部31の面積の40%を超えると、サイドブロック13に占める第一凹部31および第二凹部32の割合が大きくなるため、ブロック剛性を十分に維持することが難しくなる。
【0032】
屈曲サイド溝20のサイドブロック13の表面における開口面積は、サイドブロック13の表面積(屈曲サイド溝20、第一凹部31、および第二凹部32を含んだ全体の面積)に対して好ましくは5%~40%、より好ましくは10%~30%であるとよい。また、第一凹部31および第二凹部32の面積の合計は、サイドブロック13の表面積(屈曲サイド溝20、第一凹部31、および第二凹部32を含んだ全体の面積)に対して好ましくは5%~40%、より好ましくは15%~30%であるとよい。
【0033】
ブロック群Bに含まれる一対のショルダーブロック12の間に配置されたショルダーラグ溝11の溝底には、その溝底から隆起した溝底突起33を設けることができる。同様に、他のショルダーラグ溝11(タイヤ周方向に隣り合う2つのブロック群Bの間に位置するショルダーラグ溝11)の溝底にも、溝底突起33を設けることができる。このように溝底突起33を設けることで更にエッジ効果を付加できるため、トラクション性能を向上するには有利になる。また、ショルダーラグ溝11に対する石噛みを防止することもできる。溝底突起33はショルダーラグ溝11の溝底の全幅が隆起するのではなく、図示のようにショルダーラグ溝11の溝底の一部が隆起するとよい。溝底突起33の幅はショルダーラグ溝11の溝幅の好ましくは10%~40%、より好ましくは15%~25%であるとよい。溝底突起33の隆起高さは好ましくは0.5mm~3mm、より好ましくは1mm~2mmであるとよい。
【0034】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0035】
タイヤサイズがLT265/70R17 121/118Sであり、図1に例示する基本構造(断面構造)を有し、ショルダー領域およびサイド領域の構造は図2を基調とし、1つのサイドブロックのタイヤ径方向外側に隣接するショルダーブロックの個数、屈曲サイド溝の有無、屈曲サイド溝の溝深さ、屈曲サイド溝の最大幅、屈曲サイド溝の接続部に隣接する第一凹部の有無、屈曲サイド溝の折り返し部に隣接する第二凹部の有無、第一/第二凹部の窪み量、第一凹部の面積に対する第二凹部の面積の割合、ショルダーラグ溝の溝底突起の有無を、それぞれ表1~2のように設定した従来例1、比較例1~2、実施例1~12の15種類の空気入りタイヤを作製した。
【0036】
尚、センター領域のトレッドパターンはすべての例で共通とし、一対の主溝の間かつタイヤ赤道の両側にそれぞれ一列ずつブロック列を配列した構造とした。
【0037】
表1~2の「屈曲サイド溝の有無」の欄について、屈曲サイド溝は形成されないが、ショルダーラグ溝の端部位置からタイヤ径方向内側に向かって延在しサイドブロック内で終端する溝が形成された場合(比較例2)について「直線状のサイド溝」と記載した。その場合については、便宜的に「屈曲サイド溝の溝深さ」および「屈曲サイド溝の最大幅」の欄に直線状のサイド溝の溝深さや最大幅の値を記載した。
【0038】
これら空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、悪路走破性能およびブロック耐久性を評価し、その結果を表1~2に併せて示した。
【0039】
悪路走破性能
各試験タイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組み付けて、フロントタイヤの空気圧を450kPa、リアタイヤの空気圧を550kPaとして試験車両(トラクション試験車)に装着し、未舗装路(グラベル路面)からなる試験路においてトラクション性(発進性)についてテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど悪路走破性能に優れることを意味する。
【0040】
ブロック耐久性(耐カット性)
各試験タイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組み付けて、空気圧を350kPaとして試験車両(四輪駆動のSUV)に装着し、オフロード耐久路にて1000km走行した後に、サイド部に生じたカットの総長さを測定した。評価結果は、比較例1の測定値の逆数を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどカットの総長さが小さく、ブロック耐久性(耐カット性)に優れることを意味する。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1から明らかなように、実施例1~12の空気入りタイヤは、従来例1と比較して悪路走破性およびブロック耐久性を向上し、これら性能をバランスよく両立した。一方、比較例1は、1つのサイドブロックに対して2つのショルダーブロックが隣接する構造であるため、従来例1に対してブロック耐久性が改善したものの、屈曲サイド溝が設けられないため悪路走破性を向上する効果が十分に得られなかった。比較例2は、屈曲サイド溝の代わりに直線状のサイド溝が設けられたため悪路走破性を十分に向上することができなかった。
【0044】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部とを備えたタイヤにおいて、
前記トレッド部の表面に、タイヤ赤道の両側でタイヤ周方向に沿って延在する一対の主溝を有し、
前記主溝のタイヤ幅方向外側に位置するショルダー領域に、前記主溝からタイヤ幅方向外側に向かって延在してタイヤ周方向に間隔を置いて配置された複数本のショルダーラグ溝と、前記主溝と前記ショルダーラグ溝とによって区画されてタイヤ周方向に沿って配列された複数のショルダーブロックとが設けられ、
前記ショルダー領域のタイヤ幅方向外側に隣接するサイド領域に前記サイドウォール部の外表面から隆起する複数のサイドブロックが設けられ、
タイヤ周方向に隣り合う2つ以上の前記ショルダーブロックのタイヤ幅方向外側の位置に1つの前記サイドブロックが配置され、これら2つ以上の前記ショルダーブロックと1つの前記サイドブロックとの組み合わせをブロック群としたとき、
前記ブロック群に含まれる一対の前記ショルダーブロックの間に配置された前記ショルダーラグ溝の延長線上に前記サイドブロック内で終端する屈曲サイド溝が形成され、
前記屈曲サイド溝が、前記ショルダーラグ溝の端部位置からタイヤ径方向内側に向かって延在する接続部と、前記接続部のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ周方向の一方側に屈曲してタイヤ径方向外側に向かって延在する折り返し部とを含むことを特徴とするタイヤ。
発明[2] 前記接続部のタイヤ周方向の他方側に隣接する位置に前記サイドブロックの表面より窪み前記屈曲サイド溝よりも隆起した第一凹部が形成され、前記折り返し部のタイヤ径方向外側に隣接する位置に前記サイドブロックの表面より窪み前記屈曲サイド溝よりも隆起した第二凹部が形成されたことを特徴とする発明[1]に記載のタイヤ。
発明[3] 前記サイドブロックの表面に対する前記第一凹部および前記第二凹部の窪み量が0.5mm~2.5mmであることを特徴とする発明[2]に記載のタイヤ。
発明[4] 前記第二凹部の面積が前記第一凹部の面積の10%~40%であることを特徴とする発明[2]または[3]に記載のタイヤ。
発明[5] 前記折り返し部の溝幅が前記接続部の溝幅よりも小さいことを特徴とする発明[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[6] 前記屈曲サイド溝の溝深さが0.5mm~3mmであることを特徴とする発明[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[7] 前記ショルダーラグ溝の溝底に該溝底から隆起した溝底突起を有することを特徴とする発明[1]~[6]のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0045】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
10 主溝
11 ショルダーラグ溝
12 ショルダーブロック
13 サイドブロック
14 サイド溝
15 突条
20 屈曲サイド溝
21 接続部
22 折り返し部
31 第一凹部
32 第二凹部
33 溝底突起
CL タイヤ赤道
B ブロック群
【要約】
【課題】優れたブロック耐久性を確保しながら悪路走破性能の更なる向上を可能にしたタイヤを提供する。
【解決手段】
トレッド部1のショルダー領域に複数のショルダーブロック12を設け、ショルダー領域のタイヤ幅方向外側に隣接するサイド領域に複数のサイドブロック13を設け、タイヤ周方向に隣り合う2つ以上のショルダーブロック12とそのタイヤ幅方向外側に配置された1つのサイドブロック13とをブロック群Bとし、ブロック群Bに含まれるに含まれる一対のショルダーブロック12の間に配置されたショルダーラグ溝11の延長線上にサイドブロック13内で終端する屈曲サイド溝20を形成し、この屈曲サイド溝20が、ショルダーラグ溝11の端部位置からタイヤ径方向内側に向かって延在する接続部21と、接続部21のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ周方向の一方側に屈曲してタイヤ径方向外側に向かって延在する折り返し部22とを含むようにする。
【選択図】図2
図1
図2
図3