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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】表面材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B32B5/02 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020095319
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021187073
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松島 貫
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0305859(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0202093(US,A1)
【文献】特開昭50-004387(JP,A)
【文献】特公昭52-044959(JP,B2)
【文献】特表2008-529840(JP,A)
【文献】特開昭49-000050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D06N 1/00-7/06
B60R 13/00-13/10
D04D 1/00-11/00
D06Q 1/00-1/14
D06M 10/00-11/84
D06M 16/00
D06M 19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の少なくとも一方の主面上にプリントが部分的に存在している、表面材であって、
前記プリントは複数のプリント柄で構成されており、前記プリントを構成するプリント柄一つあたりの大きさと前記プリント柄同士の間隔が不規則であり、
前記布帛の一方の主面に占める、前記主面上に部分的に存在しているプリント面積の百分率は、20~50%であり、
下記測定方法により算出されるCV値が0.26以下である、表面材。

1.表面材における前記プリントが存在している側の主面を30倍に拡大した顕微鏡写真を、前記主面の異なる場所ごとに撮影して、合計10枚の顕微鏡写真を用意する、なお、前記顕微鏡写真中に前記主面が、長辺10.2mm、短辺7.6mmの長方形以上の大きさで写るよう調整する、
2.各顕微鏡写真に写る前記主面上に、長方形(長辺10.2mm、短辺7.6mm)を作図する、
3.前記長方形に囲まれた部分に存在している、前記プリント面積を算出する、
4.前記長方形に囲まれた部分の面積(面積:77.52mm)に占める、前記プリント面積の割合を算出する、
5.前記10枚の顕微鏡写真ごとに、上述した項目3~4の方法を用いて前記割合を算出する、
6、算出された10点の前記割合の平均値と10点の前記割合の標準偏差を用いて、以下式に基づきCV値を算出する、
CV値=10点の前記割合の標準偏差/10点の前記割合の平均値。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車などの内装を構成可能な、表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内装を構成可能な表面材として、従来から、布帛(例えば、繊維ウェブ、不織布、織物、編物など)と、樹脂を含み構成されているプリントを有しており、前記布帛の少なくとも一方の主面上に前記プリントを備える表面材が使用されている。このような表面材として、例えば、特開2015-104848(特許文献1)や特開2016-147466(特許文献2)などに開示された技術が知られている。また、プリントが部分的に存在してプリント柄を形成している場合には、意匠性に富む表面材を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-104848
【文献】特開2016-147466
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は、上述したような従来技術にかかる表面材、つまり、布帛の少なくとも一方の主面上にプリントが存在している表面材の触感について検討した。特に、意匠性に富む表面材を提供できるよう、布帛の少なくとも一方の主面上に部分的にプリントが存在している表面材の触感について検討した。
【0005】
検討の結果、当該表面材のプリントが部分的に存在している側の主面において、プリントの存在していない部分は、布帛が露出しているため人へ滑らかさを感じさせることなく起毛感を感じさせる役割を担っていることを見出した。一方、プリントが存在している部分は、布帛が露出していないため人へ起毛感を感じさせることなく滑らかさを感じさせる役割を担っていることを見出した。
これらの観点から、表面材の主面上に存在するプリントの総面積を大きくすれば滑らかさが向上すると共に起毛感が低下し、表面材の主面上に存在するプリントの総面積を小さくすれば滑らかさが低下すると共に起毛感が向上すると考えられた。そのため、表面材の主面上に存在するプリントの総面積を最適なものとさえすれば、十分な滑らかさと十分な起毛感を共に備える、触感に優れた表面材が実現できると考えられた。
【0006】
しかし、本願出願人が、プリントの総面積は同一であるもののプリント柄の大きさやプリント柄同士の間隔が異なる表面材を調製し比較したところ、それら表面材におけるプリントが部分的に存在している主面の触感は、同一とならず異なるものであった。この結果から、当該表面材におけるプリントが部分的に存在している主面の触感は、当初の想定と異なり、プリント面積にのみ依存するものではないことが判明した。そのため、触感に優れた表面材を実現するためには、触感の向上へ寄与する新たな因子を見出すと共に、当該因子を最適化する必要があると考えられた。
【0007】
本発明では、プリントが部分的に存在していることによって意匠性に富むと共に、十分な滑らかさと十分な起毛感を共に備える触感に優れた表面材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は「布帛の少なくとも一方の主面上にプリントが部分的に存在している、表面材であって、
前記プリントは複数のプリント柄で構成されており、前記プリントを構成するプリント柄一つあたりの大きさと前記プリント柄同士の間隔が不規則であり、
前記布帛の一方の主面に占める、前記主面上に部分的に存在しているプリント面積の百分率は、20~50%であり、
下記測定方法により算出されるCV値が0.26以下である、表面材。

1.表面材における前記プリントが存在している側の主面を30倍に拡大した顕微鏡写真を、前記主面の異なる場所ごとに撮影して、合計10枚の顕微鏡写真を用意する、なお、前記顕微鏡写真中に前記主面が、長辺10.2mm、短辺7.6mmの長方形以上の大きさで写るよう調整する、
2.各顕微鏡写真に写る前記主面上に、長方形(長辺10.2mm、短辺7.6mm)を作図する、
3.前記長方形に囲まれた部分に存在している、前記プリント面積を算出する、
4.前記長方形に囲まれた部分の面積(面積:77.52mm)に占める、前記プリント面積の割合を算出する、
5.前記10枚の顕微鏡写真ごとに、上述した項目3~4の方法を用いて前記割合を算出する、
6、算出された10点の前記割合の平均値と10点の前記割合の標準偏差を用いて、以下式に基づきCV値を算出する、
CV値=10点の前記割合の標準偏差/10点の前記割合の平均値。」である。
【発明の効果】
【0009】
本願出願人は、布帛の少なくとも一方の主面上にプリントが部分的に存在している表面材について、当該表面材におけるプリントが部分的に存在している主面の触感は、主面上に存在しているプリント柄の分布状態に影響を受けることを見出した。
そして、本願発明が規定する測定方法によって算出される、プリント柄の分布状態を定量的に評価可能なCV値が、0.38未満となるプリント柄を有する表面材であるときに、十分な滑らかさと十分な起毛感を共に備える、触感に優れた表面材を提供できることを見出した。
以上から、本発明によって、プリントが部分的に存在していることによって意匠性に富むと共に、十分な滑らかさと十分な起毛感を共に備える触感に優れた表面材を提供できる。
【0010】
更に、本願出願人は、本発明にかかる構成を満足する表面材は、当該プリントが存在している主面の毛羽立ちが発生し難いものであることを見出した。そのため本発明によって、毛羽立ちが発生し難いことで触感の低下が防止された、更に触感に優れた表面材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載や規定のない限り、常圧のもと25℃温度条件下で測定を行った。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載や規定のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、少数第一位までが求める値である場合、測定によって少数第二位まで値を求め、得られた少数第二位の値を四捨五入することで少数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。また、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0012】
本発明にかかる表面材は、布帛とプリントを有しており、当該プリントは布帛の少なくとも一方の主面上に部分的に存在している。
【0013】
本発明でいう布帛とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の繊維集合体である。本発明の表面材は布帛を含んでいるため、柔軟性に富み金型への追従性に優れるなど成形性に優れると共に、触感に優れた表面材を提供できる。特に、全ての構成繊維がランダムに絡合してなる布帛(特に、不織布)を備えた表面材は、より柔軟性に富み成形性に優れると共に、より触感に優れた表面材を提供でき好ましい。
【0014】
布帛の構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0015】
表面材に難燃性が求められる場合には、布帛の構成繊維が難燃性の樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。また、顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。また、バインダ等を用いることで難燃剤を担持してもよい。
【0016】
構成繊維は、一種類の樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0017】
布帛が構成繊維として熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着することによって、布帛に強度と形態安定性を付与できる。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような態様の一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。熱融着性繊維において熱融着性を発揮する成分(樹脂)として、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂を含む熱融着性繊維などを適宜選択して使用することができる。
【0018】
布帛が捲縮性繊維を含んでいる場合には、伸縮性が増して金型への追従性に優れると共に、触感に優れた表面材を提供できる。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した捲縮性繊維やクリンプを有する繊維などを使用することができる。
【0019】
これらの構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0020】
構成繊維の繊度は特に限定するものではないが、触感に優れた表面材を提供できるように、0.1~50dtexであるのが好ましく、0.5~30dtexであるのがより好ましく、1.0~10dtexであるのがより好ましい。
【0021】
また、構成繊維の繊維長も特に限定するものではないが、触感に優れた表面材を提供できるように、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、布帛の調製時に繊維塊が形成される傾向があり、触感に優れた表面材を提供し難くなるおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0022】
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0023】
布帛が繊維ウェブや不織布である場合、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
【0024】
調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
【0025】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0026】
布帛を構成する繊維同士を接着するため、バインダを用いても良い。使用可能なバインダの種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂(アクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体樹脂など)、ポリウレタン樹脂などを使用できる。バインダがアクリル系樹脂を含有していると、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れる表面材を提供できる。また、バインダは上述した樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0027】
なお、布帛に含まれるバインダの目付は適宜選択するが、バインダ量が少ないほど柔軟性に富む表面材を提供できる傾向がある。そのため、布帛が備えるバインダの目付は、50g/m以下であるのが好ましく、30g/m以下であるのが好ましく、10g/m以下であるのが好ましく、バインダを備えていない布帛であるのがより好ましい。
布帛が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を織るあるいは編むことで、織物や編物を調製できる。
【0028】
なお、繊維ウェブ以外にも不織布あるいは織物や編物など布帛を、上述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供しても良い。
【0029】
布帛の、例えば、厚み、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。布帛の厚みは、0.5~5mmであることができ、1~3mmであることができ、1.1~1.9mmであることができる。また、布帛の目付は、例えば、50~500g/mであることができ、80~300g/mであることができ、100~250g/mであることができる。なお、本発明において厚みとは主面と垂直方向へ20g/cm圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1mあたりの質量をいう。
【0030】
本発明でいうプリントとは、布帛の少なくとも一方の主面上に部分的に存在し、主として表面材の意匠性ならびに触感を向上させる役割を担う樹脂を含んだ層を指す。なお、本発明にかかるプリントは布帛の主面と直接接触することで当該主面上に存在する態様であっても、間に他の樹脂層(例えば、他の樹脂層)を介し当該主面上に存在する態様であっても良い。具体的には、一方の主面からもう一方の主面に向かい、布帛‐プリントという構成を備える表面材以外にも、布帛‐他の樹脂層‐プリントという構成を備える表面材も本発明の構成を満足し得るものである。
【0031】
プリントを構成する樹脂の種類は適宜選択でき、上述したバインダと同様の樹脂を採用することができる。特に、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型へ追従し、成形性に優れる表面材を提供できると共に、触感に優れた表面材を提供できることから、プリントを構成する樹脂がアクリル系樹脂を含んでいるのが好ましい。なお、プリントは樹脂以外に、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0032】
本発明にかかるプリントは粒子(中実粒子や中空粒子)を含有していてもよい。当該粒子はプリントに色彩を付与して表面材の意匠性を向上する役割や、表面材の主面に凹凸を与え触感を向上する役割を担うことができる。プリントに含有されている粒子の平均粒子径は適宜調整するが、触感に優れる表面材となるように粒子の平均粒子径は106μm以下であるのが好ましく、平均粒子径は85μm以下であるのが好ましい。なお、平均粒子径の下限は適宜選択できるが、30μm以上であるのが現実的であり、35μmよりも大きいのが好ましい。なお、本発明において粒子の平均粒子径は以下の方法で算出される値をいう。
【0033】
(平均粒子径の算出方法)
(1)表面材のプリントから粒子を複数採取し、室温(25℃)雰囲気下に置いた採取した複数の粒子の200倍の光学顕微鏡写真を撮影する。そして、写真に写る粒子からランダムに10個の粒子を選出する。
(2)選出した10個の粒子の粒子径を各々算出し、算出した値の平均値を平均粒子径とする。なお、写真に写る粒子の面積と同じ面積を有する円の直径を算出し、その直径の値を粒子の粒子径とみなす。
なお、測定対象となる粒子の種類が判明しており、その平均粒子径(例えば、熱膨張する粒子の場合には加熱された後の平均粒子径など)がカタログや仕様書などに記載されている場合は、記載されている値に基づき粒子の平均粒子径を求めることができる。
【0034】
本発明にかかる表面材のプリントが粒子を備えている場合、その粒子の種類は適宜選択でき、中実粒子であっても中空粒子であってもよいが、触感が向上した表面材を提供し易いことから、中空粒子を採用するのが好ましい。また、粒子の構成成分も適宜選択でき、例えば、シリカやアルミナなどの無機成分で構成された無機粒子や樹脂で構成された有機粒子、あるいは、樹脂と無機成分を含んだ構成を備える粒子であってもよい。
【0035】
ここでいう中空粒子とは、内部に空洞を有する粒子を意味する。中空粒子は中実粒子よりも粒子径方向へ変形し易いため、人は中空粒子を含有する表面材の主面を触った際に、人は硬質なものを触った際の触感ではなく弾性を有するものを触った際の触感を感じる。その結果、表面材の主面を触った際に柔軟性が感じられ易くなることに起因して、触感が向上した表面材を提供できる。
【0036】
粒子を構成する成分は適宜選択できる。粒子が中空粒子である場合、粒子径方向へ変形し易い中空粒子であるよう、中空粒子を構成する成分は樹脂を含んでいるのが好ましい。また、中空粒子として、樹脂と無機成分を含んだ構成を備える中空粒子を採用すると、分散媒に中空粒子が均一に分散してなるプリント液を調製し易くなる。その結果、当該プリント液を布帛へ付与することで、中空粒子が均一に分布してなるプリントを備えた、より品位が良く触感に優れる表面材を意図したとおり効率良く提供でき好ましい。
【0037】
中空粒子の具体例として、松本油脂製薬株式会社のMFL-81GTA、MFL-81GCA、MFL-SEVEN、MFL-HD30CA、MFL-HD60CA、MFL-100MCA、MFL-110CALなどを挙げることができる。また、加熱を受けることによって熱膨張する粒子を採用してもよい。このような粒子として、熱膨張して中空粒子となる、日本フィライト株式会社の920DU40、909DU80、930DU120などを挙げることができる。
【0038】
プリントは複数種類の粒子を含有していても良いが、より触感に優れる表面材を提供できるよう、意匠性向上や触感向上に寄与する粒子として上述した構成を備えた中空粒子のみを含有するプリントを備えた表面材であるのが好ましい。
【0039】
なお、プリントの露出する主面上のみに粒子が存在している態様や、プリントの内部および露出する主面上に粒子が存在している態様であることができる。
【0040】
布帛の一方の主面上に存在するプリントの態様は、当該主面全体をプリントが覆うように存在しているのではなく、部分的に存在しているのであれば適宜調整できる。例えば、平行線や格子状などのパターンを有する柄、ドット状のパターンを有する柄、革シボ模様など不定形状の柄などの態様であることができる。プリント柄一つあたりの大きさ(各プリント柄内に引くことができる線分の最大長さの平均値)は適宜調整でき、0.1~15mmであることができ、0.1~8mmであることができ、0.1~2.0mmであることができる。また、プリント柄同士の間隔(隣接する各プリント柄同士の最短距離の平均値)は適宜調整できるが、0.1~5mmであることができ、0.3~3mmであることができ、0.5~1.0mmであることができる。
【0041】
なお、規則的なパターンのプリント柄を有する表面材では、プリントが存在している部分を触った際に感じる触感とプリントが存在していない部分(布帛が露出している部分)を触った際に感じる触感の違いが、プリント柄が有する規則的なパターンの態様に同調していると人は判断し易くなる。その結果、表面材を触った際に感じる触感の良し悪しの評価へプリント柄の態様が意図せず影響を与え、触感に優れた表面材を意図せず提供し難くなる恐れがある。そのため、触感に優れた表面材を容易に提供できるよう、プリントを構成するプリント柄一つあたりの大きさとプリント柄同士の間隔が不規則なプリント(以降、不規則なプリント柄と称することがある)であるのが好ましい。このような不規則なプリント柄を備える表面材として、例えば、革シボ模様のプリントを備える表面材を挙げることができる。
【0042】
布帛の一方の主面に占める、当該主面上に部分的に存在しているプリント面積の百分率は、0%よりも多く100%未満である限り、触感に優れた表面材を提供できるよう適宜調整できる。具体的には、20~90%であることができ、30~80であることができ、40~70であることができ、50~60であることができる。特に、後述する実施例からも明らかとなったように、更に触感に優れた表面材を提供できることから、20~50%であるのが好ましい。
【0043】
なお、当該百分率は、以下の方法で算出できる。
1.表面材における前記プリントが存在している側の主面を30倍に拡大した顕微鏡写真を、当該主面の異なる場所ごとに撮影して、合計10枚の顕微鏡写真を用意する。なお、当該顕微鏡写真中に当該主面が、長辺10.2mm、短辺7.6mmの長方形以上の大きさで写るよう調整する。
2.各顕微鏡写真に写る当該主面上に長方形(長辺10.2mm、短辺7.6mm)を作図する。
3.当該長方形に囲まれた部分に存在しているプリント面積を、各々の顕微鏡写真ごとに算出する。
4.算出した各プリント面積の平均値を、以下の計算式へ代入して百分率を算出する。
当該百分率=100×(各プリント面積の平均値/77.52)
【0044】
本願出願人は、布帛の少なくとも一方の主面上にプリントが部分的に存在している表面材において、本願発明が規定する測定方法によって算出される、プリント柄の分布状態を定量的に評価可能なCV値が、0.38未満となるプリント柄を有する表面材であるときに、十分な滑らかさと十分な起毛感を共に備える触感に優れた表面材を提供できることを見出した。
【0045】
当該CV値が0に近い表面材であるほど、プリントを構成している各プリント柄が同等の大きさを有していると共に、プリント柄同士が等間隔をなし配置されている傾向にあることを意味する。なお、プリントを構成している各プリント柄が同じ大きさを有していると共に、プリント柄同士が等間隔をなし配置されている表面材は、当該CV値が0であって、十分な起毛感を感じ難くなるため触感に優れた表面材を提供することが困難となる恐れがある。そのため、CV値の下限値は0より大きいのが好ましく、0.03以上であるのが好ましい。
【0046】
一方、CV値が0.38以上であるなどCV値の大きい表面材であるほど、プリントを構成している各プリント柄の大きさとプリント柄同士の間隔は不規則な傾向にあることを意味する。本願出願人が検討したところ、CV値が大き過ぎると十分な滑らかさと十分な起毛感を共に備える触感に優れた表面材を提供できなくなることから、CV値は0.38未満であって、CV値の上限値は0.35以下であるのが好ましく、0.30以下であるのが好ましく、0.26以下であるのが好ましい。
【0047】
なお、当該CV値は、以下の方法で算出できる。
1.表面材における前記プリントが存在している側の主面を30倍に拡大した顕微鏡写真を、当該主面の異なる場所ごとに撮影して、合計10枚の顕微鏡写真を用意する。なお、当該顕微鏡写真中に当該主面が、長辺10.2mm、短辺7.6mmの長方形以上の大きさで写るよう調整する。
2.各顕微鏡写真に写る当該主面上に長方形(長辺10.2mm、短辺7.6mm)を作図する。
3.当該長方形に囲まれた部分に存在している、プリント面積を算出する。
4.当該長方形に囲まれた部分の面積(面積:77.52mm)に占める、当該プリント面積の割合を算出する。
5.当該10枚の顕微鏡写真ごとに、上述した項目3~4の方法を用いて当該割合を算出する、
6、算出された10点の当該割合の平均値(単位なし)と10点の当該割合の標準偏差(単位なし)を用いて、以下式に基づきCV値(単位なし)を算出する。
CV値=10点の当該割合の標準偏差/10点の当該割合の平均値
【0048】
プリントは一種類の樹脂を含有する層を備えていても、一種類あるいは複数種類の樹脂を含有する層を複数備えていても良く、具体的には、柄あるいは樹脂や含有物が同一あるいは異なるプリントを複数備えていても良い。
【0049】
プリントは布帛の一方の主面上に部分的に存在するのであれば、布帛の両主面上にプリントが部分的に存在していても良い。
なお、プリントは布帛の主面上にのみ部分的に存在する態様以外にも、プリントを構成する成分(樹脂など)の一部が布帛を構成する構成繊維間に侵入している態様であってもよい。
【0050】
表面材が備えるプリントの目付は適宜選択するが、例えば、2~50g/mであることができ、5~30g/mであることができる。
【0051】
表面材の、例えば、厚み、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。表面材の厚みは、0.5~5mmであることができ、1~3mmであることができ、1.1~1.9mmであることができる。また、布帛の目付は、例えば、50~500g/mであることができ、80~300g/mであることができ、100~250g/mであることができる。
【0052】
本発明の表面材は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を備えていてもよい。これらの構成部材は表面材における、プリントが存在している側の主面とは異なる主面側に積層して設けるのが好ましい。
【0053】
次に、本発明の表面材の製造方法について説明する。なお、上述の表面材について説明した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。本発明にかかる表面材の製造方法は適宜選択することができるが、一例として、
1.布帛を用意する工程、
2.プリントを構成可能な樹脂を溶媒あるいは分散媒に混合して、プリント液を調製する工程、
3.布帛の少なくとも一方の主面上に、部分的にプリント液を付与する工程、
4.プリント液を付与した布帛から、プリント液に含まれる溶媒あるいは分散媒を除去する工程、
を備える、表面材の製造方法を挙げることができる。
【0054】
工程1について説明する。布帛として、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の布帛を用意する。なお、布帛における構成繊維の繊度や繊維長、布帛の厚みや目付は上述した数値のものを採用することができる。
【0055】
工程2について説明する。分散媒の種類は適宜選択できるが、布帛の一方の主面上へ好適にプリント液を付与できるよう、プリントを構成可能な樹脂が溶解する溶媒を採用する、あるいは、プリントを構成可能な樹脂が溶解せず分散可能な分散媒を採用するのが好ましい。また、プリント液には樹脂以外にも、例えば、粒子(中実粒子や中空粒子)、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を溶解あるいは分散させ、含有させてもよい。特に、プリント液が顔料を含んでいると、意匠性に優れる表面材を提供でき好ましい。
【0056】
工程3について説明する。布帛の一方の主面上に、プリント液を付与する方法は適宜選択できるが、布帛の一方の主面にプリント液をそのまま、あるいは泡立てた状態で、スプレーやグラビアロールなどを用いて布帛の主面に部分的にプリント液を付与し、柄を形成するようにプリントする方法や捺染して付与する方法などを選択できる。なお、一種類のプリント液を付与する以外にも、複数種類のプリント液を付与しても良い。また、複数種類のプリント液を付与する場合には、各プリント液の付与態様(含有されている粒子の組成、柄、プリント液の組成)は異なっていても良い。
【0057】
工程4について説明する。溶媒あるいは分散媒を除去してプリントを備える布帛を調製する方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、溶媒あるいは分散媒を蒸発させ除去できる。溶媒あるいは分散媒を除去する際の加熱温度は分散媒が揮発可能な温度であると共に、布帛やプリントを構成する樹脂など構成部材の形状や機能などが意図せず低下することがないよう、加熱温度の上限を選択する。なお、布帛が繊維ウェブの場合には、本工程によって構成繊維同士を接着する(溶融したバインダで接着する、あるいは、構成繊維に含まれる熱可塑性成分を溶融させ接着する)ことで、不織布を形成してもよい。
【0058】
上述の表面材の製造方法では、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程などの、各種二次工程を備えた表面材の製造方法であってもよい。なお、これらの構成部材は表面材における、プリント側の主面とは異なる主面側に積層して備えることができる。また、リライアントプレス処理などの、表面を平滑とするための加圧処理工程へ供してもよい。
【実施例
【0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、後述するようにして調製した各表面材の滑らかさと起毛感(触感)、ならびに、毛羽立ちの発生し難さは、以下の方法を用いて評価した。
【0060】
(滑らかさと起毛感(触感)の評価方法)
表面材の一方の主面(プリントを備える表面材であれば、プリントが露出し存在している側の主面)を、人が触った際に感じる滑らかさと起毛感を点数評価した。なお、測定は各表面材につき同一のモニター10名が行った。
滑らかさ:感じる・・・2点、やや感じる・・・1点、ざらつきを感じ滑らかさを感じない・・・0点
起毛感:感じる・・・2点、やや感じる・・・1点、感じない・・・0点
次いで、滑らかさと起毛感の評価点について各々平均値を算出した。なお、滑らかさの平均値が高いほど滑らかさに優れる主面を有する表面材であることを意味し、起毛感の平均値が高いほど起毛感に優れるに優れる主面を有する表面材であることを意味する。
上述のようにして算出した滑らかさの平均値が1.0点以上1.5点未満であったものを滑らかさに富むとして「〇」と評価し、滑らかさの平均値が1.5点以上2.0点以下であったものをより滑らかさに富むとして「◎」と評価した。一方、滑らかさの平均値が1.0点未満であったものを滑らかさに劣るとして「×」と評価した。
また、上述のようにして算出した起毛感の平均値が1.0点以上1.5点未満であったものを起毛感に富むとして「〇」と評価し、起毛感の平均値が1.5点以上2.0点以下ものをより起毛感に富むとして「◎」と評価した。一方、起毛感の平均値が1.0点未満であったものを起毛感に劣るとして「×」と評価した。
【0061】
(毛羽立ちの発生し難さの評価方法)
JIS K7204:1999(プラスチック-摩耗輪による摩耗試験方法)に従い、各表面材の一方の主面(プリントを備える表面材であれば、プリントが露出し存在している側の主面)に、毛羽立ちが発生し易いか否かを評価した。なお、摩耗試験機、回転摩擦速度、使用摩耗輪、摩耗輪にかける荷重、摩耗回数は次の通りとした。
(1)摩耗試験機:ロータリーアブレージョンテスタ(株)東洋精機製作所
(2)回転摩擦速度:70r/min
(3)使用摩耗輪No:CS-10
(4)摩耗輪にかける荷重:2.45N
(5)摩耗回数:50回
試験後の表面材の主面における摩耗輪を処理した部分を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、級数が大きいほど毛羽立ちが発生し難い主面を備える表面材であることを意味する。
4級:毛羽立ちの発生は認められなかった。
3級:小さな毛羽立ちの発生が認められたが、毛羽立ち同士が連なることで生じる大きな毛羽立ちは認められなかった。
2級:小さな毛羽立ちの発生が認められ、更に、毛羽立ち同士が連なることで生じる大きな毛羽立ちの発生が部分的に認められた。
1級:小さな毛羽立ちの発生が認められ、更に、毛羽立ち同士が連なることで生じる大きな毛羽立ちが、円形を成すと共に当該部分全面に発生していることが認められた。
【0062】
(布帛の用意)
原着ポリエステル繊維(繊度:1.3dtex、繊維長:38mm)100%をカード機へ供することで開繊して繊維ウェブを形成した。次いで、繊維ウェブの片面からニードルパンチ処理を施して、ニードルパンチ不織布(目付:180g/m、厚み:1.5mm)を調製した。
【0063】
(プリント液の用意)
以下に記載の割合で配合したプリント液を用意した。
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):20質量部
・増粘剤(固形分質量:1.5質量%):25質量部
・消泡剤(固形分質量:14質量%):0.5質量部
・シリコン系樹脂エマルジョン(固形分質量:33.8質量%):3質量部
・顔料(固形分質量:3.8質量%):0.1質量部
・25%アンモニア水:1質量部
・水:50.4質量部
【0064】
(参考例1)
ニードルパンチ不織布を、そのまま表面材とした。
【0065】
(参考例2)
ニードルパンチ不織布の一方の主面上の全面に、プリント液を捺染した。その後、温度160℃のドライヤーで乾燥することで、ニードルパンチ不織布の一方の主面上全面に、プリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:205g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
なお、このようにして調製した表面材は、バインダ接着不織布の一方の主面上の全面にプリントが存在しており、当該主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率は100%であった。
【0066】
参考例の物性と、触感の評価方法へ供した結果を表1にまとめた。なお、備えていない構成については表中に「-」を記載した。また、表面材の主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率を、表中の「プリント面積百分率」欄に記載した。
【0067】
【表1】
【0068】
(実施例1)
ニードルパンチ不織布の一方の主面上に、表面に革シボ模様の凸部を有するシリンダを用いて、プリント液を部分的に捺染した。その後、温度160℃のドライヤーを用いて乾燥することで、ニードルパンチ不織布の一方の主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:185g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
なお、このようにして調製した表面材は、ニードルパンチ不織布の一方の主面上全体に革シボ模様のプリント柄で構成されたプリントを有しており、当該主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率は20%であった。また、このようにして調製した表面材が備えるプリントのCV値は、表2に記載する通りであった。
【0069】
(実施例2、比較例1~2)
シリンダの凸部の態様を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ニードルパンチ不織布の一方の主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:185g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
なお、このようにして調製した表面材は、ニードルパンチ不織布の一方の主面上全体に革シボ模様のプリント柄で構成されたプリントを有しており、当該主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率は20%であった。また、このようにして調製した表面材が備えるプリントのCV値は、表2に記載する通りであった。
【0070】
比較例ならびに実施例の物性と、触感の評価方法へ供した結果を表2にまとめた。なお、備えていない構成については表中に「-」を記載した。また、表面材の主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率を、表中の「プリント面積百分率」欄に記載した。
【0071】
【表2】
【0072】
(実施例3)
シリンダの凸部の態様を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ニードルパンチ不織布の一方の主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:188g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
なお、このようにして調製した表面材は、ニードルパンチ不織布の一方の主面上全体に革シボ模様のプリント柄で構成されたプリントを有しており、当該主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率は30%であった。また、このようにして調製した表面材が備えるプリントのCV値は、表3に記載する通りであった。
【0073】
(実施例4~5、比較例3)
シリンダの凸部の態様を変更したこと以外は、実施例3と同様にして、ニードルパンチ不織布の一方の主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:188g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
なお、このようにして調製した表面材は、ニードルパンチ不織布の一方の主面上全体に革シボ模様のプリント柄で構成されたプリントを有しており、当該主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率は30%であった。また、このようにして調製した表面材が備えるプリントのCV値は、表3に記載する通りであった。
【0074】
比較例ならびに実施例の物性と、触感の評価方法へ供した結果を表3にまとめた。なお、備えていない構成については表中に「-」を記載した。また、表面材の主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率を、表中の「プリント面積百分率」欄に記載した。
【0075】
【表3】
【0076】
(実施例6)
シリンダの凸部の態様を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ニードルパンチ不織布の一方の主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:190g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
なお、このようにして調製した表面材は、ニードルパンチ不織布の一方の主面上全体に革シボ模様のプリント柄で構成されたプリントを有しており、当該主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率は40%であった。また、このようにして調製した表面材が備えるプリントのCV値は、表4に記載する通りであった。
【0077】
(実施例7~8、比較例4)
シリンダの凸部の態様を変更したこと以外は、実施例6と同様にして、ニードルパンチ不織布の一方の主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリントを備えた表面材((目付:190g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
なお、このようにして調製した表面材は、ニードルパンチ不織布の一方の主面上全体に革シボ模様のプリント柄で構成されたプリントを有しており、当該主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率は40%であった。また、このようにして調製した表面材が備えるプリントのCV値は、表4に記載する通りであった。
【0078】
比較例ならびに実施例の物性と、触感の評価方法へ供した結果を表4にまとめた。なお、備えていない構成については表中に「-」を記載した。また、表面材の主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率を、表中の「プリント面積百分率」欄に記載した。
【0079】
【表4】
【0080】
(実施例9)
シリンダの凸部の態様を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ニードルパンチ不織布の一方の主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:193g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
なお、このようにして調製した表面材は、ニードルパンチ不織布の一方の主面上全体に革シボ模様のプリント柄で構成されたプリントを有しており、当該主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率は50%であった。また、このようにして調製した表面材が備えるプリントのCV値は、表5に記載する通りであった。
【0081】
(実施例10~11、比較例5)
シリンダの凸部の態様を変更したこと以外は、実施例9と同様にして、ニードルパンチ不織布の一方の主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:193g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
なお、このようにして調製した表面材は、ニードルパンチ不織布の一方の主面上全体に革シボ模様のプリント柄で構成されたプリントを有しており、当該主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率は50%であった。また、このようにして調製した表面材が備えるプリントのCV値は、表5に記載する通りであった。
【0082】
比較例ならびに実施例の物性と、触感の評価方法へ供した結果を表5にまとめた。なお、備えていない構成については表中に「-」を記載した。また、表面材の主面に占める当該主面上に存在しているプリント面積の百分率を、表中の「プリント面積百分率」欄に記載した。
【0083】
【表5】
【0084】
本発明によって、プリントが部分的に存在していることによって意匠性に富むと共に、十分な滑らかさと十分な起毛感を共に備える触感に優れた表面材を提供できることが判明した。
【0085】
更に、実施例1~2と比較例1~2を比較した結果、実施例3~5と比較例3を比較した結果、実施例6~8と比較例4を比較した結果、実施例9~11と比較例5を比較した結果から、布帛の少なくとも一方の主面上にプリントが部分的に存在していると共にCV値が0.38未満であることによって、表面材における当該プリントが部分的に存在している主面では、毛羽立ちが発生し難くなることが判明した。
そのため、本発明によって、毛羽立ちが発生し難いことで触感の低下が防止された、更に触感に優れた表面材を提供できるという、効果も発揮されることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の表面材は、各種内装材を調製可能な表面材である。特に、車両の天井、ピラーガーニッシュ、ドア、インストルメントパネル、ステアリングホイール、シフトレバー、コンソールボックス、トノカバー、ラゲッジフロア、ラゲッジサイドなどの内装材を調製できる、表面材である。