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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20241204BHJP
   B60K 17/16 20060101ALI20241204BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K17/16 E
B60K17/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021158216
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048737
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高橋 望
(72)【発明者】
【氏名】花井 孝佳
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲平
(72)【発明者】
【氏名】三治 広明
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第9410610(US,B1)
【文献】特開2019-218989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0282909(US,A1)
【文献】特開2021-30796(JP,A)
【文献】特開2012-60785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B60K 17/16
B60K 17/12
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ及びロータを備え、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記ロータに駆動連結された入力部材と、
それぞれが前記車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
前記入力部材の側から伝達される回転を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
前記回転電機を制御するインバータ装置と、
前記回転電機、前記入力部材、前記差動歯車機構、及び前記インバータ装置を収容するケースと、を備え、
前記ケースは、油が貯留される油貯留部を備え、
前記インバータ装置は、前記回転電機よりも上側であって、上下方向に沿う上下方向視で前記回転電機と重複する位置に配置され、
前記差動歯車機構は、当該差動歯車機構の入力要素である差動入力ギヤを備え、
前記差動入力ギヤは、当該差動入力ギヤの少なくとも一部が前記油貯留部内に位置するように、前記ロータの回転軸心である第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記第1軸は、前記第2軸よりも下側に配置され、
前記ロータの下端が、前記差動入力ギヤの下端よりも上側に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記ケースにおける前記油の循環状態が定常状態となっている定常循環状態において、前記油貯留部における前記油の上面である油面の位置が、前記差動入力ギヤの下端よりも上側であって、前記ロータの下端よりも下側である、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記ステータは、前記ロータに対して前記第1軸の径方向における外側に配置され、
前記ステータの外径は、前記差動入力ギヤの外径よりも小さい、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記回転電機と前記インバータ装置とを電気的に接続する端子台を更に備え、
前記ステータは、円筒状のステータコアを備え、
前記上下方向視で前記第1軸に直交する方向を幅方向として、
前記端子台の前記幅方向の配置領域の全体が、前記ステータコアの前記幅方向の配置領域と重なっている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記ステータコアは、円筒状の本体部と、前記本体部の外周面から前記第1軸の径方向の外側に突出する3つの突出部を備え、
3つの前記突出部は、互いに前記本体部の周方向に等間隔で配置され、前記回転電機を支持する支持部材に固定され、
3つの前記突出部のうちの最も上側に位置するものを上側突出部とし、
前記上側突出部は、前記本体部の前記外周面の上端よりも上側に突出するように配置され、
前記端子台の下端が、前記本体部の前記外周面の上端よりも上側であって、前記上側突出部の上端よりも下側に配置されている、請求項4に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記回転電機と前記インバータ装置とを電気的に接続する端子台を更に備え、
前記ステータは、円筒状のステータコアを備え、
前記端子台の全体が、前記ステータコアに対して軸方向の一方側に配置されている、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記ステータは、前記ステータコアに対して前記軸方向の一方側に突出したコイルエンド部を更に備え、
前記端子台の前記軸方向の配置領域の全体が、前記コイルエンド部の前記軸方向の配置領域と重なっている、請求項6に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記差動入力ギヤは、前記上下方向視で、前記インバータ装置と重複しないように配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
前記上下方向視で前記第1軸に直交する方向を幅方向として、
前記第2軸は、前記回転電機の前記幅方向の配置領域と重ならないように配置されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、当該回転電機のロータに駆動連結された入力部材と、それぞれが車輪に駆動連結される一対の出力部材と、入力部材の側から伝達される回転を一対の出力部材に分配する差動歯車機構と、回転電機を制御するインバータ装置と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置(100)では、差動歯車機構(5)は、当該差動歯車機構の入力要素である差動入力ギヤ(51)を備えている。この差動入力ギヤ(51)は、比較的外径が大きい。そこで、上記の車両用駆動装置(100)では、差動歯車機構(5)の回転軸心(A3)よりも上側であって、軸方向(L)に沿う軸方向視で差動入力ギヤ(51)と重複する位置にインバータ装置(7)を配置している。こうして、車両用駆動装置(100)の上下方向(V)の寸法を小さく抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/202963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用駆動装置(100)では、当該車両用駆動装置の上下方向(V)の寸法を小さく抑えつつ、インバータ装置(7)と回転電機(1)との干渉を回避するため、インバータ装置(7)を回転電機(1)の回転軸心(A1)よりも、上下方向視で軸方向(L)に直交する方向である幅方向(D)にずらして配置している。そのため、車両用駆動装置(100)の幅方向(D)の寸法を小さく抑えることが難しかった。
【0006】
そこで、回転電機、差動歯車機構、及びインバータ装置を備えた構成であっても、上下方向の寸法に加えて、幅方向の寸法も小さく抑えることができる車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
ステータ及びロータを備え、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記ロータに駆動連結された入力部材と、
それぞれが前記車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
前記入力部材の側から伝達される回転を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
前記回転電機を制御するインバータ装置と、
前記回転電機、前記入力部材、前記差動歯車機構、及び前記インバータ装置を収容するケースと、を備え、
前記ケースは、油が貯留される油貯留部を備え、
前記インバータ装置は、前記回転電機よりも上側であって、上下方向に沿う上下方向視で前記回転電機と重複する位置に配置され、
前記差動歯車機構は、当該差動歯車機構の入力要素である差動入力ギヤを備え、
前記差動入力ギヤは、当該差動入力ギヤの少なくとも一部が前記油貯留部内に位置するように、前記ロータの回転軸心である第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記第1軸は、前記第2軸よりも下側に配置され、
前記ロータの下端が、前記差動入力ギヤの下端よりも上側に配置されている点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、ロータの回転軸心である第1軸が、差動歯車機構の回転軸心である第2軸よりも下側に配置されている。そのため、回転電機よりも上側であって、上下方向に沿う上下方向視で回転電機と重複する位置に、インバータ装置が配置された構成であっても、車両用駆動装置の上下方向の寸法を小さく抑え易い。また、このような配置により、上下方向視で第1軸に直交する方向である幅方向におけるインバータ装置の配置領域を第1軸から比較的近い領域内に収めることができる。したがって、回転電機、差動歯車機構、及びインバータ装置を備えた構成であっても、上下方向の寸法に加えて、幅方向の寸法も小さく抑えることができる。
また、本特徴構成によれば、差動入力ギヤの少なくとも一部が、油が貯留される油貯留部内に位置している。そして、ロータの下端が、差動入力ギヤの下端よりも上側に配置されている。これにより、ロータによる油の撹拌抵抗を低減しつつ、差動入力ギヤにより油を掻き上げて、回転電機等の供給対象に油を供給することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
図2】実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図3】実施形態に係る車両用駆動装置における軸方向視での各要素の位置関係を示す図
図4】実施形態に係る車両用駆動装置における上下方向視での各要素の位置関係を示す図
図5】回転電機と端子台との軸方向視での位置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、ステータ11及びロータ12を備えた回転電機1と、入力部材2と、一対の出力部材3と、差動歯車機構4と、インバータ装置10と、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、カウンタギヤ機構5と、ケース9と、を更に備えている。
【0011】
回転電機1は、第1軸X1上に配置されている。第1軸X1は、ロータ12の回転軸心である。本実施形態では、入力部材2も、第1軸X1上に配置されている。差動歯車機構4は、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。本実施形態では、一対の出力部材3も、第2軸X2上に配置されている。また、本実施形態では、カウンタギヤ機構5は、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置されている。本例では、上記の軸X1~X3は、互いに平行に配置されている。
【0012】
以下の説明では、上記の軸X1~X3に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。本実施形態では、軸方向Lにおいて、入力部材2に対して回転電機1が配置される側を軸方向第1側L1とし、その反対側を軸方向第2側L2としている。また、上記の軸X1~X3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合や、どの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0013】
図1に示すように、ケース9は、回転電機1、入力部材2、差動歯車機構4、及びインバータ装置10を収容している。本実施形態では、ケース9は、一対の出力部材3及びカウンタギヤ機構5も収容している。なお、一対の出力部材3は、それらの一部がケース9の外部に露出した状態で、ケース9に収容されている。
【0014】
ケース9の内部には、第1収容部A1と、第2収容部A2と、第3収容部A3と、第4収容部A4と、が形成されている。本実施形態では、第1収容部A1は、回転電機1が収容される空間である。そして、第2収容部A2は、入力部材2及びカウンタギヤ機構5が収容される空間である。また、第3収容部A3は、一対の出力部材3及び差動歯車機構4が収容される空間である。また、第4収容部A4は、インバータ装置10が収容される空間である。
【0015】
本実施形態では、ケース9は、隔壁部91と、第1周壁部92aと、第1側壁部92bと、第2周壁部93aと、第2側壁部93bと、第3周壁部94aと、第3側壁部94bと、第4側壁部94cと、収容壁部95aと、蓋部95bと、を備えている。
【0016】
隔壁部91は、第1収容部A1と第2収容部A2とを区画するように形成されている。本実施形態では、隔壁部91は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。つまり、隔壁部91は、第1収容部A1と第2収容部A2とを軸方向Lに区画している。
【0017】
第1周壁部92aは、回転電機1の径方向Rの外側を覆うように形成されている。第1側壁部92bは、回転電機1の軸方向第1側L1を覆うように形成されている。本実施形態では、第1周壁部92aは、軸方向第1側L1が開口する筒状に形成されている。そして、第1周壁部92aの軸方向第1側L1の開口が、第1側壁部92bによって塞がれている。一方、第1周壁部92aにおける回転電機1に対して軸方向第2側L2の部分に、隔壁部91が一体的に設けられている。本例では、隔壁部91と、第1周壁部92aと、第3周壁部94aと、第3側壁部94bと、収容壁部95aとが一体的に形成され、第1ケース部9Aを構成している。そして、第1側壁部92bを備えた第2ケース部9Bが、第1ケース部9Aに対して軸方向第1側L1から接合されている。
【0018】
第2周壁部93aは、入力部材2及びカウンタギヤ機構5の径方向Rの外側を覆うように形成されている。第2側壁部93bは、入力部材2及びカウンタギヤ機構5の軸方向第2側L2を覆うように形成されている。本実施形態では、第2周壁部93aにおける入力部材2及びカウンタギヤ機構5に対して軸方向第2側L2の部分に、第2側壁部93bが一体的に設けられている。本例では、第2周壁部93aと第2側壁部93bと第4側壁部94cとが一体的に形成され、第3ケース部9Cを構成している。そして、この第3ケース部9Cが、第1ケース部9Aに対して軸方向第2側L2から接合されている。これにより、第2周壁部93aの軸方向第1側L1の開口が、第1ケース部9A(隔壁部91)によって塞がれている。
【0019】
第3周壁部94aは、一対の出力部材3及び差動歯車機構4の径方向Rの外側を覆うように形成されている。第3側壁部94bは、差動歯車機構4の軸方向第1側L1を覆うように形成されている。第4側壁部94cは、差動歯車機構4の軸方向第2側L2を覆うように形成されている。本実施形態では、第3周壁部94aと第3側壁部94bとは、共に第1ケース部9Aに一体的に形成されている。そして、第3周壁部94aの軸方向第2側L2の開口が、第4側壁部94cによって塞がれている。上記の通り、第4側壁部94cは、第2周壁部93a及び第2側壁部93bと一体的に形成されている。
【0020】
本実施形態では、第1収容部A1は、隔壁部91、第1周壁部92a、及び第1側壁部92bによって形成されている。つまり、ケース9の内部における隔壁部91と第1周壁部92aと第1側壁部92bとによって囲まれた空間が、第1収容部A1として形成されている。
【0021】
また、本実施形態では、第2収容部A2は、隔壁部91、第2周壁部93a、及び第2側壁部93bによって形成されている。つまり、ケース9の内部における隔壁部91と第2周壁部93aと第2側壁部93bとによって囲まれた空間が、第2収容部A2として形成されている。また、本実施形態では、第3収容部A3は、第3周壁部94a、第3側壁部94b、及び第4側壁部94cによって形成されている。つまり、ケース9の内部における第3周壁部94aと第3側壁部94bと第4側壁部94cとによって囲まれた空間が、第3収容部A3として形成されている。また、本実施形態では、第2収容部A2と第3収容部A3とは、互いに連通するように形成されている。
【0022】
また、本実施形態では、第4収容部A4は、収容壁部95a及び蓋部95bによって形成されている。つまり、ケース9の内部における収容壁部95aと蓋部95bとによって囲まれた空間が、第4収容部A4として形成されている。
【0023】
収容壁部95aは、インバータ装置10の側方を囲む筒状に形成されている。本実施形態では、収容壁部95aは、インバータ装置10を第4収容部A4に対して出し入れするための開口が形成されるように、第1周壁部92a及び第2周壁部93aから、車両搭載状態における上側に向かって延在している。ここで、「車両搭載状態」とは、車両用駆動装置100が車両に搭載された状態を指す。なお、上記の通り、収容壁部95aは、隔壁部91、第1周壁部92a、第3周壁部94a、及び第3側壁部94bと一体的に形成されている。
【0024】
蓋部95bは、収容壁部95aにおける上記の開口を塞ぐように形成されている。本実施形態では、蓋部95bは、収容壁部95aに対して着脱可能に構成されている。
【0025】
回転電機1は、車輪WH(図2参照)の駆動力源として機能する。回転電機1は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、回転電機1は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示を省略)と電気的に接続されている。そして、回転電機1は、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、回転電機1は、車輪WHの側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0026】
回転電機1のステータ11は、円筒状のステータコア111を備えている。ステータコア111は、非回転部材に固定されている。本実施形態では、ステータコア111は、非回転部材としてのケース9の第1周壁部92aに固定されている。回転電機1のロータ12は、円筒状のロータコア121を備えている。ロータコア121は、ステータコア111に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、ロータ12は、ロータコア121と一体的に回転するように連結されたロータ軸122を更に備えている。ロータ軸122は、第1軸X1に沿って延在するように形成されている。本実施形態では、ロータ軸122は、第1軸X1を軸心とする筒状に形成されている。
【0027】
本実施形態では、回転電機1はインナロータ型の回転電機である。つまり、ステータ11が、ロータ12に対して径方向Rの外側に配置されている。そのため、ステータコア111が、ロータコア121に対して径方向Rの外側に配置されている。また、ロータ軸122が、ロータコア121に対して径方向Rの内側に配置されている。
【0028】
また、本実施形態では、回転電機1は回転界磁型の回転電機である。そのため、ステータコア111には、ステータコイルが巻装されている。本実施形態では、ステータコイルは、ステータコア111に対して軸方向第1側L1に突出した第1コイルエンド部112と、ステータコア111に対して軸方向第2側L2に突出した第2コイルエンド部113とが形成されるように、ステータコア111に巻装されている。また、図示は省略するが、ロータコア121には、永久磁石が設けられている。
【0029】
入力部材2は、回転電機1のロータ12に駆動連結されている。本実施形態では、入力部材2は、入力ギヤ21と、入力軸22と、を備えている。
【0030】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0031】
入力ギヤ21は、入力軸22と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、入力ギヤ21は、入力軸22と一体的に形成されている。
【0032】
入力軸22は、第1軸X1に沿って延在するように形成されている。本実施形態では、入力軸22は、ケース9の隔壁部91を軸方向Lに貫通し、ロータ軸122と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、入力軸22における軸方向第1側L1の端部が、ロータ軸122における軸方向第2側L2の端部に対して、径方向Rの内側に配置されている。そして、それらの部分が、スプライン係合によって一体的に回転するように互いに連結されている。
【0033】
カウンタギヤ機構5は、入力ギヤ21に噛み合うカウンタ入力ギヤ51と、当該カウンタ入力ギヤ51と一体的に回転するカウンタ出力ギヤ52と、それらのギヤ51,52同士を連結するカウンタ軸53と、を備えている。
【0034】
カウンタ入力ギヤ51及びカウンタ出力ギヤ52は、カウンタ軸53を介して一体的に回転するように連結されている。カウンタ軸53は、第3軸X3に沿って延在するように形成されている。図1に示す例では、カウンタ入力ギヤ51は、スプライン係合によってカウンタ軸53に連結されている。そして、カウンタ出力ギヤ52は、カウンタ軸53と一体的に形成されている。また、図1に示す例では、カウンタ出力ギヤ52は、カウンタ入力ギヤ51よりも小径に形成されている。そして、カウンタ出力ギヤ52は、カウンタ入力ギヤ51よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0035】
差動歯車機構4は、入力部材2の側から伝達される回転を一対の出力部材3に分配するように構成されている。本実施形態では、差動歯車機構4は、当該差動歯車機構4の入力要素である差動入力ギヤ41を備えている。そのため、差動歯車機構4は、差動入力ギヤ41の回転を一対の出力部材3に分配する。
【0036】
本実施形態では、差動歯車機構4は、差動ケース42と、一対のピニオンギヤ43と、一対のサイドギヤ44と、を更に備えている。ここでは、一対のピニオンギヤ43及び一対のサイドギヤ44は、いずれも傘歯車である。
【0037】
差動ケース42は、一対のピニオンギヤ43及び一対のサイドギヤ44を収容する中空の部材である。差動ケース42は、差動入力ギヤ41と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、差動入力ギヤ41が、ボルト締結によって差動ケース42に連結されている。
【0038】
一対のピニオンギヤ43は、第2軸X2を基準とした径方向Rに間隔を空けて、互いに対向するように配置されている。そして、一対のピニオンギヤ43は、差動ケース42と一体的に回転するように支持されたピニオンシャフト43aに取り付けられている。一対のピニオンギヤ43のそれぞれは、ピニオンシャフト43aを中心として回転(自転)可能、かつ、第2軸X2を中心として回転(公転)可能に構成されている。
【0039】
一対のサイドギヤ44は、一対のピニオンギヤ43に噛み合っている。一対のサイドギヤ44は、第2軸X2を回転軸心として回転するように配置されている。一対のサイドギヤ44は、互いに軸方向Lに間隔を空けて、ピニオンシャフト43aを挟んで対向するように配置されている。
【0040】
一対の出力部材3のそれぞれは、車輪WH(図2参照)に駆動連結されている。本実施形態では、一対の出力部材3のそれぞれは、サイドギヤ44と一体的に回転するように連結されている。また、本実施形態では、一対の出力部材3の一方が第3側壁部94bを軸方向Lに貫通し、一対の出力部材3の他方が第4側壁部94cを軸方向Lに貫通している。そして、一対の出力部材3のそれぞれは、車輪WHに駆動連結されたドライブシャフトDSと一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、一対の出力部材3のそれぞれは、第2軸X2を軸心とする筒状に形成されている。そして、一対の出力部材3のそれぞれに対して径方向Rの内側にドライブシャフトDSが配置された状態で、それらがスプライン係合によって互いに連結されている。
【0041】
インバータ装置10は、回転電機1を制御するように構成されている。本実施形態では、インバータ装置10は、回転電機1及び上記の蓄電装置と電気的に接続され、当該蓄電装置の直流と回転電機1の複数相(ここでは3相)の交流との間で電力を変換する装置である。本例では、インバータ装置10は、インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子を有するスイッチング素子ユニット、上記インバータ回路の直流電源側の電圧の平滑化を行う平滑コンデンサ、及び上記インバータ回路の制御を行う制御基板を備えている。
【0042】
以下の説明では、車両搭載状態における車両用駆動装置100の上下方向を「上下方向V」とする。そして、「上下方向V」における上側及び下側を、それぞれ、単に「上側」及び「下側」とする。また、上下方向Vに沿う上下方向視で、第1軸X1に直交する方向を「幅方向W」とする。
【0043】
図3に示すように、ケース9は、油Fが貯留される油貯留部9aを備えている。本実施形態では、油貯留部9aは、ケース9の下部の内面によって囲まれた空間である。差動入力ギヤ41は、当該差動入力ギヤ41の少なくとも一部が油貯留部9a内に位置するように配置されている。
【0044】
ロータ12の回転軸心である第1軸X1は、差動歯車機構4の回転軸心である第2軸X2よりも下側に配置されている。図3に示す例では、カウンタギヤ機構5の回転軸心である第3軸X3が、第1軸X1よりも上側であって、第2軸X2よりも下側に配置されている。つまり、幅方向Wに沿って第2軸X2を通る仮想線である第2軸線Lx2、幅方向Wに沿って第3軸X3を通る仮想線である第3軸線Lx3、及び幅方向Wに沿って第1軸X1を通る仮想線である第1軸線Lx1が、当該記載の順に上側から配置されている。
【0045】
インバータ装置10は、回転電機1よりも上側に配置されている。図3に示す例では、インバータ装置10は、回転電機1、入力部材2、差動歯車機構4、及びカウンタギヤ機構5よりも上側に配置されている。
【0046】
また、図4に示すように、インバータ装置10は、上下方向Vに沿う上下方向視で、回転電機1と重複するように配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0047】
以上のように、車両用駆動装置100は、
ステータ11及びロータ12を備え、車輪WHの駆動力源として機能する回転電機1と、
ロータ12に駆動連結された入力部材2と、
それぞれが車輪WHに駆動連結される一対の出力部材3と、
入力部材2の側から伝達される回転を一対の出力部材3に分配する差動歯車機構4と、
回転電機1を制御するインバータ装置10と、
回転電機1、入力部材2、差動歯車機構4、及びインバータ装置10を収容するケース9と、を備え、
ケース9は、油Fが貯留される油貯留部9aを備え、
インバータ装置10は、回転電機1よりも上側であって、上下方向Vに沿う上下方向視で回転電機1と重複する位置に配置され、
差動歯車機構4は、当該差動歯車機構4の入力要素である差動入力ギヤ41を備え、
差動入力ギヤ41は、当該差動入力ギヤ41の少なくとも一部が油貯留部9a内に位置するように、ロータ12の回転軸心である第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置され、
第1軸X1は、第2軸X2よりも下側に配置され、
ロータ12の下端が、差動入力ギヤ41の下端よりも上側に配置されている。
【0048】
この構成によれば、ロータ12の回転軸心である第1軸X1が、差動歯車機構4の回転軸心である第2軸X2よりも下側に配置されている。そのため、回転電機1よりも上側であって、上下方向Vに沿う上下方向視で回転電機1と重複する位置に、インバータ装置10が配置された構成であっても、車両用駆動装置100の上下方向Vの寸法を小さく抑え易い。また、このような配置により、上下方向視で第1軸X1に直交する方向である幅方向Wにおけるインバータ装置10の配置領域を第1軸X1から比較的近い領域内に収めることができる。したがって、回転電機1、差動歯車機構4、及びインバータ装置10を備えた構成であっても、上下方向Vの寸法に加えて、幅方向Wの寸法も小さく抑えることができる。
また、本構成によれば、差動入力ギヤ41の少なくとも一部が、油Fが貯留される油貯留部9a内に位置している。そして、ロータ12の下端が、差動入力ギヤ41の下端よりも上側に配置されている。これにより、ロータ12による油Fの撹拌抵抗を低減しつつ、差動入力ギヤ41により油Fを掻き上げて、回転電機1等の供給対象に油Fを供給することが容易となる。
【0049】
図4に示すように、本実施形態では、差動入力ギヤ41は、上下方向Vに沿う上下方向視で、インバータ装置10と重複しないように配置されている。図4に示す例では、入力ギヤ21、カウンタ入力ギヤ51、及びカウンタ出力ギヤ52も、上下方向Vに沿う上下方向視で、インバータ装置10と重複しないように配置されている。
【0050】
この構成によれば、インバータ装置10と差動歯車機構4とを上下方向Vに近付けて配置し易いため、差動入力ギヤ41が上下方向視でインバータ装置10と重複するように配置された構成と比べて、車両用駆動装置100の上下方向Vの寸法を小さくし易い。
【0051】
図3に示すように、本実施形態では、ケース9における油Fの循環状態が定常状態となっている定常循環状態において、油面位置FLは、幅方向Wに沿って差動入力ギヤ41の下端を通る仮想線である差動下端線Lb2よりも上側に位置する。つまり、定常循環状態において、ケース9に貯留された油の上面である油面の位置(油面位置FL)が、差動入力ギヤ41の下端よりも上側である。そのため、本実施形態では、差動入力ギヤ41の回転に伴い、ケース9に貯留された油Fが差動入力ギヤ41により掻き上げられる。
【0052】
更に、本実施形態では、定常循環状態において、油面位置FLは、幅方向Wに沿ってロータ12の下端を通る仮想線であるロータ下端線Lb12よりも下側に位置する。つまり、定常循環状態において、ケース9に貯留された油の上面である油面の位置(油面位置FL)が、ロータ12の下端よりも下側である。
【0053】
ここで、「定常循環状態」とは、ケース9における油Fの循環状態が定常状態となっている状態である。具体的には、「定常循環状態」とは、ケース9に貯留された油Fを掻き上げる差動入力ギヤ41が回転中であって、油面位置FLが安定した状態である。なお、ケース9に貯留された油Fを汲み上げて回転電機1等に供給するオイルポンプが設けられている場合には、当該オイルポンプが動作中である状態も「定常循環状態」に含まれる。基本的には、車両が走行中(回転電機1の回転中)に「定常循環状態」となるが、車両(回転電機1、車輪WH)が停止中に「定常循環状態」となることも排除するものではない。
【0054】
このように、本実施形態では、ケース9における油Fの循環状態が定常状態となっている定常循環状態において、油面位置FLが、差動入力ギヤ41の下端よりも上側であって、ロータ12の下端よりも下側である。
【0055】
この構成によれば、車両用駆動装置100が搭載された車両の走行中に、ロータ12による油Fの撹拌抵抗を低減しつつ、差動入力ギヤ41により油Fを掻き上げて、回転電機1等の供給対象に油Fを供給することができる。
【0056】
図3に示すように、本実施形態では、ステータコア111は、円筒状の本体部114と、当該本体部114の外周面114aから径方向Rの外側に突出する3つの突出部115と、を備えている。なお、図3においては、説明の便宜上、第1コイルエンド部112の図示を省略している。図5についても同様である。
【0057】
本実施形態では、ステータ11の外径は、差動入力ギヤ41の外径よりも小さい。図3に示す例では、カウンタギヤ機構5のカウンタ入力ギヤ51の外径が、ステータ11の外径及び差動入力ギヤ41の外径よりも小さい。ここで、ステータ11の外径は、本体部114の外周面114aの径方向Rの寸法である。ステータ11の外径は、幅方向Wに沿って本体部114の外周面114aの上端を通る仮想線であるステータ上端線Lu1と、幅方向Wに沿って本体部114の外周面114aの下端を通る仮想線であるステータ下端線Lb11との上下方向Vの距離に一致する。そして、差動入力ギヤ41の外径は、幅方向Wに沿って差動入力ギヤ41の上端を通る仮想線である差動上端線Lu2と、幅方向Wに沿って差動入力ギヤ41の下端を通る仮想線である差動下端線Lb2との上下方向Vの距離に一致する。また、カウンタ入力ギヤ51の外径は、幅方向Wに沿ってカウンタ入力ギヤ51の上端を通る仮想線であるカウンタ上端線Lu3と、幅方向Wに沿ってカウンタ入力ギヤ51の下端を通る仮想線であるカウンタ下端線Lb3との上下方向Vの距離に一致する。
【0058】
図3に示す例では、差動上端線Lu2、ステータ上端線Lu1、及びカウンタ上端線Lu3が、当該記載の順に上側から配置されている。また、差動下端線Lb2、ステータ下端線Lb11、及びカウンタ下端線Lb3が、当該記載の順に下側から配置されている。
【0059】
このように、本実施形態では、ステータ11は、ロータ12に対して第1軸X1の径方向Rにおける外側に配置され、
ステータ11の外径は、差動入力ギヤ41の外径よりも小さい。
【0060】
この構成によれば、回転電機1よりも上側であって、上下方向Vに沿う上下方向視で回転電機1と重複する位置に、インバータ装置10を配置するためのスペースを確保し易い。したがって、車両用駆動装置100の上下方向Vの寸法を小さく抑えることができる。
【0061】
本実施形態では、差動歯車機構4の回転軸心である第2軸X2は、回転電機1の幅方向Wの配置領域と重ならないように配置されている。図3に示す例では、第2軸X2は、カウンタギヤ機構5の幅方向Wの配置領域にも重ならないように配置されている。また、カウンタギヤ機構5の回転軸心である第3軸X3は、回転電機1の幅方向Wの配置領域と重なっている。なお、図3に示す例では、幅方向Wにおける、第1軸X1と第2軸X2との間に、第3軸X3が配置されている。
【0062】
このように、本実施形態では、上下方向Vに沿う上下方向視で第1軸X1に直交する方向を幅方向Wとして、
第2軸X2は、回転電機1の幅方向Wの配置領域と重ならないように配置されている。
【0063】
一般的に、差動歯車機構4の回転軸心である第2軸X2が回転電機1の幅方向Wの配置領域と重なる構成では、ロータ12に対して径方向Rの内側に第2軸X2が配置されることが多い。このような構成では、ロータ12の回転軸心である第1軸X1を第2軸X2に対して下側に離間させて配置することは難しい。しかしながら、本構成によれば、第2軸X2が回転電機1に対して幅方向Wの外側に配置されているため、第1軸X1を第2軸X2に対して下側に離間させて配置することが容易となっている。
【0064】
本実施形態では、3つの突出部115は、互いに本体部114の周方向に等間隔で配置されている。図3に示す例では、3つの突出部115は、互いに上下方向Vの異なる位置に配置されている。以下の説明では、3つの突出部115のうちの最も上側に位置するものを「上側突出部115u」とする。そして、3つの突出部115のうちの最も下側に位置するものを「下側突出部115b」とする。また、3つの突出部115のうちの上下方向Vの中間に位置するものを「中間突出部115m」とする。
【0065】
また、3つの突出部115は、回転電機1を支持する支持部材S(図1参照)に固定されている。図1に示すように、本実施形態では、支持部材Sは、ケース9の第1周壁部92aから径方向Rの内側に突出するように形成された固定部92cである。本例では、3つの突出部115が固定部92cに対して軸方向第1側L1から当接した状態で、それらがボルト締結によって互いに連結されている。
【0066】
図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、回転電機1とインバータ装置10とを電気的に接続する端子台6を更に備えている。
【0067】
端子台6は、回転電機1の第1コイルエンド部112と電気的に接続された導体61を備えている。本実施形態では、導体61は、ケース9の第1周壁部92aを貫通し、第1収容部A1と第4収容部A4とに亘って配置されている。そして、導体61における第1収容部A1に位置する部分は、コイル接続部材112aを介して、第1コイルエンド部112と電気的に接続されている。また、導体61における第4収容部A4に位置する部分は、インバータ接続部材10aを介して、インバータ装置10と電気的に接続されている。
【0068】
本実施形態では、導体61は、絶縁部材7を介してケース9の第1周壁部92aに固定されている。絶縁部材7は、電気的な絶縁性を有する部材により構成されている。そのため、絶縁部材7により、導体61とケース9との間で電気的な絶縁性が確保されている。
【0069】
本実施形態では、端子台6の全体が、ステータコア111に対して軸方向第1側L1に配置されている。言い換えると、端子台6の軸方向Lの配置領域の全体が、ステータコア111の軸方向Lの配置領域と重なっていない。図1に示す例では、導体61の全体が、ステータコア111に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0070】
このように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、回転電機1とインバータ装置10とを電気的に接続する端子台6を更に備え、
ステータ11は、円筒状のステータコア111を備え、
端子台6の全体が、ステータコア111に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0071】
この構成によれば、車両用駆動装置100は、端子台6がステータコア111に干渉することを回避しつつ、端子台6を第1軸X1に近付けて配置することができる。したがって、車両用駆動装置100の上下方向Vの寸法を小さく抑えることができる。
【0072】
本実施形態では、端子台6の軸方向Lの配置領域の全体が、第1コイルエンド部112の軸方向Lの配置領域と重なっている。図1に示す例では、導体61の軸方向Lの配置領域の全体が、第1コイルエンド部112の軸方向Lの配置領域と重なっている。
【0073】
このように、本実施形態では、端子台6の全体が、ステータコア111に対して軸方向第1側L1に配置された構成において、
ステータ11は、ステータコア111に対して軸方向第1側L1に突出した第1コイルエンド部112を更に備え、
端子台6の軸方向Lの配置領域の全体が、第1コイルエンド部112の軸方向Lの配置領域と重なっている。
【0074】
この構成によれば、端子台6の軸方向Lの配置領域の少なくとも一部が第1コイルエンド部112の軸方向Lの配置領域と重ならない構成、すなわち、端子台6の少なくとも一部がステータ11から軸方向Lに突出して配置された構成に比べて、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
【0075】
図5に示すように、本実施形態では、幅方向Wに沿って複数の導体61が設けられている。本例では、回転電機1は三相交流(U相、V相、W相)で駆動されるため、3つの導体61が設けられている。
【0076】
本実施形態では、端子台6の幅方向Wの配置領域の全体が、ステータコア111の幅方向Wの配置領域と重なっている。ここでは、「端子台6の幅方向Wの配置領域の全体」は、幅方向Wに並ぶ3つの導体61の幅方向Wの配置領域の全体を指す。
【0077】
このように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、回転電機1とインバータ装置10とを電気的に接続する端子台6を更に備え、
ステータ11は、円筒状のステータコア111を備え、
上下方向Vに沿う上下方向視で第1軸X1に直交する方向を幅方向Wとして、
端子台6の幅方向Wの配置領域の全体が、ステータコア111の幅方向Wの配置領域と重なっている。
【0078】
この構成によれば、端子台6の幅方向Wの配置領域の少なくとも一部がステータコア111の幅方向Wの配置領域と重なっていない構成と比べて、車両用駆動装置100の幅方向Wの寸法を小さくし易い。
【0079】
本実施形態では、上側突出部115uは、ステータ上端線Lu1よりも上側に突出するように配置されている。つまり、上側突出部115uは、ステータコア111における本体部114の外周面114aの上端よりも上側に突出するように配置されている。また、本実施形態では、下側突出部115bは、ステータ下端線Lb11よりも下側に突出するように配置されている。つまり、下側突出部115bは、ステータコア111における本体部114の外周面114aの下端よりも下側に突出するように配置されている。また、本実施形態では、中間突出部115mは、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1軸線Lx1と重複するように配置されている。
【0080】
また、本実施形態では、端子台6の下端が、ステータ上端線Lu1よりも上側に配置されている。つまり、端子台6の下端は、ステータコア111における本体部114の外周面114aの上端よりも上側に配置されている。また、端子台6の下端が、幅方向Wに沿って上側突出部115uの上端を通る仮想線である第4上端線Lu4よりも下側に配置されている。つまり、端子台6の下端は、上側突出部115uの上端よりも下側に配置されている。ここでは、「端子台6の下端」は、幅方向Wに並ぶ3つの導体61のうちの最も下側に位置する下端を指す。
【0081】
このように、本実施形態では、ステータコア111は、円筒状の本体部114と、当該本体部114の外周面114aから第1軸X1の径方向Rの外側に突出する3つの突出部115を備え、
3つの突出部115は、互いに本体部114の周方向に等間隔で配置され、回転電機1を支持する支持部材Sに固定され、
3つの突出部115のうちの最も上側に位置するものを上側突出部115uとし、
上側突出部115uは、本体部114の外周面114aの上端よりも上側に突出するように配置され、
端子台6の下端が、本体部114の外周面114aの上端よりも上側であって、上側突出部115uの上端よりも下側に配置されている。
【0082】
この構成によれば、上側突出部115uが本体部114の外周面114aの上端よりも上側に突出するように配置されている場合であっても、端子台6が上側突出部115uに干渉することを回避しつつ、端子台6を第1軸X1に近付けて配置することができる。また、周方向に等間隔で配置された3つの突出部115のうち上側突出部115u以外の2つの突出部である中間突出部115m及び下側突出部115bのいずれかがステータコア111の最下部に配置されることを回避し易い。したがって、車両用駆動装置100の上下方向Vの寸法を小さく抑えることができる。
【0083】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第3軸線Lx3が、第1軸線Lx1よりも上側であって、第2軸線Lx2よりも下側に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第3軸線Lx3が第1軸線Lx1よりも下側に配置されていても良い。或いは、第3軸線Lx3が第2軸線Lx2よりも上側に配置されていても良い。
【0084】
(2)上記の実施形態では、ステータ下端線Lb11が差動下端線Lb2よりも上側に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ステータ下端線Lb11が、差動下端線Lb2と上下方向Vの同じ位置に配置されていても良いし、差動下端線Lb2よりも下側に配置されていても良い。
【0085】
(3)上記の実施形態では、ケース9における油Fの循環状態が定常状態となっている定常循環状態において、油面位置FLが差動入力ギヤ41の下端よりも上側であって、ロータ12の下端よりも下側である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、定常循環状態において、油面位置FLが、ロータ12の下端と上下方向Vの同じ位置であっても良いし、ロータ12の下端よりも上側であっても良い。また、ケース9における油Fの循環状態が特定の状態において、油面位置FLが差動入力ギヤ41の下端よりも下側であっても良い。
【0086】
(4)上記の実施形態では、ステータ11の外径が差動入力ギヤ41の外径よりも小さい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ステータ11の外径が、差動入力ギヤ41の外径と同じ、又は、差動入力ギヤ41の外径よりも大きくても良い。
【0087】
(5)上記の実施形態では、上側突出部115uがステータ上端線Lu1よりも上側に突出するように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、上側突出部115uの全体がステータ上端線Lu1よりも下側に配置されていても良い。また、上記の実施形態では、下側突出部115bがステータ下端線Lb11よりも下側に突出するように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、下側突出部115bの全体がステータ下端線Lb11よりも上側に配置されていても良い。また、上記の実施形態では、中間突出部115mが軸方向視で第1軸線Lx1と重複するように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、中間突出部115mの全体が第1軸線Lx1よりも上側又は下側に配置されていても良い。
【0088】
(6)上記の実施形態では、互いにステータコア111の本体部114の周方向に等間隔で配置された3つの突出部115が、互いに上下方向Vの異なる位置に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、3つの突出部115のうちの2つが上下方向Vの同じ位置に配置されていても良い。また、3つの突出部115が、本体部114の周方向に互いに異なる間隔で配置されていても良い。また、2つ以下、又は、4つ以上の突出部115が設けられた構成としても良い。
【0089】
(7)上記の実施形態では、端子台6の幅方向Wの配置領域の全体が、ステータコア111の幅方向Wの配置領域と重なっている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、端子台6の幅方向Wの配置領域の少なくとも一部がステータコア111の幅方向Wの配置領域と重なっていない構成としても良い。
【0090】
(8)上記の実施形態では、端子台6の下端が、本体部114の外周面114aの上端よりも上側であって、上側突出部115uの上端よりも下側に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、端子台6の下端が本体部114の外周面114aの上端よりも下側に配置されていても良い。また、端子台6の下端が上側突出部115uの上端よりも上側に配置されていても良い。
【0091】
(9)上記の実施形態では、端子台6の全体がステータコア111に対して軸方向第1側L1に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、端子台6の全体がステータコア111に対して軸方向第2側L2に配置されていても良い。或いは、端子台6の軸方向Lの配置領域が、ステータコア111の軸方向Lの配置領域と重なっていても良い。
【0092】
(10)上記の実施形態では、端子台6の軸方向Lの配置領域の全体が、第1コイルエンド部112の軸方向Lの配置領域と重なっている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、端子台6の軸方向Lの配置領域の少なくとも一部が、第1コイルエンド部112の軸方向Lの配置領域と重なっていなくても良い。また、端子台6の軸方向Lの配置領域の全体が、第2コイルエンド部113の軸方向Lの配置領域と重なっていても良い。
【0093】
(11)上記の実施形態では、差動入力ギヤ41が上下方向視でインバータ装置10と重複しないように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動入力ギヤ41が上下方向視でインバータ装置10と重複するように配置されていても良い。
【0094】
(12)上記の実施形態では、第2軸X2が回転電機1の幅方向Wの配置領域と重ならないように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2軸X2が回転電機1の幅方向Wの配置領域と重なるように配置されていても良い。
【0095】
(13)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示に係る技術は、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、当該回転電機のロータに駆動連結された入力部材と、それぞれが車輪に駆動連結される一対の出力部材と、入力部材の側から伝達される回転を一対の出力部材に分配する差動歯車機構と、回転電機を制御するインバータ装置と、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
100:車両用駆動装置、1:回転電機、11:ステータ、12:ロータ、2:入力部材、3:出力部材、4:差動歯車機構、10:インバータ装置、WH:車輪、1:第1軸、X2:第2軸、V:上下方向
図1
図2
図3
図4
図5