(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】物性マップ画像生成装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/27 20200101AFI20241204BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20241204BHJP
【FI】
G06F30/27
G06F30/12
(21)【出願番号】P 2023506876
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005626
(87)【国際公開番号】W WO2022196209
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021044488
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「CFRP向けマテリアルインテグレーション(MI)システムの高速実装と評価」委託研究及び「CFRP向けマテリアルインテグレーション(MI)システムの研究開発」委託研究(研究推進法人:JST)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鍬守 直樹
(72)【発明者】
【氏名】撫佐 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】風間 悠加
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 広明
(72)【発明者】
【氏名】菊川 豪太
(72)【発明者】
【氏名】岡部 朋永
(72)【発明者】
【氏名】小松 一彦
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-285381(JP,A)
【文献】国際公開第2006/121057(WO,A1)
【文献】特開2008-293315(JP,A)
【文献】特開2008-009934(JP,A)
【文献】国際公開第98/20437(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第102890703(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
G16C 20/00 - 60/00
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報を取得する取得手段と、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成手段と、
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードがそのノードに割り当てられた色で表されている物性マップ画像を生成する物性マップ画像生成手段と、を有し、
前記物性マップ画像生成手段は、2つ又は3つの基準色それぞれについて、各前記ノードに割り当てる色におけるその基準色の成分を、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値に基づいて決定
し、
前記取得手段は、前記物性情報に対応する前記材料の識別情報を取得し、
前記物性マップ画像生成手段は、前記ノードの中から、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを特定し、その物性情報に対応する前記識別情報と前記特定したノードとの対応関係を表す表示を前記物性マップ画像に含める、物性マップ画像生成装置。
【請求項2】
前記物性マップ画像生成手段は、各前記ノードに割り当てる色における各前記基準色の成分の大きさを、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値がより適切なほど大きい値とする、請求項
1に記載の物性マップ画像生成装置。
【請求項3】
前記物性マップ画像生成手段は、各前記基準色の成分の大きさが閾値以上である色が割り当てられている前記ノードを特定し、前記物性マップ画像において前記特定したノードを強調表示する、請求項
2に記載の物性マップ画像生成装置。
【請求項4】
前記自己組織化マップ生成手段は、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルを訓練データとして利用して前記自己組織化マップの学習を行うにより、前記自己組織化マップを生成する、請求項1から
3いずれか一項に記載の物性マップ画像生成装置。
【請求項5】
前記2つ又は3つの基準色はそれぞれ異なる原色である、請求項1から
4いずれか一項に記載の物性マップ画像生成装置。
【請求項6】
コンピュータによって実行される制御方法であって、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報を取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードがそのノードに割り当てられた色で表されている物性マップ画像を生成する物性マップ画像生成ステップと、を有し、
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、2つ又は3つの基準色それぞれについて、各前記ノードに割り当てる色におけるその基準色の成分を、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値に基づいて決定
し、
前記取得ステップにおいて、前記物性情報に対応する前記材料の識別情報を取得し、
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、前記ノードの中から、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを特定し、その物性情報に対応する前記識別情報と前記特定したノードとの対応関係を表す表示を前記物性マップ画像に含める、制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報を取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードがそのノードに割り当てられた色で表されている物性マップ画像を生成する物性マップ画像生成ステップと、を実行させ、
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、2つ又は3つの基準色それぞれについて、各前記ノードに割り当てる色におけるその基準色の成分を、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値に基づいて決定
し、
前記取得ステップにおいて、前記物性情報に対応する前記材料の識別情報を取得し、
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、前記ノードの中から、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを特定し、その物性情報に対応する前記識別情報と前記特定したノードとの対応関係を表す表示を前記物性マップ画像に含める、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製品開発に関連する情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品開発では、材料と成果物の関係を把握することが有用である。そこで、材料と成果物の関係の把握を支援するシステムが開発されている。例えば特許文献1は、自己組織化マップを利用して、タイヤの設計値と物性値との因果関係の把握を支援するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、タイヤの複数の設計変数のうち、どの変数が重要な因子であるのかを特定するために、自己組織化マップが利用されている。そのため、それ以外の目的で自己組織化マップを利用することは想定されていない。本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、製品開発に有用な情報を提供する新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の物性マップ画像生成装置は、対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報を取得する取得部と、前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成部と、前記マップ空間上に配置されている各前記ノードがそのノードに割り当てられた色で表されている物性マップ画像を生成する物性マップ画像生成部と、を有する。前記物性マップ画像生成部は、2つ又は3つの基準色それぞれについて、各前記ノードに割り当てる色におけるその基準色の成分を、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値に基づいて決定する。
【0006】
本開示の制御方法は、コンピュータによって実行される。当該制御方法は、対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報を取得する取得ステップと、前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、前記マップ空間上に配置されている各前記ノードがそのノードに割り当てられた色で表されている物性マップ画像を生成する物性マップ画像生成ステップと、を有する。前記物性マップ画像生成ステップにおいて、2つ又は3つの基準色それぞれについて、各前記ノードに割り当てる色におけるその基準色の成分を、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値に基づいて決定する。
【0007】
本開示の非一時的なコンピュータ可読媒体は、本開示の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、製品開発に有用な情報を提供する新たな技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の物性マップ画像生成装置の動作の概要を例示する図である。
【
図2】実施形態1の物性マップ画像生成装置の機能構成を例示するブロック図である。
【
図3】物性マップ画像生成装置を実現するコンピュータのハードウエア構成を例示するブロック図である。
【
図4】実施形態1の物性マップ画像生成装置によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図5】材料の識別情報と諸元との対応付けをテーブル形式で例示する図である。
【
図6】材料識別情報10と物性情報20との対応付けをテーブル形式で例示する図である。
【
図7】ノードに対して色を割り当てる処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図8】色と材料識別情報10の割り当てが行われた自己組織化マップ30の構成をテーブル形式で例示する図である。
【
図9】ノードの配置がマス目で表されている物性マップ画像40を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。また、特に説明しない限り、所定値や閾値などといった予め定められている情報は、その情報を利用する装置からアクセス可能な記憶装置などに予め格納されている。
【0011】
[実施形態1]
<概要>
図1は、実施形態1の物性マップ画像生成装置2000の動作の概要を例示する図である。ここで、
図1は、物性マップ画像生成装置2000の概要の理解を容易にするための図であり、物性マップ画像生成装置2000の動作は、
図1に示したものに限定されない。
【0012】
物性マップ画像生成装置2000は、製品開発の特定の工程(以下、対象工程)において生成されうる成果物70について、物性マップ画像40を生成する。物性マップ画像40は、特定の2種類又は3種類の物性に着目して、成果物70の物性の分布を色の分布で表現した画像である。
【0013】
成果物70は、対象工程の生成プロセスで材料60を処理することによって生成されると予測されるもの、又は、実際に生成されたものである。材料60は、成果物70の生成に利用される材料である。対象工程では、様々なパターンの材料60を利用できる。成果物70の物性は、利用する材料60によって異なりうる。
【0014】
材料60の1つのパターンは、材料諸元によって特定される。言い換えれば、材料諸元が互いに異なる材料60は、互いに異なるパターンの材料60として扱われる。一方、材料諸元が互いに同じである材料60は、互いに同じパターンの材料60として扱われる。材料諸元は、例えば、材料の種類、材料を構成する物質の種類、各物質の配合比率、及び材料を作成するために行われる加工の種類などで表される。材料の種類としては、例えば、炭素繊維強化プラスチックやステンレス鋼などがある。例えば、材料60が炭素繊維強化プラスチックであるとする。この場合、材料60の材料諸元は、材料60を構成する1つ又は複数の炭素繊維それぞれの種類(ポリアクリルニトリル繊維やセルロース炭化繊維など)、材料60を構成する1つ又は複数の樹脂それぞれの種類(エポキシやポリエーテルテフタレートなど)、及びそれらの物質の配合比率を含む。また、材料諸元には、繊維方向性重合方式の種類、圧着方式の種類、及び樹脂組成などがさらに含まれてもよい。
【0015】
このような物性マップ画像40を生成するために、物性マップ画像生成装置2000は、複数パターンの材料60それぞれについて(言い換えれば、複数パターンの材料諸元それぞれで特定される材料60について)、その材料60の識別情報である材料識別情報10と、その材料60を利用して対象工程で生成されうる成果物70の物性を示す物性情報20を取得する。物性情報20は、成果物70について、複数種類の物性それぞれの物性量を示す。物性の種類は、例えば、難燃性、耐熱性、弾性率、又は靱性などである。
【0016】
ただし、材料識別情報10の取得は必須ではない。後述するように、例えば材料識別情報10は、物性マップ画像40に材料識別情報10を示す表示を含めるために利用される。しかしながら、物性マップ画像40にはこの表示が含まれなくてもよい。そこで、材料識別情報10を利用しない場合、物性マップ画像生成装置2000は、材料識別情報10を取得しなくてもよい。
【0017】
物性マップ画像生成装置2000は、物性情報20を用いて、成果物70の物性の分布を表す自己組織化マップ30を生成する。自己組織化マップ30は、m次元のマップ空間上に配置された複数のノードを有する。ここで、自己組織化マップ30から物性マップ画像40を生成できるようにするため、mは2又は3とする。例えばノードは、マス目のマスや格子上の格子などとして表現することができる。
【0018】
自己組織化マップ30の各ノードには、複数種類の物性それぞれの物性量の大きさを表す多次元データ(以下、物性ベクトル)が割り当てられる。例えば、難燃性、耐熱性、弾性率、及び靱性という4種類の物性を利用するとする。この場合、物性ベクトルは、これら4種類の物性それぞれの物性量の大きさを表す4次元データである。以下、物性ベクトルの次元数をnとおく。なお、n>mである。すなわち、自己組織化マップ30において、物性ベクトルの空間が高次元空間であり、マップ空間が低次元空間である。
【0019】
物性情報20は、n種類以上の種類の物性についての物性量を示す。物性マップ画像生成装置2000は、物性情報20によって示されているn種類の物性についての物性量を利用して自己組織化マップ30の学習を行うことにより、各ノードに割り当てる物性ベクトルを決定することで、自己組織化マップ30を生成する。
【0020】
さらに物性マップ画像生成装置2000は、自己組織化マップ30の各ノードに色を割り当て、割り当てられた色で各ノードが表された画像として、物性マップ画像40を生成する。物性マップ画像生成装置2000は、ノードに対する色の割り当てを、2種類又は3種類の物性に着目して行う。より具体的には、物性マップ画像生成装置2000は、各ノードに割り当てる色を、そのノードの物性ベクトルが示す値のうち、特定の2つ又は3つの物性に対応する値に応じて決定する。以下、ノードに割り当てられる色のことを、ノードの割当色と呼ぶ。
【0021】
ここで、割当色の決定に利用する2つ又は3つの物性には、それぞれ異なる基準色が対応づけられている。例えばこれらの基準色は、互いに異なる原色である(赤色、緑色、及び青色など)。物性マップ画像生成装置2000は、ノードの割当色における各基準色の成分の大きさを、そのノードの物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値に基づいて決定する。
【0022】
例えば割当色を決定するために、2種類の物性に着目するとする。この場合、これら2つの物性をそれぞれ、第1物性及び第2物性と呼ぶ。また、第1物性及び第2物性に対応づけられている基準色をそれぞれ、第1基準色及び第2基準色と呼ぶ。
【0023】
物性マップ画像生成装置2000は、ノードの割当色における第1基準色の成分の大きさを、そのノードの物性ベクトルが第1物性について示す値に基づいて決定する。また、物性マップ画像生成装置2000は、ノードの割当色における第2基準色の成分の大きさを、そのノードの物性ベクトルが第2物性について示す値に基づいて決定する。さらに物性マップ画像生成装置2000は、ノードの割当色における第3基準色の成分の大きさを、そのノードの物性ベクトルが第3物性について示す値に基づいて決定する。
【0024】
例えば、第1物性を難燃性とし、第2物性を耐熱性とする。また、第1基準色として赤色が用いられ、第2基準色として緑色が用いられるとする。この場合、物性マップ画像生成装置2000は、ノードの割当色における赤色の成分の大きさを、そのノードの物性ベクトルが難燃性について示す値に基づいて決定する。また、物性マップ画像生成装置2000は、ノードの割当色における緑色の成分の大きさを、そのノードの物性ベクトルが耐熱性について示す値に基づいて決定する。なお、この例において、割当色における青色の成分の大きさについては、固定の値(例えば0)が用いられる。
【0025】
3つの物性に着目して物性マップ画像40を生成する場合、さらにもう1つの物性が利用される。この物性を第3物性と呼ぶ。また、第3物性に対応する基準色を第3基準色と呼ぶ。この場合、物性ベクトルが第3物性について示す値に基づいて、ノードの割当色における第3基準色の成分の大きさが決定される。例えば第1基準色から第3基準色にはそれぞれ、赤色、緑色、及び青色という光の3原色が用いられる。
【0026】
<作用効果の一例>
製品開発では、所望の物性を持つ成果物を生成するために、そのような成果物を生成可能な材料の探索が行われることがある。このような探索を実現する方法の一つとして、材料諸元を様々に変えながら、成果物の生成のシミュレーションを行ったり、実際に成果物の生成を行うという方法がある。さらには、このようなシミュレーションや成果物の生成を経て蓄積された材料諸元と成果物の物性との対応関係(本開示における材料識別情報10と物性情報20の対応関係)を利用して、好ましい物性から材料諸元を予測するという逆解析を行うという手法も考えられる。
【0027】
物性マップ画像生成装置2000によって提供される物性マップ画像40は、成果物70の物性の分布が視覚的に表されたものであり、上述した逆解析に有用である。具体的には、物性マップ画像40では、成果物70の複数の物性のうち、2つ又は3つの物性に着目して、各ノードの色が決定されている。そのため、物性情報20における色の分布から、これら2つ又は3つの物性に着目した成果物70の物性の分布を、直感的に把握することができる。
【0028】
例えば、物性マップ画像40に示されているノードの中に、「いずれの基準色の成分についても十分に大きい」という条件を満たす色のノードが存在したとする。例えば、基準色が赤色、緑色、及び青色であれば、白色に近い色がこの条件を満たすと言える。このようなノードは、ノードに割り当てる色を決定するために着目した2つ又は3つの物性のいずれについても良好な物性量を示す成果物70を表していると言える。よって、物性マップ画像40を利用することにより、所望の物性を持つ成果物70を生成しうることを容易に把握できる。
【0029】
ここで、ノードに割り当てる色を決定するために着目する物性を選ぶ1つの方法として、トレードオフの関係にある2つ又は3つの物性を選ぶという方法が考えられる。このような選択を行うと、トレードオフの関係にあるはずの2つ又は3つの物性について、それらの物性のいずれについても良好な性質を持つ成果物70を生成しうることを把握することができる。
【0030】
さらに、材料識別情報10とノードとの対応関係を表す表示を物性マップ画像40に含めることにより、このような所望の物性を持つ成果物70を生成できる材料諸元に近い材料諸元を把握することができる。この点についての詳細は後述する。
【0031】
以下、本実施形態の物性マップ画像生成装置2000について、より詳細に説明する。
【0032】
<機能構成の例>
図2は、実施形態1の物性マップ画像生成装置2000の機能構成を例示するブロック図である。物性マップ画像生成装置2000は、取得部2020、自己組織化マップ生成部2040、及び物性マップ画像生成部2060を有する。取得部2020は、複数パターンの材料60それぞれについて、材料識別情報10及び物性情報20を取得する。自己組織化マップ生成部2040は、材料識別情報10及び物性情報20を利用して自己組織化マップ30を生成する。物性マップ画像生成部2060は、自己組織化マップ30の各ノードに対し色を割り当てることにより、物性マップ画像40を生成する。ノードの割当色における各基準色の成分の大きさは、そのノードの物性ベクトルが第1物性について示す値に基づいて決定される。また、ノードの割当色における第2基準色の成分の大きさは、そのノードの物性ベクトルが第2物性について示す値に基づいて決定される。
【0033】
<ハードウエア構成の例>
物性マップ画像生成装置2000の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、物性マップ画像生成装置2000の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0034】
図3は、物性マップ画像生成装置2000を実現するコンピュータ500のハードウエア構成を例示するブロック図である。コンピュータ500は、任意のコンピュータである。例えばコンピュータ500は、サーバマシンや PC(Personal Computer)などといった、据え置き型のコンピュータである。その他にも例えば、コンピュータ500は、スマートフォンやタブレット端末などといった可搬型のコンピュータである。コンピュータ500は、物性マップ画像生成装置2000を実現するために設計された専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータであってもよい。
【0035】
例えば、コンピュータ500に対して所定のアプリケーションをインストールすることにより、コンピュータ500で、物性マップ画像生成装置2000の各機能が実現される。上記アプリケーションは、物性マップ画像生成装置2000の各機能構成部を実現するためのプログラムで構成される。なお、上記プログラムの取得方法は任意である。例えば、当該プログラムが格納されている記憶媒体(DVD ディスクや USB メモリなど)から、当該プログラムを取得することができる。その他にも例えば、当該プログラムが格納されている記憶装置を管理しているサーバ装置から、当該プログラムをダウンロードすることにより、当該プログラムを取得することができる。
【0036】
コンピュータ500は、バス502、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510、及びネットワークインタフェース512を有する。バス502は、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510、及びネットワークインタフェース512が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ504などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0037】
プロセッサ504は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの種々のプロセッサである。メモリ506は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス508は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又は ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0038】
入出力インタフェース510は、コンピュータ500と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。例えば入出力インタフェース510には、キーボードなどの入力装置や、ディスプレイ装置などの出力装置が接続される。
【0039】
ネットワークインタフェース512は、コンピュータ500をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、WAN(Wide Area Network)であってもよい。
【0040】
ストレージデバイス508は、物性マップ画像生成装置2000の各機能構成部を実現するプログラム(前述したアプリケーションを実現するプログラム)を記憶している。プロセッサ504は、このプログラムをメモリ506に読み出して実行することで、物性マップ画像生成装置2000の各機能構成部を実現する。
【0041】
物性マップ画像生成装置2000は、1つのコンピュータ500で実現されてもよいし、複数のコンピュータ500で実現されてもよい。後者の場合において、各コンピュータ500の構成は同一である必要はなく、それぞれ異なるものとすることができる。
【0042】
<処理の流れ>
図4は、実施形態1の物性マップ画像生成装置2000によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。取得部2020は、対象工程で利用されうる複数の材料60それぞれについて、材料識別情報10及び物性情報20を取得する(S102)。自己組織化マップ生成部2040は、物性情報20を利用して、自己組織化マップ30を生成する(S104)。自己組織化マップ生成部2040は、自己組織化マップ30から物性マップ画像40を生成する(S106)。
【0043】
<材料識別情報10及び物性情報20の取得:S102>
取得部2020は、対象工程において利用されうる複数パターンの材料60それぞれについて、その材料60の材料識別情報10と、その材料60を用いて生成されうる成果物70についての物性情報20を取得する(S102)。前述したように、材料60の1つのパターンは、材料諸元によって特定される。そのため、材料識別情報10は、特定の材料諸元に対して割り当てられた識別情報と言うことができる。
【0044】
図5は、材料の識別情報と諸元との対応付けをテーブル形式で例示する図である。
図5のテーブル100は、材料識別情報102及び材料諸元104という列を有する。材料識別情報102は、材料60に割り当てられた識別情報(すなわち、材料識別情報10)を示す。材料諸元104は、材料60の諸元を示す。
【0045】
図6は、材料識別情報10と物性情報20との対応付けをテーブル形式で例示する図である。
図6の例において、物性情報20は、物性の種類ごとに、「物性の種類を表すラベル:その物性の物性量」という対応付けを示す。
【0046】
取得部2020は、材料識別情報10と物性情報20のペアを複数取得する。取得部2020が材料識別情報10と物性情報20のペアを取得する方法は様々である。例えば材料識別情報10と物性情報20のペアは予め、物性マップ画像生成装置2000からアクセス可能な任意の記憶装置に格納されている。取得部2020は、この記憶装置にアクセスすることにより、材料識別情報10と物性情報20のペアを取得する。その他にも例えば、取得部2020は、材料識別情報10と物性情報20のペアを入力するユーザ入力を受け付けることにより、材料識別情報10と物性情報20のペアを取得してもよい。その他にも例えば、取得部2020は、他の装置から送信される材料識別情報10と物性情報20のペアを受信することにより、材料識別情報10と物性情報20のペアを取得してもよい。
【0047】
ここで、材料識別情報10と物性情報20のペアを生成する方法は様々である。例えば、材料識別情報10と物性情報20のペアは、成果物70の生成のシミュレーションを行うことで生成される。具体的には、特定の材料諸元を入力として与えてシミュレーションを実行することにより、成果物70について各物性の物性量の予測値を示す物性情報20が生成される。そして、生成された物性情報20と、入力として与えた材料諸元に対して割り当てた材料識別情報10との対応づけが得られる。ここで、材料諸元を入力として取得し、その材料諸元で特定される材料について、その材料を用いて特定の工程で生成される成果物の物性の予測データを出力するシミュレーションを実現する技術には、既存の技術を利用することができる。
【0048】
その他にも例えば、材料識別情報10と物性情報20のペアは、成果物70の生成を実際に行うことで生成されてもよい。具体的には、特定の材料諸元で表される材料60を対象工程で利用することで、成果物70が実験的に生成される。さらに、生成された成果物70について、各物性の物性量の測定を行うことにより、物性情報20が生成される。その結果、生成された物性情報20と、利用した材料60に対して割り当てた材料識別情報10との対応づけが得られる。
【0049】
なお、取得部2020によって取得される物性情報20の中には、データの表現方法が互いに異なるものが含まれうる。例えば、本質的に等しい物性に対し、互いに異なるラベルが利用されていることが考えられる。また、同一の物性の物性量が、互いに異なる単位で表されていることが考えられる。このような場合、取得部2020は、ラベルの統一や単位換算などを行うことで、データの表現方法を統一することが好適である。このように物性情報20同士でデータの表現方法が互いに異なる状況は、例えば、シミュレーションを利用して生成された物性情報20と、実際に成果物70を生成することで生成された物性情報20の双方を取得する場合に起こりうると考えられる。
【0050】
<自己組織化マップ30の生成:S104>
自己組織化マップ生成部2040は、材料識別情報10及び物性情報20を利用して、自己組織化マップ30を生成する(S104)。自己組織化マップ30は、m次元のマップ空間上に配置された複数のノードを有する(m=2又はm=3)。マップ空間の次元数として2次元と3次元のどちらを採用するかは、予め定められていてもよいし、ユーザによって指定されてもよい。自己組織化マップ30の各ノードには、n次元の物性ベクトルが割り当てられる。
【0051】
各ノードに対する物性ベクトルの割り当ては、自己組織化マップ30の学習によって行われる。自己組織化マップ30の学習は、学習に利用するn次元の訓練データを自己組織化マップ30に入力することで行うことができる。ここで、訓練データを用いて自己組織化マップの学習を行う具体的な方法には、既存の方法を利用することができる。
【0052】
例えば自己組織化マップ生成部2040は、自己組織化マップ30を任意の方法で初期化する。初期化の方法としては、例えば、各ノードの物性ベクトルをランダムな値に初期化するといった方法を採用できる。自己組織化マップ生成部2040は、取得した複数の各物性情報20それぞれから、n種類の物性それぞれの物性量を抽出することにより、複数のn次元の物性ベクトルを生成する。自己組織化マップ生成部2040は、これら複数の物性ベクトルそれぞれを訓練データとして扱って自己組織化マップ30の学習を行うことで、自己組織化マップ30を生成する。その結果、自己組織化マップ30の各ノードの物性ベクトルは、n種類の物性の物性量それぞれに関する値を示すn次元データとなる。
【0053】
物性情報20から得られる物性ベクトルは、物性情報20によって示されるn種類の物性それぞれの物性量をそのまま示してもよいし、各物性量を所定の方法(例えば、正規化や標準化など)で変換することで得られる値を示してもよい。
【0054】
ここで、物性情報20によって示される物性の数は、nより多くてもよい。この場合、物性情報20によって示されるデータの一部が、自己組織化マップ30の生成に利用される。ここで、物性情報20が示す物性のうち、どの種類の物性を利用して自己組織化マップ30を生成するのかについては、予め定められてもよいし、ユーザによって指定されてもよい。
【0055】
<物性マップ画像40の生成:S106>
物性マップ画像生成部2060は、自己組織化マップ30の各ノードに対して色を割り当てることで、物性マップ画像40を生成する(S106)。物性マップ画像40は、自己組織化マップ30においてマップ空間に配置されているノードを、そのノードに割り当てた色で表現することによって得られる画像である。このような画像は、ヒートマップとも呼ぶことができる。以下、ノードに対して色を割り当てる方法について、具体的に説明する。
【0056】
図7は、ノードに対して色を割り当てる処理の流れを例示するフローチャートである。S202からS212はループ処理L1を構成する。ループ処理L1は、自己組織化マップ30に含まれる各ノードに対して一度ずつ実行される。S202において、物性マップ画像生成部2060は、全てのノードを対象としてループ処理L1が実行されたか否かを判定する。全てのノードを対象としてループ処理L1が既に実行された場合、
図7の処理は終了する。一方、まだループ処理L1の対象とされていないノードが存在する場合、物性マップ画像生成部2060は、その中から1つのノードを選択する。ここで選択されたノードを、ノードiと表記する。
【0057】
S204からS208はループ処理L2を構成する。ループ処理L2は、割当色の決定に利用される各種類の物性について一度ずつ実行される。S204において、物性マップ画像生成部2060は、割当色の決定に利用する全ての種類の物性を対象としてループ処理L2が実行されたか否かを判定する。割当色の決定に利用する全ての種類の物性を対象としてループ処理L2が既に実行された場合、
図7の処理はS210に進む。一方、割当色の決定に利用する物性の中に、まだループ処理L2の対象とされていない物性が存在する場合、物性マップ画像生成部2060は、その中から1つの物性を選択する。ここで選択された物性を、第j物性と表記する。2つの物性に着目して物性マップ画像40が生成される場合、jは1又は2である。一方、3つの物性に着目して物性マップ画像40が生成される場合、jは1、2、又は3である。
【0058】
S206において、物性マップ画像生成部2060は、ノードiの物性ベクトルが第j物性について示す値に基づいて、ノードiの割当色における第j基準色の成分の大きさを決定する。例えば、ノードiの割当色における第j基準色の成分の大きさは、自己組織化マップ30の物性ベクトルが第j物性について示す値の数値範囲と、各基準色の成分の大きさの数値範囲とに基づいて定まる変換式によって算出される。この変換式は、例えば以下の式(1)で表される。
【数1】
ここで、c[i,j]は、ノードiの割当色における第j基準色の成分の大きさを表す。x[i,j] は、ノードiの物性ベクトルが第j物性について示す値である。f()は変換式を表す。W[j]は、自己組織化マップ30の物性ベクトルが第j物性について示す値の数値範囲の大きさを表す。Cは、各基準色の成分の数値範囲の大きさを表す。
【0059】
ここで、式(1)で表される変換式では、物性ベクトルが第j物性について示す値が大きいほど、第j基準色の成分が大きくなる。言い換えれば、第j基準色の成分の大きさは、物性ベクトルが第j物性について示す値について単調増加である。しかしながら、第j基準色の成分の大きさは、必ずしも物性ベクトルが第j物性について示す値について単調増加でなくてもよい。
【0060】
例えば、物性ベクトルが第j物性について示す値がより適切な値であるほど、第j基準色の成分の大きさが大きくなるようにする。例えば第j物性が、その物性量が大きいほど適切な物性である場合、物性マップ画像生成部2060は、物性ベクトルが第j物性について示す値が大きいほど、第j基準色の成分に大きな値を設定する。また、第j物性が、その物性量が小さいほど適切な物性である場合、物性マップ画像生成部2060は、物性ベクトルが第j物性について示す値が小さいほど、第j基準色の成分に大きな値を設定する。さらに、第j物性に特定の理想値が存在する場合、物性マップ画像生成部2060は、物性ベクトルが第j物性について示す値がその理想値に近いほど、第j基準色の成分に大きな値を設定する。
【0061】
S208は、ループ処理L2の終端である。そのため、
図7の処理は、S204に進む。
【0062】
S210は、1つのノードiについてのループ処理L2の繰り返しが終了した後に実行される。そのため、S210を実行する前に、ノードiの割当色について、各基準色の成分の大きさが決定されている。そこでS210において、物性マップ画像生成部2060は、決定された各基準色の成分の大きさで特定される色を、ノードiに割り当てる。例えば、第1基準色から第3基準色としてそれぞれ、赤色、緑色、及び青色が用いられるとする。この場合、ノードiの割当色は、(R,G,B)=(f(x[i,1]), f(x[i,2]), f(x[i,3])) となる。
【0063】
S212は、ループ処理L1の終端である。そのため、
図7の処理は、S202に進む。
【0064】
割当色の割り当てに加え、物性マップ画像生成部2060は、各材料識別情報10を自己組織化マップ30のノードに割り当てる。具体的には、物性マップ画像生成部2060は、材料識別情報10に対応する物性情報20から得られるn次元データと最も類似する物性ベクトルを持つノードに、その材料識別情報10を割り当てる。
【0065】
n次元のデータ同士の類似度合いは、例えば、それらの距離に基づいて特定される。この場合、例えば物性マップ画像生成部2060は、各ノードの物性ベクトルについて、材料識別情報10に対応する物性情報20から得られる物性ベクトルとの距離を算出する。そして、物性マップ画像生成部2060は、最小の距離が算出されたノードに対して、材料識別情報10を割り当てる。
【0066】
図8は、色と材料識別情報10の割り当てが行われた自己組織化マップ30の構成をテーブル形式で例示する図である。
図8のテーブル300は、位置302、物性ベクトル304、割当色306、及び材料識別情報308という4つの列を有する。テーブル300は、1つのノードにつき1つのレコードを有する。
【0067】
位置302は、m次元のマップ空間上におけるノードの座標を示す。
図8の例ではm=2であり、ノードに対してx座標とy座標が割り当てられている。物性ベクトル304は、ノードに対して割り当てられているn次元の物性ベクトルを表す。
図8の例ではn=4である。割当色306は、ノードの割当色を表す。
図8の例では、赤、緑、及び青という3つの基準色で割当色が定められている。材料識別情報308は、ノードに割り当てられた材料識別情報10を表す。ここで、材料識別情報10が割り当てられていないノードのレコードでは、材料識別情報308は「-」を示している。
【0068】
例えば物性マップ画像生成部2060は、テーブル300に基づいて物性マップ画像40を生成する。具体的には、物性マップ画像生成部2060は、マップ空間上に配置された各ノードを、そのノードの割当色で表現することにより、物性マップ画像40を生成する。
【0069】
例えば、ノードの配置をマス目を利用して表すとする。この場合、物性マップ画像40は、各マスが、そのマスに対応するノードの割当色で表されている(例えば塗りつぶされている)マス目を含む画像となる。また、物性マップ画像生成部2060は、ノードに対する材料識別情報10の割り当てを把握可能な表示(言い換えれば、材料識別情報10とノードとの対応関係を表す表示)を物性マップ画像40に含める。
【0070】
図9は、ノードの配置がマス目で表されている物性マップ画像40を例示する図である。
図9の物性マップ画像40において、各ノードに対応するマスの色は、そのノードの割当色に設定される。この例では、割当色が2つの物性に着目して設定されるものとする。
【0071】
ここで、図示の関係上、ノードの色は斜線を利用して表現されている。具体的には、第1基準色は、右上と左下を結ぶ斜線(以下、第1斜線)で表されている。一方、第2基準色は、左上と右下を結ぶ斜線(以下、第2斜線)で表されている。また、基準色の成分が大きいほど斜線の密度が高くなっている。
【0072】
第1斜線の密度は高いものの第2斜線の密度が低いノード(すなわち、第1基準色の成分は大きいものの第2基準色の成分は小さいノード)は、第1物性については好ましいものの第2物性については好ましくない成果物70を表す。また、第1斜線の密度は低いものの第2斜線の密度が高いノード(すなわち、第1基準色の成分は小さいものの第2基準色の成分は大きいノード)は、第1物性については好ましくないものの第2物性については好ましい成果物70を表す。さらに、第1斜線と第2斜線の密度が両方とも高いノード(すなわち、第1基準色の成分と第2基準色の成分の双方が大きいノード)は、第1物性と第2物性の双方について好ましい成果物70を表す。
【0073】
また、物性マップ画像40において、材料識別情報10が割り当てられているノードについては、そのノードに対して割り当てられている材料識別情報10を表す表示42が示されている。表示42は、対象のノードを特定できるようにするための丸印と、そのノードに割り当てられている材料識別情報10が示す値(すなわち、材料60の識別情報)とを含む。ここで、対象のノードは丸印を中に含むノードである。
【0074】
図9の物性マップ画像40は、例えば、第1物性と第2物性の双方について好ましい成果物70を生成可能な材料諸元の特定に有用である。前述したように、第1基準色の成分と第2基準色の成分の双方が大きいノードは、第1物性と第2物性の双方について好ましい成果物70を表す。そこで例えば、材料識別情報10が割り当てられているノードの中から、第1基準色の成分と第2基準色の成分の双方が大きいノードに近いノードを特定する。このノードに対応づけられている材料識別情報10で特定される材料60の材料諸元は、第1物性と第2物性の双方について好ましい成果物70を生成可能な材料諸元に近いと考えられる。そこで例えば、シミュレーションを通じて適切な材料諸元の探索を行う開発者等は、このようにして特定した材料諸元を基準として、材料諸元を少しずつ変えながら成果物70の生成のシミュレーションを繰り返し行う。これにより、このような基準が無い場合よりも短い時間で、第1物性と第2物性の双方について好ましい成果物70を生成できる材料諸元を見つけ出すことができる。
【0075】
例えば
図9の例では、第1斜線と第2斜線の双方の密度が高いノードが、「A101」を示す材料識別情報10が割り当てられているノードの右、かつ、「A102」を示す材料識別情報10が割り当てられているノードの下に存在する。そのため、開発者等は、「A101」で識別される材料諸元と、「A102」で識別される材料諸元の双方に近い範囲で材料諸元を様々に変えたシミュレーションを行うことにより、第1物性と第2物性の双方について好ましい成果物70を生成できる材料諸元を短い時間で見つけ出すことができる。
【0076】
ここで、物性マップ画像生成部2060は、上述した探索の基準とする材料諸元を特定しやすくする表示(
図9の例では、「A101」と「A102」を特定しやすくする表示)を、物性マップ画像40に含めてもよい。例えば物性マップ画像生成部2060は、各基準色の成分の大きさがいずれも閾値以上である割当色を持つノードを特定し、そのノードの枠を太くするといった強調表示を行う。その他にも例えば、物性マップ画像生成部2060は、このようにして特定されたノードからの距離が閾値以下であるノードであり、かつ、材料識別情報10が割り当てられているノードを特定し、そのノードに示されている表示42を別の表示42よりも強調してもよい(例えば、白色以外の丸印を利用したり、枠を太くしたりする)。
【0077】
なお、ノードの配置を表す方法は、マス目を利用する方法に限定されない。例えばノードの配置は、格子を利用して表現されてもよい。この場合、例えば物性マップ画像40は、各格子点の周囲所定範囲の領域(例えば、格子点を中心とする所定の半径の円)が、その格子点に対応するノードの割当色で表されている格子の画像となる。
【0078】
<物性マップ画像40の出力>
物性マップ画像生成装置2000は、生成した物性マップ画像40を出力する。物性マップ画像40の出力態様は任意である。例えば物性マップ画像生成装置2000は、物性マップ画像生成装置2000からアクセス可能な任意の記憶装置に物性マップ画像40を格納する。その他にも例えば、物性マップ画像生成装置2000は、物性マップ画像生成装置2000から制御可能な任意のディスプレイ装置に物性マップ画像40を表示させる。その他にも例えば、物性マップ画像生成装置2000は、物性マップ画像生成装置2000と通信可能に接続されている任意の装置に対して、物性マップ画像40を送信する。
【0079】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0080】
なお、上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに提供することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスク ROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに提供されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0081】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報を取得する取得手段と、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物のn種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成手段と、
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードがそのノードに割り当てられた色で表されている物性マップ画像を生成する物性マップ画像生成手段と、を有し、
前記物性マップ画像生成手段は、2つ又は3つの基準色それぞれについて、各前記ノードに割り当てる色におけるその基準色の成分を、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値に基づいて決定する、物性マップ画像生成装置。
(付記2)
前記取得手段は、前記物性情報に対応する前記材料の識別情報を取得し、
前記物性マップ画像生成手段は、前記ノードの中から、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを特定し、その物性情報に対応する前記識別情報と前記特定したノードとの対応関係を表す表示を前記物性マップ画像に含める、付記1に記載の物性マップ画像生成装置。
(付記3)
前記物性マップ画像生成手段は、各前記ノードに割り当てる色における各前記基準色の成分の大きさを、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値がより適切なほど大きい値とする、付記1又は2に記載の物性マップ画像生成装置。
(付記4)
前記物性マップ画像生成手段は、各前記基準色の成分の大きさが閾値以上である色が割り当てられている前記ノードを特定し、前記物性マップ画像において前記特定したノードを強調表示する、付記3に記載の物性マップ画像生成装置。
(付記5)
前記自己組織化マップ生成手段は、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルを訓練データとして利用して前記自己組織化マップの学習を行うにより、前記自己組織化マップを生成する、付記1から4いずれか一項に記載の物性マップ画像生成装置。
(付記6)
前記2つ又は3つの基準色はそれぞれ異なる原色である、付記1から5いずれか一項に記載の物性マップ画像生成装置。
(付記7)
コンピュータによって実行される制御方法であって、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報を取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードがそのノードに割り当てられた色で表されている物性マップ画像を生成する物性マップ画像生成ステップと、を有し、
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、2つ又は3つの基準色それぞれについて、各前記ノードに割り当てる色におけるその基準色の成分を、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値に基づいて決定する、制御方法。
(付記8)
前記取得ステップにおいて、前記物性情報に対応する前記材料の識別情報を取得し、
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、前記ノードの中から、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを特定し、その物性情報に対応する前記識別情報と前記特定したノードとの対応関係を表す表示を前記物性マップ画像に含める、付記7に記載の制御方法。
(付記9)
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、各前記ノードに割り当てる色における各前記基準色の成分の大きさを、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値がより適切なほど大きい値とする、付記7又は8に記載の制御方法。
(付記10)
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、各前記基準色の成分の大きさが閾値以上である色が割り当てられている前記ノードを特定し、前記物性マップ画像において前記特定したノードを強調表示する、付記9に記載の制御方法。
(付記11)
前記自己組織化マップ生成ステップにおいて、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルを訓練データとして利用して前記自己組織化マップの学習を行うことにより、前記自己組織化マップを生成する、付記7から10いずれか一項に記載の制御方法。
(付記12)
前記2つ又は3つの基準色はそれぞれ異なる原色である、付記7から11いずれか一項に記載の制御方法。
(付記13)
コンピュータに、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報を取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードがそのノードに割り当てられた色で表されている物性マップ画像を生成する物性マップ画像生成ステップと、を実行させ、
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、2つ又は3つの基準色それぞれについて、各前記ノードに割り当てる色におけるその基準色の成分を、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値に基づいて決定する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記14)
前記取得ステップにおいて、前記物性情報に対応する前記材料の識別情報を取得し、
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、前記ノードの中から、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードを特定し、その物性情報に対応する前記識別情報と前記特定したノードとの対応関係を表す表示を前記物性マップ画像に含める、付記13に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記15)
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、各前記ノードに割り当てる色における各前記基準色の成分の大きさを、そのノードに割り当てられている前記物性ベクトルがその基準色に対応する物性について示す値がより適切なほど大きい値とする、付記13又は14に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記16)
前記物性マップ画像生成ステップにおいて、各前記基準色の成分の大きさが閾値以上である色が割り当てられている前記ノードを特定し、前記物性マップ画像において前記特定したノードを強調表示する、付記15に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記17)
前記自己組織化マップ生成ステップにおいて、前記物性情報から得られる前記物性ベクトルを訓練データとして利用して前記自己組織化マップの学習を行うことにより、前記自己組織化マップを生成する、付記13から16いずれか一項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記18)
前記2つ又は3つの基準色はそれぞれ異なる原色である、付記13から17いずれか一項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0082】
この出願は、2021年3月18日に出願された日本出願特願2021-044488を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0083】
10 材料識別情報
20 物性情報
30 自己組織化マップ
40 物性マップ画像
42 表示
60 材料
70 成果物
100 テーブル
102 材料識別情報
104 材料諸元
300 テーブル
302 位置
304 物性ベクトル
306 割当色
308 材料識別情報
500 コンピュータ
502 バス
504 プロセッサ
506 メモリ
508 ストレージデバイス
510 入出力インタフェース
512 ネットワークインタフェース
2000 物性マップ画像生成装置
2020 取得部
2040 自己組織化マップ生成部
2060 物性マップ画像生成部