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  • 特許-橋梁下点検システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】橋梁下点検システム
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20241204BHJP
   G05D 1/46 20240101ALI20241204BHJP
【FI】
E01D22/00 A
G05D1/46
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020190688
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079851
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593153428
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516145390
【氏名又は名称】イームズロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【弁理士】
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】西田 直也
(72)【発明者】
【氏名】中村 尚武
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 博邦
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
(72)【発明者】
【氏名】宮川 弘平
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ サンチェス エルナンデス
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0187711(US,A1)
【文献】特開2017-075863(JP,A)
【文献】特開2019-085040(JP,A)
【文献】特開2005-072654(JP,A)
【文献】特開2020-004123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
G05D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向と速度を把握する移動情報収集装置と、検出対象物に対する距離をレーザで測定する距離測定装置が搭載された飛行体を備え、前記距離測定装置は飛行体本体の上部に配置され、前記距離測定装置において所定の照射角の範囲に所定の時間間隔で前記レーザを射出する射出点が、鉛直軸に対し傾倒した軸線を回転軸とし周方向におけるいずれかの領域で、橋梁の下部に向けて水平方向に対し所定角度傾斜した上方向と、地上に向けて水平方向に対し所定角度傾斜した下方向となる全周方向に、前記レーザを射出しながら移動することを特徴とする橋梁下点検システム。
【請求項2】
前記照射角の範囲に水平方向が含まれ、橋脚が前記レーザの射程内に入る場所で前記橋脚からのレーザ反射波を得る請求項1に記載の橋梁下点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の下側において構造物の変状を把握するための点検を行う橋梁下点検システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、構造物の高い位置における変状を把握するための点検に、カメラ等の撮像手段を搭載した飛行体が利用されている。そして、飛行体を構造物に接触させることなく接近させ点検に必要となる画像を得るために、飛行体の正確な位置を把握し制御する様々な技術が用いられている。
【0003】
例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)は、GPS(Global Positioning System)信号を使用して飛行体の正確な自己位置を把握する技術であり、一般に広く採用されている。しかしながら、GNSSは、GPS信号を受信できない橋梁の下側では利用することができない。
【0004】
一方、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)は、各種センサから取得した情報から自己位置推定と地図作成を同時に行う技術であり、GPS信号を得ることのできない場所でも利用することができる。そこで、GPS信号を受信できない場所において、測距センサから取得した構造物に対する測距データを使用し、飛行体の正確な自己位置を把握するための技術が提案されている。
【0005】
例えば、特開2016-111414公報には、測距データと撮像により得られた2次元画像データとを利用して自己位置を把握する事により、GPS信号に頼ることなく無人飛行体を構造物との距離を一定に保って飛行させる位置検出システムが開示されている。
【0006】
また、特開2018-181116公報には、無人航空機の絶対位置を計測するためのグローバルセンサを用いて無人航空機の位置を取得する環境取得部と、無人航空機の相対位置を計測するためのローカルセンサを用いて無人航空機の周囲にある物体に対する無人航空機の相対位置を推定する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-111414公報
【文献】特開2018-181116公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SLAMにより飛行体の自己位置を把握する場合、測距手法として、飛行体が移動する速度においても高い精度を維持できるレーザセンサを用いるLiDAR(Light Detection and Ranging)が広く採用されている。しかしながら、水平方向に計測対象物が存在しない解放された部分の多い橋梁の下側では、橋脚の間隔距離が大きくなるとレーザの射程内に物体が存在せずレーザ反射波が欠測となり計測対象物との距離の計測を行うことができず、正確な自己位置を安定して把握し続けることが難しかった。
【0009】
そこで、本発明は、橋脚の間隔距離が大きい橋梁の下側で、撮像手段の搭載された飛行体の正確な自己位置を、レーザセンサを用いて安定して把握し続けながら、構造物の点検に必要な画像を得ることを可能とする橋梁下点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る橋梁下点検システムは、進行方向と速度を把握する移動情報収集装置と検出対象物に対する距離をレーザで測定する距離測定装置が搭載された飛行体を備える。前記距離測定装置は飛行体本体の上部に配置され、前記距離測定装置において所定の照射角の範囲に所定の時間間隔で前記レーザを射出する射出点が、鉛直軸に対し傾倒した軸線を回転軸とした周方向の全域を、前記レーザを射出しながら移動する。
【0011】
前記照射角の範囲に水平方向が含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る橋梁下点検システムによれば、飛行体本体の上部に配置され、検出対象物に対する距離をレーザで測定する距離測定装置において、所定の照射角の範囲に所定の時間間隔でレーザを射出する射出点が、鉛直軸に対し傾倒した軸線を回転軸とし周方向の全域を、レーザを射出しながら移動するため、レーザは周方向におけるいずれかの領域で、橋梁の下部に向けて水平方向に対し所定角度傾斜した上方向と、地上に向けて水平方向に対し所定角度傾斜した下方向に射出されることになる。そのため、周方向におけるいずれかの領域で、橋梁の下部からのレーザ反射波と地上からのレーザ反射波を得ることができる。すなわち、レーザ反射波の欠測無く、地上と橋梁の相対距離を求めることが可能となる。従って、橋脚間隔の距離が大きく橋脚からのレーザ反射波を得ることのできない場所においても、地上と橋梁の相対距離情報と、移動情報収集装置により得られた移動情報に基づき、飛行体の自己位置を安定して把握し続けることが可能となる。
【0013】
射出点の回転軸の鉛直線に対する傾斜角は、飛行体の移動予定経路において橋梁の下部からのレーザ反射波が得られる角度であればよいが、照射角の範囲に水平方向が含まれる角度とすることにより、橋脚がレーザの射程内に入る場所での自己位置をより正確に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る橋梁下点検システムにおいて飛行体の自己位置を把握する原理を模式的に示す図である。
図2】レーザの射出される範囲を平面視で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照しながら、本発明に係る橋梁下点検システムの実施形態を説明する。この実施形態は、橋脚2に架設された橋梁3の下側の状態の点検を目的とし、自立飛行する飛行体1を使用し、点検部位の画像を取得するためのものである。そして、飛行体本体には公知のドローンが使用され、飛行体1の本体には、撮像装置と、動作制御装置と、移動情報収集装置と、距離測定装置が搭載されている。
【0016】
撮像装置には、公知のCCDカメラが採用され、動作制御装置の制御下で、点検対象となる部位の画像が得られるものとなっている。
【0017】
動作制御装置には、公知の演算処理装置が採用されている。飛行経路と撮像地点を記憶し、移動情報収集装置から入力される移動情報と距離測定装置から入力される相対位置情報に基づき自己位置を推定し、飛行体本体の移動を制御し、撮像地点において撮像装置を動作させるものとなっている。
【0018】
移動情報収集装置は、公知のジャイロセンサ、公知の速度センサ、及び、公知の演算処理装置で構成されている。ジャイロセンサにより飛行体本体の進行方向を検出し、速度センサにより速度を検出し、これら進行方向と速度を移動情報として動作制御装置に出力するものとなっている。
【0019】
距離測定装置は検出対象物に対する距離をレーザで測定するもので、所定の照射角Bの範囲に所定の時間間隔でレーザを射出する射出点が、周方向の全域を、レーザを射出しながら移動する公知のLiDAR装置が採用されている。そして、飛行体1の本体の上部に、射出点の回転軸Sが鉛直軸Gに対し傾斜角Aで傾倒する向きに配置されている。すなわち、レーザの射出点が、鉛直軸Gに対し傾倒した軸線を回転軸Sとし周方向の全域を、レーザを射出しながら移動するものとなっている。
【0020】
レーザの射出される範囲Lは、図2に示すように、飛行体1の周方向全域となる。そして、鉛直軸Gと回転軸Sを含む鉛直面において回転軸Sの鉛直軸Gに対して傾倒する方向を真後ろ方向Rと、真後ろ方向Rの正反対の方向を正面方向Fとしたとき、正面方向Fの側の領域LFでは、橋梁3の下部に向けて水平方向に対し傾斜した上方向にレーザが照射されることになる。また、真後ろ方向Rの側の領域LRでは、地面に向けて水平方向に対し傾斜した下方向にレーザが照射されることになる。
【0021】
また、図2において、橋脚2は、その間隔距離Dが大きく、レーザの射程内に入っていないが、正面方向Fの側の領域LFでは橋梁2の下部からのレーザ反射波を、真後ろ方向Rの側の領域LRでは地上からのレーザ反射波を得ることができる。そして、距離測定装置は、これら反射波に基づき得られる、橋梁と地上の相対距離情報を、動作制御装置に出力するものとなっている。
【0022】
なお、の実施形態の距離測定装置では、レーザの照射角Bが30度と、射出間隔が約3マイクロsec(1sec当たりのショット数が約30万回)となっている。ただし、これらの設定に制限はなく、使用状況や点検条件等を考慮して決めることができる。
【0023】
更に、この実施形態において、射出点の回転軸Rの鉛直線Gに対する傾斜角Aは15度とされている。その設定に制限はなく、飛行体1の移動予定経路において、橋梁の下部からのレーザ反射波が得られる角度であれば、使用状況や点検条件等を考慮して決めることができる。ただし、レーザの射出される方向に、すなわち、照射角の範囲に、水平方向が含まれる角度が好ましい。照射角の範囲に水平方向を含めることにより、橋脚がレーザの射程内に入る場所での自己位置をより正確に把握することが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 飛行体
2 橋脚
3 橋梁
A 照射角
B 傾斜角
F 正面方向
G 鉛直軸
L レーザの射出される範囲
LF 正面方向側の領域
LR 真後ろ方向側の領域
R 真後ろ方向
S 回転軸
図1
図2