(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】音響素子集積回路、プローブ及び診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20241204BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R1/40 330
(21)【出願番号】P 2021117661
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2024-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323012807
【氏名又は名称】硅系半導体科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】只木 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】大鋸谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】竹本 良章
(72)【発明者】
【氏名】菊地 広
(72)【発明者】
【氏名】梅村 晋一郎
【審査官】清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/120130(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/182771(WO,A1)
【文献】特開2004-274756(JP,A)
【文献】特表2021-502846(JP,A)
【文献】特開2000-33087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0016026(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0182229(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0182233(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動膜を振動させる容量型の音響素子をそれぞれ単位数で分配した複数個のセルを、同一曲面上において2次元に配列し、
前記複数個のセルのそれぞれにおいて、前記音響素子のそれぞれの送信機能を有する部分を前記単位数毎に駆動する励振回路と、
前記複数個のセルのそれぞれにおいて、前記音響素子のそれぞれの受信機能を有する部分から出力された受信信号を前記単位数毎に処理する受信回路と
を前記複数個のセルのそれぞれのセル内回路として含み、
前記励振回路が、前記振動膜を振動させる高電圧ドライバを集積化したチップと、前記高電圧ドライバよりも低電圧で動作する回路を集積化したチップに振り分けられ、
前記セル内回路を個別に制御することにより、前記複数個のセルをそれぞれ独立して駆動し、前記複数個のセルを2次元動作可能としたことを特徴とする音響素子集積回路。
【請求項2】
前記音響素子が、第1チップに集積化され、
前記高電圧ドライバが第2チップに集積化され、
前記高電圧ドライバよりも低電圧で動作する前記励振回路の回路及び前記受信回路が、前記第1チップの前記複数個のセルの配列に対応したパターンで第3チップに集積化され、
ていることを特徴とする請求項1記載の音響素子集積回路。
【請求項3】
前記音響素子と前記高電圧ドライバが第1チップに集積化され、
前記高電圧ドライバよりも低電圧で動作する前記励振回路の回路及び前記受信回路が、前記第1チップの前記複数個のセルの配列に対応したパターンで第2チップに集積化され、
ていることを特徴とする請求項1記載の音響素子集積回路。
【請求項4】
前記音響素子は単一の振動空洞を有して、
送受信機能を実現する素子であり、
前記第2チップには、前記励振回路と前記音響素子との接続及び前記音響素子と前記受信回路の接続を切り替えるスイッチが、前記2次元の配列に対応して配列して各セルに備えられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の音響素子集積回路。
【請求項5】
前記音響素子は送信用の振動空洞と受信用の振動空洞を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の音響素子集積回路。
【請求項6】
前記第2チップに20V以上の大信号レベルの回路が集積化され、前記第3チップに20V未満の小信号レベルの回路が集積化されることを特徴とする請求項2に記載の音響素子集積回路。
【請求項7】
前記第3チップに前記励振回路を構成する遅延回路又は波形発生回路及び前記受信回路が集積化されることを特徴とする請求項2又は6に記載の音響素子集積回路。
【請求項8】
前記複数個のセルに共通な回路として、前記複数個のセルをそれぞれ独立して動作させる送受信制御部を前記第3チップに備えることを特徴とする請求項2、6及び7のいずれか1項に記載の音響素子集積回路。
【請求項9】
前記第1チップに20V以上の大信号レベルの回路が集積化され、前記第2チップに20V未満の小信号レベルの回路が集積化されることを特徴とする請求項3に記載の音響素子集積回路。
【請求項10】
前記第2チップに前記励振回路を構成する遅延回路又は波形発生回路及び前記受信回路が集積化されることを特徴とする請求項9に記載の音響素子集積回路。
【請求項11】
前記複数個のセルに共通な回路として、前記複数個のセルをそれぞれ独立して動作させる送受信制御部を前記第2チップに備えることを特徴とする請求項3,9及び10のいずれか1項に記載の音響素子集積回路。
【請求項12】
振動膜を振動させる容量型の音響素子をそれぞれ単位数で分配した複数個のセルを同一曲面上において2次元に配列し、前記複数個のセルのそれぞれにおいて前記音響素子のそれぞれの送信機能を有する部分を前記単位数毎に駆動する励振回路と、前記複数個のセルのそれぞれにおいて前記音響素子のそれぞれの受信機能を有する部分から出力された受信信号を前記単位数毎に処理する受信回路とを前記複数個のセルのそれぞれのセル内回路として含む音響素子集積回路と、
該音響素子集積回路を収納するプローブ筐体と、
を備え、前記励振回路が、前記振動膜を振動させる高電圧ドライバを集積化したチップと、前記高電圧ドライバよりも低電圧で動作する回路を集積化したチップに振り分けられ、
前記セル内回路を個別に制御することにより、前記複数個のセルをそれぞれ独立して駆動し、前記複数個のセルを2次元動作可能としたことを特徴とするプローブ。
【請求項13】
前記プローブ筐体の内部に、前記複数個のセルに共通な回路として、前記複数個のセルをそれぞれ独立して動作させる送受信制御部を更に備えることを特徴とする請求項
12に記載のプローブ。
【請求項14】
振動膜を振動させる容量型の音響素子をそれぞれ単位数で分配した複数個のセルを同一曲面上において2次元に配列し、前記複数個のセルのそれぞれにおいて前記音響素子のそれぞれの送信機能を有する部分を前記単位数毎に駆動する励振回路と、前記複数個のセルのそれぞれにおいて前記音響素子のそれぞれの受信機能を有する部分から出力された受信信号を前記単位数毎に処理する受信回路とを前記複数個のセルのそれぞれのセル内回路として含む音響素子集積回路と、
前記複数個のセルに共通な回路として、前記複数個のセルをそれぞれ独立して動作させる送受信制御部と、
前記送受信制御部からの信号に基づき画像を表示する表示部と、
を備え、
前記励振回路が、前記振動膜を振動させる高電圧ドライバを集積化したチップと、前記高電圧ドライバよりも低電圧で動作する回路を集積化したチップに振り分けられ、
前記セル内回路を個別に制御することにより、前記複数個のセルをそれぞれ独立して駆動し、前記複数個のセルを2次元動作可能としたことを特徴とする診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量型の音響素子を集積化した音響素子集積回路、この音響素子集積回路を用いたプローブ、及びこのプローブを有する診断装置に係り、特に、複数の音響素子をアレイ状に配列した撮像用の音響素子集積回路、プローブ及び診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療目的の超音波探触子では、従来は圧電性の音響素子が用いられていた。しかし、圧電性の場合、音響素子の振動子と人体との音響インピーダンスの違いが大きいため、音響インピーダンスの整合の問題が、ボトルネックとなっていた。近年、微小電気機械システム(MEMS)技術を利用して、振動空洞を有する容量型の音響素子が開発された。この容量型の音響素子は、「容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(cMUT)」と呼ばれているが、人体との音響インピーダンスが近い特徴がある。しかし、cMUTを用いた2次元フェーズド・アレイ動作等に関しては、現在のところ未開発である。音響素子の2次元動作に関しては、1チップ内に送信用音響素子と受信用音響素子を別々に設け、超音波ビームを走査する方向を長軸方向、長軸方向と直交する方向を短軸方向と定義し、1次元方向の超音波ビームを制御する技術が提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の記載の発明のように、超音波ビームを長軸方向と直交する短軸方向に分割して積層する技術では、2層目チップに届く超音波が減少し受信感度が低下する。又、2次元配列された音響素子のうち、列バス・ラインに接続された複数の音響素子を一括で動作させる手法は特許文献2に記載されている。特許文献2の
図15及び16には、水平なバス・ライン又は垂直なバス・ラインが開示されている。しかし、各音響素子は水平なバス・ライン又は垂直なバス・ラインのいずれかに接続しており、2次元マトリクスの交点の音響素子を独立に制御する2次元フェーズド・アレイ動作に関するものではない。
【0004】
2次元フェーズド・アレイ動作には、2次元配列された音響素子をそれぞれ独立に動作させる技術が必要となる。最近になり、音響素子を複数配列したチップと、音響素子の配列に合わせてそれぞれの音響素子を励振する励振回路を配列したアナログ用特定用途向け集積回路(ASIC)のチップと、音響素子の配列に合わせてそれぞれの音響素子の受信回路を配列したデジタル用ASICチップを積層した技術が提案された(特許文献3参照。)。しかし、特許文献3には、音響素子を1次元または2次元に配置され得る旨の記載はあるが、しかし、2次元配列された音響素子において、隣接する音響素子の相互の動作のタイミングや、2次元に配列した音響素子のそれぞれを、2次元アレイとしてどのように動作させるか等の具体的手段については全く開示がされていない。
【0005】
さて、容量型の音響素子は、真空に近く減圧された振動空洞を介して振動可能な振動膜を備える。そして、超音波送信時にこの振動膜を振動させるために高電圧が必要となる。しかしながら、例えば100V程度以上の高電圧が必要な励振回路と、高電圧を必要としない受信回路では集積回路のレイアウト設計や用いる半導体基板の条件が異なるので、製造技術上の問題や、製造後の信頼性の問題が発生する。例えば、高電圧回路と低電圧回路では、集積回路に用いる基板の不純物密度(比抵抗)、最小線幅、表面配線の厚さや構造、放熱設計等の設計基準が互いに異なる。特に高電圧回路にはガードリング等の高電圧に固有の構造や、合金等の金属学的接合における劣化や反応の進行の問題が存在する。高電圧回路と低電圧回路を同一チップに混在させる場合は、高電圧回路と低電圧回路を同一工程で実施できないプロセスを含むので製造工程が長くなる問題もある。
【0006】
更に、高電圧回路が低電圧回路に及ぼす電界強度や静電誘導効果等による相互干渉の問題、更には電界集中によるリーク電流の発生や寄生トランジスタの動作の問題も考慮する必要がある。この点に関し、特許文献3に記載の発明では、アナログ用ASICのチップにアナログデジタル変換器(ADC)の回路を含む発明であり、設計基準の異なる高電圧回路と低電圧回路が混在している。特許文献3の段落[0023],[0030]等の欄には、アナログ用ASICのチップには、1つ以上のアナログ増幅器、1つ以上のアナログフィルタ、アナログビームフォーミング回路、アナログデチャープ回路、アナログ直交復調(AQDM)回路、アナログ時間遅延回路、アナログ位相シフタ回路、アナログ加算回路、アナログ時間利得補償回路、アナログ平均化回路、および/または1つ以上のアナログデジタル変換器を含み得るとも記載されている。
【0007】
特許文献3の段落[0035],[0060]等の欄の記載によれば、アナログ用ASICのチップにはクロッキング回路224と、制御回路226と、シーケンス回路228等が含まれる。特許文献3に記載の発明のように、電圧レベルの異なる高電圧回路と低電圧回路とが同一チップに混在している場合は、製造上および性能・信頼性の課題が発生する。なお、上述した特許文献1記載の発明でも、電圧レベルの異なる高電圧回路と低電圧回路が同一チップに混在しており、製造上および性能・信頼性の課題がある。又、特許文献2に記載された発明でも、単一のASICアレイのチップに高電圧回路と低電圧回路を混在させており、性能・信頼性の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-130357号公報
【文献】特表2008-517736号公報
【文献】特表2021-502846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した問題を鑑み、本発明は高分解能で高品質の2次元画像を得ることが可能で、製造歩留まりが高く且つ信頼性に優れた音響素子集積回路、この音響素子集積回路を用いたプローブ、及びこのプローブを有する診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様は、振動膜を振動させる容量型の音響素子をそれぞれ単位数で分配した複数個のセルを、同一曲面上において2次元に配列した音響素子集積回路に関する。ここで、「同一曲面」を規定している「曲面」とは、ユークリッド空間における曲面であるが、ガウス曲率と平均曲率が共にゼロの場合がユークリッド平面になる。第1態様に係る音響素子集積回路は、(a)複数個のセルのそれぞれにおいて、音響素子のそれぞれの送信機能を有する部分を単位数毎に駆動する励振回路と、(b)複数個のセルのそれぞれにおいて、音響素子のそれぞれの受信機能を有する部分から出力された受信信号を単位数毎に処理する受信回路を、複数個のセルのそれぞれのセル内回路として含む。第1態様に係る音響素子集積回路の励振回路は、振動膜を振動させる高電圧ドライバを集積化したチップと、高電圧ドライバよりも低電圧で動作する回路を集積化したチップに振り分けられる。第1態様に係る音響素子集積回路は、セル内回路を個別に制御することにより、複数個のセルをそれぞれ独立して駆動し、複数個のセルを2次元動作可能である。
【0011】
本発明の第2態様は、第1態様に係る音響素子集積回路を備えるプローブであることを要旨とする。本発明の第3態様は、第2態様に係るプローブからの信号に基づき画像を表示する表示部と備える診断装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高分解能で高品質の2次元画像を得ることが可能で、製造歩留まりが高く且つ信頼性に優れた音響素子集積回路、この音響素子集積回路を用いたプローブ、及びこのプローブを有する診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る音響素子集積回路の素子アレイの平面パターンの概略を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る音響素子集積回路の素子アレイを駆動する周辺回路を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る音響素子集積回路を構成するセルと、このセルに集積化されるセル内回路の例を示す図である。
【
図4】
図3のセル内回路を3D構造に集積化する場合の機能ブロックの割り振りの例を示す概念図である。
【
図5】
図4の概念図を具体的に実現するためのブロック図を含む模式図である。
【
図6A】第1実施形態に係る診断装置の例を示す図である。
【
図6B】
図6Aに示した診断装置のプローブ筐体の構造例を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る診断装置の他の例を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る音響素子集積回路を構成するセルと、このセルに集積化されるセル内回路の例を示すブロック図である。
【
図9】第2実施形態に係る送信素子と受信素子を集積化した素子アレイであって、両者の形状が六角形で同じであるが、数が異なる場合の例を示す平面図である。
【
図10】
図9のX-X方向からみた、第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップの構造を説明する階段断面図である。
【
図11】第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップの他の構造を説明する断面図である。
【
図12】
図3の各機能ブロックを3D構造に集積化する場合の各機能ブロックの割り振りの例を示す概念図である。
【
図13】
図12の概念図を具体的に実現するためのブロック図を含む模式図である。
【
図14A】第2実施形態に係る音響素子集積回路の製造方法を説明する工程断面図である(その1)。
【
図14B】第2実施形態に係る音響素子集積回路の製造方法を説明する工程断面図である(その2)。
【
図14C】第2実施形態に係る音響素子集積回路の製造方法を説明する工程断面図である(その3)。
【
図14D】第2実施形態に係る音響素子集積回路の製造方法を説明する工程断面図である(その4)。
【
図14E】第2実施形態に係る音響素子集積回路の製造方法を説明する工程断面図である(その5)。
【
図15A】第2実施形態に係る音響素子集積回路の他の製造方法を説明する工程断面図である(その1)。
【
図15B】
図15Aに続く第2実施形態に係る音響素子集積回路の製造方法を説明する工程断面図である(その2)。
【
図15C】
図15Bに続く第2実施形態に係る音響素子集積回路の製造方法を説明する工程断面図である(その3)。
【
図15D】
図15Cに続く第2実施形態に係る音響素子集積回路の製造方法を説明する工程断面図である(その4)。
【
図16】第3実施形態に係る音響素子集積回路が2つの半導体チップの積層構造で構成される場合の各機能ブロックの割り振りを示す概念図である。
【
図17】
図16の概念図を具体的に実現するためのブロック図を含む模式図である。
【
図18A】送信素子と受信素子を集積化した素子アレイにおいて、両者の形状が六角形で同じであるが、サイズが異なる場合の例を示す平面図である。
【
図18B】送信素子と受信素子を集積化した素子アレイにおいて、両者の形状が四角形で同じであるが、数が異なる場合の例を示す平面図である。
【
図18C】送信素子と受信素子を集積化した素子アレイにおいて、両者の形状及びサイズがそれぞれ異なる場合の例を示す平面図である。
【
図18D】送信素子と受信素子を集積化した素子アレイにおいて、両者の形状及びサイズがそれぞれ異なる場合の他の例を示す平面図である。
【
図18E】送信素子と受信素子を集積化した素子アレイにおいて、両者の形状及びサイズがそれぞれ異なる場合の他の例を示す平面図である。
【
図19】その他の実施形態に係る音響素子集積回路の応用例として、ハイドロフォンの構造の概略を例示する模式図である。
【
図20】第1実施形態に係る音響素子集積回路の第2チップの構造例の概略を、素子分離領域の構造を中心に説明する断面図である。
【
図21】第1実施形態に係る音響素子集積回路の第2チップの他の構造例の概略を、素子分離領域の構造を中心に説明する断面図である。
【
図22】
図22(a)は、第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路の高電圧ドライバの特性を説明する模式図で、
図22(b)は対応する振動膜の振動を説明する模式図である。
【
図23】
図23(a)は、
図22に例示したフルスイングの場合の駆動電圧波形と超音波の音圧波形をより詳細に模式的に示す拡大図で、
図23(b)は90%スイングの場合の駆動電圧波形と超音波の音圧波形を模式的に示す拡大図である。
【
図24】
図24(a)は、従来の容量型の音響素子を駆動する高電圧ドライバの特性を説明する模式図で、
図22(b)は対応する振動膜の振動を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、図面を参照して、本発明の第1~第3実施形態を説明することにより、本発明を例示的に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
ユークリッド空間における等方で一様な2次元面は、ガウス曲率が場所に依存せず一定である。以下の第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路等の説明においては、便宜上、ガウス曲率及び平均曲率が共にゼロ(曲率半径無限大)の曲面としての「同一平面」を取り上げ、複数の音響素子を同一平面上に2次元に配列した場合を例示する。しかし、第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路で説明する技術的思想の意味する曲面は「平面」に限定されるものではない。ガウス曲率及び平均曲率が共にゼロの場合がユークリッド平面であるが、第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路で説明する技術的思想は、円筒面、球面、楕円面、放物面等の、種々の同一曲面上に複数の音響素子が2次元に配列される態様であっても、同様に適用可能である。
【0016】
又、以下に示す第1~第3実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及びその方法に用いる装置等を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等、方法の手順等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、第1~第3実施形態で記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された請求項の発明特定事項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る音響素子集積回路は、
図1に示すように、素子アレイ部301aに、それぞれ単位数の音響素子をセットとして内部に分配したセルX
a11,X
a12,X
a13,………,X
ai(j-1),X
aij,X
ai(j+1),…を、同一平面上(同一曲面上)において配列して2次元マトリクスを構成した平面レイアウトである。
図1では、セルX
a11,X
a12,X
a13等の平面パターンが矩形の場合を例示しているが、セルX
a11,X
a12,X
a13等の平面パターンは、矩形に限定されず、六角形や八角形等種々の平面パターンが採用可能である。
図1では右下に配置された第i行、第(j+1)列のセルX
ai(j+1)の内部に黒丸で模式的に示したのは、電気信号を超音波信号に変換し、この超音波信号を対象物に向けて出射し、且つ対象物からの超音波の反射信号を受信して電気信号に変換する双方向性を有した容量型の音響素子23
i(j+1)である。
【0018】
図1ではセルX
ai(j+1)の内部に黒丸が1個しかない場合を示したが、例示に過ぎない。黒丸の数は1個に限定されず、セルX
ai(j+1)の内部に黒丸は2個以上をセットとして存在していても構わない。即ち、第1実施形態に係る音響素子集積回路においては、同一面上に定義される2次元マトリクスを構成するセルのアレイにおいて、それぞれのセルに単位数n(nは1以上の正の整数)の音響素子がセットとして分配され、この単位数nの音響素子をセル内回路で一括駆動する場合に一般化可能である。しかし、第1実施形態に係る音響素子集積回路においては、簡単化のために、単位数n=1の場合について例示的に説明する。第1実施形態に係る音響素子集積回路の技術的思想は、n個の音響素子の1セットで1セルを構成し、この1セルに対応して、内蔵される回路セット1式をセル内回路として、単位数のセットで構成されたn個の音響素子を、セル内回路がそれぞれ一括駆動する場合に拡張可能である。したがって、
図1はそれぞれのセルに黒丸は2個、3個、4個、………がセットとして配置された態様に拡張可能である。
【0019】
容量型の音響素子23i(j+1)には、超音波を発生させるための振動空洞が備えられている。n個の単位数の音響素子が配置される場合は、セルXai(j+1)の内部にはn個の振動空洞が含まれる。同一面上に定義される2次元マトリクスを構成するすべての音響素子に符号を付すことは省略しているが、第3行、第(j+1)列のセルXa3(j+1)の内部にも、振動空洞を備えた音響素子233(j-1)が、他の代表として符号を付して示されている。同様に第3行、第3列のセルXa33の内部にも、振動空洞を備えた音響素子233(j-1)が符号を付して示され、第i行、第3列のセルXai3の内部に、振動空洞を備えた音響素子23i3が符号を付して示されている。
【0020】
図1に模式的に示した容量型の音響素子23
i(j-1)は、圧電性の音響素子に比して、人体との音響インピーダンスの整合を必要としないので、医療目的には好適であるが、静電力で膜を振動させて超音波を発生させるため、例えば、200V程度の高電圧が必要となる。第1実施形態に係る音響素子集積回路はこの高電圧で膜を振動させ、且つ微細化して、高い分解能を実現するために積層構造を採用した3次元(3D)集積回路構造をなしている。後述する
図4及び
図5等には、同一平面上において2次元に配列されるセルX
ai(j-1),X
aij,X
ai(j+1)等の単位構造が、第1チップ501、第2チップ502及び第3チップ503の積層構造で構成された3D集積回路構造の一部として示されている。なお、本発明の第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路の説明においては、2次元の配列としてデカルト座標系(X-Y直交座標系)の配列を例示的に説明するが、デカルト座標系(カーテシアン座標系)に限定されるものではない。2次元の配列には、同心円のパターン等、半径rと偏角θで表記される極座標系等の配列が含まれてもよく、更には3次元ヘルムホルツ(Helmholtz)方程式を2成分に分解が可能な種々の直交座標系における配列が含まれてもよい。
【0021】
振動空洞を有する容量型の音響素子の振動膜を高電圧で振動させるためには、高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)が必要となる。「高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)」とは振動膜を振動させるため20V以上、具体的には50V以上若しくは100V以上等の大信号レベルの回路である。
図1においては、右下のセルX
ai(j+1)等の内部に破線(隠れ線)で第2チップ502に集積化された高電圧ドライバ34
i(j+1)の平面パターンを、模式的に図示している。n個の単位数の音響素子がセルX
ai(j+1)等の内部に配置される場合は、高電圧ドライバ34
i(j+1)は、セルX
ai(j+1)の内部に単位数として含まれるn個の音響素子を一括駆動する。符号を付すのを省略しているが、ほぼ正方形で示したセルX
a11,X
a12,X
a13等の平面パターンの内部に、セルX
a11,X
a12,X
a13等の平面パターンより小さな破線で示した長方形が、各セルX
a11,X
a12,X
a13,………,X
ai(j-1),X
aij,X
ai(j+1),…の第2チップ502に集積化された高電圧ドライバの平面パターンである。
【0022】
セルX
ai(j-1),X
aij,X
ai(j+1)等のセル毎の単位構造が、それぞれ第1チップ501、第2チップ502及び第3チップ503を積層した3D集積回路構造によって構成されることから、第1チップ501と第2チップ502を電気的に接続する接続手段や、第2チップ502と第3チップ503を電気的に接続する接続手段が必要になる。
図1の右下の第i行、第(j+1)列のセルX
ai(j+1)の矩形の右下の隅に、×印を付した小さな矩形で模式的に示したのは、第2チップ502と第3チップ503を電気的に接続する際に、第2チップ502の下面側に設けられる接続ビアプラグ(以下において「接続プラグ」という。)V
i(j-1)である。すべての接続プラグに符号を付すことは省略しているが、第i行、第3列のセルX
ai3の右隅にも、接続プラグV
i3が示されている。同様に第3行、第1列のセルX
a31の右隅に接続プラグV
31が示され、第3行、第2列のセルの右隅に接続プラグV
32が示され、第3行、第3列のセルX
a33の右隅に接続プラグV
33が示されている。更に、第3行、第(j-1)列のセルX
a3(j-1)の右隅に接続プラグV
3(j-1)が示され、第3行、第j列のセルX
a3jの右隅に接続プラグV
3jが示され、第3行、第(j+1)列のセルX
a3(j+1)の右隅に接続プラグV
3(j+1)が示されている。
【0023】
図1では簡略化し、各セルの右隅に接続プラグが1個しかないモデル図を表示しているが、後述の
図5等から分かるように、実際には接続プラグは各セルに複数個存在する。n個の単位数の音響素子がセットとして各セルの内部に配置される場合は、接続プラグはn個の音響素子のセットに共通に作用する。したがって、n個の単位数の音響素子が各セルの内部に配置される場合は、接続プラグの総数を削減でき、接続プラグは各セルの内部に単位数として含まれるn個の音響素子のセットに対する共通の電気的部材として機能する。
【0024】
図1では、各セルX
a3(j+1)の1個の接続プラグV
i(j+1)に着目して説明するが、複数のセルX
a3(j+1)にそれぞれ備えられた接続プラグV
i(j+1)のアレイのx方向のピッチ及びy方向のピッチを、それぞれ複数のセルX
a3(j+1)のアレイのx方向のピッチ及びy方向のピッチに対して半ピッチ程度ずらせばよい。実際に各セルX
a3(j+1)に複数個存在する他の接続プラグに関しても、同様には半ピッチ程度ずらした周期的構造にすればよい。即ち、接続プラグが複数個存在する場合であっても、3D集積回路構造を構成するように異なるチップに集積化された音響素子23
i(j+1)等のそれぞれの振動空洞と構成する高電圧ドライバ34
(j+1)とは、
図1に示した技術思想にそって、互いにオーバーラップする位置に配置され、音響素子23
i(j+1)と接続プラグV
i(j+1)とは互いにオーバーラップしない位置に配置される。
【0025】
図2に示すように、素子アレイ部301aの上辺部の上側には、列ドライバ302が配置され、素子アレイ部301aの右辺部の右側には、行ドライバ303が配置されている。更に、素子アレイ部301aの下辺部の下側には、出力バッファ回路304が配置されている。素子アレイ部301aに2次元マトリクス状に多数のセルX
aij(i=1~m,j=1~n;m,nはそれぞれ2以上の正の整数である。)を配列して、方形状の出射・撮像領域を構成して、2次元フェーズド・アレイ動作を可能にしている。
【0026】
行ドライバ303から出力されるワード線W1,W2,W3,………,W(i-1),Wi,………Wnによって素子アレイ部301a内の各セル行が、セル行単位で走査される。即ち、第1行目のワード線W1によって、第1行目のセル行Xa11,Xa12,Xa13,………,Xa1(j-1),Xa1j,Xa1(j+1),………が走査される。又、第2行目のワード線W2によって第1行目のセル行Xa21,………が走査され、第3行目のワード線W3によって第3行目のセル行Xa31,………が走査される。更に、第i行目のワード線Wiによって第i行目のセル行Xai1,Xai2,Xai3,………,Xai(j-1),Xaij,Xai(j+1),………が走査される。
【0027】
一方、列ドライバ302から出力されるビット線B1,B2,B3,………,B(j-1),Bj,B(j+1),………Bmによって素子アレイ部301a内の各セル列が、セル列単位で、順次走査される。例えば、第1列目のビット線B1によって第1列目のセル列Xa11,Xa21,Xa23,………,Xai1,………Xan1が走査される。又、 第2列目のビット線B2によって第1列目のセル列Xa12,………,Xai2,………Xan2が走査され、第3列目のビット線B3によって第3列目のセル列Xa31,………,Xai3,………Xan3;………が走査される。更に、第(j-1)列目のビット線B(j-1)によって第(j-1)列目のセル列………,Xai(j-1),………が走査され、第j列目のビット線Bjによって第j列目のセル列………,Xaij,………,Xanj,………が走査され、第(j+1)列目のビット線B(j+1)によって第(j+1)列目のセル列………,Xai(j+1),………が走査され、第m列目のビット線Bmによって第m列目のセル列………,Xaim,………,Xanmが走査される。
【0028】
このように、ワード線W1,W2,W3,………,W(i-1),Wi,………Wnによって素子アレイ部301a内の各セル行が、セル行単位で走査され、ビット線B1,B2,B3,………,B(j-1),Bj,B(j+1),………Bmによって各セル列が、セル列単位で順次走査されて、超音波信号の2次元アレイ放射やセル信号の読み出し動作が実行される。即ち、本発明の第1実施形態に係る音響素子集積回路では、素子アレイ部301aを各セル行Xa11,Xa12,Xa13,………,Xai(j-1),Xaij,Xai(j+1),………単位で、順次垂直方向に沿って走査することにより、各セル行Xa11,Xa12,Xa13,………,Xai(j-1),Xaij,Xai(j+1),………のセル信号を各セル列Xa11,Xa12,Xa13,………,Xai1,Xai2,Xai3,………毎に設けられた垂直出力信号線R1,R2,R3,………,R(j-1),Rj,R(j+1),………によって読み出す構成となっている。
【0029】
図3には、
図1及び
図2に示した素子アレイ301aの第i行に配列されたセルX
aij及びセルX
ai(j+1)と、セルX
aij,X
ai(j+1)とを駆動制御する送受信制御部30と、送受信制御部30に接続された表示部40からなる構成をブロック図で示す。
図3の上段のセルX
aijは、素子アレイ301aを構成しているマトリクスの第i行、第j列に位置するセルである。セルX
aijは、送受信機能を備えた双方向性の音響素子23
aijと、音響素子23
aijに電気的に接続され、音響素子23
aijに送られる励振信号と音響素子23
aijから送られてきた受信信号を切り替えるスイッチ35を有する。セルX
aijの音響素子23
aijは、
図3の上段に矢印で示すように、超音波信号s
1ijを発生し、超音波信号s
1ijを対象物に出射すると共に、対象物からの反射信号s
2ijを受信して電気信号に変換する双方向性の機能を有する。
【0030】
セルXaijのスイッチ35の2つの入力端子には、第i行のワード線Wiと第j列のビット線Bjがそれぞれ接続され、ワード線Wiとビット線Bjによって音響素子23aijの動作が制御できるように構成されている。例えば、セルXaijのスイッチ35に2入力のANDゲートを設け、ワード線Wiの信号がハイレベル且つビット線Bjの信号がハイレベルのときにのみ、動作するようにしておけば、素子アレイ301aを構成しているマトリクスの任意の位置のセルのスイッチのみを選択的に動作させることができる。
【0031】
セルXaijのスイッチ35には、音響素子23aijの振動膜を励振する励振信号を生成する励振回路Tijと、音響素子23aijから送られてきた受信信号を処理する受信回路Rijが接続されている。そして、セルXaijの励振回路Tijは、遅延回路33と高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)34を含み、受信回路Rijは、アンプ36とAD変換回路37を含む。即ち、遅延回路33、高電圧ドライバ34、スイッチ35、アンプ36及びAD変換回路37が、第i行、第j列のセルXaijを構成する音響素子23aijに対してセル内回路として3D構造によってコンパクトに集積化されている。励振回路Tijが遅延回路33を有しているので、2次元フェーズド・アレイ動作を目的とする場合は、スイッチ35に入力させるビット線Bjの信号は必須ではない。第i行の励振行選択線SWiに接続されたすべての音響素子23ij,23i(j+1),………が励振された場合であっても、それぞれの音響素子23ij,23i(j+1),………の励振信号には位相差が発生するので、行毎に順次駆動することにより、行毎のフェーズド・アレイ動作が可能であるからである。
【0032】
一方、
図3の下段のセルX
ai(j+1)は、第i行、第(j+1)列に位置する。セルX
ai(j+1)は、第i行、第j列のセルX
aijと同様に、送受信機能を備えた双方向性の音響素子23
ai(j+1)と、音響素子23
ai(j+1)に電気的に接続され、音響素子23
ai(j+1)に送られる励振信号と音響素子23
ai(j+1)から送られてきた受信信号を切り替えるスイッチ35を有する。音響素子23
ai(j+1)は、
図3の下段に矢印で示すように、超音波信号s
1i(j+1)を発生し、超音波信号s
1i(j+1)を対象物に出射すると共に、対象物からの反射信号s
2i(j+1)を受信して電気信号に変換する双方向性の機能を有する。
図3の下段のセルX
ai(j+1)のスイッチ35には、セルX
ai(j+1)のスイッチ35の2つの入力端子には、第i行のワード線W
iと第(j+1)列のビット線B
(j+1)がそれぞれ接続され、ワード線W
iとビット線B
(j+1)によって音響素子23
ai(j+1)の動作が制御できるように構成されている。セルX
aijのスイッチ35と同様に、セルX
ai(j+1)のスイッチ35にも2入力のANDゲートを設け、ワード線W
iの信号がハイレベル且つビット線B
(j+1)の信号がハイレベルのときにのみ、動作するように構成できる。
【0033】
セルXai(j+1)のスイッチ35にも、音響素子23ai(j+1)の振動膜を励振する励振信号を生成する励振回路Ti(j+1)と、音響素子23ai(j+1)から送られてきた受信信号を処理する受信回路Ri(j+1)が接続されている。そして、励振回路Ti(j+1)は、遅延回路33と高電圧ドライバ34を含み、受信回路Ri(j+1)は、アンプ36とAD変換回路37を含む。第i行、第j列の音響素子23ijの場合と同様に、励振回路Ti(j+1)が遅延回路33を有しているので、2次元フェーズド・アレイ動作を目的とする場合は、ビット線B(j+1)の信号は必須ではない。第i行の励振行選択線SWiに接続されたすべての音響素子23ij,23i(j+1),………が励振された場合であっても、それぞれの音響素子23ij,23i(j+1),………の励振信号には位相差が発生するので、行毎に順次駆動することにより、行毎のフェーズド・アレイ動作が可能であるからである。第i行、第j列の音響素子23aijと同様に、遅延回路33、高電圧ドライバ34、スイッチ35、アンプ36及びAD変換回路37が、第i行、第(j+1)列のセルXai(j+1)を構成する音響素子23ai(j+1)に対して、セル内回路として3D構造によってコンパクトに集積化されている。
【0034】
図3の上段のセルX
aijの遅延回路33及びAD変換回路37には、基準クロック発生回路31が接続され、下段のセルX
ai(j+1)の遅延回路33及びAD変換回路37にも、基準クロック発生回路31が接続されている。更に、セルX
aijの遅延回路33とセルX
ai(j+1)の遅延回路33には、波形発生回路32が接続され、波形発生回路32は基準クロック発生回路31にも接続されている。更に、セルX
aijのAD変換回路37とセルX
ai(j+1)のAD変換回路37には、タイミング調整回路38が接続され、タイミング調整回路38は基準クロック発生回路31にも接続されている。基準クロック発生回路31とタイミング調整回路38には画像処理回路39が接続され、画像処理回路39は表示部40が接続されている。
【0035】
図3に例示したとおり、上段のセルX
aijと下段のセルX
ai(j+1)に共通に、基準クロック発生回路31、波形発生回路32、タイミング調整回路38、画像処理回路39、表示部40が設けられている。32×32以下程度の小規模のマトリクスの場合であれば、波形発生回路32に行毎に選別して励振信号を逐次発生させる機能を持たせれば、超音波の発生(送信)に関して、セルX
aij,X
ai(j+1),………のそれぞれのスイッチ35にワード線W
iの信号を入力する回路構成を省略しても、セル行毎の音響素子23
ij,23
i(j+1),………の逐次駆動が可能になる。基準クロック発生回路31、波形発生回路32、タイミング調整回路38及び画像処理回路39は、後述する
図6A及び
図7に示す送受信制御部30を構成している。超音波信号の各セルX
aij,X
ai(j+1),………からの受信信号の処理に関しては、アンプ36にワード線W
iの信号を入力することにより2次元マトリクスに配置された各行の選択が可能になる。超音波撮像用の受信信号のデータとしては、超音波の1/2波長に1個の空間情報が含まれる。このため、撮像用の受信信号の処理の際に、超音波の周波数よりも1桁程度速い(高い)クロック信号をワード線W
iの信号として用い、超音波信号をサンプリングして各行を選択すればよい。
【0036】
画像処理回路39は、タイミング調整回路38から入力された信号を適宜保持、及び演算することによって3次元データまたは2次元データを保持、及び出力する事が出来る。
図3に例示したセルX
aijとセルX
ai(j+1)は、
図6A及び
図7に示した素子アレイ301aの一部に対応するセルを表現していることになる。送受信制御部30と送受信制御部30に接続された表示部40に含まれる、それぞれの機能ブロックは、2次元マトリクスを構成している素子アレイ301aのすべてのセルX
aij,X
ai(j+1),………に共通に設けられる。
【0037】
第1実施形態に係る音響素子集積回路は、
図3に示すように、セルX
aij,X
ai(j+1)),………を含む素子アレイ301aと、素子アレイ301aに含まれるすべてのセルX
aij,X
ai(j+1),………等に共通の送受信制御部30で構成され、第1実施形態に係る音響素子集積回路には表示部40が接続されている。励振回路T
ijと受信回路R
ijがセルX
aijに設けられ、励振回路T
i(j+1)と受信回路R
i(j+1)がセルX
ai(j+1)にセル内回路として、それぞれ個別に設けられているので、セルX
ai(j+1)はセルX
aijとは独立して制御できる。すべてのセルを意味する包括表現、即ち代表してのセルX
aijで一般化表現すれば、励振回路T
ijと受信回路R
ijが、素子アレイ301aを構成しているすべてのセルX
aijに個別に設けられるので、2次元マトリクスの交点に位置する各セルX
aij,X
ai(j+1),…が、スイッチ35を介してランダムアクセス可能であり、各セルX
aij,X
ai(j+1),…が個別に制御できる。2次元マトリクス状に配置された各セルX
aij,X
ai(j+1),…の動作を個別にランダムアクセス制御できれば、例えば、超音波送信時においては、送信する超音波の波面を、2次元の面内で、自由に変えることが可能な2次元フェーズド・アレイを構成できる。
【0038】
図3の右側に示した送受信制御部30の一部の回路となる基準クロック発生回路31は、同一面上に定義される2次元マトリクスを構成する各セルX
aij,X
ai(j+1),…に、それぞれ独立して設けられた各機能ブロックの動作のタイミングを決定するための基準クロック信号を発生する。送受信制御部30の波形発生回路32は、基準クロック発生回路31が出力する基準クロック信号に基づいて、セルX
aijの音響素子23
aijに、超音波パルスを発生させるための励振信号を発生する。波形発生回路32は、更に基準クロック信号に基づいて、各セルX
ai(j+1)の音響素子23
ai(j+1)に、超音波パルスを発生させるための励振信号を発生する。各セルX
aij,X
ai(j+1),…にそれぞれ設けられた遅延回路33は、フェーズド・アレイ動作を行わせるために、波形発生回路32が出力した励振信号に対し、各セルX
aij,X
ai(j+1),…毎に異なる位相の遅延を生成する。励振信号に対し各セルX
aij,X
ai(j+1),…毎に異なる位相の遅延を生成し、フェーズド・アレイ動作を行うことにより、超音波診断を行うための各種スキャン、例えば、オブリークスキャン、電子セクタスキャンなどが実現できる。
【0039】
図3の上段のセルX
aijに設けられた高電圧ドライバ34は、送受信制御部30の波形発生回路32からの励振信号を、例えば、200V程度の高電圧信号に変換する。セルX
aijに設けられたスイッチ35が、音響素子23
aijとアンプ36の間を遮断状態とし、高電圧ドライバ34と音響素子23
aijの間を導通状態にすると、音響素子23
ijの下部電極と接地電位の上部電極の間に高電圧信号が印加され、音響素子23
ijが駆動される。一方、スイッチ35が、音響素子23
aijと高電圧ドライバ34と間を遮断状態とし、音響素子23
aijとアンプ36の間を導通状態にすると、音響素子23
ijが検出した受信信号がアンプ36に送信される。このように、音響素子23
aijのスイッチ35は、超音波送信時に、励振回路T
ijを音響素子23
ijに電気的に接続し、超音波受信時に、受信回路R
ijを音響素子23
ijに電気的に接続する。セルX
aijに設けられたアンプ36は、セルX
aijの音響素子23
ijが検出した受信信号を増幅する。アンプ36は、音響素子23
ijの近傍にセル内回路として集積化されて配置されているので、受信信号のSN比の改善を図ることができる。アンプ36に接続されたAD変換回路37は、アンプ36から伝達されたアナログ信号である受信信号を、デジタル信号に変換する。
【0040】
図3の下段のセルX
ai(j+1)に設けられた高電圧ドライバ34は、送受信制御部30の波形発生回路32からの励振信号を高電圧信号に変換する。セルX
ai(j+1)に設けられたスイッチ35が、音響素子23
ai(j+1)とアンプ36の間を遮断状態とし、高電圧ドライバ34と音響素子23
ai(j+1)の間を導通状態にすると、音響素子23
i(j+1)の下部電極と接地電位の上部電極の間に高電圧信号が印加され、音響素子23
i(j+1)が駆動される。セルX
aijのスイッチ35と同様に、音響素子23
ai(j+1)のスイッチ35は、超音波送信時に、励振回路T
i(j+1)を音響素子23
i(j+1)に電気的に接続し、超音波受信時に、受信回路R
i(j+1)を音響素子23
i(j+1)に電気的に接続する。音響素子23
ai(j+1)のスイッチ35が、音響素子23
ai(j+1)と高電圧ドライバ34と間を遮断状態とし、音響素子23
ai(j+1)とアンプ36の間を導通状態にすると、音響素子23
i(j+1)が検出した受信信号がセルX
ai(j+1)のアンプ36に送信される。セルX
ai(j+1)に設けられたアンプ36は、セルX
ai(j+1)の音響素子23
i(j+1)が検出した受信信号を増幅する。アンプ36は、音響素子23
i(j+1)の近傍にセル内回路として集積化されて配置されているので、受信信号のSN比の改善を図ることができる。アンプ36に接続されたAD変換回路37は、アンプ36から伝達されたアナログ信号である受信信号を、デジタル信号に変換する。
【0041】
図3の右側に示した共通の回路である送受信制御部30には、タイミング調整回路38が含まれている。タイミング調整回路38は、素子アレイ301aを構成している各セルX
aij,X
ai(j+1),…の共通の回路として、2次元マトリクスを構成している各セルX
aij,X
ai(j+1),…にそれぞれ接続され、各セルX
aij,X
ai(j+1),…からそれぞれ受信信号を入力する。タイミング調整回路38は、各セルX
aij,X
ai(j+1),…のAD変換回路37からのデジタル信号のタイミングを調整し、送受信制御部30の画像処理回路39に出力するする。タイミング調整回路38に接続された画像処理回路39は、AD変換回路37からのデジタル信号に必要な処理を加えた後に、必要な処理を加えたデジタル信号を表示部40に出力する。
【0042】
なお、振動空洞を有する容量型の音響素子23ij,23i(j+1),…の下部電極と上部電極の間には予めDCバイアス電圧を印加しておく。超音波送信時には、励振信号としての送波パルスにより下部電極と上部電極の間の静電力を変動させ、音響素子23ij,23i(j+1),…の振動膜(メンブレン)を変位させることで、超音波を送信する。また、超音波受信時には、超音波により振動膜が変位し、これが下部電極と上部電極の間の静電容量の変化となるので、その変化を電気信号として取り出すことにより超音波を受信する。
【0043】
図4に示すように、第1実施形態に係る音響素子集積回路は、第1チップ501、20V以上の高電圧回路を集積化した第2チップ502及び20V未満の小信号レベルの回路を集積化した第3チップ503の積層体から構成された3D集積回路である。「20V未満の小信号レベルの回路」には実際には、3.3V以下の電圧で動作する電子回路が含まれる。
図4には、
図1及び
図2に示した素子アレイ301aを構成している2次元マトリクスの第i行に配列された3つのセルX
ai(j-1),X
aij及びX
ai(j+1)の概略構造を例示的に示している。第1チップ501、第2チップ502及び第3チップ503は、例えば、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等の半導体基板を主体とする半導体チップで構成できる。第1チップ501、第2チップ502及び第3チップ503を構成する半導体チップにはシリコン・オン・インシュレータ(SOI)構造等の、半導体基板と絶縁層との複合構造であってもよい。特に、第2チップ502及び第3チップ503を構成する半導体チップはASIC等の半導体集積回路が集積化された構造でもよい。
【0044】
第1チップ501は、送受信が兼用可能な容量型の音響素子23
i(j-1),23
ij,23
i(j+1),…の2次元配列を有する。第1チップ501に設けられた音響素子23
i(j-1),23
ij,23
i(j+1),…は、それぞれマトリクスの第i行に配列されたセルX
ai(j-1),X
aij,X
ai(j+1),…の一部を構成している。
図4において左側に示したセルX
ai(j-1)において、第2チップ502には、セルX
ai(j-1)の励振回路T
i(j-1)を構成する高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)34とスイッチ35が設けられている。高電圧ドライバ34とスイッチ35等の高電圧動作素子を配置する都合上、第2チップ502は、SiC、ダイヤモンドやGaN等の、高耐圧性に優れた広禁制帯幅半導体からなる材料の半導体基板を用いてもよい。第2チップ502は「20V以上の高電圧回路を集積化」と上述したが、第3チップ503との差別化をするための表現に過ぎない。
【0045】
第2チップ502には、
図20及び
図21に例示したようなSOI構造とU溝で絶縁分離する構造やガードリング構造等の高耐圧化構造、又はSiC等の広禁制帯幅半導体を用いることにより、第2チップ502は40V以上、例えば100V~200V程度、又はそれ以上の電圧レベルの高電圧回路の集積化が容易になる。SiC等の広禁制帯幅半導体は高耐圧の半導体集積回路の構成が容易である特徴の反面、低比抵抗領域(高不純物密度領域)の形成や低接触抵抗の電極付けが困難であるという製造技術的な問題がある。第2チップ502を高電圧回路専用のチップとして特化し、製造技術の洗練されたSiを用いた第3チップ503に小信号レベルの回路を集積化することにより、音響素子集積回路の全体としての製造歩留まりや良品率を向上させ、信頼性を高めることができる。セルX
ai(j-1)の高電圧ドライバ34は、第3チップ503からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して音響素子23
i(j-1)の下部電極に印加する。
【0046】
セルXai(j-1)の高電圧ドライバ34は、例えば、電力用MOSトランジスタからなるCMOS回路から構成してもよく、IGBTや静電誘導(SI)サイリスタ等で構成してもよい。高電圧ドライバ34の前段(入力側)には、レベルシフト回路やレベルシフト回路に接続され、レベルシフト回路で高電位にレベルシフトされた信号で動作するハイサイド回路が設けられていてもよい。セルXai(j-1)のスイッチ35は、第i行のワード線Wiの信号がハイレベル且つ第(j-1)列のビット線Bj-1の信号がハイレベルのときにのみ動作するANDゲートの動作によって、高電圧ドライバ34及びアンプ36のうちの一方を選択的に音響素子23i(j-1)の下部電極に電気的に接続する。
【0047】
セルX
ai(j-1)のスイッチ35は、
図4の左側に矢印で示すように音響素子23
ai(j-1)が超音波信号s
1i(j-1)を発生し、超音波信号s
1i(j-1)を対象物に出射する動作と、対象物からの反射信号s
2i(j-1)を音響素子23
ai(j-1)が受信して電気信号に変換する動作を切り替える。セルX
ai(j-1)のスイッチ35には、送受信信号の電圧差を利用したダイオードや、電力用MOSトランジスタ、IGBTやSIサイリスタ等が使用できる。第3チップ503は、励振回路T
i(j-1)の遅延回路33と、受信回路R
i(j-1)のアンプ36及びAD変換回路37とを有する。第3チップ503に集積化された遅延回路33を構成しているロウサイド回路の小信号出力が、第2チップ502に集積化された高電圧ドライバ34の前段を構成するレベルシフト回路によってハイサイド回路に伝達される。高電圧ドライバ34は、送信素子231
i(j-1)の振動膜を振動させるために50V以上若しくは100V以上、更には200V程度の大信号レベルの回路であるために、第2チップ502に集積化されたのに対し、遅延回路33は、20V未満、具体的には5V以下、例えば3.3V以下の低電圧で動作する回路であるので、第3チップ503に集積化される。遅延回路33は高電圧ドライバ34の出力信号の位相や動作のタイミングを決める回路である。
【0048】
図4の中央に示した第i行のセルX
aijにおいて、第2チップ502には、セルX
aijの励振回路T
ijを構成する高電圧ドライバ34とスイッチ35が設けられている。セルX
aijの高電圧ドライバ34は、第3チップ503からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して音響素子23
ijの下部電極に印加する。セルX
aijの高電圧ドライバ34は、送信素子231
ijの振動膜を振動させるために50V以上若しくは100V以上、更には200V程度の大信号レベルの回路であるために、第2チップ502に集積化されたのに対し、セルX
aijの遅延回路33は、20V未満、具体的には5V以下、例えば3.3V以下の低電圧で動作する回路であるので、第3チップ503に集積化される。セルX
aijの遅延回路33はセルX
aijの高電圧ドライバ34の出力信号の位相や動作のタイミングを決める回路である。
【0049】
セルX
aijのスイッチ35は、ワード線W
iの信号がハイレベル且つビット線B
jの信号がハイレベルのときにのみ動作するマトリクスの交点選択によって、高電圧ドライバ34及びアンプ36のいずれかを選択的に音響素子23
ijの下部電極に電気的に接続する。第3チップ503の内のセルX
aijに対応する中央の領域において、セルX
aijに必要な励振回路T
ijの遅延回路33と、受信回路R
ijのアンプ36及びAD変換回路37とを有する。セルX
aijのスイッチ35は、
図4の中央に矢印で示すように音響素子23
aijが超音波信号s
1ijを発生し、超音波信号s
1ijを対象物に出射する動作と、対象物からの反射信号s
2ijを音響素子23
aijが受信して電気信号に変換する動作を切り替える。
【0050】
図4の右側に示した第i行のセルX
ai(j+1)の第2チップ502には、セルX
ai(j+1)の励振回路T
i(j+1)を構成する高電圧ドライバ34とスイッチ35が設けられている。セルX
ai(j+1)の高電圧ドライバ34は、第3チップ503からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して音響素子23
i(j+1)の下部電極に印加する。セルX
ai(j+1)のスイッチ35は、ワード線W
iの信号がハイレベル且つビット線B
j+1の信号がハイレベルのときにのみ動作するマトリクスの交点選択によって、セルX
ai(j+1)の高電圧ドライバ34及びアンプ36のいずれかを選択的に音響素子23
i(j+1)の下部電極に電気的に接続する。セルX
ai(j+1)のスイッチ35は、
図4の右側に矢印で示すように音響素子23
ai(j+1)が超音波信号s
1i(j+1)を発生し、超音波信号s
1i(j+1)を対象物に出射する動作と、対象物からの反射信号s
2i(j+1)を音響素子23
ai(j+1)が受信して電気信号に変換する動作を切り替える。
【0051】
第3チップ503は、セルXai(j+1)に対応する右側の領域において、セルXai(j+1)に必要な励振回路Ti(j+1)の遅延回路33と、受信回路Ri(j+1)のアンプ36及びAD変換回路37を集積化している。セルXai(j+1)の高電圧ドライバ34は、送信素子231i(j+1)の振動膜を振動させるために50V以上若しくは100V以上、更には200V程度の大信号レベルの回路であるために、第2チップ502に集積化されたのに対し、セルXai(j+1)の遅延回路33は、20V未満、具体的には5V以下、例えば3.3V以下の低電圧で動作する回路であるので、第3チップ503に集積化される。セルXai(j+1)の遅延回路33はセルXai(j+1)の高電圧ドライバ34の出力信号の位相や動作のタイミングを決める回路である。
【0052】
従来の容量型の音響素子では、
図24(a)に示すように音響素子の上部電極と下部電極の間にバイアス電圧を印加し、例えば±20Vの信号電圧を重畳することにより、信号電圧の範囲の小振幅の振動をさせる動作をしていた。即ち、従来の容量型の音響素子の振動膜は、
図24(b)に示すように、例えば80V~120V又は160V~200V等の間で駆動されており、フルスイングするような電圧で駆動されてはいなかった。第1実施形態に係る音響素子集積回路においては、第2チップ502に集積化される回路と第3チップ503に集積化される回路を、それぞれの動作の電圧レベルで振り分けることにより、小信号レベルの回路に影響を与えないで大信号レベルの回路が安定に動作できる。
【0053】
このため、第1実施形態に係る音響素子集積回路の高電圧ドライバ34は、2次元に配列された音響素子23
i(j-1),23
ij,23
i(j+1),………のそれぞれの上部電極と下部電極の間に、例えば
図22(a)に示すように0V~100V,0V~140V、或いは0V~200V等の間の大振幅で振動する高電圧信号を、安定に印加することができる。この結果、音響素子23
i(j-1),23
ij,23
i(j+1),………のそれぞれの振動膜は、
図22(b)に示すように、例えば0V~100V,0V~140V、或いは0V~200V等の間で、フルスイングに近い振動をすることができる。
【0054】
容量型の音響素子の振動膜に与えられる力Fmemは、機械的な力Fmechと静電気力Felecに分けられる:
Fmem=Fmech+Felec ………(1)
静電気力Felecは、式(2)に示すように、音響素子の振動膜のポテンシャルエネルギを微分することによって求められる。即ち、音響素子の上部電極と下部電極の間に印加される電圧をV、音響素子の上部電極と下部電極の間の容量をCとすると、容量型の音響素子の振動膜に与えられる静電気力Felecは、
Felec=-(d/dx)(CV2/2) ………(2)
となる。
【0055】
一方、機械的な力F
mechは、音響素子の振動膜のバネの定数をk、音響素子の振動膜の変位量をxとすると、
F
mech=-kx
………(3)
となる。
図23(a)の上段の実線は、
図22(a)に例示した電圧波形に対応し、容量型音響素子の駆動電圧をフルスイングの場合の駆動電圧波形を相対値で示す。
図23(a)の下段の破線は、上段の電圧波形で駆動された送信超音波の音圧波形を相対値で示す。超音波の音圧波形を破線で示した正弦波の波形とするとき、式(2)が示すように、駆動電圧波形の最大値側は実線で示したように、丸みを帯びた滑らかな変化になるが、駆動電圧波形の最小値側(0V側)は実線で示したように、下に向かう鋭角の凸形状になる。即ち0Vにおいて駆動電圧波形を示す関数値の微分値の右極限値と左極限値が不連続になっている。
図23(b)の上段の実線は、容量型音響素子の駆動電圧を90%スイングの場合の、駆動電圧波形を相対値で示す。
図23(b)の下段の破線は、上段の電圧で駆動された送信超音波の音圧波形を相対値で示す。
図23(b)の上段の実線に示すように、90%スイングの場合は、駆動電圧波形の最大値と最小値側が共に丸みを帯びた滑らかな変化になっている。
【0056】
図4では図示を省略しているが、第3チップ503には、
図3の右側に示した送受信制御部30の基準クロック発生回路31、波形発生回路32、タイミング調整回路38、及び画像処理回路39の機能ブロックを構成する回路のうちの1つ以上の回路を集積化しても構わない。第1実施形態に係る音響素子集積回路では、高電圧駆動される電子回路が第2チップ502内に設けられ、低電圧駆動される電子回路が第3チップ503内に設けられる。このように、駆動電圧のレベルに応じて、各機能ブロックを構成する回路を各チップに振り分けることで、高電圧駆動される電子回路をSiC等の広禁制帯幅半導体基板に集積化し、低電圧駆動される電子回路を製造が容易なSi基板に集積化する等の半導体材料の選択が可能になる。又、高電圧駆動される電子回路を第2チップ502に集積化し、低電圧駆動される電子回路を第3チップ503に集積化することにより、
図3に例示した各機能ブロックを構成する回路のレイアウトの自由度が向上する。
図3には明示していないが、
図5に示すとおり、高電圧駆動が可能なプロセスノードのデバイス構造では困難なシリパラ変換回路37aは、低電圧駆動される第3チップ503に集積化可能である。
【0057】
図4に例示した第i行のセルX
ai(j-1),X
aij及びX
ai(j+1)の内、セルX
aijに着目し、セルX
aijの概略構造の概念を、
図5を用いて具体的に例示する。即ち、第1実施形態に係る音響素子集積回路を構成するセルX
aijは、
図4と同様に、第3チップ503上に第2チップ502が積層され、第2チップ502上に第1チップ501が積層される。第1チップ501は、半導体基板511と、半導体基板511の主面上に配置され、超音波の送信及び受信を行う送受信兼用の容量型の音響素子23
ijの構造をなしている。半導体基板511には、半導体基板511の主面から裏面まで貫通するTSVとしてのビアプラグである接地プラグV0及び励振プラグV1が設けられている。第1実施形態に係る音響素子集積回路では、接地プラグV0及び励振プラグV1を総称して包括的に上層の「接続プラグ(V0,V1)」と呼ぶ。
【0058】
音響素子23
ijは、励振プラグV1に接続される下部電極E1と、下部電極E1上にほぼ真空と見なせる減圧状態の振動空洞Hを介して配置される上部電極E2とを有する。上部電極E2は、接地プラグV0を介して接地端子に接続される。励振プラグV1は、振動空洞Hとオーバーラップしない位置にレイアウトされる。
図1に例示した平面レイアウトにより、第1チップ501、第2チップ502及び第3チップ503を積層しかつ、圧接等によりバンプ等の接続具を用いた電気的なチップ間接続をする際に振動空洞Hが押し潰されてしまうという課題が解決される。
【0059】
第2チップ502は、半導体基板512と、半導体基板512の主面に接続された高電圧ドライバ34及びスイッチ35を集積化した半導体層との複合構造として例示しているが、モデル的な模式図に過ぎず、
図5に示される構造に限定されるものではない。例えば、半導体基板512と半導体基板512の主面に設けられた半導体層との複合構造ではなく、一体の半導体基板で第2チップ502を構成してもよい。或いは
図20に示すように、第2チップ502をSOI基板(515,516)と多層絶縁膜部518で構成してもよい。
図20に示す第2チップ502の構造では、SOI基板(515,516)は、SOI絶縁膜515の上にSOIシリコン層516が構成され、SOIシリコン層516にU溝を掘り込んで分離絶縁領域517p,517cのパターンを格子状に形成し、SOIシリコン層516を複数の島状の領域に分割している。多層絶縁膜部518はSOIシリコン層516の表面(上面)に設けられたフィールド絶縁膜と、フィールド絶縁膜の上に設けられた複数の層間絶縁膜と、層間絶縁膜の最上層の上に設けられたパッシベーション膜等から構成される。
【0060】
図20の左側の分離絶縁領域517pとSOI絶縁膜515で囲まれた島状のSOIシリコン層516の表面に高圧電源34aの回路が集積化されている。又、
図20の中央の分離絶縁領域517cとSOI絶縁膜515で囲まれた島状のSOIシリコン層516の表面に高圧ドライバ34の回路が集積化され、その右側の分離絶縁領域517cとSOI絶縁膜515で囲まれた島状のSOIシリコン層516の表面にスイッチ35の回路が集積化されている。図示を省略しているが、多層絶縁膜部518を構成しているフィールド絶縁膜の上及び層間絶縁膜の間等を利用して、高圧電源34aの回路を構成するに必要な電気配線が、多層配線層として3次元空間にレイアウトされ、高圧電源34aを構成するトランジスタ等の回路要素の間を互いに結合している。同様に、高圧ドライバ34及びスイッチ35のそれぞれの回路を構成するに必要な電気配線が、多層絶縁膜部518中の多層配線層を利用した3次元空間のレイアウトにより、トランジスタ等の回路要素の間を互いに結合している。
【0061】
図20では物理的な実体配線の図示を省略しているが、高圧電源34a及び高圧ドライバ34のそれぞれを、島状の領域として囲む分離絶縁領域517p及び分離絶縁領域517cの上を超えるように、フィールド絶縁膜の上又は層間絶縁膜の間等の多層配線構造やビアプラグ等によるグローバル内配線を用いて、高圧電源34aと各セルの高圧ドライバ34の間が電気的に接続される。同様に、高圧ドライバ34及びスイッチ35のそれぞれを島状の領域として囲む分離絶縁領域517cの上を超えるように、フィールド絶縁膜の上又は層間絶縁膜の間等の多層配線構造やビアプラグ等によるセル内配線を用いて、高圧ドライバ34とスイッチ35の間が電気的に接続される。ただし、
図20では、一様な多層絶縁膜部518が高圧電源34a、高圧ドライバ34及びスイッチ35の回路の表面を被覆しているように、内部構造を簡略化した矢印等で示している。
【0062】
既に述べたように、第2チップ502をSiC等の広禁制帯幅半導体基板で構成すれば、高電圧で動作する回路が集積化できる。
図5の例示では、半導体基板512の主面から裏面まで貫通するTSVとして励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23を表現しているが、広禁制帯幅半導体基板等の一体の半導体基板で第2チップ502を構成する場合には、励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23はTSVではなくなる場合もある。
図20に例示した第2チップ502の構成では、SOI絶縁膜515及びSOIシリコン層516を貫通するTSVとして励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23が形成されている。
【0063】
図20の中央の分離絶縁領域517cで囲まれた島状のSOIシリコン層516を貫通して、励振回路プラグV21がSOIシリコン層516の上面まで到達してTSVの構造をなした例が示されているが、
図20に示す構造に限定されるものではない。この例では、励振回路プラグV21の上端と高圧ドライバ34が、SOIシリコン層516の上方において、フィールド絶縁膜の上又は層間絶縁膜の間等の多層配線構造や、多層配線構造の間を接続するビアプラグ等を用いて接続される。同様に、高圧ドライバ34が配置された島状のSOIシリコン層516に隣接して、その右側において、分離絶縁領域517cで囲まれた島状のSOIシリコン層516を貫通して、SOIシリコン層516の上面まで到達したTSVである切替プラグV23の上端とスイッチ35が、フィールド絶縁膜の上又は層間絶縁膜の間等の多層配線構造や、多層配線構造の間を接続するビアプラグ等を用いて接続される。
【0064】
更に、島状のSOIシリコン層516を囲むように設けられた分離絶縁領域517cの上を超えるように、SOIシリコン層516の上面に上端を露出した受信回路プラグV22とスイッチ35との間が電気的に接続される。TSVである受信回路プラグV22の上端とスイッチ35との間は、SOIシリコン層516の上方の多層配線構造等によるセル内配線を用いて接続される。なお、
図20は断面構造を説明するための例示的模式図に過ぎず、実際に励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23が貫通する位置は
図20に示したレイアウトに限定されるものではない。例えば、励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23がTSVとしてSOI絶縁膜515及びSOIシリコン層516を貫通する平面パターン上の位置は、
図1で説明したとおり、セルの周辺部でもよい。又、分離絶縁領域517cで囲まれた島状のSOIシリコン層516の外側の位置において、励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23が、SOI絶縁膜515及びSOIシリコン層516を貫通しても構わない。
【0065】
半導体基板512の主面上には、第1チップ501の接地プラグV0に接続される上層のチップ間接続手段(接続機構)B0と、励振プラグV1に接続される上層のチップ間接続手段(接続機構)B1が、それぞれ図示を省略した接続具用ランドの上に配置されている。上層のチップ間接続手段B0,B1には、金(Au)、銅(Cu)又はAuとコバルト(Co),ニッケル(Ni),イリジウム(Ir),クロム(Cr),タングステン(W),チタン(Ti),チタンタングステン(TiW)、アルミナ(Al2O3),シリコン(Si)等との合金や混合物、若しくはCu合金やCuを含む混合物等を用いたバンプが採用できる。上層のチップ間接続手段B0,B1はバンプに限定されず、半田や半田ボール等の第1チップ501の回路と第2チップ502の回路を電気的に接続する機能を有する胴体であれば、種々の接続導体が採用可能である。
【0066】
上層のチップ間接続手段B0,B1の周囲にはエポキシ樹脂、及びフィラー入りエポキシ樹脂等が充填される。これらのエポキシ樹脂等は上層のチップ間接続手段B0,B1が第1チップ501と第2チップ502を接続する前に設けて良いし、接続後に充填してもよい。基板間の接続手段として、上層のチップ間接続手段B0,B1にはバンプではなく、絶縁膜に埋め込まれた接続導体と絶縁膜を同時に接続するハイブリッドボンディング技術を用いてもよい。ハイブリッドボンディングに際しては、上層のチップ間接続手段B0,B1の周囲には絶縁材料が充填されており、シリコン酸化膜またはシリコン、酸素、窒素、炭素のいずれか、または複数の材料から構成される多層絶縁膜が設けられ、上層のチップ間接続手段B0,B1は多層絶縁膜に埋め込まれた形状となる。
【0067】
上層のチップ間接続手段は、バンプ等による接続やハイブリッドボンディングに限定されず、鏡面に磨いた第1チップ501の下面と鏡面に磨いた第2チップ502の上面を、直接シリコン接合(DSB)法等の分子間力やファンデルワース力を用いて直接貼り合わせてもよい。第1チップ501と第2チップ502を直接接合法で貼り合わせる場合は、第1チップ501と第2チップ502の間にはエポキシ樹脂等が存在しないことは勿論である。更に上層のチップ間接続手段には第1チップ501のセルの配列のピッチと第2チップ502のセルの配列のピッチとを変換するインターポーザ等の層が含まれていてもよい。即ち、第1チップ501のセルの配列のパターンが、第2チップ502のセルの配列のパターンに射影できる対応関係にあれば、インターポーザで接続できるので、第1チップ501のセルの配列のピッチを、第2チップ502のセルの配列のピッチよりも微細化して、超音波信号により得られる2次元画像の解像度を向上させてもよい。逆に天体観測の望遠鏡ネットワークと同様に、第1チップ501の音響素子の配列を粗になるよう拡大し、第1チップ501のセルの配列のピッチを、第2チップ502のセルの配列のピッチよりも大きくして、インターポーザで接続してもよい。
【0068】
図5の左側に示すように、第2チップ502のセルX
ai(j-1),X
aij,X
ai(j+1),…がマトリクス状に配置された素子アレイ部の左側の領域には、高圧電源34aが配置されている。そして、高圧電源34aが配置された周辺回路領域の、第2チップ502の上面には、
図5の左側に示すようなボンディングパッドBP1が設けられている。第2チップ502の上面のボンディングパッドBP1にワイヤW1がボンディング接続されている。ワイヤW1を介して電源が供給された高圧電源34aから、高圧の電圧が、素子アレイ部に配置されたそれぞれのセルX
ai(j-1),X
aij,X
ai(j+1),…の高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)34に供給される。高電圧ドライバ34は、
図22及び
図23(a)に例示したような、セルX
ai(j-1),X
aij,X
ai(j+1),…のそれぞれの容量素子の振動膜を振動させるフルスイングの高電圧信号を、第2チップ502から供給することができる。
【0069】
ボンディングパッドの図示を省略しているが、周辺回路領域の第2チップ502の上面には、接地用ボンディングパッドも設けられている。この接地用ボンディングパッドに接地用ワイヤがボンディング接続される。接地用ワイヤを介した接地電位は、上層のチップ間接続手段B0を介して、第1チップ501の接地プラグV0に接続され、素子アレイ部に配置されたそれぞれのセルXai(j-1),Xaij,Xai(j+1),…の第1チップ501の上部電極E2が接地される。第2チップ502の励振回路プラグV21は図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介して、高電圧ドライバ34に電気的に接続されている。受信回路プラグV22は、図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介して、スイッチ35に電気的に接続されている。
【0070】
又、切替プラグV23も、受信回路プラグV22の内部配線とは独立した内部配線を介して、スイッチ35に電気的に接続されている。スイッチ35と、半導体基板512の主面上において、上層のチップ間接続手段B1を搭載する接続具用ランドとは、図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介して電気的に接続されている。
図20に例示した第2チップ502の構成例では、
図5の上層のチップ間接続手段B1を搭載する接続具用ランド(図示省略。)とスイッチ35の間を、多層配線構造の間を接続する埋込プラグ等を用いて接続される場合を、模式的に示している。
図20の模式図では、上層のチップ間接続手段B1を搭載する接続具用ランドに接続するように、多層絶縁膜部518の上部に埋め込まれた接続プラグ(埋込プラグ)V24を示している。しかし、接続プラグV24とスイッチ35の間は1本の線で簡略表示し、物理的な実体配線構造の図示を省略している。接続プラグV24とスイッチ35の間も種々のレイアウトで、多層配線構造や、多層配線構造の間を接続するビアプラグ等により接続されることは勿論である。
【0071】
図5に示すように、セルX
aijに対応する第2チップ502の領域に、高電圧ドライバ34を配置し、高圧電源34aと第3チップ503の両方に接続されることにより、高電圧ドライバ34は、第3チップ503から受信した3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号にレベルシフトを行うことができる。セルX
aijに対応する第3チップ503の領域には、セルX
aijの遅延回路33、アンプ36、AD変換回路37及び制御回路35aが設けられている。制御回路35aは、
図3にはブロック図として表示されていない回路であるが、
図3で制御回路35aに含まれるとして説明したスイッチ35の2入力のANDゲートが対応する。制御回路35aは、ワード線W
iの信号がハイレベル且つビット線B
jの信号がハイレベルのときにのみ動作するマトリクス選択処理をして、スイッチ35の切り替え制御の補助をすることができる。
【0072】
図5では図示を省略しているが、第3チップ503のチップ端部に近い周辺回路部には、
図2に周辺回路として示した列ドライバ302及び行ドライバ303が、素子アレイ部301aを囲むように配置されている。ワード線W
iやビット線B
jの図示を省略しているが、行ドライバ303から出力される第i行目のワード線W
iと、列ドライバ302から出力される第j列目のビット線B
jが、制御回路35aを構成する2入力のANDゲートに入力され、制御回路35aが、第2チップ502のスイッチ35の切り替え制御の補助動作を実行する。ワード線W
iやビット線B
jは、第3チップ503の表面配線や埋め込み配線として構成できる。
図5では図示を省略しているが、例えば、第3チップ503の上面に複数の層間絶縁膜で多層配線構造を構成して、互いに直交するワード線W
iやビット線B
jを設けることができる。
【0073】
図5に示す構成では、高電圧駆動される高電圧ドライバ34及びスイッチ35の高電圧部分の電子回路を、広禁制帯幅半導体基板である第2チップ502に集積化している。そして、スイッチ35の低電圧駆動される電子回路の部分としての制御回路35aが、Si基板を用いた第3チップ503に集積化し、電子回路の動作電圧によるチップの振り分けをしている。第3チップ503のセルX
ai(j-1),X
aij,X
ai(j+1),…がマトリクス状に配置された素子アレイ部の左側の周辺回路領域には、基準クロック発生回路31と波形発生回路32が共通回路領域として設けられている。
【0074】
図5において素子アレイ部の右側に示した周辺回路領域には、シリアルパラレル変換回路37aが共通回路領域として設けられている。シリアルパラレル変換回路37aは、
図2に周辺回路として示した出力バッファ回路304に対応し、例えば出力バッファ回路304の内蔵回路としてシリアルパラレル変換回路37aが備えられていてもよい。シリアルパラレル変換回路37aは、
図2の垂直出力信号線R
1,R
2,R
3,………,R
(j-1),R
j,R
(j+1),………によって数多くの読み出だされたパラレル信号を、シリアル信号に変換する。シリアルパラレル変換回路37aがシリアル信号に変換することにより、アレイ状に並べた全てのセルからの信号線をまとめることができ、プローブからの接続配線数を減らすことができる。
【0075】
セルX
aijに対応する第3チップ503の上面には、
図5に示すように下層のチップ間接続手段(接続機構)B21,B22,B23が、それぞれ図示を省略した接続具用ランドの上に搭載されている。下層のチップ間接続手段B21,B22,B23は、上層のチップ間接続手段B0,B1と同様に、Au若しくはCu、又はAu-Co,Au-Ni,Au-Ir,Au-Cr,Au-W,Au-Ti,Au-Si等のAu合金やAuの混合物、更にはCu合金やCuの混合物等を用いたバンプが採用できる。しかし、下層のチップ間接続手段B21,B22,B23が半田や半田ボールであっても構わない。上層のチップ間接続手段と同様に、下層のチップ間接続手段は、バンプ等による接続具を用いた接続やハイブリッドボンディングに限定されず、鏡面に磨いた第2チップ502の下面と鏡面に磨いた第3チップ503の上面を、分子間力等を用いて直接貼り合わせてもよい。
【0076】
更に下層のチップ間接続手段には第2チップ502のセルの配列のピッチと第3チップ503のセルの配列のピッチとを変換するインターポーザ等の層が含まれていてもよい。即ち、第2チップ502のセルの配列のパターンが、第3チップ502のセルの配列のパターンに射影できる対応関係にあればよいので、第1チップ501及び第2チップ502のセルの配列のピッチを微細化して解像度を向上させ、セル面積の大きな第3チップ503に下層のチップ間接続手段であるインターポーザを介して接続してもよい。或いは、第1チップ501と第2チップ502の間を上層のチップ間接続手段であるインターポーザを介して接続して接続して、ピッチ変換をした上で、第2チップ502と第3チップ503との間を下層のチップ間接続手段であるインターポーザを介して接続して、2段のピッチ変換をして、第1チップ501の音響素子の配列を微細化してもよい。逆に、第1チップ501のセルの配列のピッチが、第2チップ502のセルの配列のピッチよりも大きく、第2チップ502のセルの配列のピッチが第3チップ503のセルの配列のピッチよりも大きくなるように、2段のピッチ変換をする2枚のインターポーザを挿入してもよい。
【0077】
下層のチップ間接続手段B21を搭載した接続具用ランドは図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介して遅延回路33に接続されている。下層のチップ間接続手段B22を搭載した接続具用ランドは図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介してアンプ36に接続され、下層のチップ間接続手段B23を搭載した接続具用ランドは図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介して制御回路35aに接続されている。
図5に示すように、下層のチップ間接続手段B21,B22,B23は、それぞれ第2チップ502の下面に設けられた励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23に接続される。なお、第1実施形態に係る音響素子集積回路では、励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23を総称して包括的に下層の「接続プラグ(V21,V22,V23)」と呼ぶ。
【0078】
この結果、第3チップ503の遅延回路33は、接続具を互いに圧接等でチップ間接続をして、対応する第2チップ502のセルXaijを構成する高電圧ドライバ34に電気的に接続される。第3チップ503のアンプ36は、接続具によるチップ間接続により、対応する第2チップ502のセルXaijを構成するスイッチ35に電気的に接続され、第3チップ503の制御回路35aは、接続具によるチップ間接続により、独立した回路を介して対応する第2チップ502のセルXaijを構成するスイッチ35に電気的に接続される。
【0079】
そして、シリアルパラレル変換回路37aが配置された右側の周辺回路領域に対応する第3チップ503の上面には、ボンディングパッドBP1,BP2が設けられている。ボンディングパッドBP2にワイヤW2がボンディング接続され、ボンディングパッドBP3にワイヤW3がボンディング接続されている。物理的な具体的配線構造の図示を省略しているが、ボンディングパッドBP2は、表面配線や内部埋込配線等を介して、基準クロック発生回路31、遅延回路33、制御回路35a、AD変換回路37に接続されている。よって、ワイヤW2を介して第3チップ503に入力された制御信号に基づき、基準クロック発生回路31、遅延回路33、制御回路35a、AD変換回路37の各電子回路の動作が制御される。
図2の垂直出力信号線R
1,R
2,R
3,………,R
(j-1),R
j,R
(j+1),………によって読み出だされたパラレル信号は、シリアルパラレル変換回路37aによってシリアル信号に変換され、ワイヤW3を介して、
図3に示したタイミング調整回路38を介して、画像処理回路39に出力されて画像処理される。
【0080】
なお、第2チップ502は、
図21に示すように、SOI基板(526,528)と多層絶縁膜部525で構成し、SOI基板(526,528)側が上となるようにフリップチップ配置をしてもよい。
図21に示すSOI基板(526,528)は、SOI絶縁膜528の上にSOIシリコン層526が構成され、SOIシリコン層526にU溝を掘り込んで分離絶縁領域527p,527cを形成しているので、SOI絶縁膜528側が一番上になる。フリップチップ配置により一番下に配置される多層絶縁膜部525はSOIシリコン層526の表面(
図21のフリップチップ配置では下面)に設けられたフィールド絶縁膜と、フィールド絶縁膜の下に設けられた複数の層間絶縁膜と、層間絶縁膜の最下層の下に設けられたパッシベーション膜等から構成される。
【0081】
図21に示す第2チップ502の左側の分離絶縁領域527pとSOI絶縁膜528で囲まれた島状のSOIシリコン層526の表面(下面)側に高圧電源34aの回路が集積化されている。又、
図20の中央の分離絶縁領域527cとSOI絶縁膜528で囲まれた島状のSOIシリコン層526の表面側に高圧ドライバ34の回路が集積化され、その右側の分離絶縁領域527cとSOI絶縁膜528で囲まれた島状のSOIシリコン層526の表面側にスイッチ35の回路が集積化されている。そして、高圧電源34a、高圧ドライバ34及びスイッチ35の回路の表面を多層絶縁膜部525が被覆して、フリップチップ配置をしている。
【0082】
第2チップ502を構成する多層絶縁膜部528は、SOIシリコン層526の表面(下面)に設けられたフィールド絶縁膜と、フィールド絶縁膜の下に設けられた複数の層間絶縁膜と、層間絶縁膜の最下層の下に設けられたパッシベーション膜等から構成される。図示を省略しているが、多層絶縁膜部528を構成しているフィールド絶縁膜の下及びフィールド絶縁膜の間等を利用して、高圧電源34a、高圧ドライバ34及びスイッチ35のそれぞれの回路を構成するに必要な電気配線が、多層配線層として3次元空間にレイアウトされ、トランジスタ等の回路要素の間を互いに結合している。
【0083】
図21に例示した第2チップ502の構成では、SOI絶縁膜528及びSOIシリコン層526を貫通するTSVとして電源用プラグV25及び音響素子用プラグV24の2個のTSVが形成されている。
図20に例示した第2チップ502の構成では、SOI絶縁膜515及びSOIシリコン層516を貫通する励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23の3個のTSVが、
図21に例示した構成よりも細かなピッチ形成されていた。即ち、第2チップ502を構成するSOI基板をフリップチップ配置にすることにより、SOI絶縁膜528及びSOIシリコン層526を貫通するTSVの数を減らし、TSVの配置のピッチを広げることが可能になる。
【0084】
電源用プラグV25は、SOI絶縁膜528及びSOIシリコン層526を貫通して、SOIシリコン層526の下面に露出した電源用プラグV25の下端部が、多層絶縁膜部525内の上部の配線を介して高圧電源34aに接続されている。同様に、音響素子用プラグV24は、SOI絶縁膜528及びSOIシリコン層526を貫通して、SOIシリコン層526の下面に露出した音響素子用プラグV24の下端部が、多層絶縁膜部525内の上部の配線を介してスイッチ35に接続されている。なお、
図21は概念を説明するための例示に過ぎず、実際に電源用プラグV25及び音響素子用プラグV24がSOI絶縁膜528及びSOIシリコン層526を貫通する平面パターン上の位置は、
図1で説明したとおり、セルの周辺部で構わない。例えば、分離絶縁領域527cで囲まれた島状のSOIシリコン層526の外側の位置において、電源用プラグV25及び音響素子用プラグV24が、SOI絶縁膜528及びSOIシリコン層526を貫通するレイアウト等種々のレイアウトが採用可能である。
【0085】
一方、多層絶縁膜部528の多層配線層を構成するいずれかの配線層(金属層)に到達する接続プラグとして励振回路プラグV21,受信回路プラグV22,切替プラグV23が、多層絶縁膜部528の下部に形成されている。励振回路プラグV21の上端には多層絶縁膜部528の上部を貫通する接続プラグ(図示を省略し矢印で表示)が設けられ高圧ドライバ34に接続されている。受信回路プラグV22の上端には多層絶縁膜部528の上部を貫通する接続プラグ(図示を省略し矢印で表示)が設けられスイッチ35に接続されている。
【0086】
図21では物理的な実体配線の図示を省略しているが、高圧電源34aと高圧ドライバ34の間の分離絶縁領域527p及び分離絶縁領域527cを超えるように、フィールド絶縁膜の下又は層間絶縁膜の間等の多層配線構造やビアプラグ(埋込プラグ)等によるグローバル配線を用いて、高圧電源34aと各セルの高圧ドライバ34の間が電気的に接続される。同様に、高圧ドライバ34とスイッチ35の分離絶縁領域527cを超えるように、フィールド絶縁膜の下又は層間絶縁膜の間等の多層配線構造やビアプラグ等によるセル内配線を用いて、高圧ドライバ34とスイッチ35の間が電気的に接続される。更に、スイッチ35を囲む分離絶縁領域527cを超えるように、フィールド絶縁膜の下又は層間絶縁膜の間等の多層配線構造やビアプラグ等によるセル内配線を用いて、スイッチ35と切替プラグV23の上端の間が電気的に接続される。
【0087】
図5は、
図1及び
図2に示した素子アレイ301aを構成するセルX
ai(j-1),X
aij及びX
ai(j+1),…の内、セルX
aijに着目した図である。即ち、
図5はセルX
aijの音響素子23
ijに対応する機能ブロックを、第2チップ502及び第3チップ503にセル内回路として集積化し、積層構造とする例を示している。第1実施形態に係る音響素子集積回路によれば、2次元マトリクス内のセルX
ai(j-1),X
aij及びX
ai(j+1),…のそれぞれの音響素子23
i(j-1),23
ij及び23
i(j+1),…に対して、励振回路T
i(j-1),T
ij及びT
i(j+1),…及び受信回路R
i(j-1),R
ij及びR
i(j+1),…を、第2チップ502及び第3チップ503に、それぞれのセル内回路として、個別に集積化して設けることにより、各音響素子23
i(j-1),23
ij及び23
i(j+1),…毎に送受信を2次元フェーズド・アレイとして制御可能となる。このように、第1実施形態に係る音響素子集積回路は、2次元フェーズド・アレイの動作が可能であるので、高精度かつ高分解能な診断を行うことができる。なお、この場合、上部電極E2は、すべての音響素子で共通にすることができる。但し、2次元フェーズド・アレイの動作ではなく、下部電極E1及び上部電極E2の一方又は双方について、行単位又は列単位での駆動に変更することも可能である。
【0088】
(診断装置)
従来の超音波探触子では、厳密な意味での2次元フェーズド・アレイ波面を実現できず、2次元フェーズド・アレイに近似させた動作となっていた問題があった。又、従来の超音波探触子では圧電性の音響素子が用いられている場合が殆どであった。圧電性の音響素子の場合、人体との音響インピーダンスの違いが大きく、バッキングを用いた厚み基板構造の構造が必要であり、高分解能や高品質の画像を得ることができない問題があった。厚み基板構造があると、音響素子の直下に回路を配置し、2次元に配列された多数の音響素子を個々に接続するのは困難である。
図1~
図5に例示した第1実施形態に係る音響素子集積回路は、振動空洞を有する容量型の音響素子を同一平面上において2次元に配列しているため、人体との音響インピーダンスに近く、且つ全ての音響素子各々と送受信を可能にできる構造を提供している。よって、第1実施形態に係る音響素子集積回路は、高解像度の2次元画像が取得でき、医療目的の診断装置に好適である。
【0089】
図6Aに示すように、第1実施形態に係る診断装置は、超音波信号s1を発生し、これを対象物Tに送信すると共に、対象物Tからの反射信号(超音波エコー)s2を受信する容量型の音響素子を持つプローブ(探触子)を備える。プローブは上述した容量型の音響素子のアレイで構成された第1実施形態に係る音響素子集積回路を、プローブ筐体20に収納している。第1実施形態に係る診断装置は、更に、プローブによる超音波の送受信を制御すると共に、プローブにより受信した信号を処理する送受信制御部30を有する送受信機30aと、送受信制御部30により処理された信号に基づき画像を表示するディスプレイ機能を有する表示部40を備える。送受信制御部30は、
図3に示した基準クロック発生回路31、波形発生回路32、タイミング調整回路38及び画像処理回路39等を備えている。ただし、
図5に例示したように、第3チップに基準クロック発生回路31と波形発生回路32が集積化されている場合は、
図6Aの送受信制御部30には、タイミング調整回路38及び画像処理回路39等が備えられた構成となる。
【0090】
プローブと送受信制御部30はケーブル等の伝送手段50aで接続され、送受信制御部30と表示部40は、伝送手段50bで接続される。送受信機30aは、専用品であってもよいし、パソコンベースの汎用品を用いても構わない。送受信機30aは、送受信制御部30以外にも、ドプラ回路、デジタルスキャンコンバータ(DSC)、記憶装置などを含むが、ここでは、それらについては省略する。また、第1実施形態に係る診断装置では、プローブと送受信制御部30が伝送手段50aで、送受信制御部30と表示部40が伝送手段50bで有線接続されているが、伝送手段50a,50bを省略し、無線接続に代えることも可能である。
【0091】
なお、
図6Aでは、プローブ20、送受信制御部30、表示部40を独立して示したが、これらが一体となったハンディタイプの超音波診断装置としても良い。ハンディタイプの超音波診断装置の場合も、筐体として一体化しつつ内部にプローブ20、送受信制御部30、表示部40に相当する機能を有し、またこれらの一部が結合した筐体として構成しても良い。また、既存のスマートフォンやタブレットに信号処理の一部をさせ表示に使用しても良い。
【0092】
第1実施形態に係るプローブは、
図6Bに示すように、超音波を送受信するための素子として、MEMS技術により形成された振動空洞を有する容量型の音響素子をマトリクス状に配列した素子アレイ301aを有する。プローブは、第1実施形態に係る診断装置の主要構成部品であり、プローブの周波数帯域や特性等の性能が第1実施形態に係る診断装置の性能や画質に大きく影響するものである。プローブは、
図6Bに示すように、その後方側(内部側)から先方側(診断する対象物Tが存在する側)に向かって、フィルム基板21、バッキング22、素子アレイ301a、音響整合層24、及び音響レンズ25の順に並んで配置されている。
【0093】
バッキング22は、ダンパーとも呼ばれ、素子アレイ301aの後方側に超音波が伝播することを抑制する作用、更に素子アレイ301aの前方側に送信する超音波のパルス幅を短くする作用などを有する。なお、第1実施形態に係るプローブは、容量型の音響素子を用いているので、素子アレイ301aの後方側に伝搬が少ないため、バッキング22はなくても良い。第1実施形態に係るプローブにおいては、バッキング22は、コンベックス型の様な曲面構造を維持するための型枠としての機能を期待して用いている。音響整合層24は、λ/4層又はマッチング層とも呼ばれ、素子アレイ301a及び対象物T間の音響インピーダンス差を少なくし、超音波を効率よく送受信するために多層で配置される。音響レンズ25は、高精細な画像を得ることを目的に超音波ビームを収束させて細くするために設けられる。即ち、音響レンズ25の屈折を利用して超音波ビームを集束することで、レンズ厚み方向の分解能を向上させることができる。また、音響レンズ25は、診断時に対象物Tとの摩擦を少なくするという目的も併せ持つため、一般的に、凸レンズ型を有し、対象物(例えば、生体)Tの内部での音速よりも遅い(1km/秒程度)の素材、例えば、シリコンゴムから構成される。
【0094】
素子アレイ301aは、超音波を送受信する部分であり、
図1及び
図2に例示したように、所定の基板上に微細ピッチで複数の音響素子23
i(j-1),23
ij,23
i(j+1),………、を2次元マトリクス状に配置している。各音響素子23
i(j-1),23
ij,23
i(j+1),………は、電圧を加えると振動して超音波を発生し、逆に、振動すると電圧を発生するいわゆるトランスデューサとして機能する。各音響素子は、振動空洞を挟んで下部電極と上部電極が対向し、振動空洞上の上部電極が振動する容量型の素子である。容量型の音響素子は、素子アレイ301aとして採用できるが、いずれも振動空洞を有するため、信頼性(歩留まり)を向上させるために、プラグや接続具等のレイアウト配置の検討が重要となる。また、容量型の音響素子の場合、使用周波数や用途(医療用、水中用など)に応じて振動膜の厚みや振動空洞の大きさを最適化する必要があるが、一般的に振動膜を駆動するために高電圧が必要となるため、
図4及び
図5に例示したように、第1チップ501、第2チップ502及び第3チップ503へ動作電圧のレベルで区分して振り分けている。
【0095】
図6Aでは、送受信制御部30が送受信機30aの内部に設けられたが、
図7に示すように、送受信制御部30をプローブ筐体20の内部に収納することも可能である。この場合、素子アレイ301aと、送受信制御部30を構成する第4チップとは、互いに積層され、両者はバンプ等の接続具や接続プラグ等の種々の接続手段で接続される。
図5に例示したように、第3チップに基準クロック発生回路31と波形発生回路32が集積化されている場合には、
図7の第4チップの送受信制御部30には、タイミング調整回路38及び画像処理回路39等が備えられた構成となる。近年,疾患の早期発見の観点から,超音波診断に対する医療現場のニーズが高まっている。
【0096】
図6A,
図6B及び
図7等に示した第1実施形態に係る診断装置によれば、微細化構造を有した容量型の音響素子を高密度のアレイとして配置し、各音響素子から超音波を人体内部に向けて送信し,その反射波を受信して超音波信号を電気信号に変換できる。特に、第1実施形態に係る診断装置では、振動空洞を有する容量型の音響素子を用いているので、音響素子の振動子と人体との音響インピーダンスがほぼ等しいので、音響インピーダンスの整合をとる必要がない。よって、第1実施形態に係る診断装置によれば、効率よく超音波の送受信ができ、超音波信号の劣化を小さい。このため、第1実施形態に係る診断装置によれば、クリアで高画質な画像が得られるという効果を奏することができる。
【0097】
現在、例えば、中国等の国では、家庭用医療用器具として誰でも超音波診断装置を使えるようにしたいというような動向がある。しかしながら、既存の超音波診断装置は解剖学的構造を熟知した専門家が適切な位置と角度で超音波を使わなければ内部構造物が重なり、診断断面を鮮明に撮像できない。第1実施形態に係る診断装置によれば、クリアで高画質な画像が得られるので、例えば頸動脈の血管断面を撮像する場合、素人が大雑把に推定した位置に、適当な角度で超音波を当てた場合であっても、血管の一部をクリアで高画質な画像として撮影することができる。血管の一部が超音波で撮れば、血管のドップラー画像から血管の中心流速ベクトルを求めることができ、血管壁の直交断面を算出し三次元データから適切な直交断面画像を表示できる。このため、第1実施形態に係る診断装置によれば、専門家でなくとも鮮明な高画質画像を超音波によって得られるので、家庭用医療用器具として待望されている超音波診断装置の動向にも好適である。
【0098】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る音響素子集積回路は、
図8に示すような電子回路をセル内回路として、それぞれ備えている複数のセルを、2次元マトリクス状に配列した半導体集積回路である。
図8は、
図1及び
図2に示した素子アレイ301aと同様な平面レイアウト構造を有する素子アレイ301bの第i行に配列されたセルX
bij及びセルX
bi(j+1)とに着目したブロック図に対応する。
図8では、セルX
bij,X
bi(j+1)の機能ブロック的な回路構造の他に、セルX
bij,X
bi(j+1)を駆動制御する送受信制御部30と、送受信制御部30に接続された表示部40を示している。
図8の上段のセルX
bijは、素子アレイ301bを構成しているマトリクスの第i行、第j列に位置するセルである。セルX
bijは、送信機能を備えた容量型の送信素子231
ijと、送信素子231
ijに隣接して配置され、受信機能を備えた容量型の受信素子232
ijとを単位数n=1として分配され、ペアで備えている。
【0099】
送信素子231
ijと受信素子232
ijのペアからなるモジュールを、第2実施形態に係る音響素子集積回路では、「音響素子(231
ij,232
ij)」と称する。第1実施形態に係る音響素子集積回路の音響素子は、振動空洞を各セルに1個備えて送信と受信の機能をなしていた。これに対し、第2実施形態に係る音響素子集積回路の音響素子(231
ij,232
ij)は、後述する
図10及び
図11に示すように、送信用の振動空洞(以下において「送信空洞」という。)Haと受信用の振動空洞(以下において「受信空洞」という。)Hbの2つの振動空洞を各セルに備え、送受信機能を有する一体の素子と見なすことができる。セルX
bijの送信素子231
ijは、超音波信号を発生し、超音波信号を対象物に出射する。セルX
bijの受信素子232
ijは、対象物からの反射信号を受信して電気信号に変換する機能を有する。
【0100】
なお、
図8ではセルX
bijの内部に音響素子(231
ij,232
ij)が1個しかない場合を示したが例示に過ぎない。音響素子(231
ij,232
ij)が各セルに1個しかない場合に限定されず、セルX
bijの内部に音響素子は2個以上のモジュールが存在していても構わない。即ち、第2実施形態に係る音響素子集積回路においては、同一面上に定義される2次元マトリクスを構成するセルのアレイにおいて、それぞれのセルに単位数n(nは1以上の正の整数)の音響素子が分配され、この単位数nの音響素子をセル内回路で駆動することが可能である。しかしながら、第2実施形態に係る音響素子集積回路においては、簡単化のために、便宜上音響素子(231
ij,232
ij)が1個の場合について、例示的に説明する。より一般的には、n個の音響素子の1セットで1セルを構成し、この1セルに対応して、内蔵される回路セット1式をセル内回路として、n個の音響素子を駆動できることに留意が必要である。
【0101】
セルXbijの送信素子231ijには、送信素子231ijの振動膜を励振する励振信号を生成する励振回路Tijが接続され、セルXbijの受信素子232ijには、受信素子232ijから送られてきた受信信号を処理する受信回路Rijが接続されている。そして、セルXbijの励振回路Tijは、送信素子231ijに接続された励振用行選択素子TSWijと、励振用行選択素子TSWijに接続された高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)34と、高電圧ドライバ34に接続された列選択素子TBijと、列選択素子TBijに接続された遅延回路33を含む。高電圧ドライバ34は送信素子231ijの振動膜を振動させるため20V以上、具体的には50V以上若しくは100V以上、更には200V程度の大信号レベルの回路である。セルXbijの励振用行選択素子TSWijのゲート端子には、第i行の励振行選択線SWiが接続され、励振行選択線SWiによって送信素子231ijと高電圧ドライバ34の間の電気的接続が制御できるように構成されている。
【0102】
セルXbijの列選択素子TBijのゲート端子には、第j列のビット線Bjが接続され、ビット線Bjによって高電圧ドライバ34と遅延回路33の間の電気的接続が制御できるように構成されている。例えば、セルXbijの励振用行選択素子TSWijのゲート端子に入力される励振行選択線SWiの信号がハイレベル、且つ列選択素子TBijのゲート端子に入力されるビット線Bjの信号がハイレベルのときにのみ、送信素子231ijが動作するようにできる。即ち、素子アレイ301bを構成しているマトリクスの任意の位置のセルXbijの送信素子231ijのみを、励振行選択線SWiの信号とビット線Bjの信号によって、選択的に動作させることができる。ただし2次元フェーズド・アレイ動作を目的とする場合は、列選択素子TBijは必須ではない。なぜなら、励振回路Tijが遅延回路33を有しているので、第i行の励振行選択線SWiに接続されたすべての送信素子231ij,231i(j+1),………が励振された場合であっても、それぞれの送信素子231ij,231i(j+1),………の励振信号には位相差が発生するので、行毎に順次駆動することにより、行毎のフェーズド・アレイ動作が可能であるからである。
【0103】
セルXbijの受信回路Rijは、受信素子232ijに接続された受信用行選択素子TRWijと、受信用行選択素子TRWijに接続されたアンプ36と、アンプ36に接続されたAD変換回路37を含む。セルXbijの受信用行選択素子TRWijのゲート端子には、第i行の受信行選択線RWiが接続され、受信行選択線RWiによって受信素子232ijとアンプ36の間の電気的接続が制御できるように構成されている。例えば、セルXbijの受信用行選択素子TRWijのゲート端子に入力される受信行選択線RWiの信号がハイレベルのときにのみ、送信素子231ijの出力がアンプ36で増幅されるようにできる。超音波の1/2波長に1個の空間情報が含まれるので、超音波の周波数よりも十分に速いクロック信号で、超音波の信号をサンプリング可能な高周波の信号が受信行選択線RWiの信号として選ばれる。
【0104】
即ち、素子アレイ301bを構成しているマトリクスの任意の行に配列されたセルXbijの送信素子231ijを行単位で、受信行選択線RWiの信号によって、選択的に動作させることができる。なおアンプ36をMOSトランジスタ等で構成し、MOSトランジスタのゲートに受信行選択線RWiの信号を入力することによっても、マトリクスの任意の行が選択できるので、この場合は、セルXbijの受信用行選択素子TRWijは不要となる。なお図示を省略しているが、AD変換回路37の出力側にAD変換されたデジタル信号を蓄積するメモリを集積化し、メモリの出力側に受信用行選択素子TRWij、を配置して、受信行選択線RWiの信号で行選択して、セルXbijのメモリに蓄積された情報を読み出すように構成してもよい。メモリとしてはランダムアクセスしないで、時系列に並んだベクトルデータを保存して、データ・ストリームとして自己転送するマーチング(隊列進行)メモリが好適である。
【0105】
即ち、励振用行選択素子TSWij、高電圧ドライバ34、列選択素子TBij、遅延回路33、受信用行選択素子TRWij、アンプ36及びAD変換回路37が、第i行、第j列のセルXbijに単位数n=1として分配された送信素子231ijと受信素子232ijのペアに対してセル内回路として3D構造によってコンパクトに集積化されている。
【0106】
図8の下段のセルX
bi(j+1)は、素子アレイ301bを構成しているマトリクスの第i行、第(j+1)列に位置するセルである。セルX
bi(j+1)は、第i行、第j列のセルX
bijと同様に、送信機能を備えた容量型の送信素子231
i(j+1)と、送信素子231
i(j+1)に隣接して配置され、受信機能を備えた容量型の受信素子232
i(j+1)を、単位数n=1としてペアで備えている。送信素子231
i(j+1)と受信素子232
i(j+1)のペアからなるモジュールを、第2実施形態に係る音響素子集積回路では、「音響素子(231
i(j+1),232
i(j+1))」と称する。
【0107】
なお、
図8ではセルX
bi(j+1)の内部に音響素子(231
i(j+1),232
i(j+1))が1個しかないが、例示に過ぎないことは上段のセルX
bijの場合と同様である。第2実施形態に係る音響素子集積回路は、
図8で例示する音響素子(231
i(j+1),232
i(j+1))が単位数n=1の場合に限定されない。セルX
bijについて説明したとおり、セルX
bi(j+1)の内部に分配される音響素子の単位数nは2個以上でも構わない。セルX
bi(j+1)の送信素子231
i(j+1)は、セルX
bijの送信素子231
ijと同様に、超音波信号を発生し、超音波信号を対象物に出射する。セルX
bi(j+1)の受信素子232
i(j+1)は、セルX
bijの受信素子232
ijと同様に、対象物からの反射信号を受信して電気信号に変換する機能を有する。
【0108】
セルXbi(j+1)の送信素子231i(j+1)には、送信素子231i(j+1)の振動膜を励振する励振信号を生成する励振回路Ti(j+1)がセル内回路として接続され、セルXbi(j+1)の受信素子232i(j+1)には、受信素子232i(j+1)から送られてきた受信信号を処理する受信回路Ri(j+1)がセル内回路として接続されている。そして、セルXbi(j+1)の励振回路Ti(j+1)は、送信素子231i(j+1)に接続された励振用行選択素子TSWi(j+1)と、励振用行選択素子TSWi(j+1)に接続された高電圧ドライバ34と、高電圧ドライバ34に接続された列選択素子TBi(j+1)と、列選択素子TBi(j+1)に接続された遅延回路33をセル内回路として含む。高電圧ドライバ34は送信素子231i(j+1)の振動膜を振動させるため20V以上、具体的には50V以上若しくは100V以上、更には200V程度の大信号レベルの回路である。セルXbi(j+1)の励振用行選択素子TSWi(j+1)のゲート端子には、第i行の励振行選択線SWiが接続され、励振行選択線SWiによって送信素子231i(j+1)と高電圧ドライバ34の間の電気的接続が制御できるように構成されている。
【0109】
セルXbi(j+1)の列選択素子TBi(j+1)のゲート端子には、第(j+1)列のビット線B(j+1)が接続され、ビット線B(j+1)によって、セルXbi(j+1)の高電圧ドライバ34と遅延回路33の間の電気的接続が制御できるように構成されている。例えば、セルXbi(j+1)の励振用行選択素子TSWi(j+1)のゲート端子に入力される励振行選択線SWiの信号がハイレベル、且つ列選択素子TBi(j+1)のゲート端子に入力されるビット線B(j+1)の信号がハイレベルのときにのみ、セルXbi(j+1)の送信素子231i(j+1)が動作するようにできる。即ち、素子アレイ301bを構成しているマトリクスの任意の位置のセルXbi(j+1)の送信素子231i(j+1)のみを、励振行選択線SWiの信号とビット線B(j+1)の信号によって、選択的に動作させることができる。
【0110】
セルXbi(j+1)の受信回路Ri(j+1)は、受信素子232i(j+1)に接続された受信用行選択素子TRWi(j+1)と、受信用行選択素子TRWi(j+1)に接続されたアンプ36と、アンプ36に接続されたAD変換回路37をセル内回路として含む。セルXbi(j+1)の受信用行選択素子TRWi(j+1)のゲート端子には、第i行の受信行選択線RWiが接続され、受信行選択線RWiによって受信素子232i(j+1)とアンプ36の間の電気的接続が制御できるように構成されている。例えば、セルXbi(j+1)の受信用行選択素子TRWi(j+1)のゲート端子に入力される受信行選択線RWiの信号がハイレベルのときにのみ、送信素子231i(j+1)の出力がアンプ36で増幅されるように構成できる。即ち、素子アレイ301bを構成しているマトリクスの任意の行に配列されたセルXbi(j+1)の送信素子231i(j+1)を行単位で、受信行選択線RWiの信号によって、選択的に動作させることができる。セルXbijの場合と同様に、セルXbi(j+1)のアンプ36をMOSトランジスタ等で構成し、MOSトランジスタのゲートに受信行選択線RWiの信号を入力することによっても、マトリクスの任意の行が選択できるので、この場合は、セルXbi(j+1)の受信用行選択素子TRWi(j+1)は不要となる。更に変型例として、セルXbi(j+1)のAD変換回路37の出力側にAD変換されたデジタル信号を蓄積するメモリを集積化してもよい。メモリの出力側に受信用行選択素子TRWi(j+1)を配置しておけば、受信行選択線RWiの信号で行選択して、セルXbi(j+1)のメモリに蓄積された情報を読み出すように構成できる。セルXbi(j+1)のメモリとしてマーチングメモリを用いれば、周辺回路が不要なメモリなので、占有面積を取らずにベクトルデータの高速自己転送が可能になる。
【0111】
即ち、励振用行選択素子TSWi(j+1)、高電圧ドライバ34、列選択素子TBi(j+1)、遅延回路33、受信用行選択素子TRWi(j+1)、アンプ36及びAD変換回路37が、第i行、第(j+1)列のセルXbi(j+1)に単位数として分配された送信素子231i(j+1)と受信素子232i(j+1)のペアに対して、セル内回路として3D構造によってコンパクトに集積化されている。ただし2次元フェーズド・アレイ動作を目的とする場合は、列選択素子TBi(j+1)は必須ではない。なぜなら、励振回路Ti(j+1)が遅延回路33を有しているので、第i行の励振行選択線SWiに接続されたすべての送信素子231ij,231i(j+1),………が励振された場合であっても、それぞれの送信素子231ij,231i(j+1),………の励振信号には位相差が発生するので、行毎に順次駆動することにより、行毎のフェーズド・アレイ動作が可能であるからである。
【0112】
図8の上段のセルX
bijの遅延回路33及びAD変換回路37には、基準クロック発生回路31が接続され、下段のセルX
bi(j+1)の遅延回路33及びAD変換回路37にも、基準クロック発生回路31が接続されている。更に、セルX
bijの遅延回路33とセルX
bi(j+1)の遅延回路33には、波形発生回路32が接続され、波形発生回路32は基準クロック発生回路31にも接続されている。更に、セルX
bijのAD変換回路37とセルX
bi(j+1)のAD変換回路37には、タイミング調整回路38が接続され、タイミング調整回路38は基準クロック発生回路31にも接続されている。基準クロック発生回路31とタイミング調整回路38には画像処理回路39が接続され、画像処理回路39は表示部40が接続されている。
【0113】
図8に例示したとおり、上段のセルX
bijと下段のセルX
bi(j+1)に共通に、基準クロック発生回路31、波形発生回路32、タイミング調整回路38、画像処理回路39が設けられ、更に表示部40が接続されている。
図8に例示した回路構成において、波形発生回路32に行毎に選別して励振信号を逐次発生させる機能を持たせれば、励振用行選択素子TSW
ij,TSW
i(j+1),………は不要となる。波形発生回路32によって、それぞれのセル行に配列された送信素子2311
ij,231
i(j+1),………を、セル行毎に逐次選択的に駆動すればよいからである。基準クロック発生回路31、波形発生回路32、タイミング調整回路38及び画像処理回路39は、前述した
図6A及び
図7に示す送受信制御部30を構成している。セルX
bijとセルX
bi(j+1) には、
図6A及び
図7に示した素子アレイ301Aと同様なトポロジの素子アレイ301bの一部を表現している。送受信制御部30と送受信制御部30に接続された表示部40に含まれる、それぞれの機能ブロックは、2次元マトリクスを構成している素子アレイ301bのすべてのセルX
bijに共通に設けられる。
【0114】
第2実施形態に係る音響素子集積回路は、
図8に示すように、セルX
bij及びセルX
bi(j+1) を含む素子アレイ301bと、素子アレイ301bに含まれるすべてのセルX
bij及びセルX
bi(j+1) 等に共通の送受信制御部30で構成され、送受信制御部30には表示部40が接続されている。励振回路T
ijと受信回路R
ijがセルX
bijに設けられ、励振回路T
i(j+1)と受信回路R
i(j+1)がセルX
bi(j+1)にセル内回路として、それぞれ設けられているので、セルX
bi(j+1)はセルX
bijとは独立して制御できる。このように各セルX
bij,X
bi(j+1),…がセル内回路を備えるように構成することで、2次元マトリクスの交点に位置する各セルX
bij,X
bi(j+1),…が、受信用行選択素子TRW
ijを介してランダムアクセス可能であり、各セルX
bij,X
bi(j+1),…が個別に制御できる。2次元マトリクス状に配置された各セルX
bij,X
bi(j+1),…の動作を個別にランダムアクセス制御できれば、例えば、超音波送信時においては、送信する超音波の波面を、2次元の面内で、自由に変えることが可能な2次元フェーズド・アレイを構成できる。
【0115】
図8の右側に示した送受信制御部30の一部の回路となる基準クロック発生回路31は、同一面上に定義される2次元マトリクスを構成する各セルX
bij,X
bi(j+1),…に、それぞれ独立して設けられた各機能ブロックの動作のタイミングを決定するための基準クロック信号を発生する。送受信制御部30の波形発生回路32は、基準クロック発生回路31が出力する基準クロック信号に基づいて、セルX
bijの送信素子231
ijに、超音波パルスを発生させるための励振信号を発生する。波形発生回路32は、更に基準クロック信号に基づいて、各セルX
bi(j+1)の送信素子231
i(j+1)に、超音波パルスを発生させるための励振信号を発生する。各セルX
bij,X
bi(j+1),…にそれぞれ設けられた遅延回路33は、フェーズド・アレイ動作を行わせるために、波形発生回路32が出力した励振信号に対し、各セルX
bij,X
bi(j+1),…毎に異なる位相の遅延を生成する。励振信号に対し各セルX
bij,X
bi(j+1),…毎に異なる位相の遅延を生成し、フェーズド・アレイ動作を行うことにより、超音波診断を行うための各種スキャン、例えば、オブリークスキャン、電子セクタスキャンなどが実現できる。
【0116】
又、
図8に示すような第2実施形態に係る音響素子集積回路によれば、アニュラアレイプローブを用いなくとも、同心円状の超音波波面を形成でき、ダイナミックフォーカスが可能となり、より精緻な画像が取得できる。任意のフェーズド・アレイ波面を形成できるため、フォーカス位置をスキャンすれば3次元内部構造データを取得でき、磁気共鳴画像(MRI)の様に立体構造の任意断面を再構成できる。
【0117】
図8の上段のセルX
bijに設けられた高電圧ドライバ34は、送受信制御部30の波形発生回路32からの励振信号を、例えば、200V程度の電圧レベルの高電圧信号に変換する。セルX
bijに設けられた送信用行選択素子TSW
ijが、高電圧ドライバ34と送信素子231
ijの間を導通状態にすると、送信素子231
ijの下部電極と接地電位の上部電極の間に高電圧信号が印加され、送信素子231
ijが駆動される。一方、受信用行選択素子TRW
ijが、受信素子232
ijとアンプ36の間を導通状態にすると、受信素子232
ijが検出した受信信号がアンプ36に送信される。このように、送信素子231
ijの送信用行選択素子TSW
ijは、超音波送信時に、励振回路T
ijを送信素子231
ijに電気的に接続し、超音波受信時に、受信回路R
ijを受信素子232
ijに電気的に接続する。セルX
bijに設けられたアンプ36は、セルX
bijの素子232
ijが検出した受信信号を増幅する。アンプ36は、素子232
ijの近傍にセル内回路として集積化されて配置されているので、受信信号のSN比の改善を図ることができる。アンプ36に接続されたAD変換回路37は、アンプ36から伝達されたアナログ信号である受信信号を、デジタル信号に変換する。
【0118】
図8の下段のセルX
bi(j+1)に設けられた高電圧ドライバ34は、送受信制御部30の波形発生回路32からの励振信号を高電圧信号に変換する。セルX
bi(j+1)に設けられた送信用行選択素子TSW
ijが、高電圧ドライバ34と送信素子231
i(j+1)の間を導通状態にすると、送信素子231
i(j+1)の下部電極と接地電位の上部電極の間に高電圧信号が印加され、送信素子231
i(j+1)が駆動される。セルX
bijの送信用行選択素子TSW
ijと同様に、送信素子231
i(j+1)の送信用行選択素子TSW
ijは、超音波送信時に、励振回路T
i(j+1)を送信素子231
i(j+1)に電気的に接続し、超音波受信時に、受信回路R
i(j+1)を受信素子232
i(j+1)に電気的に接続する。送信素子231
i(j+1)の受信用行選択素子TRW
ijが、受信素子232
i(j+1)とアンプ36の間を導通状態にすると、受信素子232
i(j+1)が検出した受信信号がセルX
bi(j+1)のアンプ36に送信される。セルX
bi(j+1)に設けられたアンプ36は、セルX
bi(j+1)の受信素子232
i(j+1)が検出した受信信号を増幅する。アンプ36は、受信素子232
i(j+1)の近傍にセル内回路として集積化されて配置されているので、受信信号のSN比の改善を図ることができる。アンプ36に接続されたAD変換回路37は、アンプ36から伝達されたアナログ信号である受信信号を、デジタル信号に変換する。
【0119】
図8の右側に示した共通の回路である送受信制御部30には、タイミング調整回路38が含まれている。タイミング調整回路38は、素子アレイ301bを構成している各セルX
bij,X
bi(j+1),…の共通の回路として、2次元マトリクスを構成している各セルX
bij,X
bi(j+1),…にそれぞれ接続され、各セルX
bij,X
bi(j+1),…からそれぞれ受信信号を入力する。タイミング調整回路38は、各セルX
bij,X
bi(j+1),…のAD変換回路37からのデジタル信号のタイミングを調整し、送受信制御部30の画像処理回路39に出力するする。タイミング調整回路38に接続された画像処理回路39は、AD変換回路37からのデジタル信号に必要な処理を加えた後に、必要な処理を加えたデジタル信号を表示部40に出力する。
【0120】
なお、振動空洞を有する容量型の送信素子231ij,231i(j+1),…の下部電極と上部電極の間には予めDCバイアス電圧を印加しておく。超音波送信時には、励振信号としての送波パルスにより下部電極と上部電極の間の静電力を変動させ、送信素子231ij,231i(j+1),…の振動膜(メンブレン)を変位させることで、超音波を送信する。また、超音波受信時には、超音波により受信素子232ij,232i(j+1),…の振動膜が変位し、これが受信素子232ij,232i(j+1),…の下部電極と上部電極の間の静電容量の変化となるので、その変化を電気信号として取り出すことにより超音波を受信する。
【0121】
図8のブロック図の上段に例示したとおり、第2実施形態に係る音響素子集積回路のセルX
bijは、送信素子231
ijと、送信素子231
ijに隣接して配置された受信素子232
ijのペアを単位数n=1の音響素子として備えている。又、
図8のブロック図の下段に示したセルX
bi(j+1)は、送信素子231
i(j+1)と、送信素子231
i(j+1)に隣接して配置された受信素子232
i(j+1)のペアを単位数n=1の音響素子として備えている。一般的に、超音波の送信については、高電圧により振動膜の振幅を大きくする必要があるため、送信用素子231
ij,231
i(j+1)については、その大きな振幅に耐えられるように十分な強度で形成することが望ましい。これに対し、超音波の受信については、微弱な超音波の反射信号も高感度で検出可能とするために、受信用素子232
ij,232
i(j+1)としては、振動膜が振動し易く、かつ十分な受信面積を有することが望ましい。
【0122】
そこで、第2実施形態に係る音響素子集積回路においては、例えば、
図9に示すように、送信用素子231
ij及び受信用素子232
ijの平面パターンの形状をそれぞれ六角形とし、面積効率の観点から、送信用素子231
ijのサイズと受信用素子232
ijのサイズを同じにした場合について、例示的に説明する。実際には、
図9に示した送信用上部電極109a及び受信用上部電極109b、並びに信用上部電極109aと受信用上部電極109bを接続する表面配線109cの上には、これらの送信用上部電極109a等を保護するプロテクション膜が存在する。しかし、
図9の表現では送信用上部電極109a及び受信用上部電極109の形状を見やすくするために、プロテクション膜を除いた状態での上面図として、送信用上部電極109a及び受信用上部電極109の外形線を実線で表記している。送信用上部電極109a等の下のレベルとなる受信空洞Hb及び送信空洞Haは、
図9では隠れ線で表記している。受信感度を向上させる観点から、受信用素子232
ijの数を送信用素子231
ijの数よりも多くして受信面積を増やしてもよい。
【0123】
図12等を用いて後述するように、第2実施形態に係る音響素子集積回路は、第1実施形態に係る音響素子集積回路と同様に、第1チップ601、20V以上の高電圧回路を集積化した第2チップ602及び20V未満の小信号・低電圧回路を集積化した第3チップ603の3層構造から構成された3D集積回路であることが特徴である。「20V以上の高電圧回路を集積化した第2チップ602」の表現は、第3チップ603の小信号・低電圧回路との差別化をするための修辞学上の便宜に過ぎないことは、第1実施形態に係る音響素子集積回路の場合と同様である。実際の技術的な意味としては、第2チップ602は40V以上の高電圧回路、例えば100V~200V程度、又はそれ以上の電圧レベルの高電圧回路を集積化できる。しかし、第3チップ603の小信号・低電圧回路と識別可能な限り、第2チップ602は20V程度の高電圧回路を集積化する場合も含みうることに留意されたい。なお、第3チップ603の小信号・低電圧回路には、3.3V以下の動作電圧の電子回路が含まれてよい。
【0124】
第1実施形態に係る音響素子集積回路で説明したとおり、従来の容量型の音響素子は、
図24(b)に示したような限定された範囲での振動膜の振動であり、振動膜をフルスイングさせる動作をしていなかった。第2実施形態に係る音響素子集積回路においては、第2チップ602に集積化される回路と第3チップ603に集積化される回路を、それぞれの動作電圧の電圧レベルで振り分けているので、第3チップ603の小信号レベルの回路に影響を与えないで、第2チップ602の大信号レベルの回路を安定に動作させることができる。このため、第2実施形態に係る音響素子集積回路によれば、
図22(a)に示すように、例えば0V~200V等の高電圧でフルスイングさせる大振幅の振動を、高電圧ドライバ34が安定に出力できる。この結果、2次元配置された送信用素子231
ij,231
i(j+1),………のそれぞれの振動膜に対して、
図22(b)に示すようなフルスイングに近い振動をさせることができる。
【0125】
図10に例示した第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップ601aの断面構造は、
図9に示した六角形の送信素子231
ijと六角形の受信素子232
ijに関し、互いの六角形の中心を通る階段切断面であるX-X方向から見た断面構造を示す模式図である。即ち、第2実施形態に係る音響素子集積回路に用いる第1チップ601は、
図10に例示するように、半導体基板101と、半導体基板101の上に堆積された下地絶縁膜102からなる複合構造の上に、
図9に示した送信素子231
ijと受信素子232
ijを構築している。
【0126】
半導体基板101には、
図10に示すように、接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12の3つの接続プラグが設けられている。
図9の平面図から分かるように、接地プラグV10は六角形をなす送信素子231
ijの下側の頂角に設けられている。励振プラグV11は六角形をなす送信素子231
ijの右側の辺の中央に、受信プラグV12は六角形をなす受信素子232
ijの右側の辺の中央に設けられている。即ち、
図9に示す平面パターンにおいて、接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12の位置のそれぞれは、送信素子231
ijの送信空洞Haの占有する位置及び受信素子232
ijの受信空洞Hbの送信空洞Haの占有する位置とは、互いにオーバーラップしない位置に配置されている。下地絶縁膜102には、接地プラグV10に接続する中継プラグV16、励振プラグV11に接続する中継プラグV18及び受信プラグV12に接続する中継プラグV19が設けられている。
【0127】
図10の左側に示した送信素子231
ijは、下地絶縁膜102上に設けられた送信用下部電極103aと、送信用下部電極103aの上に堆積された層間絶縁膜104と、層間絶縁膜104の上に構成された送信空洞Haと、送信空洞Haの上に形成された第1振動膜107及び第2振動膜108と、第2振動膜108の上に形成された送信用上部電極109aで構成されている。送信用下部電極103aの平面パターンは、下地絶縁膜102に設けられた中継プラグV18を介して、励振プラグV11に接続されている。一方、
図10の右側に示した受信素子232
ijは、下地絶縁膜102上に設けられた受信用下部電極103bと、受信用下部電極103bの上に堆積された層間絶縁膜104と、層間絶縁膜104の上に構成された受信空洞Hbと、受信空洞Hbの上に形成された第2振動膜108と、第2振動膜108の上に形成された受信用上部電極109bで構成されている。
【0128】
受信用下部電極103bの平面パターンは、下地絶縁膜102に設けられた中継プラグV19を介して、受信プラグV12に接続されるパターンである。送信空洞Ha及び受信空洞Hbの内部は、Heガスを主成分とする約1kPa程度の減圧状態となっている。送信用上部電極109aと受信用上部電極109bは紙面の手前側で互いに接続されている。更に、
図10の左側には、第2振動膜108、層間絶縁膜104を貫通する層間配線プラグV17が埋め込まれている。層間配線プラグV17は中継パッド103cを介して中継プラグV16に接続され、中継プラグV16が接地プラグV10に接続されている。この層間配線プラグV17が送信用上部電極109aに接続され、送信用上部電極109aと受信用上部電極109bを接続する表面配線109cを介して、送信用上部電極109aと受信用上部電極109bが共に接地される。なお、実際には、送信用上部電極109a、受信用上部電極109b及び表面配線109cの上には、送信用上部電極109a、受信用上部電極109b及び表面配線109cを保護するプロテクション膜が存在する。このプロテクション膜の図示は、
図9の表現手法に対応させて、
図10では省略されている。
【0129】
図10に示す第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップ601aの構造において、送信素子の送信空洞Haの縦方向(膜厚方向)のサイズは、受信素子の受信空洞Hbの縦方向(膜厚方向)のサイズよりも大きくなっている。また、送信素子の第1振動膜107と第2振動膜108の合計膜厚d1は、受信素子の第2振動膜108の膜厚d2よりも大きくなっている。
図10に示すようなサイズの関係とすることにより、送信素子では、より強い超音波を送信可能となると共に十分な強度も確保される。また、受信素子では、より繊細な超音波の受信を可能とし、高感度を実現することができる。即ち、
図10に示すような構造において、第1振動膜107と第2振動膜108の合計膜厚d1を、受信素子の第2振動膜108の膜厚d2より大きくし、且つ振動空洞の縦方向の幅又は電極間距離(最大幅)を送受信で最適化することで、より高性能な音響素子を形成することができる。
【0130】
なお、第2実施形態に係る音響素子集積回路が超音波診断装置として適用される時には
図10に示した第1チップ601aの上部方向に音響整合層、音響レンズが設けられるが、第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップ601aの表面に絶縁性の無機膜、または有機膜を設けても良い。無機膜としては、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、及びそれらに添加物が加えられた物、有機膜としては、ポリイミド樹脂膜やエポキシ樹脂膜を用いる事が出来る。
【0131】
図11には、3層構造をなす第2実施形態に係る音響素子集積回路に用いる第1チップ601bの構造として、
図10に示した構造とは異なる例を示す。
図11に例示した断面構造も、
図9に示した六角形の送信素子231
ijと六角形の受信素子232
ijに関し、互いの六角形の中心をとおる切断面で切った場合の断面構造に対応する模式図である。即ち、第2実施形態に係る音響素子集積回路に用いる第1チップ601bは、
図11に例示するように、半導体基板101と、半導体基板101の上に堆積された下地絶縁膜102からなる複合構造の上に、
図9に示した送信素子231
ijと受信素子232
ijを構築している。
図11に示す構造において、半導体基板101と、半導体基板101の上に堆積された下地絶縁膜102からなる複合構造の上に、
図9に示した送信素子231
ijと受信素子232
ijが構築された構造をなしている。
【0132】
図10の半導体基板101に設けられた接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12と同様に、
図11の半導体基板101にも接地プラグ、励振プラグ及び受信プラグの3つの接続プラグが設けられている。ただし、
図11の断面図は、
図9のX-X方向からみた階段断面とは異なり、紙面の手前に側の位置に、3つの接続プラグが存在する場合であるので、
図11には接続プラグは図示されていない。又、
図10と同様に、
図11の下地絶縁膜102にも、接地プラグ、励振プラグ及び受信プラグに接続する接続プラグが設けられているが、断面上には位置していない。
図11の左側に示した送信素子231
ijは、下地絶縁膜102上に設けられた送信用下部電極103aと、送信用下部電極103aの上に堆積された第1層間絶縁膜104aと、第1層間絶縁膜104aの上に堆積された第2層間絶縁膜104bと、第2層間絶縁膜104bの上に構成された送信空洞Haと、送信空洞Haの上に形成された第1振動膜107及び第2振動膜108と、第2振動膜108の上に形成された送信用上部電極109aで構成されている。
【0133】
一方、
図11の右側に示した受信素子232
ijは、下地絶縁膜102上に設けられた受信用下部電極103bと、受信用下部電極103bの上に堆積された第1層間絶縁膜104aと、第1層間絶縁膜104aの上に構成された受信空洞Hbと、受信空洞Hbの上に形成された第1振動膜107と、第1振動膜107の上に形成された受信用上部電極109bで構成されている。送信空洞Ha及び受信空洞Hbの内部は、Heガスを主成分とする約1kPa程度の減圧状態となっている特徴は
図10に示した構造と同様である。
図11の紙面の手前において、
図10と同様に、第2振動膜108、第1振動膜107,第2層間絶縁膜104b、第1層間絶縁膜104aを貫通する層間配線プラグが埋め込まれている。層間配線プラグは中継パッドを介して中継プラグに接続され、中継プラグが接地プラグに接続されている。
【0134】
図11に示す第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップ601bの構造において、送信素子の送信空洞Haの縦方向(膜厚方向)のサイズは、受信素子の受信空洞Hbの縦方向(膜厚方向)のサイズよりも大きくなっている。また、送信素子の第1振動膜107と第2振動膜108の合計膜厚d12は、受信素子の第1振動膜107の膜厚d22よりも大きくなっている。
図11に示すようなサイズの関係とすることにより、送信素子では、より強い超音波を送信可能となると共に十分な強度も確保される。また、受信素子では、より繊細な超音波の受信を可能とし、高感度を実現することができる。即ち、
図11に示すような第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップ601bの構造において、第1振動膜107と第2振動膜108の合計膜厚d12を、受信素子の第1振動膜107の膜厚d22より大きくし、且つ振動空洞の縦方向の幅又は電極間距離(最大幅)を送受信で最適化することで、より高性能な音響素子を形成することができる。
【0135】
なお、第2実施形態に係る音響素子集積回路が超音波診断装置として適用される時にも、
図11に示した第1チップ601bの上部方向に音響整合層、音響レンズが設けられる。音響整合層や音響レンズが設けられる場合において、第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップ601bの表面には、絶縁性の無機膜、または有機膜を設けても良い。無機膜としては、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、及びそれらに添加物が加えられた物、有機膜としては、ポリイミド樹脂膜やエポキシ樹脂膜を用いる事が出来る。
【0136】
図12に示すように、第2実施形態に係る音響素子集積回路は、第1チップ601、20V以上の高電圧回路を集積化した第2チップ602及び20V未満の小信号レベルの回路を集積化した第3チップ603の積層体から構成された3D集積回路である。第1実施形態に係る音響素子集積回路と同様に、第1チップ601、第2チップ602及び第3チップ603は、例えば、Si、SiC等の半導体基板を主体とする半導体チップで構成できる。第1チップ601、第2チップ602及び第3チップ603を構成する半導体チップにはSOI構造等の、半導体基板と絶縁層との複合構造であってもよい。特に、第2チップ602には、高耐圧性に優れた広禁制帯幅半導体からなる半導体チップが好適である。
【0137】
第1チップ601は、容量型の送信素子231i(j-1)と容量型の受信素子232i(j-1)のペア、容量型の送信素子231ijと容量型の受信素子232ijのペア、容量型の送信素子231i(j+1)と容量型の受信素子232i(j+1)のペアを有する。既に説明したのと同様に、送信素子231i(j-1)と受信素子232i(j-1)のペアからなるモジュールを、第2実施形態に係る音響素子集積回路では、「音響素子(231i(j-1),232i(j-1))」という。第1チップ601に集積化された送信素子231i(j-1)と受信素子232i(j-1)のペアからなるモジュール、送信素子231ijと受信素子232ijのペアからなるモジュール、送信素子231i(j+1)と受信素子232i(j+1)のペアからなるモジュールは、それぞれ2つの振動空洞を備えた音響素子として、マトリクスの第i行に配列されたセル列Xbi(j-1),Xbij,Xbi(j+1),…の一部を構成している。
【0138】
図12において左側に示したセルX
bi(j-1)において、第2チップ602には、セルX
bi(j-1)の励振回路T
i(j-1)を構成する高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)34が設けられている。高電圧ドライバ34は送信素子231
i(j-1)の振動膜を振動させるため20V以上、具体的には50V以上若しくは100V以上、更には200V程度の大信号レベルの回路である。高電圧ドライバ34等の高電圧動作素子を配置する都合上、第2チップ602は、SiC、ダイヤモンドやGaN等の、高耐圧性に優れた広禁制帯幅半導体からなる材料の半導体基板を用いてもよい。第1実施形態に係る音響集積回路で既に説明したとおり、広禁制帯幅半導体材料は、高耐圧の半導体集積回路を構成できる特徴がある反面、製造技術的な問題がある。第2チップ602を高電圧回路専用のチップとして特化し、第3チップ603に小信号レベルの回路を集積化することにより、音響素子集積回路の全体としての製造歩留まりや良品率を向上させ、信頼性を高めることができる。なお、第2チップ602にSiを用いる場合であっても、高耐圧の半導体素子は不純物密度5×10
14cm
-3程度以下の高比抵抗Si基板を用いるのが高耐圧化に好適であるのに対し、小信号レベルの回路は不純物密度1×10
15cm
-3程度以上の低比抵抗Si基板を用いるのが微細化に好適であるので、第2チップ602や第3チップ603の設計の自由度が向上する。セルX
bi(j-1)の高電圧ドライバ34は、第3チップ603からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して送信素子231
i(j-1)の下部電極に印加する。
【0139】
セルX
bi(j-1)の高電圧ドライバ34は、例えば、電力用MOSトランジスタ、IGBTやSIサイリスタ等で構成できる。高電圧ドライバ34の前段(入力側)には、レベルシフト回路やレベルシフト回路に接続され、レベルシフト回路で高電位にレベルシフトされた信号で動作するハイサイド回路が設けられていてもよい。必須の回路素子ではないので
図12では図示を省略しているが、
図8に示した回路構成と同様に、送信素子231
i(j-1)と高電圧ドライバ34の間に励振用行選択素子TSW
i(j-1)を集積化しておけば、第i行の励振行選択線SW
iを励振用行選択素子TSW
i(j-1)のゲートに接続することにより、送信素子231
i(j-1)と高電圧ドライバ34の間の電気的接続を励振行選択線SW
iによって制御できる。セルX
bi(j-1)の第3チップ603は、励振回路T
i(j-1)の遅延回路33と、受信回路R
i(j-1)のアンプ36及びAD変換回路37とを有する。セルX
bi(j-1)の高電圧ドライバ34は、送信素子231
i(j-1)の振動膜を振動させるために50V以上、例えば200V程度の大信号レベルの回路であるために、第2チップ602に集積化されたのに対し、セルX
bi(j-1)の遅延回路33は、20V未満、例えば3.3V以下の低電圧で動作する回路であるので、第3チップ603に集積化される。セルX
bi(j-1)の遅延回路33はセルX
bi(j-1)の高電圧ドライバ34の出力信号の位相や動作のタイミングを決める回路である。
【0140】
必須の回路素子ではないので
図12では図示を省略しているが、
図8に示した回路構成と同様に、高電圧ドライバ34と遅延回路33の間に列選択素子TB
i(j-1)を接続するように集積化してもよい。列選択素子TB
i(j-1)のゲートに第(j-1)列のビット線B
(j-1)の信号を入力することにより、高電圧ドライバ34と遅延回路33の間の導通が制御でき、送信素子231
i(j-1)の動作を、第i行と第(j-1)列のマトリクスの交点として制御できる。同様に、受信素子232
i(j-1)とアンプ36の間に、受信用行選択素子TRW
i(j-1)を接続しておけば、受信用行選択素子TRW
i(j-1)を第i行の受信行選択線RW
iを受信用行選択素子TRW
i(j-1)のゲートに接続することにより、受信素子232
i(j-1)とアンプ36の間の電気的接続を受信行選択線RW
iによって制御できる。第3チップ603に集積化された遅延回路33を構成しているロウサイド回路の小信号出力が、第2チップ602に集積化された高電圧ドライバ34の前段を構成するレベルシフト回路によってハイサイド回路に伝達される。
【0141】
図12の中央に示した第i行のセルX
bijにおいて、第2チップ602には、セルX
bijの励振回路T
ijを構成する高電圧ドライバ34が設けられている。セルX
bijの高電圧ドライバ34は、第3チップ603からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して送信素子231
ijの下部電極に印加する。
図12では、セルX
bijの第3チップ603は、励振回路T
ijの遅延回路33と、受信回路R
ijのアンプ36及びAD変換回路37を有するとして、簡略化した構造が模式的に示されている。セルX
bijの高電圧ドライバ34は、送信素子231
ijの振動膜を振動させるために50V以上、例えば200V程度の大信号レベルの回路であるために、第2チップ602に集積化されたのに対し、セルX
bijの遅延回路33は、20V未満、例えば3.3V以下の低電圧で動作する回路であるので、第3チップ603に集積化される。セルX
bijの遅延回路33はセルX
bijの高電圧ドライバ34の出力信号の位相や動作のタイミングを決める回路である。必須の回路素子ではないので図示を省略しているが、
図8に示した回路構成と同様に、送信素子231
ijと高電圧ドライバ34の間に励振用行選択素子TSW
ijを集積化しておけば、第i行の励振行選択線SW
iを励振用行選択素子TSW
ijのゲートに接続することにより、送信素子231
ijと高電圧ドライバ34の間の電気的接続を励振行選択線SW
iによって制御できる。
【0142】
必須の回路素子ではないので
図12では図示を省略しているが、セルX
bijの高電圧ドライバ34と遅延回路33の間に列選択素子TB
ijを接続するように集積化してもよい。セルX
bijの列選択素子TB
ijのゲートに第j列のビット線B
jの信号を入力することにより、セルX
bijの高電圧ドライバ34と遅延回路33の間の導通が制御でき、送信素子231
ijの動作を、第i行と第j列のマトリクスの交点として制御できる。同様に、受信素子232
ijとアンプ36の間に、受信用行選択素子TRW
ijを接続しておけば、受信用行選択素子TRW
ijを第i行の受信行選択線RW
iを受信用行選択素子TRW
ijのゲートに接続することにより、受信素子232
ijとセルX
bijのアンプ36の間の電気的接続を受信行選択線RW
iによって制御できる。第3チップ603に集積化されたセルX
bijの遅延回路33を構成しているロウサイド回路の小信号出力が、第2チップ602に集積化された高電圧ドライバ34の前段を構成するレベルシフト回路によってハイサイド回路に伝達される。
【0143】
図12の右側に示した第i行のセルX
bi(j+1)の第2チップ602には、セルX
bi(j+1)の励振回路T
i(j+1)を構成する高電圧ドライバ34が設けられている。セルX
bi(j+1)の高電圧ドライバ34は、第3チップ603からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して送信素子231
i(j+1)の下部電極に印加する。
図12では、セルX
bi(j+1)の第3チップ603は、励振回路T
i(j+1)の遅延回路33と、受信回路R
i(j+1)のアンプ36及びAD変換回路37とを有するように簡略化して示している。セルX
bi(j+1)の高電圧ドライバ34は、送信素子231
i(j+1)の振動膜を振動させるために50V以上、例えば200V程度の大信号レベルの回路であるために、第2チップ602に集積化されたのに対し、セルX
bi(j+1)の遅延回路33は、20V未満、例えば3.3V以下の低電圧で動作する回路であるので、第3チップ603に集積化される。セルX
bi(j+1)の遅延回路33はセルX
bi(j+1)の高電圧ドライバ34の出力信号の位相や動作のタイミングを決める回路である。必須の回路素子ではないので図示を省略しているが、送信素子231
i(j+1)とセルX
bi(j+1)の高電圧ドライバ34の間に励振用行選択素子TSW
i(j+1)を集積化しておけば、第i行の励振行選択線SW
iを励振用行選択素子TSW
i(j+1)のゲートに接続することにより、送信素子231
i(j+1)と高電圧ドライバ34の間の電気的接続を励振行選択線SW
iによって制御できる。
【0144】
必須の回路素子ではないので図示を省略しているが、セルXbi(j+1)の高電圧ドライバ34と遅延回路33の間に列選択素子TBi(j+1)を接続するように集積化してもよい。セルXbi(j+1)の列選択素子TBi(j+1)のゲートに第(j+1)列のビット線B(j+1)の信号を入力することにより、高電圧ドライバ34と遅延回路33の間の導通が制御でき、送信素子231i(j+1)の動作を、第i行と第(j+1)列のマトリクスの交点として制御できる。同様に、受信素子232i(j+1)とアンプ36の間に、受信用行選択素子TRWi(j+1)を接続しておけば、受信用行選択素子TRWi(j+1)を第i行の受信行選択線RWiを受信用行選択素子TRWi(j+1)のゲートに接続することにより、受信素子232i(j+1)とアンプ36の間の電気的接続を受信行選択線RWiによって制御できる。第3チップ603に集積化されたセルXbi(j+1)の遅延回路33を構成しているロウサイド回路の小信号出力が、第2チップ602に集積化された高電圧ドライバ34の前段を構成するレベルシフト回路によってハイサイド回路に伝達される。
【0145】
図12では図示を省略しているが、第3チップ603には、
図8の右側に示した送受信制御部30の基準クロック発生回路31、波形発生回路32、タイミング調整回路38、及び画像処理回路39の機能ブロックを構成する回路のうちの1つ以上の回路を集積化しても構わない。第2実施形態に係る音響素子集積回路では、高電圧駆動される電子回路が第2チップ602内に設けられ、低電圧駆動される電子回路が第3チップ603内に設けられる。このように、駆動電圧のレベルに応じて、各機能ブロックを構成する回路を各チップに振り分けることで、高電圧駆動される電子回路をSiC等の広禁制帯幅半導体基板に集積化し、低電圧駆動される電子回路を製造が容易なSi基板に集積化する等の半導体材料の選択が可能になる。又、高電圧駆動される電子回路を第2チップ602に集積化し、低電圧駆動される電子回路を第3チップ603に集積化することにより、
図8に例示した各機能ブロックを構成する回路のレイアウトの自由度が向上する。
【0146】
図12に例示した第i行のセルX
bi(j-1),X
bij及びX
bi(j+1)の内、セルX
bijに着目し、セルX
bijの概略構造の概念を、
図13を用いて具体的に例示する。即ち、第2実施形態に係る音響素子集積回路を構成するセルX
bijは、
図12と同様に、第3チップ603上に第2チップ602が積層され、第2チップ602上に第1チップ601が積層される3D構造である。第1チップ601は、半導体基板611と、半導体基板611の主面上に配置され、超音波の送信を行う容量型の送信素子231
ijと、超音波の受信を行う容量型の受信素子232
ijのペアを集積化した構造をなしている。半導体基板611には、半導体基板611の主面から裏面まで貫通するTSVである接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12が、左から順に設けられている。なお、第2実施形態に係る音響素子集積回路では、接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12を総称して包括的に上層の「接続プラグ(V10,V11,V12)」と呼ぶ。
【0147】
送信素子231
ijは、励振プラグV11に接続される送信用下部電極E11と、送信用下部電極E11上に送信空洞H1を介して配置される送信用上部電極E21とを有する。送信用下部電極E11は
図10及び
図11に示した送信用下部電極103aに対応する。又、送信空洞H1は
図10及び
図11に示した送信空洞Haに対応し、送信用上部電極E21は
図10及び
図11に示した送信用上部電極109aに対応する。受信素子232
ijは、受信プラグV12に接続される受信用下部電極E12と、受信用下部電極E12上に受信空洞H2を介して配置される受信用上部電極E22とを有する。受信用下部電極E12は
図10及び
図11に示した受信用下部電極103bに対応する。又、受信空洞H2は
図10及び
図11に示した受信空洞Hbに対応し、受信用上部電極E22は
図10及び
図11に示した受信用上部電極109bに対応する。
【0148】
送信用上部電極E21と受信用上部電極E22は図示を省略した表面配線で互いに接続され、更に接地プラグV10を介して接地端子に接続された接続具10に接続される。接続具10にはバンプ、半田や半田ボールが採用可能である。接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12は、送信空洞H1及び受信空洞H2の平面パターン上の位置がオーバーラップしない位置にレイアウトされる。第1実施形態に係る音響素子集積回路において、
図1に例示したような平面レイアウトで、接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12の位置を設計することにより、第1チップ601、第2チップ602及び第3チップ603を積層しかつ、第2チップ602の回路と第3チップ603の回路の間を接続具による電気的なチップ間接続をする際に送信空洞H1及び受信空洞H2が押し潰されてしまうという課題が解決される。
【0149】
図13では第2チップ602は、半導体基板612と、半導体基板612の主面に接続された高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)34を集積化した半導体層との複合構造として例示しているが、モデル的な模式図に過ぎず、
図13に示される構造に限定されるものではない。例えば、
図12で説明したように、受信用下部電極E12と高電圧ドライバ34の間に励振用行選択素子TSW
ijを集積化しておけば、第i行の励振行選択線SW
iを励振用行選択素子TSW
ijのゲートに接続することにより、送信素子231
ijと高電圧ドライバ34の間の電気的接続を励振行選択線SW
iによって制御できる。又、半導体基板612と半導体基板612の主面に設けられた半導体層との複合構造ではなく、一体の半導体基板で第2チップ602を構成してもよい。更に
図20及び
図21に例示したようなSOI基板と多層絶縁膜部で第2チップ602を構成してもよい。特に、
図21に例示したようにフリップチップで積層すれば、第2チップ602のSOI絶縁膜及びSOIシリコン層を貫通するTSVの数を減らし、TSVの配置のピッチを広げることが可能になる。
【0150】
既に述べたように、第2チップ602をSiC等の広禁制帯幅半導体基板で構成すれば、高電圧で動作する高電圧ドライバ34や励振用行選択素子TSW
ijの回路が集積化できる。又、
図20及び
図21に例示したように、SOIシリコン層にSOI絶縁膜に到達するU溝を掘り、このU溝に分離絶縁領域を格子状若しくは城壁状に埋め込み、島状のSOIシリコン層を構成することにより、島状のSOIシリコン層に高耐圧性に優れた高電圧ドライバ34等を集積化できる。
図13の例示では、半導体基板612の主面から裏面まで貫通するTSVとして励振回路プラグV21及び受信回路プラグV22を表現しているが、広禁制帯幅半導体基板等の一体の半導体基板で第2チップ602を構成する場合には、励振回路プラグV21及び受信回路プラグV22はTSVではなくなる。なお、第2実施形態に係る音響素子集積回路では、励振回路プラグV21及び受信回路プラグV22を総称して、包括的に下層の「接続プラグ(V21,V22)」と呼ぶこととする。
【0151】
半導体基板612の主面上には、第1チップ601の接地プラグV10に接続される上層のチップ間接続手段(接続機構)B10と、励振プラグV11に接続される上層のチップ間接続手段(接続機構)B11と、受信プラグV12に接続される上層のチップ間接続手段(接続機構)B12が、それぞれ図示を省略した接続具用ランドの上に配置されている。上層のチップ間接続手段B11,上層のチップ間接続手段B12にも、バンプ、半田や半田ボール等の接続導体が採用可能である。更に、上層のチップ間接続手段は、バンプ等による接続具を用いた接続やハイブリッドボンディングに限定されず、第1チップ601と第2チップ602を、直接接合法等で直接貼り合わせてもよい。更に上層のチップ間接続手段には第1チップ601のセルの配列のピッチと第2チップ602のセルの配列のピッチとを変換するインターポーザ等の層が含まれていてもよい。即ち、第1チップ601のセルの配列のパターンが、第2チップ602のセルの配列のパターンに射影できる対応関係にあればよいので、第1チップ601のセルの配列のピッチを微細化して解像度を向上させてもよい。
【0152】
図13の左側に示すように、第2チップ602のセルX
bi(j-1),X
bij,X
bi(j+1),…がマトリクス状に配置された素子アレイ部の左側の領域には、高圧電源34aが配置されている。そして、高圧電源34aが配置された周辺回路領域の、第2チップ602の上面には、
図13の左側に示すようなボンディングパッドBP1が設けられている。第2チップ602の上面のボンディングパッドBP1にワイヤW1がボンディング接続されている。ワイヤW1を介して電源が供給された高圧電源34aから、高圧の電圧が、素子アレイ部に配置されたそれぞれのセルX
bi(j-1),X
bij,X
bi(j+1),…の高電圧ドライバ34に供給される。高電圧ドライバ34は、
図22及び
図23(a)に例示したような、セルX
bi(j-1),X
bij,X
bi(j+1),…の送信素子の振動膜を振動させるフルスイングの高電圧信号を、第2チップ602から供給できる。
【0153】
ボンディングパッドの図示を省略しているが、左側に示した周辺回路領域の第2チップ602の上面には、ボンディングパッドBP1に隣接して接地用ボンディングパッドも設けられている。この接地用ボンディングパッドに接地用ワイヤがボンディング接続される。接地用ワイヤを介した接地電位は、上層のチップ間接続手段B10を介して、第1チップ601の接地プラグV10に接続される。そして、接地プラグV10から素子アレイ部に配置されたそれぞれのセルXbi(j-1),Xbij,Xbi(j+1),…の第1チップ601の送信用上部電極E21及び受信用上部電極E22に接続され、送信用上部電極E21及び受信用上部電極E22が共通に接地される。第2チップ602の励振回路プラグV21は図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介して、高電圧ドライバ34に電気的に接続されている。高電圧ドライバ34と上層のチップ間接続手段B11を搭載する接続具用ランドとは、図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介して、電気的に接続されている。受信回路プラグV22は、貫通プラグとして上層のチップ間接続手段B12を搭載する接続具用ランドまで延長されていてもよい。
【0154】
図13に示すように、セルX
bijに対応する第2チップ602の領域に、高電圧ドライバ34を配置し、高圧電源34aと第3チップ603の回路の両方に接続されることにより、高電圧ドライバ34は、第3チップ603から受信した3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号にレベルシフトを行うことができる。セルX
bijに対応する第3チップ603の領域には、セルX
bijの遅延回路33、アンプ36及びAD変換回路37が設けられている。図示を省略しているが、更にセルX
bijの高電圧ドライバ34と遅延回路33の間に列選択素子TB
ijを接続するように集積化し、受信用下部電極E12とアンプ36の間に、受信用行選択素子TRW
ijを接続するように集積化してもよい。
【0155】
図13では図示を省略しているが、第3チップ603のチップ端部に近い周辺回路部には、
図2に周辺回路として示した列ドライバ302及び行ドライバ303が、素子アレイ部301aを囲むように配置されている。行ドライバ303から出力される第i行目の励振行選択線SW
iが励振用行選択素子TSW
ijの信号がゲートに入力され、列ドライバ302から出力される第j列のビット線B
jの信号が、列選択素子TB
ijのゲートに入力されれば、マトリクスの交点に位置するセルX
bijの送信素子231
ijが選択的に励振できる。又、行ドライバ303から出力される第i行目の受信行選択線RW
iの信号が、受信用行選択素子TRW
ijのゲートに入力されれば、第i行に配列されたそれぞれの送信素子231
ijからの信号が行単位で、垂直出力信号線R
1,R
2,R
3,………,R
(j-1),R
j,R
(j+1),………に読み出される。励振行選択線SW
i、受信行選択線RW
iやビット線B
jは、第3チップ603の表面配線や埋め込み配線として構成できる。
図13では図示を省略しているが、例えば、第3チップ603の上面に複数の層間絶縁膜で多層配線構造を構成して、互いに励振行選択線SW
i、受信行選択線RW
i やビット線B
jを設けることができる。
【0156】
図13に示す構成によれば、高電圧駆動される高電圧ドライバ34及び励振用行選択素子TSW
ij等の高電圧部分の電子回路を、広禁制帯幅半導体基板である第2チップ602に集積化できる。そして、低電圧駆動される電子回路が、Si基板を用いた第3チップ603に集積化する等により、電子回路の動作電圧によるチップの振り分けが可能になる。第3チップ603のセルX
bi(j-1),X
bij,X
bi(j+1),…がマトリクス状に配置された素子アレイ部の左側の周辺回路領域には、基準クロック発生回路31と波形発生回路32が共通回路領域として設けられている。
【0157】
図13において素子アレイ部の右側に示した周辺回路領域には、シリアルパラレル変換回路37aが共通回路領域として設けられている。シリアルパラレル変換回路37aは、
図2に周辺回路として示した出力バッファ回路304に対応し、例えば出力バッファ回路304の内蔵回路としてシリアルパラレル変換回路37aが備えられていてもよい。シリアルパラレル変換回路37aは、
図2の垂直出力信号線R
1,R
2,R
3,………,R
(j-1),R
j,R
(j+1),………によって読み出だされたパラレル信号を、シリアル信号に変換する。
【0158】
図13に示すセルX
bijに対応する第3チップ603の上面には、下層のチップ間接続手段(接続機構)B21及びB22が、それぞれ図示を省略した接続具用ランドの上に搭載されている。下層のチップ間接続手段B21,B22にも、バンプ、半田や半田ボール等の接続導体が採用可能である。上層のチップ間接続手段と同様に、下層のチップ間接続手段には、バンプ等による接続具を用いた接続やハイブリッドボンディングに限定されず、第2チップ602と第3チップ602を、直接接合法等で直接貼り合わせる手法も含まれうる。更に下層のチップ間接続手段には第2チップ602のセルの配列のピッチと第3チップ603のセルの配列のピッチとを変換するインターポーザ等の層が含まれていてもよい。即ち、第2チップ602のセルの配列のパターンが、第3チップ603のセルの配列のパターンに射影できる対応関係にあればよいので、第1チップ601及び第2チップ601のセルの配列のピッチを微細化して、解像度を向上させ、セル面積に余裕のある第3チップ603に接続させるようにしてもよい。
【0159】
下層のチップ間接続手段B21を搭載した接続具用ランドは図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介して遅延回路33に接続されている。下層のチップ間接続手段B22を搭載した接続具用ランドは図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介してアンプ36に接続されている。
図13に示すように、下層のチップ間接続手段B21及びB22は、それぞれ第2チップ602の下面に設けられた励振回路プラグV21及び受信回路プラグV22に接続される。
【0160】
この結果、第3チップ603の遅延回路33は、接続具を介した圧接等によるチップ間接続により対応する第2チップ602のセルXbijを構成する高電圧ドライバ34に電気的に接続される。第3チップ603のアンプ36は、接続具によるチップ間接続により、第2チップ602を貫通して、受信素子232ijの受信用下部電極E12に電気的に接続される。
【0161】
そして、シリアルパラレル変換回路37aが配置された右側の周辺回路領域に対応する第3チップ603の上面には、ボンディングパッドBP1,BP2が設けられている。ボンディングパッドBP2にワイヤW2がボンディング接続され、ボンディングパッドBP3にワイヤW3がボンディング接続されている。物理的な具体的配線構造の図示を省略しているが、ボンディングパッドBP2は、表面配線や内部埋込配線等を介して、基準クロック発生回路31、遅延回路33、AD変換回路37に接続されている。よって、ワイヤW2を介して第3チップ603に入力された制御信号に基づき、基準クロック発生回路31、遅延回路33、AD変換回路37の各電子回路の動作が制御される。
図2の垂直出力信号線R
1,R
2,R
3,………,R
j,R
j,R
(j+1),………によって読み出だされたパラレル信号は、シリアルパラレル変換回路37aによってシリアル信号に変換され、ワイヤW3を介して、
図8に示したタイミング調整回路38を介して、画像処理回路39に出力されて画像処理される。
【0162】
図13では、
図1及び
図2に示した素子アレイ301aを構成するセルX
bi(j-1),X
bij及びX
bi(j+1),…の内、セルX
bijに着目し、セルX
bijの送信素子231
ijに対応する機能ブロックを第2チップ602及び第3チップ603に集積化し、積層構造とする例を示した。即ち、第2実施形態に係る音響素子集積回路によれば、2次元マトリクス内のセルX
bi(j-1),X
bij及びX
bi(j+1),…のそれぞれの送信素子231
i(j-1),231
ij及び231
i(j+1),…に対して、励振回路T
i(j-1),T
ij及びT
i(j+1),…及び受信回路R
i(j-1),R
ij及びR
i(j+1),…を、第2チップ602及び第3チップ603に集積化して設けることにより、各送信素子231
i(j-1),231
ij及び231
i(j+1),…毎に送受信を2次元フェーズド・アレイとして制御可能となる。このように、第2実施形態に係る音響素子集積回路は、2次元フェーズド・アレイの動作が可能であるので、高精度かつ高分解能な診断を行うことができる。なお、この場合、送信用上部電極E21は、すべての送信素子で共通にすることができる。但し、2次元フェーズド・アレイの動作ではなく、送信用下部電極E11及び送信用上部電極E21の一方又は双方について、行単位又は列単位での駆動に変更することも可能である。
【0163】
(第1チップの製造方法:その1)
図10に例示した第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップ601の製造方法を、
図14A~
図14Dを用いて説明する:
(a)まず、セルX
bi(j-1),X
bij,X
bi(j+1),………の位置が、基板の主面上に2次元状に定義され割り当てられた半導体基板101を用意する。同一主面上に2次元配列されたセルX
bi(j-1),X
bij,X
bi(j+1),………のそれぞれのパターンにおいて、パターンの周辺部には、接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12が、
図9に例示したように配置されている。そして、化学的気相堆積(CVD)法等を用いて、半導体基板101上に、例えば、シリコン酸化膜(SiO
2膜)等の下地絶縁膜102を形成する。そして下地絶縁膜102の上に第1フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第1フォトレジスト膜を、接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12の上面を開口するパターンとして露光・現像して形成する。第1フォトレジスト膜のパターンをエッチングマスクとして用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて下地絶縁膜102を選択エッチングし、接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12に到達するビアホールを開口する。
【0164】
その後、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)等の高融点金属からなる第1金属膜を、下地絶縁膜102の上に、CVD法、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いて堆積する。そして第1金属膜をエッチバックして、ビアホールの内部に第1金属膜を埋め込み、接地プラグV10に接続する中継プラグV16、励振プラグV11に接続する中継プラグV18、及び受信プラグV12に接続する中継プラグV19を形成する。必要に応じて、化学的機械研磨(CMP)法等の研磨方法を用いて、下地絶縁膜102の上面を平坦化する。続けて、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いて第2金属膜を全面に堆積する。そして第2金属膜の上に第2フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第2フォトレジスト膜を、送信用下部電極103a用のパターン、受信用下部電極103bのパターン及び中継パッド103cのパターンを露光・現像して形成する。
【0165】
第2フォトレジスト膜のパターンをエッチングマスクとして用い、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング技術を用いて第2金属膜を選択エッチングし、下地絶縁膜102上に、送信用下部電極103a及び受信用下部電極103bのパターンをそれぞれ形成する。送信用下部電極103aの平面パターンは、下地絶縁膜102に設けられた中継プラグV18の上端に接続される。同様に、受信用下部電極103bの平面パターンも、下地絶縁膜102に設けられた中継プラグV19の上端に接続される。更に、下地絶縁膜102に埋め込まれたビアプラグV10の上端に接続されるように中継パッド103cのパターンも第2金属膜によって形成する。その後、CVD法等の堆積方法を用いて、送信用下部電極103aの上、受信用下部電極103bの上及び中継パッド103cの上を完全に覆うように、下地絶縁膜102上に、テトラエトキシシラン(TEOS)膜等の層間絶縁膜104を堆積する。必要に応じて、CMP法等の研磨方法を用いて、層間絶縁膜104の上面を平坦化する。
【0166】
続けて、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いてW等の第3金属膜を全面に堆積する。そして第3金属膜の上に第3フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第3フォトレジスト膜を、嵩上用犠牲層105用のパターンとして露光・現像して形成する。第3フォトレジスト膜のパターンをエッチングマスクとして用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて第3金属膜を選択エッチングし、層間絶縁膜104上に、嵩上用犠牲層105のパターンを、
図14Aに示すように形成する。嵩上用犠牲層105のパターンは、送信用下部電極103aの上部のみに、選択的に形成される。
【0167】
(b)次に、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いてW等の第4金属膜を全面に堆積する。第4金属膜は第3金属膜と同一の金属とすることが好ましい。そして第4金属膜の上に第4フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第4フォトレジスト膜を、上層犠牲層106a用のパターン及び第2犠牲層106b用のパターンとして露光・現像して形成する。この第4フォトレジスト膜のパターンをエッチングマスクとして用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて第4金属膜を選択エッチングする。この結果、
図14Bに示すように嵩上用犠牲層105のパターンの上方に上層犠牲層106aが形成され、層間絶縁膜104上に、第2犠牲層106bのパターンが形成される。
【0168】
図14Bに示すように上層犠牲層106aのパターンが、嵩上用犠牲層105の上部のみに選択的に形成されるように、フォトリソグラフィー技術を用いてマスク合わせされる。上層犠牲層106aのパターンが嵩上用犠牲層105のパターンの上に堆積されて2層の複合膜を構成することにより、送信用下部電極103aの上方に第1犠牲層(105,106a)のパターンが、第2犠牲層106bのパターンよりも厚く形成される。一方、第2犠牲層106bのパターンは、フォトリソグラフィー技術を用いてマスク合わせされ、受信用下部電極103bの上部のみに選択的に形成される。
【0169】
(c)次に、CVD法等の堆積方法を用いて、第1犠牲層(105,106a)及び第2犠牲層106bの上を完全に覆うように、層間絶縁膜104上に、シリコン窒化膜(Si
3N
4膜)等の第1振動膜107を堆積する。そして第1振動膜107の上に第5フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第5フォトレジスト膜を、第1犠牲層(105,106a)上のパターンのみが残るように、露光・現像して形成する。第5フォトレジスト膜のパターンをエッチングマスクとして用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて第1振動膜107を選択エッチングし、第1犠牲層(105,106a)の上に、第1振動膜107のパターンを、
図14Cに示すように形成する。
【0170】
(d)次に、CVD法等の堆積方法を用いて、第1振動膜107及び第2犠牲層106bの上を完全に覆うように、層間絶縁膜104上に、シリコン酸化膜等の第2振動膜108を堆積する。そして、第2振動膜108の上に第6フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第6フォトレジスト膜を、接地プラグV10上の中継プラグV16の上面を開口するエッチングマスクのパターンとして露光・現像して形成する。第6フォトレジスト膜のパターンをエッチングマスクとして用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて第2振動膜108、層間絶縁膜104及び下地絶縁膜102を貫通するように選択エッチングし、中継パッド103cに到達するビアホールOPcを
図14Dに示すように開口する。その後、高融点金属からなる第5金属膜を、第2振動膜108の上に、CVD法、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いて堆積する。そして第5金属膜をエッチバックして、ビアホールOPcの内部に第5金属膜を埋め込み、中継パッド103cに接続する層間配線プラグV17を形成する。
【0171】
(e)その後、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いて第6金属膜を第2振動膜108の上に全面に堆積する。そして第6金属膜の上に第7フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第7フォトレジスト膜によって、送信用上部電極109a用のパターンや受信用上部電極109b等のパターンを規定するように露光・現像して形成する。第7フォトレジスト膜のパターンをエッチングマスクとして用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて第6金属膜を選択エッチングし、第2振動膜108上に、送信用上部電極109a及び受信用上部電極109b等のパターンを
図14Eに示したように、それぞれ形成する。
図14Eに示したように、第1犠牲層(105,106a)の上方に送信素子の送信用上部電極109aが形成され、第2犠牲層106bの上方には受信素子の受信用上部電極109bが形成される。なお、
図9及び
図14Eに示すように、送信用上部電極109aと受信用上部電極109bは表面配線109cで互いに接続されるようにパターニングされる。更に、
図14Eに示すように、接地プラグV10の上端に接続する層間配線プラグV17に、送信用上部電極109aが接続される。この結果、送信用上部電極109aと受信用上部電極109bが層間配線プラグV17に電気的に接続され、接地可能になる。
【0172】
(f)次に、スピン塗布、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の堆積方法を用いて、第2振動膜108上に、第1プロテクション膜を堆積し、送信用上部電極109a、受信用上部電極109b及び表面配線109cの上を第1プロテクション膜で完全に覆う。そして第1プロテクション膜の上に第8フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用い、第8フォトレジスト膜によって、第1開口形成用及び第2開口形成用のエッチングマスクを形成する。第1開口形成用パターンは、第1犠牲層(105,106a)に到達する位置となるようにマスク合わせし、第2開口形成用パターンは、第2犠牲層106bに到達する位置となるようにマスク合わせする。第8フォトレジスト膜のエッチングマスクとして用い、第2振動膜108及び第1振動膜107をドライエッチングで選択エッチングし、第1犠牲層(105,106a)に到達する第1開口、及び第2犠牲層106bに到達する第2開口を開口する。第1開口及び第2開口は
図14Eに示した断面とは異なる位置に開口される。
【0173】
(g)そして、第1開口及び第2開口を介して、例えば、加熱した過酸化水素水を、第1犠牲層(105,106a)及び第2犠牲層106bに対して導入する。加熱した過酸化水素水が導入されると、第1犠牲層(105,106a)及び第2犠牲層106bは、ウェットエッチングで選択的に溶解する。第1犠牲層(105,106a)及び第2犠牲層106bが溶解すると、
図10に示すように、送信用下部電極103aの上方の位置には送信空洞Haが形成され、受信用下部電極103bの上方の位置には受信空洞Hbが形成される。この後、スピン塗布やCVD法等の堆積方法を用いて、第2プロテクション膜を第1プロテクション膜上に厚く形成して、第1開口及び第2開口を閉じる。第1開口及び第2開口を塞ぐこの工程の際に、主成分をヘリウム(He)ガスとして、1kPa程度の減圧雰囲中で処理することで、送信空洞Ha及び受信空洞Hbの内部は、Heガスが主成分となる、ほぼ真空と見なせる減圧状態となる。
図14A~
図14Eに示した工程により、
図10に示したように、送信素子と受信素子が第1チップに形成できる。上述したように、第1プロテクション膜と第2プロテクション膜の複合膜であるプロテクション膜の図示は、
図10では省略されている。
【0174】
(第1チップの製造方法:その2)
図11に例示した第2実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップの製造方法を、
図15A~
図15Dを用いて説明する:
(a)まず、
図9及び後述する
図13の半導体基板611に示した構造と同様に、それぞれのセルX
bi(j-1),X
bij,X
bi(j+1),………が、それぞれの周辺部に接地プラグV10、励振プラグV11及び受信プラグV12を有する複数のセルが、マトリクス状に配置された半導体基板101を用意する。そして、CVD法等の堆積方法を用いて、半導体基板101上に下地となる下地絶縁膜102を形成する。そしてフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いて下地絶縁膜102を選択エッチングし、接地プラグ、励振プラグ及び受信プラグに到達するビアホールを開口する。その後、W、Mo、Ti等の高融点金属を、下地絶縁膜102の上に、CVD法、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いて堆積する。そして高融点金属をエッチバックして、ビアホールの内部に高融点金属を埋め込み、接地プラグ、励振プラグ及び受信プラグに接続する中継プラグをそれぞれ形成する。
【0175】
必要に応じて、CMP法等の研磨方法を用いて、下地絶縁膜102の上面を平坦化する。続けて、スパッタリング法や真空蒸着法等の堆積技術、フォトリソグラフィー技術及びRIE等のドライエッチング技術を用いて、下地絶縁膜102上に、送信用下部電極103a、受信用下部電極103b及び中継パッドのパターンをそれぞれ選択的に形成する。
図11に例示した構造では、接地プラグ、励振プラグ及び受信プラグ等の接続プラグが
図15Aの紙面の手前にあることを前提としている。そこで、送信用下部電極103aの平面パターンは、下地絶縁膜102に設けられた接続プラグの上端に接続されるように、
図15Aの紙面の手前まで延長するパターンとして形成される。同様に、受信用下部電極103bの平面パターンも、下地絶縁膜102に設けられた接続プラグの上端に接続されるように、
図15Aの紙面の手前まで延長するパターンとして形成される。更に中継パッドが接地プラグに接続した中継プラグの上に形成される。
【0176】
この後、CVD法等の堆積方法を用いて、下地絶縁膜102上に、下部電極103a,103b及び中継パッドを完全に覆う、例えば、Si
3N
4膜等の第1層間絶縁膜104aを形成する。続けて、CVD法等の堆積方法を用いて、第1層間絶縁膜104a上に、第1層間絶縁膜104aとは異なる、例えば、TEOS膜等の第2層間絶縁膜104bを形成する。この後、フォトリソグラフィー技術及びRIE等のドライエッチング技術を用いて、
図15Aに示すように、受信用下部電極103bの上に存在する第2層間絶縁膜104bのみを選択的にエッチングし、受信用下部電極103bの上の第1層間絶縁膜104aを露出させる。
【0177】
(b)次に、スパッタリング法や真空蒸着法等の堆積技術、フォトリソグラフィー技術及びRIE等のドライエッチング技術を用いて、送信用下部電極103aの上方のみに、送信素子の振動空洞のための嵩上用犠牲層105を形成する。嵩上用犠牲層105はW層等の金属で構成すればよい。続けて、スパッタリング法や真空蒸着法等の堆積技術、フォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いて、
図15Bに示すように、送信用下部電極103aの上方に、送信素子の振動空洞のための上層犠牲層106aを形成すると共に、受信用下部電極103bの上方に、受信素子の振動空洞のための第2犠牲層106bを形成する。上層犠牲層106a及び第2犠牲層106bは、嵩上用犠牲層105と同一の金属とすればよい。マスク合わせにより、上層犠牲層106aのパターンが嵩上用犠牲層105のパターンの上に堆積して複合膜を構成することにより、送信用下部電極103aの上方に第1犠牲層(105,106a)のパターンが、第2犠牲層106bのパターンより厚く形成される。
【0178】
(c)次に、
図15Cに示すように、CVD法等の堆積方法を用いて、第2層間絶縁膜104b上に、第1犠牲層(105,106a)及び第2犠牲層106bの双方を覆う、例えば、シリコン酸化膜等の第1振動膜107を堆積する。更に、CVD法等の堆積方法を用いて、第1振動膜107上に、シリコン酸化膜等の第2振動膜108を全面に堆積する。そして、フォトリソグラフィー技術及びフォトリソグラフィー技術及びドライエッチングによって、第2犠牲層106bの上方の第2振動膜108を選択的にバックエッチする。この結果、第1犠牲層(105,106a)の方において、第1振動膜107と第2振動膜108が積層された複合膜が構成される。
【0179】
(d)そして、フォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いて第2振動膜108、第1振動膜107、第2層間絶縁膜104b、第1層間絶縁膜104a及び下地絶縁膜102を貫通するように選択エッチングし、中継パッドに到達するビアホールを開口する。その後、高融点金属を、第2振動膜108の上に、CVD法、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いて堆積する。そして高融点金属をエッチバックして、ビアホールの内部に高融点金属を埋め込み、中継パッドに接続する層間配線プラグを形成する。その後、スパッタリング法や真空蒸着法等の堆積技術、フォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いて、
図15Dに示すように、第1犠牲層(105,106a)の上方に送信素子の送信用上方電極109aを形成すると共に、第2犠牲層106bの上方に受信素子の受信用上方電極109bを形成する。この際、送信用上部電極109aと受信用上部電極109bは紙面の手前側で互いに接続されるようにパターニングされる。更に、
図15Dの断面図の紙面の手前において、接地プラグに接続した中継プラグに中継パッドを介して接続する層間配線プラグが、送信用上部電極109aと受信用上部電極109bを接続する表面配線に接続される。
【0180】
(e)次に、送信用上部電極109a、受信用上部電極109b及び送信用上部電極109aと受信用上部電極109bを接続する表面配線の上に第1プロテクション膜を形成する。フォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いて、第1振動膜107及び第2振動膜108を貫通し、第1犠牲層(105,106a)に達する第1開口を開口する。同時に、第2犠牲層106bの上の第1振動膜107を貫通して第2犠牲層106bに達する第2開口を開口する。第1開口及び第2開口は
図15Dに示した断面とは異なる位置に開口される。続けて、第1開口及び第2開口を介して、例えば、加熱した過酸化水素水を導入する。第1開口及び第2開口からウェットエッチング液が導入されると、第1犠牲層(105,106a)及び第2犠牲層106bが溶解する。第1犠牲層(105,106a)及び第2犠牲層106bが溶解すると、既に
図11に示したように、送信用下部電極103a上には送信空洞Haが形成され、受信用下部電極103b上には受信空洞Hbが形成される。この後、第2プロテクション膜を第1プロテクション膜の上に厚く堆積し、第1開口及び第2開口を塞ぐ。第1開口及び第2開口を塞ぐ際、1kPA程度の圧力のHeガス雰囲気中で処理すれば、送信空洞Ha及び受信空洞Hbの内部はほぼ真空となる。ただし、
図10の場合と同様に、第1プロテクション膜と第2プロテクション膜の複合膜であるプロテクション膜の図示は、
図11では省略されている。
【0181】
(第3実施形態)
図16に示すように、本発明の第3実施形態に係る音響素子集積回路は、20V以上の高電圧回路を集積化した第1チップ605と、20V未満の小信号レベルの回路を集積化した第2チップ606の2層積層構造で構成された3D集積回路である。「20V以上の高電圧回路を集積化した第1チップ605」の表現は、第2チップ606との差別化をするための修辞学上の便宜に過ぎないことは、第1及び第2実施形態に係る音響素子集積回路と同様である。技術的な意味としては、第1チップ605は、40V以上、例えば100V~200V程度、又はそれ以上の電圧レベルの高電圧回路を集積化できる。なお、第1及び第2実施形態に係る音響素子集積回路と同様に、第2チップ606の小信号・低電圧回路には、3.3V以下の動作電圧の電子回路が含まれ得る。2層積層構造と3層積層構造の違いはあるものの、第1及び第2実施形態に係る音響素子集積回路と同様に、第1チップ605及び第2チップ606は、半導体基板を主体とする半導体チップで構成できる。第1チップ605及び第2チップ606を構成する半導体チップはSOI構造等の、半導体基板と絶縁層との複合構造であってもよい。特に、高電圧回路を集積化する第1チップ605には、SiCやダイヤモンド等の高耐圧性に優れた広禁制帯幅半導体からなる半導体チップが好適である。
【0182】
第1チップ605が、容量型の送信素子231i(j-1)と容量型の受信素子232i(j-1)のペア、容量型の送信素子231ijと容量型の受信素子232ijのペア、容量型の送信素子231i(j+1)と容量型の受信素子232i(j+1)のペアを有する点では第2実施形態に係る音響素子集積回路と同様である。第2実施形態に係る音響素子集積回路と同様に、送信素子231i(j-1)と受信素子232i(j-1)のペアからなるモジュール、送信素子231ijと受信素子232ijのペアからなるモジュール、送信素子231i(j+1)と受信素子232i(j+1)のペアからなるモジュールを、第3実施形態に係る音響素子集積回路では、それぞれ、「音響素子(231i(j-1),232i(j-1);231ij,232ij;231i(j+1),232i(j+1))」と称することとする。
【0183】
なお、
図16ではセルX
ci(j-1)の内部に音響素子(231
i(j-1),232
i(j-1))が1個、セルX
cijの内部に音響素子(231
ij,232
ij)が1個、セルX
ci(j+1)の内部に音響素子(231
i(j+1),232
i(j+1))が1個しかない場合を示したが例示に過ぎない。音響素子(231
i(j-1),232
i(j-1);231
ij,232
ij;231
i(j+1),232
i(j+1)が1個しかない場合に限定されず、セル列X
ci(j-1),X
cij,X
ci(j+1),…の内部に音響素子が、それぞれ2個以上のモジュールが存在する態様で構わない。即ち、第3実施形態に係る音響素子集積回路においては、同一面上に定義される2次元マトリクスを構成するセルのアレイにおいて、それぞれのセルに単位数n(nは1以上の正の整数)の音響素子が分配され、この単位数nの音響素子をセル内回路で駆動することが可能であるが、簡単化のために、音音響素子(231
i(j-1),232
i(j-1);231
ij,232
ij;231
i(j+1),232
i(j+1)が1個の場合について、例示的に説明する。n個の音響素子の1セットで1セルを構成し、この1セルに対応して、内蔵される回路セット1式をセル内回路として、n個の音響素子を駆動できる。
【0184】
第1実施形態に係る音響素子集積回路の音響素子は振動空洞を1個備えていたが、第3実施形態に係る音響素子集積回路の音響素子(231i(i-1),232i(i-1))は、送信に用いる送信空洞Haと受信に用いる受信空洞Hbの2つの振動空洞を備え、送受信機能を有する素子と見なすことができる。同様に、音響素子(231ij,232ij)は、送信に用いる送信空洞Haと受信に用いる受信空洞Hbの2つの振動空洞を備え、送受信機能を有する素子と見なすことがで、音響素子(231i(i+1),232i(i+1))は、送信に用いる送信空洞Haと受信に用いる受信空洞Hbの2つの振動空洞を備え、送受信機能を有する素子と見なすことができる。第1チップ605に集積化された送信素子231i(j-1)と受信素子232i(j-1)のペア、送信素子231ijと受信素子232ijのペア、送信素子231i(j+1)と受信素子232i(j+1)のペアは、それぞれマトリクスの第i行に配列されたセル列Xci(j-1),Xcij,Xci(j+1),…の一部を構成している。そして、第3実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップ605においては、セルXci(j-1),Xcij及びXci(j+1)のそれぞれに高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)34が設けられている点が、第2実施形態に係る音響素子集積回路とは異なる。
【0185】
セルXci(j-1)の高電圧ドライバ34は、第1チップ605の内部において、送信素子231i(j-1)に接続され、セルXci(j-1)の励振回路Ti(j-1)の一部を構成している。高電圧ドライバ34は、送信素子231i(j-1)の振動膜を振動させるため20V以上、具体的には50V以上若しくは100V以上、更には200V程度の大信号レベルの回路である。セルXcijの高電圧ドライバ34は、第1チップ605の内部において、送信素子231ijに接続され、セルXcijの励振回路Tijの一部を構成している。高電圧ドライバ34は、送信素子231ijの振動膜を振動させるため20V以上、具体的には50V以上若しくは100V以上、更には200V程度の大信号レベルの回路である。セルXci(j+1)の高電圧ドライバ34は、第1チップ605の内部において、送信素子231i(j+1)に接続され、セルXci(j+1)の励振回路Ti(j+1)の一部を構成している。高電圧ドライバ34は、送信素子231i(j+1)の振動膜を振動させるため20V以上、具体的には50V以上若しくは100V以上、更には200V程度の大信号レベルの回路である。
【0186】
このように高電圧ドライバ34等の高電圧動作素子を配置するには、例えば、
図20に例示したようなSOI基板と、SOI基板上の多層絶縁膜部で第1チップ605を構成してもよい。そして、
図20と同様に、SOIシリコン層にSOI絶縁膜に到達するU溝を掘り、このU溝に分離絶縁領域を格子状若しくは城壁状に埋め込み、高電圧動作素子を配置するSOIシリコン層を島状に構成することができる。第1チップ605に設けた島状のSOIシリコン層に、高耐圧性に優れた高電圧ドライバ34等を集積化できる。或いは、第1チップ605は、SiC、ダイヤモンドやGaN等の、高耐圧性に優れた広禁制帯幅半導体からなる材料の半導体基板を用いてもよい。セルX
ci(j-1)の高電圧ドライバ34は、第2チップ606からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して送信素子231
i(j-1)の下部電極に印加する。
【0187】
第1チップ605にSiCやダイヤモンドを用いることにより、送信素子231i(j-1),231ij,231i(j+1)及び受信素子232i(j-1),232ij,232i(j+1)の振動膜を固いSiCやダイヤモンドに変えることが容易となる。送信素子231i(j-1),231ij,231i(j+1)及び受信素子232i(j-1),232ij,232i(j+1)の振動膜を固いSiCやダイヤモンドに変えることにより、送信素子231i(j-1),231ij,231i(j+1)から強い振動を出し易くし、受信素子232i(j-1),232ij,232i(j+1)の感度を上げることができる。なお、SiCやダイヤモンド以外の材料であっても、ヤング率や曲げ強度が高い材料であれば、第1チップ605の製造工程に含ませることが可能である。特に、送信素子231i(j-1),231ij,231i(j+1)の上部電極と下部電極には高電圧がかかるため、破壊電圧が高いSiCやダイヤモンドを用いた場合には、膜厚を薄くできて強い振動を出し易くなる。
【0188】
セル列X
ci(j-1),X
cij,X
ci(j+1)のそれぞれの高電圧ドライバ34は、例えば、電力用MOSトランジスタ、IGBTやSIサイリスタ等で構成できる。高電圧ドライバ34の前段(入力側)には、レベルシフト回路やレベルシフト回路に接続され、レベルシフト回路で高電位にレベルシフトされた信号で動作するハイサイド回路が設けられていてもよい。
図16の左側に示した第i行のセルX
ci(j-1)において、高電圧ドライバ34は、第2チップ606からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して送信素子231
i(j-1)の下部電極に印加する。
図16では、セルX
ci(j-1)の第2チップ606は、励振回路T
i(j-1)の遅延回路33と、受信回路R
i(j-1)のアンプ36及びAD変換回路37を有するとして、簡略化した構造が模式的に示されている。セルX
ci(j-1)の高電圧ドライバ34は、送信素子231
i(j-1)の振動膜を振動させるために50V以上、例えば200V程度の大信号レベルの回路であるために、第1チップ605に集積化されたのに対し、セルX
ci(j-1)の遅延回路33は、20V未満、例えば3.3V以下の低電圧で動作する回路であるので、第2チップ606に集積化される。
【0189】
セルXci(j-1)の遅延回路33はセルXci(j-1)の高電圧ドライバ34の出力信号の位相や動作のタイミングを決める回路である。図示を省略しているが、セル列Xci(j-1)において、送信素子231i(j-1)と高電圧ドライバ34の間に励振用行選択素子TSWi(j-1)を集積化しておけば、第i行の励振行選択線SWiを励振用行選択素子TSWi(j-1)のゲートに接続することにより、送信素子231i(j-1)と高電圧ドライバ34の間の電気的接続を励振行選択線SWiによって制御できる。セルXci(j-1)の第2チップ606は、励振回路Ti(j-1)の遅延回路33と、受信回路Ri(j-1)のアンプ36及びAD変換回路37とを有する。
【0190】
高電圧ドライバ34と遅延回路33の間に列選択素子TBi(j-1)を接続するように集積化してもよい。列選択素子TBi(j-1)のゲートに第(j-1)列のビット線B(j-1)の信号を入力することにより、高電圧ドライバ34と遅延回路33の間の導通が制御でき、送信素子231i(j-1)の動作を、第i行と第(j-1)列のマトリクスの交点として制御できる。同様に、受信素子232i(j-1)とアンプ36の間に、受信用行選択素子TRWi(j-1)を接続しておけば、受信用行選択素子TRWi(j-1)を第i行の受信行選択線RWiを受信用行選択素子TRWi(j-1)のゲートに接続することにより、受信素子232i(j-1)とアンプ36の間の電気的接続を受信行選択線RWiによって制御できる。第2チップ606に集積化された遅延回路33を構成しているロウサイド回路の小信号出力が、第1チップ605に集積化された高電圧ドライバ34の前段を構成するレベルシフト回路によってハイサイド回路に伝達される。
【0191】
図16の中央に示した第i行のセルX
cijにおいて、高電圧ドライバ34は、第2チップ606からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して送信素子231
ijの下部電極に印加する。
図16では、セルX
cijの第2チップ606は、励振回路T
ijの遅延回路33と、受信回路R
ijのアンプ36及びAD変換回路37を有するとして、簡略化した構造が模式的に示されている。セルX
cijの高電圧ドライバ34は、送信素子231
ijの振動膜を振動させるために50V以上、例えば200V程度の大信号レベルの回路であるために、第1チップ605に集積化されたのに対し、セルX
cijの遅延回路33は、20V未満、例えば3.3V以下の低電圧で動作する回路であるので、第2チップ606に集積化される。セルX
cij の遅延回路33はセルX
cijの高電圧ドライバ34の出力信号の位相や動作のタイミングを決める回路である。しかし、送信素子231
ijと高電圧ドライバ34の間に励振用行選択素子TSW
ijを集積化しておけば、第i行の励振行選択線SW
iを励振用行選択素子TSW
ijのゲートに接続することにより、送信素子231
ijと高電圧ドライバ34の間の電気的接続を励振行選択線SW
iによって制御できる。
【0192】
図16では図示を省略しているが、セルX
cijの高電圧ドライバ34と遅延回路33の間に列選択素子TB
ijを接続するように集積化してもよい。セルX
cijの列選択素子TB
ijのゲートに第j列のビット線B
jの信号を入力することにより、セルX
cijの高電圧ドライバ34と遅延回路33の間の導通が制御でき、送信素子231
ijの動作を、第i行と第j列のマトリクスの交点として制御できる。同様に、受信素子232
ijとアンプ36の間に、受信用行選択素子TRW
ijを接続しておけば、受信用行選択素子TRW
ijを第i行の受信行選択線RW
iを受信用行選択素子TRW
ijのゲートに接続することにより、受信素子232
ijとセルX
cijのアンプ36の間の電気的接続を受信行選択線RW
iによって制御できる。第2チップ606に集積化されたセルX
cijの遅延回路33を構成しているロウサイド回路の小信号出力が、第1チップ605に集積化された高電圧ドライバ34の前段を構成するレベルシフト回路によってハイサイド回路に伝達される。
【0193】
図16の右側に示した第i行のセルX
ci(j+1)の第1チップ605には、更にセルX
ci(j+1)の励振回路T
i(j+1)を構成する高電圧ドライバ34が設けられている。セルX
ci(j+1)の高電圧ドライバ34は、第2チップ606からの3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号に変換して送信素子231
i(j+1)の下部電極に印加する。
図16では、セルX
ci(j+1)の第2チップ606は、励振回路T
i(j+1)の遅延回路33と、受信回路R
i(j+1)のアンプ36及びAD変換回路37とを有するように簡略化して示している。セルX
ci(j+1)の高電圧ドライバ34は、送信素子231
i(j+1)の振動膜を振動させるために50V以上、例えば200V程度の大信号レベルの回路であるために、第1チップ605に集積化されたのに対し、セルX
ci(j+1)の遅延回路33は、20V未満、例えば3.3V以下の低電圧で動作する回路であるので、第2チップ606に集積化される。セルX
ci(j+1)の遅延回路33はセルX
ci(j+1)の高電圧ドライバ34の出力信号の位相や動作のタイミングを決める回路である。しかし、送信素子231
i(j+1)とセルX
ci(j+1)の高電圧ドライバ34の間に励振用行選択素子TSW
i(j+1)を集積化しておけば、第i行の励振行選択線SW
iを励振用行選択素子TSW
i(j+1)のゲートに接続することにより、送信素子231
i(j+1)と高電圧ドライバ34の間の電気的接続を励振行選択線SW
iによって制御できる。
【0194】
既に説明したとおり、従来の容量型の音響素子の動作においては、
図24(b)に示すように振動膜は制限された範囲内でしか振動せず、フルスイングする動作がされていなかった。第3実施形態に係る音響素子集積回路においては、第1チップ605に集積化される回路と第2チップ606に集積化される回路を、それぞれの動作電圧の電圧レベルで振り分けることにより、第1及び第2実施形態に係る音響素子集積回と同様に、小信号レベルの回路に影響を与えないで大信号レベルの回路が安定に動作できる。よって、第3実施形態に係る音響素子集積回路によれば、
図22(a)に示すように、高電圧ドライバ34は、例えば0V~200V等の高電圧がフルスイングで振れる大振幅の出力を安定にすることが可能になる。この結果、
図22(b)に示すように、2次元配置された送信素子231
i(j-1),231
ij,231
i(j+1),………のそれぞれの振動膜を、大振幅で振動させることができる。
【0195】
セルXci(j+1)の高電圧ドライバ34と遅延回路33の間に列選択素子TBi(j+1)を接続するように集積化してもよい。セルXci(j+1)の列選択素子TBi(j+1)のゲートに第(j+1)列のビット線B(j+1)の信号を入力することにより、高電圧ドライバ34と遅延回路33の間の導通が制御でき、送信素子231i(j+1)の動作を、第i行と第(j+1)列のマトリクスの交点として制御できる。同様に、受信素子232i(j+1)とアンプ36の間に、受信用行選択素子TRWi(j+1)を接続しておけば、受信用行選択素子TRWi(j+1)を第i行の受信行選択線RWiを受信用行選択素子TRWi(j+1)のゲートに接続することにより、受信素子232i(j+1)とアンプ36の間の電気的接続を受信行選択線RWiによって制御できる。第2チップ606に集積化されたセルXci(j+1)の遅延回路33を構成しているロウサイド回路の小信号出力が、第1チップ605に集積化された高電圧ドライバ34の前段を構成するレベルシフト回路によってハイサイド回路に伝達される。
【0196】
図16では図示を省略しているが、第2チップ606には、
図8で説明した送受信制御部30の基準クロック発生回路31、波形発生回路32、タイミング調整回路38、及び画像処理回路39の機能ブロックを構成する回路のうちの1つ以上の回路を集積化しても構わない。第3実施形態に係る音響素子集積回路では、高電圧駆動される電子回路が第1チップ605内に設けられ、低電圧駆動される電子回路が第2チップ606内に設けられる。このように、駆動電圧のレベルに応じて、各機能ブロックを構成する回路を各チップに振り分けることで、高電圧駆動される電子回路をSiC等の広禁制帯幅半導体基板に集積化し、低電圧駆動される電子回路を製造が容易なSi基板に集積化する等の半導体材料の選択が可能になる。又、高電圧駆動される電子回路を第1チップ605に集積化し、低電圧駆動される電子回路を第2チップ606に集積化することにより、
図8で説明した各機能ブロックを構成する回路のレイアウトの自由度が向上する。
【0197】
図16に例示した第i行のセルX
ci(j-1),X
cij及びX
ci(j+1)の内、セルX
cijに着目し、セルX
cijの概略構造の概念を、
図17を用いて具体的に例示する。即ち、第3実施形態に係る音響素子集積回路を構成するセルX
cijは、
図16と同様に、第2チップ606上に第1チップ605が積層される。第1チップ605は、半導体基板615と、半導体基板615の主面上に配置された高電圧ドライバ34と、超音波の送信を行う容量型の送信素子231
ij及び超音波の受信を行う容量型の受信素子232
ijのペアを集積化した構造をなしている。半導体基板615には、半導体基板615の主面から裏面まで貫通するTSVである励振プラグV11及び受信プラグV12が設けられている。なお、第3実施形態に係る音響素子集積回路では、励振プラグV11及び受信プラグV12を総称して、包括的に「接続プラグ(V11,V12)」と呼ぶこととする。
【0198】
送信素子231
ijは、高電圧ドライバ34に接続される送信用下部電極E11と、送信用下部電極E11上に送信空洞H1を介して配置される送信用上部電極E21とを有する。受信素子232
ijは、受信プラグV12に接続される受信用下部電極E12と、受信用下部電極E12上に受信空洞H2を介して配置される受信用上部電極E22とを有する。送信用上部電極E21と受信用上部電極E22は図示を省略した表面配線で互いに接続され、更に表面配線若しくは埋め込み配線を介して、第1チップ605の端部(周辺部)に設けられた接地端子(接地用ボンディングパッド)に接続されている。励振プラグV11及び受信プラグV12は、送信空洞H1及び受信空洞H2の平面パターン上の位置がオーバーラップしない位置にレイアウトされる。第1実施形態に係る音響素子集積回路において、
図1に例示したような平面レイアウトで、励振プラグV11及び受信プラグV12の位置を設計することにより、第1チップ605及び第2チップ606を積層しかつ、接続具による電気的なチップ間接続をする際に送信空洞H1及び受信空洞H2が押し潰されてしまうという課題が解決される。
【0199】
図17では第1チップ605は、半導体基板615と、半導体基板615の主面に接続された高電圧ドライバ34を集積化した半導体層との複合構造として例示しているが、モデル的な模式図に過ぎず、
図17に示される構造に限定されるものではない。例えば、半導体基板615と、半導体基板615の主面に堆積された多層絶縁膜の内部に、送信素子231
ijと受信素子232
ijのペアが集積化された構造でもよい。又、
図16で説明したように、受信用下部電極E12と高電圧ドライバ34の間に励振用行選択素子TSW
ijを集積化しておけば、第i行の励振行選択線SW
iを励振用行選択素子TSW
ijのゲートに接続することにより、送信素子231
ijと高電圧ドライバ34の間の電気的接続を励振行選択線SW
iによって制御できる。
【0200】
既に述べたように、第1チップ605をSiC等の広禁制帯幅半導体基板で構成すれば、高電圧で動作する高電圧ドライバ34や励振用行選択素子TSW
ijの回路が集積化できる。
図17の例示では、半導体基板615の主面から裏面まで貫通するTSVとして励振プラグV11及び受信プラグV12を表現しているが、広禁制帯幅半導体基板等の一体の半導体基板で第1チップ605を構成する場合には、励振プラグV11及び受信プラグV12はTSVではないブラインドビア(行き止まりビア)になる。
【0201】
又、半導体基板615の主面に第1主電極、半導体基板615の裏面に第2主電極を有する縦型のMOSトランジスタで高電圧ドライバ34の出力段(最終段)を構成すれば、励振プラグV11を不要にする構造も可能である。第1主電極とはMOSトランジスタのソース電極及びドレイン電極のいずれかであり、第2主電極は第1主電極がソース電極の場合は、ドレイン電極であり、第1主電極がドレイン電極の場合は、電極ドレイン電極となる。同様に高電圧ドライバ34の出力段を縦型バイポーラトランジスタ、縦型IGBT、縦型SIサイリスタ等で構成して、励振プラグV11を不要にしてもよい。
【0202】
図17の左側に示すように、第1チップ605のセルX
ci(j-1),X
cij,X
ci(j+1),…がマトリクス状に配置された素子アレイ部の左側の領域には、高圧電源34aが配置されている。そして、高圧電源34aが配置された周辺回路領域の、第1チップ605の上面には、
図17の左側に示すようなボンディングパッドBP1が設けられている。第1チップ605の上面のボンディングパッドBP1にワイヤW1がボンディング接続されている。ワイヤW1を介して電源が供給された高圧電源34aから、高圧の電圧が、素子アレイ部に配置されたそれぞれのセルX
ci(j-1),X
cij,X
ci(j+1),…の高電圧ドライバ34に供給される。高電圧ドライバ34は、
図22及び
図23(a)に例示したような、セルX
ci(j-1),X
cij,X
ci(j+1),…のそれぞれの振動膜を振動させるフルスイングの高電圧の信号を、第1チップ605の内部において発生させることができる。
【0203】
ボンディングパッドの図示を省略しているが、左側に示した周辺回路領域の第1チップ605の上面には、ボンディングパッドBP1に隣接して接地用ボンディングパッドも設けられている。この接地用ボンディングパッドに接地用ワイヤがボンディング接続される。接地用ワイヤを介した接地電位は、表面配線や埋め込み配線を経由して、素子アレイ部に配置されたそれぞれのセルXci(j-1),Xcij,Xci(j+1),…に分岐され、第1チップ605のセルXci(j-1),Xcij,Xci(j+1),…のそれぞれの送信用上部電極E21及び受信用上部電極E22に接続される。この結果、セルXci(j-1),Xcij,Xci(j+1),…のそれぞれの送信用上部電極E21及び受信用上部電極E22が共通に接地される。
【0204】
図17に示すように、セルX
cijに対応する第1チップ605の領域に高電圧ドライバ34を配置されている。そして、セルX
cijに対応する第2チップ606の領域には、セルX
cijの遅延回路33、アンプ36及びAD変換回路37が設けられている。このような構造において、高圧電源34aに接続された高電圧ドライバ34が励振プラグV11を介して第2チップ606の遅延回路33に接続されることにより、高電圧ドライバ34は、第2チップ606の遅延回路33から受信した3.3V以下の電圧レベルの低電圧駆動信号を高電圧信号にレベルシフトを行うことができる。図示を省略しているが、更にセルX
cijの高電圧ドライバ34と遅延回路33の間に列選択素子TB
ijを接続するように集積化し、受信用下部電極E12とアンプ36の間に、受信用行選択素子TRW
ijを接続するように集積化してもよい。
【0205】
図17では図示を省略しているが、第2チップ606のチップ端部に近い周辺回路部には、
図2に周辺回路として示した列ドライバ302及び行ドライバ303が、素子アレイ部301aを囲むように配置されている。行ドライバ303から出力される第i行目の励振行選択線SW
iが励振用行選択素子TSW
ijの信号がゲートに入力され、列ドライバ302から出力される第j列のビット線B
jの信号が、列選択素子TB
ijのゲートに入力されれば、マトリクスの交点に位置するセルX
cijの送信素子231
ijが選択的に励振できる。又、行ドライバ303から出力される第i行目の受信行選択線RW
iの信号が、受信用行選択素子TRW
ijのゲートに入力されれば、第i行に配列されたそれぞれの送信素子231
ijからの信号が行単位で、垂直出力信号線R
1,R
2,R
3,………,R
(j-1),R
j,R
(j+1),………に読み出される。励振行選択線SW
i、受信行選択線RW
iやビット線B
jは、第2チップ606の表面配線や埋め込み配線として構成できる。
図17では図示を省略しているが、例えば、第2チップ606の上面に複数の層間絶縁膜で多層配線構造を構成して、互いに励振行選択線SW
i、受信行選択線RW
i やビット線B
jを設けることができる。
【0206】
図17に示す構成によれば、高電圧駆動される高電圧ドライバ34及び励振用行選択素子TSW
ij等の高電圧部分の電子回路を、広禁制帯幅半導体基板である第1チップ605に集積化できる。そして、低電圧駆動される電子回路が、Si基板を用いた第2チップ606に集積化する等により、電子回路の動作電圧によるチップの振り分けが可能になる。第2チップ606のセルX
ci(j-1),X
cij,X
ci(j+1),…がマトリクス状に配置された素子アレイ部の左側の周辺回路領域には、基準クロック発生回路31と波形発生回路32が共通回路領域として設けられている。
【0207】
図17において素子アレイ部の右側に示した周辺回路領域には、シリアルパラレル変換回路37aが共通回路領域として設けられている。シリアルパラレル変換回路37aは、
図2に周辺回路として示した出力バッファ回路304に対応し、例えば出力バッファ回路304の内蔵回路としてシリアルパラレル変換回路37aが備えられていてもよい。シリアルパラレル変換回路37aは、
図2の垂直出力信号線R
1,R
2,R
3,………,R
(j-1),R
j,R
(j+1),………によって読み出だされたパラレル信号を、シリアル信号に変換する。
【0208】
図17に示すセルX
cijに対応する第2チップ606の上面には、チップ間接続手段(接続機構)B21及びB22が、それぞれ図示を省略した接続具用ランドの上に搭載されている。チップ間接続手段B21,B22にはバンプの他、半田や半田ボール等の電気的な接続を可能にする接続導体が採用可能である。更に、チップ間接続手段としては、バンプ等による接続具を用いた接続やハイブリッドボンディングの他、第1チップ605と第2チップ605を、直接接合法で直接貼り合わせる手法も含まれうる。更にチップ間接続手段には第1チップ605のセルの配列のピッチと第2チップ606のセルの配列のピッチを変換するインターポーザ等の層が含まれていてもよい。即ち、第1チップ605のセルの配列のピッチを微細化して解像度を向上させる一方、ピッチに余裕を持たせ、セルサイズを大きくした第2チップ605のセルの配列を用意し、インターポーザ等を介して第1チップ605と第2チップ605を接続するようにしても構わない。
【0209】
チップ間接続手段B21を搭載した接続具用ランドは図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介して遅延回路33に接続されている。チップ間接続手段B22を搭載した接続具用ランドは図示を省略した接続プラグ等の内部配線を介してアンプ36に接続されている。
図17に示すように、チップ間接続手段B21及びB22は、それぞれ第1チップ605の下面に設けられた励振プラグV11及び受信プラグV12に接続される。この結果、第2チップ606のアンプ36は、バンプ等の接続具を介した圧接等によるチップ間接続により、第1チップ605を貫通して、受信素子232
ijの受信用下部電極E12に電気的に接続される。
【0210】
そして、シリアルパラレル変換回路37aが配置された右側の周辺回路領域に対応する第2チップ606の上面には、ボンディングパッドBP1,BP2が設けられている。ボンディングパッドBP2にワイヤW2がボンディング接続され、ボンディングパッドBP3にワイヤW3がボンディング接続されている。物理的な具体的配線構造の図示を省略しているが、ボンディングパッドBP2は、表面配線や内部埋込配線等を介して、基準クロック発生回路31、遅延回路33、AD変換回路37に接続されている。よって、ワイヤW2を介して第2チップ606に入力された制御信号に基づき、基準クロック発生回路31、遅延回路33、AD変換回路37の各電子回路の動作が制御される。
図2の垂直出力信号線R
1,R
2,R
3,………,R
j,R
j,R
(j+1),………によって読み出だされたパラレル信号は、シリアルパラレル変換回路37aによってシリアル信号に変換され、ワイヤW3を介して、
図8に示したタイミング調整回路38を介して、画像処理回路39に出力されて画像処理される。
【0211】
図17では、
図1及び
図2に示した素子アレイ301aに対応した、同一面上に定義される2次元マトリクスを構成するセルX
ci(j-1),X
cij及びX
ci(j+1),…の内、セルX
cijに着目し、セルX
cijの送信素子231
ijに対応する機能ブロックを第1チップ605と第2チップ606に分けて3D構造で集積化する例を示した。即ち、第3実施形態に係る音響素子集積回路によれば、2次元マトリクス内のセルX
ci(j-1),X
cij及びX
ci(j+1),…のそれぞれの送信素子231
i(j-1),231
ij及び231
i(j+1),…に対して、励振回路T
i(j-1),T
ij及びT
i(j+1),…及び受信回路R
i(j-1),R
ij及びR
i(j+1),…を、第1チップ605と第2チップ606に分けて3D構造で集積化して設けることにより、各送信素子231
i(j-1),231
ij及び231
i(j+1),…毎に送受信を2次元フェーズド・アレイとして制御可能となる。このように、第3実施形態に係る音響素子集積回路は、2次元フェーズド・アレイの動作が可能であるので、高精度かつ高分解能な診断を行うことができる。なお、この場合、送信用上部電極E21は、すべての送信素子で共通にすることができる。但し、2次元フェーズド・アレイの動作ではなく、送信用下部電極E11及び送信用上部電極E21の一方又は双方について、行単位又は列単位での駆動に変更することも可能である。
【0212】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明について第1~第3実施形態により例示的に説明してきたが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、第1~第3実施形態では、2つ又は3つの半導体チップが積層される場合を説明したが、それ以上の複数のチップが積層されていてもよい。また、容量型の音響素子としてはcMUTが知られているが、容量型の振動をする空洞を有するものであれば、cMUT以外のMEMS素子に本発明を適用することもできる。
【0213】
第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路においては、同一面上に定義される2次元マトリクスを構成するセルのアレイにおいて、それぞれのセルに1つの音響素子が分配され、この1つの音響素子をセル内回路で駆動する場合について例示した。しかし、本発明の技術的思想は、複数個並列に配置された音響素子の1セットで1セルを構成し、この1セルに対応して、内蔵される回路セット1式をセル内回路として、複数個並列に配置された音響素子を駆動しても良い
【0214】
第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路においては、同一面上に定義される2次元マトリクスを構成する素子アレイにおいて、マトリクスの任意の交点のセルを選択できる構成を説明した。しかし、マトリクスの行に配列されたすべてのセルを行毎に励振し、それぞれの行に配列されたセルを遅延回路によって順に励振するモードや、2次元マトリクスの列に配列されたすべてのセルを列毎に励振し、それぞれの列に配列されたセルを遅延回路によって順に励振するモードでもよい。特に、第2及び第3実施形態に係る音響素子集積回路の場合は、送信素子と受信素子を別個に動作させることができるので、すべての送信素子を同時に動作させるグローバル動作をしてもよい。グローバル動作によって、すべてのセルから同一位相の超音波を同時に出射し、対象物から戻ってきた信号波を、2次元マトリクス状に配置された受信素子を独立に動作させることにより、2次元マトリクスの各セルを掃引し、画像として処理することも可能である。この場合走行時間効果を用いれば、対象物の3次元画像が取得できる。
【0215】
第2実施形態に係る音響素子集積回路においては、
図9を用いて、送信用素子231
ij及び受信用素子232
ijの平面パターンの形状をそれぞれ六角形とし、送信用素子231
ijと受信用素子232
ijのサイズを同じにした場合について例示的に説明した。しかし、
図18Aに示すように、送信素子231
klの強度を十分に確保する観点から、送信素子231
klのサイズを受信素子232
klのサイズよりも小さくしてもよい。
【0216】
また、
図18Bに示すように、面積効率向上の観点から、音響素子231
mn,232
mnの形状をそれぞれ四角形にすることも可能である。更に、
図18Cに示すように、送信素子231
opの形状と受信素子232
opの形状を異なる形状とすることも可能である。
図18Cの例では、送信素子231
opの形状は、ダイヤ形又は四角形となっている。また、
図18Cの例では、受信素子232
op間に送信素子231
opを設けて、送信素子231
opと受信素子232
opの面積比を調整している。即ち、音響素子の設計の自由度が向上するという効果がもたらされる。
【0217】
更に、
図18Dに示すように、送信素子231
qrの形状と受信素子232
qrの形状を異なる形状とすることも可能である。
図18Dの例でも送信素子231
qrの形状は、ダイヤ形又は四角形となっているが、受信素子232
qrの形状は、送信素子231
qrのより面積の大きな八角形である。
図18Dに示す平面トポロジでは、受信素子232
qr間に送信素子231
qrを設けたり、又は設けなかったりすることで、送信素子231
qrと受信素子232
qrの面積比を容易に調整可能にしている。即ち、
図18Dに示すような平面レイアウトを採用し、送信素子231
qrの2次元配列のピッチと受信素子232
qrの2次元配列のピッチを異なるようにする等によって、音響素子の配列の自由度が向上する。
【0218】
図18Dに示す例は、上段に示した受信素子232
qrの右下に隣接する位置に送信素子231
qrを設けたトポロジであるが、受信素子232
qrの直下の八角形にも受信素子を配列できる。上から2番目となる受信素子232
qrの直下の八角形に受信素子を配列した場合において、上から2番目の八角形を右下に隣接する位置のダイヤ形には、送信素子を配置しないトポロジも採用可能である。この場合、上から2番目の八角形を右下に隣接する位置のダイヤ形には、第3実施形態のように、高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)34を配置できる。高電圧を処理する高電圧ドライバ34は発熱量が大きくなる場合があるので、第3実施形態のように、高電圧ドライバ34を第1チップ605に配置することにより、高電圧ドライバ34の放熱効率を向上させることができる。
【0219】
更に、
図18Eに示すように、送信素子231
staの形状を五角形とし、受信素子232
stの形状を八角形とすることも可能である。
図18Eに示すタイル貼りのトポロジでは、送信素子231
staと同一サイズの五角形のダミーパターン231
stbが用意されている。そして、大きなサイズの受信素子232
stの配列の中に、送信素子231
staとダミーパターン231
stbが敷き詰められている。例えば、第3実施形態に係る音響素子集積回路では、
図16及び
図17に例示したように、第1チップ605に高電圧ドライバ34が配置される構成である。第1チップ605に高電圧ドライバ34が配置される場合は、ダミーパターン231
stbの領域を利用して高電圧ドライバ34を配置するように集積化してもよい。第3実施形態で例示した構造のように、高電圧ドライバ34を第1チップ605に配置できる。高電圧ドライバ34を第1チップに配置することにより、高電圧ドライバ34の放熱効率を向上させることができるが、
図18Eに示すようなタイル貼りのパターンにより、送信素子231
staと受信素子232
st及び送信素子231
staとダミーパターン231
stbの面積比を調整し、平面レイアウトにおける面積利用効率を改善することができる。
【0220】
図18Dや
図18Eに示した平面レイアウトでは、送信素子231
qrの形状及び大きさが受信素子232
qrとは異なる場合を例示したが、送信素子231
qrと受信素子232
qrの形状及び大きさが同一の場合であっても、送信素子231
qrの配列の周期やピッチを受信素子232
qrよりも大きくしてもよい。例えば
図9や
図18Bに例示した平面レイアウトにおいて紙面の縦方向を「列方向」と定義した場合において、列方向の送信素子231
qrの配列のピッチを、受信素子232
qrの配列のピッチの整数倍に設定してもよい。或いは、行方向の送信素子231
qrの配列のピッチを受信素子232
qrの配列のピッチの整数倍に設定してもよく、列方向と行方向の両方において、送信素子231
qrの配列のピッチを受信素子232
qrの配列のピッチよりも大きくしてもよい。
【0221】
送信素子231qrの配列のピッチが、受信素子232qrの配列のピッチよりも大きいということは、同一面上に定義される2次元マトリクスを構成するセルのアレイにおいて、2種類のセルが混在していると見なすことも可能である。即ち第2及び第3実施形態の音響素子集積回路で説明したような、それぞれのセルに、送信素子231qrと受信素子232qrのペアで構成されたモジュールである音響素子が分配されたセルと、受信素子232qrのみが配置されたセルの2種類が混在して、2次元マトリクスを構成してもよい。この場合には、送信素子231qrと受信素子232qrのモジュールを駆動するセル内回路と、受信素子232qrのみが配置されたたセルを駆動するセル内回路の2種類が混在して、非一様な2次元マトリクスを構成することになる。
【0222】
特に、第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路で説明したとおり、大信号回路が集積化されるチップと小信号回路が集積化されるチップを、電圧レベルで振り分けているので、小信号レベルの回路に影響を与えないで、
図22(a)に示すような高電圧信号のフルスイング出力が可能になる。このため、
図22(b)に示すようなフルスイングに近い振動が可能になり、各送信素子の超音波の出力強度が大きくなる特徴を有する。各送信素子の超音波の出力強度が大きくなると、相対的に、受信素子の配列の個数よりも送信素子の配列の個数を減らすことが可能になるので、非一様な2次元マトリクスの構成にできる。
【0223】
また、第1~第3実施形態では、音響素子集積回路は、主として医療用に適用されることを前提としたが、音響インピーダンスの観点から、水中用のハイドロフォン等の他の用途に用いることもできる。即ち、第1~第3実施形態で説明した音響素子集積回路は、音響インピーダンスが水の固有インピーダンスに近く優れたパルス応答特性を示し、容量型の音響素子ではバッキングが不要となり、且つ高感度、広帯域、低出力インピーダンス特性を有するため、ハイドロフォンとしての応用に好適である。
【0224】
図19の左側に円錐台の形状として示した樹脂製ホーン部の先端には、音響集積回路7が固定されている。第1及び第2実施形態で説明したのと同様に、例えば、
図19の音響集積回路7は、第1チップ701、第2チップ702及び第3チップ703で構成されることができる。
図19では、ホーンの形状に対応して左から順に第1チップ701よりも第2チップ702の外経が大きく、第2チップ702よりも第3チップ703の外経が大きくなる形態である。このような外径が次第に大きくなる積層構造の場合は、第1チップ701と第2チップ702の間、及び第2チップ702と第3チップ703の間にピッチ変換をするインターポーザ等の層をそれぞれ挿入してもよい。
【0225】
例えば、
図5,
図13,
図17に示したのと同様に、第2チップ702が樹脂製ホーン部の先端において接地されることができる。左側の樹脂製ホーン部の先端とは反対側の径が太い側には、樹脂製円柱状部が連続している。
図19に示すように樹脂製ホーン部と、この樹脂製ホーン部に連続した樹脂製円柱状部と、樹脂製円柱状部を内部に収納する筒状筐体800とが一体となることによりハイドロフォンの本体(71,72)が構成されている。
図19に示すハイドロフォンハイドロフォンは、音響集積回路7は超音波s1を非検査対象に向かって出射すると共に、非検査対象から反射してきた超音波s2を検出する
【0226】
図19に示すハイドロフォンの筒状筐体800は、軸方向先端側と反対側の端部側に外部端子74を有する。外部端子74は、図示を省略した観測機器に同軸ケーブル等の伝送線路を介して接続するコネクタである。音響集積回路7と外部端子74の間はリード線73によって接続されているので、音響集積回路7の出力は外部端子74に導かれている。本体(71,72)の他方の端部側の外部端子74に接続された伝送線路と、伝送線路に接続された観測機器を備えることにより、非検査対象から反射してきた超音波s2の2次元の信号を観測することができる。水中用の場合、水圧の影響を防ぐための圧力バランス構造が必要となるので、使用周波数に合わせた振動膜の厚みや振動空洞の大きさの最適化がより重要となる。また、水中用は、医療用と比べて低周波数の超音波を用いるので、振動空洞の大きさや電極間距離がより広くなり、より大きなバイアス電圧が必要になる。
【0227】
第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路の説明においては、
図1及び
図2に示したX-Y直交座標系(デカルト座標系)を基礎とする矩形の配列をベースに説明した。
図19に示すような円錐台の形状を有するホーン部の先端に搭載する場合は、主面が円形をなす音響集積回路7の方が望ましい場合がある。音響集積回路7の主面の外形が円形をなす場合には、2次元の配列としてデカルト座標系でなく、極座標で定義されるレイアウトを用い、複数の音響素子を同心円状に配列してもよい。2次元ユークリッド空間における極座標は円座標とも呼ばれ、一つの動径座標rと一つの角度座標θからなる。極座標(r、θ)と直交座標(x,y)とは、
x=rcosθ ………(4)
y=rsinθ ………(5)
r=x
2+y
2 ………(6)
tanθ=y/x ………(7)
の関係から、極座標(r、θ)と直交座標(x,y)のいずれかが分かれば相互に変換できる。
【0228】
ただし、同一単位面積のセルを同心円状に配列する場合は、半径rの大きさにより、半径rの円周2πrに沿って配列されるセルの個数が異なり、半径方向の駆動線の数も、半径rの大きさに依存する。又、2次元のレイアウトで個別にセルを駆動する場合には、円周2πrに沿って配列されているセルの個数が異なることを考慮して、半径方向の駆動ドライバと円周方向(偏角方向)の駆動ドライバのタイミング調整等に工夫が必要になる。式(4)~(7)を用い、極座標系での配列を直交座標系に変換して、直交座標系で同心円状に配列されたセルのそれぞれの音響素子を駆動してもよい。
【0229】
更に、第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路の技術的思想は、円筒面、球面、楕円面、放物面等の同一曲面上に複数の音響素子が2次元に配列される態様に拡張可能である。腕の血管や細胞等を撮像する場合等を目的とし、複数の音響素子を1/2~1/4円筒面等の部分円筒面の内壁に配列する必要があるときは、円柱座標系を用いてもよい。乳がん等の乳房の異常細胞の撮像を目的とする場合等において、複数の音響素子を1/3~1/7球面等の部分球面の内壁に配列した音響素子集積回路を設計する必要が発生したときは、球座標系を用いてもよい。或いは複数の音響素子を、楕円面や放物面の内壁に配列する設計をするときは、楕円座標系や放物線座標系が好適の場合がある。これらの円柱座標系、球座標系、楕円座標系や放物線座標系においても、デカルト座標系で用いているx,yに等価な2成分に変数分離し、同一曲面上に2次元に配列された複数の音響素子を、個別にそれぞれ駆動することが可能である。
【0230】
例えば、円柱座標系、球座標系、楕円座標系や放物線座標系を、それぞれ対応する2成分に変数分離することにより、変数分離したそれぞれの成分に対し、個別の音響素子を選択するドライバを用意し、対応するトポロジに応じた2成分の配線を設計すれば、円柱座標系、球座標系、楕円座標系や放物線座標系等であっても音響素子を個別に2次元駆動できる。更に、第1~第3実施形態に係る音響素子集積回路で説明した技術的思想は、円筒楕円座標系、円筒放物線座標系、偏長回転楕円体座標系、扁平回転楕円体座標系、共焦点楕円体座標系、円錐座標系等の、L.アイゼンハート(Eisenhart)が指摘したヘルムホルツ分解が可能な種々の座標系に、その曲面の有する対称性に応じて適用可能である。
【0231】
図3~
図5、
図8,
図12、
図13、
図16,
図17に示した遅延回路33は、波形発生回路33としてもよい。遅延回路33の変わりに波形発生回路33を用い、波形発生回路33で波形発生のタイミングを遅らせることにより、遅延回路33と等価な機能を達成することができる。例えば、個々のセルに発信タイミングを知らせるトリガーを、2次元マトリクスの行及び列を選択して送り、トリガーが来たらすかさず波形を発生させ、個々のセルに送ることができる。現状の技術レベルでは、m×n=32×32のマトリクスになると、全部のセルに、全面同時に波形を発信させることは困難であるが、1024クロックを順次スキャンすれば、超音波の進行速度と比較して十分に早いスキャンが可能になる。
【0232】
図3~
図5、
図8,
図12、
図13、
図16,
図17に示した高電圧ドライバ34は、2次元配列された各セル毎にバイアス電圧を変えられるように構成してもよい。例えば
図3や
図8等に示した送受信制御部30に、各セルの高電圧ドライバのバイアス電圧を変えられるようにして音響素子の発信出力を高め、且つ受信感度を上げるように構成すればよい。音響素子の振動膜の膜厚には、製造バラツキが存在する。音響素子の振動膜の膜厚に分布や不均一があると、2次元配列されたセル個々の最適なバイアス電圧が異なる。そこでマージンを持ってバイアス電圧を低めに設定して製品として出荷する。そして、ユーザが、セル個々に高電圧ドライバを有している構造を生かして、送受信制御部30の機能として、個々の電圧を極限まで最適化すれば、各セルの音響素子の発信強度と受信感度は、高く且つ均一化できる。光学的イメージセンサや液晶表示装置のハイエンド製品では、受光感度/発光強度のリニアリティを出荷前検査で1台ごとに取得し、校正テーブルを作成し制御回路に記憶させ、画面全体どこでもホワイトバランス等を改善しているのと同じ原理である。
【0233】
なお、第2及び第3実施形態に係る音響素子集積回路で説明した受信素子の振動膜の厚みを、中央を厚くし、外周を薄くすることで、受信素子が振動し易くなり、受信素子の感度を上げることができる。例えば、厚い第1犠牲層(105,106a)と薄い第2犠牲層106bの厚さの差を相殺するように、前もって
図14Aに示す工程で、受信用下部電極103bの厚さを送信用下部電極103aの厚さよりも厚く形成しておく。そして、
図14Bに示す工程で、選択的なエッチング等の加工を第2犠牲層106bの上部に施し、第2犠牲層106bの厚さを、中央が薄く、外周を厚くなる形状にする。その後、
図14Dに示す工程の段階で、第1犠牲層(105,106a)の上方と薄い第2犠牲層106bの上方の第2振動膜108の厚さが同一レベルとなるように、CMP等の手法で平坦化すれば、第2犠牲層106bの上の振動膜108の厚みの形状として、中央が厚く、外周が薄い構造は実現できる。
【0234】
容量型の音響素子は、振動膜の厚みで硬度が異なる。音響素子の振動膜の中央の厚みを厚くすることで、振動膜のたわみ量が異なる。音響素子の振動膜の厚みを局所的に変化させると、外周の薄い部分でたわみ量が大きく、中央の厚い部分は空洞下部に比較的平行に変異し、音響素子の容量変動を大きくでき受信感度が高くなる。ただし、受信素子の振動膜の厚みを、中央を厚くし、外周を薄くする構造の場合は、受信素子の振動膜の厚みが一定の場合に比して、製造バラツキが大きくなる新たな問題が生じる。よって、
図3~
図5、
図8,
図12、
図13、
図16,
図17等に示した高電圧ドライバ34のバイアス電圧を、上述した個別チューニングにすることにより製造バラツキの問題を解消すれば、各セルの音響素子の発信強度と受信感度を、高く且つ均一化できる。
【0235】
第3実施形態に係る音響素子集積回路において、第1チップ605にSiCやダイヤモンドを用いることにより、送信素子231i(j-1),231ij,231i(j+1)及び受信素子232i(j-1),232ij,232i(j+1)の振動膜を固いSiCやダイヤモンドに変える場合について説明した。第3実施形態に係る音響素子集積回路においても、第1チップ501,601にSiCやダイヤモンドを用いれば、音響素子の振動膜を固いSiCやダイヤモンドに変えることができる。又、第1チップ501,601にSiCやダイヤモンドを用いない場合であっても、ヤング率や曲げ強度が高い材料を、第1チップ501,601の製造工程に含ませることにより、上部電極と下部電極には高電圧がかっても、膜厚を薄くして且つ破壊電圧を高くし、強い振動を出し易くなる。
【0236】
更に、本発明は、上述の第1~第3実施形態で説明した技術的思想の一部を適宜組み合わせることも可能である。例えば第1実施形態に係る音響素子集積回路の技術的思想の一部と第3実施形態に係る音響素子集積回路の技術的思想の一部を、適宜組み合わせてもよい。即ち、第1実施形態に係る音響素子集積回路で説明した送受信機能を備えた双方向性の音響素子を、第3実施形態に係る音響素子集積回路の第1チップ605に高電圧ドライバ34と共に集積化し、第2チップ606には、励起回路を構成する遅延回路又は波形発生回路と共に受信回路を集積化した態様でも構わない。
【0237】
このように、本発明は、上述の第1~第3実施形態の説明に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲の記載に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0238】
20…プローブ筐体筐体、21…フィルム基板、22…バッキング、23…音響素子ij、231ij…送信素子、232ij…受信素子、24…音響整合層、25…音響レンズ、30…送受信制御部、30a…送受信機、31…基準クロック発生回路、32…波形発生回路、33…遅延回路、34…高電圧ドライバ(振動膜ドライバ)、35…スイッチ、36…アンプ、37…AD変換回路、38…タイミング調整回路、39…画像処理回路、40…表示部、50a,50b…伝送手段、501,601,605…第1チップ、502,602,606…第2チップ、503,603…第3チップ