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特許7598124ウォータジェットの使用水の処理方法、循環方法、処理システム、及び循環システム
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  • 特許-ウォータジェットの使用水の処理方法、循環方法、処理システム、及び循環システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ウォータジェットの使用水の処理方法、循環方法、処理システム、及び循環システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/00 20060101AFI20241204BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20241204BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20241204BHJP
   C02F 1/66 20230101ALI20241204BHJP
   C02F 9/00 20230101ALI20241204BHJP
【FI】
B01D21/00 C
B01D21/01 B
B01D21/02 N
C02F1/66 510K
C02F1/66 522B
C02F1/66 540A
C02F9/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2024104039
(22)【出願日】2024-06-27
【審査請求日】2024-08-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593162291
【氏名又は名称】株式会社フタミ
(73)【特許権者】
【識別番号】502000285
【氏名又は名称】三上船舶工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301019367
【氏名又は名称】株式会社オクト
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】河西 良二
(72)【発明者】
【氏名】増田 伊三雄
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209324(JP,A)
【文献】特開2022-082984(JP,A)
【文献】特開平11-33549(JP,A)
【文献】特開平10-82026(JP,A)
【文献】特開平9-78854(JP,A)
【文献】特開2021-16818(JP,A)
【文献】特開2016-165772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/00-21/34
C02F1/52-1/56
C02F1/66
C02F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータジェットによって生じた使用水の処理方法であって、
吸引した使用水に凝集剤を混合して、上澄水と凝集物とに分離する分離工程と、
前記分離工程で得られた前記凝集物を脱水して、脱水ケーキにして排出すると共に、脱水によって得た濾過水を前記上澄水に戻す脱水工程と、
前記上澄水に酸を加えて、中和する第1中和工程と、
フロックを吸着可能な第1のフィルタに、前記第1中和工程で得た処理水を通過させる第1のフィルタ通過工程と、
粗ろ過が可能な第2のフィルタに、前記第1のフィルタ通過工程で得た処理水を通過させる第2のフィルタ通過工程と、
前記第2のフィルタ通過工程で得た処理水を、有機物の除去が可能な有機物除去フィルタに循環させる有機物除去フィルタ通過工程と、
前記有機物除去フィルタ通過工程を経た処理水に炭酸ガスを加えて中和する第2中和工程と、
精密ろ過が可能な第3のフィルタに、前記第2中和工程で得た処理水を通過させる第3のフィルタ通過工程とを有する処理方法。
【請求項2】
前記第1のフィルタは、ヤシ繊維フィルタであることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記第2のフィルタは、濾布フィルタであることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
前記有機物除去フィルタは、活性炭フィルタであることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項5】
前記第3のフィルタは、中空糸フィルタであることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項6】
ウォータジェットによる使用水の循環方法であって、
給水タンクから供給される水を用いて、高圧水を発生させる高圧水発生工程と、
前記高圧水発生工程で得られた前記高圧水を噴射ノズルから噴射させたウォータジェットで対象物を処理する処理工程と、
前記処理工程で生じた使用水を吸引する吸引工程と、
前記吸引工程で吸引した使用水を処理する処理工程と、
前記処理工程で得られた処理水を、前記高圧水発生工程に再利用する再利用工程とを備え、
前記処理工程は、
吸引した使用水に凝集剤を混合して、上澄水と凝集物とに分離する分離工程と、
前記分離工程で得られた前記凝集物を脱水して、脱水ケーキにして排出すると共に、脱水によって得た濾過水を前記上澄水に戻す脱水工程と、
前記上澄水に酸を加えて、中和する第1中和工程と、
フロックを吸着可能な第1のフィルタに、前記第1中和工程で得た処理水を通過させる第1のフィルタ通過工程と、
粗ろ過が可能な第2のフィルタに、前記第1のフィルタ通過工程で得た処理水を通過させる第2のフィルタ通過工程と、
前記第2のフィルタ通過工程で得た処理水を、有機物の除去が可能な有機物除去フィルタに循環させる有機物除去フィルタ通過工程と、
前記有機物除去フィルタ通過工程を経た処理水に炭酸ガスを加えて中和する第2中和工程と、
精密ろ過が可能な第3のフィルタに、前記第2中和工程で得た処理水を通過させる第3のフィルタ通過工程とを有する、循環方法。
【請求項7】
前記第1のフィルタは、ヤシ繊維フィルタであることを特徴とする、請求項6に記載の循環方法。
【請求項8】
前記第2のフィルタは、濾布フィルタであることを特徴とする、請求項6に記載の循環方法。
【請求項9】
前記有機物除去フィルタは、活性炭フィルタであることを特徴とする、請求項6に記載の循環方法。
【請求項10】
前記第3のフィルタは、中空糸フィルタであることを特徴とする、請求項6に記載の循環方法。
【請求項11】
前記吸引工程では、使用水の吸引と同時に、使用水を前記処理工程に圧送可能であることを特徴とする、請求項6に記載の循環方法。
【請求項12】
ウォータジェットによって生じた使用水の処理システムであって、
凝集剤を混合した使用水を、上澄水と凝集物とに分離する分離タンクと、
前記上澄水に酸を加えて、中和する第1中和タンクと、
前記分離タンクで得られた前記凝集物を脱水して、脱水ケーキにして排出すると共に、脱水によって得た濾過水を前記第1中和タンクに戻す脱水機と、
前記第1中和タンクで得た処理水を、フロックを吸着可能な第1のフィルタに通過させるフィルタタンクと、
前記フィルタタンクで得た処理水を通過させる粗ろ過が可能な第2のフィルタと、
前記第2のフィルタを通過した処理水を溜めて、有機物の除去が可能な有機物除去フィルタに循環させる処理水安定タンクと、
前記処理水安定タンクに炭酸ガスを加えて中和する炭酸ガスボンベと、
前記処理水安定タンクで得た処理水を通過させる精密ろ過が可能な第3のフィルタとを備える、処理システム。
【請求項13】
前記第1のフィルタは、ヤシ繊維フィルタであることを特徴とする、請求項12に記載の処理システム。
【請求項14】
前記第2のフィルタは、濾布フィルタであることを特徴とする、請求項12に記載の処理システム。
【請求項15】
前記有機物除去フィルタは、活性炭フィルタであることを特徴とする、請求項12に記載の処理システム。
【請求項16】
前記第3のフィルタは、中空糸フィルタであることを特徴とする、請求項12に記載の処理システム。
【請求項17】
ウォータジェットによる使用水の循環システムであって、
給水タンクから供給される水を用いて、高圧水を発生させる高圧水発生装置と、
前記高圧水発生装置で得られた前記高圧水を噴射ノズルから噴射させたウォータジェットで対象物を処理する処理装置と、
前記処理装置で生じた使用水を吸引する吸引装置と、
前記吸引装置で吸引した使用水を処理する処理システムとを備え、
前記処理システムは、
凝集剤を混合した使用水を、上澄水と凝集物とに分離する分離タンクと、
前記上澄水に酸を加えて、中和する第1中和タンクと、
前記分離タンクで得られた前記凝集物を脱水して、脱水ケーキにして排出すると共に、脱水によって得た濾過水を前記第1中和タンクに戻す脱水機と、
前記第1中和タンクで得た処理水を、フロックを吸着可能な第1のフィルタに通過させるフィルタタンクと、
前記フィルタタンクで得た処理水を通過させる粗ろ過が可能な第2のフィルタと、
前記第2のフィルタを通過した処理水を溜めて、有機物の除去が可能な有機物除去フィルタに循環させる処理水安定タンクと、
前記処理水安定タンクに炭酸ガスを加えて中和する炭酸ガスボンベと、
前記処理水安定タンクで得た処理水を通過させる精密ろ過が可能な第3のフィルタとを備える、循環システム。
【請求項18】
前記第1のフィルタは、ヤシ繊維フィルタであることを特徴とする、請求項17に記載の循環システム。
【請求項19】
前記第2のフィルタは、濾布フィルタであることを特徴とする、請求項17に記載の循環システム。
【請求項20】
前記有機物除去フィルタは、活性炭フィルタであることを特徴とする、請求項17に記載の循環システム。
【請求項21】
前記第3のフィルタは、中空糸フィルタであることを特徴とする、請求項17に記載の循環システム。
【請求項22】
前記吸引装置は、使用水の吸引と同時に、使用水を前記処理システムに圧送可能であることを特徴とする、請求項17に記載の循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータジェットを用いたコンクリートのはつり作業や、表面塗膜の除去作業、クリーニング作業等によって生じる使用水を浄化して再利用可能とする方法、装置、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水発生装置から供給される超高圧水を、微細な孔を有する噴射ノズルから噴射した噴射水を、ウォータジェット(「アクアブラスト」ともいう。)という。
ウォータジェットでコンクリートを斫る(はつる)ことをウォータジェット工法という。
たとえば、ウォータジェット工法によって、コンクリートの中の鉄筋に傷をつけずに、コンクリートだけを取り除くことができる。
ウォータジェット工法を用いれば、橋梁のコンクリート床版のはつり工事や劣化したコンクリートの除去工事などを行うことができる。
なお、ウォータジェット工法は、コンクリートのはつり工事以外に、表面塗膜の除去や、路面の表面のクリーニング、その他、対象物の処理に用いることができる。
【0003】
高圧水発生装置と共に、給水車を工事現場に搬送し、給水車から高圧水発生装置に水を供給して、噴射ノズルを有するウォータジェット表面処理装置からウォータジェットを噴射して、斫り作業を行う。
ウォータジェット工法には、大量の水が必要となるため、頻繁に給水車を工事現場に向かわせる必要があった。
【0004】
そのため、特許文献1~6に記載されているように、ウォータジェットで使用した使用水を現場で処理して再利用できるようにする方法及び装置が提案されている。
【0005】
特許文献1では、はつりを行うに際して、貯水タンク(11)(括弧内の符号は特許文献に記載の符号である。以下同様。)に、添加材の粉末または液体を所定量投入することとしている。特許文献1では、はつりにより生じたコンクリート微粒子に作用する添加剤として、高分子凝集剤NP10(ノニオン系ポリアクリルアミド)を使用し、コンクリート中に含まれはつりに使用された水に溶解される成分に作用する添加剤として重炭酸ナトリウムを使用している。
【0006】
特許文献1では、ウォータジェット用水には、高分子凝集剤が含まれるので、コンクリート粉砕の工程で、コンクリート微粒子が持つ電荷に起因する非親和力が、ウォータジェット用水中に含まれる高分子凝集剤により解消ないし弱められ、コンクリート微粒子がフロック化されるとされている。
そして、第1回収設備(B2)には、コンクリート微粒子がフロック化され、沈殿されるため、その沈殿物をろ過し、廃棄する設備が設置されているとされている。
【0007】
通常、ウォータジェット用水に使用される水は、工業用水1級相当であることが求められることが多い。しかし、特許文献1に記載の技術によって、工業用水1級相当にまで、廃水を処理可能か否か不明であり、そのままでは実用化できない。
【0008】
特許文献2には、ウォータジェットによるはつり作業を行うはつりロボット(1)と、はつりロボット(1)に高圧水を供給する高圧水発生装置(2)と、高圧水発生装置(2)に清水を供給する給水車(3)と、ウォータジェットによるはつり時に発生した廃水を吸引するバキュームカー(4)と、回収した廃水の固液分離を行い、処理水を高圧水発生装置(2)に供給するポンプを含む固液分離装置(5)とからなる。
【0009】
特許文献2には、固液分離装置(5)として、コトブキ技研工業株式会社製の汚泥脱水車(商品名「ドロダス」)を用いて、バキュームカー(4)から供給された濁水の固液分離を行い、固形物を除去するとされている。
【0010】
しかし、当該ドロダスという製品がどのような構成であるのかは明らかでなく、また、単に、特許文献2では、濁水から固形物を除去するとされているに過ぎない。
特許文献2によっては、工業用水1級相当の水に、濁水を再生することはできない。
【0011】
特許文献3には、気体と液体とを分離する装置気水分離装置(102)と、濾過装置(108)とが記載されている。気水分離装置(102)の底部に収容された汚濁水は、配管(105)を介して清水タンク(206)側に排出され、途中で濾過装置(108)によって濾過される。これにより、汚濁水に含まれた表層材が除去され、濾過後の水が再生水として清水タンク(206)に供給されるとされている。
【0012】
しかし、特許文献3に記載の濾過装置(108)がどのような構造のものであるか記載はない。
特許文献3によっては、工業用水1級相当の水に、再生することはできない。
【0013】
特許文献4に記載の排水処理装置は、排水タンク(2)と、中和装置(4)と、固形物除去装置(6)と、イオン除去装置(8)とを備える。
中和装置(4)は、排水と酸性液を混合するスタテイックミキサから構成されている。中和装置(4)は、当該ミキサによって酸性液を含む排水を所要のとおりに混合してウォータジェット排水を中和する。
固形物除去装置(6)は筒状の除去槽(28)を有し、除去槽(28)内に中空糸膜フィルタが充填されている。中空糸膜フィルタは、中空でかつ周面に複数個の孔が形成されたそれ自体公知の繊維の束から構成されている。中空糸膜フィルタを用いた場合には、処理すべきウォータジェット排水は、繊維の束の周囲を流れ、各繊維の周面の孔を通して内部に流れる際に固形物(コンクリート断片等)が除去され、固形物が除去された排水は繊維の内部を通って流れる。
イオン除去装置(8)は逆浸透膜を備えている。このイオン除去装置(8)は、排水が逆浸透膜を通過するときに排水中に含まれているイオン(カルシウムイオン、塩素イオン等)を除去する。
【0014】
このように、特許文献4には、中和工程と、固形物除去工程と、イオン除去工程とを含む排水処理工程が記載されている。
しかし、かかる工程によって、工業用水1級相当の水に再生せることはできない。
また、特許文献4には、固形物除去工程として、中空糸膜フィルタが用いられているが、いきなり、中空糸膜フィルタで固形物を除去したら、すぐに、フィルタが目詰まりしてしまう可能性が高い。
【0015】
特許文献5には、道路表面を洗浄するための洗浄車(1)が記載されている。洗浄車(1)は、車両の荷台に、水タンク(5)と、道路上を移動するアクアブラスト(9)に水タンク(5)から高圧水を供給する高圧水発生ポンプ(4)と、アクアブラスト(9)から噴射された水と懸濁性物質とを吸引するバキューム装置(7)と、バキューム装置(7)で吸引された水と懸濁性物質とを分離処理する水リサイクル装置(6)とを搭載する。水リサイクル装置(6)で分離処理した水を水タンクに戻して洗浄現場で再利用する。
【0016】
特許文献5において、水リサイクル装置(6)は、例えばその処理能力が2m3/時間でSS1μmの濾過精度を有し、炭酸ガスがラインにて一定量づつ連続注入され、アクフブラスト(9)から吸引された水と懸濁性物質とを分離処理するように構成されている。ラインにて炭酸ガスを注入する理由として、特許文献5では、コンクリートの薄層はつりの際の回収水がアルカリ性をおびているため、これを中和させるためであると記載されている。
【0017】
水リサイクル装置(6)は、炭酸ガス注入部(32)と、反応タンク(33)と、フィルタ部(34)と、濾過水タンク(35)とで構成されている。
フィルタ部(34)は、1μmのシックナーバッグを5枚有する一対のシックナーバッグフィルタ(46、47)で構成されている。
【0018】
しかし、特許文献5のフィルタ部(34)によって、工業用水1級相当の水に再生可能であるかは不明である。また、1μmのシックナーバッグを5枚を使用したフィルタ部(34)は、すぐに目詰まりしてしまう可能性が高い。
工業用水1級相当の水に再生せることはできない。
【0019】
特許文献6に記載の水回収装置は、分離装置(1)を備えた分離槽(6)と、中和装置(11)を備えた中和槽(10)と、フィルタ装置(14)と、貯水槽(15)と、高圧ポンプ(17)とで構成されている。
中和槽(10)には、中和装置(11)を構成する炭酸ガス注入管(12a)及び攪拌機(12b)と、フィルタ装置(14)への移送ポンプ(13)及び管路(L3)とが設けられている。
フィルタ装置(14)では、上流側フィルタ(14a)と下流側フィルタ(14b)とがユニット化されている。その上流側フィルタ(14a)は、例えば目が20ミクロンで流量が毎分600リットルのもので構成されている。下流側フィルタ(14b)は、例えば目が5ミクロン及び毎分600リットルのもので構成されている。
【0020】
しかし、特許文献6の水回収装置によって、工業用水1級相当の水に再生することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特開2003-025292号公報
【文献】特開2002-242124号公報
【文献】特開2002-069957号公報
【文献】特開平11-033549号公報
【文献】特開平10-082026号公報
【文献】特開平09-078854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
このように、特許文献1~6に記載の廃水の再生装置を用いても、工業用水1級相当の水に再生することはできない。また、仮に、工業用水1級相当の水に再生することができたとしても、いずれの特許文献においても、フィルタが目詰まりしやすい構成となっている。
【0023】
それゆえ、本発明は、ウォータジェット工法における使用水を工業用水1級相当の水に再生することを目的とする。
また、本発明は、ウォータジェット工法における使用水を再生するに際して、フィルタが目詰まりしにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
本発明は、ウォータジェットによって生じた使用水の処理方法であって、吸引した使用水に凝集剤を混合して、上澄水と凝集物とに分離する分離工程と、分離工程で得られた凝集物を脱水して、脱水ケーキにして排出すると共に、脱水によって得た濾過水を上澄水に戻す脱水工程と、上澄水に酸を加えて、中和する第1中和工程と、フロックを吸着可能な第1のフィルタに、第1中和工程で得た処理水を通過させる第1のフィルタ通過工程と、粗ろ過が可能な第2のフィルタに、第1のフィルタ通過工程で得た処理水を通過させる第2のフィルタ通過工程と、第2のフィルタ通過工程で得た処理水を、有機物の除去が可能な有機物除去フィルタに循環させる有機物除去フィルタ通過工程と、有機物除去フィルタ通過工程を経た処理水に炭酸ガスを加えて中和する第2中和工程と、精密ろ過が可能な第3のフィルタに、第2中和工程で得た処理水を通過させる第3のフィルタ通過工程とを有する。
【0025】
また、本発明は、ウォータジェットによる使用水の循環方法であって、給水タンクから供給される水を用いて、高圧水を発生させる高圧水発生工程と、高圧水発生工程で得られた高圧水を噴射ノズルから噴射させたウォータジェットで対象物を処理する処理工程と、処理工程で生じた使用水を吸引する吸引工程と、吸引工程で吸引した使用水を処理する処理工程と、処理工程で得られた処理水を、高圧水発生工程に再利用する再利用工程とを備える。
ここで、処理工程は、吸引した使用水に凝集剤を混合して、上澄水と凝集物とに分離する分離工程と、分離工程で得られた凝集物を脱水して、脱水ケーキにして排出すると共に、脱水によって得た濾過水を上澄水に戻す脱水工程と、上澄水に酸を加えて、中和する第1中和工程と、フロックを吸着可能な第1のフィルタに、第1中和工程で得た処理水を通過させる第1のフィルタ通過工程と、粗ろ過が可能な第2のフィルタに、第1のフィルタ通過工程で得た処理水を通過させる第2のフィルタ通過工程と、第2のフィルタ通過工程で得た処理水を、有機物の除去が可能な有機物除去フィルタに循環させる有機物除去フィルタ通過工程と、有機物除去フィルタ通過工程を経た処理水に炭酸ガスを加えて中和する第2中和工程と、精密ろ過が可能な第3のフィルタに、第2中和工程で得た処理水を通過させる第3のフィルタ通過工程とを有する。
【0026】
好ましくは、第1のフィルタは、ヤシ繊維フィルタであるとよい。
【0027】
好ましくは、第2のフィルタは、濾布フィルタであるとよい。
【0028】
好ましくは、有機物除去フィルタは、活性炭フィルタであるとよい。
【0029】
好ましくは、第3のフィルタは、中空糸フィルタであるとよい。
【0030】
好ましくは、吸引工程では、使用水の吸引と同時に、使用水を処理工程に圧送可能であるとよい。
【0031】
また、本発明は、ウォータジェットによって生じた使用水の処理システムであって、凝集剤を混合した使用水を、上澄水と凝集物とに分離する分離タンクと、上澄水に酸を加えて、中和する第1中和タンクと、分離タンクで得られた凝集物を脱水して、脱水ケーキにして排出すると共に、脱水によって得た濾過水を第1中和タンクに戻す脱水機と、第1中和タンクで得た処理水を、フロックを吸着可能な第1のフィルタに通過させるフィルタタンクと、フィルタタンクで得た処理水を通過させる粗ろ過が可能な第2のフィルタと、第2のフィルタを通過した処理水を溜めて、有機物の除去が可能な有機物除去フィルタに循環させる処理水安定タンクと、処理水安定タンクに炭酸ガスを加えて中和する炭酸ガスボンベと、処理水安定タンクで得た処理水を通過させる精密ろ過が可能な第3のフィルタとを備える。
【0032】
また、本発明は、ウォータジェットによる使用水の循環システムであって、給水タンクから供給される水を用いて、高圧水を発生させる高圧水発生装置と、高圧水発生装置で得られた高圧水を噴射ノズルから噴射させたウォータジェットで対象物を処理する処理装置と、処理装置で生じた使用水を吸引する吸引装置と、吸引装置で吸引した使用水を処理する処理システムとを備える。
ここで、処理システムは、凝集剤を混合した使用水を、上澄水と凝集物とに分離する分離タンクと、上澄水に酸を加えて、中和する第1中和タンクと、分離タンクで得られた凝集物を脱水して、脱水ケーキにして排出すると共に、脱水によって得た濾過水を第1中和タンクに戻す脱水機と、第1中和タンクで得た処理水を、フロックを吸着可能な第1のフィルタに通過させるフィルタタンクと、フィルタタンクで得た処理水を通過させる粗ろ過が可能な第2のフィルタと、第2のフィルタを通過した処理水を溜めて、有機物の除去が可能な有機物除去フィルタに循環させる処理水安定タンクと、処理水安定タンクに炭酸ガスを加えて中和する炭酸ガスボンベと、処理水安定タンクで得た処理水を通過させる精密ろ過が可能な第3のフィルタとを備える。
【0033】
好ましくは、第1のフィルタは、ヤシ繊維フィルタであるとよい。
【0034】
好ましくは、第2のフィルタは、濾布フィルタであるとよい。
【0035】
好ましくは、有機物除去フィルタは、活性炭フィルタであるとよい。
【0036】
好ましくは、第3のフィルタは、中空糸フィルタであるとよい。
【0037】
好ましくは、吸引装置は、使用水の吸引と同時に、使用水を処理システムに圧送可能であるとよい。
【0038】
使用水に凝固剤を混合することで、上澄水と凝集物に分離でき、凝集物を脱水機で脱水ケーキにすることで、フロックを廃棄し易くしている。
脱水によって得た濾過水は、再度、上澄水に戻されるので、使用水をさらに活用できる。
【0039】
上澄水は、酸によって中和される。
【0040】
上澄水と凝集物とに分離する時間を長く静止させておけば上澄水に含まれるフロックを少なくできるが、それでは、使用水の処理時間が長くなってしまう。そこで、第1のフィルタに、フロックを吸着させることで、静止時間を最低限の時間に設定することができる。
【0041】
第1のフィルタで、フロックが回収されるが、第1のフィルタとして、ヤシ繊維フィルタやスポンジフィルタのように、網目が非常に粗いフィルタを使用することができるので、フィルタの目詰まりを極力減らすことができる。
【0042】
第1のフィルタを通過した処理水は、粗ろ過が可能な第2のフィルタを通過する。粗ろ過とは、10μmレベルの網目を有するフィルタであり、濾布フィルタなどによって実現される。粗ろ過によって、第1のフィルタで取り切れなかったフロックをろ過することが可能である。第1のフィルタを通過した後であるので、第2のフィルタの目詰まりを極力減らすことができる。
【0043】
第2のフィルタを通過した処理水は、有機物除去フィルタに循環させることで、有機物が除去される。有機物除去フィルタとしては、たとえば、活性炭フィルタが用いられる。第2のフィルタを通過した後の処理水であるので、有機物除去フィルタの目詰まりを極力減らすことができる。有機物は、有機物除去フィルタに吸着されることで、除去される。ラインポンプによって、連続的に、有機物除去フィルタに処理水を通して、有機物の除去を連続的に行うことができる。
【0044】
有機物除去フィルタによる処理と合せて、炭酸ガスによる第2の中和が行われる。これによって、処理水が中和される。
【0045】
最後に、第2の中和を経た処理水を、精密ろ過が可能な第3のフィルタを通過して、処理水が再利用される。精密ろ過が可能なフィルタとは、1μmレベルの網目を有するフィルタである。第3のフィルタとしては、中空糸フィルタなどを用いることができる。
第3のフィルタを最後に通して、工業用水1級相当の水が、得られることになる。
第3のフィルタを通る頃には、ほとんどの不純物が除去されているので、第3のフィルタの目詰まりを極力減らすことができる。
【発明の効果】
【0046】
以上、本発明によれば、ウォータジェット工法における使用水を工業用水1級相当の水に再生することができる。
【0047】
また、本発明によれば、ウォータジェット工法における使用水を再生するに際して、フィルタを目詰まりしにくくすることができる。
【0048】
本発明並びに本発明の実施形態の目的、特徴、構成、作用、及び効果等は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、処理システム100の構成を示す系統図である。
図2図2は、処理システム100をトラックに積載可能にするために本体枠Pに組み込んだときの配置を示す平面図である。
図3図3は、工事現場において、処理システム100を用いてウォータジェット工法を実施するときの全体構成を示す図である。
図4図4は、処理システム100において、使用水の受け入れから処理水の再利用までの工程を示すフローチャートである。図4において、(1)~(12)で示す番号は、図2において、丸印の中に示した番号の箇所での工程を指し示す。
図5図5は、使用水の脱水処理を示すフローチャートである。図5において、(13)~(15)で示す番号は、図2において、丸印の中に示した番号の箇所での工程を指し示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1及び図2に示すように、処理システム100は、原水タンクAと、発電機及び作業台Bと、制御盤及びコンプレッサCと、混合タンクDと、分離タンクEと、1次中和タンクFと、フィルタタンクGと、濾布フィルタHと、活性炭フィルタIと、処理水安定タンクJと、中空糸フィルタKと、炭酸ガスボンベLと、脱水機Mと、ダイヤフラムポンプ棚Nと、脱水ケーキ受け部Oと、本体枠Pとを備える。
【0051】
図3に示すように、給水車300から高圧水発生装置400に水が供給される。当該水は、工業用水1級相当の水である。高圧水発生装置400は、高圧水をウォータジェット表面処理装置200に供給する。ウォータジェット表面処理装置200は、噴射ノズルを有している。当該噴射ノズルから、ウォータジェットが噴射されて、コンクリートや表面塗膜、路面などの対象物が処理される。対象物が処理された後の水を、使用水(「廃水」ともいう)ということにする。なお、本明細書では、処理システム100内で処理中の処理水のことも、使用水と呼ぶことがある。
【0052】
吸引車500は、当該使用水を吸引する共に、処理システム100に当該使用水を送り込む。吸引車500は、吸引と送出を同時に行えるものであるとよいが、本発明においては限定されない。吸引したあとに、別に、使用水を処理システム100に送出する吸引車500が用いられてもよい。
【0053】
処理システム100は、使用水を工業用水1級相当の水に再生して、再生した水を給水タンク300に送る。なお、給水タンク300に送るのではなく、処理システム100が高圧水発生装置400に処理水を送るようにしてもよい。すなわち、処理水が再利用されればよいのであって、どのような経路を通じて、処理水を再利用するかは、本発明において、限定されない。
【0054】
なお、工業用水1級相当の水であるので、厳密に、工業用水1級である場合に限らないのは、言うまでもない。
【0055】
原水タンクAは、吸引車500から送出用ホースに接続される受け入れ口を有する。当該受け入れ口は、原水タンクAの下部にあるとよいが、本発明においては、限定されない。
原水タンクAは、攪拌装置を備えており、内部の使用水が攪拌されるようになっているとよいが、本発明においては、限定されない。
原水タンクAには、ゴミネットが設けられており、攪拌と合せて、大径のゴミをゴミネットで取り除くようにしておくとよいが、本発明においては、限定されない。
【0056】
原水タンクAの下部には、水ポンプ(図面上、「P」で示した構成が水ポンプである。以下同様。)が設けられている。本実施形態では、各水ポンプはタンクの下部に設けているとしているが、あくまでも一例であり、タンク内の水を吸引することができるのであれば、水ポンプの配置箇所は、本発明においては、限定されない。
【0057】
吸引車500から原水タンクAに使用水が受け入れられ(図4の工程(1))、原水タンクA内の使用水が水ポンプによって、混合タンクDに移送される(同工程(2))。
【0058】
発電機及び作業台Bには、発電機が設置されており、各種作業のための作業台が構成されている。
制御盤及びコンプレッサCには、制御盤及びコンプレッサが設置されている。
【0059】
混合タンクDの上部には、薬剤投入装置が設けられている。薬剤投入装置は、薬剤として、凝集剤を投入する。凝集剤によって、使用水の濁りの原因となる汚れ(コンクリートの粉体など)の粒子は凝集されることとなる。凝集物を、フロックともいう。
凝集剤としては、アルミ系(硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウムなど)や、鉄系(ポリ硫酸第二鉄や塩化第二鉄、硫酸第一鉄など)、高分子凝集剤など、周知のあらゆるものを使用可能である。凝集剤としては、液体又は粉体どちらの形態であってもよい。
【0060】
薬剤投入装置は、原水タンクAから混合タンクDに使用水が移送されている間だけ、薬剤を投入する。薬剤投入装置は、原水タンクAから混合タンクDに移送されている使用水の流量に合せて、薬剤を投入する時間を定義付けている。薬剤投入装置を制御盤によってタイマー制御することで、流量に合せた薬剤を投入することができる。図4において、(3)で示した工程が混合タンクDから分離タンクEへの使用水の移送処理である。
【0061】
分離タンクEは、凝集処理を行うためのタンクである。分離タンクEは、攪拌装置を備えている。攪拌装置の攪拌時間及び静止時間は、予め設定されたタイマーで制御されている。また、分離タンクEは、水位レベルセンサを備えている。さらに、分離タンクEは、電動バルブを備えている。水位レベルセンサによって、所定の水位まで達したことが検出された後、所定の静止時間経過後に、当該電動バルブが制御盤によって開かれて、上澄水が、分離タンクEから1次中和タンクFに向けて自然越流するように構成されている。図4において、(4)で示した工程が上澄水と沈殿物(凝集物)との分離処理である。
【0062】
分離タンクEでの凝集処理で得られた沈殿物(凝集物)は、ダイヤフラムポンプによって、脱水機に移送される。図5において、(13)で示した工程が沈殿物の移送処理である。
【0063】
脱水機Mで脱水された後に取り出された処理水は、ダイヤフラムポンプによって、1次中和タンクFに送られる。図5において、(14)で示した工程が当該処理水の移送工程である。
【0064】
1次中和タンクFは、分離タンクEから送られてきた上澄水と脱水機Mから送られてきた使用水とを中和(1次中和)するためのタンクである。
中和タンクFに投入される酸は、たとえば、希硫酸、硫酸水素ナトリウムなどであるが、本発明において、限定されるものではない。中和タンクFには、PH制御器が設けられている。図示しない薬剤投入装置は、PH制御器で検出したPHに合せて、酸を中和タンクFに投入して、使用水を中性にする。中和タンクFによって中和された使用水は、フィルタタンクGに自然越流される。図4において、(5)で示した工程が中和された使用水の移送処理である。
【0065】
フィルタタンクGは、少なくとも1枚のヤシ繊維フィルタとポンプ槽とを有する。ヤシ繊維フィルタの網目は大きいので、通常は、濁水の清水化には用いられないが、本発明では、用いることとする。ヤシ繊維フィルタは、安価なフィルタである。
【0066】
たとえば、50mmの厚みのヤシ繊維フィルタを6枚合せて、300mmの厚みのヤシ繊維フィルタの層を使用するとよい。
【0067】
分離タンクEにおいて、静止時間を長くすれば、小さいフロックを沈殿させることができる。しかし、長時間の静止時間を設けるとなると、全体の浄化時間が長時間となり、処理能力が低くなる。
そこで、本実施形態では、分離タンクEでの静止時間を、たとえば、約5分とし、上澄水を1次中和タンクFに自然越流させて、小さな浮遊物が混在する状態で、フィルタタンクG内のヤシ繊維フィルタを通過させることとしている。
図4において、(6)で示した工程がヤシ繊維フィルタの通過工程である。
【0068】
小さなフロックには、それ自体が何かに吸着しようとする働きがある。この原理を利用して、1次中和後の使用水をヤシ繊維フィルタに通過させる。これによって、小さなフロックがヤシ繊維フィルタに吸着する。ヤシ繊維フィルタは、安価であるため、交換によるコストを抑えつつ、処理能力を高くすることができる。たとえば、厚さ50mmのヤシ繊維フィルタを6枚合せて、300mmの厚みのフィルタを構成する。
流速を下げるためヤシ繊維フィルタの面積を広くし、ヤシ繊維フィルタを何層にも重ね厚くすることで、より多くの浮遊物が繊維に着床できるようにしている。
【0069】
なお、ヤシ繊維フィルタの代わりに、その他、目が粗いスポンジフィルタが用いられてもよい。すなわち、フィルタタンクGで用いるフィルタは、フロックを吸着可能なフィルタ(第1のフィルタ)であるとよい。
【0070】
ヤシ繊維フィルタを通過した使用水は、ポンプ槽に自然越流する。ポンプ槽に設けられた水ポンプによって、処理水が、濾布フィルタHに移送される。
図4において、(7)で示した工程が処理水の移送工程である。
【0071】
濾布フィルタHとしては、たとえば、網目が10μm程度の濾布が用いられるとよいが、限定されるものではない。使用水をいきなり濾布フィルタに通過させると、濾布フィルタに小さいフロックが溜まってしまって、すぐに目詰まりを起こすことになる。本実施形態では、ヤシ繊維フィルタ(第1のフィルタ)を通過させたあと、濾布フィルタを通過させるので、濾布フィルタを長持ちさせることができる。濾布フィルタHを通過した処理水は、10μm以下の浮遊物を有する程度に浄化されている。
図4において、(8)で示した工程が濾布フィルタの通過工程である。
【0072】
濾布フィルタは、粗ろ過(捕捉可能な対象物が10μmよりも大きなろ過。10μmレベルの網目を有するフィルタによるろ過。)が可能なものであれば、他の周知なフィルタに置き換えることができる。濾布フィルタを第2のフィルタということにする。
【0073】
濾布フィルタを通過した処理水は、処理水安定タンクJに移送される。処理水安定タンクJでは、活性炭フィルタの通過工程(図4の(9))と、2次中和処理工程(図4の(10))とが行われる。
【0074】
活性炭フィルタIは、処理水安定タンクJとラインポンプ(循環ポンプ)で接続されている。そのため、処理水安定タンクJ内の処理水は、ラインポンプによって活性炭フィルタIに吸入されると共に、活性炭フィルタIを通過した処理水は再び処理水安定タンクに戻ることとなる。活性炭フィルタIを処理水が通過することで、主に、有機物が活性炭フィルタIに吸着することとなる。
【0075】
活性炭フィルタIでは、有機物が除去される。そのため、活性炭フィルタIを他の周知の有機物除去フィルタに置き換えることができる。
【0076】
処理水安定タンクJには、さらに、炭酸ガスボンベLから炭酸ガスが供給される。炭酸ガスが処理水に供給されることで、中和処理が行われる。処理水安定タンクJには、PH制御器が設けられており、PHが計測されている。計測されたPHに基づいて、制御盤が炭酸ガスの供給量を制御する。
【0077】
このように処理水安定タンクJ内で、処理水が中和(2次中和)されると共に、有機物が除去されて、処理水の安定化が図られる。
【0078】
処理水安定タンクJに設置された水ポンプによって、処理水が吸引されて、最後に、中空糸フィルタKを通過する(図4の(11))。中空糸フィルタKの網目は1μm以下であり、捕捉する対象物は、1μm以上のものである。このような1μm以上の網目のフィルタを、精密ろ過フィルタという。中空糸フィルタKの代わりに、他の周知の精密ろ過が可能な精密ろ過フィルタに置き換えることが可能である。
【0079】
中空糸フィルタKを通過させることで、最後まで残った不純物や、活性炭フィルタIの中に存在する活性炭の粉も、濾過することができる。
【0080】
この中空糸フィルタKの通過工程を経た最終処理水が、再利用される(図4の(12))。
【0081】
脱水機Mとしては、たとえば、特開2021-023884号公報に記載のようなテーブル式フィルタプレスを用いることができる。
たとえば、当該テーブル式フィルタプレスでは、2イン2アウト方式のダイヤフラムポンプを利用している。分離タンクEから沈殿物(フロック)を吸引して、濾布が張られた濾室内に、沈殿物を通過させて、プレスすることで、沈殿物から水を脱水して、濾過水を1次中和タンクFに移送せると共に、脱水ケーキを排出する(図5の(15))。
【0082】
脱水機Mは、フロックを脱水して、脱水ケーキと濾過水との分離することができる構造であればどのような構造であってもよく、あらゆる周知の技術を用いることができる。脱水機Mの構成は、本発明において、限定されるものではない。
【0083】
ダイヤフラムポンプ棚Nは、ダイヤフラムポンプを載置するための棚である。
脱水ケーキ受け部Oは、脱水ケーキを受け取る部分である。
【0084】
本体枠Pは、トラックに処理システム100を搭載することができるようにした枠体である。
【0085】
以上のように、本実施形態では、使用水に凝集剤を混合して、上澄水と沈殿物とに分離する凝集処理と、上澄水に酸を加えて中和する1次中和処理と、フロックを吸着可能なヤシ繊維フィルタなどの第1のフィルタを通過させてフロックを吸着させる第1のフィルタ通過処理と、第1のフィルタを通過した処理水を濾布フィルタなどの粗ろ過フィルタを通過させる粗ろ過フィルタ通過処理と、粗ろ過フィルタを通過した処理水を活性炭などの有機物除去フィルタを通過させる有機物除去処理と、有機物除去処理に合せて、炭酸ガスを投入する2次中和処理と、最後に、中空糸フィルタなどの精密ろ過フィルタを通過させる精密ろ過フィルタ通過処理とを備えることで、ウォータジェット工法での使用水を工業用水1級相当の水に再生して、再びウォータジェット工法に再利用することができるようにしている。
【0086】
フロックと上澄水とに分離して、フロックは脱水処理し、上澄水をヤシ繊維フィルタを通過させることで、濾布フィルタや中空糸フィルタの目詰まりを起こしにくくしている。
【0087】
ヤシ繊維フィルタにフロックを付着させることで、凝集物の沈殿時間を短くすることができる。
【0088】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。本明細書上の具体的な表現については、あくまでも、例示であり、本発明には、当該例示的表現を概念化したものも含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、ウォータジェットの使用水の処理方法、循環方法、処理システム、及び循環システムであり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0090】
100 処理システム
200 ウォータジェット表面処理装置
300 給水車
400 高圧水発生装置
500 吸引車
A 原水タンク
B 発電機・作業台
C 制御盤・コンプレッサ
D 混合タンク
E 分離タンク
F 1次中和タンク
G フィルタタンク
H 濾布フィルタ
I 活性炭フィルタ
J 処理水安定タンク
K 中空糸フィルタ
L 炭酸ガスボンベ
M 脱水機
N ダイヤフラムポンプ棚
O 脱水ケーキ受け部
P 本体枠
【要約】
【課題】ウォータジェット工法における使用水を工業用水1級相当の水に再生する。
【解決手段】ウォータジェットの使用水の処理方法として、上澄水と凝集物とに分離する分離工程と、凝集物を脱水して、脱水ケーキにして排出すると共に、濾過水を上澄水に戻す脱水工程と、上澄水に酸を加えて、中和する第1中和工程と、フロックを吸着可能な第1のフィルタ(ヤシ繊維フィルタ)に通過させる第1のフィルタ通過工程と、粗ろ過が可能な第2のフィルタ(濾布フィルタ)に通過させる第2のフィルタ通過工程と、有機物の除去が可能な有機物除去フィルタ(活性炭フィルタ)に循環させる有機物除去フィルタ通過工程と、炭酸ガスを加えて中和する第2中和工程と、精密ろ過が可能な第3のフィルタ(中空糸フィルタ)に通過させる第3のフィルタ通過工程とを有する。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5