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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】動物飼育装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024023233
(22)【出願日】2024-02-19
【審査請求日】2024-09-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構「ムーンショット型農林水産研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(73)【特許権者】
【識別番号】503303466
【氏名又は名称】学校法人関西文理総合学園
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塗矢 優太
(72)【発明者】
【氏名】小倉 淳
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6624190(JP,B2)
【文献】国際公開第2021/157717(WO,A1)
【文献】特表2022-535428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有し内部空間にて昆虫の飼育が行われる飼育ケース部と、
前記飼育ケース部への空気の供給と、前記飼育ケース部からの前記空気の回収とを行う空気循環部と、を備え、
前記飼育ケース部が、
前記空気を取り込むための導入口と、
前記空気を排出するための排出口と、を有し、
前記内部空間を上方空間部と下方空間部とに区画するとともに前記空気を通過させることが可能な通気部を備え、
前記空気を、前記下方空間部から前記上方空間部へ通過させ、前記上方空間部にて前記昆虫の飼育を行う、動物飼育装置。
【請求項2】
前記上方空間部に、前記昆虫が掴まることが可能な足場部を設けた、請求項に記載の動物飼育装置。
【請求項3】
前記空気を浄化する空気清浄部を備えた、請求項に記載の動物飼育装置。
【請求項4】
前記飼育ケース部に、前記昆虫の生育を促した環境再現光を照射する光源部を備えた、請求項に記載の動物飼育装置。
【請求項5】
前記飼育ケース部に、前記内部空間と、前記飼育ケース部の外部空間とを空間的に繋げて気密性を解除する開閉部を備えた、請求項に記載の動物飼育装置。
【請求項6】
前記内部空間に、角度の変更が可能な餌場部を備えた、請求項に記載の動物飼育装置。
【請求項7】
前記飼育ケース部に、光透過性を有する窓部を備えた、請求項に記載の動物飼育装置。
【請求項8】
前記内部空間の除菌が可能な除菌部を備えた、請求項に記載の動物飼育装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の飼育に用いられる動物飼育装置に関する。
【背景技術】
【0002】
後掲の特許文献1(請求項1など)には、昆虫の幼虫を保管するためのクレート(1)や、空気入口ダクト(2)等を備えたシステムに係る発明が開示されている。特許文献1に開示された発明においては、複数のクレート(1)が積み重ねられている。また、後掲の特許文献2(段落0029、0030、図2など)には、止まり部材(21)の上端部が天井板(111)に保持され、止まり部材(21)が、コオロギ(500)の足場となることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7302098号公報
【文献】特開2021-151190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、動物飼育装置の技術分野においては、飼育対象となる動物や、飼育を行う者(飼育者)にとって、より一層好適な性能が求められている。
【0005】
本発明は、より高性能な動物飼育装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る動物飼育装置は、
気密性を有し内部空間にて動物の飼育が行われる飼育ケース部と、
前記飼育ケース部への空気の供給と、前記飼育ケース部からの前記空気の回収とを行う空気循環部と、を備え、
前記飼育ケース部が、
前記空気を取り込むための導入口と、
前記空気を排出するための排出口と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より高性能な動物飼育装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の動物飼育装置を概略的に示す斜視図である。
図2】(a)は複数の飼育ケース部を直列に接続した状態を示す説明図、(b)は複数の飼育ケース部を並列に接続した状態を示す説明図である。
図3】循環空気導入口と循環空気導出口の配置例を示す説明図である。
図4】(a)~(c)は循環空気導入口と循環空気導出口の配置に係る変形例を示す説明図である。
図5】光源部の配置例を示す説明図である。
図6】(a)、(b)は足場部の配置例を示す説明図、(c)は係止受部の構造例を示す説明図である。
図7】(a)、(b)は足場部の変形例を示す説明図である。
図8】(a)は蓋部の一例を示す説明図、(b)は蓋部の変形例を示す説明図である。
図9】蓋部に係る他の変形例を示す説明図である。
図10】(a)は餌場部の一例を示す説明図、(b)は(a)の餌場部を拡大して示す斜視図である。
図11】窓部の一例を示す説明図である。
図12】燻蒸部の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<動物飼育装置10の基本構成>
以下に、実施形態に係る動物飼育装置10について、図面に基づき説明する。図1は実施形態に係る動物飼育装置10を示している。動物飼育装置10の飼育対象は、どのような動物でもよいが、本実施形態では、昆虫のコオロギを飼育対象としている。動物飼育装置10は、例えば、コオロギの飼育を行う飼育工場への設置が可能なものである。
【0010】
動物飼育装置10は、飼育ケース部12と、空気循環部14とを備えている。飼育ケース部12と、空気循環部14との間には、空気清浄部16が備えられている。ここでは、飼育ケース部12、空気循環部14、及び、空気清浄部16の基本的な事項について説明し、これらの詳細については後述する。
【0011】
飼育ケース部12は、密閉構造による気密性を有し、内部空間13にて動物(ここではコオロギ)の飼育を行えるものであればよい。空気循環部14は、飼育ケース部12への空気の供給と、飼育ケース部12からの空気の回収とを行えるものであればよい。また、飼育ケース部12は、空気を取り込むための導入口(循環空気導入口18)と、空気を排出するための排出口(循環空気導出口20)と、を有するものであればよい。さらに、空気清浄部16は、空気を浄化するものであればよい。
【0012】
図1の例では、飼育ケース部12、空気循環部14、及び、空気清浄部16は、それぞれ直方体の箱(容器)として模式的に示されている。飼育ケース部12、空気循環部14、及び、空気清浄部16の形状は、上述のような機能を発揮できるものであれば、どのような形状であってもよい。
【0013】
飼育ケース部12と空気循環部14は、空気の循環(空気循環)が可能なように接続されている。具体的には、飼育ケース部12と空気循環部14は、循環空気導入管22と、循環空気導出管24とを介して接続されている。
【0014】
飼育ケース部12は、前述のように循環空気導入口18と循環空気導出口20を有している。また、空気循環部14は、循環空気供給口30と、循環空気回収口32を有している。循環空気導入管22は、飼育ケース部12の循環空気導入口18と、空気循環部14の循環空気供給口30とに接続されている。循環空気導出管24は、飼育ケース部12の循環空気導出口20と、空気循環部14の循環空気回収口32とに接続されている。循環空気導出管24の途中の部位には、空気清浄部16が配置されている。
【0015】
循環空気導入管22及び循環空気導出管24の、飼育ケース部12及び空気循環部14との接続は、各接続口(循環空気導入口18、循環空気導出口20、循環空気供給口30及び、循環空気回収口32)において、循環する空気(循環空気)の漏れ等が無いように行われている。各接続口における循環空気導入管22、及び、循環空気導出管24の接続には、例えば、ストレート型やL字形等といった配管継手を用いることが考えられる。
【0016】
さらに、空気循環部14には、空気取得口34と、空気放出口36とが形成されている。空気取得口34には空気取得配管38が接続され、空気放出口36には空気放出配管40が接続されている。空気取得配管38及び空気放出配管40の、空気取得口34及び空気放出口36への接続にも、配管継手を用いることが可能である。
【0017】
飼育ケース部12、空気循環部14、及び、空気清浄部16は、「飼育系」を構成する。この「飼育系」は、動物(ここではコオロギ)の飼育が行われる空間、領域、及び/又は、まとまり等を表す概念である。飼育系の外は、「飼育作業系」となっている。この「飼育作業系」は、飼育を行う者(飼育者)が、「飼育系」での飼育に必要な行為(飼育行為)を行うための空間、領域、及び/又は、まとまり等を表す概念である。
【0018】
<空気循環部14>
空気循環部14は、飼育ケース部12に空気を流し、飼育ケース部12との間で空気を循環させる機能を有する設備である。空気循環部14に空気循環の機能を発揮させるために、例えば、空気循環部14の内部に、各種のファン装置(図示略)を設置する。
【0019】
空気循環部14の内部において、ファン装置を作動させて送風を行うことにより、循環空気導入管22を介して、飼育ケース部12に空気を導入することが可能となる。さらに、ファン装置の作動により、循環空気導出管24を介して、飼育ケース部12内の空気を押し出し、飼育ケース部12内の空気を排出することが可能となる。ここで、図1中の矢印A0は、循環空気が流れる方向を示している。
【0020】
空気循環部14の内部におけるファン装置により、空気に流動性が与えられ、循環空気は、空気循環部14、飼育ケース部12、空気清浄部16、空気循環部14、・・・の経路で流れる。
【0021】
なお、例えば、空気循環部14の内部に、飼育ケース部12との間の空気循環のためのファン装置(第1ファン装置)と、外気の取り込み、及び、飼育ケース部12から戻ってきた空気の放出を行うためのファン装置(第2ファン装置)とを個別に備えてもよい。また、このように2種類のファン装置を備える場合には、いずれか一方(又は複数のうちの一部)のファン装置を、空気循環部14の外に配置してもよい。
【0022】
また、ファン装置に限らず、他のタイプの送風機や、空気ポンプ(エアーポンプ)等を用いることも可能である。空気取得配管38、送風機、及び、エアーポンプといった機器は、連続的に、又は、断続的に、循環空気の一部を外部の空気(外部空気)と入れ替えるための機器として機能する。
【0023】
空気循環部14は、飼育ケース部12に流す空気の温湿度(温度及び/又は湿度)を調整する機能を有している。温湿度の調整は、例えば、空気循環部14に、加熱器(ヒータ)、冷却器、空気調和機、加湿器等といった各種の機器(温湿度調整機器、温湿度調整部)を備え、これらを利用して行うことが可能である。空気循環部14の、空気の温湿度を調整する機能により、飼育ケース部12と、空気循環部14との間の循環空気の温湿度を、飼育に適した状態に調整することが可能となる。
【0024】
温度に関しては、例えば、30°程度であることが望ましい。湿度に関しては、湿度を、50%以下(例えば30~50%)に保つことが望ましい。また、湿度の調整に関しては、加湿を要する場合に比べて、除湿を要する場合が多くなると考えられる。そして、低湿度での長時間の作業は、飼育者にとって酷であることから、飼育系と飼育作業系を分け、飼育者が飼育系の外で作業できるようにすることは有効である。
【0025】
ここで、動物飼育装置10が外部の熱源を利用できる場合には、加熱器(ヒータ)の代わりに、当該熱源を、空気に係る温湿度の調整に用いてもよい。動物飼育装置10が外部の熱源を利用できる場合としては、例えば、飼育工場に付帯した他の設備の排熱を、動物飼育装置10で利用できる場合等が挙げられる。本実施形態のように、密封された空間(内部空間13)で飼育を行うことにより、熱を逃してしまうことを防止できる。
【0026】
以上説明したような空気循環部14を備えることにより、コオロギの飼育環境(飼育系など)や、飼育工場内の人が働く環境(飼育作業系など)における空気を良好に保つことが可能となる。具体的には、飼育ケース部12において動物(ここではコオロギ)の飼育を行うことにより、飼育ケース部12内の空気に、例えば、糞や死体から発生するアンモニア等のような、有毒成分(有毒物質)や臭い成分(臭い物質)が混ざる。有毒成分には、コオロギにとっての有毒成分を含む。臭い成分には、人間が臭いと感じる成分を含む。以下では、有毒成分及び臭い成分を併せて「有毒成分等」と称する。
【0027】
有毒成分等の濃度が高まると、生体(ここではコオロギ)の飼育に悪影響が生じ得る。この点は、本実施形態のように、オープン空間ではなく、密閉された空間で飼育を行うタイプの動物飼育装置10においては顕著である。しかし、空気循環部14を備えることにより、空気循環が行われ、飼育ケース部12の内部の空気が入れ替わることから、有毒成分等の濃度を低下させることができ、許容される程度(許容濃度程度)に保つことが可能となる。なお、循環経路の全体でみれば、空気循環を行うだけでは有毒成分濃度が上昇してしまう。そこで、前述の空気清浄部16により、有毒成分等を除去することが有効である。空気清浄部16の詳細については後述する。
【0028】
また、生体(ここではコオロギ)の呼吸によるO濃度の減少や、CO濃度の上昇により、循環経路の全体における濃度バランスが崩れることが考えられる。そして、(有害成分等の濃度上昇と同じく、) O、COの濃度バランスが崩れることにより生体の飼育に悪影響が生じ得る。このため、外気と循環空気とのやり取り(入れ替え)によって、濃度バランスを保つことが可能である。具体的には、本実施形態においては、空気循環部14に、空気取得配管38と空気放出配管40が設けられている。空気循環部14には、空気取得配管38を介して新鮮な外気が取り込まれる。また、空気放出配管40を介して、空気循環部14から放出される空気の流れも生じる。空気循環部14には、飼育ケース部12から戻ってきた循環空気も含まれている。したがって、循環空気と外気との入れ替えが可能である。そして、外気と循環空気とのやり取りによっても、飼育ケース部12に供給される空気について、OやCO等の濃度バランスを、許容される程度(許容濃度程度)に保つことが可能となる。なお、本実施形態において、空気取得口34、空気放出口36、空気取得配管38、及び、空気放出配管40は、空気循環部14に配置されているが、これに限定されず、例えば、空気清浄部16や、配管部分(循環空気導入管22や循環空気導出管24の途中の部位など)に設けてもよい。また、空気取得配管38と空気放出配管40を用いた濃度や濃度バランスの調整と、空気清浄部16(後述する)を用いた濃度や濃度バランスの調整とのうち、いずれか一方のみを行うようにしてもよい。
【0029】
なお、例えば、1つの(1台の)空気循環部14に対して、複数の飼育ケース部12を接続してもよい。そして、そのようにする場合の接続態様は、図2(a)に示すような並列であっても、或いは、図2(b)に示すような直列であってもよい。また、複数の飼育ケース部12の接続は、例えば、直列と並列の組み合わせであっても良い。なお、図2(a)、(b)の例では、各飼育ケース部12に空気清浄部16が1対1の関係で付加されているが、空気清浄部16を、循環空気導出管24における共用部分(集合部分)に配置してもよい。このようにすることで、空気清浄部16の数を低減できる。
【0030】
ここで、図1の例において、飼育ケース部12の長さ方向(ここではX方向)の大きさは1.5m程度となっているが、飼育のための空間をより大きく確保したい場合は、図2(a)、(b)のように、複数の飼育ケース部12を接続して、飼育のための設備を大型化することが可能である。ただ、飼育のための設備を大型化することにより、飼育に利用される空間を清浄に保つための負担や、コオロギの収穫(回収)のための負担が増える。したがって、飼育のための設備については、過度な大きさにならないよう、適度なサイズを選択することが望ましい。
【0031】
<空気清浄部16>
空気清浄部16は、循環空気導出管24の途中の部位に配置されており、空気清浄部16には、後述するように飼育ケース部12から導出された循環空気が導入される。空気清浄部16は、導入された空気を浄化して排出し、循環空気内の有毒成分等を除去する。
【0032】
空気清浄部16の内部には、フィルター等の空気清浄部材、或いは、空気清浄機器が設置されている。フィルターは、例えば、除去の目的とする成分に合わせて設置することが望ましい。また、フィルターとして、例えば、活性炭を用いたものを例示できる。フィルターは、着脱が可能であり、交換できるものであることが望ましい。
【0033】
なお、フィルターに代えて、或いは、フィルターと共に、殺菌灯を用いて、循環空気の浄化を行ってもよい。殺菌灯は、例えば、UV光を出力するものとすることが可能である。ここで、「殺菌」の用語は、本実施形態では、例えば、除菌や滅菌を含む意味で用いられている。
【0034】
<飼育ケース部12>
次に、飼育ケース部12において装備することが可能な各種の構成(図3図12に示す構成、及び、その他の構成)について順に説明する。なお、以下では、各種の構成を個別に説明するが、特に支障が生じない限りは、1つの動物飼育装置10において、複数の構成を適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0035】
<<循環空気の経路>>
飼育ケース部12は、動物の飼育や収穫に適した機能を持つ設備である。具体的には、飼育ケース部12は、図3に概略的に示すように、循環空気により内部を全体的に換気することが可能である。
【0036】
図3には、飼育ケース部12の、換気に関する内部構造が示されている。飼育ケース部12の内部空間13においては、循環空気導入管22が、天井部46から底部48に向かって直線状に延びている。なお、循環空気導入管22は、飼育ケース部12の内部空間13において屈曲(湾曲を含む)して形成されていてもよい。
【0037】
飼育ケース部12の内部には、通気部50が設置されている。通気部50は、板状(又はシート状)の形態を有しており、飼育ケース部12の内部に水平に(XY平面に沿って)設置されている。そして、通気部50は、飼育ケース部12の内部空間13を、上方空間部52と下方空間部54とに区画している(仕切っている)。上方空間部52は、コオロギが放たれ、コオロギを飼育するための空間として使用される。
【0038】
通気部50の素材としては、例えば、コオロギが通り抜けるのを防止できる程度の孔や隙間等を有するものを採用可能である。通気部50の素材として、具体的には、例えば、多数の小穴を有するパンチパネルや網材、適度な剛性及び通気性を有する不織布、等といったものを挙げることができる。
【0039】
なお、コオロギを、例えば、卵から成虫まで飼育する場合には、通気部50の素材は、卵の落下を防ぐことができるものであることが望ましい。また、孵化した後の幼虫から飼育する場合には、コオロギの、飼育開始される齢における一般的な大きさに応じて、素材を選択することが望ましい。さらに、十分に乾燥して収縮した糞が、下方空間54に落下可能な素材が用いられていてもよい。
【0040】
循環空気導入管22は、通気部50を貫通しており、循環空気導入管22の出口58は、下方空間部54に位置している。循環空気導入管22は、循環空気を、矢印A1で示すように飼育ケース部12の内部空間13に導入し、出口58から吹き出す。通気部50は、矢印Bで示すように、下方空間部54の空気を上方空間部52へ通過させる。
【0041】
飼育ケース部12の天井部46には、循環空気導出管24の入口60が開口している。循環空気導出管24は、上方空間部52の空気を、矢印A2で示すように吸い込み、飼育ケース部12の外部に設けられている空気清浄部16の側へ導出する。
【0042】
以上説明したような飼育ケース部12を用いることにより、より高性能な動物飼育装置10を提供することができる。具体的には、本実施形態の動物飼育装置10によれば、飼育ケース部12における循環空気の導入や導出を、連続して行うことが可能となる。そして、循環空気の導入や導出を行うことで、飼育ケース部12の内部空間13に有毒成分等が発生しても、有毒成分等の濃度を、昆虫に影響の無い濃度以下に保つことが可能となる。
【0043】
これらの結果、飼育ケース部12内の掃除の頻度を低減させることが可能となる。また、コオロギの飼育環境である飼育系と、飼育工場内の人が働く環境である飼育作業系とを、明確に分けて構築することが可能となる。そして、飼育作業系の環境を、コオロギの飼育に適した温度や湿度、及び、コオロギの飼育に伴い発生する臭いなどと分離でき、飼育作業系における作業環境を向上できる。
【0044】
また、コオロギの糞や死体等は、通気部50の上部に溜めることができる。さらに、循環空気導入管22の出口58と、循環空気導出管24の入口60とが、上下方向(ここではZ方向)の対角に配置できる。そして、下部に配置された出口58と、上部に配置された入口60との間で、連続して循環空気を流すことにより、循環空気を、飼育ケース部12の内部区間に行き亘らせることができ、滞留を防止して、良好な換気を行うことが可能となる。さらに、連続して常時、循環空気の流れを形成し、滞留を防止することにより、空気中の微生物等を原因とするウィルスの空気感染を防ぐことも可能となる。
【0045】
また、通気部50により、コオロギが放たれる空間(ここでは上方空間部52)と、循環空気が吹き出される空間(ここでは下方空間部54)とを区画できる。そして、上方空間部52に存在するコオロギに循環空気が直接的に吹き付けられるのを防止できる。この結果、循環空気がコオロギに当たることによって飼育に悪影響が及ぶ、といった事態が生じるのを防止できる。
【0046】
また、循環空気導入管22の出口58、及び/又は、循環空気導出管24の入口60に、循環空気の通過を許容し、コオロギ(幼虫及び成虫)の通過を禁止するようなフィルター(例えば、網や不織布等を利用した仕切り)26、28を装着することが可能である。このようにすることにより、コオロギが、循環空気導入管22や循環空気導出管24に脱走することを防止できる。
【0047】
ここで、循環空気導入管22における出口58と、循環空気導出管24における入口60の位置関係は、循環空気の流れを考慮して決定することが望ましい。図3の例において、循環空気導入管22の出口58と、循環空気導出管24の入口60の位置は、飼育ケース部12の長さ方向(ここではX方向)の各端部であって、且つ、幅方向(Y方向)の中間部となっている。これに対し、図4(a)~(c)は、出口58と入口60の位置に係る変形例を示している。
【0048】
図4(a)は、飼育ケース部12を上方から(ここではZ方向の矢印と逆向きに)平面視した状態を概略的に示している。図4(a)の例では、循環空気導入管22の出口58と、循環空気導出管24の入口60の位置は、飼育ケース部12の長さ方向(X方向)の各端部であって、且つ、幅方向(Y方向)における逆側(対角)の端部となっている。このようにすることで、一方の角部に導入された循環空気を、対角に位置する他方の角部において導出することができ、内部空間の全体を効率よく換気することが可能となる。
【0049】
また、循環空気導入管22、及び/又は、循環空気導入管22を、飼育ケース部12の内部空間13において複数に分岐させてもよい。また、循環空気導入管22、及び/又は、循環空気導入管22の数を複数としてもよい。これらの場合には、出口58及び/又は入口60の数が複数となる。
【0050】
図4(b)、(c)は、出口58及び入口60の数を複数とした場合の配置例を示している。図4(b)の例では、複数(ここではそれぞれ4つ)の出口58及び入口60が、飼育ケース部12の長さ方向(X方向)の各端部であって、且つ、幅方向(Y方向)に延びる二辺(対辺)に沿った領域に配置されている。このようにすることで、広範囲の換気を効率よく行うことが可能となる。
【0051】
さらに、図4(c)の例では、複数(ここではそれぞれ8つ)の出口58及び入口60が、飼育ケース部12の長さ方向(X方向)及び幅方向(Y方向)の各端部であって、且つ、長さ方向(X方向)及び幅方向(Y方向)に延びる各二辺(対辺)に沿った領域に配置されている。このようにすることで、広範囲の換気を、例えば図4(b)の例に比べて、より一層効率よく行うことが可能となる。
【0052】
なお、出口58及び/又は入口60の配置は、図1図4(a)~(c)に例示されたものに限らず、種々に変形することが可能である。また、何れの場合においても、循環空気導入管22の出口58(複数のうちの一部であってもよい)を、飼育ケース部12の内壁面62に向け、下方空間部54の内壁面62で反射させる、といったことも可能である。
【0053】
<<光源部66の設置>>
また、飼育ケース部12の内部には、図5に示すように、光源部66を設置することが可能である。光源部66は、環境再現光を、飼育ケース部12の内部に照射する。環境再現光は、コオロギの生育を促した光であり、例えば、予め行われている実験等により、コオロギの生育を促進することが確認されている光である。
【0054】
予め行われている実験等においては、例えば、光源の有無の条件のみを異ならせ、その他の条件を共通として飼育を行った場合に、良好な飼育結果が得られたか否かが調べられる。そして、良好な結果が得られた光源が、光源部66の光源として選定される。
【0055】
このような光源部66は、点灯時間や光の強度の条件を変更することにより、自然環境における昼夜を模擬的に再現する。これらの条件は、前述の「予め行われている実験等」において得られた条件であってもよい。また、光源部66の点灯態様の変更は、人手により行われるものであってもよい。或いは、図示は省略するが、光源部66を光源制御部に接続し、光源制御部により自動制御を行って、光源部66の点灯態様の変更を行ってもよい。
【0056】
なお、光源部66を、可視光(可視光線)を出力するもの(蛍光灯、LED光源など)とすることが考えられる。また、コオロギの飼育に支障がなければ、光源部66を、可視光とUV光とを出力するものとしてもよい。UV光としては、例えば、太陽光と同等なUVレベルのものが採用される。発明者等の知見では、UV光の照射が、コオロギ等の昆虫の脱皮不全を解消する効果を発揮する場合がある。したがって、UV光は、脱皮を良好に行わせることができ、且つ、コオロギにダメージを与えないレベルのものであることが望ましい。
【0057】
また、循環空気に対するの殺菌は、前述した空気清浄部16のUV光で行い、光源部66は、コオロギの育成を促進するもの、とすることが可能である。また、光源部66によっても、コオロギにダメージを与えないレベルの殺菌が行うようにすることが可能である。
【0058】
また、複数の光源部66として、異なる種類の光を出力する光源を採用し、複数種類の光(例えば、波長及び/又は色が異なる光)を照射してもよい。さらに、光源部66は、光源にレンズ素子、偏向素子、鏡(ミラー)等といった光学素子を組み合わせたものであってもよい。
【0059】
さらに、光源部66のサイズ、配置、数等は、コオロギの飼育に有効な範囲で、任意に設定することが可能である。また、コオロギの飼育に良好な結果が得られるものであれば、光源部66は、不可視光(不可視光線)のみを出力するものであってもよい。
【0060】
以上説明したような光源部66を備えることにより、より高性能な動物飼育装置10を提供することができる。
【0061】
<<足場部70の設置>>
飼育ケース部12の内部には、図6(a)~(c)に示すように、足場部70を設けることが可能である。足場部70は、コオロギが掴まることが可能なものであり、図6(a)、(b)の例では、足場部70が、飼育ケース部12の内部に複数設けられている。各々の足場部70は、シート状(又は板状)の形態を有している。足場部70は、適度に可撓性を有するものであってもよく、或いは、容易には撓まない程度の剛性を有するものであってもよい。足場部70を多数備えることにより、限られた大きさの内部空間13内に、飼育のための領域の面積を、より大きく確保することが可能となる。
【0062】
図6(a)、(b)に示すように、棒状の足場支持部材72が、複数の足場部70における上部を貫通している。足場支持部材72の断面形状は、真円状、楕円状、三角形状、四角形状、及び、多角形状等の何れであってもよい。さらに、足場支持部材72は、単数であっても、複数であってもよい。
【0063】
足場支持部材72は、飼育ケース部12の内壁面62に固定されており、X方向に延びている。足場支持部材72の固定方法としては種々の方法を採用することが可能である。図6(a)、(b)に示す足場支持部材72は、図6(c)に拡大して示すように、軸方向における両方の端部74(一方のみ図示)がT字状に形成されている。
【0064】
内壁面62には、係止受部76が突出するよう設けられている。係止受部76は、足場支持部材72の端部74を係止されることが可能な構造を有しており、足場支持部材72の両端部74が、係止受部76に引掛けられている。そして、足場支持部材72は、飼育ケース部12の上方空間部52において、両持ち支持されている。さらに、足場支持部材72により、複数の足場部70が、互いに等間隔で平行に並べられた状態で、吊り下げられている。
【0065】
図示は省略するが、足場部70のシート面(又は板面)には、コオロギが掴まり易くなる程度の凹凸が形成されている。この凹凸は、足場部70の表裏のシート面(又は板面)に形成してもよく、或いは、一方のシート面(又は板面)に形成してもよい。凹凸の形成のために、足場部70の表面に、例えば、故意に傷を付けて、表面を荒らす(表面粗さを大きくする)ことが可能である。足場部70の材料には、例えば、合成樹脂や金属を採用することが可能である。足場部70の材料に樹脂を採用した場合には、凹凸の形成が容易である。
【0066】
ここで、足場部70に形成された凹凸の大きさ(深さや幅など)を異ならせることによって、コオロギにとっての掴まり易さが異なる傾向がある。例えば、サイズが大きいコオロギは、相対的に小さい凹凸には掴まり難く、大きい凹凸には掴まり易い。このため、例えば、足場部70ごとに凹凸の大きさを異ならせることにより、コオロギの大きさごとに、コオロギの選り分け(棲み分け)が可能となる。
【0067】
また、コオロギ等を飼育する場合、状況によって、コオロギが共食いを行う場合がある。共食いは、サイズの異なるコオロギが混在する状況において、サイズが大きく相対的に強いコオロギが、サイズが小さく相対的に弱いコオロギを捕食することにより行われる場合が多い。このため、凹凸の大きさが異なる複数の足場部70を設置することにより、例えば、凹凸の小さい足場部70や、足場部70における凹凸の小さい領域を、サイズの小さいコオロギの逃げ場とすることなどができる。さらに、サイズの異なるコオロギが1つの足場部70に混在するのを抑制できる。これらの結果、共食いの頻度を低減することが可能となる。
【0068】
また、凹凸に関しては、凹凸を後付けする(追加工する)ことに限らず、例えば、足場部70を、成形型を用いて形成する場合に、成形型の内面に予め適度な凹凸を形成しておくことも可能である。さらに、足場部70は、例えば、卵の紙製包装容器や青果トレー等に用いられているパルプモールドの素材(パルプモールド材)により形成されたものであってもよい。パルプモールド材は、一般に、適度に粗い表面(凹凸のある表面)を有している。さらに、凹凸は、肉眼で視認可能な程度の大きさであっても、或いは、肉眼では視認できない程度の大きさのものであってもよい。
【0069】
以上説明したような足場部70を備えることにより、より高性能な動物飼育装置10を提供することができる。
【0070】
なお、図6(a)、(b)の例では、足場部70は、上方空間部52において垂直に吊り下げられているが、これに限定されず、例えば、図7(a)に示すように、斜めに向けられていてもよい。さらに、足場部70は、図7(b)に示すように、水平に向けられていてもよい。これらのようにすることで、コオロギが足場部70に掴まる際の負担を低減することが可能となる。
【0071】
また、飼育ケース部12に付加的に設けられる足場部70に加えて、飼育ケース部12の内壁面62や天井部46を足場部として利用してもよい。さらに、図6(a)~(c)や図7(a)、(b)に示すように、飼育ケース部12に足場部70を付加することは行わず、図示は省略するが、例えば、飼育ケース部12の内壁面62や天井部46を足場部として利用してもよい。また、足場部70のようなシート体(又は板体)を、飼育ケース部12の底部48に、敷き詰めるように並べて配置してもよい。
【0072】
さらに、1つの足場部70において、凹凸の大きさを変化させる、といったことも可能である。例えば、図6(a)、(b)の例の足場部70において、上部では相対的に小さな(或いは大きな)凹凸を形成し、下部では相対的に大きな(或いは小さな)凹凸を形成する、といったことが可能である。
【0073】
<<収穫を容易にするための構造>>
飼育ケース部12に、内部空間13と、飼育ケース部12の外部空間78とを空間的に繋げて気密性を解除する開閉部(後述する)を備えることが可能である。このような開閉部を備えることにより、飼育ケース部12に、コオロギの収穫を容易にするための構造を設けることが可能となる。
【0074】
例えば、飼育ケース部12の一部を開閉又は取り外しが可能な構造とすることで、開放部を形成することが可能である。以下では、開閉又は取り外しを「開閉等」と称する場合がある。
【0075】
開放部の位置や大きさは、例えば、飼育ケース部12の上部77における一部又は全部とすることが考えられる。例えば、図8(a)は、飼育ケース部12の天井部46を構成する上部77に、開放部として蓋部80を設けた例を示している。蓋部80は、通常は、飼育ケース部12の上部77における一部を構成しているが、コオロギの収穫を行うときや、後述するような給餌を行うときに、開放され、内部空間13と外部空間78とを空間的に繋げる。
【0076】
また、図8(b)は、飼育ケース部12の上部77における全部を蓋部82(開放部)とした例を示している。蓋部82は、通常は、二点鎖線で示すように、飼育ケース部12の上部77における全部を構成しているが、コオロギの収穫を行うとき等に、矢印Cで示すように開放され、内部空間13と外部空間78とを空間的に繋げる。
【0077】
図8(a)又は(b)のように開放部(蓋部80、82)を設けることにより、開放部(蓋部80、82)を開放し、飼育ケース部12を逆さに向けて(天地を逆に向けて)、下向きの開口部(開口部81、83)からコオロギを回収すること等が可能である。そして、開放部(蓋部80、82)を備えることにより、より高性能な動物飼育装置10を提供することができる。なお、開放部(蓋部80、82)の周囲に、例えば、ゴムパッキン等のシール体(図示略)を装着し、開口部(開口部81、83)を閉じている状況では、十分な気密性を保てるようにすることが望ましい。
【0078】
飼育ケース部12において、開閉等が可能な位置は、コオロギの回収の方法に応じて決めることが可能である。例えば、飼育ケース部12の複数の側部84~87のうち、一部又は全部に、図8(a)に示す蓋部80と同様な蓋部を設けてもよい。さらに、例えば、図9に矢印Dで示すように、側部84~87から上の部分を全て取り外せるように構成してもよい。この場合は、側部84~87から上の部分により、着脱可能な蓋部90が構成される。
【0079】
なお、コオロギの回収の際には、生きているコオロギ(生体)と、糞や死体などとを篩(ふるい)にかけて、生体とその他とを分別することが可能である。また、コオロギの回収時に、例えば、循環空気導入管22を利用して、飼育ケース部12の内部空間13にCOを導入し、COの濃度を高めて、一時的にコオロギを気絶させる、といった方法も採用が可能である。コオロギを一時的に気絶させることで、回収時にコオロギが、飼育ケース部12の外部に逃げ出すのを防止できる。
【0080】
<<給餌等のための構造>>
飼育ケース部12には、給餌や給水等(以下では「給餌等」と称する)のための構造を採用することが可能である。図10(a)は、飼育ケース部12に餌場部92が設置された状態を示している。
【0081】
図10(a)の例において、餌場部92は、図10(b)に拡大して示すように、矩形の板状に形成されている。餌場部92の板面94には、餌入れ用凹部96や、水入れ用凹部98が形成されている。餌入れ用凹部96に餌100が入れられ、水入れ用凹部98には、水が入れられていない状態が示されている。図10(b)の例では、模式的に示すコオロギ101が、足場部70を伝って餌場部92に近づき、矢印Eで示すように、餌場部92へ移って、餌100等を摂取することが可能である。
【0082】
なお、餌入れ用凹部96や水入れ用凹部98の大きさ、数、位置等は、飼育するコオロギ101の数等の事情に応じて、任意に決定できる。また、餌場部92の表裏の板面94、102に、餌入れ用凹部96や水入れ用凹部98を形成することも可能である。
【0083】
なお、給水に関して、例えば、脱脂綿やスポンジ等のような素材からなる吸水体(図示略)に水分を含ませて、この吸水体を餌場部92に載置してもよい。また、餌場部92を、脱脂綿やスポンジ等のような素材により形成することも可能である。さらに、餌100として、例えば、野菜やゼリー等といった、水分を含んだ固形物を用いることも可能である。
【0084】
図10(a)、(b)の例において、餌場部92の角度を変更できるようにすることが可能である。例えば、図10(b)に示すように、餌場部92を回転可能に支持する支持アーム104を、天井部46に設ける。支持アーム104の先端部が、餌場部92に係止しており、餌場部92は、支持アーム104により2点で支持されている。
【0085】
餌場部92は、支持アーム104によって、板面94を水平に、且つ、上に向けた状態で停止している。餌場部92の姿勢の維持は、例えば、支持アーム104との間の摩擦力を利用して行うことが可能である。或いは、支持アーム104の先端に、例えば、ラチェット機構等を設けて、餌場部92の姿勢を水平に維持できるようにすることも可能である。さらに、支持アーム104の先端にモータやソレノイド等を設置し、電力を供給して、餌場部92の角度を変更するようにしてもよい。
【0086】
餌場部92は、支持アーム104が係止した2点を結ぶ線(X方向に平行な線)Fを軸として、矢印Gで示すように、正逆方向へ回転することが可能である。餌場部92の角度の変更は、飼育者(図示略)が手指で餌場部92を回転させて行うことが可能である。図10(a)、(b)の例では、天井部46における、餌場部92の真上に位置する部位が、開放可能な蓋部106となっている。この蓋部106は、図8(a)の蓋部80と同様のものとすることが可能である。
【0087】
飼育者(図示略)は、蓋部106を空け、開口部107から手指を餌場部92に近付けて、餌場部92を回転させる。また、飼育者(図示略)は、蓋部106を空けて、餌100や水(水を含んだ脱脂綿等でもよい)を、餌場部92に載せることができる。
【0088】
また、このような餌場部92を設けた場合には、餌場部92を回転させることで、板面94、102のいずれかを選択的に上方へ向けることができる。また、不要になった餌100や、餌場部92に乗っている糞等を、下方へ落下させて除去することが可能である。
【0089】
また、蓋部106に、循環空気導出管24を接続してもよい。このようにした場合には、循環空気導出管24を脱着することが可能となる。さらに、循環空気導出管24を吸水に利用することが可能となる。また、循環空気導出管24のメンテナンスが容易になる。さらに、飼育ケース部12の外部に繋がる部分を1つ(1箇所)に集約でき、コオロギが逃げ出すのを防止し易くなる。
【0090】
なお、餌場部92を支持する機構には、例えば、グリス等のようにコオロギに悪影響を及ぼし得る異物を用いることは避けるのが望ましい。したがって、餌場部92を支持する機構は、グリスを要する歯車機構や軸受等を用いず、餌場部92を回転可能なように支持できるものであることが望ましい。このため、例えば、モータやソレノイド等の駆動源を用いて餌場部92を回転させる場合には、これらの駆動源を、飼育ケース部12の内部に配置し、歯車機構等を用いずに、直接的に駆動することが考えられる。
【0091】
以上説明したような餌場部92を備えることにより、より高性能な動物飼育装置10を提供することができる。なお、餌場部92を複数設けることも可能である。餌場部92を複数設けることにより、全てのコオロギに餌100が行き渡り易くなる。また、1つの餌場部92に集まるコオロギの数を抑制できる。ただし、発明者等の知見では、餌場部92で共食いが生じる可能性は低く、餌場部92を1つのみ設けるだけでも、十分に共食いの発生を防止できている。餌場部92の数を少なくすることにより、餌100の補給や、掃除、メンテナンス、等といった作業が容易になる。
【0092】
<<内部の観察を可能にする構造>>
飼育ケース部12には、光透過性を有する窓部を備えることが可能である。図11の例では、飼育ケース部12における側部84の大部分が、透明な部材により形成された窓部110となっている。窓部110の材料としては、例えば、無色透明なガラスやアクリル樹脂などを挙げることができる。
【0093】
このような窓部110を設けることにより、飼育者は、前述の蓋部80、82、88、90、106を開けることなく、飼育ケース部12の内部を観察できる。なお、飼育ケース部12の内部空間13を視認可能であれば、窓部110の材料は、有色透明や半透明な材料であってもよい。そして、窓部110を備えることにより、より高性能な動物飼育装置10を提供することができる。
【0094】
なお、窓部110の大きさは、観察の目的や、窓部110から入射する光の量等といった事情に応じて、任意に決定できる。さらに、窓部110は、側部84~87のうちの複数の側部(例えば、互いに異なる方向を向いた側部84と側部85など)に設けられていてもよく、或いは、全ての側部84~87に設けることが可能である。さらに、窓部110は、上部77や、底部48を構成する下部79に設けることも可能である。また、上部77、側部84~87、及び、下部79のうちの少なくとも一部の全面を窓部110としてもよい。
【0095】
また、窓部110を覆って遮光する遮光部(図示略)を設け、観察時以外は、窓部110が露出しないようにしてもよい。このようにすることで、観察が行われていない場合(非観察時)等に、外光が内部空間13に入射するのを防止できる。さらに、前述の光源部66(図5)と組み合わせた場合には、光源部66をより有効に活用できるようになる。なお、窓部110から入射する光と、光源部66の光とを組み合わせて、前述の環境再現光を構成してもよい。さらに、遮光部としては、板状の蓋、カーテン、ブラインド、貼り付けが可能な遮光シール、等といた種々のものを採用できる。
【0096】
<<殺菌の省人化>>
飼育ケース部12には、内部空間13の除菌が可能な除菌部を備えることが可能である。図5の例において、光源部66に、UV光を出力するものを用いることについて説明した。このような光源部66は、自動的に殺菌を行えるものであるから、殺菌の省人化に寄与する。さらに、これに限らず、他の殺菌機器を用いることも可能である。
【0097】
図12は、除菌部として、燻蒸部112を備えた例を示している。燻蒸部112は、その内部において、例えば、殺菌のための煙を発生させることが可能な設備である。煙は、例えば、水と発熱剤との化学反応に伴って発生するものであっても、或いは、着火剤への着火に伴って発生するものであってもよい。
【0098】
燻蒸部112は、飼育ケース部12にコオロギが存在していない状況において、循環空気導入管22に接続される。そして、燻蒸部112は、発生させた煙を、飼育ケース部12に送り込む。飼育ケース部12の内部空間は、燻蒸部112を用いた燻蒸により、殺菌される。燻蒸部112には、煙を飼育ケース部12へ送り込むためのファン装置を備えることが可能である。また、燻蒸部112と飼育ケース部12との気圧差を利用して、煙を飼育ケース部12へ送り込むことが可能であれば、ファン装置を省略してもよい。
【0099】
以上説明したような燻蒸部112を備えることで、飼育ケース部12の内部空間13に係る殺菌を省人化できる。そして、燻蒸部112を用いることにより、より高性能な動物飼育装置10を提供することができる。
【0100】
なお、殺菌後には、図12に矢印Hで示すように、燻蒸部112が送風部114と交換されるようにすることが可能である。送風部114は、ファン装置を備える。送風部114は、循環空気導入管22を介して、飼育ケース部12内に、換気のための空気を送り込む。送風部114による換気は、飼育ケース部12の内部空間13の環境レベルが、コオロギの生体に悪影響が及ばないレベルに到達するまで行われる。
【0101】
また、燻蒸部112を、例えば、飼育ケース部12と空気循環部14との間に配置することが可能である。この場合は、燻蒸部112で発生した煙を、空気循環部14から飼育ケース部12へ向かう循環空気に混合して、飼育ケース部12の内部空間13に送り込むことが可能である。このようにした場合には、燻蒸部112にファン装置を備える必要がなくなる。
【0102】
また、燻蒸後には、燻蒸部112を除去し、空気循環部14から飼育ケース部12へ循環空気を送り込むことが可能である。この場合には、送風部114を用いることなく、飼育ケース部12内の換気を行うことが可能になる。
【0103】
また、燻蒸は、例えば、図2(a)、(b)の例のように、複数の飼育ケース部12を接続した場合にも行うことが可能である。これらの場合には、複数の飼育ケース部12に共通に繋がる共用部分の配管や、複数の飼育ケース部12に個々に繋がる配管に、燻蒸部112を接続して、個々の飼育ケース部12に対する燻蒸を行えるようにする。
【0104】
<実施形態から抽出することが可能な発明>
以上説明したような実施形態から、以下のような発明を抽出することが可能である。
(1)気密性を有し内部空間(内部空間13など)にて動物(コオロギなど)の飼育が行われる飼育ケース部(飼育ケース部12など)と、
前記飼育ケース部への空気の供給と、前記飼育ケース部からの前記空気の回収とを行う空気循環部(空気循環部14など)と、を備え、
前記飼育ケース部が、
前記空気を取り込むための導入口(循環空気導入口18など)と、
前記空気を排出するための排出口(循環空気導出口20など)と、を有する動物飼育装置。
(2)前記内部空間を上方空間部(上方空間部52など)と下方空間部(下方空間部54など)とに区画するとともに前記空気を通過させることが可能な通気部(通気部50など)を備え、
前記空気を、前記下方空間部から前記上方空間部へ通過させ、前記上方空間部にて前記動物の飼育を行う、上記(1)に記載の動物飼育装置。
(3)前記上方空間部に、前記動物が掴まることが可能な足場部(足場部70など)を設けた、上記(2)に記載の動物飼育装置。
(4)前記空気を浄化する空気清浄部(空気清浄部16など)を備えた、上記(2)に記載の動物飼育装置。
(5)前記飼育ケース部に、前記動物の生育を促した環境再現光を照射する光源部(光源部66など)を備えた、上記(2)に記載の動物飼育装置。
(6)前記飼育ケース部に、前記内部空間と、前記飼育ケース部の外部空間(外部空間78など)とを空間的に繋げて気密性を解除する開閉部(蓋部80、82、90、106など)を備えた、上記(2)に記載の動物飼育装置。
(7)前記内部空間に、角度の変更が可能な餌場部(餌場部92など)を備えた、上記(2)に記載の動物飼育装置。
(8)前記飼育ケース部に、光透過性を有する窓部(窓部110など)を備えた、上記(2)に記載の動物飼育装置。
(9)前記内部空間の除菌が可能な除菌部(燻蒸部112など)を備えた、上記(2)に記載の動物飼育装置。
【0105】
<その他>
なお、本発明は、上述した各種の実施形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することや、各種の実施形態を組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0106】
10 :動物飼育装置
12 :飼育ケース部
13 :内部空間
14 :空気循環部
16 :空気清浄部
18 :飼育ケース部導入口
20 :飼育ケース部排出口
22 :循環空気導入管
24 :循環空気導出管
50 :通気部
52 :上方空間部
54 :下方空間部
66 :光源部
70 :足場部
72 :足場支持部材
76 :係止受部
80、82、90、106:蓋部
92 :餌場部
110 :窓部
112 :燻蒸部

【要約】
【課題】より高性能な動物飼育装置を提供する。
【解決手段】気密性を有し内部空間13にてコオロギの飼育が行われる飼育ケース部12と、飼育ケース部12への空気の供給と、飼育ケース部12からの空気の回収とを行う空気循環部と、を備え、飼育ケース部12が、空気を取り込むための循環空気導入口18と、空気を排出するための循環空気導出口20と、を有する。内部空間13を上方空間部52と下方空間部54とに区画するとともに空気を通過させることが可能な通気部50を備え、空気を、下方空間部54から上方空間部52へ通過させ、上方空間部52にてコオロギの飼育を行う。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12