(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】浮上体の浮上高さ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02N 15/00 20060101AFI20241204BHJP
G10K 1/07 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H02N15/00
G10K1/07
(21)【出願番号】P 2021039762
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】392031790
【氏名又は名称】株式会社小泉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】小泉 俊博
(72)【発明者】
【氏名】大路 貴久
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-098127(JP,A)
【文献】特開2016-051166(JP,A)
【文献】特開2019-192672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 15/00
G10K 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力の反発力により浮上する浮上体と、前記浮上体を上昇又は下降制御するための浮上制御部
と、前記浮上制御部の下側に位置制御手段とを備え、
前記浮上制御部は内側コイルと、その外側に同心円状に配置した外側コイルとを有し、
前記位置制御手段は水平方向の位置を制御するための同心円状に配置した複数のコイルと、前記複数のコイルの外側に同心円状に配置した複数の磁石を有することを特徴とする浮上体の浮上高さ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を磁力の反発力にて空中に浮上させる装置に関し、特にその浮上高さを制御できる装置に係る。
【背景技術】
【0002】
同極の磁力は相互に反発力が作用する原理を利用して浮上体に磁石を取り付け、その下側から上方に向けて同極の磁力を作用させることで、浮上体を空中に浮上させることができる。
本出願人は、これまでにベル本体が空中に浮上するベル装置を提案している(特許文献1)。
この特許文献1に開示する浮上ベル装置は、磁力の反発力とベル本体の自重とのバランスにより、所定の高さに浮上させることができるものの、その高さを上下方向に制御できるものではなかった。
そこで本発明は、浮上体の空中における浮上高さを自由に制御できるように改善したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、磁力の反発力にて浮上させた浮上体の浮上高さを制御することができる制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る浮上体の浮上高さ制御装置は、磁力の反発力により浮上する浮上体と、前記浮上体を上昇又は下降制御するための浮上制御部とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記浮上制御部は内側コイルと、その外側に同心円状に配置した外側コイルとを有している態様と、3つ以上の複数のコイルを同心円状に配設してある態様とが例として挙げられる。
本発明における浮上体は、ネオジウム磁石等の永久磁石が固定されているものであれば、各種製品が対象となる。
例えば、おりん,ベル,人形,ランプ,おもちゃ等である。
【0006】
本発明のおいては浮上制御部にて発生する磁力の強さや方向を制御するものであり、浮上体に磁石による反発力を予め付与するために、前記浮上制御部の下側に、磁石による浮上手段を有しているのが好ましく、その場合には前記浮上制御部の下側に、複数のコイルからなる水平方向の位置制御手段を有しているとさらに好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る浮上体の浮上高さ制御装置は、コイルに通電する電流値の制御により、容易に磁力調整ができるのでコンパクトな構造になる。
また、いろいろな浮上体を空中に上昇させたり下降させてベース部に載置した状態にすることができる。
例えば、おりんやベルを空中に浮上させた状態で鳴らすと、音が鳴りやすく余韻も長くなる。
また、人形やおもちゃの場合に上昇させたり下降させることで、空中に浮かんだ動きを楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る浮上体の浮上高さ制御装置の構造例を示す。
【
図2】浮上制御部を基板から取り外した状態の斜視図を示す。
【
図5】(a)は浮上体を下降させる例、(b)は浮上体を上昇させる例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る浮上体の浮上高さ制御装置の構造例を以下、図に基づいて説明する。
【0010】
図1に外観図を示し、
図2に分解図、
図3に斜視図、
図4は
図1の状態の断面図である。
図1に示した例は浮上体20の高さ制御を実験機で検証するために試作したものである。
浮上体20は、直径50mm,厚み2mmの円盤状の軟磁性部材21の上面及び下面に、永久磁石を取り付けた。
N極22は、直径48mm,厚み5mm,S極23は、直径30mm,厚み5mmの円盤状である。
浮上体の質量は、130gで重りを乗せることで質量調整できる。
【0011】
本発明に係る浮上高さ制御装置は、
図2に示すように浮上制御部11とその下側に配置し、基板12に実装した4つの磁石(ネオジウム磁石)13a~13dを有する
なお、8つの磁石でもよい。
また、基板12には同心円状に配置した複数の磁石の内側に鉄芯コイルからなる4つのコイル14a~14dを同心円状に配置してある。
ここで磁石13a~13dは上面側がN極になっていて、浮上体のN極22と反発力が生じている。
4つのコイル14a~14dは、それぞれ鉄芯コイルになっていて、それぞれの磁力は上面側がS極になるように制御され、浮上体20のS極23と対応させるとともに、各コイルの磁力を調整することで浮上体20の水平方向の位置が制御されている。
実験に用いた諸元は次のとおりである。
磁石13a~13d:直径14mm,厚み3.5mm
コイル14a~14d:鉄芯直径6mm,外径20mm,内径8mm,銅線直径0.5mm
【0012】
全体として円盤状の浮上制御部11は、ドーナツ状の外側コイル11aと、その内側に配設した内側コイル11bとからなり、その間に絶縁材11dを介して下側の磁石13a~13dの位置に対応させて配置したスチールからなる軟磁性材11cを設けることで下側の磁石13a~13dの磁力が浮上体に伝播するようになっている。
その諸元を
図7の表に示す。
表中、Outer coilは外側コイル11aに対応し、Inner coilは内側コイル11bに対応している。
この浮上制御部11に通電するための電気回路図を
図8に示す。
この電気回路図を用いて、外側コイル11aと内側コイル11bに互いに逆方向のスタートアップ電流を印加した。
【0013】
電流の増減により、
図5(a),(b)に模式図を示すように浮上体20の高さが上下した。
その際の電流値と、浮上体の下面と浮上制御部11の上面との間の浮き高さ(ギャップ寸法)の関係を
図9のグラフに示す。
この実験結果から、浮上制御部11への通電量を制御することで浮上体を上昇又は下降制御することができることが分かる。
【0014】
なお、上記実施例は外側コイルと内側コイルとからなる浮上制御部11の例である。
磁石13は8つでもよく、その場合の4つのコイル14との位置関係を
図6に示す。
また、
図1に示した外側コイル11aと内側コイル11bとの組み合せの他の例として、鉄芯コイル31~34を
図6に示すように配置して浮上制御部11としてもよい。
このように4つのコイル14と、4つ又は8つの磁石13との配置を中心廻りに少しずらして配置することで、浮上力と水平方向の位置制御のバランスが良くなる。
図6では、水平方向0°に対する左廻りの角度を示す。
このようにすると、鉄芯コイル31~34の電流値を相互に制御することで、浮上体の浮上高さを制御する磁力と水平方向の位置を制御する磁力とを一体的に制御することができる。
【符号の説明】
【0015】
11 浮上制御部
11a 外側コイル
11b 内側コイル
11c 軟磁性材
11d 絶縁体
12 基板
13a 磁石
14a コイル
20 浮上体
21 軟磁性部材
22 N極
23 S極