(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】自己洗浄型抽出部を備えた電気流体力学的プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20241204BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 303
(21)【出願番号】P 2022578721
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 US2021038106
(87)【国際公開番号】W WO2021258001
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-02-17
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511000957
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツェ,ライ・ユィ・レオ
(72)【発明者】
【氏名】バートン,キラ
(72)【発明者】
【氏名】マクミラン,イーサン・ジョン
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-089214(JP,A)
【文献】特開2004-130804(JP,A)
【文献】特表2014-515326(JP,A)
【文献】特開昭55-086770(JP,A)
【文献】特開2007-190728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0033543(US,A1)
【文献】特開2018-012323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気流体力学的プリンタであって、
印刷流体を含むノズルと、
抽出部
とを備え、前記抽出部は、前記ノズルと前記抽出部との間に空間を形成するように配置され、
前記プリンタは、印刷を、
前記ノズルと前記抽出部との間の前記空間において生成された電場を使用して、印刷流体を
前記ノズルから前記抽出部に向けて引き出し、
前記ノズルから前記抽出部に向けて引き出した前記印刷流体を、指向性場を使用して印刷表面に向けて誘導する
ことにより、実行するように構成され、
前記プリンタは
、前記抽出部の洗浄を、洗浄流体の層
を前記抽出部の表面に沿って流
して、前記抽出部の前記表面に付着した漂遊印刷流体を除去することにより、または前記漂遊印刷流体が前記抽出部に接触する前に前記漂遊印刷流体を前記抽出部から運び去ることにより、実行するように、さらに成される、電気流体力学的プリンタ。
【請求項2】
前記抽出部は金属ブロックを備える、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記抽出部は金属ロッドである、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記洗浄流体は液体である、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記表面は、前記洗浄流体の層が前記抽出部の作用端から下方にかつ離れて流れるように、水平に対して非ゼロの角度を形成する、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項6】
水平に対する前記表面の角度が調整可能である、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記表面は下向きの表面である、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項8】
洗浄流体の供給源と収集部とをさらに備え、前記洗浄流体の層は、前記供給源から前記収集部に流れる、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記抽出部上に洗浄流体の層を分注する分注システムをさらに備える、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項10】
印刷中に請求項1に記載の電気流体力学的プリンタの抽出部を洗浄するステップを含む方法。
【請求項11】
前記抽出部は金属ブロックを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抽出部は金属ロッドである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
洗浄流体の層を前記抽出部の表面に沿って流すステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記洗浄流体は液体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記表面は、前記洗浄流体の層が前記抽出部の作用端から下方にかつ離れて流れるように、水平に対して非ゼロの角度を形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
水平に対する前記表面の角度が調整可能である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記表面は下向きの表面である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記洗浄流体の層は、前記抽出部の表面に沿って供給源から収集部に流れる、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
分注システムを使用して前記抽出部上に洗浄流体を分注するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、一般に、印刷に関し、より詳細には、電気流体力学的印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
電気流体力学的印刷は、eジェット印刷としても知られており、印刷表面上に堆積させるために印刷ノズルから帯電したまたは分極した印刷流体を抽出するために電場に依存する印刷技術である。Eジェット印刷は、液滴サイズおよびサブミクロンまたはナノメートルスケールの空間精度を有する他のドロップオンデマンドまたはストリーム印刷方法と比較して、非常に高解像度の印刷が可能である。初期のeジェット印刷は、印刷表面が間に電場が生成される電極の1つであったため、導電性印刷表面に限定されていた。電場との整合性もまた、堆積したインクが印刷の進行に伴って電場との干渉を引き起こすために問題であった。Bartonらの米国特許第9,415,590号明細書は、導電性印刷表面に依存しない巧妙なインク抽出および誘導技術を介してこれらおよび他の問題に対処した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
様々な実施形態によれば、電気流体力学的プリンタは、自己洗浄型抽出部を含む。
【0004】
様々な実施形態では、抽出部は金属ブロックを含む。
様々な実施形態では、抽出部は金属ロッドである。
【0005】
様々な実施形態では、プリンタは、洗浄流体の層が抽出部の表面に沿って流れるように構成される。
【0006】
様々な実施形態では、
洗浄流体は液体であり、
表面は、洗浄流体の層が抽出部の作用端から下方にかつ離れて流れるように、水平に対して非ゼロの角度を形成し、
水平に対する表面の角度が調整可能であり、
表面は下向きの表面であり、および/または
プリンタは、洗浄流体の供給源と収集部とを含み、洗浄流体の層は、供給源から収集部に流れる。
【0007】
様々な実施形態では、プリンタは、抽出部上に洗浄流体の層を分注する気液分注システムを含む。
【0008】
様々な実施形態によれば、本方法は、印刷中に電気流体力学的プリンタの抽出部を洗浄するステップを含む。
【0009】
様々な実施形態では、洗浄される抽出部は、金属ブロックまたは金属ロッドを含む。
様々な実施形態では、本方法は、洗浄流体の層を抽出部の表面に沿って流すステップを含む。
【0010】
様々な実施形態では、
抽出部の表面に沿って流される洗浄流体は液体であり、
表面は、洗浄流体の層が抽出部の作用端から下方にかつ離れて流れるように、水平に対して非ゼロの角度を形成し、
水平に対する表面の角度が調整可能であり、および/または
表面は、下向きの表面である。
【0011】
様々な実施形態では、洗浄流体の層は、抽出部の表面に沿って供給源から収集部に流れる。
【0012】
様々な実施形態では、本方法は、気液分注システムを使用して抽出部上に洗浄流体を分注するステップを含む。
【0013】
上述の実施形態および以下の図面または説明に示される任意の他の実施形態の任意の数の個々の特徴は、特徴が互換性がない場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせて本発明を定義することができると考えられる。
【0014】
図面の簡単な説明
以下、以下の図面と併せて例示的な実施形態を説明するが、同様の符号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】金属ブロックから形成される自己洗浄型抽出部を備える電気流体力学的プリンタの一部を概略的に示す部分側断面図である。
【
図2】金属ロッドから形成される自己洗浄型抽出部を備える電気流体力学的プリンタの一部を概略的に示す部分側断面等角図である。
【
図3】金属ロッドの直径を横切っている、
図2の断面図である。
【
図4】金属ロッドの長さに沿っている、
図2の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態の説明
図1は、自己洗浄型抽出部12を備えた電気流体力学的(またはeジェット)プリンタ10の一部を概略的に示す。抽出部12は、制御可能な電場を使用してインクノズル18から印刷流体16を抽出し、抽出された印刷流体を基材表面または以前に印刷された材料層などの印刷表面20に向けるように構成された印刷ヘッド14の一部である。電場は、ノズル18と抽出部12との間の空間に、それらが異なる電位にあるときに生成される。この例では、電圧(V)がノズル18に選択的に印加され、その結果、ノズルと抽出部12との間に電位が生じ、これは
図1の電気的接地にある。電位が十分に高く、ノズル18と抽出部12との間の距離が十分に小さい場合、電場が発生する。
【0017】
印刷流体16は、それが収容されているノズル18を担当し、したがって生成電場の他端に向かって、すなわち抽出部12に向かって引き込まれる。印刷流体16は、印刷流体が印刷流体の流れ24として抽出されるノズル18の排出開口22部にある、最小抵抗の経路で変形して抽出部に向かって流れる。本明細書で使用される場合、インクまたは印刷流体は、圧力下で流れ、堆積後に凝固させることができる任意の流体である。凝固は、溶媒蒸発、化学反応、冷却、または焼結などの様々な機構を介して行うことができる。場合によっては、印刷流体は機能性インクであり、これは、印刷流体が印刷された表面上で一旦凝固すると、着色以外の機能を提供する印刷流体である。そのような機能の例としては、導電性、誘電特性、物理的構造(例えば、剛性、弾性、または耐摩耗性)、電磁シールドまたはフィルタリング、光学特性、エレクトロルミネッセンスなどが挙げられる。
【0018】
電圧(V)の振幅、時間の関数としての電圧(V)、印刷流体16の粘度などのいくつかの要因に応じて、印刷流体の流れ24は、
図1の挿入図に示すように、印刷流体の連続ジェットまたは一連の個々の液滴であってもよい。例えば、印加電圧(V)がAC電圧またはパルスDC電圧である場合、印刷流体の流れ24は、個々の液滴から構成され得る。高粘度印刷流体などのいくつかの場合において、流れ24は、電圧が交流またはパルスであっても個々の液滴を識別できないように凝集性であってもよい。印刷ヘッド14および印刷表面20が互いに対して移動するにつれて、堆積した印刷流体のパターン26は、電圧(V)関数と印刷表面に対する印刷ヘッドの位置との調整によって制御および画定され得る。電圧(V)は、生成された場がノズル先端で印刷流体のテイラーコーンを維持するのに十分であるが抽出には不十分である10V~300V(例えば、200~300V)のベースライン範囲を有することができる。引き出し電圧(V)は、300V~1000V(例えば、400~700V)の範囲であり得る。もちろん、これらは例示的な範囲にすぎない。
【0019】
図示された印刷ヘッド14はまた、抽出された印刷流体を印刷表面20に向けるために指向性場を使用する。この場合、指向性場は、ダイレクタノズル28と印刷表面20との間に生成されるガス流場である。ガス流場は、印刷表面20の方向にノズル28から排出されるガス30のジェットによって生成される。上述のBartonらの米国特許に開示されているような静電指向性場など、他のタイプの指向性場も可能である。
【0020】
もちろん、プリンタ10は、いくつかの例を挙げると、ベース、印刷ヘッド14および印刷表面20を互いに対して移動させるための移動機構、複数のインクノズル18または抽出部12または指向性場発生部、オンボードインク供給源、ノズル内の印刷流体16を加圧するための手段、空気圧または他の気体コネクタ、印刷流体および/またはガス30のジェットのための圧力コントローラ、または抽出場を選択的に生成するための1つまたは複数の電源および関連するコントローラなど、図示されていない他の構成要素を含むことができる。図示された抽出部-ノズル-ダイレクタの組み合わせは例示にすぎず、以下に説明する自己洗浄機能を任意のeジェット抽出部と共に使用できることも理解されたい。
【0021】
本明細書で使用される場合、自己洗浄型抽出部は、電気流体力学的印刷ヘッドの任意の抽出部であり、印刷ヘッドは、抽出部の表面から印刷流体を洗浄するように構成された1つまたは複数の構成要素を含む。これらの構成要素は、印刷ヘッド14の一体部分であり、例えばプリンタ動作中に印刷ヘッドと共に移動する。したがって、プリンタ10または印刷ヘッド14は、抽出部12からの漂遊印刷流体を洗浄するために分解される必要はない。いくつかの実施形態では、抽出部12は洗浄され、たとえ漂遊印刷流体が抽出部に向かう軌道上にある場合でも、印刷中に実質的に清浄なままである。実際、以下の説明から明らかになるように、自己洗浄機能は、漂遊流体が抽出部に接触する前に、漂遊印刷流体を捕捉し、それを抽出部12から運び去るように動作することができる。
【0022】
図1の例では、プリンタ10は、洗浄流体32の層が抽出部12の表面34に沿って流れるように構成される。図示の抽出部12は、ノズル18から離れる方向(
図1のx方向)に細長い。洗浄流体32は、印刷流体16が可溶な有機溶媒(例えば、アセトンまたはアルコール)などの液体であり、洗浄流体の層は、ノズル18に最も近い抽出部12の作用端36から、ノズルから離れた反対側の端38に向かって流れる。
【0023】
印刷ヘッド14の洗浄システム40は、洗浄流体の供給源42および収集部44を含むことができる。
図1の例では、供給源42はノズルの形態のディスペンサであり、収集部44は収集管である。ディスペンサ42は抽出部12の作用端36に配置され、収集部44は抽出部の反対側の端38に配置される。洗浄流体32は、ディスペンサ42の出口端から抽出部の外面34上に流れる。この場合、洗浄流体32は、抽出部表面34のほぼ垂直な部分に沿って分注され、表面を下方にたどり、次いで屈曲部46に沿って表面の下向きの部分に至り、この部分が作用端36から離れて収集部44に洗浄流体の層を導き、そこで洗浄流体および洗浄流体によって捕捉された任意の印刷流体は、例えば真空によって収集部に引き込まれる。
【0024】
洗浄流体32の層は、この場合にはディスペンサ42と収集部44との間の表面34の一部である抽出部表面34の少なくとも一部に沿って大気に露出される。大気に露出された場合、洗浄流体32の層は、追加のプリンタ構成要素によって支持されず、洗浄流体の凝集力(例えば、表面張力、粘度など)によって重力に抗して抽出部表面34に付着したままである。表面34の下向き部分は、洗浄流体を抽出部12の作用端36から離れる所望の方向に流すために、水平に対して非ゼロの角度(α)にある。
図1の例では、角度(α)は約5度である。この角度(α)は、制限された動作可能範囲を有することができる。角度(α)が小さすぎると、洗浄流体32が所望の方向に流れない可能性がある。角度(α)が大きすぎると、洗浄流体の層の結果として生じる流量は、収集部44が捕捉するには高すぎる可能性がある。また、角度(α)が大きいほど、抽出部12の所与の長さ(L)に対する印刷ヘッド14と印刷表面20との間の利用可能な距離(H)は小さくなるか、または、印刷表面からの所与の距離(H)に対する利用可能な長さ(L)がより小さくなる。収集部44は、例えば、印刷流体の流れ24の軌道に対する望ましくない影響を回避するために、ノズル18からいくらかの最小距離だけ離間される必要があり得る。
【0025】
プリンタ10は、角度(α)が調整可能に構成されてもよい。例えば、抽出部12は、水平軸(A)を中心に回転し、表面34の向きを調整および固定することができるように、印刷ヘッドの構造的構成要素に取り付けられてもよい。ここで、回転軸(A)は、角度(α)が変化するときのノズル18と抽出部との間の距離の変化を最小限に抑えるために、抽出部12の作用端36の近くおよび抽出部の底部の近くにある。最適な角度(α)は、少なくとも洗浄流体32の粘度ならびに抽出部表面34の表面エネルギーおよび形状に基づいて変化し得る。この例では、屈曲部46と抽出部の反対側の端38との間の表面34の下向き部分は平面である。他の例では、表面34は、溝を含むか、または長さ(L)の関数として変化する角度(α)で徐々に湾曲してもよい。
【0026】
洗浄システム40はまた、ディスペンサ42からの洗浄流体32の流量を制御するように構成されてもよい。流量が高すぎると、洗浄流体32の層が不安定になり、印刷表面20、特に表面34に沿った屈曲部46付近に滴下する可能性がある。流量が低すぎると、抽出部12が十分に洗浄されない可能性がある。洗浄流体の流量の安定性または一貫性も重要である。
図1の実施形態では、気液分注システム48が特に適していることが分かっている。そのようなシステム48の一部は、洗浄流体32で部分的に満たされた圧力容器として
図1に概略的に示されており、容器の下部は、分注ノズル42と流体連通している。圧力容器内の洗浄流体の上方の空間の気体(例えば、空気)が加圧され、この圧力(P)が調整されて、分注ノズル42からの洗浄流体32の流量が制御される。このタイプの分注システム48は、少なくともいくらかの脈動を伴う液体流れを本質的に生成する容積式ポンプと比較して、比較的滑らかで均一な洗浄流体の流れを提供することができる。特定の用途に応じて、約5psi程度の低い調整圧力が適切であり得る。
【0027】
供給源42および収集部44は、他の形態をとることができ、洗浄される表面34の一部の両側の他の場所に配置されてもよい。一般に、洗浄される表面34の部分は、ノズル18に最も近い表面の部分であってもよく、これは、これが、漂遊印刷流体16を受ける可能性が最も高い抽出部12の部分であるためである。この例では、これは、洗浄流体32の層が沿って流れる屈曲部46に対応する。いくつかの実施形態では、供給源42および/または収集部は、抽出部12に形成され、表面34上の異なる位置に開口する流体チャネルであってもよい。洗浄システム40は、洗浄流体リザーバ、ポンプ、溶媒再循環システム、バルブ、コントローラ、または同様の外部構成要素への接続部などの他の図示されていない構成要素を含むことができる。
【0028】
抽出部12はまた、複数の形態をとることができ、電場抽出場の一方の側として動作する任意の構成要素である。ノズル18と同様に、抽出部12は、好ましくは金属であるが、代わりに、十分に異なる電位にあるときにそれ自体とノズルとの間に電場を発生させることができる金属または何らかの他の導電性材料の層または一部のみを有してもよい。
図1の例では、抽出部12は金属ブロック(例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼)であり、これは比較的単純で費用効果の高い構造である。特に、図示の抽出部はプレートの形態であり、2つの可視寸法(x方向およびz方向)が厚さ寸法(
図1のy方向)よりも著しく大きいことを意味する。約0.25インチの厚さを有する金属プレートは、適切な選択肢の1つである。
【0029】
図2は、プリンタ10および印刷ヘッド14の一部としての自己洗浄型抽出部12の他の例を概略的に示す。この例では、抽出部12は金属ロッドまたはワイヤであり、その作用部分は水平である。ロッドまたはワイヤ構成は、その断面寸法(例えば、直径)よりも著しく大きい長手方向寸法によって特徴付けられる。約0.25インチの直径を有する金属ロッドは、適切な選択肢の1つである。抽出部12の図示された部分は、インクノズル18およびダイレクタノズル28が整列する平面(x-z)に垂直な平面(
図2のy-z平面)とほぼ平行である。明確にするために、
図3および
図4を以下でさらに参照する。
図3は、ノズル18、28を通り、抽出部12の直径を横切るx-z平面における断面図である。
図4は、抽出部12の長さを通るy-z平面における断面図である。
図1のプリンタ構成要素に対応する特定のプリンタ構成要素には、理解の便宜上、
図2~
図4において参照番号が付されている。
【0030】
図2~
図4の例示的なプリンタ10は、
図1と同じeジェット原理で動作する。抽出部12とノズル18との間に選択的に電場抽出場が生成され、抽出された印刷流体16は、ダイレクタノズル28からのガス30の噴射によって生成される指向性場において印刷流体の流れ30として印刷表面20に向けられる。
図1と同様に、
図2~
図4の洗浄システム40は、洗浄流体32の層が抽出部12の表面34に沿って流れるように構成される。洗浄流体32は、ここでも液体(例えば、溶媒)であり、洗浄流体の層は、洗浄流体供給源42から収集部44に流れる。
【0031】
この例では、供給源42および収集部44の両方が、抽出部12がその中に延びる管である。特に、抽出部12は、供給源42の分注開口部50および収集部44の収集開口部52(
図4)を通って延びる。洗浄流体32は、供給源42の分注開口部50から、この場合は円筒面である抽出部12の外面34上に流れる。加圧洗浄流体32は、抽出部12のほぼ水平な部分に沿って分注され、表面34をたどって収集部44に至り、そこで洗浄流体は、例えば真空によって収集部に引き込まれる。
図1の例と同様に、洗浄流体が流れる表面34の一部は下向きである。より具体的には、
図2~
図4の例では、洗浄流体が沿って流れる表面34の全体が径方向外側を向く面であり、下向きの部分が円筒面の下側凸部である。
【0032】
図示の例では、抽出部はほぼU字形であり、U字形の底部は水平に配向され、U字形の直立部は供給源管42および収集部管44内に存在する。ディスペンサ42内の十分な圧力および収集部44内の十分な真空により、洗浄流体の適切な流れを達成するために表面34を傾斜させる必要がないことが分かった。しかし、
図1の例のようにチルト角を採用し、その角度を調整可能としてもよい。
【0033】
したがって、洗浄流体32の層は、図示の構成において抽出部の外面全体と接触してもよい。供給源管42および収集部管44内で、洗浄流体の層は、
図3に示すように、環状断面を有してもよい。ディスペンサ42と収集部44との間の洗浄流体32の層の露出部分は、重力によってその他の環状形態から変形することができる。露出している場合、洗浄流体32の層は、追加のプリンタ構成要素によって支持されず、洗浄流体の凝集力によって重力に抗して抽出部表面34に付着したままである。
【0034】
上述の自己洗浄型抽出部は、導電性印刷表面以外の帯電抽出部を使用してeジェット印刷における抽出場を生成することが始まって以来生じた問題に対処する。すなわち、抽出された印刷流体が、特にプリンタの較正サイクルおよび初期化サイクル中に、印刷表面ではなく抽出部に落ちる場合がある。これは、ノズルの電荷をより容易に取り込み、したがって抽出部により強く引き付けられる導電性インクなどの特定の機能性インクでは特に問題となり得る。さらに、抽出部上、特にインクノズルに最も近い抽出部の作用部分における導電性インクの蓄積は、抽出部の形状を変化させ、効果的に抽出部をノズルに近づけ、ギャップを横切ってアーク放電する危険性を高めるため、問題がある。
【0035】
有利には、自己洗浄型抽出部12は、プリンタの通常動作中、すなわち印刷中に、抽出部表面34上の印刷流体の堆積を洗浄および/または防止するように動作することができる。これにより、印刷サイクル間の別個のクリーニングサイクルの必要性を低減または排除することができ、クリーニングまたは交換のための印刷ヘッド14の分解の必要性を排除することができる。したがって、eジェット印刷の方法は、印刷中に抽出部12を洗浄することを含むことができ、上述の洗浄システム40の動作をさらに含むことができる。導電性印刷流体が使用される場合、方法はまた、抽出部の電位を変化させることを含んでもよい。
【0036】
例えば、導電性印刷流体では、洗浄流体32が存在し、表面の影響を受けた部分に沿って流れる場合であっても、印刷流体の浮遊液滴は、抽出部12の表面34に引き付けられ、その上に堆積され得る。洗浄流体は堆積したインクの溶媒部分を除去することができるが、インクの金属または導電性固体が抽出部の表面に残る可能性がある。印刷表面上のインクの抽出および堆積中、抽出部が浮遊電位を有するように、抽出部は接地および印加されたノズル電圧(V)から絶縁されてもよい。これにより、導電性インクの存在によるアークの発生を抑制することができる。ノズルからインクが抽出されていないサイクルの一部の間、抽出部は一時的に接地されることができ、印刷流体の浮遊液滴によって抽出部に転送された正電荷を除去する。ここで、抽出部と同じ電位で、印刷流体の固体部分を除去することができる。
【0037】
印刷ヘッド10は、図示された構成要素が少なくとも部分的に収容されたハウジング38を含むことができる。ハウジング38は、
図2に仮想線で示されている。詳細には示されていないが、当業者は、印刷流体、誘導ガス、方向転換ガス、真空、および電圧の1つまたは複数の供給源を含む、図示された印刷ヘッド構成要素をハウジングの外部の流体および電源に接続するために、ハウジング38によって流体および電気接続が提供され得ることを理解するであろう。印刷流体の供給源は、制御可能な背圧を有することができ、この背圧は、プリンタのアイドル時間中に0に、動作中に5psi~30psi(約35~200kPa)の範囲にすることができる。背圧は、各ノズルからの異なる流体の印刷に対応するために各ノズルで個別に制御可能であり得る。誘導ガス供給源および方向転換ガス供給源は同じであっても異なっていてもよいが、少なくとも方向転換ガス流は、それぞれ方向転換状態および非方向転換状態に対応するオン条件とオフ条件との間で制御可能である。方向転換部のこれらのオン条件およびオフ条件は、ノズルからの印刷流体の静電抽出を独立して制御することなく、各異なるノズルからの印刷パターンが異なることを可能にするように、個別に独立して制御可能である。したがって、独立して制御可能な方向転換部は、抽出部がすべてインクノズルへの同じ電圧入力下で動作している間に、印刷パターン全体を完全に画定することができる。場合によっては、誘導ガスおよび方向転換ガスは同じガス(例えば、空気、窒素、不活性ガスなど)であるが、独立した供給源から供給される。
【0038】
抽出部22に対するベースライン電圧は、各ノズルの抽出開口部24において分極印刷流体の一貫したテイラーコーンを維持するために、各インクノズル16において維持されてもよい。十分に高い電圧(V)がノズル16のいずれか1つまたは複数に印加されると、印刷流体がそれぞれの抽出部22に向かって引き込まれ、印刷流体の液滴が指向性場に放出される。例示的な引き出し電圧(V)は、300V~1000Vの範囲であってもよく、各ノズル16におけるベースライン電圧は、それぞれの引き出し電圧よりも低く、例えば10V~300Vの範囲である。様々な実施形態において、各電極24におけるベースライン電圧は、200V~300Vの範囲であり、および/または抽出電圧は、400V~700Vの範囲である。電圧(V)は、すべてのインクノズルに共通であるとして示されているが、例えば、粘度、固形分、導電性、および分極率などの各ノズルにおけるそれぞれの印刷流体の様々な特性に起因して、1つのノズルが他のノズルよりも高い抽出電圧を有し得る。いくつかの実施形態では、各ノズルにおける電圧のパルス関数は時間に関して同じであるが、引き出し電圧は異なる。
【0039】
図3および
図4は、方向転換部の動作を示す印刷ヘッド10の断面図である。
図3では、印刷流体の第1および第2の流れ20、20’は、それぞれの第1および第2の抽出部22、22’に向かって2つの異なる方向にそれぞれの第1および第2のインクノズル16、16’から抽出され、第1および第2の誘導ノズル26、26’から放出されたガス28、28’のジェットによって印刷表面に向けられている。同じことが、印刷流体の第3のおよび第4の流れ120、120’、それぞれのインクノズル116、116’、抽出部22’、122、ガスのジェット128、128’、および誘導ノズル126、126’にも当てはまる。方向転換部18、18’、118、118’のすべては、非方向転換状態にあり、すなわち、それらはガスジェットを放出しておらず、したがって、印刷流体の流れのいずれかから抽出された印刷流体のいずれも分流していない。
【0040】
図4において、第1の方向転換部18および第3の方向転換部118は方向転換状態にあり、すなわち、それらは(紙面外の)x方向にガスのジェットを放出しており、印刷流体の第1および第3のストリーム22、122を方向転換しているので、印刷流体のこれらのストリームは、印刷表面上に堆積されない。特に、4つの印刷流体の流れのすべては、方向転換部のうちの1つまたは複数がオン状態または方向転換状態にある場合でも、抽出されて印刷表面に向けられ続ける。したがって、時間の関数としての印刷ヘッド10の面に沿った正味の静電場を一定に保つことができ、それによって印刷精度を向上させ、高いインクノズル密度での構築を可能にする。方向転換部は、個別に制御可能であり、複数のノズルからの印刷流体の抽出および方向が同期している場合でも、印刷パターンを画定するために使用することができる。図示された例では、方向転換部が
図4に示された状態にある間、第1および第3のインクノズル16、116に関連する印刷ラインに不連続部が形成される。
【0041】
上記は、本発明の1つまたは複数の実施形態の説明であることを理解されたい。本発明は、本明細書に開示された特定の実施形態に限定されず、むしろ、以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。さらに、前述の説明に含まれる記述は、開示された実施形態に関連し、用語または句が上記で明確に定義されている場合を除いて、本発明の範囲または特許請求の範囲で使用される用語の定義に対する限定として解釈されるべきではない。様々な他の実施形態ならびに開示された実施形態に対する様々な変更および修正が、当業者には明らかになるであろう。
【0042】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、用語「例えば(e.g.)」、「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「など(such as)」、および「など(like)」、ならびに動詞「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、およびそれらの他の動詞形は、1つまたは複数の構成要素または他の項目の列挙と組み合わせて使用される場合、それぞれオープンエンドとして解釈されるべきであり、列挙が他の追加の構成要素または項目を除外すると見なされるべきではないことを意味する。さらに、「電気的に接続された」という用語およびその変形は、無線電気接続と、1つまたは複数のワイヤ、ケーブル、または導体(有線接続)を介して行われる電気接続との両方を包含することを意図している。他の用語は、異なる解釈を必要とする文脈で使用されない限り、それらの最も広い合理的な意味を使用して解釈されるべきである。