(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】渦巻きパターンを用いた暗号化方法、その復号化方法、そのプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06K 19/06 20060101AFI20241204BHJP
G06K 7/14 20060101ALI20241204BHJP
G09C 5/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G06K19/06 037
G06K19/06 046
G06K7/14 017
G09C5/00
(21)【出願番号】P 2023173893
(22)【出願日】2023-10-05
【審査請求日】2024-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518356844
【氏名又は名称】neten株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七澤 清仁
(72)【発明者】
【氏名】磯部 航
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-120937(JP,A)
【文献】特開2007-102790(JP,A)
【文献】実開昭57-151668(JP,U)
【文献】実開平02-002769(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第108985419(CN,A)
【文献】特許第7229600(JP,B1)
【文献】特許第6656648(JP,B1)
【文献】特開2003-101762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/06
G06K 7/14
G09C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって、文字などの元データに対応する数値を割り振った暗号化コード表を作成する暗号化コード作成工程と、
コンピュータによって、前記暗号化コード
表を用い、発信する情報を連続する数値の列として
連続して暗号化する暗号化工程と、
コンピュータによって、暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に
連続して変換し、前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に
連続して配置する配置工程とを含む
ことを特徴とする渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項2】
前記配置工程において、前記連続する波を特定円形領域内の代数螺旋状に連続して配置する
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項3】
前記配置工程において、前記連続する波を特定円形領域内のインボリュート曲線状に連続して配置する
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項4】
前記配置工程において、暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する正弦波又は矩形波に
連続して変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項5】
前記配置工程において、原点を中心とする所定範囲は、前記連続する波を配置しない初期ブランク部分を設け
、連続して前記連続する波を配置する間、前記初期ブランク部分を保つ
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項6】
コンピュータによって、文字などの元データに対応する数値を割り振った暗号化コード表を作成する暗号化コード作成工程と、
コンピュータによって、前記暗号化コード表を用い、発信する情報を連続する数値の列として暗号化する暗号化工程と、
コンピュータによって、暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に配置する配置工程とを含み、
前記配置工程において、前記連続する波を、原点を中心として延びる渦巻きパターン状に配置すると共に、前記渦巻きパターンを180°回転した写像渦巻きパターンと共に同じ原点を中心として配置する
ことを特徴とす
る渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項7】
コンピュータによって、文字などの元データに対応する数値を割り振った暗号化コード表を作成する暗号化コード作成工程と、
コンピュータによって、前記暗号化コード表を用い、発信する情報を連続する数値の列として暗号化する暗号化工程と、
コンピュータによって、暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に配置する配置工程とを含み、
前記配置工程において、前記連続する波を、原点を中心として延びる渦巻きパターン状に配置すると共に、前記渦巻きパターンを180°回転した写像渦巻きパターンと共に同じ原点を中心として配置するときに、それぞれの法線高さについて、プラス又はマイナスを設定する
ことを特徴とす
る渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項8】
前記配置工程において、時間の経過と共に前記連続する波を、原点を中心として延びる渦巻きパターン状に
連続して配置し
、フレーム毎に静止画として記憶
し、又は出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項9】
前記配置工程において、時間の経過と共に前記連続する波を、原点を中心として延びる渦巻きパターン状に
連続して配置
し、前記連続する波が動く様子を動画として記憶
し、又は出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項10】
前記配置工程において、前記連続する波の開始点にマーカーを付けることで、開始点を表示
し、前記開始点から動画の記憶又は出力を開始する
ことを特徴とする請求項
9に記載の渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の渦巻きパターンを用いた暗号化方法によって配置された渦巻きパターン状の模様を表示し、
前記模様を読み取り装置で読み取り、
前記読み取り装置で読み取った前記連続する波の波長を連続する数値の列に変換し、
前記数値の列を、前記暗号化コード
表を用いて復号する
ことを特徴とする渦巻きパターンを用いた復号化方法。
【請求項12】
コンピュータによって、
文字などの元データに対応する数値を割り振った暗号化コード表を作成し、
前記暗号化コード
表を用い、入力された発信する情報を連続する数値の列として
連続して暗号化し、
暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に
連続して変換し、
前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に
連続して配置する
ためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータによって、
文字などの元データに対応する数値を割り振った暗号化コード表を作成し、
前記暗号化コード
表を用い、入力された発信する情報を連続する数値の列として
連続して暗号化し、
暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に
連続して変換し、
前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に
連続して配置する
ためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項14】
コンピュータによって、
文字などの元データに対応する数値を割り振った暗号化コード表を作成し、
前記暗号化コード
表を用い、入力された発信する情報を連続する数値の列として
連続して暗号化し、
暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に
連続して変換し、
前記連続する波
における1つのフレームを取り出して、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に製品の表面に印刷、刻印又は蝕刻するように表面加工装置に指示する
ことを特徴とする渦巻きパターンを用いて暗号化した模様を印刷、刻印又は蝕刻する方法。
【請求項15】
コンピュータによって、文字などの元データに対応する数値を割り振った暗号化コード表を作成する暗号化コード作成工程と、
コンピュータによって、前記暗号化コード表を用い、発信する情報を連続する数値の列として連続して暗号化する暗号化工程と、
コンピュータによって、暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に連続して配置する配置工程とを含み、
前記配置工程において、時間の経過と共に前記連続する波を、原点を中心として延びる渦巻きパターン状に連続して配置して動画として記憶する
ことを特徴とする渦巻きパターンを用いた暗号化方法。
【請求項16】
請求項15の暗号化方法で記憶された前記渦巻きパターン状の模様を表示し、
前記模様を、読み取り装置で読み取り、
コンピュータによって、前記読み取り装置で読み取った前記連続する波の波長を連続する数値の列に変換し、
前記数値の列を、前記暗号化コード表を用いて連続して復号する
ことを特徴とする渦巻きパターンを用いた復号化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代数螺旋、インボリュート曲線などの渦巻きパターンを用いた暗号化方法、その復号化方法、そのプログラム、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び渦巻きパターンを用いて暗号化した模様を印刷、刻印又は蝕刻する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2進コードで表されるデータをセル化して、2次元のマトリックス上にパターンとして配置し、マトリックス内の、少なくとも2箇所の所定位置に、各々中心をあらゆる角度で横切る走査線において同じ周波数成分比が得られるパターンからなる位置決め用シンボルを配置した2次元コードを読み取るための2次元コード読み取り装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バーコードのような1次元コードや特許文献1のような2次元コードは、その機能を重視するために意匠的な制約がある。しかしながら、必要最低限の機能を保ちつつ、美観を伴う暗号化技術を求めるニーズがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、意匠的な美観を追求できる暗号化及び復号化技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、暗号化された情報を渦巻きパターン状に表現するようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、数値と暗号化コードを割り振る暗号化コード作成工程と、
前記暗号化コードを用い、発信する情報を連続する数値の列として暗号化する暗号化工程と、
暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に配置する配置工程とを含む構成とする。
【0008】
上記の構成によると、発信する情報が渦巻きパターン状に表現されるので、極めて見映えがよく、また、簡単な暗号化方法であるので、復号もし易い。暗号化した数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換するようにしたのは、極端な例では、後に数値復号が困難にならないように適度な大きさに調整するためであり、実際、倍数は、大きければ大きいほど正確に復号できる特性を持つ。一方では、これは人間に与える美観上の観点になるが、倍数が極端に大きいと、パターンによる美観を損ねる場合がある。渦巻きパターンは、代数螺旋、インボリュート曲線等よりなり、代数螺旋は、アルキメデスの螺旋(渦巻線)、放物螺旋、双曲螺旋、リチュース螺旋等を含む。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、
前記配置工程において、前記連続する波を特定円形領域内の代数螺旋状に連続して配置する構成とする。
【0010】
上記の構成によると、連続する波が円形範囲内に代数螺旋状に表現されるので、見映えがよく、また、範囲が限定されるので、表示された模様の扱いも容易となる。
【0011】
第3の発明では、第1の発明において、
前記配置工程において、前記連続する波を特定円形領域内のインボリュート曲線状に連続して配置する構成とする。
【0012】
上記の構成によると、連続する波が円形範囲内にインボリュート曲線状に表現されるので、見映えがよく、また、範囲が限定されるので、表示された模様の扱いも容易となる。
【0013】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
前記配置工程において、暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する正弦波又は矩形波に変換する構成とする。
【0014】
上記の構成によると、正弦派又は矩形波であると、見映えもよく、また、復号化も容易である。
【0015】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
前記配置工程において、原点を中心とする所定範囲は、前記連続する波を配置しない初期ブランク部分を設ける構成とする。
【0016】
原点0から近い範囲も波を配置すると、代数螺旋、インボリュート曲線などの渦巻きパターンの進行方向と法線方向の曲率が大きいため、復号が実際にしづらくなり、また、渦巻きパターンの進行方向と法線方向の歪みが大きく見えるため、全体的に美観を損ねるが、上記の構成によると、歪みが大きくならず、美観を損ねず、また、復号もし易い。さらに初期ブランク部分があることで、復号時における中心部について、目印として見つけ易い。
【0017】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、
前記配置工程において、前記連続する波を、原点を中心として延びる渦巻きパターン状に配置すると共に、前記渦巻きパターンを180°回転した写像渦巻きパターンと共に同じ原点を中心として配置する構成とする。
【0018】
上記の構成によると、巻きパターンを180°回転した写像渦巻きパターンも加えることで、異なる美観の図形を提供できると共に、写像のありなしで異なるモードを提供できるので、復号時にモードを選ぶ必要ができ、セキュリティが向上する。また、復号時における一方の渦巻きパターン上にデータ欠損が存在する場合(例えば、印刷機の不調によるインクの抜け等)においても、他方の渦巻きパターン上のデータから情報を正しく復元できるという利点がある。
【0019】
第7の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、
前記配置工程において、前記連続する波を、原点を中心として延びる渦巻きパターン状に配置すると共に、前記渦巻きパターンを180°回転した写像渦巻きパターンと共に同じ原点を中心として配置するときに、それぞれの法線高さについて、プラス又はマイナスを設定する構成とする。
【0020】
上記の構成によると、上記第5の発明と同様の作用効果が得られると共に、プラスマイナスが反転したパターンを合わせて生成することにより、モードが複数設定でき、復号時にモードを指定することで違うモードを除外することができる。これは、セキュリティ向上のためともいえる。美観に合わせた設定では、見た目が変わるという利点もある。
【0021】
第8の発明では、第1から第7のいずれか1つの発明において、
前記配置工程において、時間の経過と共に前記連続する波を、原点を中心として延びる渦巻きパターン状に配置して静止画として記憶する構成とする。
【0022】
上記の構成によると、静止画であるため、取り扱いが容易である。一方、暗号化する情報が長い場合でも、順次連続する波を送り出して適宜静止画として記録することで、全体の情報を記録できる。
【0023】
第9の発明では、第1から第7のいずれか1つの発明において、
前記配置工程において、時間の経過と共に前記連続する波を、原点を中心として延びる渦巻きパターン状に配置して動画として記憶する構成とする。
【0024】
上記の構成によると、暗号化する情報が長い場合でも、順次連続する波を送り出して動画として記録することで、全体の情報を記録できる。
【0025】
第10の発明では、第1から第9のいずれか1つの発明において、
前記配置工程において、前記連続する波の開始点にマーカーを付けることで、開始点を表示する構成とする。
【0026】
上記の構成によると、開始点を明確にすることで復号が極めて容易となる。
【0027】
第11の発明の渦巻きパターンを用いた復号化方法は、
第1から第10のいずれか1つの発明の渦巻きパターンを用いた暗号化方法によって配置された渦巻きパターン状の模様を表示し、
前記模様を読み取り装置で読み取り、
前記読み取り装置で読み取った前記連続する波の波長を連続する数値の列に変換し、
前記数値の列を、前記暗号化コードを用いて復号する構成とする。
【0028】
上記の構成によると、発信する情報が渦巻きパターン状に表現されるという簡単な暗号化方法であるので、作成しておいた暗号化コードを用いれば容易に復号できる。
【0029】
第12の発明のプログラムは、
コンピュータによって、
数値と暗号化コードを割り振り、
前記暗号化コードを用い、入力された発信する情報を連続する数値の列として暗号化し、
暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、
前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に配置する構成とする。
【0030】
上記の構成によると、プログラムをコンピュータにインストールすることで、本発明の作用効果が確実かつ容易に発揮される。
【0031】
第13の発明のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、
コンピュータによって、
数値と暗号化コードを割り振り、
前記暗号化コードを用い、入力された発信する情報を連続する数値の列として暗号化し、
暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、
前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に配置するプログラムが記録されている構成とする。
【0032】
上記の構成によると、記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータにインストールし、実行することで、本発明の作用効果が確実かつ容易に発揮される。また、プログラムの流通が容易になる。
【0033】
第14の発明の渦巻きパターンを用いて暗号化した模様を印刷、刻印又は蝕刻する方法では、
コンピュータによって、
数値と暗号化コードを割り振り、
前記暗号化コードを用い、入力された発信する情報を連続する数値の列として暗号化し、
暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、
前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に製品の表面に印刷、刻印又は蝕刻するように表面加工装置に指示する構成とする。
【0034】
上記の構成によると、特定の情報が暗号化された見映えのよい代数螺旋状、インボリュート曲線などの渦巻きパターンを印刷、刻印又は蝕刻(化学薬品などの腐食作用を利用したエッチング処理など)することで、製品の商品価値が向上する。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、暗号化された情報を渦巻きパターン状に表現するようにしたので、意匠的な美観を追求できる暗号化技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】S
Rをxy平面上に配置した例を示す図である。
【
図2】S
Rをxy平面上で、原点を中心に180°度回転した写像したS
Lを示す図である。
【
図4】配列Aを用いて以下の手順でS
Rに点を打つ様子を示す図である。
【
図5】原点0からT
R方向へ曲線に沿って最初の点P
R0を打つ様子を示す図である。
【
図6】全てのC
Rnについて、C
Rn→C''
Rnの変換を行った様子を示す図である。
【
図8A】太線がS
R、細線がS
Lを表す様子を示す図である。
【
図8B】リピート回数P=1の場合を示す図である。
【
図8C】リピート回数P=300の場合を示す図である。
【
図8D】リピート回数P=100の場合で、(a)がブランクありで、(b)がブランクなしの場合を示す図である。
【
図9A】S
RとS
rev
Lを合わせた出力を示す図である。
【
図9B】変化をわかり易く説明するために、S
LとS
rev
Lを重ねた図である。
【
図9C】リピート回数P=300の場合を示す図である。
【
図10A】(a)は、SをS
R,S
Lとして出力した図で、(b)は、
図10A(a)を一部拡大した図である。
【
図10B】(a)は、SをS
R,S
rev
Lとして出力した図で、(b)は、
図10B(a)を一部拡大した図である。
【
図10C】(a)が{1.0,0.25}のP=250,S
R,S
Lの図であり、(b)が{1.0,0.25}のP=250,S
R,S
rev
Lの図である。
【
図10D】A''が全て同じ数値を持つ場合で、(a)はS
R,S
Lを示す図で、(b)は、S
R,S
rev
Lを示す図である。
【
図11A】Mが基準の値M=M1の場合、S
R,S
rev
Lで出力した図である。
【
図11B】M=2×M1の場合,S
R,S
rev
Lで出力した図である。
【
図11C】M=0.5×M1の場合,S
R,S
rev
Lで出力した図である。
【
図12】(a)はMが基準の値M=M1の場合、S
R,S
rev
Lで出力した図であり、(b)はM=2×M1の場合,S
R,S
rev
Lで出力した図であり、(c)は、M=0.5×M1の場合,S
R,S
rev
Lで出力した図である。
【
図13】(a)は分割数Q=3の場合、S
R,S
rev
Lで出力した図であり、(b)はQ=5の場合,S
R,S
rev
Lで出力した図であり、(c)は、Q=16の場合,S
R,S
rev
Lで出力した図である。
【
図14A】(a)は、正弦波表現によってS
R,S
rev
Lで出力した様子を示した図で、(b)は、矩形波表現によってS
R,S
rev
Lで出力した様子を示した図である。
【
図14B】正弦波表現と矩形波表現を重ね合わせ,S
R,S
rev
Lで出力した様子を示す図である。
【
図15】Aの要素数1000個の場合の大きなパターンを示す図である。
【
図16A】ソフトウェアの基本図形を示す図である。
【
図16B】ユーザーインターフェースを拡大して示す図である。
【
図17】基本図形の設定のまま「Square Wave」のみをオンとした場合を示す図である。
【
図18A】S Sizeを(100→50)に変更した場合を示す図である。
【
図18B】S Sizeを(100→200)に変更した場合を示す図である。
【
図19】S Blankの値を基本図形の5倍に設定した様子を示す図である。
【
図20】S(φR=π,φL=π)に設定した場合を示す図である。
【
図21A】W Amplitudeを基本図形の2/3にした場合を示す図である。
【
図21B】W Amplitudeを基本図形の5/3にした場合を示す図である。
【
図22A】W Sizeを7800→3900にした図である。
【
図22B】W Sizeを7800→15600にした図である。
【
図23】W Resolutionを256→3に変更した図である。
【
図24A】Scaleを3.7→1.0に設定した図である。
【
図24B】Scaleを3.7→10.0に設定した図である。
【
図25】S Repeat1→3に設定した図である。
【
図26】さまざまな設定を変更した例を示す図である。
【
図27】渦巻きパターンを用いた暗号化方法及び復号化方法を実施する装置構成の一例の概要を示す図である。
【
図28】本発明の実施形態にかかる渦巻きパターンを用いた暗号化方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態は、特定の平面充填方式により数値を暗号化し、復号時には計測により数値の割り出しができる、渦巻きパターンを用いた暗号化方法、その復号化方法に関する。
【0038】
本実施形態にかかる暗号化方法は、
図28に示すように、数値と暗号化コードを割り振る暗号化コード作成工程と、前記暗号化コードを用い、発信する情報を連続する数値の列として暗号化する暗号化工程と、暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状の2次元コードとして配置する配置工程とを含む。
【0039】
また、本実施形態は、渦巻きパターンを用いた暗号化方法によって配置された渦巻きパターン状の模様を表示し、前記模様を読み取り装置で読み取り、前記読み取り装置で読み取った前記連続する波の波長を連続する数値の列に変換し、前記数値の列を、前記暗号化コードを用いて復号する渦巻きパターンを用いた復号化方法も含む。
【0040】
これらの暗号化方法及び復号化方法は、例えば、
図27に簡単に示すシステムによって実現される。具体的には、予めコンピュータによって、数値と暗号化コードを割り振り、前記暗号化コードを用い、入力された発信する情報を連続する数値の列として暗号化し、暗号化した前記数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、前記連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に配置するための暗号化プログラムを作成し、コンピュータとしてのPC(パーソナルコンピュータ)1にインストールしておく。同様に上述した暗号化コードを作成してPC1にダウンロードしておく。
【0041】
そして、後述する暗号化工程を、プログラムを用いてキーボード2で入力しながらディスプレイ3に表示し、プリンタ4で紙等に印刷したり、表面加工装置としてのレーザー加工機4’で製品の表面にレーザー刻印したり、できあがった画像データ、pdfファイルや動画データをインターネット(社内ネットワークを含む)や記録媒体5を介して送信又は持ち運んだりできる。また、デジタルサイネージとして情報を入れてもよい。
【0042】
一方、別の復号化用のPC6には、復号化プログラムをインストールしておく。
【0043】
PC1等で暗号化された情報は、紙で印刷されている場合は、読み取り装置としてのスキャナ9やカメラ(図示せず)で読み込み、画像データなどの電子データの場合には、インターネットや記録媒体5を介して読み取り装置としてのPC6に取り込み、キーボード7で入力作業しながら、復号化した情報をディスプレイ8で表示したり、プリンタ10で出力したりする。
【0044】
動画とした場合には、復号するとき、動画の再生時間だけ、読み取り装置をかざさないといけないというデメリットはある。また、復号するときは、動画の時間の設定を復号側で知っている必要がある。あるいは、復号側に開始位置、動画の再生時間等の情報を入れれば、それによって判定することができる。例えば、2次元コードの上下左右判定のためのコードのような使い方が考えられる。また、後述するような情報の開始時を示すマーカーを設ける方法もある。
【0045】
次に、暗号化工程において、発信する情報を、暗号化コードを用いて連続する数値の列として暗号化する。
【0046】
この暗号化工程において、数値とコードを予め割り振っておけば、それに従って情報を暗号化できる。例えば、「あ」が0.5で、「い」が0.9など、任意に決めた暗号化コードを事前に作成する。そして、例えば、暗号化コードにアルファベットを割り振れば、QRコード(登録商標)等でよく用いられるurlを埋め込むことも可能になる。
【0047】
-2次元数値コード埋め込み技術の基本-
次いで行われる配置工程について、詳細に説明する。最初に、渦巻きパターンとして代数螺旋(代表的にはアルキメデスの渦巻線(アルキメデスの螺旋)又はインボリュート曲線を用意する。「螺旋」とは3次元的な、立体的なものを含むことがあるが、ここでいう渦巻線は、2次元の渦巻線をいう。立体的な螺旋であっても、平面に落とし込む(投影する)ことができる。アルキメデスの渦巻線やインボリュート曲線を用いると、特定円形領域内に情報を平面充填できる。
【0048】
本実施形態では、例えば、アルキメデスの渦巻線を用いる。アルキメデスの渦巻線とは、極座標方程式においてr=aθで表される曲線である。媒介変数における表示では、x=θcosθ,y=θsinθとなる。この準備されたアルキメデスの渦巻線全体をSRと表す。詳細な図示や説明は省略するが、SRはインボリュート曲線でもよい。
【0049】
なお、r=aθ1/2だと、間隔が徐々にせまくなる、フェルマー螺旋となり、r=aθ2だと間隔が徐々に広くなる螺旋となり、r=a/θだと間隔が徐々に広くなる双曲螺旋となり、r=a/θ1/2だと間隔が徐々に広くなるリチュース螺旋になる。基礎となる曲線は、これらの代数螺旋でもよい。間隔が徐々に広くなる双曲螺旋やリチュース螺旋であると、曲線範囲が広くなるが、暗号化及び複号化は、主に中心部分を利用するとよい。
【0050】
媒介変数の方程式の通り、
図1に示すように、S
Rはxy平面上に配置される。座標の原点0が渦巻線の中心となる。
【0051】
図2に示すように、S
Rをxy平面上で、原点を中心に180°度回転した写像(写像渦巻線)をS
Lとする。S
Rがインボリュート曲線の場合には、S
Lは写像インボリュート曲線となる。
【0052】
S
RとS
Lを重ね合わせると
図3のようになる。この
図3では、S
Rを太線、S
Lを細線としている。以降、S
R、S
Lについて特にR,Lを指定せず単にSとするときは、こうして描かれる渦巻線一般的なことを表す。また、今後の説明において、R,Lの関連のある記号、例えばN
R、N
Lが発生するが、この場合も単にNと表すことができる。その場合は、特にR,Lによらず一般的な説明となる。
【0053】
SRに対してSLを用いる1つの理由は、復号時における一方のSRにデータ欠損が存在する場合(印刷機の不調によるインクの抜け等)においても、他方のSLの情報が正しく復元できれば、補うことができるためである。
【0054】
任意の要素数を持つ、任意の正の実数の配列Aを準備する。例えば、A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6}とする。
【0055】
n番目の配列をAnと表す。Aの要素数をN(自然数)とする。上記の例の場合、A1=0.3,A3=1.2,N=5となる。
【0056】
図4に示すように、配列Aを用いて以下の手順でS
Rに点を打つ。S
Rについて、原点0から広がる渦巻線では、原点0を始点として引かれる線の進行方向をT
R方向とする。
【0057】
原点0から任意の点PRnを打つことができる。原点0からPRnまでの曲線の距離をDRnと表す。xy平面上における実際の距離を定義することにおいて内部的には定数Mが存在する。定数Mは長さの単位を表し、例えば1mmである。この先の実際に図表を生成する行程において、この定数Mは全ての配列Aに適応されることになる。つまり、A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6}であれば、AxM={0.3mm,0.5mm,1.2mm,0.5mm,1.6mm}である。一方、この説明においては、定数Mの存在は冗長であるので省略し、単に{0.3,0.5,1.2,0.5,1.6}のように表す。
【0058】
一方では、定数Mは実際に出力される際には用途に合わせて調整される。これは、極端な例では、Mが限りなく小さい場合は、後に数値復号が困難になる現象が発生するからである。実際、Mは基本、大きければ大きいほど正確に復号できる特性を持つ。一方では、これは人間に与える美観上の観点になるが、Mが極端に大きいと、このパターンによる美観を損ねる特性がある。
【0059】
図4に示すように、上述した方法で、原点0からT
R方向へ曲線に沿って最初の点P
R0を打つ。この場合の原点0からP
R0までの曲線の長さをD
R0とする。D
R0は任意の数値B
0を用いて表し、内部的にはD
R0=MB
0となる。一方で、同様に冗長な表現を避けるために単にD
R0=B
0と表す。以降、この中心のブランク部分の全体を単にBと表す。
【0060】
これはすなわち、原点0から広がる渦巻線SRの原点からの曲線において数値を埋め込まない初期ブランク部分Bを出力することになる。このようにしている理由は以下である。
【0061】
理由1. 初期ブランク部分Bがないと、原点0から近い場合、渦巻線の進行方向TR方向と法線方向の曲率が大きいため、復号が実際にしづらくなる。
【0062】
理由2. 初期ブランク部分Bがないと、美観を損ねる。つまり、渦巻線の進行方向TR方向と法線方向の歪みが大きく見えるため、全体的に美観を損ねる。
【0063】
なお、初期ブランク部分Bは、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0064】
PR0から曲線のTR方向に、PR1,PR2,PR3…PRnと点を打っていく。原点0からPR1,PR2,PR3…PRnに対する曲線の長さは、DR1,DR2,DR3…DRnと表される。このとき、DR1=B0+A1、n>0の場合、DRn=DRn-1
+Anとなるように点PRnを打つ。また、Tを用いてTRn=DRn-B0と表すことができる。このとき、当然TR0=DR0-B0=B0-B0=0である。
【0065】
点PR0,PR1,PR2,PR3…PRnに対して、PRn-1~PRn間の曲線をCRnと表す(n≧1かつn≦N)。このとき、CRnの長さはARnである。全てのCR1,CR2,CR3…CRNについて、特定の分割数Qで等間隔に点を打ち、分割する。
【0066】
CRn={CRn(1),CRn(2),CRn(3),….CRn(Q)}
と表す。ここで、CRn(m)は等分された点の位置を表す。
【0067】
特定のCRn={CRn(1),CRn(2),CRn(3),….CRn(Q)}について、全てのCRn(m)(1≦n≦A)(1≦m≦Q)について特定の移動方式を用いて法線方向に移動する。法線方向への移動方式は、正弦波方式、矩形波方式等がある。ここでは、正弦波方式について説明する。前提として、法線方向への移動距離を高さdとする。これまでの説明から明らかに、法線方向の実寸はMdとなるが、同様の理由により、以下説明では省く。
【0068】
法線方向への移動方式のうち、正弦波方式については、以下のような手順で行う。CRn(m)(1≦n≦A)(1≦m≦Q)について、移動先の法線方向の高さを、移動前のCRn(m)の高さを0としたとき、NRn(m)と表す。このとき、NRn(m)の値の取りうる範囲は(-d≦0≦d)である。
【0069】
法線の方向について、中心点0から外向きに離れる方向を+方向、内向きに近づく方向を-方向とする。よって、高さがd移動したとは+方向にdだけ移動したことを表し、高さが-d移動したとは-方向にdだけ移動したことを示す。
【0070】
CRnについて、全ての分割された曲線{CRn(1),CRn(2),CRn(3),….CRn(S)}に対する法線の高さNRn(m)について、以下関数により定める。
【0071】
NRn(m)=d×sin(2π×(m-1)÷Q)
この場合、曲線の分割数QがCRnの曲線の全長に対してある程度の大きさ(例えばQ=64など)を持つとき、CRnは渦巻線SRの線上に対して、波の振幅d、波長λ=Anの滑らかな正弦波を描くことになる。
【0072】
C
R1について上記移動方式について適応すると、移動方式が適応された後の曲線についてC''
R1とする(
図5参照)。パターンを付けている理由は、端的には後の復号のためである。
【0073】
図6に示すように、C
R1→C''
R1で行った変換について、同様に全てのC
Rnについて、C
Rn→C''
Rnの変換を行う。
【0074】
-リピート機能-
ここまでが2次元数値コード埋め込み技術の基本であるが、コード埋め込みを複数設けることでの復号における精度の担保、及び意匠的な考慮により同様の処理をリピートできる。この場合のリピート回数をPとする。
【0075】
これまでの例の場合は、A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6}となっているが、配列をリピート回数分だけコピーして連結する。リピートの回数分だけコピーした結果の配列をA''Rと表すとき、リピート回数Pが3の場合は、
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=3
A''R={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6,0.3,0.5,1.2,0.5,1.6,0.3,0.5,1.2,0.5,1.6}
となる。同様に、リピート回数はいくらでも増やせるものとする。ただし、最終的なデータ出力の際には媒体が画面であれば画面サイズ及び解像度、紙面であれば紙の大きさやプリンタのdpiなどにより表現の限界が発生する。
【0076】
図7Aは、
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=10の場合の出力であり、
図7Bは、
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=300の場合の出力である。
【0077】
-逆方向の渦巻線S
Lについての適応-
これまで、渦巻線S
R、T
R方向について適応させたが、同様にS
Lについて行う。
図8Aでは、太線がS
R、細線がS
Lを表している。
【0078】
図8Bでは、S
R、S
Lについて、先に説明したS
Rについての方式と同様にA={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6}についてS
Lに適応したものである(リピート回数P=1の場合)。
【0079】
リピート回数P=300の場合、
図8Cに示すような出力が得られる。
【0080】
図8Dでは、初期ブランク部分Bのあり、なしによる出力の違いを示す。リピート回数P=100の場合で、
図8D(a)は初期ブランク部分Bがある場合を示し、
図8D(b)は初期ブランク部分Bがない場合を示す。初期ブランク部分Bがあることで、復号時における中心部について、目印として見つけ易いこと、あるいは美観上の調整として、あり、なしを選択することができる。
【0081】
-SRとSLについて法線の高さの+方向と-方向を逆にするモード設定-
任意で、SRとSLについて法線の高さの+方向と-方向を逆にするモードを設定できる。法線の高さの+方向と-方向を逆にした場合、基準となる渦巻線はSと表されるが、逆にしたものはSrevと表す。
【0082】
同様にNについてもNrevとする。この場合、法線の高さについて、上述したように、
Nn(m)=d×sin(2π×(m-1)÷Q)
となる。このようになっていることに対して、法線移動を逆にするモードとは、
Nrev
n(m)=d×sin(-2π×(m-1)÷Q)
とすることである。
【0083】
例えば、
図9Aに示すように、S
RとS
rev
Lを合わせた出力となる。
この場合、S
Rについては、
N
Rn(1)~N
Rn(S)まで0→+d→0→-d→0
と移動することに対して、
S
rev
Lについては、
N
rev
Ln(1)~N
rev
Ln(S)まで0→-d→0→+d→0
と移動する。
【0084】
変化をわかり易く説明するために、S
LとS
rev
Lを重ねると、
図9Bに示すようになる。ここで、細線はS
L、太線はS
rev
Lである。
【0085】
そして、A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6}についてSを出力したとき、S
R,S
rev
Lとして出力し、P=300の例は、
図9Cに示すようになる。
【0086】
-渦巻線Sの生成方法のまとめ-
渦巻線Sの生成方法としては、ここまでに述べたことを総合すると、
SR,SL
SR,Srev
L
Srev
R,SL
Srev
R,Srev
L
の、4パターン生成が可能である。
【0087】
このような反転したパターンを合わせて生成している理由は、モードが複数設定できると、復号時にモードを指定することで違うモードを除外することができる。セキュリティ向上のためともいえる。美観に合わせた設定では、見た目が変わる。
【0088】
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=50のとき、
図10A(a)は、SをS
R,S
Lとして出力した例で、
図10A(b)は、
図10A(a)と同様の出力で、一部について着目するよう拡大した図である。
図10B(a)は、S
R,S
rev
Lとして出力した例で、
図10B(b)が、
図10B(a)と同様の出力で、一部について着目するよう拡大した図である。
【0089】
このモードの違いによって生じることは、暗号化、復号化に関しては影響がない。主にこのモードは視覚的な効果を分けるためにある。
【0090】
例えば、
図10A(b)と
図10B(b)は同じ位置を着目し、同じ線を引いているが、このように線を引いて見ると、印象の違いがわかり易くなる。人間の視覚は同じパターンを認識するとひとまとめとして知覚するようになるが、この例は特にP=50であるので、
図10Aに示すS
R,S
Lの場合は同じパターンの連続が渦巻線状に配置されるため、視覚心理学的にも、中央から外向きあるいは内向きの指向性を持って視認されると考えられる。中央に吸い込まれる、あるいは吐き出されるような印象を受け易い。
【0091】
一方、
図10Bに示すS
R,S
rev
Lの場合は中央部から外向きあるいは内向きの指向性が打ち消されるため、中央に吸い込まれる、あるいは吐き出されるような印象がある。
【0092】
これをより端的に説明したものが、
図10Cである。
A''={1.0,0.25,1.0,0.25,…(中略)…,1.0,0.25}と{1.0,0.25}
のリピートとした場合などが、最もわかり易く、上記説明の状態が視認できる。
【0093】
図10C(a)が{1.0,0.25}のP=250,S
R,S
Lであり、
図10C(b)が{1.0,0.25}のP=250,S
R,S
rev
Lである。
【0094】
この例は「長い波」と「短い波」の端的なサンプルであり、このような形状を取るときに、モードの違いが最も強く観測される。SR,SLの組み合わせのように同じ向きとすると全体として指向性を帯びるが、SR,Srev
Lの組み合わせとすることで全体として指向性が打ち消される。これは、ある意味の「くらくらする」ような状態を緩和する効果があると考えられる。
【0095】
一方で、A''が全て同じ数値を持つ場合、この場合は特に、Aから生成される信号が周期信号であるといえるが、完全に周期信号の場合は、この差が観測されなくなる。それは、視認として周期信号の波はその位相を逆転させたとしても見た目に違いがわからなくなってしまうことに起因すると考えられる。
【0096】
図10D(a)はS
R,S
Lを示し、
図10D(b)は、S
R,S
rev
Lを示す。汎用的にはAは非周期連続信号を生成するデータであるといえる。Aの要素数が1の場合又は全てが同じ数値の場合結果として周期信号を生成するといえる。
【0097】
-設定による、さまざまなパターンの出力(その1:Mの大きさによる比較)-
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=50,Mが基準の値M=M1の場合、S
R,S
rev
Lで出力したものが
図11Aである。
【0098】
A,Pは同様で、M=2×M1の場合、S
R,S
rev
Lで出力したものが
図11Bである。
【0099】
A,Pは同様で、M=0.5×M1の場合、S
R,S
rev
Lで出力したものが
図11Cである。
【0100】
-設定による、さまざまなパターンの出力(その2:dの大きさによる比較)-
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=50,dが基準の値d=d1の場合、S
R,S
rev
Lで出力したものが
図12(a)である。
【0101】
A,Pは同様で、d=2×d1の場合,S
R,S
rev
Lで出力したものが
図12(b)である。
【0102】
ここでは、パターンの重なりが起こるため復号が困難になる。一方では、復号技術がより複雑化するため暗号強度が高まるという利点もある。
【0103】
A,Pは同様で、d=0.5×d1の場合で、S
R,S
rev
Lで出力したものが
図12(c)である。
【0104】
-設定による、さまざまなパターンの出力(その3-高品質パターン(分割数Qが大きい)及び低品質パターン(分割数Qが小さい)の作例-
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=50,Q=3の場合に、S
R,S
rev
Lで出力したものが
図13(a)である。
【0105】
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=50,Q=5の場合に、S
R,S
rev
Lで出力したものが
図13(b)である。
【0106】
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=50,Q=16の場合に、S
R,S
rev
Lで出力したものが
図13(c)である。
【0107】
論理上は、復号の際の目印の正確性を担保するために、分割数Qの大きさは大きめの方がよい。これは、滑らかな曲線表現のための美観にも関わる設定である。出力する用紙及び画面の解像度により適切に設定されることが望ましい。分割数Qを大きくしすぎると単に図形の演算リソースだけが多く必要になるので、あまりに巨大な設定は装置の挙動に影響を与える。用途に合わせた設定をすることが望ましい。
【0108】
-設定による、さまざまなパターンの出力(正弦波表現及び矩形波表現)-
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=50,正弦波表現,S
R,S
rev
Lで出力したものを
図14A(a)に示す。これまでの説明と同パターンである。
【0109】
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=50,矩形波表現,S
R,S
rev
Lで出力したものを
図14A(b)に示す。
【0110】
説明のため、
A={0.3,0.5,1.2,0.5,1.6},P=50,正弦波表現と矩形波表現を重ね合わせ、S
R,S
rev
Lで出力した様子を
図14Bに示す。
【0111】
-設定による、さまざまなパターンの出力(大きめのパターンの出力例)-
Aの要素数1000個の場合の大きなパターンについて、
A={0.45,0.35,0.7,0.35,0.85,0.2,0.95,0.3,0.4,…(中略)…,0.3,0.45,0.35,0.85,0.3,1,0.3,1,0.2,1.2,0.3,0.95,0.2,1.25,0.4,1.2,0.3},P=1,正弦波表現,S
R,S
rev
Lで出力した様子を
図15に示す。Aには、数値の列が1000個並ぶが、中間の値は省略している。
【0112】
-本発明の実施形態にかかるプログラムによるソフトウェアの操作画面の説明-
これまでの説明で示した図面の出力は全て本発明にかかるプログラムを含む専用ソフトによって出力されている。以下、
図16Aに示す図形を基本図形として説明する。
【0113】
専用ソフトウェアにおいては、左側にユーザーインターフェース20を備え、
図16Bに拡大して示すように、<チェックボックス部11>、<スライダー及び数値入力部12>、<ボタン部13>がある。ユーザーインターフェース20での設定の結果を受けて実際の描画出力が中央に表示される。なお、本実施形態のソフトウェアでは、インターフェースにおける数値等が切り替わったタイミングで演算されるので、中央プレビューが表示されるまでにはタイムラグが発生する。ユーザーインターフェース20においてそれぞれの値を操作しながら出力イメージをプレビューし、書き出す機能が備わっている。
【0114】
-ユーザーインターフェース20の説明-
<チェックボックス部11>
上から順に説明する。
【0115】
「SR」
オンにするとSにおけるSRが出力、オフにするとSRを出力しない設定を切り替えることができる。
【0116】
「SL」
オンにするとSにおけるSLが出力、オフにするとSLを出力しない設定を切り替えることができる。
【0117】
「SRrev」
オンにするとSにおけるSRについてSrev
Rとして出力する。オフであればSRとして出力する。出力自体のオンオフはSRで切り替え、SRとSrev
Rの切り替えのみを、このチェックボックスで切り替えることができる。
【0118】
「SLrev」
上記SRrevボタンと同様でSLにおける設定。SLと、Srev
Lを、このチェックボックスで切り替えることができる。
【0119】
「Square Wave」
オンにすると、波形モードが矩形波となる。オフの場合は、正弦波になる。
図17は、基本図形の設定のまま「Square Wave」のみをオンとした場合である。
【0120】
<スライダー及び数値入力部12>
上から順に説明する。
【0121】
「S Size」
S全体の「アルキメデスの渦巻線」(又はインボリュート曲線)の全体の大きさを変更できる。以下は、
図16Aに示す基本図形の他の値を元に、「S Size」の値を変更した例である。
【0122】
図18Aは、S Sizeを(100→50)に変更した場合を示し、
図18Bは、S Sizeを(100→200)に変更した場合を示す。波形が適応されない部分は、法線方向の変位が0であるので、アルキメデスの渦巻線(又はインボリュート曲線)のままになる。
【0123】
「S Blank」
Sにおける初期ブランク部分Bの大きさを設定する。
【0124】
以下は基本図形の他の値を元に、「S Blank」の値を変更した例である。
図19に示すように、S Blankの値を(18.6→93)と、基本図形の5倍に設定した。
【0125】
「SR Phase」及び「SL Phase」
SにおけるSR及びSLの位相S(φR,φL)をそれぞれ設定できる。この場合、設定における1とは2πのことを表す。例:0.5→π,0.75→3/4πである。
【0126】
図20は、S(φR=π,φL=π)に設定した場合を示す。P
R0地点及びP
L0地点には見分けが付け易いように、法線方向に太字のマーカーを付けている。このように、太字マーカーを付けることは、ソフトウェアの設定で可能である。例えば、この太字マーカーを数列の最初の値の開始点に付けることで、情報の開始点が一目でわかり、復号がし易くなるというメリットがある。
【0127】
「W Amplitude」
法線方向の高さ成分dの設定ができる。復号し易いように、あまりかぶりのない高さ設定が望ましい。美観上の好みに合わせて高さ設定してもよい。
【0128】
図21Aは、W Amplitudeを3→2(基本図形の2/3にした場合)を示す。
【0129】
図21Bは、W Amplitudeを3→5(基本図形の5/3にした場合)を示す。
【0130】
「W Size」
Mの実数値について設定できる。なお、本実施形態では、プログラムバージョンの都合により、この数値の逆数が掛算されMの値に掛算されているが、必ずしも逆数を掛算する必要はない。
【0131】
図22AにW Sizeを7800→3900にした図を示す。逆数を掛算するため、基準値をMとすると→2Mにしている。
【0132】
図22BにW Sizeを7800→15600にした図を示す。逆数を掛算するため、基準値をMとすると→1/2Mにしている。
【0133】
「W Resolution」
分割数Qを設定する。
図23にW Resolutionを256→3に変更した図を示す。分割数Qが256→3となっている。
【0134】
「Scale」
S全体のスケールを設定する。プレビュー画面、及びファイル出力に影響する。
【0135】
図24AにScaleを3.7→1.0に設定した図を示す。1/3.7スケールで小さくなる。
【0136】
図24BにScaleを3.7→10.0に設定した図を示す。10.0/3.7スケールで大きくなる。
【0137】
「S Repeat」
Sにおけるリピート回数Pを設定する。
図25にS Repeat1→3に設定した図を示す。この図では、リピート回数が1→3に設定されている。
【0138】
【0139】
<ボタン部13>
図16Bの下部に示したボタン部13について、左から順に説明する。
【0140】
「Animation」
位相S(φR,φL)について連続的に変化させフレーム毎に画像ファイル(pngファイル形式)として出力、ダウンロードする。位相の初期値及び終了値、総合フレーム数により、各フレームにおける出力が決定される。
【0141】
「Save.png」
現在のプレビュー画面と同じスクリーンショットをダウンロードする。
【0142】
「Save.ps」
ポストスクリプト形式でダウンロードする。ポストスクリプト形式で出力することによりベクターデータとして取り扱うことができるので、印刷やレーザー刻印について高品質な最終出力とすることができる。例えば、ステッカー、プラスチック製品、金属製品の表面に印刷したり、金属製品、鏡の表面に表面加工装置としてのレーザー加工機4’でレーザー刻印したりすることができる。例えば、他の人にはあまり知られたくないような情報等を製品に刻印して携帯したり、部屋に飾ったりすることで、安らぎや幸福を得ることができる。
【0143】
表面加工装置は、レーザー加工機4’に限定されず、印刷機、蝕刻機で印刷又は蝕刻してもよい。
【0144】
「Save.json」
現在のユーザーインターフェース20における各設定情報をjson形式でダウンロードする。
【0145】
「Load.json」
各設定情報をjson形式でロードする。この中に、配列データAが設定される。つまり、本ソフトウェアの操作前には、配列データAをjson形式で保存し、読み込んでいる。また、アニメーションを使用する場合は、必要な設定情報(初期位相、最終位相、フレーム数)についても予めjsonファイルに設定しておき、読み込まれる必要がある。
【0146】
「SetSaveDir」
ダウンロード先のフォルダ(ディレクトリ)について設定する。この設定がされていない場合には、使用する0Sのデフォルト設定の場所にダウンロードされる。
【0147】
なお、アニメーションのダウンロードにおいては大量のファイルをダウンロードする場合があるため、ダウンロード先が設定されていることが望ましい。
【0148】
一方、暗号化された情報の復号時には、計測された数値に対して、適切な正規化が行われることで、情報を正しく復号することができる。例えば、計測値結果「0.499874」の場合、正規化後「0.5」となり、暗号化コードから復号情報は「あ」となる。
【0149】
原則としては、コンピュータを用いた復号であるが、十分に距離が大きい場合は、手元に暗号化コード表などがあれば、人が視認又はコンパス、定規などの計測器を用いることによって復号することもできる。
【0150】
コンピュータが行うことは、特性の曲線(例えば、CR1(5))に対して、その曲線の長さを割り出す。
【0151】
コンピュータは、スキャンして、それを特定の解析プログラムにかける。
【0152】
「ありがとう」などの短い言葉やurlの文字列はわかり易い。
【0153】
本願発明は、美観を伴う渦巻線状又はインボリュート曲線状に出力されることから、QRコードなどの既存技術との差別化ができる。
【0154】
また、本実施形態によると、その特性として生成されたパターンが、ある種の美観を伴う意匠的な特性を結果として生じる。この技術の活用により、従来のQRコード及びバーコードにあるような、デザイナーの、業務上に発生する意匠的な制約をより自由にし、クリエイティブの現場にも貢献できる。
【0155】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0156】
すなわち、上記実施形態では、コンピュータの一例として、パーソナルコンピュータ(PC)を説明した。ただし、コンピュータは、上述したプログラムを実行するものであれば、物理的にどのように構成してもよい。例えば、コンピュータは、マイクロコンピュータやプログラマブルロジックコントローラ(PLC)等のように、ソフトウェア(プログラム)を利用するものであってもよい。あるいは、コンピュータは、ハードウェア(回路部品)を組み合わせて実現してもよい。
【0157】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0158】
1 PC(コンピュータ)
2 キーボード
3 ディスプレイ
4 プリンタ
4’ レーザー加工機(表面加工装置)
5 インターネット/記録媒体
6 PC(コンピュータ/読み取り装置)
7 キーボード
8 ディスプレイ
9 スキャナ(読み取り装置)
10 プリンタ
11 チェックボックス部
12 スライダー及び数値入力部
13 ボタン部
20 ユーザーインターフェース
【要約】
【課題】意匠的な美観を追求できる暗号化技術を提供する。
【解決手段】数値と暗号化コードを割り振り、暗号化コードを用い、発信する情報を連続する数値の列として暗号化し、暗号化した数値の列を、それぞれの数値の倍数を波長とする、特定振幅の連続する波に変換し、連続する波を、原点を中心として広がる渦巻きパターン状に配置する。
【選択図】
図5