(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】スイッチキー
(51)【国際特許分類】
H01H 13/26 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
H01H13/26
(21)【出願番号】P 2023510728
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2022009478
(87)【国際公開番号】W WO2022209590
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021059924
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597096161
【氏名又は名称】株式会社朝日ラバー
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克典
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/091418(WO,A1)
【文献】特開平11-339593(JP,A)
【文献】特開2005-032487(JP,A)
【文献】特開2003-281967(JP,A)
【文献】実開昭59-079927(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着される基板の基板電極に下面が対向する柱状部と、前記柱状部の前記下面側に形成され、前記基板電極に当接して導通する起動電極と、前記柱状部の途中から延出され、前記柱状部の前記下面を取り囲むように先端方向に内径が拡大するスカート部と、前記スカート部の先端と接合され、前記スカート部の最大内径と等しい内径の中空部が形成された筒状部
及び前記中空部の内径と同径以上の空間部が形成された
前記基板上のボトム部
のみから構成される基部とが設けられ、
前記柱状部の上面が押圧されたとき、前記スカート部が前記中空部内方向に変形して前記柱状部の前記下面が前記中空部及び前記空間部を通過して、前記下面側に形成された前記起動電極が前記基板電極に当接し、前記押圧が解除されたとき、前記基板電極と前記起動電極とが離れるように、前記筒状部よりも薄肉に形成された前記スカート部及び前記筒状部が弾性材料で形成されて
おり、
前記空間部の内径(φ2)が前記中空部の内径(φ1)よりも大径であって、前記内径(φ2)と前記内径(φ1)との比((φ2/φ1)×100)が110~200%であることを特徴とするスイッチキー。
【請求項2】
前記起動電極が、前記柱状部の前記下面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチキー。
【請求項3】
前記起動電極が、前記柱状部の前記下面と前記基板電極との間に形成されたバネ特性を有する起動電極であって、前記柱状部の前記下面に押圧されて、前記基板電極と当接することを特徴とする請求項1に記載のスイッチキー。
【請求項4】
前記スカート部と前記筒状部との境界部に凹溝が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスイッチキー。
【請求項5】
前記空間部の高さ(h2)と、前記筒状部の高さ(h1)と前記空間部の高さ(h2)との合計である高さ(H)との比((h2/H)×100)が2~50%であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のスイッチキー。
【請求項6】
前記柱状部、前記スカート部及び前記基部が、弾性材料で形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のスイッチキー。
【請求項7】
前記弾性材料が、シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のスイッチキー。
【請求項8】
前記基部が、前記筒状部と前記ボトム部とが接合又は一体成形されて形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のスイッチキー。
【請求項9】
前記柱状部、前記スカート部及び前記基部が一体成形されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のスイッチキー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や家電製品等に実装される電子機器の電気的信号入力操作に用いられるコンタクトスイッチに用いられるスイッチキーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や家電製品等に実装される電子機器に用いられるコンタクトスイッチには、例えば下記特許文献1に記載されているように、厚肉のベース部から薄肉のドーム状のスカート部を介して突出する厚肉の柱状の押しボタン部とその背面側に可動接点部を形成したゴム製のスイッチキーが用いられている。このスイッチキーは、可動接点部が基板等に設けられた基板電極に対向するように設置される。このようなコンタクトスイッチによれば、押しボタン部を押圧して可動接点部が基板等の基板電極に当接するとき、クリック感を感じることができる。
このクリック感は、ゴム製のスイッチキーにより得られるものであり、クリック感はスイッチキーの荷重特性に左右される。特許文献1では、スイッチキーのスカート部の肉厚や押しボタン部に対するスカート部の角度を所定範囲に調整することが記載されている。
【0003】
このようにスカート部の肉厚や押しボタン部に対するスカート部の角度を調整することにより、スイッチキーの荷重特性を調整できるものの、スイッチキーのスカート部の肉厚や角度の変更も、耐久性やサイズ等の観点から限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スカート部の肉厚や角度を従来品と同様としても、荷重特性を調整できるスイッチキーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するためになされたスイッチキーは、装着される基板の基板電極に下面が対向する柱状部と、前記柱状部の前記下面側に形成され、前記基板電極に当接して導通する起動電極と、前記柱状部の途中から延出され、前記柱状部の前記下面を取り囲むように先端方向に内径が拡大するスカート部と、前記スカート部の先端と接合され、前記スカート部の最大内径と等しい内径の中空部が形成された筒状部及び前記中空部の内径と同径以上の空間部が形成された前記基板上のボトム部のみから構成される基部とが設けられ、
前記柱状部の上面が押圧されたとき、前記スカート部が前記中空部内方向に変形して前記柱状部の前記下面が前記中空部及び前記空間部を通過して、前記下面側に形成された前記起動電極が前記基板電極に当接し、前記押圧が解除されたとき、前記基板電極と前記起動電極とが離れるように、前記筒状部よりも薄肉に形成された前記スカート部及び前記筒状部が弾性材料で形成されており、
前記空間部の内径(φ2)が前記中空部の内径(φ1)よりも大径であって、前記内径(φ2)と前記内径(φ1)との比((φ2/φ1)×100)が110~200%であることを特徴とするものである。
【0007】
前記起動電極が、前記柱状部の前記下面に形成されていることが好ましい。
【0008】
前記起動電極が、前記柱状部の前記下面と前記基板電極との間に形成されたバネ特性を有する起動電極であって、前記柱状部の前記下面に押圧されて、前記基板電極と当接するものを用いることができる。
【0009】
前記スカート部と前記筒状部との境界部に凹溝が形成されていてもよい。
【0010】
前記空間部の高さ(h2)と、前記筒状部の高さ(h1)と前記空間部の高さ(h2)との合計高さ(H)との比((h2/H))×100)が2~50%であることがスイッチキーの荷重特性の調整を簡単にでき好ましい。
【0011】
前記柱状部、前記スカート部及び前記基部が、弾性材料で形成されていることが好ましい。
【0012】
前記弾性材料が、シリコーンゴムであることがスイッチキーの電気的及び耐久性の観点から好ましい。
【0013】
前記基部が、前記筒状部と前記ボトム部とが接合又は一体成形されて形成されていることが好ましい。
【0014】
前記柱状部、前記スカート部及び前記基部が一体成形されていることがスイッチキーの取り扱い性等の観点から好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るスイッチキーは、そのスカート部の肉厚や角度を特に調整しなくても荷重特性を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用するスイッチキーを用いたコンタクトスイッチの断面図である。
【
図2】本発明を適用するスイッチキーの斜視図及び断面図である。
【
図3】本発明を適用するスイッチキーの特性を示すグラフと対応する状態を示す断面図である。
【
図4】本発明を適用する二種のスイッチキーの断面図及びその特性を示すグラフである。
【
図5】本発明を適用するスイッチキーの他の態様を示す断面図である。
【
図6】本発明を適用するスイッチキーの他の態様を示す断面図である。
【
図7】本発明を適用するスイッチキーを用いた他のコンタクトスイッチの断面図である。
【
図8】本発明を適用するスイッチキーの実施例と参考例との測定結果を示すグラフである。
【
図9】本発明を適用するスイッチキーの他の実施例の測定結果を示すグラフである。
【
図10】本発明を適用するスイッチキーの他の実施例の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を適用するスイッチキーを用いたコンタクトスイッチを示す断面図を
図1に示す。
図1に示すスイッチキー10は、弾性材料で形成されており、装着された基板22の絶縁被膜26から露出する露出面に形成された基板電極24,24に対向する起動電極18が下面に形成された柱状部12と、柱状部12の途中から斜め方向に延出され、起動電極18を含む柱状部12の下部を取り囲むように先端方向に内径が拡大するスカート部14と、スカート部14の先端と接合された基部16とが設けられている。基部16は、スカート部14に接合され、スカート部14の最大内径と等しい内径の中空部17aが形成された筒状部16aと、中空部17aの内径よりも大径の空間部17bが形成されたボトム部16bとから構成されている。スカート部14を長く形成できるように、スカート部14と筒状部16aとの境界部に凹溝15が形成されている。また、空間部16bの内壁面に、スイッチキー10内の空間への空気の排出や吸い込み用の空気孔20が開口されている。この柱状部12の上面は、操作パネル27から頭部が突出するボタン28の底面に当接しており、指でボタン28を押圧することにより、柱状部12を押圧して柱状部12の起動電極18と基板22の基板電極24,24とが接触できる。
【0018】
図1に示すスイッチキー10の斜視図を
図2(a)に示し、その断面図を
図2(b)に示す。
図2(a)に示すように柱状部12、スカート部14及び基部16は円形状であって、基部16の外周面に空気孔20が開口されている。その断面図である
図2(b)に示すように、基部16を構成する筒状部16aの中空部17aの内径(φ1)と空間部17bの内径(φ2)との比((φ2/φ1)×100)が110~200%、好ましくは120~180%であることにより、スイッチキー10の荷重特性を簡単に制御でき好ましい。φ2/φ1比が110%未満の場合、スイッチキーの荷重特性の変化が少なる傾向があり、φ2/φ1比が200%を超える場合、スイッチキー10がわずかな荷重で変形しすぎてしまうため、荷重特性の制御が困難になる傾向がある。
【0019】
また、
図2(b)に示すボトム部16bの空間部17bの高さ(h2)と、筒状部16aの高さ(h1)及び空間部17bの高さ(h2)の合計した高さ(H=h1+h2)との比((h2/H))×100)が2~50%、好ましくは5~40%であることにより、スイッチキー10の荷重特性を簡単に制御でき好ましい。h2/H比が2%未満の場合、スイッチキーの荷重特性の変化が少なる傾向があり、h2/H比が50%を超える場合、スイッチキー10がわずかな荷重で変形しすぎてしまうため、荷重特性の制御が困難になる傾向にある。h2/H比が50%を超える場合、スイッチキー10がわずかな荷重で変形しすぎてしまうため、荷重特性の制御が困難になる傾向にある。
【0020】
図1及び
図2に示すスイッチキー10の柱状部12の上面に荷重を加えたときのスイッチキー10の変化を
図3に示す。
図3(a)のグラフは、スイッチキー10の柱状部12に加えられる荷重と柱状部12のストロークとの関係を示すグラフであり、
図3(b)~(d)は
図3(a)のグラフのP
0点、P点及びB点でのスイッチキー10の状態を示す断面図である。柱状部12の上面に荷重が加えられていないとき(
図3(a)のP
0点に対応)、スカート部14は
図3(b)に示すように柱状部12の途中から斜め下方向に傾斜している。柱状部12の上面に荷重Fが加えられたとき、
図3(c)に示すようにスカート部14及び筒状部16aの空間部17bへの張出部が空間部17b方向に撓み、柱状部12は中空部17a内に沈み込む。このような状態では、柱状部12に加えられる荷重の増大に伴ってスカート部14及び筒状部16aの空間部17bへの張出部の撓みが徐々に大きくなり、柱状部12の沈み込み量も徐々に大きくなる。この状態は
図3(a)に示す最大荷重が加えられるP点まで続行する。引き続き、柱状部12の上面に加えられる荷重Fが増加すると、スカート部14は、
図3(d)に示すように、座屈して中空部16a及び空間部16b内に折れ曲がり、柱状部12に加えられる荷重は
図3(a)に示すように急激に低下してボトム点であるB点まで低下する。B点では、柱状部12の下面に形成されている起動電極18と基板22の基板電極24,24とが当接する。このように起動電極18と基板電極24,24とが当接した状態では、柱状部12に加えられる荷重は急激に増加する。柱状部12の上面への荷重Fを徐々に解除すると、スカート部14及び筒状部16aの弾発力により、柱状部12のストロークは
図3(a)に示す破線のルートを通って
図3(b)の状態に戻る。尚、破線に示すルートは弾性部材のヒステリシスに基づくものである。
【0021】
このような
図1~
図3のスイッチキー10と同様な
図4(a)に示すスイッチキー10について、筒状部16aの高さ(h1)とボトム部16bの空間部17bの高さ(h2)とを一定にして、筒状部16aの中空部17aの内径(φ1)とボトム部16bの空間部17bの内径(φ2)との比(φ2/φ1)を変更した荷重-ストロークのグラフを
図4(a)の下部に示す。このグラフにおいて、曲線10Bで示すスイッチキー10の(φ2/φ1)比は曲線10Aで示すスイッチキー10よりも大きい。グラフから明らかなように、(φ2/φ1)比が大になると、最大荷重が加えられるP点は、荷重が若干減少し且つストロークも長くなるP′点にシフトする。一方、柱状部12の下面の起動電極18が板30に当接するB点は、ストロークは略同一であるが、荷重が増加するB′点にシフトする。このような現象は、以下のように推察される。つまり、スイッチキー10の(φ2/φ1)比が大きくなるにしたがって、柱状部12の上面に荷重が加えられたとき、空間部17bに張り出す筒状部16aの張出部の撓みが早期に発生し、スカート部14の撓みと相俟ってスカート部14の座屈が発生するまでの柱状部12のストロークが長くなり、且つ座屈が発生する荷重も若干低減する。更に、スカート部14が座屈したとき、筒状部16aの張出部が撓んでいるので、柱状部12の下面の起動電極18と板30との距離も短縮されており、起動電極18が板30に当接するまでの荷重の軽減も少なくなる。
【0022】
図4(b)に示すスイッチキー10は、筒状部16aの中空部17aの内径(φ1)とボトム部16bの空間部17bの内径(φ2)とを等しくしたものである。
図4(b)に示すスイッチキー10について、ボトム部16bの空間部17bの高さ(h2)のみを変更した荷重-ストロークのグラフを
図4(b)の下部に示す。このグラフにおいて、曲線10Dで示すスイッチキー10の空間部17bの高さ(h2)は、曲線10Cで示すスイッチキー10の空間部17bの高さ(h2)よりも高い。このグラフから明らかなように、曲線10Dのスイッチキー10と曲線10Cのスイッチキー10は、両者のP点、P′点は略同一位置にあるが、空間部17bの高さ(h2)を高くした曲線10Dのスイッチキー10のB′点は、曲線10Cのスイッチキー10のB点よりも荷重が軽減され且つストロークが長くなっている。このような現象は、以下ように推察される。つまり、
図4(b)に示すスイッチキー10では、柱状部の上面に荷重が加えられたとき、筒状部16aに撓みが発生することなくスカート部14の撓みのみが発生し、スカート部14の座屈が発生する最大荷重であるP点は、空間部17bの高さ(h2)を変更しても同一値となる。また、スカート部14に座屈が発生したとき、柱状部12の下面の起動電極18と板30との距離は、空間部17bの高さ(h2)を高くするほど長くなるから、ストロークが長くなり且つ荷重の低減も大きくなる。
【0023】
図4(a)(b)に示すスイッチキー10の荷重―ストロークのグラフを比較すると、
図4(a)に示すスイッチキー10は、P
0点からP点に至る曲線の上昇曲線とP点からB点に至る曲線の下降曲線とは、そのP点を通る直線に対して非対称形であり、P
0点とP点との間に柱状部12に加えられる荷重の増加割合に比較して、P
0点とB点との間に柱状部12に加えられる荷重の減少割合は急激であり、P点からB点までのストロークを減少できる。このスイッチキー10のようにP点からB点までのストロークが短くなることで、ゴム単体では表現できなかった荷重特性を持つコンタクトスイッチを提供できる。すなわち、スイッチキー10Aを用いて
図1に示すコンタクトスイッチを作製した場合、ボタン28をスイッチキー10のP点に相当するストロークまで押すとスイッチキー10が変形し、B点まで押し込むと柱状部12の起動電極18が基板電極24,24と当接し導通してスイッチが起動する。従って、スイッチキー10のようにP点とB点の間のストロークが短いことにより、導通までのストロークが短くなり、スイッチキーが急激に変形するため、金属製の皿ばねのような荷重特性を表現できるスイッチを提供できる。
【0024】
一方、
図4(b)に示すスイッチキー10は、P
0点からP点に至る曲線の上昇曲線B点とP点からB点に至る曲線の下降曲折とは、そのP点に対して略対称形であり、P
0点とP点との間に柱状部12に加えられる荷重の増加割合とP点とB点との間に柱状部12に加えられる荷重の減少割合とは略釣り合っており、
図4(b)に示すスイッチキー10は、
図4(a)に示すスイッチキー10ほどP点からB点までのストロークの短縮はできない。しかし、
図4(b)に示すスイッチキー10でも、空間部17bの高さh2を変更することで、その荷重特性を簡単に変更できるから、所望のクリック感を呈するコンタクトスイッチを提供できる。
【0025】
このようなスイッチキー10を形成する弾性材料としては、電気特性及び耐久性等の観点からシリコーンゴムやオレフィン系ゴムを用いることができる。特に、シリコーンゴムを好適に用いることができる。シリコーンゴムとしては、主としてパーオキサイド架橋型シリコーンゴム、付加架橋型シリコーンゴム、縮合架橋型シリコーンゴム、紫外線架橋型シリコーンゴムを、成形金型等に入れて、架橋させることにより、所定形状のスイッチキー10を成形できる。
また、ゴムの硬度は、デュアルメータタイプA(ショアA)で10~90度、好ましくは40~80度を用いることができ、各部ごとにゴム硬度を変えてもよい。
【0026】
パーオキサイド架橋型シリコーンゴムは、パーオキサイド系架橋剤で架橋できるシリコーン原料化合物を用いて合成されたものであれば特に限定されないが、具体的には、ポリジメチルシロキサン(分子量:50万~90万)、ビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万~90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万~20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万~10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万~5万)、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万~10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万~1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサン、メタアクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、(メタアクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0027】
パーオキサイド系架橋剤として、例えばケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類が挙げられ、より具体的には、ケトンパーオキサイド、ペルオキシケタール、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシエステル、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジt-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ(ジシクロベンゾイル)パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン、ベンゾフェノン、ミヒラアーケトン、ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ベンゾインエチルエーテルが挙げられる。
【0028】
パーオキサイド系架橋剤の使用量は、得られるシリコーンゴムの種類、装着される基板22やその絶縁被膜26の素材の性質や性能に応じて適宜選択されるが、シリコーンゴム100部に対し、0.01~10部、好ましくは0.1~2部用いられることが好ましい。この範囲よりも少ないと、架橋度が低すぎてシリコーンゴムとして使用できない。一方、この範囲よりも多いと、架橋度が高すぎてシリコーンゴムの弾性が低減してしまう。
【0029】
付加型シリコーンゴムは、Pt触媒存在下で合成したビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万~90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万~20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万~10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万~5万)、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万~10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万~1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有ポリシロキサンと、H末端ポリシロキサン(分子量:0.05万~10万)、メチルHシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルHシロキサン、ポリエチルHシロキサン、H末端ポリフェニル(ジメチルHシロキシ)シロキサン、メチルHシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルHシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーのようなH基含有ポリシロキサンの組成物、 アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノイソブチルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルアミノ末端ポリジメチルシロキサンのようなアミノ基含有ポリシロキサンと、エポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなエポキシ基含有ポリシロキサン、琥珀酸無水物末端ポリジメチルシロキサンのような酸無水物基含有ポリシロキサン及びトルイルジイソシアナート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナートなどのイソシアナート基含有化合物との組成物から得られるものである。
【0030】
これらの組成物から付加型シリコーンゴムを調製する加工条件は、付加反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0~200℃で、1分~24時間加熱するというものである。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0031】
縮合型シリコーンゴムは、スズ系触媒又は亜鉛系触媒の存在下で合成されたシラノール末端ポリジメチルシロキサン(分子量:0.05万~20万)、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフロロメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなシラノール基末端ポリシロキサンからなる単独縮合成分の組成物;これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、テトラアセトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、ジt-ブトキシジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエノキシメチルシラン、
ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトラ-n-プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、ビニルトリイソプロペノイキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリ(エチルメチル)オキシムメチルシラン、ビス(N-メチルベンゾアミド)エトキシメチルシラン、トリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、トリアセトアミドメチルシラン、トリジメチルアミノメチルシランのような架橋剤との組成物;これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、クロル末端ポリジメチルシロキサン、ジアセトキシメチル末端ポリジメチルシロキサン、末端ポリシロキサンのような末端ブロックポリシロキサンの組成物から得られるものである。
【0032】
これらの組成物からシリコーンゴムを調製する加工条件は、縮合反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0~200℃で、10分~24時間加熱するというものである。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0033】
オレフィン系ゴムは、1,4-シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴムが挙げられる。
【0034】
スイッチキー10は、弾性体としての補強性、絶縁性、熱伝導性、耐摩耗性、耐紫外線、耐放射線、耐熱性、耐候性、柔軟性、抗菌性などの機能を高めるために機能性添加剤を添加したり、増量させたりするために機能性充填剤が添加されていてもよい。また、スイッチキー10は、これらのシリコーンゴムを含む素材で形成されていてもよい。
【0035】
スイッチキー10の柱状部12に形成された起動電極18は、金属の他、カーボン、導電性ポリマー、及び導電性金属酸化物のような導電材であってもよい。また、起動電極18は、導電材を混合させたシリコーンゴムで成形されていることにより、柱状部12と同一の材料で形成されたものであってもよい。この導電材として、金、銀、銅、ニッケルの粉末のような金属粉末、グラファイト、CNT(カーボンナノチューブ)、カーボンブラックのようなカーボン粉末、亜鉛華や酸化チタンのような金属酸化物粉末、金属がメッキされたシリカ粉末、及び金属がメッキされたガラスビーズを挙げることができる。
【0036】
図1~
図4に示すスイッチキー10では、柱状部12とスカート部14とで囲まれた空隙部44は、その横断面形状が三角形であったが、
図5に示すように台形状としてもよい。
図1~
図5に示すスイッチキー10は、一体成形された柱状部12、スカート部14及び筒状部16aに、別体に形成されたボトム部16bが接合されているが、
図6に示すように、柱状部12、スカート部14及び基部16を一体成形したものであってもよい。更に、
図1~6に示すスイッチキー10は、円形状であったが、楕円形状や三角形状としてもよく、シート状の基部に複数成形されてもよい。
また、
図1~
図6に示すスイッチキー10は、柱状部12の下面に駆動電極18が形成されていたが、
図7に示すように柱状部12の下面と基板電極24,24との間にバネ特性を有するドーム状起動電極19を形成してもよい。この場合、柱状部12の下面に駆動電極を形成することは要しない。ドーム状起動電極19は、金属製であって、指でボタン28を押圧することにより、柱状部12の下面がドーム状起動電極19を押圧して基板22の基板電極24,24と接触できる。ドーム状起動電極19に代えて、金属製の板ばね状起動電極を用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
先ず、シリコーンゴムで柱状部12とスカート部14と筒状部16とを一体成形した。このシリコーンゴムとしては、KE961U(信越化学工業株式会社製)の100質量部と、加硫剤としてC-8A(信越化学工業株式会社製)0.5質量部とのシリコーンゴム混合物を用いた。形成した筒状部16aの中空部17aの内径φ1は4.6mmであり、その高さh1=Hとなり1.5mmである。
この柱状部12とスカート部14と筒状部16aとの一体成形体のみのスイッチキー(h2/H比が0%)について、柱状部12の上面に所定の荷重を加えたとき、柱状部12の沈み込み量をストロークとして測定した。荷重を変更して柱状部12の沈み込み量を測定した。その結果を
図8に参考例として示す。
【0039】
更に、一体成形体の筒状部16aに、一体成形体と同一のシリコーンゴムで作成したボトム部16bを接着剤で接合したスイッチキーを作成した。ボトム部16bは、その空間部17bの内径φ2が中空部17aの内径φ1と同一径であって、空間部17bの高さh2を所定高さとしたものである。ボトム部16bの空間部17bの高さh2を変更して、筒状部16aの高さh1と空間部17bの高さh2との合計した高さHとの(h2/H)比が6%、12%,17%,21%,25%,29%のスイッチキーを作成した。これら各スイッチキーについても、同様にして柱状部12の上面に加える荷重を変更して柱状部12の沈み込み量を測定した。これらの結果を
図8に示す。
【0040】
図8から明らかなように、中空部17aの内径φ1と空間部17bの内径φ2とが同一径であるボトム部16bの高さh2を変更したスイッチキーは、P
0点からP点までは略同一の曲線であり、P点も略同一の荷重・ストロークのところにある。一方、B点は(h2/H)比が大きくなるに従って荷重が低減し且つストロークが長くなる方向にシフトしており、P点とB点との間隔が広がる荷重特性のスイッチキーを提供できる。
【0041】
(実施例2)
実施例1で作成した一体成形体の筒状部16aに接着剤で接合するボトム部16bを、空間部17bの内径φ2を6.5mm(φ1/φ2比:140%)とし、且つ空間部16bの高さh2を(h2/H)比が12%,21%,29%となるように変更したスイッチキーを作成した。これら各スイッチキーについても、実施例1と同様にして柱状部12の上面に加える荷重を変更して柱状部12の沈み込み量を測定した。これらの結果を
図9に示す。
【0042】
図9から明らかなように、φ1/φ2比を一定として、h2/H比のみを変更したスイッチキー10は、h2/H比が高くなるほど(空間部17bの高さh2が高くなるほど)P点は荷重が若干低下し且つストロークが長くなる方向にシフトし、B点も荷重が若干低下し且つストロークが長くなる方向にシフトする荷重特性のものとなる。
【0043】
(実施例3)
実施例1で作成した一体成形体の筒状部16aに接着剤で接合するボトム部16bを、厚さを0.5mm(空間部17bの高さh2:0.5mm)とし、空間部17bの内径φ2を中空部16aの内径φ1との比(φ2/φ1)が、120%、140%、170%となるように変更したスイッチキー10を作成した。これらスイッチキー10の各々について、実施例1と同様にして柱状部12の上面に加える荷重を変更して柱状部12の沈み込み量を測定した。これらの結果を
図10に示す。
【0044】
図10から明らかなように、ボトム部16bの空間部17bの高さを一定として、空間部17bの内径を拡大したスイッチキー10の荷重特性は、空間部17bの内径が拡大するに従って、P点はB点方向シフトし、P点とB点との間が狭くなり柱状部12に加えられる荷重が急激に減少している。これらのスイッチキー10は、P点からB点までのストロークを短くできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るスイッチキーを用いたコンタクトスイッチは、自動車や電気器具等のパネルに用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
φ1:筒状部16aの中空部17aの内径、φ2:ボトム部16bの空間部17bの内径、10:スイッチキー、12:柱状部、14:スカート部、15:凹溝、16:基部、16a:筒状部、17a:中空部、16b:ボトム部、17b:空間部、18:起動電極、19:ドーム状起動電極、20:空気孔、22:基板、24:基板電極、26:絶縁被膜、27:操作パネル、28:ボタン、30:板、44:空隙部