IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北京賽特明強医薬科技有限公司の特許一覧

特許7598180キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用
<>
  • 特許-キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用 図1
  • 特許-キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用 図2
  • 特許-キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用 図3
  • 特許-キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用 図4
  • 特許-キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用 図5
  • 特許-キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用 図6
  • 特許-キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用 図7
  • 特許-キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用 図8
  • 特許-キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】キナゾリン系化合物、キナゾリン系化合物の組成物及び応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/94 20060101AFI20241204BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20241204BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20241204BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20241204BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20241204BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20241204BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241204BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241204BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241204BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C07D239/94 CSP
C07D401/12
C07D401/14
C07D403/12
C07D405/14
A61K31/517
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P43/00 105
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023557350
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2022081599
(87)【国際公開番号】W WO2022194265
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】202110296394.X
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517185908
【氏名又は名称】北京賽特明強医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, チャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, レイフー
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/057511(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/173254(WO,A1)
【文献】特表2013-504521(JP,A)
【文献】特表平10-505600(JP,A)
【文献】国際公開第2020/009156(WO,A1)
【文献】特表2012-531433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0039838(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体であって、
【化1】
式(I)中、
Zは、-NH-又は-O-であり;
は、-(CH-[式中、nは0~3の整数である]であり;
は、水素、ヒドロキシ、4~7員の複素脂環式基、又は-NRであり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、ヒドロキシ置換C~Cアルキル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、又はC~Cシクロアルキル置換C~Cアルキルであり;
上記4~7員の複素脂環式基は、N、O、及びSから選択される1~2つのヘテロ原子を含有する複素脂環式基であり、上記複素脂環式基は、C~Cアルキル、C~Cアルキルアシル、ヒドロキシ、シアノ、アミノアシル、モノ置換若しくはジ置換C~Cアミノアシル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、及びヒドロキシ置換C~Cアルキルのうちの1つ又は2つで置換されているか、又は非置換であり;
Lは、-O-、-S-、又は-NH-であり;
は、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ヒドロキシ置換C~Cアルキル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、又は-(CH)m-Rであり、
は、C~Cシクロアルキル又は4~6員の複素脂環式基であり、mは0~3の整数であり、
上記4~6員の複素脂環式基は、N、O、及びSから選択される1~2つのヘテロ原子を含有する複素脂環式基であり;
は、-M-(CH)p-[式中、MはO、S、又はNHであり、pは0~2の整数である]であり、
は、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、及びピロリルから選択されるアリール又はヘテロアリール基であり、上記アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルキニル、C~Cアルケニル、及び-NR’R”から選択される1~3つの置換基で置換されているか、又は非置換であり、
R’、R”は、それぞれ独立して、H又はC~Cアルキルであり;
は、水素、ハロゲン、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシである、式(I)で表される化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体。
【請求項2】
上記化合物が以下の規定i)~v):
i)Zが、-NH-であること;
ii)T が、-(CH -[式中、nは0~2の整数である]であり、
が、水素、4~6員の複素脂環式基、又は-NR であり、
及びR が、それぞれ独立して、水素、C ~C アルキル、C ~C シクロアルキル、ヒドロキシ置換C ~C アルキル、C ~C アルコキシ置換C ~C アルキル、又はC ~C シクロアルキル置換C ~C アルキルであり;
上記4~6員の複素脂環式基が、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、又はチオモルホリニルであり、上記基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アルデヒド基、アセチル、プロピオニル、ヒドロキシ、シアノ、アミノアシル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、イソプロポキシメチル、イソプロポキシエチル、イソプロポキシプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルのうちの1つ又は2つで置換されているか、又は非置換であるか;
あるいは、T が、-(CH -[式中、nは0又は1である]であり;
が、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、メチルエチルアミノ、メチルプロピルアミノ、エチルプロピルアミノ、メチルシクロプロピルアミノ、エチルシクロプロピルアミノ、プロピルシクロプロピルアミノ、イソプロピルシクロプロピルアミノ、メチルシクロブチルアミノ、エチルシクロブチルアミノ、プロピルシクロブチルアミノ、イソプロピルシクロブチルアミノ、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、1-メチルピロリジン-2-イル、1-エチルピロリジン-2-イル、1-プロピルピロリジン-2-イル、1-イソプロピルピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシプロピル)ピロリジン-2-イル、ピペリジン-1-イル、1-メチルピペラジン-4-イル、1-エチルピペラジン-4-イル、1-プロピルピペラジン-4-イル、1-イソプロピルピペラジン-4-イル、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-4-イル、モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロピラン-2-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、又はチオモルホリニルであること;
iii)Lが、-O-又は-NH-であり;
が、C ~C アルキル、C ~C ハロアルキル、ヒドロキシ置換C ~C アルキル、C ~C アルコキシ置換C ~C アルキル、又は-(CH )m-R であり、
が、C ~C シクロアルキル又は4~6員の複素脂環式基であり、mが、0、1、又は2であり、
上記4~6員の複素脂環式基が、N、O、及びSから選択される1~2つのヘテロ原子を含有する複素脂環式基であるか;
あるいは、Lが、-O-であり;
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、テトラヒドロフラン-2-イル、又はテトラヒドロフラン-3-イルであること;
iv)T が、-O-(CH )p-[式中、pは0又は1である]であり;
が、フェニル、ピリジル、又はピリミジルであり、上記フェニル、ピリジル、及びピリミジルが、フッ素、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、イソプロピル、イソプロポキシ、シアノ、ヒドロキシ、フルオロメチル、2-フルオロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、及び2,2-ジフルオロエチルから選択される1~2つの置換基で置換されているか、又は非置換であるか;
あるいは、T が、-O-(CH )p-[式中、pは1である]であり;
が、フェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、6-メチルピリジン-2-イル、6-メトキシピリジン-2-イル、5-メチルピリジン-2-イル、5-メトキシピリジン-2-イル、4-メチルピリジン-2-イル、4-メトキシピリジン-2-イル、3-メチルピリジン-2-イル、3-メトキシピリジン-2-イル、6-フルオロピリジン-2-イル、又は6-クロロピリジン-2-イルであること;
v)R が、水素、フッ素、塩素、メチル、又はメトキシであるか;
あるいは、R が、水素、フッ素、又は塩素であること
のうち1つまたは複数を有する、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体。
【請求項3】
上記化合物が、次の構造式を有し、
【化2】
が、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、又はチオモルホリニルであり、上記基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アルデヒド基、アセチル、プロピオニル、ヒドロキシ、シアノ、アミノアシル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、イソプロポキシメチル、イソプロポキシエチル、イソプロポキシプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルのうちの1つ又は2つで置換されているか、又は非置換であり;
が、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ヒドロキシ置換C~Cアルキル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、又は-(CH)m-Rであり、
が、C~Cシクロアルキル又は4~6員の複素脂環式基であり、mが、0、1、又は2であり、
上記4~6員の複素脂環式基が、N、O、及びSから選択される1~2つのヘテロ原子を含有する複素脂環式基であり;
が、フェニル、ピリジル、又はピリミジルであり、上記フェニル、ピリジル、及びピリミジルが、フッ素、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、イソプロピル、イソプロポキシ、シアノ、ヒドロキシ、フルオロメチル、2-フルオロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、及び2,2-ジフルオロエチルから選択される1~2つの置換基で置換されているか、又は非置換であり;
が、水素、フッ素、塩素、メチル、又はメトキシであり;
代替的には、
が、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、1-メチルピロリジン-2-イル、1-エチルピロリジン-2-イル、1-プロピルピロリジン-2-イル、1-イソプロピルピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン-2-イル、又は1-(2-ヒドロキシプロピル)ピロリジン-2-イルであり;
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、又はエトキシブチルであり;
が、フェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、6-メチルピリジン-2-イル、6-メトキシピリジン-2-イル、5-メチルピリジン-2-イル、5-メトキシピリジン-2-イル、4-メチルピリジン-2-イル、4-メトキシピリジン-2-イル、3-メチルピリジン-2-イル、3-メトキシピリジン-2-イル、6-フルオロピリジン-2-イル、又は6-クロロピリジン-2-イルであり;
が、フッ素又は塩素であるか;
あるいは、R が、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、1-メチルピロリジン-2-イル、1-エチルピロリジン-2-イル、1-プロピルピロリジン-2-イル、1-イソプロピルピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン-2-イル、又は1-(2-ヒドロキシプロピル)ピロリジン-2-イルであり;
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、又はエトキシブチルであり;
が、ピリジン-2-イルであり;
が、塩素であり;
代替的には、
が、1-メチルピロリジン-2-イル、1-エチルピロリジン-2-イル、又は1-イソプロピルピロリジン-2-イルであり;
が、メチル、エチル、プロピル、メトキシエチル、メトキシプロピル、又は2,2-ジフルオロエチルであり;
が、ピリジン-2-イルであり;
が、塩素である、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体。
【請求項4】
上記化合物が、以下:
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体と、1つ又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含有する医薬組成物であって、
任意選択で、上記医薬組成物がさらに、1つ又は複数の他の治療薬を含有する、医薬組成物
【請求項6】
疾患の治療のための医薬組成物であって、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体を含有し、
上記疾患がチロシンキナーゼHER2に関連する疾患であり;
代替的には、
上記疾患が、チロシンキナーゼHER2のエクソン20における変異に関連する疾患であり;
代替的には、
上記疾患が、癌又は自己免疫疾患、特に眼底疾患、眼球乾燥症、乾癬、白斑、皮膚炎、円形脱毛症、関節リウマチ、大腸炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、クローン病、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、肝線維症、骨髄線維症、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌、神経膠腫、神経膠芽腫、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、黒色腫、子宮内膜癌、前立腺癌、膀胱癌、白血病、胃癌、肝癌、消化管間質腫瘍、甲状腺癌、慢性顆粒球性白血病、急性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、上咽頭癌、食道癌、脳腫瘍、B細胞及びT細胞リンパ腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、胆管癌肉腫、又は胆管癌である、医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製薬技術の分野に属し、キナゾリン系化合物、その組成物及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体(ErbB)チロシンキナーゼは、複数の経路を介して細胞の増殖、遊走、分化、アポトーシス、及び細胞運動を調節することができる。ErbBファミリーメンバー及びそれらの幾つかのリガンドは、一般に、多くの形態の悪性腫瘍で過剰発現、増幅、又は変異することから、重要な治療標的となっている。このプロテインキナーゼファミリーとしては、ErbB1/EGFR/HER1、ErbB2/HER2、ErbB3/HER3、及びErbB4/HER4が挙げられるが、そのうちEGFR及びHER2は、非小細胞肺癌及び乳癌に対する薬剤の開発のための重要な標的である(非特許文献1、非特許文献2)。現在、数世代のEGFR及びHER2キナーゼ阻害剤も市販されている。
【0003】
しかしながら、EGFR及びHER2の発現は安定しておらず、遺伝子の増幅及び再編成が頻繁に起こるため、腫瘍細胞表面の抗原表現型が変化してしまう。EGFR及びHER2の各種変異に対する既存の標的化薬剤の有効性は大きく異なり、Ins20に対する阻害能が最も弱いため、Ins20変異は薬剤耐性変異となり、それに対して現存の複数世代の標的化薬剤はほとんど無効である。EGFR遺伝子及びHER2遺伝子のエクソン20変異は同様の位置に生じるものの、EGFRのエクソン20挿入変異には多くのタイプがあり、そのうち122種類が見つかっている。対照的に、HER2遺伝子のエクソン20挿入変異のタイプは少なく、最も一般的なものはA775_G776insYVMA部位であり、変異総数のほぼ70%を占めている。統計によれば、NSCLC患者の約3%がHER2変異を有しており、約90%がHER2遺伝子のエクソン20変異タイプを有する患者であることも示されている。これらのEGFR/HER2エクソン20変異患者では、既存の標的化TKI薬剤の有効性が非常に限られている。
【0004】
一方、EGFR/HER2 Ins20変異を標的とした少数の研究プロジェクトもある。ポジオチニブは、Hanmiが開発した広域スペクトルHER阻害剤である。臨床データによれば、ポジオチニブはEGFR/HER2のエクソン20変異に対しても一定の効果を有しているものの、副作用の発生率が高いことが示されている。同時に、市販のピロチニブも、関連するエクソン20変異に関する臨床研究が行われているところである。
【0005】
加えて、近年、正常組織の細胞表面ではなく腫瘍細胞の表面にのみ発現する上皮増殖因子受容体EGFRの変異体クラスであるEGFRvIIIも同定されており、これも非常に一般的なEGFR変異体である。EGFRの無傷構造とは対照的に、EGFRvIIIの細胞外リガンド結合領域をコードするエクソン2~7が欠失し、その結果801塩基対の欠失が生じて、エクソン1と8とが結合し、この結合部位に新たなグリシンが生成されることにより、アミノ酸6~273の欠失が引き起こされるため、リガンドEGFへの結合能が失われる。EGFRvIIIは、リガンド結合がない場合、二量体化及び自己リン酸化によって無秩序にチロシンキナーゼを構造的に活性化し、下流シグナル伝達を誘導し、腫瘍細胞の増殖を刺激する。したがって、EGFRvIIIに対する新たな分子標的治療薬の開発は、腫瘍患者にとってより効果的で費用対効果の高い治療選択肢を提供するであろうし、満たされていない膨大な臨床的ニーズがある。
【0006】
化学構造の観点から、市販されている多くのTKI薬剤、並びに上記のポジオチニブ及びピロチニブはすべて、キナゾリン又はキノリンの構造に由来している。下図に示すように、キナゾリン又はキノリンを介してTKI阻害剤を構築する場合、通常、4位にアニリン系基が導入され、6位及び7位が同時に置換される。下図に示すピロチニブ、ネラチニブ、及びポジオチニブはいずれも7位がアルコキシ基で置換されており、6位にも置換基を有している。しかしながら、5位の置換によってTKI阻害剤を構築する試みはほとんどない。本出願では、5位に置換基を導入し、7位の置換基を除去することによって一連のキナゾリン化合物を合成し、これらはHER2及びそのエクソン20変異に対して優れた阻害活性を示し、HER2エクソン20変異の治療に使用されることが期待される。
【0007】
とりわけ注目すべきは、現在市販されている小分子HER2阻害剤はいずれも血液脳関門を効果的に通過することができず、HER2陽性乳癌患者の約50%で脳転移が発生することである。本出願の幾つかの化合物は、血液脳関門を効果的に通過することができ、HER2陽性腫瘍に対して極めて強力な阻害効果を有することを考慮すると、本出願の化合物は、HER2陽性乳癌からの脳転移を有する患者の治療にも使用されることが期待される。
【0008】
【化1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Dienstmann R.,et.al.,(2001)Personalizing Therapy with Targeted Agents in Non-Small Cell Lung Cancer.ONCOTARGET.2(3),165
【文献】Mitri Z.,et.al.(2012)The HER2 Receptor in Breast Cancer:Pathophysiology,Clinical Use,and New Advances in Therapy.,Chemotherapy Research&Practice.,Volum 2012(23),743193
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、式(I)で表される化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体を提供する。
【化2】
【0011】
式(I)中、Zは、-NH-又は-O-であり;
【0012】
は、-(CH-[式中、nは0~3の整数である]であり;
【0013】
は、水素、ヒドロキシ、4~7員の複素脂環式基、又は-NRであり、
【0014】
及びRは、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、ヒドロキシ置換C~Cアルキル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、又はC~Cシクロアルキル置換C~Cアルキルであり;
【0015】
上記4~7員の複素脂環式基は、N、O、及びSから選択される1~2つのヘテロ原子を含有する複素脂環式基であり、上記複素脂環式基は、C~Cアルキル、C~Cアルキルアシル、ヒドロキシ、シアノ、アミノアシル、モノ置換若しくはジ置換C~Cアミノアシル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、ヒドロキシ置換C~Cアルキルのうちの1つ又は2つで置換されているか、又は非置換であり;
【0016】
Lは、-O-、-S-、又は-NH-であり;
【0017】
は、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ヒドロキシ置換C~Cアルキル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、又は-(CH)m-Rであり、
【0018】
は、C~Cシクロアルキル又は4~6員の複素脂環式基であり、mは0~3の整数であり、
【0019】
上記4~6員の複素脂環式基は、N、O、及びSから選択される1~2つのヘテロ原子を含有する複素脂環式基であり;
【0020】
は、-M-(CH)p-[式中、MはO、S、又はNHであり、pは0~2の整数である]であり、
【0021】
は、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、及びピロリルから選択されるアリール又はヘテロアリール基であり、上記アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルキニル、C~Cアルケニル、及び-NR’R”から選択される1~3つの置換基で置換されているか、又は非置換であり、
【0022】
R’、R”は、それぞれ独立して、H又はC~Cアルキルであり;
【0023】
は、水素、ハロゲン、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシである。
【0024】
代替的な実施形態によれば、Zが、-NH-である。
【0025】
代替的な実施形態によれば、Tが、-(CH-[式中、nは0~2の整数である]であり、
【0026】
が、水素、4~6員の複素脂環式基、又は-NRであり、
【0027】
及びRが、それぞれ独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、ヒドロキシ置換C~Cアルキル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、又はC~Cシクロアルキル置換C~Cアルキルであり;
【0028】
上記4~6員の複素脂環式基が、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、又はチオモルホリニルであり、上記基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アルデヒド基、アセチル、プロピオニル、ヒドロキシ、シアノ、アミノアシル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、イソプロポキシメチル、イソプロポキシエチル、イソプロポキシプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルのうちの1つ又は2つで置換されているか、又は非置換である。
【0029】
さらに代替的には、Tが、-(CH-[式中、nは0又は1である]であり;
【0030】
が、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、メチルエチルアミノ、メチルプロピルアミノ、エチルプロピルアミノ、メチルシクロプロピルアミノ、エチルシクロプロピルアミノ、プロピルシクロプロピルアミノ、イソプロピルシクロプロピルアミノ、メチルシクロブチルアミノ、エチルシクロブチルアミノ、プロピルシクロブチルアミノ、イソプロピルシクロブチルアミノ、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、1-メチルピロリジン-2-イル、1-エチルピロリジン-2-イル、1-プロピルピロリジン-2-イル、1-イソプロピルピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシプロピル)ピロリジン-2-イル、ピペリジン-1-イル、1-メチルピペラジン-4-イル、1-エチルピペラジン-4-イル、1-プロピルピペラジン-4-イル、1-イソプロピルピペラジン-4-イル、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-4-イル、モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロピラン-2-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、又はチオモルホリニルである。
【0031】
さらに代替的には、Rが、1-メチルピロリジン-2-イル、1-エチルピロリジン-2-イル、1-プロピルピロリジン-2-イル、1-イソプロピルピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン-2-イル、又は1-(2-ヒドロキシプロピル)ピロリジン-2-イルである。
【0032】
別の代替的な実施形態によれば、Lが、-O-又は-NH-であり;
【0033】
が、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ヒドロキシ置換C~Cアルキル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、又は-(CH)m-Rであり、
【0034】
が、C~Cシクロアルキル又は4~6員の複素脂環式基であり、mが、0、1、又は2であり、
【0035】
上記4~6員の複素脂環式基が、N、O、及びSから選択される1~2つのヘテロ原子を含有する複素脂環式基である。
【0036】
さらに代替的には、Lが、-O-であり;
【0037】
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イルである。
【0038】
別の代替的な実施形態において、Tが、-O-(CH)p-[式中、pは0又は1である]であり;
【0039】
が、フェニル、ピリジル、又はピリミジルであり、上記フェニル、ピリジル、及びピリミジルが、フッ素、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、イソプロピル、イソプロポキシ、シアノ、ヒドロキシ、フルオロメチル、2-フルオロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、及び2,2-ジフルオロエチルから選択される1~2つの置換基で置換されているか、又は非置換である。
【0040】
さらに代替的には、Tが-O-(CH)p-[式中、pは1である]であり;
【0041】
が、フェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、6-メチルピリジン-2-イル、6-メトキシピリジン-2-イル、5-メチルピリジン-2-イル、5-メトキシピリジン-2-イル、4-メチルピリジン-2-イル、4-メトキシピリジン-2-イル、3-メチルピリジン-2-イル、3-メトキシピリジン-2-イル、6-フルオロピリジン-2-イル、又は6-クロロピリジン-2-イルである。
【0042】
代替的な実施形態によれば、Rが、水素、フッ素、塩素、メチル、メトキシであり、さらに代替的には、水素、フッ素、塩素である。
【0043】
代替的な実施形態によれば、本出願は、次の式で表される化合物、その立体異性体、又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【化3】
【0044】
式中、Rは、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、又はチオモルホリニルであり、上記基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アルデヒド基、アセチル、プロピオニル、ヒドロキシ、シアノ、アミノアシル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、イソプロポキシメチル、イソプロポキシエチル、イソプロポキシプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルのうちの1つ又は2つで置換されているか、又は非置換であり;
【0045】
は、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ヒドロキシ置換C~Cアルキル、C~Cアルコキシ置換C~Cアルキル、又は-(CH)m-Rであり、
【0046】
は、C~Cシクロアルキル又は4~6員の複素脂環式基であり、mは、0、1、又は2であり、
【0047】
上記4~6員の複素脂環式基は、N、O、及びSから選択される1~2つのヘテロ原子を含有する複素脂環式基であり;
【0048】
は、フェニル、ピリジル、又はピリミジルであり、上記フェニル、ピリジル、及びピリミジルは、フッ素、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、イソプロピル、イソプロポキシ、シアノ、ヒドロキシ、フルオロメチル、2-フルオロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、及び2,2-ジフルオロエチルから選択される1~2つの置換基で置換されているか、又は非置換であり;
【0049】
は、水素、フッ素、塩素、メチル、メトキシである。
【0050】
さらに代替的には、Rが、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、1-メチルピロリジン-2-イル、1-エチルピロリジン-2-イル、1-プロピルピロリジン-2-イル、1-イソプロピルピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン-2-イル、又は1-(2-ヒドロキシプロピル)ピロリジン-2-イルであり;
【0051】
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、又はエトキシブチルであり;
【0052】
が、フェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、6-メチルピリジン-2-イル、6-メトキシピリジン-2-イル、5-メチルピリジン-2-イル、5-メトキシピリジン-2-イル、4-メチルピリジン-2-イル、4-メトキシピリジン-2-イル、3-メチルピリジン-2-イル、3-メトキシピリジン-2-イル、6-フルオロピリジン-2-イル、又は6-クロロピリジン-2-イルであり;
【0053】
が、フッ素又は塩素である。
【0054】
さらに代替的には、Rが、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、1-メチルピロリジン-2-イル、1-エチルピロリジン-2-イル、1-プロピルピロリジン-2-イル、1-イソプロピルピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-メトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシエチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-エトキシプロピル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-イル、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン-2-イル、又は1-(2-ヒドロキシプロピル)ピロリジン-2-イルであり;
【0055】
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、又はエトキシブチルであり;
【0056】
が、ピリジン-2-イルであり;
【0057】
が、塩素である。
【0058】
さらに代替的には、Rが、1-メチルピロリジン-2-イル、1-エチルピロリジン-2-イル、1-イソプロピルピロリジン-2-イルであり;
【0059】
が、メチル、エチル、プロピル、メトキシエチル、メトキシプロピル、2,2-ジフルオロエチルであり;
【0060】
が、ピリジン-2-イルであり;
【0061】
が、塩素である。
【0062】
本出願に係る例示的な化合物を以下に列挙する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0063】
本出願の別の態様は、本出願に記載の化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体と、1つ又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含有する医薬組成物を提供する。
【0064】
本出願の医薬組成物はさらに、1つ又は複数の他の治療薬を含有してもよい。
【0065】
本出願はさらに、チロシンキナーゼHER2に関連する疾患、特にチロシンキナーゼHER2のエクソン20変異に関連する疾患の治療のための医薬の製造における、上記化合物、その立体異性体、その医薬的に許容される塩、又はその重水素化誘導体の使用にも関する。
【0066】
上記疾患は、代替的には、癌又は自己免疫疾患、特に眼底疾患、眼球乾燥症、乾癬、白斑、皮膚炎、円形脱毛症、関節リウマチ、大腸炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、クローン病、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、肝線維症、骨髄線維症、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌、神経膠腫、神経膠芽腫、卵巣癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、黒色腫、子宮内膜癌、前立腺癌、膀胱癌、白血病、胃癌、肝癌、消化管間質腫瘍、甲状腺癌、慢性顆粒球性白血病、急性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、上咽頭癌、食道癌、脳腫瘍、B細胞及びT細胞リンパ腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、胆管癌肉腫、又は胆管癌である。
【0067】
本開示はさらに、HER2等のキナーゼによって媒介される疾患又は状態を治療する方法であって、治療有効量の本出願に記載の化合物又はその塩を、それを必要とする患者(ヒト又は他の哺乳動物、特にヒト)に投与することを含む方法にも関し、上記HER2等のキナーゼによって媒介される疾患又は状態は、上述したものを含む。
【0068】
本開示の前述の及び他の目的、特徴、及び他の利点は、図面と併せて次の詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】担癌マウスのT/C値に対するネラチニブの経時的な効果を示す図である。
図2】担癌マウスのT/C値に対するピロチニブの経時的な効果を示す図である。
図3】担癌マウスのT/C値に対する本出願の実施例4の化合物の経時的な効果を示す図である。
図4】担癌マウスのT/C値に対する本出願の実施例8の化合物の経時的な効果を示す図である。
図5】担癌マウスのT/C値に対する本出願の実施例9の化合物の経時的な効果を示す図である。
図6】担癌マウスのT/C値に対する本出願の実施例11の化合物の経時的な効果を示す図である。
図7】担癌マウスのT/C値に対する本出願の実施例24の化合物の経時的な効果を示す図である。
図8】担癌マウスのT/C値に対する本出願の実施例29の化合物の経時的な効果を示す図である。
図9】担癌マウスのT/C値に対する本出願の実施例33の化合物の経時的な効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
特に明記しない限り、(明細書及び特許請求の範囲を含む)本出願で使用する次の用語は、以下に示す定義を有する。本出願において、特に明記しない限り、「又は」あるいは「及び」の使用は、「及び/又は」を意味する。加えて、「含む」という用語、並びに「含有する」及び「有する」等の他の形態の使用は、限定的なものではない。本明細書で使用する小見出しは、単なる整理の目的であり、記載されたトピックを限定するものとして解釈されるべきではない。
【0071】
特に明記しない限り、アルキル基は、特定の数の炭素原子を有する飽和の直鎖状及び分枝状炭化水素基を指し、C~Cアルキルという用語は、1~6つの炭素原子を含有するアルキル部分を指す。同様に、C~Cアルキルとは、1~3つの炭素原子を含有するアルキル部分を指す。例えば、C~Cアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、3-(2-メチル)ブチル、2-ペンチル、2-メチルブチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-ヘキシル、及び2-メチルペンチル等が挙げられる。
【0072】
「C~CアルコキシC~Cアルキルチオ」又は「ヒドロキシ置換C~Cアルキル」という用語等、「アルキル」等の置換基の用語を他の置換基の用語と組合せて使用する場合、連結する置換基の用語(例えば、アルキル又はアルキルチオ)は、結合点が該連結する置換基を介する二価部分を包含することを意図している。「C~CアルコキシC~Cアルキルチオ」の例としては、限定されないが、メトキシメチルチオ、メトキシエチルチオ、及びエトキシプロピルチオ等が挙げられる。「ヒドロキシ置換C~Cアルキル」の例としては、限定されないが、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシイソプロピル等が挙げられる。
【0073】
アルコキシ基は、先に記載の直鎖状又は分枝状アルキル基及び-O-によって形成されるアルキル-O-基であり、例えば、メトキシ、エトキシ等である。同様に、アルキルチオ基は、先に記載の直鎖状又は分枝状アルキル基及び-S-によって形成されるアルキル-S-基であり、例えば、メチルチオ、エチルチオ等である。
【0074】
アルケニル基及びアルキニル基は、直鎖状又は分枝状アルケニル基又はアルキニル基を含み、C~Cアルケニル又はC~Cアルキニルという用語は、少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基を有する直鎖状又は分枝状炭化水素基を指す。
【0075】
「C~Cハロアルキル」等の「ハロアルキル」という用語は、1~6つの炭素原子を含むアルキル部分の1つ又は複数の炭素原子上に、同一又は異なっていてもよい1つ又は複数のハロゲン原子を有する基を指す。「C~Cハロアルキル」の例としては、限定されないが、-CF(トリフルオロメチル)、-CCl(トリクロロメチル)、1,1-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、及びヘキサフルオロイソプロピル等が挙げられる。同様に、「C~Cハロアルコキシ」という用語は、上記のC~Cハロアルキル及び-O-によって形成されるハロアルキル-O-基を指し、例えば、トリフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ等であり得る。
【0076】
「シクロアルキル」という用語は、特定の数の炭素原子を含有する非芳香族の飽和環式炭化水素基を指す。例えば、「(C~C)シクロアルキル」という用語は、3~6つの環炭素原子を有する非芳香族の環式炭化水素環を指す。例示的な「(C~C)シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0077】
「アリール」という用語は、6~12個の炭素環原子を含有し、少なくとも1つの芳香環を有する、芳香族の単環式又は二環式炭化水素ラジカルを含む基又は部分を指す。「アリール」の例としては、フェニル、ナフチル、インデニル、及びジヒドロインデニル(インダニル)が挙げられる。一般に、本開示の化合物では、アリールはフェニルである。
【0078】
特に明記しない限り、本明細書で使用する「複素脂環式基」という用語は、N、O、及びSから選択される1~3つのヘテロ原子(ここで、N又はSヘテロ原子は、任意に酸化され得て、Nヘテロ原子はさらに、任意に四級化され得る)及び炭素原子からなる非置換の又は置換された安定した4~7員の非芳香族の単環式飽和環系を指す。このような複素環の例としては、限定されないが、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリニル、チアゾリニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、1,3-ジオキソラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチオラニル、1,3-オキサチアニル、1,3-ジチアニル、1,4-オキサチオラニル、1,4-オキサチアニル、1,4-ジチアニル、モルホリニル、及びチオモルホリニルが挙げられる。
【0079】
本明細書で使用する「ヘテロアリール」という用語は、独立して窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~3つのヘテロ原子を含む、(5~10個の環原子を含有する)芳香族の単環式若しくは二環式ラジカルを含む基又は部分を表す。該用語はさらに、ヘテロシクロアルキル環部分に縮合したアリール環部分、又はシクロアルキル環部分に縮合したヘテロアリール環部分を含む二環式の複素環式アリールも含む。特に明記しない限り、非置換の又は置換された安定した5又は6員の単環式芳香環系を表し、さらに、N、O、及びSから選択される1~3つのヘテロ原子(ここで、N及びSヘテロ原子は酸化され得て、Nヘテロ原子はさらに四級化され得る)及び炭素原子から構成される、9又は10個の環原子を含む非置換の又は置換されたベンゼン縮合複素芳香環系又は二環式複素芳香環系も表し得る。ヘテロアリール基は、任意のヘテロ原子又は炭素原子に結合して、安定した構造を形成し得る。ヘテロアリール基の代表例としては、限定されないが、フラニル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、オキソ-ピリジル(ピリジル-N-オキシド)、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、1,3-ベンゾジオキソリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ベンゾチエニル、インダジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、ベンズイミダゾリル、ジヒドロベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ジヒドロベンズイソチアゾリル、インダゾリル、イミダゾピリジル、ピラゾロピリジル、ベンゾトリアゾリル、トリアゾロピリジル、プリニル、キノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、キノキサリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、1,5-ナフチリジニル、1,6-ナフチリジニル、1,7-ナフチリジニル、1,8-ナフチリジニル、及びプテリジルが挙げられる。
【0080】
「カルボニル」という用語は、-C(O)-基を指す。「ハロゲン」及び「ハロ」という用語は、塩素、フッ素、臭素、又はヨウ素の置換基を指す。「オキソ」とは、二重結合を含む酸素部分を指し、例えば、「オキソ」は、炭素原子に直接結合してカルボニル部分(C=O)を形成してもよい。「ヒドロキシ」とは、ラジカル-OHを指すことを意図している。本明細書で使用する「シアノ」という用語は、基:-CNを指す。
【0081】
「重水素化誘導体」という用語は、場合によっては、本出願の化合物中の1つ又は複数の水素原子の重水素化によって得られる誘導体を指す。
【0082】
「それぞれ独立して」という用語は、複数の置換基が多数の考えられる置換基から選択される場合、それらの置換基が同じ又は異なっていてもよいことを意味する。
【0083】
式Iの化合物、又はその立体異性体、結晶形、又はプロドラッグ、及びその医薬的に許容される塩が、溶媒和の形態又は非溶媒和の形態で存在してもよいことは明らかである。例えば、溶媒和の形態は、水溶性の形態であり得る。本開示は、溶媒和及び非溶媒和の形態の全てを含む。
【0084】
本開示では、「異性体」という用語は、同じ分子式を有する異なる化合物を指し、立体異性体及び互変異性体等の様々な異性体の形態を含み得る。「立体異性体」は、それらの原子の空間的な配置のみが異なる異性体である。本明細書に記載の幾つかの化合物は、1つ又は複数の不斉中心を含むため、絶対立体化学に基づいて(R)体又は(S)体として定義され得るエナンチオマー、ジアステレオマー、及び他の立体異性体の形態を生じることができる。本明細書に開示する化学物質、医薬組成物、及び方法は、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態、及びそれらの間にある混合物を含む、これらの考えられる異性体の全てを含むことを意図する。光学活性な(R)及び(S)異性体は、キラルシントン若しくはキラル試薬を使用して調製することができ、あるいは従来技術を使用して分割することができる。化合物の光学活性は、キラルクロマトグラフィー及び偏光分析法を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法によって分析することができ、ある立体異性体の他の異性体に対する優占度を決定することができる。
【0085】
本開示の化合物の個々の立体異性体(又は異性体リッチな混合物)は、当業者に既知の方法を用いて分割されてもよい。例えば、このような分割は、(1)ジアステレオ異性体の塩、錯体、若しくは他の誘導体の形成;(2)酵素酸化若しくは還元等による、立体異性体に特異的な試薬との選択的反応;又は(3)キラルリガンドと結合したシリカ等のキラル支持体上、若しくはキラル溶媒の存在下など、キラル環境における気液クロマトグラフィー若しくは液体クロマトグラフィーによって、実施されてもよい。当業者であれば、上述の分離手順の一つによって所望の立体異性体を別の化学物質へと変換する場合、所望の形態を遊離するためのさらなる工程が必要であることを認識するであろう。あるいは、特定の立体異性体は、光学活性な試薬、基質、触媒、若しくは溶媒を使用する不斉合成によって、又は不斉変換により一方のエナンチオマーを他方に変換することによって、合成されてもよい。
【0086】
本明細書に記載の化合物がオレフィン性二重結合を含む場合、特に明記しない限り、その化合物は様々なシス又はトランス異性体を含むことを意味する。
【0087】
「互変異性体」は、互変異性化により相互に変換可能な構造的に異なる異性体である。「互変異性化」は、異性化の一形態であり、酸-塩基化学の一部と考えることができるプロトトロピック変化互変異性化又はプロトン移動互変異性化を含む。「プロトトロピック変化互変異性化」又は「プロトン移動互変異性化」は、結合レベルの変換を伴うプロトンの移動を含み、これは、多くの場合、単結合と隣接する二重結合との交換である。互変異性化が(例えば、溶液中で)可能な場合、互変異性体は化学平衡に達し得る。互変異性化の一例として、ケト-エノール互変異性化がある。
【0088】
有効成分としての本開示の化合物、及びその調製方法は、両方とも本開示に含まれる。さらに、幾つかの化合物の結晶形は、結晶多形として存在してもよく、このような形態も本開示に含まれる。加えて、幾つかの化合物は、水との溶媒和物(即ち、水和物)、又は一般的な有機溶媒との溶媒和物を形成してもよく、このような溶媒和物も本開示の範囲内に含まれる。
【0089】
本開示の化合物は、遊離形態で治療に使用してもよく、あるいは、適切な場合、医薬的に許容される塩若しくは他の誘導体として治療に使用してもよい。本明細書において、「医薬的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の有機塩及び無機塩を指し、これらは、ヒト及び下等動物における使用に好適であり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等がなく、合理的なベネフィット/リスク比を有する。アミン、カルボン酸、ホスホン酸塩、及び他の種類の化合物の医薬的に許容される塩は、当技術分野で周知である。塩は、以下に限定されないが、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、過塩素酸等の無機酸、又は酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸等の有機酸を含む、好適な遊離塩基又は酸と本開示の化合物とを反応させることによって形成され得る。あるいは、塩は、イオン交換等の当技術分野で周知の方法によって得られてもよい。他の医薬的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ラウリル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩(glyconate)、ヘミ硫酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、ペル-3-フェニルプロピオネート、リン酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩等が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。他の医薬的に許容される塩としては、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩から形成されるアンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンの好適な無毒の塩が挙げられる。
【0090】
さらに、本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、インビボで本開示の化合物へと変換され得る化合物を意味する。この変換は、プロドラッグの血中での加水分解、又は血液若しくは組織での酵素による親化合物への変換によって影響を受ける。
【0091】
本開示の医薬組成物は、本明細書に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩と;キナーゼ阻害剤(小分子、ポリペプチド、抗体等)、免疫抑制剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗生物質、及び抗血管過増殖化合物から選択される追加の活性剤と;任意の医薬的に許容される担体、アジュバント、又は賦形剤とを含有する。
【0092】
本開示の化合物は、単独で使用してもよく、あるいは1つ若しくは複数の本開示の他の化合物、又は1つ若しくは複数の他の薬剤と併用してもよい。併用して投与される場合、治療薬は、同時投与用又は異なる時間での逐次投与用に処方するか、あるいは単一の組成物として投与することもできる。「併用療法」とは、各薬剤が同時投与される又は逐次投与される方法で、いずれの場合でも薬剤の最適な効果を達成する目的のために行う、本開示の化合物と別の薬剤との併用を指す。同時投与は、同時送達用の剤形の他、各化合物について別々の剤形も含む。したがって、本開示の化合物の投与は、放射線療法や、癌の治療に使用されるような細胞分裂阻害剤、細胞毒性剤、他の抗癌剤など、当技術分野で既知の他の治療法と併用することで、癌の症状を改善することができる。本開示において、投与順序は限定されない。本開示の化合物は、他の抗癌剤又は細胞毒性剤の前に、同時に、又は後に投与されてもよい。
【0093】
本開示の医薬成分を調製するために、有効成分としての式(I)の1つ又は複数の化合物又はその塩は、医薬担体と緊密に混合することができ、これは、従来の医薬製剤技術に従って実施される。担体は、各種の投与様式(例えば、経口投与又は非経口投与)のために設計された製剤形態に応じて、多種多様な形態で使用することができる。好適な医薬的に許容される担体は、当技術分野で周知である。これらの幾つかの医薬的に許容される担体の説明は、米国薬剤師会及び英国薬学会が共同で出版したHandbook of Pharmaceutical Excipientsに見つけることができる。
【0094】
本開示の医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、徐放形態、溶液、若しくは懸濁液等の経口投与に好適な形態;透明な溶液、懸濁液、乳濁液等の非経口注射用の形態;又は、軟膏、クリーム等の局所適用のための形態;又は、直腸投与用の坐剤としての形態であってもよい。また、医薬成分は、正確な投与量での単回投与のための単位剤形で提供されてもよい。医薬成分は、従来の医薬担体又は賦形剤、及び本開示に従って調製される有効成分としての化合物を含み、さらに、他の医学又は医薬製剤、担体、アジュバント等も含んでもよい。
【0095】
治療用化合物は、ヒト以外の哺乳動物に投与することもできる。哺乳動物の薬剤投与量は、動物の種及びその疾患状態又はその障害状態に依存する。治療用化合物は、カプセル、ボーラス、錠剤、又は液剤の形態で動物に投与することができる。また、治療用化合物は、注射又は輸液によって動物に導入することもできる。これらの薬剤形態は、獣医学診療基準を満たす伝統的な方法で調製される。代替的には、医薬合成薬剤を動物の飼料と混合して動物に与えることもできるため、濃縮された飼料添加物又はプレミックスを、通常の動物の飼料と混合することによって調製することができる。
【0096】
本開示のさらなる目的は、治療有効量の本開示の化合物を含有する組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、該対象における癌を治療する方法を提供することである。
【0097】
本開示はさらに、チロシンキナーゼEGFR及びHER2に関連する疾患の治療のための医薬の製造における、本開示の化合物又はその医薬的に許容される誘導体の使用も含み、上記疾患は、癌(本明細書の他の箇所に示されるように、非固形腫瘍、固形腫瘍、原発性癌、又は転移性癌を含み、さらに、1つ又は複数の他の治療法に対して耐性又は難治性である癌も含む)、特に肺癌又は乳癌であってもよい。
【実施例
【0098】
本開示は、対応する化合物を調製する方法も提供する。本明細書に記載の化合物を調製するために、以下の方法を含む様々な合成方法を使用することができる。本開示の化合物、又はその医薬的に許容される塩、異性体、若しくは水和物は、下記の方法、有機化学合成の分野で既知の合成法、又は当業者に理解されるこれらの方法を変更した方法を使用して合成することができる。代替的な方法としては、限定されないが、下記の方法が挙げられる。
【0099】
以下、本開示の目的、技術的解決手段、及び利点をより明確にするために、具体的な実施例と共に本開示をさらに詳細に説明する。ここに記載される具体的な実施例は、本開示を説明するためにのみ使用され、本発明を限定することを意図しないことが理解されるべきである。実施例に具体的な技術又は条件が示されていない場合、当技術分野における文献又は製品仕様書に記載される技術又は条件に従うものとする。使用される試薬又は機器についてメーカーが示されていない場合、その試薬又は機器は全て、市販されている従来の製品である。本明細書で使用する「及び/又は」という用語は、1つ又は複数の関連する列挙された項目の任意の及び全ての組合せを含む。以下、実施例は、本発明をより良く例証するために設けられ、特に明記しない限り、全ての温度は℃を指す。本開示の幾つかの化合物の名称は、Chemdrawによって生成し、翻訳したものである。
【0100】
中間体の合成
中間体1.
【0101】
(R,E)-3-(1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル)アクリル酸
【化4】
【0102】
工程1):tert-ブチル(R)-2-ホルミルピロリジン-1-カルボキシレートの合成
【0103】
tert-ブチル(R)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(4g、20mmol)及びデス-マーチン試薬(8.5g、20mmol)を氷水浴中のジクロロメタン(70ml)に加え、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を濾過し、洗浄し、乾燥し、濃縮して、油状物4gを得て、これを次の工程で直接使用した。
【0104】
工程2):tert-ブチル(R,E)-2-(3-エトキシ-3-オキソプロプ-1-エン-1-イル)ピロリジン-1-カルボキシレートの合成;
【0105】
ホスホノ酢酸トリエチル(3.6mL、18.1mmol)をNaH(782mg、19.6mmol)のTHF(15mL)溶液に25℃で滴下した。0.5時間後、溶液を0℃に冷却し、Boc-L-プロリン(3g、15.1mmol)のTHF(60mL)溶液を滴下した。混合物を0℃でさらに2時間攪拌し、次いで水を加えてクエンチした。水相をDCMで数回逆抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた黄色の油状物(4g、定量)をさらなる精製をせずに直接使用した。
【数1】
【0106】
工程3):エチル(R,E)-3-(1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル)アクリレートの合成;
【0107】
tert-ブチル(R,E)-2-(3-エトキシ-3-オキソプロプ-1-エン-1-イル)ピロリジン-1-カルボキシレート(0.27g、1mmol)をトリフルオロ酢酸(1ml)のジクロロメタン(4ml)溶液に加え、混合物を室温で2時間攪拌して反応させた。混合物を濃縮して、黄色の油状物を得た。黄色の油状物をブロモエチルメチルエーテル(0.3g、2mmol)及び炭酸カリウム(0.45g、3mmol)のアセトニトリル(10ml)溶液に加え、混合物を80℃に加熱して12時間反応させた。混合物を冷却し、酢酸エチルで抽出し、3回水洗した。有機相を乾燥し、濃縮して、淡黄色の油状物0.12gを得た。
【数2】
【0108】
工程4):(R,E)-3-(1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル)アクリル酸の合成;
【0109】
エチル(R,E)-3-(1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル)アクリレート(0.12g、0.5mmol)及び水酸化ナトリウム(0.04g、1mmol)をメタノール(1ml)及び水(1ml)の溶液に加え、反応物を室温で一晩攪拌した。反応が完了した後、混合物を酢酸エチルで抽出した。水相を希塩酸でpH4~5に調整し、濃縮し、ジクロロメタンとメタノールとの混合液で洗浄し、濾過した。濾液を濃縮し、次いでアセトニトリルでスラリー化して、白色の固体として生成物を得た。
【数3】
【0110】
中間体2.(R,E)-3-(1-シクロブチルピロリジン-2-イル)アクリル酸
【化5】
【0111】
工程1):エチル(R,E)-3-(1-シクロブチルピロリジン-2-イル)アクリレートの合成
【0112】
tert-ブチル(R,E)-2-(3-エトキシ-3-オキソプロプ-1-エン-1-イル)ピロリジン-1-カルボキシレート(0.27g、1mmol)をトリフルオロ酢酸(1ml)のジクロロメタン(3ml)溶液に加えた。混合物を室温で2時間攪拌して反応させ、濃縮して、黄色の油状物を得た。黄色の油状物であるシクロブチル-1-オン(0.1g、1.5mmol)を1,2-ジクロロエタンに加え、混合物を30分間攪拌した。次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.13g、2mmol)を加えて反応させた。反応の完了後、pHを8~9に調整し、混合物をジクロロメタンで抽出した。有機相を水洗し、乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製して、標的生成物を得た。
【0113】
工程2):(R,E)-3-(1-シクロブチルピロリジン-2-イル)アクリル酸の合成
【0114】
エチル(R,E)-3-(1-シクロブチルピロリジン-2-イル)アクリレート(0.12g、0.5mmol)及び水酸化ナトリウム(0.04g、1mmol)をメタノール(1ml)及び水(1ml)の溶液に加え、混合物を室温で一晩攪拌して反応させた。反応が完了した後、混合物を酢酸エチルで抽出した。水相を希塩酸でpH4~5に調整し、濃縮し、ジクロロメタンとメタノールとの混合液で洗浄し、濾過した。濾液を濃縮し、次いでアセトニトリルでスラリー化して、白色の固体として生成物を得た。
【数4】
【0115】
アクリロイルクロリド中間体の合成
【0116】
アクリロイルクロリド中間体は、対応するアクリル酸化合物を塩化オキサリルの存在下で反応させることによって合成した。(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの合成を下記に一例として示し、残りのアクリロイルクロリド中間体は同様の方法によって合成した。
【化6】
【0117】
(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリル酸(150mg、1mmol)、塩化オキサリル(1.05mmol)、及びDMF(1滴)をそれぞれ氷水浴の条件下で無水ジクロロメタン(2ml)に加え、混合物を室温で2時間攪拌して反応させた。混合物を濃縮して、反応の次の工程で直接使用できる固体を得た。
【0118】
次の塩化アシル中間体を対応する酸から合成した。
【化7】
【0119】
実施例1.(E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド
【化8】
【0120】
工程1):5-クロロキナゾリン-4(3H)-オンの合成
【0121】
2-アミノ-6-クロロ安息香酸(17.2g、100mmol)及び酢酸ホルムアミジン(15.6g、150mmol)をそれぞれエタノール(150mL)の溶液に加え、混合物を加熱還流し、24時間攪拌して反応させた。混合物を冷却し、濾過して、収率78%で白色の固体14gを得た。
【数5】
【0122】
工程2):5-クロロ-6-ニトロキナゾリン-4(3H)-オンの合成
【0123】
5-クロロキナゾリン-4(3H)-オン(7.2g、40mmol)を濃硫酸(40mL)に溶解し、硝酸カリウム(4.2g、41.6mmol)粉末を0℃にて幾つかに分けて加えた。混合物を室温で24時間攪拌して反応させた。生成物を砕氷に幾つかに分けて加え、混合物を1時間攪拌した。混合物を濾過して、淡黄色の固体を得た。得られた固体をエタノールに加えた。混合物を還流し、次いで冷却し、濾過して、収率95%で白色の固体として生成物8.6gを得た。
【0124】
工程3):4,5-ジクロロ-6-ニトロキナゾリンの合成
【0125】
5-クロロ-6-ニトロキナゾリン-4(3H)-オン(4.5g、20mmol)をジクロロスルホキシド(45mL)に加え、DMF(2mL)を加えた。混合物を80℃に加熱して、還流で反応させた。生成物が完全に溶解したところで、混合物をさらに2時間反応させ、次いで濃縮した。トルエンを加え、混合物を再度濃縮して、白色の固体として生成物4.9gを得た。
【0126】
工程4):5-クロロ-N-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)-6-ニトロキナゾリン-4-アミンの合成
【0127】
4,5-ジクロロ-6-ニトロキナゾリン(4.9g、20mmol)を無水アセトニトリルに加え、3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリン(7g、30mmol)及びトリエチルアミン(3g、30mmol)をそれぞれ0℃で加えた。混合物を50℃に加熱して5時間反応させた。混合物を冷却し、濃縮し、メタノールで洗浄して、収率74%で白色の固体として生成物6.5gを得た。
【数6】
【0128】
工程5):N-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)-5-メトキシ-6-ニトロキナゾリン-4-アミンの合成
【0129】
5-クロロ-N-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)-6-ニトロキナゾリン-4-アミン(4.4g、10mmol)を0℃でDMF(15mL)とナトリウムメトキシド溶液(30%ナトリウムメトキシドメタノール溶液、15mL)との混合溶液に加えた。混合物を2時間攪拌して反応させ、氷を加えてクエンチした。混合物を濾過し、乾燥して、収率94%で黄色の固体として生成物4.1gを得た。
【数7】
【0130】
工程6):N-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)-5-メトキシキナゾリン-4,6-ジアミンの合成
【0131】
N-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)-5-メトキシ-6-ニトロキナゾリン-4-アミン(2.2g、5mmol)をエタノールに加え、鉄粉及び塩化アンモニウム水溶液を加えた。混合物を50℃に加熱して2時間反応させ、次いで冷却し、濾過し、大量のジクロロメタンですすいだ。濾液を塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮して、収率98%で淡紫色の固体として生成物2gを得た。
【数8】
【0132】
工程7):(E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミドの合成
【0133】
-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)-5-メトキシキナゾリン-4,6-ジアミン(40mg、0.1mmol)をNMP溶液(1mL)に加え、0℃で(E)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エノイルクロリド(24mg、0.15mmol)のジクロロメタン(1mL)溶液を加えた。混合物を30分間攪拌して反応させ、水を加えてクエンチした。混合物を重炭酸ナトリウムでpH9に調整し、次いでジクロロメタンで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮して、油状物を得た。油状物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色の固体として生成物18mgを得た。
【数9】
【0134】
実施例2.(E)-N-(4-((3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド
【化9】
【0135】
実施例1の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-クロロ-4-((3-フルオロベンジル)オキシ)アニリンを反応に使用したこと以外は、実施例1と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数10】
【0136】
実施例3.(E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-4-(シクロブチル(メチル)アミノ)ブト-2-エナミド
【化10】
【0137】
実施例1の工程7)で(E)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エノイルクロリドの代わりに(E)-4-(シクロブチル(メチル)アミノ)ブト-2-エノイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例1と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数11】
【0138】
実施例4.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化11】
【0139】
工程1)~工程6):実施例1を参照されたい。
【0140】
工程7):N-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)-5-メトキシキナゾリン-4,6-ジアミン(40mg、0.1mmol)をNMP溶液に加え、(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリド(26mg)のジクロロメタン(1mL)溶液を0℃で加えた。混合物を30分間攪拌して反応させ、次いで水を加えてクエンチした。混合物を重炭酸ナトリウムでpH9に調整し、次いでジクロロメタンで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮して、油状物を得た。油状物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色の固体として生成物24mgを得た。
【数12】
【0141】
実施例5.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-エトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化12】
【0142】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムエトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数13】
【0143】
実施例6.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(2-ヒドロキシエトキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化13】
【0144】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム2-ヒドロキシエトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数14】
【0145】
実施例7.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(2-フルオロエトキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化14】
【0146】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム2-フルオロエトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数15】
【0147】
実施例8.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化15】
【0148】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム2-メトキシエトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数16】
【0149】
実施例9.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(3-メトキシプロポキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化16】
【0150】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム3-メトキシプロポキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数17】
【0151】
実施例10.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(3-フルオロプロポキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化17】
【0152】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム3-フルオロプロポキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数18】
【0153】
実施例11.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(2,2-ジフルオロエトキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化18】
【0154】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム2,2-ジフルオロエトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数19】
【0155】
実施例12.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(3,3,3-トリフルオロプロポキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化19】
【0156】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム3,3,3-トリフルオロプロポキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数20】
【0157】
実施例13.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-プロポキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化20】
【0158】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムプロポキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数21】
【0159】
実施例14.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-イソブトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化21】
【0160】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムイソブトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数22】
【0161】
実施例15.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化22】
【0162】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム2-メチル-2-ヒドロキシプロポキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数23】
【0163】
実施例16.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブトキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化23】
【0164】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム3-メチル-3-ヒドロキシブトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数24】
【0165】
実施例17.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(3-ヒドロキシプロポキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化24】
【0166】
実施例4の工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム3-ヒドロキシプロポキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数25】
【0167】
実施例18.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-イソプロピルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化25】
【0168】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-クロロ-4-((3-フルオロベンジル)オキシ)アニリンを原料として使用し、工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-イソプロピルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数26】
【0169】
実施例19.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニル)アミノ)-5-エトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化26】
【0170】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-クロロ-4-((3-フルオロベンジル)オキシ)アニリンを使用し、工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムエトキシドを使用し、工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数27】
【0171】
実施例20.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-エトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化27】
【0172】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムエトキシドを使用し、工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数28】
【0173】
実施例21.(R,E)-N-(5-エトキシ-4-((3-フルオロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化28】
【0174】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-フルオロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンを使用し、工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムエトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数29】
【0175】
実施例22.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-((6-メチルピリジン-2-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-5-エトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化29】
【0176】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-クロロ-4-((6-メチルピリジン-2-イル)メトキシ)アニリンを使用し、工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムエトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数30】
【0177】
実施例23.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(4-メトキシブトキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化30】
【0178】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム4-メトキシブトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数31】
【0179】
実施例24.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-イソプロピルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化31】
【0180】
工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-イソプロピルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを同様の反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数32】
【0181】
実施例25.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化32】
【0182】
工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数33】
【0183】
実施例26.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-((3-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化33】
【0184】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-クロロ-4-((3-フルオロベンジル)オキシ)アニリンを原料として使用し、工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-(2-メトキシエチル)ピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数34】
【0185】
実施例27.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-((6-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化34】
【0186】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-クロロ-4-((6-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ)アニリンを原料として反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数35】
【0187】
実施例28.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化35】
【0188】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-クロロ-4-((3-フルオロベンジル)オキシ)アニリンを原料として使用し、工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数36】
【0189】
実施例29.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化36】
【0190】
工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数37】
【0191】
実施例30.(R,E)-N-(4-((3-フルオロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化37】
【0192】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-フルオロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数38】
【0193】
実施例31.(R,E)-N-(5-(2-ヒドロキシエトキシ)-4-((4-フェニルオキシフェニル)アミノ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化38】
【0194】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに4-フェニルオキシアニリンを使用し、工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウム2-ヒドロキシエトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数39】
【0195】
実施例32.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-((3-メトキシプロピル)アミノ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化39】
【0196】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりに3-メトキシプロピルアミンを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【0197】
【数40】
【0198】
実施例33.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(メトキシ-d3)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化40】
【0199】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムトリジュウテロメトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【0200】
【数41】
【0201】
実施例34.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(メトキシ-d3)キナゾリン-6-イル)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化41】
【0202】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムトリジュウテロメトキシドを使用し、工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-エチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【0203】
【数42】
【0204】
実施例35.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(メトキシ-d3)キナゾリン-6-イル)-3-(1-イソプロピルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化42】
【0205】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムトリジュウテロメトキシドを使用し、工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-イソプロピルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【0206】
【数43】
【0207】
実施例36.(E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(メトキシ-d3)キナゾリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド
【化43】
【0208】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムトリジュウテロメトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例1と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【0209】
【数44】
【0210】
実施例37.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-シクロプロポキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化44】
【0211】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムシクロプロポキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【0212】
【数45】
【0213】
実施例38.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(シクロプロピルメトキシ)キナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリドン-2-イル)アクリルアミド
【化45】
【0214】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムシクロプロピルメトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【0215】
【数46】
【0216】
実施例39.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-シクロブトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化46】
【0217】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムシクロブトキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【0218】
【数47】
【0219】
実施例40.(E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-((テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)キナゾリン-6-イル)-3-((R)-1-メチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化47】
【0220】
工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムテトラヒドロフラン-3-オラートを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数48】
【0221】
実施例41.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-((3-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)アミノ)-5-シクロプロポキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-メチルピロリドン-2-イル)アクリルアミド
【化48】
【0222】
実施例4の工程4)で3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの代わりに3-クロロ-4-((3-フルオロベンジル)オキシ)アニリンを使用し、工程5)でナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムシクロプロポキシドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数49】
【0223】
実施例42.(R,E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-3-(1-シクロブチルピロリジン-2-イル)アクリルアミド
【化49】
【0224】
実施例4の工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(R,E)-3-(1-シクロブチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数50】
【0225】
実施例43.(E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ピロリジン-1-イル)ブト-2-エナミド
【化50】
【0226】
実施例4の工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(E)-4-(ピロリジン-1-イル)ブト-2-エノイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数51】
【0227】
実施例44.(E)-N-(4-((3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニル)アミノ)-5-メトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ピペリジン-1-イル)ブト-2-エナミド
【化51】
【0228】
実施例4の工程7)で(R,E)-3-(1-メチルピロリジン-2-イル)アクリロイルクロリドの代わりに(E)-4-(ピペリジン-1-イル)ブト-2-エノイルクロリドを反応に使用したこと以外は、実施例4と同様の方法を使用して化合物を合成した。
【数52】
【0229】
本出願の化合物の生化学的活性、薬理学的特性等を特徴付けるために、本出願の化合物、並びにピロチニブ、ネラチニブ、並びに対照化合物1及び2を次のようにアッセイした。これらのうち、ピロチニブ及び対照化合物2の合成は、中国特許CN102471312に記載されており、対照化合物1は、対照化合物2のR配置の立体異性体である。
【化52】
【0230】
アッセイ例1.小分子化合物によるEGFRWT及びHER2キナーゼ活性の阻害のアッセイ
試薬及び消耗品:ULightTM標識Ploy GT Peptide(Perkin Elmer、Cat.No.TRF-0100-M);ULightTM標識JAK-1(Try1023)Peptide(Perkin Elmer、Cat.No.TRF-0121-M);Eu-W1024標識Anti-Phosphotyrosine Antibody(PT66)(Perkin Elmer、Cat.No.AD0068);10× Detection Buffer(Perkin Elmer、Cat.No.CR97-100);Her2キナーゼ(Carna Biosciences、Cat.No.08-016);EGFRキナーゼ(Carna Biosciences、Cat.No.08-115);HEPES(GIBCO、Cat.No.15630-080);EGTA(Sigma、Cat.No.03777-10G);EDTA(Sigma、Cat.No.EDS-100G);MgCl(Sigma、Cat.No.63069-100ML);DTT(Sigma、Cat.No.43816-10ML);Tween-20(Sigma、Cat.No.P7949-100ML);DMSO(Life Science、Cat.No.0231-500ML);384ウェルプレート(Perkin Elmer、Cat.No.607290);多機能プレートリーダー(Perkin Elmer、Cat.No.Envision)
【0231】
化合物溶液の調製:アッセイ化合物をDMSOに溶解して10mMのストック溶液を形成した。使用前に、化合物をDMSOにて0.25mMに希釈し(希釈液の最終濃度の100倍)、次いで、3倍の濃度勾配希釈をして、合計11種類の濃度を得た。溶液をバッファーで希釈して、化合物を加えたときの最終濃度の4倍の希釈液とした。
【0232】
HER2キナーゼアッセイ:バッファーを調製し、このバッファーを使用して、40nMの4× Her2キナーゼ溶液、40μMの4× ATP溶液、及び400nMの4× ULightTM標識Ploy GT Peptide基質溶液を調製した。調製が完了した後、酵素を、希釈により予め調製した各種濃度の化合物と混合し、混合物を室温で5分間放置した。各濃度を二連で実施した。対応する基質及びATPを加え、混合物を室温で120分間反応させた(陰性対照及び陽性対照を設定)。反応の完了後、PT66検出抗体を加えた。混合物を室温で60分間インキュベートし、次いでEnvisionにより検出した。
【0233】
EGFRWTキナーゼアッセイ:バッファーを調製し、このバッファーを使用して、3.48nMの4× EGFRキナーゼ溶液、600μMの4× ATP溶液、及び400nMの4× ULightTM標識JAK-1(Try1023)Peptide基質溶液を調製した。調製が完了した後、酵素を、希釈により予め調製した各種濃度の化合物と混合し、混合物を室温で5分間放置した。各濃度を二連で実施した。対応する基質及びATPを加え、混合物を室温で120分間反応させた(陰性対照及び陽性対照を設定)。反応の完了後、PT66検出抗体を加えた。混合物を室温で60分間インキュベートし、次いでEnvisionにより検出した。
【0234】
データ算出:ウェルの読み取り値及び阻害率を、Excelを使用して算出した。ここで、ウェルの読み取り値=10000*(ウェルEU665値)/(ウェルEU615値)、阻害率=[(陽性対照ウェルの読み取り値-アッセイウェルの読み取り値)/(陽性対照ウェルの読み取り値-陰性対照ウェルの読み取り値)]*100%である。化合物濃度及び対応する阻害率をGraphPad Prismに入力して処理することで、IC50値を算出した。
【0235】
EGFRWT及びHER2チロシンキナーゼに対する本出願の化合物の阻害活性のアッセイの結果を表1に列挙する。表中、Aは、IC50が10nM以下であることを示し、Bは、IC50が10nM超100nM以下であることを示し、Cは、IC50が100nM超1000nM以下であることを示し、NTは、関連する結果がないことを示す。
【0236】
【表2】
【0237】
上記の表1の結果から分かるように、本出願の化合物は全て、HER2及びEGFRキナーゼの両方を阻害することができる。特にHER2キナーゼに対して、本出願の化合物は全体として非常に優れた阻害活性を示し、HER2キナーゼによって媒介される腫瘍及び他の疾患の治療に使用することができる。
【0238】
アッセイ例2.小分子化合物による細胞増殖の阻害のアッセイ
本出願では、インビトロで培養したBT474、NCI-N87、Ba/F3-EGFR-VIII、及びBa/F3 HER2 A775_G776insYVMA、及びBa/F3 EGFR D770_N771insSVD細胞株に対する本開示の化合物のインビトロ抗増殖活性をCTG法により調査した。
【0239】
試薬及び消耗品:RPMI1640(ThermoFisher、Cat.No.C11875500BT);ウシ胎児血清(Hyclone、Cat.No.SV30087.03);0.25%トリプシン-EDTA(ThermoFisher、Cat.No.25200-072);ペニシリン-ストレプトマイシン(Hyclone、Cat.No.SV30010);DMSO(Amresco、Cat.No.0231-500ML);CTGアッセイキット(Promega、Cat.No.G924C);96ウェルプレート(Corning、Cat.No.3603);多機能プレートリーダー(Perkin Elmer、Cat.No.Envision)
【0240】
細胞株:BT474(中国科学院の細胞バンクより入手)、NCI-N87(ATCCより入手)、Ba/F3-EGFR-VIII、Ba/F3 HER2 A775_G776insYVMA、及びBa/F3 EGFR D770_N771insSVD(いずれもKYinno Biotechnology(Beijing)Co.,Ltd.より入手);上記の細胞は全て、培養過程で10%のウシ胎児血清、100U/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンを含有するRPMI1640培地で培養した。
【0241】
具体的なアッセイ方法:
【0242】
1.アッセイ化合物をDMSOで溶解してストック溶液を形成し、勾配希釈を行い、続いて対応する培地による希釈を行って、5倍の作業濃度を有する溶液を得た。
【0243】
2.対数増殖期の細胞を培地で希釈して特定の細胞密度に調整し、80μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートに加えることにより、BT474、NCI-N87、Ba/F3-EGFR-VIII、Ba/F3 HER2 A775_G776insYVMA、及びBa/F3 EGFR D770_N771insSVDの細胞の播種密度を全て3000細胞/ウェルとした。Ba/F3-EGFR-VIII、Ba/F3 HER2 A775_G776insYVMA、及びBa/F3 EGFR D770_N771insSVDの細胞は、次の工程(化合物による処置)で直接使用したが、BT474及びNCI-N87は、壁に付着させるために37℃、5%二酸化炭素ガスのインキュベーター中で一晩培養し、次いで化合物により処置する必要があった。
【0244】
3.細胞を接種した96ウェルプレートの各ウェルに20μLの化合物溶液を加えた。アッセイした化合物の最高濃度10μM、4倍連続希釈、合計9種類の濃度、及び二連のウェルであった。化合物を含まない対照群も設定した。
【0245】
4.細胞をさらに72時間培養し、次いでCTGアッセイキットにより細胞生存率を検出した。シグナル値は多機能プレートリーダー(Perkin Elmer)により読み取った。GraphPad Prismソフトウェアを使用して用量-反応曲線を作成し、IC50を算出した。
【0246】
BT474、NCI-N87、Ba/F3-EGFR-VIII、Ba/F3 HER2 A775_G776insYVMA、及びBa/F3 EGFR D770_N771insSVDの細胞に対する本開示の代表的な化合物の抗増殖活性のアッセイの結果を表2に列挙する。表中、Aは、IC50が1nM以下であることを示し、Bは、IC50が1nM超5nM以下であることを示し、Cは、IC50が5nM超10nM以下であることを示し、Dは、IC50が10nM超100nM以下であることを示し、NTは、関連する結果がないことを示す。
【0247】
【表3】
【0248】
表2の結果により、本出願の化合物は全て、上記でアッセイした様々な細胞株に対して優れた抗腫瘍増殖活性を発揮することが分かる。特にBa/F3 HER2 A775-G776sYAMA細胞に対して、本出願の化合物は、既存薬剤のネラチニブ及びピロチニブよりも数倍、さらには数十倍優れた活性を発揮する。
【0249】
アッセイ例3.小分子化合物の薬物動態のアッセイ
本アッセイでは、単回経口投与及び静脈内注射によるSDラットへの本出願の幾つかの化合物の投与後の本出願の化合物の薬物動態特性をアッセイした。
【0250】
(i)使用した試薬、機器、及び動物
【表4】
【0251】
【表5】
【0252】
【表6】
【0253】
(ii)サンプル配合物の調製
1.静脈内(IV)注射群:適量のアッセイ化合物を秤量し、適量のビヒクル(DMSO/Solutol/HO=5/10/85v/v/v(実施例9のビヒクルは、2倍モルのマレイン酸を含むDMSO/Solutol/HO=5/10/85v/v/vであった))に完全に溶解させた。混合液を撹拌し、ボルテックスし、及び/又は超音波処理した。溶液が得られたら、ビヒクルを目標濃度に達するように最終量まで徐々に加えた。溶液をボルテックスし、超音波処理して均一な溶液を得た。溶液を0.22μmのPVDF膜を通して濾過した。
【0254】
2.経口(PO)群:適量のアッセイ化合物を秤量し、適量のビヒクル(DMSO/Solutol/HO=5/10/85v/v/v(実施例9のビヒクルは、2倍モルのマレイン酸を含むDMSO/Solutol/HO=5/10/85v/v/vであった))に完全に溶解させた。混合液を撹拌し、ボルテックスし、及び/又は超音波処理した。溶液が得られたら、ビヒクルを目標濃度に達するように最終量まで徐々に加えた。溶液をボルテックスし、超音波処理して均一な溶液を得た。
【0255】
(iii)ラットの投与及びサンプリング
動物を体重に従って無作為に群に分け、群分け後の各群の動物の体重は同等であった(平均体重の±20%を超えない)。一方、IV群は絶食させず、PO群は、一晩(>12時間)絶食させ、薬物投与から2時間後に飼料を与えた。全ての動物に水を自由に与えた。下記の表6及び表7に投与計画及び薬物動態サンプリング計画をそれぞれ示す。
【0256】
【表7】
【0257】
【表8】
【0258】
上記のレジメンに従ってラットに投与し、血液サンプル及び脳組織サンプルを所定の時点で採取し処理した(採取及び処理は、当技術分野の従来の方法に従って行った)。
【0259】
(iv)サンプルの分析
全血サンプルに6倍量のアセトニトリルを加え、混合物を1分間ボルテックスし、次いで4℃、4500rpmで15分間遠心分離した。上清を超純水で2倍に希釈し、サンプルをLC/MSにより分析した。
【0260】
脳組織を秤量し、4倍均質化溶液(アセトニトリル/水=1/1v/v)を加えて均質化した。脳組織ホモジネートにそれぞれ6倍量のアセトニトリルを加え、混合物を1分間ボルテックスし、次いで4℃、4500rpmで15分間遠心分離した。上清を超純水で2倍に希釈し、サンプルをLC/MSにより分析した。
【0261】
(v)データ分析:
薬物動態パラメータを、WinNonlinソフトウェアを使用して算出した。血漿中薬剤濃度-時間のデータから以下の薬物動態パラメータを算出した:CL(クリアランス);V(見かけの分布容積);T1/2(消失半減期);Cmax(ピーク濃度);Tmax(ピーク到達時間);AUC(血漿中薬剤濃度-時間曲線下面積);MRT(平均保持時間);F%(バイオアベイラビリティ)。
【0262】
アッセイの結果を下記の表8~表11に示す。表8~表11は、ピロチニブ、ネラチニブ、対照化合物1及び2、並びに本出願の幾つかの化合物の静脈内注射下及び経口投与下の両方における各薬物動態パラメータの値をそれぞれ示す。結果により、対照化合物1及び2は、経口投与された場合、ほとんど吸収されず、測定不可により有効な薬物動態データが得られないが、本出願の化合物は全て、優れた薬物動態特性を発揮し、バイオアベイラビリティの観点からはピロチニブ及びネラチニブよりも優れていることが分かる。
【0263】
【表9】
【0264】
【表10】
【0265】
【表11】
【0266】
【表12】
【0267】
一方、下記の表11-1に示すように、本出願の化合物は、血液脳関門を通過する優れた能力を発揮し、ピロチニブ及びネラチニブと比較して、脳/血液比が著しく増加している。このことはさらに、本出願の化合物がEGFR及びHER2キナーゼに対する優れた阻害活性を有するだけでなく、血液脳関門を通過する優れた能力も有しているため、本出願の化合物が、EGFR及び/又はHER2キナーゼによって媒介される関連腫瘍、特に脳転移への適用が期待されることを示している。
【0268】
【表13】
【0269】
アッセイ例4.担癌マウスにおける小分子化合物の有効性のアッセイ
本アッセイでは、本出願の幾つかの化合物をBa/F3 ERBB2 A775_G776insYVMAの担癌ヌードマウスモデルに経口投与して、腫瘍成長に対する本出願の化合物の効果を調べた。
【0270】
【表14】
【0271】
【表15】
【0272】
試薬:RPMI1640(ThermoFisher、Cat.No.C11875500BT);ウシ胎児血清(Hyclone、Cat.No.SV30087.03);0.25%トリプシン-EDTA(ThermoFisher、Cat.No.25200072);ペニシリン-ストレプトマイシン(Hyclone、Cat.No.SV30010);DSMO(Life Science、Cat.No.0231-500ML);Solutol(Sigma、70142-34-6-1kg)
【0273】
アッセイ化合物の調製:適量のアッセイ対象化合物を秤量し、適量のビヒクル(DMSO)に完全に溶解させた。混合物をボルテックス又は超音波処理した。次いで、適量のSolutolを加え、十分に混合した。最後に、滅菌飲料水を加え、混合物を攪拌又はボルテックスして混合して、均一な溶液又は懸濁液を得た。
【0274】
方法:全てのアッセイは、動物福祉委員会によって認可され、同意されたものである。対数増殖期のBa/F3 ERBB2 A775_G776insYVMAを免疫不全ヌードマウス(BALB/cヌード、雌、6~7週齢、体重18±2g)の右背中に4×10細胞/ラットで皮下接種した。腫瘍が150~200mmに成長した後、動物を無作為に治療群と対照群とに分けた。治療群には、各アッセイ化合物の溶液を与え、対照群には、アッセイ化合物を含まないビヒクル溶液を与えた。治療群及び対照群の両方に、約2週間の間1日1回投与した。各アッセイ物の用量は、(有効化合物濃度に換算して)30mg/kgとし、アッセイ化合物は全て、新たに調製したものを使用した。アッセイ中、負荷した腫瘍の直径を1週間に2回測定し、同時にマウスの体重も測定した。腫瘍体積(TV)を式:TV=1/2×a×bにより算出した(式中、a及びbは、それぞれ長さ及び幅を指す)。測定結果に基づき、相対腫瘍体積(RTV)を式:RTV=Vt/V0によって算出した(式中、V0は、群分け及び投与時に測定した腫瘍体積であり、Vtは、各測定時の腫瘍体積である)。抗腫瘍活性の評価指標は、式:T/C(%)=(TRTV/CRTV)×100%により算出される相対腫瘍増殖率T/C(%)である(TRTV:投与群のRTV;CRTV:対照群のRTV)。T及びCは、それぞれ投与群及び対照群における、ある時点での平均腫瘍体積を指す。
【0275】
アッセイ結果を下記表14及び図1~9に示す。表及び図に示すように、ネラチニブ及びピロチニブは、30mg/kgの用量で一定の腫瘍阻害効果を有し、14日目のT/C値は、それぞれ45.9%及び38.3%である。本出願の実施例4、実施例8、実施例9、実施例11、実施例24、実施例29、及び実施例33の化合物は、30mg/kgの用量で顕著な腫瘍阻害効果を有し、実施例4及び実施例24の化合物の14日目のT/C値は、それぞれ2.6%及び12.4%であり、実施例8、実施例9、及び実施例11の化合物の15日目のT/C値は、それぞれ5.83%、3.85%、及び5.71%であり、実施例29及び実施例33の化合物の11日目のT/C値は、それぞれ18.7%及び12.4%である。上記のBa/F3 HER2 A775-G776sYAMA細胞の増殖活性のアッセイの結果と合わせると、本出願の化合物は、HER2のエクソン20挿入変異(HER2 A775_G776insYVMA)に対するインビトロの抗腫瘍細胞増殖活性がピロチニブ及びネラチニブよりも優れているだけでなく、Ba/F3 ERBB2 A775_G776insYVMAの担癌ヌードマウスモデルにおける抗腫瘍活性がネラチニブ及びピロチニブよりもはるかに優れていることも分かる。全てのアッセイした化合物は、顕著な腫瘍縮小を達成するが、ネラチニブ群及びピロチニブ群における腫瘍は、同じ用量(30mg/kg)で顕著な成長を依然として維持している。
【0276】
【表16】
【0277】
全てのアッセイ結果を合わせると、本出願は、キナゾリンの5位に置換基を導入し、7位の置換基を除去することによって、一連の化合物を合成することが分かる。本出願の化合物は、HER2及びEGFRキナーゼに対して良好~優れた阻害活性を発揮するとともに、BT474、NCI-N87、Ba/F3-EGFR-VIII、Ba/F3 HER2 A775_G776insYVMA、及びBa/F3 EGFR D770_N771insSVD細胞の増殖に対して良好~優れた阻害活性を発揮する。特にBa/F3 HER2 A775_G776insYVMA細胞モデルに対して、本出願の化合物は全て、インビトロ細胞増殖阻害アッセイ及びインビボ担癌モデルアッセイにおいてネラチニブ及びピロチニブよりも顕著に優れた効果を発揮する。さらに、本出願の化合物は、薬物動態アッセイにおいて優れた薬物動態特性も示す。本出願の化合物の全体的な性能は、ネラチニブ、ピロチニブ、並びに対照化合物1及び2よりも顕著に優れており、本出願の化合物は、HER2、EGFRキナーゼ、又はそのエクソン20変異、又は他の変異によって媒介される関連疾患の治療において適用することができる。
【0278】
上記の実施形態は、本開示の代替的な実施形態である。当業者には、本開示の原則から逸脱することなく、本開示の実施形態に幾つかの改良及び変更をなすこともでき、これらの改良及び変更も本開示の保護範囲内であるとしてみなされるべきであることに留意すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9