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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ガスエンジン発電システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/02 20060101AFI20241204BHJP
   F02B 43/10 20060101ALI20241204BHJP
   F02B 43/12 20060101ALI20241204BHJP
   F02D 19/08 20060101ALI20241204BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20241204BHJP
   F02D 35/00 20060101ALI20241204BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20241204BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20241204BHJP
   F02P 15/08 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
F02D19/02 A
F02B43/10 Z
F02B43/12
F02D19/08 C
F02D29/06 H
F02D35/00 368Z
F02D45/00 368Z
F02M21/02 N
F02P15/08 302A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024182608
(22)【出願日】2024-10-18
(62)【分割の表示】P 2024148471の分割
【原出願日】2024-08-30
【審査請求日】2024-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524325627
【氏名又は名称】YGKエンジニアリング合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】林 義正
(72)【発明者】
【氏名】岡部 貴
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特許第7325878(JP,B1)
【文献】特開2012-188936(JP,A)
【文献】特開2005-171975(JP,A)
【文献】特開昭59-215928(JP,A)
【文献】特開昭59-231154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/00
F02D 29/06
F02D 35/00
F02D 45/00
F02M 21/02
F02B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ系の主燃料ガスが貯留される主燃料ガス容器と、非バイオ系の支援ガスが貯留される支援ガス圧力容器と、ガスエンジンと、前記主燃料ガスと前記支援ガスとが混合されてなる混合ガス燃料を前記ガスエンジンに供給するミキサとを備えると共に、前記ガスエンジンの動力にて発電機を駆動する構成とされてなり、
前記ガスエンジンは、シリンダ内に2個の点火プラグと吸気バルブと排気バルブとが配設され、両前記点火プラグから所定距離をおいて前記シリンダ内の内周壁面に火炎の強弱の程度を検知する火炎センサが装着され、該火炎センサはECUに連通され、前記シリンダの火炎の爆発力が所定以下のときには前記ECUにより前記シリンダ内に前記支援ガスを供給してなることを特徴とするガスエンジン発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記火炎センサは、両前記点火プラグとを結ぶ仮想第1直線の中心に対して直交する仮想第2直線と前記シリンダの前記内周壁面との両当接箇所の少なくとも一方に設けられてなることを特徴とするガスエンジン発電システム。
【請求項3】
請求項1に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記火炎センサは、両前記点火プラグとを結ぶ仮想第1直線の中心に対して直交する仮想第2直線と前記シリンダの前記内周壁面との両当接箇所に設けられてなることを特徴とするガスエンジン発電システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記火炎センサは、碍子部内に先端が該碍子部から突出する第1電極及び第2電極を有し、前記第1電極と前記第2電極間をギャップとし、該ギャップに火炎粒子が十分に到達するときには前記ギャップに電流が発生して前記ECUは火炎が安定と判断し、前記ギャップに火炎粒子が十分に到達しないときは前記ギャップに電流が発生せず火炎が不安定と判断し、前記ECUは前記支援ガスを供給することを特徴とするガスエンジン発電システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のガスエンジン発電システムにおいて、排気系にO2センサが配設されたことを特徴とするガスエンジン発電システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物残滓,動物の糞尿などの無酸素状態で加熱された有機物から生成される燃料によって稼働し、且つ燃料の可燃性物質を有効に燃焼させて稼働させることができる作動効率の極めて高いガスエンジン発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に家畜動物の糞尿又は生ゴミ,残滓は、無酸素状態で蒸し焼きにして固化して埋め立てるというゴミ処理が行われており、その過程で発生するガスが大気に放出されることにより環境汚染につながるという問題がある。そこで、近年、家畜等の動物の糞尿又は食物の生ゴミ,残滓等による有機物から生成されるガスを燃料(バイオ系ガス燃料とも呼ばれる)として稼働するエンジンが発電用或いは通常の動力用として使用されるようになってきた。このような、バイオ系ガス燃料を使用した従来技術として、特許文献1(特開2009-174392号公報)が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-174392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食物残淳を発酵させたり、産業廃棄物を無酸素状態で蒸し焼きにして体積を減少させる過程で可燃ガスを含むガスが発生する。このようなガスのことを、便宜上Sガス(主燃料ガスG1)と称することにする。該Sガス(主燃料ガスG1)中の可燃ガスの割合は小さいが、1立方メートル当たり20Mj、即ち20Mj/mもあれば、そのまま捨てるにはもったいないことになる。しかし、このガス中には二酸化炭素CO2が可燃ガス以上に含まれる。
【0005】
CO2は消火器にも使われるように燃焼を阻害する。理論的にはもし前記Sガス(主燃料ガスG1)をエンジンのシリンダ中で燃焼でき、Sガス(主燃料ガスG1)のエネルギを動力に変換して発電機を駆動できれば、省エネルギ化に大きく寄与することができる。Sガス(主燃料ガスG1)中の可燃ガスとして、一酸化炭素CO,水素H2やメタンCH4があるが、これらのガス着火温度は高く、ディーゼルエンジンの様に圧縮熱で着火することはできない。
【0006】
さらに、バイオ系ガス燃料からなる粗ガスをガスエンジンに使用するにあたって、以下の問題点が存在する。まず、粗ガスは前述したように、家畜の糞尿又は食物の残滓を原料とするいわゆる人工的なガスである。さらに、粗ガスにはCOやH2等の無機物が含まれることもある。そのため、この粗ガスは、天然のガス(プロパンやメタン)に比べて産出量が少ない。そのため、大型のガスタービンに供するほどの量は確保し難い。よって、特許文献1に開示されたスターリングエンジンは外燃機関であり、前述した粗ガスをそのまま、スターリングエンジンに適用することは極めて困難であり、且つ不向きである。
【0007】
次に、家畜の糞尿又は食物の残滓を無酸素状態で蒸し焼きにしたり発酵させる過程で可燃性のガス(これを粗ガスと称する)が発生し、これをガスエンジンの燃料とするものであるが、この粗ガスには二酸化炭素(CO2)が多く含まれることが多い。通常、特許文献1にみられるような技術では、ガスタービン又はスターリングエンジンは、連続燃焼であり、燃料中に二酸化炭素がある程度混在していても燃焼が可能である。しかし、火花点火エンジンでは、吸入・圧縮・点火膨張・排気を繰り返す間欠燃焼であり、燃料中の二酸化炭素が点火及び火炎核の構成と火炎の伝播を妨害する可能性がある。このような点において、火花点火エンジンでは、特許文献1に開示されている技術は適用され難いものである。
【0008】
しかし、粗ガスを構成するいくつかの成分の中には、可燃性のものも含まれている。そして、この可燃性の成分を廃棄せずに、そのエネルギを徹底的に有効利用し、この燃え難いガスを200kW以下の火花点火エンジンの燃料として使い、その動力で発電機を駆動して電気エネルギに変換することができるのであれば、再生資源の有効活用となり、環境保全に大いに寄与することになる。
【0009】
本発明の目的は、火花点火エンジンにおいて家畜の糞尿又は食物の残滓からなるバイオ系の粗ガスを最大限に有効に利用し、ひいては再生資源の有効活用及び環境保全に寄与することができるガスエンジン発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、バイオ系の主燃料ガスが貯留される主燃料ガス容器と、非バイオ系の支援ガスが貯留される支援ガス圧力容器と、ガスエンジンと、前記主燃料ガスと前記支援ガスとが混合されてなる混合ガス燃料を前記ガスエンジンに供給するミキサとを備えると共に、前記ガスエンジンの動力にて発電機を駆動する構成とされてなり、
前記ガスエンジンは、シリンダ内に2個の点火プラグと吸気バルブと排気バルブとが配設され、両前記点火プラグから所定距離をおいて前記シリンダ内の内周壁面に火炎の強弱の程度を検知する火炎センサが装着され、該火炎センサはECUに連通され、前記シリンダの火炎の爆発力が所定以下のときには前記ECUにより前記シリンダ内に前記支援ガスを供給してなることを特徴とするガスエンジン発電システムとしたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項2の発明を、請求項1に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記火炎センサは、両前記点火プラグとを結ぶ仮想第1直線の中心に対して直交する仮想第2直線と前記シリンダの前記内周壁面との両当接箇所の少なくとも一方に設けられてなることを特徴とするガスエンジン発電システムとしたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項3の発明を、請求項1に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記火炎センサは、両前記点火プラグとを結ぶ仮想第1直線の中心に対して直交する仮想第2直線と前記シリンダの前記内周壁面との両当接箇所に設けられてなることを特徴とするガスエンジン発電システムとしたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項4の発明を、請求項1又は2に記載のガスエンジン発電システムにおいて、前記火炎センサは、碍子部内に先端が該碍子部から突出する第1電極及び第2電極を有し、前記第1電極と前記第2電極間をギャップとし、該ギャップに火炎粒子が十分に到達するときには前記ギャップに電流が発生して前記ECUは火炎が安定と判断し、前記ギャップに火炎粒子が十分に到達しないときは前記ギャップに電流が発生せず火炎が不安定と判断し、前記ECUは前記支援ガスを供給することを特徴とするガスエンジン発電システムとしたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項5の発明を、請求項1又は2に記載のガスエンジン発電システムにおいて、排気系にO2センサと三元角触媒が配設され、前記O2センサと前記三元角触媒とが設けられたことを特徴とするガスエンジン発電システムとしたことにより、上記課題を解決した上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、バイオ系の主燃料ガスが貯留される主燃料ガス容器と、非バイオ系の支援ガスが貯留される支援ガス圧力容器と、ガスエンジンと、前記主燃料ガスと前記支援ガスとが混合されてなる混合ガス燃料を前記ガスエンジンに供給するミキサとを備えたものであり、前記ガスエンジンは、シリンダ内に2個の点火プラグと、吸気バルブと、排気バルブと、火炎センサが配設されたものである。
【0016】
火炎センサは、両前記点火プラグから両前記点火プラグから所定距離をおいて前記シリンダ内の内周壁面に装着されており、シリンダ内のガス燃料の燃焼における火炎の強弱の程度を検知する役目をなす。そして、火炎センサは、ECU(エンジンコントロールユニット)に連通され、前記シリンダ内の火炎の爆発力が所定以下のときには前記ECUにより前記シリンダ内に前記支援ガスを供給する構成としたものである。
【0017】
上記の構成としたことで、シリンダ内に送り込まれる混合ガスのバイオ系の主燃料ガスの濃度が高くなり、点火プラグによる混合ガス火炎の燃焼状態が悪くなると、火炎センサがこの状態を検知して、火炎センサからECUに信号が送られ、該ECUがミキサ内に支援ガスを適量送り込み、ミキサを介してガスエンジンのシリンダ内に良好な混合ガスを送り込むことができきる。
【0018】
このように、本発明では、シリンダ内に火炎センサが装着される極めて簡単な構成により、点火プラグの火花により点火された燃料の火炎の状態をECU(エンジンコントロールユニット)が判断し、ミキサを介してシリンダ内に吸入される混合ガス燃料の主燃料ガスと支援ガスとの比率を良好に維持し、ガスエンジンの良好な稼働を維持できる。特に、発電機を備えているため、該発電機を駆動して電気エネルギに変換することができるので、再生資源の有効活用となり、環境保全に大いに寄与できる。
【0019】
請求項2の発明では、前記火炎センサは、両前記点火プラグとを結ぶ仮想第1直線の中心に対して直交する仮想第2直線と前記シリンダの前記内周壁面との両当接箇所の少なくとも一方に設けられる構成により、火炎センサが両前記点火プラグから等しい距離に位置することとなり、前記火炎センサは、両前記点火プラグから点火された火炎をより一層、正確に検知(感知)することができ、この情報をECUに伝達し、該ECUにガス燃料に対して支援ガスを供給するか否かを判断させることができる。
【0020】
請求項3の発明では、前記火炎センサは、両前記点火プラグとを結ぶ仮想第1直線の中心に対して直交する仮想第2直線と前記シリンダの前記内周壁面との両当接箇所に設けられる構成により、シリンダ内に装着される火炎センサは2個となり、この2個の火炎センサを設けたことにより、両前記点火プラグから点火された火炎をさらにより一層、正確に検知(感知)する精度を向上させることができ、そのため、さらに一層良好な、シリンダ内の燃焼状態を維持することができる。
【0021】
請求項4の発明では、前記火炎センサは、碍子部内に先端が該碍子部から突出する第1電極及び第2電極を有し、前記第1電極と前記第2電極間をギャップとし、該ギャップに火炎粒子が十分に到達するときには前記ギャップに電流が発生して前記ECUは火炎が安定と判断し、前記ギャップに火炎粒子が十分に到達しないときは前記ギャップに電流が発生せず火炎が不安定と判断し、前記ECUは前記支援ガスを供給する構成としたことで、火炎センサは、極めて簡単な構成にすると共に高い精度でシリンダ内のガス燃料の状態を検知(感知)することができる。
【0022】
請求項5の発明では、請求項1又は2に記載のガスエンジン発電システムにおいて、排気系にO2センサが配設された構成により、該O2センサを前記火炎センサと併用することにより、ミキサを介してシリンダ内のガス燃料(混合ガス燃料と空気)における混合ガス燃料の主燃料ガスと支援ガスとの混合比率を良好に維持し、つまり理論空燃比又は略理論空燃比に維持し、シリンダ内の良好な燃焼状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の全体の構成を説明する略示構成図である。
図2】本発明の動作を示す行程図(フローチャート図)である。
図3】(A)は本発明におけるガスエンジンのシリンダとヘッドシリンダヘッドの火炎センサの位置を示す要部断面図、(B)は(A)のY1-Y1矢視断面図、(C)は(B)のX1-X1矢視断面図、(D)は(C)の(α)部拡大断面図である。
図4】(A)は火炎センサの一部断面にした正面図、(B)は火炎センサの縦断正面図、(C)乃至(E)は(B)の(β)部における各状態の拡大図である。
図5】(A)は火炎の状態を示すグラフ、(B)及び(C)は火炎と火炎センサの状態図である。
図6】(A)は火炎の状態を示すグラフ、(B)及び(C)は火炎と火炎センサの状態図である。
図7】(A)はミキサの縦断正面図、(B)はミキサの平面図、(C)は主燃料ガス低圧調整弁及び支援ガス低圧調整弁の縦断正面図である。
図8】(A),(B)は本発明におけるデューティを示すグラフ、(C)は本発明におけるデューティ及び理論空燃比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本発明におけるガスエンジン発電システムは、主に主燃料ガス系として主燃料ガス容器11と、主燃料ガス遮断弁12と、主燃料ガス低圧調整弁13と、主燃料ガス圧力センサ14とを備え、支援ガス系として支援ガス容器21と、支援ガス遮断弁22と、支援ガス低圧調整弁23とを備え、その他にミキサ3と、ECU(エンジンコントロールユニット)4と、ガスエンジン7とを備えた構成とされている(図1参照)。さらに、ガスエンジン7を構成するシリンダ71には火炎センサ9が備わっている(図3参照)。主燃料ガス容器11には主燃料ガスG1が充填され、支援ガス容器21には支援ガスG2が充填される。
【0025】
それぞれの機器は、相互に関連するもの同士が管路(主燃料ガス管路51及び支援ガス管路52)で連結されている。そして、主燃料ガス容器11内の主燃料ガスG1と、支援ガス容器21内の支援ガスG2は、それぞれの圧力が適宜調整されつつミキサ3に送られ、ミキサ3内にて主燃料ガスG1と支援ガスG2とが混合されて、混合ガス燃料G3が生成され、該混合ガス燃料G3が空気G0と交わりつつガスエンジン7に向かって送り込まれるようになっている。
【0026】
これらの構成によって、バイオマス系の粗ガスである主燃料ガスG1と、都市ガス等の支援ガスG2がミキサ3によって混合されて混合ガス燃料G3としてガスエンジン7に供給され、さらに別に供給される空気G0と共にガスエンジン7を稼働させる(図2参照)。本発明において主燃料ガスG1は、牛,豚等の家畜の糞尿或いは生ごみを無酸素状態で加熱して発生したガスで、粗ガスと称されることもある。支援ガスG2は、都市ガス等の一般的なガスが使用される。
【0027】
本発明におけるガスエンジン発電システムの構成は、図1に略示構成図として示されている。また、図2は、本発明におけるガスエンジン発電システムの動作を示す行程図(フローチャート図とも言う)であり、ガスエンジン発電システムにおける主燃料ガス容器11内の主燃料ガスG1と、支援ガス容器21内の支援ガスG2とがミキサ3にて混合され、混合ガス燃料G3が生成され、該混合ガス燃料G3がガスエンジン7へ供給される迄の行程は、図2に記載されている。
【0028】
主燃料ガス容器11と支援ガス容器21は、それぞれ独立した別々の主燃料ガス管路51及び支援ガス管路52によってミキサ3に連結している。主燃料ガス容器11内の主燃料ガスG1と、支援ガス容器21内の支援ガスG2はそれぞれ別の主燃料ガス管路51及び支援ガス管路52を介してミキサ3に送られ、ミキサ3内で初めて主燃料ガスG1と支援ガスG2とが混合され、ミキサ3の内部で混合ガス燃料G3が生成される。
【0029】
ガスエンジン7は、シリンダ71とシリンダヘッド72とを備えており、1又は複数のシリンダ71及びシリンダヘッド72が直列に配置された構造を有するものである(図3参照)。シリンダ71には、ピストンが上下運動可能に収納され、シリンダ71の上部にシリンダヘッド72が設けられ、該シリンダヘッド72の下面がヘッド内頂壁面72aとして形成されている。該ヘッド内頂壁面72aは、略球面形状さらに具体的には扁平球面状凹面をなしている〔図3(B)参照〕。シリンダヘッド72には、吸気ポート73及び排気ポート74が設けられており、ヘッド内頂壁面72aには吸気ポート73の開口及び排気ポート74の開口がそれぞれ形成されている。シリンダ71は、水平方向の断面は真円である。
【0030】
前記シリンダヘッド72には、2個の点火プラグ81,82と、吸気バルブ84及び排気バルブ85が設けられている〔図3(A),(B)参照〕。前記シリンダヘッド72(又は前記シリンダ71)の上面側から平面的に見て、2個の点火プラグ81,82と、吸気バルブ84及び排気バルブ85が適正に配置されるようにして設けられている。具体的には、2個の点火プラグ81,82,吸気バルブ84,排気バルブ85が等間隔に4等分となるようにして周回りに配されている〔図3(C)参照〕。吸気バルブ84は、前記吸気ポート73の開口を開閉し、排気バルブ85は前記排気ポート74の開口を開閉する。
【0031】
2個の点火プラグ81,82は、同一物であり、ヘッド内頂壁面72aにそれぞれのギャップ81a,82aが突出するようにして装着されている〔図3(B)参照〕。2個の点火プラグ8は、説明の便宜上区別するため、何れか1つを第1点火プラグ81と称し、他方を第2点火プラグ82と称する。ここで、第1点火プラグ81は、シリンダヘッド72の吸気ポート73からシリンダ71内に流入するガス燃料(混合ガス燃料G3と空気G0との混合ガス)の噴射噴流を最初に受けるものとする。
【0032】
次に、火炎センサ9ついて説明する。該火炎センサ9の役目は、シリンダ71内の燃料ガスである混合ガス燃料G3と空気G0との混合ガスの爆発による火炎の状態を検知するものである。そして、この火炎の勢いの強弱を検知した火炎センサ9の信号がECU(エンジンコントロールユニット)4に送られ、これによって、混合ガス燃料G3と空気G0との混合状況の良否がECU4によって判断され、さらにミキサ3に支援ガスG2を供給するか否かを判断するものである(図1図2参照)。
【0033】
火炎センサ9は、シリンダ71内の第1点火プラグ81と第2点火プラグ82からから所定距離をおいてシリンダ71内の円周状の内周壁面71aに装着される〔図3(C),図5(B),(C),図6(B),(C)参照〕。前記所定距離とは略遠距離であり、具体的には、シリンダ71内の第1点火プラグ81と第2点火プラグ82からから遠距離となる位置のシリンダ71の内周壁面71aに装着されている。シリンダ71内への火炎センサ9の装着位置を、第1点火プラグ81及び第2点火プラグ82からできる限り遠距離とすることで、シリンダ71内における燃料ガス(混合ガス燃料G3と空気G0)の燃焼状態を全体的に検知(感知)し易いものにでき、燃料ガスの燃焼状態を正確に検知して、ECU4により一層正確な情報を送り易いものにできる。
【0034】
火炎センサ9のシリンダ71内の装着について、詳述すると、シリンダ71内に第1点火プラグ81と第2点火プラグ82とを結ぶ仮想第1直線L1を設定し、さらに、該仮想第1直線L1の中心に直交する水平方向の仮想第2直線L2を設定する〔図3(C)参照〕。前記仮想第1直線L1と前記仮想第2直線L2は共に、シリンダ71の円周の直径中心Qを通過する。また、仮想第1直線L1と仮想第2直線L2とは高さ方向にて異なり、両者は交わるものではない。
【0035】
次に、該仮想第2直線L2の両端と、シリンダ71の内周壁面71aとの当接する箇所を火炎センサ9の設置位置とする〔図3(C)参照〕。火炎センサ9は、シリンダ71の内周壁面71aと、仮想第2直線L2の交点となる箇所に設けられるものであり、該交点は2箇所となり、火炎センサ9は2個備えられる。また、二つの交点の内の一つのみに火炎センサ9が設けられる構成でも構わない。つまり、この場合では火炎センサ9は1個となる。また、火炎センサ9がシリンダ71の内周壁面71aに配置される位置は、上記条件に限定されず、内周壁面71aの何れの位置に設けても良く、この場合においては、火炎センサ9の数は、3以上でも構わない。
【0036】
本発明では、火炎センサ9の数は2個とし、2個の火炎センサ9をシリンダ71の内周壁面71aに装着することを前提として説明する。シリンダヘッド72のヘッド内頂壁面72aは、前述したように、球面状の凹状面であり、この球面状の外形は円形状であり、シリンダ71の内周壁面71aの円周と同一直径となる。そして、シリンダヘッド72に装着される第1点火プラグ81と第2点火プラグ82とを結ぶ仮想第1直線L1は、前述したように、原則としてシリンダ71の直径中心Qを通過するものであり、仮想第1直線L1の中心の位置はシリンダ71の直径中心Qの位置となる。したがって、仮想第1直線
L1の中心箇所で水平方向に直交する仮想第2直線L2もシリンダ71の直径中心Qを通過する〔図3(C)参照〕。
【0037】
これによって、火炎センサ9の位置は、第1点火プラグ81及び第2点火プラグ82のそれぞれのギャップ81a,82aの位置から最大の遠距離であり、且つ等距離である〔図3(C)参照〕。火炎センサ9は、一つのシリンダ71に対して1個又は2個設けられる。実際には、火炎センサ9は、第1点火プラグ81と第2点火プラグ82のそれぞれのギャップ81a,82aの位置から等距離となるシリンダ71の内周壁面71aに設けられる。
【0038】
火炎センサ9は、碍子部91とケース部92と、コネクタ部93a,93bと第1電極94a ,第2電極94bと、コネクタ部93aと第1電極94a 及びコネクタ部93bと第2電極94bとをそれぞれ連通する連通線95a,95bとからなる〔図3(D),図4(A),(B)参照〕。つまり、コネクタ部93aと第1電極94aとは、連通線95aにて導通しており、コネクタ部93bと第2電極94bとは、連通線95bによって導通している。前記両第1電極94a,第2電極94b間に隙間となる空隙が設けられ、該空隙を第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sと称する〔図4(A),(B)参照〕。
【0039】
火炎センサ9におけるシリンダ71の内周壁面71aへの装着については、火炎センサ9が内周壁面71aに埋め込まれるようにして装着される〔図3(C),(D)参照〕。具体的には、火炎センサ9のケース部92の一部には外ネジ92aが形成されており〔図4(A)参照〕、シリンダ71の内周壁面71aには、火炎センサ9の取付孔71bが形成されている。該取付孔71bには、内ネジ71cが形成されている。そして、火炎センサ9の外ネジ92aと、取付孔71bの内ネジ71cとが螺合して、火炎センサ9が、シリンダ71の内周壁面71aに装着されるものである〔図3(C),(D)参照〕。
【0040】
前述したように、火炎センサ9は、シリンダ71内のガス燃料の爆発による火炎Kの強弱の程度を検知する役目をなすものであり、火炎センサ9に連通されるECU4に、火炎の状態を伝達することによって、該ECU4にミキサ3内に支援ガスG2を供給するか否かを判断させるものである(図5図6参照)。
【0041】
以下、火炎センサ9とECU4とによる、ミキサ3内における支援ガスG2の供給の有無を判断する行程を説明する。まず、ガスエンジン7の稼働時において、シリンダ71内にてガス燃料が第1点火プラグ81及び第2点火プラグ82により爆発することによって、この爆発による火炎Kの火炎粒子kaが火炎センサ9の第1電極94a,第2電極94bの周囲を包囲する〔図4(C),図5(B)参照〕。多数の火炎粒子kaが両第1電極94a ,第2電極94bに十分に到達するときには、第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sにイオン電流が発生してECU4は火炎Kが安定と判断し、支援ガスG2の供給は行わない〔図5(B), 図4(C)参照〕。
【0042】
このときの状況は、図5(A)の火炎状態を示す説明図の正常な燃焼の領域で、具体的に(1)の部分である。さらに、ガス燃料の爆発の勢いが弱くなり、第1電極94a,第2電極94bの第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sに到達する火炎粒子kaが少なくなり始めても、爆発を維持できるとECU4が判断したときには、支援ガスG2の供給は行われない〔図5(A)に(2),図5(C)参照〕。
【0043】
次に、第1電極94a,第2電極94bにガス燃料の爆発による火炎粒子kaが十分に到達しないときは、第1電極94aと第2電極94bとの第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sに電流が発生せずECU4は火炎Kの状態が不安定と判断する〔図6(B),図4(D)参照〕。そして、ECU4が火炎Kの状態が不安定と判断するとは、火炎センサ9の第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sに到達する火炎粒子kaが極めて少ないとECU4が判断することである。
【0044】
このときECU4は、支援ガスG2を供給する判断を下し、ミキサ3に支援ガスG2を供給することになる。このときの状況は、図6(A)の火炎状態を示す説明図の「火炎は届いているが弱い」の領域で、具体的に(3)の部分である。また、第1電極94a,第2電極94bにガス燃料の爆発による火炎粒子kaが完全に到達しないときは、失火状態となる〔図6(C),図4(E)参照〕。
【0045】
さらに、火炎Kの状況について詳述すると、火炎Kは伝播するが、分子が活性化している火炎Kの外周はイオン化していて導電性がある。モデル実験による高速度撮影の結果では、第1点火プラグ81(又は第2点火プラグ82)の火花により点火された混合ガス燃料G3と空気G0との混合ガスの爆発による火炎Kは同心円状に広がるが、第1点火プラグ81と第2点火プラグ82のそれぞれのギャップ81a,82aを起点として成長拡大する二つの火炎K,Kが接する、上下方向に広がってゆく〔図5(B)参照〕。これは、火炎Kの前面(先端部分)が同じプラス同士なので反発しあっているからだと考えられている。
【0046】
火炎センサ9は、第1点火プラグ81と第2点火プラグ82との最も遠距離となる部分で、火炎Kの到達が最も遅れて到達する部分に取り付けられ、その状況を検出してECU4に送る。火炎センサ9を介して、ECU4が火炎Kの到達状況が悪くなると判断すると、支援ガス低圧調整弁23の出口圧力を上げて支援ガスG2の流量を増大させる。即ち、シリンダ71内で失火が起こりそうになれば、ECU4から支援ガス低圧調整弁23によって支援ガスG2の流量が増えるように命令を出し、支援ガスG2の圧力P2が若干高くなるように制御する。
【0047】
次に、シリンダ71内における第1点火プラグ81と第2点火プラグ82によって点火した混合ガス燃料G3と空気G0による混合ガスの爆発の火炎Kと、火炎センサ9との状態を説明する。まず、図5に示すように、火炎Kは第1点火プラグ81と第2点火プラグ82のそれぞれのギャップから、同芯円状に拡がる。このとき、火炎Kは電荷を帯びているため、第1点火プラグ81と第2点火プラグ82のそれぞれのギャップ81a,82aから生じた火炎K,Kは、それぞれの火炎前面(「フレームフロント」とも言う)が近づくと互いに反発して、火炎前面は、第1点火プラグ81と第2点火プラグ82とを結ぶ仮想第1直線L1に対して直交する仮想第2直線L2に沿って長くなるように拡がる。そのため、第1点火プラグ81と第2点火プラグ82によって生じた二つの火炎K,Kは、広がって火炎センサ9に到達するまで、爆発から所定時間を有する。
【0048】
主燃料ガスG1は、CO2を多量に含んでおり、主燃料ガスG1を燃焼させるために、理論空燃比であるか否かに係わらず支援ガスG2が加えられて混合ガス燃料G3とすることが必要である。シリンダ71内において、混合ガス燃料G3と空気G0の混合ガスによる火炎Kの広がりにおいて、火炎センサ9の両第1電極94a,第2電極94bの位置に火炎前面が到達すると、両第1電極94a,第2電極94bとのギャップ94sにイオン電流が十分の流れ〔図4(C)参照〕、安定した燃焼が実現されていることが示される〔図5(A),(B)参照〕。
【0049】
燃焼状態が不良であると、火炎前面が火炎センサ9の両第1電極94a,第2電極94bに到達しても、イオン電流は小さくなる〔図4(D)参照〕。ここで、火炎Kの勢いが多少衰えても、第1電極94a,第2電極94bに届く火炎粒子kaの量が少なくなっても、そのままの状態で稼働を続ける〔図5(C)参照〕。さらに、火炎Kが火炎センサ9に到達しないと、火炎センサ9の第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sにイオン電流は流れず〔図4(E)参照〕、ECU4によって支援ガスG2を増量する命令が出される〔図6(A),(B)参照〕。なお、図6(C)は、完全に失火した状態である。
【0050】
次に、参考として、第1点火プラグ81と第2点火プラグ82によって火炎Kが生じたときからどのくらいの時間で、シリンダ71全体に到達するかを述べておく。エンジンの回転数に関わらずエンジンが安定して稼働するには、膨張行程に入ってクランクシャフトの回転角で120度以内である。これを時間に換算すると、2500rpmの場合、60s/2500r×120度/360度=0.008sである。すなわち、第1点火プラグ81と第2点火プラグ82によって火炎Kが生じたときからシリンダ71全体に到達する時間は、8msである。
【0051】
また、ガスエンジン7の排気系(排気ポート74側のエグゾーストパイプ等)にO2センサ54が設けられることもある(図1参照)。そして、空燃比は排気系に装着されたO2センサ54からの信号で、ECU4によって理論空燃比になるように、ミキサ3に供給するガス燃料の圧力が支援ガス低圧調整弁23によって調整される。排気系の後流には三元触媒55が設けられ、排気中のHC/CO/NOxを無害化するが、そのためにはシリンダ71内で燃焼後には、酸素も可燃性の物質(燃料)も余らないように、エンジンを理論空燃比で作動させなければならない。
【0052】
そのために前記O2センサ54で排気中のO2濃度を検出して空燃比を理論空燃比になるようにECU4でフィードバック制御を行う。具体的には、O2センサ54で検出した空燃比が、理論空燃比がより薄いと判断された場合にも、支援ガスG2の流量を増やす。空燃比の調整は可燃成分が明らかでない主燃料(主燃料ガスG1)ではなく、支援ガスG2の流量の増減で行う。このように、O2センサ54と前記火炎センサ9とを併用することにより、ミキサ3を介してシリンダ71内のガス燃料(混合ガス燃料G3と空気G0)における混合ガス燃料G3の主燃料ガスG1と支援ガスG2との混合比率を良好に維持し、つまり理論空燃比又は略理論空燃比に維持し、シリンダ71内の良好な燃焼状態を維持できる。
【0053】
主燃料ガス容器11には、粗ガスである主燃料ガスG1が充填されている。また、主燃料ガス容器11には一次減圧弁11aが設けられている。主燃料ガス容器11とミキサ3とは主燃料ガス管路51にて連結されている。また、主燃料ガス容器11とミキサ3との間の主燃料ガス管路51には、主燃料ガス遮断弁12,主燃料ガス低圧調整弁13,主燃料ガス圧力センサ14が直列状に設けられている(図1参照)。
【0054】
主燃料ガス容器11から排出される主燃料ガスG1は、主燃料ガス容器11に装着されている一次減圧弁11aにて約50kPa程度まで減圧され、さらに主燃料ガス低圧調整弁13で3kPa程度の大気圧に近い圧力まで減圧される。このとき、一次減圧弁11aによって主燃料ガス容器11から排出される主燃料ガスG1が一気に3kPa程度の大気圧に近い圧力まで減圧できるのであれば、主燃料ガス低圧調整弁13は設けられず、これを不要としてもかまわない。
【0055】
支援ガス容器21には支援ガスG2が充填されている。支援ガス容器21には、一次減圧弁21aが設けられている。支援ガス容器21とミキサ3とは支援ガス管路52にて連結されている。また、支援ガス容器21とミキサ3との間の支援ガス管路52には、支援ガス遮断弁22,支援ガス低圧調整弁23が直列状に設けられている。支援ガス容器21から排出される支援ガスG2は、支援ガス容器21に装着されている一次減圧弁21aにて約50kPa程度まで減圧され、さらに支援ガス低圧調整弁23で3kPa程度の大気圧に近い圧力まで減圧される。
【0056】
特に、主燃料ガスG1中の可燃ガスとして、一酸化炭素CO,水素H2やメタンCH4があるが、これらのガス着火温度は高く、ディーゼルエンジンの様に圧縮熱で着火することはできない。そこで電気火花で点火して火炎が広がるのを助けるために、入手し易いプロパンC3H8を支援ガスとして主燃料ガスG1に予混合する火花点火エンジンシステムとすることも可能である。
【0057】
ミキサ3は、ミキサボディ31と、スロットル32とを有し、前記ミキサボディ31は第1入口部31aと第2入口部31bと導入管部31cとを有し、該導入管部31c内にはベンチュリ部31dが形成され、該ベンチュリ部31dの外周には、仕切り壁31fを介して円環状空間31eが形成されている〔図7(A),(B)参照〕。仕切り壁31fには、円環状スリット31gが形成され、該円環状スリット31gを介して前記円環状空間31eと前記ベンチュリ部31d内とが連通されている。
【0058】
また、第1入口部31aと第2入口部31bは共に円環状空間31eと連通している。つまり、第1入口部31aと第2入口部31bとは円環状空間31eを介して連通する構成となっている。ベンチュリ部31dの排出側にはスロットル32が設けられている。ミキサ3の第1入口部31aには主燃料ガス系の主燃料ガス管路51と連通しており、主燃料ガスG1の入口となっている。また、第2入口部31bには支援ガス系の支援ガス管路52と連通しており、支援ガスG2の入口となっている。ミキサ3は、吸気マニフォールドから吸気バルブを経て、2点点火のガスエンジン7のシリンダに吸い込まれる。
【0059】
次に、主燃料ガス低圧調整弁13と支援ガス低圧調整弁23について説明する。主燃料ガス低圧調整弁13と支援ガス低圧調整弁23とは、構造及び差動は同一であり、主燃料ガス低圧調整弁13を主として説明する〔図7(C)参照〕。なお、括弧付き符号は支援ガス低圧調整弁23に係る符号である。低圧コントローラやECU4からの信号が入っていないときは、スプリング13b(23b)に押し戻されてアーマチャ13a(23a)の先端のシール部材13c(23c)がノズル13d(23d)を塞いでいる。
【0060】
ECU4からパルス信号が入ると、コイル13h(23h)により発生する磁力でアーマチャ13a(23a)は引き上げられ間隙ksができ、主燃料ガス容器11(の1次減圧弁11a)からの主燃料ガスG1はダイアフラム13e(23e)で区画された小室13f(23f)に流入する。そしてその主燃料ガスG1は遮断弁又はミキサ3に流れ出るので該小室13f(23f)内の圧力が下がる。なお、主燃料ガス低圧調整弁13と支援ガス低圧調整弁23には大気を開放する貫通孔が形成されている。これは、大気開放孔13g(23g)であり、ダイアフラム13e(23e)の動きをよくする役目をなすものである。
【0061】
コイル13h(23h)にはECU4から矩形波のアーマチャ13a(23a)を駆動する信号が入る。図8(A)はこの信号の形態である。エンジンが稼働しているときはto(s)の周期(周波数は1/to)でt(S)だけ通電する。通電中は磁界が発生し、アーマチャ13a(23a)はスプリング13b(23b)の力に打ち勝って引き上げられ間隙ksが形成され、主燃料ガスG1(支援ガスG2)が流れる。ここで、別に行った可視化実験の結果ではシール部材13c(23c)はパタパタしているのではなく、デューティが大きくなると間隙ksは大きくなる。これは可動部分の慣性とヒステリシスなどのためである。
【0062】
また、符号13jは、主燃料ガス低圧調整弁13の流入口であり主燃料ガス容器11及び主燃料ガス遮断弁12と主燃料ガス管路51を介して連通し、主燃料ガス容器11,主燃料ガス遮断弁12を介して主燃料ガスG1が主燃料ガス低圧調整弁13内に供給される役目をなす。符号13kは、主燃料ガス低圧調整弁13の排出口でありミキサ3に連通し、ミキサ3へ主燃料ガスG1を供給する役目をなす。
【0063】
さらに、符号23jは、支援ガス低圧調整弁23の流入口であり、支援ガス容器21及び支援ガス遮断弁22と支援ガス管路52を介して連通し、支援ガス容器21,支援ガス遮断弁22を介して支援ガスG2が支援ガス低圧調整弁23内に供給される役目をなす。符号23kは、支援ガス低圧調整弁23の排出口でありミキサ3に連通し、ミキサ3へ支援ガスG2を供給する役目をなす。
【0064】
次に、参考として、家畜の糞尿を発酵させたり、生ゴミを無酸素状態で蒸し焼きにして生成した主燃料ガス(便宜上Sガス『主燃料ガスG1』と呼ぶ)の成分を体積割合でメタン(CH4)40%、一酸化炭素(CO)30%、二酸化炭素(CO2)30%として、このガスがシリンダ71内で燃焼できるか否かについて述べる。
【0065】
Sガス(主燃料ガスG1)1モル(標準状態22.4リットル)中の各成分の質量を求める。
CH4の分子量は16だから0.4モルの質量は16×0.4 =6.4g
COの分子量は28だから0.3モルの質量は28×0.3 = 0.34g
CO21の分子量は44だから0.3モルの質量は44×0.3 = 13.2g
従ってSガス(主燃料ガスG1)1モルの質量は25g(空気とほぼ等しい)。
Sガス(主燃料ガスG1)の密度(1m3の質量kg)は28g×1000/22.4=1.25kg/m
【0066】
次にSガス(主燃料ガスG1)の発熱量を求める。
CH4の発熱量は36.1Mj/m3だから0.44m3では
36.1×0.4=14.44
COの発熱量は12.66Mj/m3だから0.3m3では
12.6×0.3=3.8
CO2の発熱量は0だから0x0.3=0である。
【0067】
従ってSガス(主燃料ガスG1)1m3の発熱量は18.2Mj/m3であり、これはプロパン(C3H8) 90.7M j/m3の約20%であり、回生する意義があると判断される。しかし、消火器にも使われる二酸化炭素(CO2)が主燃料中30%を占めるので、シリンダ71内では可燃領域に入らないことについて以下に説明する。2点点火のガソリンエンジンで排気還流(EGR)量をエンジンの運転限界まで増大させると、理論空燃比の場合、シリンダ71に吸入した混合気中のCO2濃度が、10%が安定燃焼の限界であった。
【0068】
そこで、Sガス(主燃料ガスG1)だけを使ってエンジンを運転できたと仮定して、Sガス(主燃料ガスG1)の理論空燃比を求める。まず、Sガス(主燃料ガスG1)1モル(28g)を燃焼させるのに必要な空気の質量を算出する。
【0069】
CH4 + 2O2=CO2 + 2H2O すなわち2モルのO2が要る。
CH4が0.4モルならば2モル×0.4=0.8モルのO2が要る。
CO+1/2O2=CO2すなわち1/2モルのO2が要る。
COが0.3モルならば0.5モルx0.3=0.15モルのO2が要る。
CO2は燃焼しないのでO2は必要ない。
Sガス(主燃料ガスG1)1モルを燃焼させるためには 0.8+0.15モル=0.995モル(30.4g)のO2が必要である。
【0070】
一方、空気1モル(2 8,8 g)中のO2の質量は32g×0.21=6.72なので(3 0.4g/6.7 2)×2 8.8 =130.3gの空気が必要である。
従って、主燃料ガスG1の理論空燃比は130.3/28g=4.6 4
理論空燃比がプロパンの15.6やガソリンの14.7に比べて小さいのは燃える成分が少ないということを意味する。
【0071】
10%を基準としてシリンダ内で燃焼できるか否かについて考察する。
化学式と数式を省略すると、Sガス(主燃料ガスG1)1モル28gを燃焼させるのに必要な101.3リットルが必要である。これは4.522モル質量では130.2g相当する。主燃料ガスG1の理論空燃料比は130.2g/28g=4.65となり、
プロパンの15.6、ガソリンの14.7よりかなり小さい。これは燃えるものが少ないことを意味する。
【0072】
次に、点火直前のCO2濃度が前述の10%以下を基準としてシリンダ内で燃焼できるか否かについて考察する。
前述したシリンダ71に吸入した混合気中のCCb濃度が10 %以下になるような支援ガスの、Sガス(主燃料ガスG1)に対する体積割合を求める。
単独では燃焼が不可能なSガス(主燃料ガスG1)を燃焼させるために、燃焼支援ガス(以後、支援ガス)を加え混焼させる場合に必要なプロパンをXモルとすると、
0.1≧(Sガス(主燃料ガスG1)1モル中のCO2のモル数)/ { (Sガス(主燃料ガスG1)1モルとこれを燃焼させるのに必要な空気のモル数)+(プロパンXモルとこれを燃焼させるのに必要な空気のモル数)}・・・(1)
となる。これにこれまでに求めた数値を入れると、
0.1≧(0.3 モル)/{(1+4.52 モル)+(X+23.7X)・・・(1’)
これを解いてX≧0.121、すなわちS(粗)ガス(主燃料ガスG1)の12.1%以上の体積割合のプロパン(C3 H8)が必要になる。
【0073】
前記の支援ガス割合でエンジンが理論空燃比で作動していても、支援ガスの量が少ないとシリンダ71内での燃焼にバラツキが出て回転変動が大きくなり、さらに増大すると停止する。混焼を制御する手段について説明する前に、図8(C)の白金―ジルコニアのO2センサ54の出力信号(起電力)と空燃比の関係を示す。その起電力は理論空燃比理論空燃比の前後で大きく変化するが、0.5 Vが理論空燃比であるといえる。この図8(C)の上の図のように支援ガス低圧調整弁23の出口圧力P2をP50となるように調整する。
次に説明するデューティt/t0が大きくなると空燃比は小さく(濃く)なる。
【0074】
図7(C)でミキサ3に入る主燃料ガスG1及び支援ガスG2の圧力制御方法を説明する。主燃料ガス低圧調整弁13(支援ガス低圧調整弁23)のコイル13h(23h)にはバッテリ57から矩形波のアーマチュア13a(23a)を駆動する信号が入る。図8(A)は、この信号の形態である。エンジンが稼働しているときはt0と(s)の周期(周波数は1/t0 )でt(S)だけ通電する。
【0075】
通電中は磁界が発生しアーマチュア13a(23a)はスプリング13b(23b)の力に打ち勝って引き上げられ間隙58ができガスが流れる。ここで、別に行った可視化実験の結果ではシール部材13c(23c)はパタパタしているのではなく、デューティが大きくなると間隙は大きくなる。これは可動部分の慣性とヒステリシスなどのためである。
【0076】
式(1),式(1’)で求めた、主燃料ガスG1と支援ガスG2の混合ガス燃料G3と空気の混合気が理論空燃比であっても、主燃料中のCO2が火炎伝播の障害になることがある。これにより燃焼が乱れると火炎センサ9の信号が乱れる。点火信号からt(s)だけ遅れて火炎検出信号が現れる。このtは、図8(A)のデューティの説明で使用したtとは異なる。
【0077】
図5(A)において(1)は、火炎Kが正しく火炎センサ9の第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sに到達していることを示す。また、図5(B)は図5(A)の(1)の状態を示している。図5(A)の(2)は弱い火炎Kが火炎センサ9の第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sに到達している。図6(A)の(3)は火炎Kが火炎センサ9の第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sに遅れて到達している上に弱いが伝播は到達している。
【0078】
図6(A)の(4)は、全く火炎Kは火炎センサ9の第1電極94aと第2電極94bとのギャップ94sに到達せず失火の状態を示す。このような現象が理論空燃比で運転していても主燃料ガスG1中のCO2の消火作用により発生することがある。ECU4が失火だと判断すると、前述のデューティを大きくすると図1及び図8(C)のP2は高くなる。
例えば、図1の圧力P1を2.8 kPaとすれば、圧力P2を4.5kPaのように調整して、失火を検出しなくなるまで調整する。図8(C)のようにP2はP1より必ず大きい。主燃料ガスG1の圧力P1は、変化させない。
【0079】
ECU4が失火だと判断すると、前述のデューティを大きくすると図1、8(C)のP2は高くなる。例えば、図1の圧力P1を2.8 kPaとすれば、圧力P2を4.5kPaのように調整して、失火を検出しなくなるまで調整する。図8(B)のように圧力P2は圧力P1より必ず大きい。主燃料ガスG1の圧力P1は変化させない。
【0080】
なお、図1において、符号53は発電機、符号54はO2センサ、符号55は三元触媒、符号56はマフラ、符号57はバッテリ、符号58はクランクセンサ、符号59はフライホィール、符号14は主燃料ガス圧力センサである。
【符号の説明】
【0081】
11…主燃料ガス容器、21…支援ガス圧力容器、3…ミキサ、4…ECU
54…O2センサ、7…ガスエンジン、71…シリンダ、71a…内周壁面、
81…第1点火プラグ、82…第2点火プラグ、84…吸気バルブ、
85…排気バルブ、9…火炎センサ、91…碍子部、94a…第1電極、
94b…第2電極、94s…ギャップ、L1…仮想第1直線、
L2…仮想第2直線、G1…主燃料ガスG1、G2…支援ガス、
G3…混合ガス燃料、G0…空気、K…火炎、ka…火炎粒子。
【要約】
食物残滓,動物の糞尿等の無酸素状態で加熱された有機物から生成される燃料によって稼働し、燃料の可燃性物質を有効に燃焼させて稼働させる作動効率の極めて高い発電システムとすること。
【構成】バイオ系の主燃料ガスG1の主燃料ガス容器11と、非バイオ系の支援ガスG2の支援ガス容器21と、ガスエンジン7と、主燃料ガスG1と支援ガスG2とが混合された混合ガス燃料G3をガスエンジン7に供給するミキサ3を備える。ガスエンジン7は、シリンダ71に点火プラグ81,82と吸気バルブ84と排気バルブ85とが配設され、点火プラグ81,82から所定距離をおいてシリンダ71内の内周壁面71aに火炎Kの強弱を検知する火炎センサ9が装着され、火炎センサ9はECU4に連通され、シリンダ71の火炎Kの爆発力が所定以下のときにはECU4によりシリンダ71内に支援ガスG2を供給する。ガスエンジン7には発電機53が連結されていること。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8