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特許7598187フラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】フラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20241204BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241204BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20241204BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 E
H05K3/34 503Z
B23K35/26 310A
C22C13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024543392
(86)(22)【出願日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2023029244
【審査請求日】2024-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大谷 怜史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇介
(72)【発明者】
【氏名】邑田 美智子
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-129960(JP,A)
【文献】特開平04-262893(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172410(WO,A1)
【文献】特開2019-147185(JP,A)
【文献】特開2021-090999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けに用いられるフラックスであって、
ヒドロキシ基を1つ有すると共に20℃で固体の脂肪族アルコール、及び、20℃で固体の脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種と、
ヒドロキシ基を1つ以上3つ以下有すると共に20℃で液体の液体溶剤と、
ヒドロキシ基を2つ以上4つ以下有すると共に20℃で固体の固体溶剤と、を含有し、
チキソ剤を含まないか、又は、フラックス全体に対して20.0質量%以下のチキソ剤を含み、
前記フラックスが、前記脂肪酸エステルを含み、
前記脂肪酸エステルの含有量が、フラックス全体に対して、0.5質量%以上45.0質量%以下である、フラックス。
【請求項2】
前記脂肪族アルコールが、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、及び、1-ドコサノールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記脂肪酸エステルが、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、及び、ステアリン酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項4】
請求項1に記載のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含む、ソルダペースト。
【請求項5】
請求項に記載のソルダペーストを用いて、基板と接合部品とを接合する、接合構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の電子回路基板と接合部品との接合には、はんだ合金粉末とフラックスとを混合したソルダペーストが用いられる。ソルダペーストは、基板表面の電極部に塗布されると共に、該電極部に接合部品の電極部を接触させた状態で加熱(リフロー)される。これにより、はんだ合金粉末が溶融してはんだ接合部が形成され、該はんだ接合部を介して基板と接合部品とが接合された接合構造体を得ることができる。
【0003】
斯かるソルダペーストに含まれるフラックスとしては、ロジン等の樹脂、溶剤、チキソ剤、及び、活性剤等から構成されるフラックスが一般的に用いられている。しかし、このようなフラックスを含むソルダペーストを用いてはんだ付けをすると、フラックス残渣がはんだ付け部周囲に残ることがある。そのため、例えば、フラックスの構成成分を揮発性の高い材料から選択する方法、減圧リフロー、又は、減圧還元リフローを採用して、リフロープロセスでフラックスを十分に揮発させる方法等によりフラックス残渣の低減を図っている。
【0004】
例えば、特許文献1には、揮発しにくいロジン等の樹脂を含まないフラックスが開示されている。斯かるフラックスは、ロジン等の樹脂の代わりに、液体溶剤と固体溶剤とを併用することにより、フラックス残渣の低減を図っている。
【0005】
従来、パワーデバイス製造のはんだ付けにおいては、はんだ箔が広く用いられている。ところが、近年では、該はんだ箔の代替材料として、パワーデバイス製造の分野においてもソルダペーストが注目されている。ソルダペーストは、印刷により基板に対してはんだを一括供給することが可能である。さらに、ソルダペーストを用いたはんだ付けにおいては、基板搬送時における部品のズレ及び落下を防ぐための部品固定用治具が不要になる。これにより、接合構造体の製造工程をオートメーション化することが容易になるため、ソルダペーストをパワーデバイス製造のはんだ付けに適用する試みが積極的になされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2019-38026号公報
【0007】
しかし、はんだ付けリフロープロセスは、リフロー後のフラックス残渣を低減させるため、リフロープロセス時間が長いことが問題となっている。特に、パワーデバイスのはんだ付けにおいては、フラックス残渣が後工程で不良の原因となることから、より一層、フラックス残渣の低減が求められる。そのため、パワーデバイスのはんだ付けにおいては、リフロープロセス時間がより長くなる傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低残渣を実現するためのリフロープロセス時間を短縮することができるフラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、ヒドロキシ基を1つ有すると共に20℃で固体の脂肪族アルコール、及び、20℃で固体の脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種と、ヒドロキシ基を1つ以上3つ以下有すると共に20℃で液体の液体溶剤と、ヒドロキシ基を2つ以上4つ以下有すると共に20℃で固体の固体溶剤と、を含有し、チキソ剤を含まないか、又は、フラックス全体に対して20.0質量%以下のチキソ剤を含む。
【0010】
本発明に係るソルダペーストは、前記フラックスと、はんだ合金粉末とを含む。
【0011】
本発明に係る接合構造体の製造方法は、ソルダペーストを用いて、基板と接合部品とを接合する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るフラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法について説明する。
【0013】
<フラックス>
本実施形態に係るフラックスは、脂肪族アルコール、及び、脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種と、液体溶剤と、固体溶剤と、を含有する。
【0014】
(脂肪族アルコール)
脂肪族アルコールは、ヒドロキシ基を1つ有すると共に、20℃で固体である。このような脂肪族アルコールとしては、例えば、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、1-ドコサノール、1-ドデカノール、1-テトラコサノール等が挙げられる。これらの中でも、前記脂肪族アルコールは、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、及び、1-ドコサノールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
前記脂肪族アルコールの含有量は、前記フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、5.0質量%以上であることが特に好ましい。また、前記脂肪族アルコールの含有量は、前記フラックス全体に対して、45.0質量%以下であることが好ましく、30.0質量%以下であることがより好ましく、20.0質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記脂肪族アルコールが2種以上含まれる場合、前記含有量は、合計含有量である。
【0016】
(脂肪酸エステル)
脂肪酸エステルは、20℃で固体である。このような脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、アラキジン酸メチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸メチル等が挙げられる。これらの中でも、前記脂肪酸エステルは、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、及び、ステアリン酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
前記脂肪酸エステルの含有量は、前記フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることが特に好ましい。また、前記脂肪酸エステルの含有量は、前記フラックス全体に対して、45.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記脂肪酸エステルが2種以上含まれる場合、前記含有量は、合計含有量である。
【0018】
本実施形態に係るフラックスは、フラックスの分離を抑制させるという観点から、前記脂肪族アルコール、及び、前記脂肪酸エステルの両方を含むことが好ましい。前記脂肪族アルコール、及び、前記脂肪酸エステルの合計含有量は、前記フラックス全体に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましく、10.0質量%以上であることが特に好ましい。また、前記脂肪族アルコール、及び、前記脂肪酸エステルの合計含有量は、前記フラックス全体に対して、45.0質量%以下であることが好ましく、40.0質量%以下であることがより好ましく、30.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0019】
(液体溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、ヒドロキシ基を1つ以上3つ以下有すると共に20℃で液体の液体溶剤を含有する。このような液体溶剤としては、例えば、3-メチル1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、2-デシルテトラドデカノール、オレイルアルコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。
【0020】
前記液体溶剤は、フラックスの揮発性を高めるという観点から、少なくとも1種用いることが好ましく、ソルダペーストの粘度安定性を高めるという観点から、2種以上を用いることがより好ましい。前記液体溶剤を少なくとも1種用いる場合には、3-メチル1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、及び、1,2,4-ブタントリオールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
前記液体溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、5.0質量%以上であることが好ましく、20.0質量%以上であることがより好ましい。また、液体溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、80.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以下であることがより好ましい。なお、液体溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、合計含有量である。
【0022】
(固体溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、ヒドロキシ基を2つ以上4つ以下有すると共に、20℃で固体の固体溶剤を含有する。このような固体溶剤としては、例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリスリトール等が挙げられる。これらの中でも、前記固体溶剤は、ソルダペーストの印刷性を向上させるという観点から、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び、エリスリトールからなる群から選択される少なくとも3種であることが好ましい。
【0023】
前記固体溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、5.0質量%以上であることが好ましく、25.0質量%以上であることがより好ましい。また、固体溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、92.0質量%以下であることが好ましく、65.0質量%以下であることがより好ましい。なお、固体溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、合計含有量である。
【0024】
(チキソ剤)
本実施形態に係るフラックスは、チキソ剤を含まないか、又は、フラックス全体に対して20.0質量%以下のチキソ剤を含む。チキソ剤としては、例えば、ヒマシ硬化油、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアマイド、ポリアミド化合物、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリット等が挙げられる。これらの中でも、チキソ剤は、フラックス残渣を低減させるという観点から、脂肪酸アミドを含むことが好ましく、脂肪酸アミドからなることがより好ましい。脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、ミリスチン酸アミド等が挙げられる。これらの中でも、脂肪酸アミドは、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミドであることが好ましい。なお、チキソ剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記チキソ剤の含有量は、フラックスの揮発性を高めるという観点から、前記フラックス全体に対して、20.0質量%以下であり、15.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。また、本実施形態に係るフラックスは、フラックスの揮発性を高めるという観点から、チキソ剤を含まないことが好ましい。なお、チキソ剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、合計含有量である。
【0026】
(活性剤)
本実施形態に係るフラックスは、活性剤を含んでいてもよい。活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機酸系活性剤、アミン系化合物、アミノ酸、アミンハロゲン塩やハロゲン化合物等のハロゲン系活性剤等が挙げられる。なお、活性剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
有機酸系活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸等のその他の有機酸が挙げられる。
【0028】
アミン系化合物としては、特に限定されるものではなく、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられる。前記イミダゾール系化合物としては、例えば、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)エチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。前記トリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-メタノール、1-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。その他のアミン系化合物としては、例えば、セチルアミン、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、3,5-ジメチルピラゾール、ジメチルウレア、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリフェニル-1,3,5-トリアジン、ピラジンアミド、N-フェニルグリシン、3-メチル-5-ピラゾロン、N-ラウロイルサルコシン、1,3-ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0029】
アミノ酸としては、特に限定されるものではなく、例えば、N-アセチルフェニルアラニン(N-アセチル-L-フェニルアラニン、N-アセチル-DL-フェニルアラニン、N-アセチル-D-フェニルアラニン)、N-アセチルグルタミン酸(N-アセチル-L-グルタミン酸)、N-アセチルグリシン、N-アセチルロイシン(N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン)、又は、N-アセチルフェニルグリシン(N-アセチル-N-フェニルグリシン、N-アセチル-L-フェニルグリシン、N-アセチル-DL-フェニルグリシン)等が挙げられる。
【0030】
ハロゲン系活性剤としては、特に限定されるものではなく、アミンハロゲン塩、ハロゲン化合物等が挙げられる。アミンハロゲン塩のアミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジフェニルグアニジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。アミンハロゲン塩のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。ハロゲン化合物としては、イソシアヌル酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブロモ-3-ヨード-2-ブテン-1,4-ジオール、TBA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、4,4’-ジヨードビフェニル等が挙げられる
【0031】
前記活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。なお、活性剤が2種以上含まれる場合、前記活性剤の含有量は、合計含有量である。
【0032】
本実施形態に係るフラックスは、その他の添加剤として、例えば、安定剤、界面活性剤、消泡剤、及び、腐食防止剤から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。その他の添加剤の合計含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、フラックス全体に対して、5.0質量%以下とすることができる。
【0033】
本実施形態に係るフラックスは、ヒドロキシ基を1つ有すると共に20℃で固体の脂肪族アルコール、及び、20℃で固体の脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含み、チキソ剤を含まないか、又は、フラックス全体に対して20.0質量%以下のチキソ剤を含む。これにより、低残渣を実現するためのリフロープロセス時間を短縮することができる。
【0034】
本実施形態に係るフラックスによれば、前記フラックスが、前記脂肪族アルコールを含み、前記脂肪族アルコールの含有量が、フラックス全体に対して、0.5質量%以上45.0質量%以下であることが好ましい。これにより、低残渣を実現するためのリフロープロセス時間をより短縮することができる。また、フラックスの粘性が上昇し、ソルダペーストの粘性を確保することができる。
【0035】
本実施形態に係るフラックスによれば、前記フラックスが、前記脂肪酸エステルを含み、前記脂肪酸エステルの含有量が、フラックス全体に対して、0.5質量%以上45.0質量%以下であることが好ましい。これにより、低残渣を実現するためのリフロープロセス時間をより短縮することができる。また、フラックスの粘性が上昇し、ソルダペーストの粘性を確保することができる。
【0036】
本実施形態に係るフラックスによれば、前記脂肪族アルコールが、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、及び、1-ドコサノールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、低残渣を実現するためのリフロープロセス時間をより短縮することができる。
【0037】
本実施形態に係るフラックスによれば、前記脂肪酸エステルが、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、及び、ステアリン酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、低残渣を実現するためのリフロープロセス時間をより短縮することができる。
【0038】
<ソルダペースト>
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。前記はんだ合金粉末におけるはんだ合金としては、鉛フリーはんだ合金、鉛を含む共晶はんだ合金が挙げられるが、環境負荷低減の観点から、鉛フリーはんだ合金であることが好ましい。鉛フリーはんだ合金としては、例えば、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金が挙げられる。より具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Sb、Sn/Ag/Sb、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag、Sn/In等の合金が挙げられる。また、前記合金には、不可避的不純物が含まれる。不可避的不純物とは、製造過程において不可避的に混入する成分であって、本発明の効果に影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0039】
前記フラックスの含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。また、前記はんだ合金粉末の含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、80質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0040】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記フラックスと、はんだ合金粉末とを含む。これにより、低残渣を実現するためのリフロープロセス時間を短縮させることができる。
【0041】
<接合構造体の製造方法>
本実施形態に係る接合構造体の製造方法は、前記ソルダペーストを用いて、基板と接合部品とを接合する。具体的には、リフロー炉内で、前記ソルダペーストを介して基板と接合部品とを接触させた状態で加熱し、前記ソルダペーストを構成するはんだ合金を溶融させる。その後、冷却することにより、基板と接合部品とを接合する。
【0042】
まず、前記基板の表面に前記ソルダペーストを配置する。前記ソルダペーストは、はんだ印刷装置による印刷、転写印刷、ディスペンサーによる塗布、マウンターによる搭載等の公知の方法を用いて配置することができる。はんだ印刷装置を用いて前記ソルダペーストを印刷する場合には、塗布するソルダペーストの厚みを30μm以上600μm以下とすることができる。また、前記基板としては、特に限定されず、例えば、プリント基板、DBC基板、ベースプレート板、リードフレーム、シリコンウエハ等の公知の基板を用いることができる。
【0043】
次に、前記ソルダペーストを介して前記基板と接触するように、前記接合部品を配置する。前記接合部品としては、特に限定されず、例えば、チップ部品(ICチップ等)、抵抗器、ダイオード、コンデンサ、トランジスタ、半導体チップ(Siチップ等)、ヒートシンク等の公知の接合部品を用いることができる。
【0044】
続いて、前記ソルダペーストを介して基板と接合部品とを接触させた状態で加熱する。加熱温度は、特に限定されず、ソルダペーストに応じて適宜選択することができ、ソルダペーストの融点以上を範囲とする。加熱する工程は、金属の酸化を抑制する目的で、窒素ガス等を用いて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。また、ガスの放出を促進させる目的で、真空ポンプを用いて雰囲気を減圧若しくは真空にして行ってもよい。また、加熱する工程の前に、予熱する工程を行ってもよい。予熱温度は、特に限定されず、ソルダペーストに応じて適宜選択することができ、ソルダペーストの融点未満を範囲とする。予熱する工程は、不活性ガス雰囲気下で減圧若しくは真空にして行ってもよく、また、水素ガス若しくはギ酸ガスを用いて還元雰囲気下で行ってもよい。
【0045】
最後に、前記ソルダペーストを介して接触した基板と接合部品とを冷却する。冷却する工程では、例えば、降温速度120℃/分以上5℃/分以下で、20℃以上200℃以下まで冷却する。
【0046】
本実施形態に係る接合構造体の製造方法は、前記ソルダペーストを用いて、基板と接合部品を接合する。これにより、低残渣を実現するためのリフロープロセス時間を短縮することができる。
【0047】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]はんだ付けに用いられるフラックスであって、
ヒドロキシ基を1つ有すると共に20℃で固体の脂肪族アルコール、及び、20℃で固体の脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種と、
ヒドロキシ基を1つ以上3つ以下有すると共に20℃で液体の液体溶剤と、
ヒドロキシ基を2つ以上4つ以下有すると共に20℃で固体の固体溶剤と、を含有し、
チキソ剤を含まないか、又は、フラックス全体に対して20.0質量%以下のチキソ剤を含む、フラックス。
[2]前記フラックスが、前記脂肪族アルコールを含み、
前記脂肪族アルコールの含有量が、フラックス全体に対して、0.5質量%以上45.0質量%以下である、[1]に記載のフラックス。
[3]前記フラックスが、前記脂肪酸エステルを含み、
前記脂肪酸エステルの含有量が、フラックス全体に対して、0.5質量%以上45.0質量%以下である、[1]又は[2]に記載のフラックス。
[4]前記脂肪族アルコールが、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、及び、1-ドコサノールからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれか一つに記載のフラックス。
[5]前記脂肪酸エステルが、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、及び、ステアリン酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれか一つに記載のフラックス。
[6][1]~[5]のいずれか一つに記載のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含む、ソルダペースト。
[7][6]に記載のソルダペーストを用いて、基板と接合部品とを接合する、接合構造体の製造方法。
【0048】
なお、本発明に係るフラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、本発明に係るフラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法は、上記した実施形態の作用効果によって限定されるものでもない。即ち、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の説明ではなく、請求の範囲によって示される。また、本発明の範囲には、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例
【0049】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
<フラックスの材料>
(脂肪族アルコール)
1-テトラデカノール:東京化成工業株式会社製
1-ヘキサデカノール:東京化成工業株式会社製
1-オクタデカノール:東京化成工業株式会社製
1-エイコサノール:東京化成工業株式会社製
1-ドコサノール:東京化成工業株式会社製
(脂肪酸エステル)
ステアリン酸メチル:東京化成工業株式会社製
ステアリン酸エチル:東京化成工業株式会社製
ステアリン酸ブチル:東京化成工業株式会社製
(液体溶剤)
3-メチル1,5-ペンタンジオール:株式会社クラレ製
1,4-ブタンジオール:東京化成工業株式会社製
2,5-ヘキサンジオール:東京化成工業株式会社製
1,5-ペンタンジオール:東京化成工業株式会社製
2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール:東京化成工業株式会社製
1,2,6-ヘキサントリオール:東京化成工業株式会社製
1,2,4-ブタントリオール:東京化成工業株式会社製
ヘキシルデカノール:高級アルコール工業株式会社製
イソステアリルアルコール:高級アルコール工業株式会社製
2-オクチルドデカノール:高級アルコール工業株式会社製
2-デシルテトラドデカノール:高級アルコール工業株式会社製
オレイルアルコール:高級アルコール工業株式会社製
(固体溶剤)
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール:三菱ガス化学株式会社製
2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール:東京化成工業株式会社製
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール:東京化成工業株式会社製
2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール:東京化成工業株式会社製
1,2-オクタンジオール:東京化成工業株式会社製
1,8-オクタンジオール:東京化成工業株式会社製
1,10-デカンジオール:東京化成工業株式会社製
1,2-ドデカンジオール:東京化成工業株式会社製
1,6-ヘキサンジオール:東京化成工業株式会社製
1,9-ノナンジオール:東京化成工業株式会社製
トリメチロールエタン:三菱ガス化学株式会社製
トリメチロールプロパン:三菱ガス化学株式会社製
エリスリトール:東京化成工業株式会社製
(チキソ剤)
ステアリン酸アミド:花王株式会社製
ラウリン酸アミド:三菱ケミカル株式会社製
パルミチン酸アミド:三菱ケミカル株式会社製
オレイン酸アミド:花王株式会社製
エルカ酸アミド:日本精化株式会社製
ベヘン酸アミド:日本精化株式会社製
【0051】
<フラックスの作製>
上記フラックスの材料を表1~表10に示す配合で加熱容器に投入し、120℃まで加熱することにより、全材料を溶解させた。その後、室温まで冷却することにより、均一に分散された各実施例及び各比較例のフラックスを得た。なお、表1~表10に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。
【0052】
<ソルダペーストの作製>
各実施例及び各比較例のフラックスを9質量%、はんだ合金粉末(96.5Sn/3Ag/0.5Cu、Type3、株式会社弘輝製)を91質量%となるように混合して、各実施例及び各比較例のソルダペーストを得た。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
【表10】
【0063】
<フラックス揮発性の評価>
まず、蒸発皿の重量を測定し、その重量をW1とした。次に、各実施例及び各比較例のフラックス0.3~0.303gを、上記蒸発皿に測りとり、その重量をW2とした。続いて、350℃に加熱したホットプレートにフラックスを測りとった蒸発皿を載せ、目視でフラックスがすべて揮発するまでの時間を計測した後、蒸発皿をホットプレートから取り出し、室温まで冷却した。加熱時間の最大は240秒とし、フラックスがすべて揮発していなくてもホットプレートから蒸発皿を取り出し、室温まで冷却した。室温まで冷却した蒸発皿の重量を測りとり、その重量をW3とした。下記式(1)から、各実施例及び各比較例のフラックス揮発量[%]を計算した。結果を表1~表10に示す。
【0064】
フラックス揮発量[%]=(W2-(W3-W1))/W2×100 (1)
式中、W1は蒸発皿の重量、W2はフラックスを測りとった蒸発皿の重量、W3はフラックスを測りとった蒸発皿を加熱後、室温まで冷却した時の蒸発皿の重量を意味する。
【0065】
フラックス揮発性の評価は、下記の基準に基づいて行った。結果を表1~表10に示す。
◎:フラックス揮発量[%]が97%以上、かつ、フラックスが揮発するまでの時間が180秒以内
〇:フラックス揮発量[%]が97%以上、かつ、フラックスが揮発するまでの時間が240秒以内
×:フラックス揮発量[%]が97%以下
【0066】
<ソルダペーストの評価>
各実施例及び各比較例のソルダペーストを、20~30℃の環境下で1時間放置した後、ソルダペーストの状態を確認した。ソルダペーストの評価は、下記の基準に基づいて行った。その結果を表1~表10に示す。なお、「フラックスの分離」とは、はんだ合金粉末とフラックスとの比重差から、ソルダペースト中のはんだ合金粉末が沈降し、上部にフラックスがたまる状態を意味する。
A:変化なし(フラックスとはんだ合金粉末が分散している状態)
B:フラックスの分離があり、ヘラで撹拌することでAの状態に戻る
C:ソルダペーストが固いが、ヘラで撹拌することでAの状態に戻る
【0067】
表1~表10の結果から分かるように、本発明の要件をすべて満たす各実施例のフラックスは、フラックスの揮発量が97%以上、かつ、フラックスが揮発するまでの時間が240秒以内である。従って、本発明に係るフラックスは、低残渣を実現するためのリフロープロセス時間を短縮させることができる。
【要約】
本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、ヒドロキシ基を1つ有すると共に20℃で固体の脂肪族アルコール、及び、20℃で固体の脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種と、ヒドロキシ基を1つ以上3つ以下有すると共に20℃で液体の液体溶剤と、ヒドロキシ基を2つ以上4つ以下有すると共に20℃で固体の固体溶剤と、を含有し、チキソ剤を含まないか、又は、フラックス全体に対して20.0質量%以下のチキソ剤を含む。