IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7598198鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの動作を制御する制御装置及び制御方法
<>
  • 特許-鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの動作を制御する制御装置及び制御方法 図1
  • 特許-鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの動作を制御する制御装置及び制御方法 図2
  • 特許-鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの動作を制御する制御装置及び制御方法 図3
  • 特許-鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの動作を制御する制御装置及び制御方法 図4
  • 特許-鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの動作を制御する制御装置及び制御方法 図5
  • 特許-鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの動作を制御する制御装置及び制御方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの動作を制御する制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20241204BHJP
   B62L 3/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B60T8/34
B62L3/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020040396
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021138348
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐希
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-018807(JP,A)
【文献】特開平09-267736(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061774(WO,A1)
【文献】米国特許第05094599(US,A)
【文献】特開2007-269298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B62L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブレーキ操作部(11a)に付設されている第1マスタシリンダ(21a)と連通する流路(26a)に設けられている少なくとも1つの第1ポンプ(34a)と、第2ブレーキ操作部(11b)に付設されている第2マスタシリンダ(21b)と連通する流路(26b)に設けられている少なくとも1つの第2ポンプ(34b)と、前記第1ポンプ(34a)及び前記第2ポンプ(34b)を駆動するモータ(35)と、を備える鞍乗り型車両(100)の液圧制御ユニット(50)の動作を制御する制御装置(60)であって、
アンチロックブレーキ制御を実行可能な制御部(62)を備え、
前記第1ポンプ(34a)は、往復運動する第1プランジャ(341a)を含み、
前記第2ポンプ(34b)は、往復運動する第2プランジャ(341b)を含み、
前記モータ(35)の出力軸(351)には、前記第1プランジャ(341a)及び前記第2プランジャ(341b)を断続的に押圧する偏心カム部(36)が設けられており、
前記制御部(62)は、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記鞍乗り型車両(100)の車輪(3、4)のブレーキ液圧を減少させる減圧制御において、前記第1ブレーキ操作部(11a)及び前記第2ブレーキ操作部(11b)のうちの少なくとも一方の操作状態量に基づいて、前記モータ(35)の回転数を制御する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部(62)は、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記減圧制御において、前記第1ブレーキ操作部(11a)及び前記第2ブレーキ操作部(11b)のうちの一方のみの前記操作状態量に基づいて、前記モータ(35)の回転数を制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1ブレーキ操作部(11a)は、前記鞍乗り型車両(100)の前輪(3)のブレーキ液圧を生じさせるブレーキ操作部であり、
前記第2ブレーキ操作部(11b)は、前記鞍乗り型車両(100)の後輪(4)のブレーキ液圧を生じさせるブレーキ操作部であり、
前記制御部(62)は、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記減圧制御において、前記第1ブレーキ操作部(11a)の前記操作状態量に基づいて、前記モータ(35)の回転数を制御する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部(62)は、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記減圧制御において、前記第1ブレーキ操作部(11a)及び前記第2ブレーキ操作部(11b)の双方の前記操作状態量に基づいて、前記モータ(35)の回転数を制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部(62)は、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記減圧制御において、前記第1ブレーキ操作部(11a)及び前記第2ブレーキ操作部(11b)の双方の前記操作状態量のうちの大きなマスタシリンダ圧と対応する方の前記操作状態量に基づいて、前記モータ(35)の回転数を制御する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1プランジャ(341a)と前記第2プランジャ(341b)とは、前記偏心カム部(36)を挟んで互いに対向している、
請求項1~5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部(62)は、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記減圧制御において、前記操作状態量がマスタシリンダ圧の増加傾向を示す場合、前記操作状態量がマスタシリンダ圧の増加傾向を示さない場合と比較して、前記モータ(35)への供給電力を大きくする、
請求項1~のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部(62)は、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記減圧制御において、前記操作状態量がマスタシリンダ圧の減少傾向を示す場合、前記操作状態量がマスタシリンダ圧の減少傾向を示さない場合と比較して、前記モータ(35)への供給電力を小さくする、
請求項1~のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記操作状態量は、マスタシリンダ圧である、
請求項1~のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記操作状態量は、ブレーキ操作量である、
請求項1~のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
第1ブレーキ操作部(11a)に付設されている第1マスタシリンダ(21a)と連通する流路(26a)に設けられている少なくとも1つの第1ポンプ(34a)と、第2ブレーキ操作部(11b)に付設されている第2マスタシリンダ(21b)と連通する流路(26b)に設けられている少なくとも1つの第2ポンプ(34b)と、前記第1ポンプ(34a)及び前記第2ポンプ(34b)を駆動するモータ(35)と、を備える鞍乗り型車両(100)の液圧制御ユニット(50)の制御方法であって、
前記第1ポンプ(34a)は、往復運動する第1プランジャ(341a)を含み、
前記第2ポンプ(34b)は、往復運動する第2プランジャ(341b)を含み、
前記モータ(35)の出力軸(351)には、前記第1プランジャ(341a)及び前記第2プランジャ(341b)を断続的に押圧する偏心カム部(36)が設けられており、
アンチロックブレーキ制御を実行可能な制御装置(60)の制御部(62)が、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記鞍乗り型車両(100)の車輪(3、4)のブレーキ液圧を減少させる減圧制御において、前記第1ブレーキ操作部(11a)及び前記第2ブレーキ操作部(11b)のうちの少なくとも一方の操作状態量に基づいて、前記モータ(35)の回転数を制御する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、鞍乗り型車両におけるアンチロックブレーキ制御の減圧制御においてモータの回転数を適切に制御することができる制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータサイクル等の鞍乗り型車両には、車輪の制動力を制御するための液圧制御ユニットが設けられている。このような液圧制御ユニットとして、第1ブレーキ操作部(例えば、ブレーキレバー)に付設されている第1マスタシリンダと連通する流路に設けられている少なくとも1つの第1ポンプと、第2ブレーキ操作部(例えば、ブレーキペダル)に付設されている第2マスタシリンダと連通する流路に設けられている少なくとも1つの第2ポンプと、第1ポンプ及び第2ポンプを駆動するモータと、を備えるものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-8674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鞍乗り型車両の液圧制御ユニットを用いたアンチロックブレーキ制御では、車輪のロックを抑制するために、車輪のブレーキ液圧を減少させる減圧制御が行われる。減圧制御では、第1ポンプ及び第2ポンプがモータの出力によって駆動され、モータの回転数が目標回転数となるように制御される。ここで、減圧制御では、マスタシリンダ圧が各ポンプを介してモータに作用し、回転抵抗としての負荷がモータに掛かる。特に、鞍乗り型車両では、第1ブレーキ操作部と対応する第1ポンプに作用するマスタシリンダ圧と、第2ブレーキ操作部と対応する第2ポンプに作用するマスタシリンダ圧とが個別に変化するので、モータに掛かる負荷が複雑に変動する傾向がある。よって、減圧制御において、モータの回転数が目標回転数から乖離しやすく、モータの回転数を適切に制御することが困難となる場合がある。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、鞍乗り型車両におけるアンチロックブレーキ制御の減圧制御においてモータの回転数を適切に制御することができる制御装置及び制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、第1ブレーキ操作部に付設されている第1マスタシリンダと連通する流路に設けられている少なくとも1つの第1ポンプと、第2ブレーキ操作部に付設されている第2マスタシリンダと連通する流路に設けられている少なくとも1つの第2ポンプと、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを駆動するモータと、を備える鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの動作を制御する制御装置であって、アンチロックブレーキ制御を実行可能な制御部を備え、前記制御部は、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記鞍乗り型車両の車輪のブレーキ液圧を減少させる減圧制御において、前記第1ブレーキ操作部及び前記第2ブレーキ操作部のうちの少なくとも一方の操作状態量に基づいて、前記モータの回転数を制御する。
【0007】
本発明に係る制御方法は、第1ブレーキ操作部に付設されている第1マスタシリンダと連通する流路に設けられている少なくとも1つの第1ポンプと、第2ブレーキ操作部に付設されている第2マスタシリンダと連通する流路に設けられている少なくとも1つの第2ポンプと、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを駆動するモータと、を備える鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの制御方法であって、アンチロックブレーキ制御を実行可能な制御装置の制御部が、前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記鞍乗り型車両の車輪のブレーキ液圧を減少させる減圧制御において、前記第1ブレーキ操作部及び前記第2ブレーキ操作部のうちの少なくとも一方の操作状態量に基づいて、前記モータの回転数を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、アンチロックブレーキ制御を実行可能な制御装置の制御部が、アンチロックブレーキ制御の実行中に、鞍乗り型車両の車輪のブレーキ液圧を減少させる減圧制御において、第1ブレーキ操作部及び第2ブレーキ操作部のうちの少なくとも一方の操作状態量に基づいて、モータの回転数を制御する。それにより、モータに掛かる負荷の変動に応じてモータの回転数を制御することができるので、モータの回転数が目標回転数から乖離することを抑制することができる。ゆえに、鞍乗り型車両におけるアンチロックブレーキ制御の減圧制御においてモータの回転数を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る制御装置が搭載されるモータサイクルの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係るモータの出力軸の周囲の構成を示す部分断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る各ポンプを介してモータが受ける圧力とモータの回転位置との関係を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る制御装置が行う処理のうちアンチロックブレーキ制御の減圧制御におけるモータへの供給電力の補正に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る制御装置について、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、以下では、二輪のモータサイクルに用いられる制御装置について説明しているが、本発明に係る制御装置は、二輪のモータサイクル以外の鞍乗り型車両(例えば、三輪のモータサイクル、バギー車、自転車等)に用いられるものであってもよい。なお、鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味し、スクーター等を含む。
【0012】
また、以下では、各制動機構(具体的には、後述する制動機構12)に、主流路及び副流路が設けられている場合を説明しているが、各制動機構には、マスタシリンダのブレーキ液を副流路に供給する供給流路(つまり、マスタシリンダと、副流路のうちのポンプの吸込側との間を連通させる流路)がさらに設けられていてもよい。
【0013】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
【0014】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0015】
<モータサイクルの構成>
図1図5を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置60が搭載されるモータサイクル100の構成について説明する。
【0016】
図1は、制御装置60が搭載されるモータサイクル100の概略構成を示す模式図である。図2は、ブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。
【0017】
図1に示されるように、モータサイクル100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、ブレーキシステム10とを備える。本実施形態では、制御装置(ECU)60は、後述されるブレーキシステム10の液圧制御ユニット50に設けられている。また、モータサイクル100は、前輪車輪速センサ41と、後輪車輪速センサ42と、マスタシリンダ圧センサ43(第1マスタシリンダ圧センサ43a,第2マスタシリンダ圧センサ43b)(図2参照)と、モータ回転数センサ44(図2参照)を備える。
【0018】
ブレーキシステム10は、図1及び図2に示されるように、2つのブレーキ操作部11と、各ブレーキ操作部11と対応する2つの制動機構12とを備える。具体的には、ブレーキシステム10は、第1ブレーキ操作部11aと、少なくとも第1ブレーキ操作部11aに連動して前輪3を制動する第1制動機構12aと、第2ブレーキ操作部11bと、少なくとも第2ブレーキ操作部11bに連動して後輪4を制動する第2制動機構12bとを備える。また、ブレーキシステム10は、液圧制御ユニット50を備え、第1制動機構12aの一部及び第2制動機構12bの一部は、当該液圧制御ユニット50に含まれる。液圧制御ユニット50は、第1制動機構12aによって前輪3に生じる制動力、及び、第2制動機構12bによって後輪4に生じる制動力を制御する機能を担うユニットである。
【0019】
第1ブレーキ操作部11aは、前輪3のブレーキ液圧を生じさせるブレーキ操作部11である。第1ブレーキ操作部11aは、ハンドル2に設けられており、ライダーの手によって操作される。第1ブレーキ操作部11aは、例えば、ブレーキレバーである。第2ブレーキ操作部11bは、後輪4のブレーキ液圧を生じさせるブレーキ操作部11である。第2ブレーキ操作部11bは、胴体1の下部に設けられており、ライダーの足によって操作される。第2ブレーキ操作部11bは、例えば、ブレーキペダルである。
【0020】
各制動機構12は、ブレーキ操作部11に付設されているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23に設けられているホイールシリンダ24と、マスタシリンダ21のブレーキ液をホイールシリンダ24に流通させる主流路25と、ホイールシリンダ24のブレーキ液を逃がす副流路26とを備える。
【0021】
具体的には、第1制動機構12aは、第1ブレーキ操作部11aに付設されている第1マスタシリンダ21aと、第1リザーバ22aと、第1ブレーキキャリパ23aと、第1ホイールシリンダ24aと、第1主流路25aと、第1副流路26aとを備える。第1主流路25a及び第1副流路26aは、第1マスタシリンダ21aと連通している。第2制動機構12bは、第2ブレーキ操作部11bに付設されている第2マスタシリンダ21bと、第2リザーバ22bと、第2ブレーキキャリパ23bと、第2ホイールシリンダ24bと、第2主流路25bと、第2副流路26bとを備える。第2主流路25b及び第2副流路26bは、第2マスタシリンダ21bと連通している。
【0022】
各制動機構12において、主流路25には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路26は、主流路25のうちの、込め弁31に対するホイールシリンダ24側とマスタシリンダ21側との間をバイパスする。副流路26には、上流側から順に、弛め弁(AV)32と、アキュムレータ33と、ポンプ34とが設けられている。込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0023】
具体的には、第1制動機構12aでは、第1主流路25aに第1込め弁31aが設けられており、第1副流路26aに第1弛め弁32a、第1アキュムレータ33a及び第1ポンプ34aが設けられている。第2制動機構12bでは、第2主流路25bに第2込め弁31bが設けられており、第2副流路26bに第2弛め弁32b、第2アキュムレータ33b及び第2ポンプ34bが設けられている。液圧制御ユニット50には、第1ポンプ34a及び第2ポンプ34bを駆動するモータ35が設けられている。なお、第1ポンプ34a及び第2ポンプ34bの少なくとも一方に、他のポンプが並列又は直列に設けられていてもよい。
【0024】
液圧制御ユニット50は、ブレーキ液圧を制御するためのコンポーネント(具体的には、込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33及びポンプ34)と、それらのコンポーネントが設けられる流路(具体的には、主流路25及び副流路26)とが内部に形成されている基体51と、制御装置60とを含む。
【0025】
なお、基体51は、1つの部材によって形成されていてもよく、複数の部材によって形成されていてもよい。また、基体51が複数の部材によって形成されている場合、各コンポーネントは、異なる部材に分かれて設けられていてもよい。
【0026】
液圧制御ユニット50の上記のコンポーネントの動作は、制御装置60によって制御される。それにより、第1制動機構12aによって前輪3に生じる制動力、及び、第2制動機構12bによって後輪4に生じる制動力が制御される。
【0027】
通常時(つまり、アンチロックブレーキ制御が実行されていない時)には、制御装置60によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖される。その状態で、第1ブレーキ操作部11aが操作されると、第1制動機構12aにおいて、第1マスタシリンダ21aのピストン(図示省略)が押し込まれて第1ホイールシリンダ24aのブレーキ液の液圧が増加し、第1ブレーキキャリパ23aのブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ5に押し付けられて、前輪3に制動力が生じる。また、第2ブレーキ操作部11bが操作されると、第2制動機構12bにおいて、第2マスタシリンダ21bのピストン(図示省略)が押し込まれて第2ホイールシリンダ24bのブレーキ液の液圧が増加し、第2ブレーキキャリパ23bのブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ6に押し付けられて、後輪4に制動力が生じる。
【0028】
前輪車輪速センサ41は、前輪3の車輪速(例えば、前輪3の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。前輪車輪速センサ41が、前輪3の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。前輪車輪速センサ41は、前輪3に設けられている。
【0029】
後輪車輪速センサ42は、後輪4の車輪速(例えば、後輪4の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。後輪車輪速センサ42が、後輪4の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。後輪車輪速センサ42は、後輪4に設けられている。
【0030】
マスタシリンダ圧センサ43は、マスタシリンダ21のブレーキ液圧(つまり、マスタシリンダ圧)を検出し、検出結果を出力する。マスタシリンダ圧センサ43が、マスタシリンダ圧に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。具体的には、第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧を検出する第1マスタシリンダ圧センサ43aが第1制動機構12aに設けられており、第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧を検出する第2マスタシリンダ圧センサ43bが第2制動機構12bに設けられている。
【0031】
モータ回転数センサ44は、モータ35の回転数を検出し、検出結果を出力する。モータ回転数センサ44が、モータ35の回転数に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。モータ回転数センサ44は、モータ35の近傍に設けられている。
【0032】
制御装置60は、液圧制御ユニット50の動作を制御する。
【0033】
例えば、制御装置60の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置60の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置60は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0034】
図3は、制御装置60の機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示されるように、制御装置60は、例えば、プログラムと協働して機能する、取得部61と、制御部62とを備える。
【0035】
取得部61は、モータサイクル100に搭載されている各装置から情報を取得し、制御部62へ出力する。例えば、取得部61は、前輪車輪速センサ41、後輪車輪速センサ42、マスタシリンダ圧センサ43及びモータ回転数センサ44から情報を取得する。
【0036】
制御部62は、液圧制御ユニット50の各装置の動作を制御することによって、モータサイクル100の車輪に生じる制動力を制御する。特に、制御部62は、アンチロックブレーキ制御を実行可能である。制御部62は、例えば、込め弁31及び弛め弁32の動作を制御する弁制御部621と、モータ35の動作を制御するモータ制御部622とを含む。
【0037】
通常時には、制御部62は、上述したように、ライダーによるブレーキ操作部11の操作量であるブレーキ操作量に応じた制動力が車輪に生じるように、液圧制御ユニット50の各コンポーネントの動作を制御する。
【0038】
一方、制御部62は、車輪のスリップ度が上限値を超えた場合に、アンチロックブレーキ制御を実行する。車輪のスリップ度が上限値を超えた場合には、当該車輪にロック又はロックの可能性が生じる。アンチロックブレーキ制御は、車輪の制動力を、ロックを回避し得るような制動力に調整する制御である。
【0039】
制御部62は、例えば、前輪3及び後輪4の車輪速に基づいてモータサイクル100の車速(つまり、車体の速度)を特定し、各車輪の車輪速と車速との比較結果に基づいて、車輪のスリップ度を算出する。スリップ度は、車輪が路面に対して滑っている度合いを示す指標である。スリップ度としては、例えば、車速と車輪速との差を車速で除算して得られるスリップ率が用いられる。なお、スリップ度として、スリップ率以外のパラメータ(例えば、スリップ率に実質的に換算可能な他の物理量)が用いられてもよい。
【0040】
アンチロックブレーキ制御では、車輪のブレーキ液圧を減少させる減圧制御と、車輪のブレーキ液圧を保持する液圧保持制御と、車輪のブレーキ液圧を増大させる増圧制御とが、その順に連続して実行される。なお、減圧制御、液圧保持制御及び増圧制御は、例えば、車輪のロックが回避されたと判定されるまでの間、繰り返される。
【0041】
減圧制御において、制御部62は、込め弁31が閉鎖され、弛め弁32が開放された状態にし、その状態で、モータ35を回転させてポンプ34を駆動することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させる。それにより、車輪に生じる制動力が減少する。減圧制御では、ホイールシリンダ24からアキュムレータ33に流れ込んだブレーキ液が、ポンプ34によって、副流路26を介して主流路25に戻される。次に、液圧保持制御において、制御部62は、込め弁31及び弛め弁32の双方を閉鎖することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を保持する。それにより、車輪に生じる制動力が保持される。次に、増圧制御において、制御部62は、込め弁31を開放し、弛め弁32を閉鎖することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増大させる。それにより、車輪に生じる制動力が増大する。
【0042】
上記のように、アンチロックブレーキ制御の減圧制御では、第1ポンプ34a及び第2ポンプ34bがモータ35の出力によって駆動される。ここで、制御部62は、モータ35の回転数を目標回転数となるように制御する。具体的には、制御部62は、モータ35の回転数が目標回転数に近づくように、モータ35への供給電力(つまり、モータ35に供給する電力)の電力指令値を決定し、決定された電力指令値になるようにモータ35への供給電力を制御する。例えば、制御部62は、モータ35の回転数の検出値と目標回転数との偏差に基づくフィードバック制御(例えば、PID制御)を用いてモータ35の電流指令値を決定する。モータ35の回転数の検出値は、モータ回転数センサ44の検出結果に基づいて取得される。
【0043】
モータ35の回転数が過度に低いと、減圧制御において、アキュムレータ33に流れ込んだブレーキ液をポンプ34によって十分に掻き出せなくなってしまう。一方、モータ35の回転数が過度に高いと、騒音が過度に大きくなってしまう。ゆえに、目標回転数は、アキュムレータ33からブレーキ液が十分に掻き出され、かつ、騒音の増大を抑制できる程度の値に設定される。なお、目標回転数は、固定値であってもよく、各種パラメータ(例えば、車輪のスリップ率等)に応じて変化してもよい。
【0044】
ここで、減圧制御では、マスタシリンダ圧が各ポンプ34を介してモータ35に作用し、回転抵抗としての負荷がモータ35に掛かる。以下、図4及び図5を参照して、モータ35に回転抵抗として掛かる負荷について説明する。
【0045】
図4は、モータ35の出力軸351の周囲の構成を示す部分断面図である。図4に示されるように、モータ35の出力軸351の近傍に、各ポンプ34の往復運動するプランジャ341が配置される。具体的には、第1ポンプ34aは、往復運動する第1プランジャ341aを含み、第2ポンプ34bは、往復運動する第2プランジャ341bを含む。プランジャ341は、円柱状であり、当該プランジャ341の軸方向(図4中の左右方向)に往復運動する。プランジャ341が往復運動することによって、ポンプ34によるブレーキ液の吸引及び吐出が行われる。第1プランジャ341aと第2プランジャ341bとは、互いに対向している。例えば、第1プランジャ341a及び第2プランジャ341bの軸方向は略一致しており(つまり、第1プランジャ341a及び第2プランジャ341bは略平行であり)、第1プランジャ341a及び第2プランジャ341bは、当該軸方向に間隔を空けて配置されている。
【0046】
モータ35の出力軸351には、当該出力軸351に対して偏心した偏心カム部36が設けられている。偏心カム部36は、モータ35の出力軸351に対して偏心した円柱形状のカム部材361と、当該カム部材361の外周部に嵌合されている転がり軸受362とを含む。偏心カム部36は、第1プランジャ341a及び第2プランジャ341bの間に配置されており、第1プランジャ341a及び第2プランジャ341bの軸方向に直交している。このように、第1プランジャ341aと第2プランジャ341bとは、偏心カム部36を挟んで互いに対向している。各プランジャ341の先端が、偏心カム部36の転がり軸受362の外周面と接触している。
【0047】
モータ35の出力軸351が回転することによって、偏心カム部36は、出力軸351に対して偏心して回転し、一方のプランジャ341と他方のプランジャ341とを交互に押圧し続ける。よって、第1プランジャ341a及び第2プランジャ341bは、偏心カム部36によって、断続的に押圧される。なお、図4では、第2プランジャ341bが偏心カム部36によって押圧されている様子が示されている。なお、モータ35は、ブラシ付きモータであってもよく、ブラシレスモータであってもよい。
【0048】
図5は、各ポンプ34を介してモータが受ける圧力とモータ35の回転位置との関係を示す模式図である。図5の横軸は、モータ35の回転角θを示し、図5の縦軸は、圧力Pを示す。図5では、第1ポンプ34aの第1プランジャ341aを介してモータ35が受ける圧力P1と、第2ポンプ34bの第2プランジャ341bを介してモータ35が受ける圧力P2とが、それぞれ示されている。圧力P1は、第1ブレーキ操作部11aと対応する第1ポンプ34aに作用する第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧が第1ポンプ34aを介してモータ35に作用することにより生じる圧力である。圧力P2は、第2ブレーキ操作部11bと対応する第2ポンプ34bに作用する第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧が第2ポンプ34bを介してモータ35に作用することにより生じる圧力である。
【0049】
図5に示される例では、モータ35の回転角θが0°~180°の場合に、第1プランジャ341aが偏心カム部36によって押圧されて圧力P1が生じる。圧力P1は、回転角θが0°から90°付近に向かうにつれて大きくなり、回転角θが90°付近で最大となり、回転角θが90°付近から180°に向かうにつれて小さくなる。そして、モータ35の回転角θが180°~360°の場合に、第2プランジャ341bが偏心カム部36によって押圧されて圧力P2が生じる。圧力P2は、回転角θが180°から270°付近に向かうにつれて大きくなり、回転角θが270°付近で最大となり、回転角θが270°付近から360°に向かうにつれて小さくなる。
【0050】
モータサイクル100等の鞍乗り型車両では、第1ブレーキ操作部11aと第2ブレーキ操作部11bとが個別に操作される。ゆえに、鞍乗り型車両以外の他の車両(例えば、四輪の自動車等)と異なり、第1ブレーキ操作部11aと対応する第1ポンプ34aに作用する第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧と、第2ブレーキ操作部11bと対応する第2ポンプ34bに作用する第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧とが個別に変化する。よって、モータ35に回転抵抗として掛かる負荷が複雑に変動する傾向がある。したがって、従来の技術では、アンチロックブレーキ制御の減圧制御において、モータ35の回転数が目標回転数から乖離しやすく、モータ35の回転数が過度に低くなる状況、又は、モータ35の回転数が過度に高くなる状況が生じ得た。このように、モータ35の回転数を適切に制御することが困難となる場合があった。
【0051】
本実施形態に係る制御装置60では、制御部62は、アンチロックブレーキ制御の実行中に、減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bのうちの少なくとも一方の操作状態量に基づいて、モータ35の回転数を制御する。それにより、モータサイクル100におけるアンチロックブレーキ制御の減圧制御においてモータ35の回転数を適切に制御することが実現される。ブレーキ操作部11の操作状態量は、ブレーキ操作部11の操作量を示す指標であり、例えば、ブレーキ操作部11に付設されているマスタシリンダ21のマスタシリンダ圧であってもよく、ブレーキ操作部11の操作量自体(つまり、ブレーキ操作量)であってもよい。
【0052】
<制御装置の動作>
図6を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置60の動作について説明する。
【0053】
上述したように、本実施形態では、制御装置60の制御部62は、アンチロックブレーキ制御の実行中に、減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bのうちの少なくとも一方の操作状態量(例えば、マスタシリンダ圧)に基づいて、モータ35の回転数を制御する。具体的には、制御部62は、減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bのうちの少なくとも一方の操作状態量(例えば、マスタシリンダ圧)に基づいて、モータ35への供給電力を補正する。
【0054】
図6は、制御装置60が行う処理のうちアンチロックブレーキ制御の減圧制御におけるモータ35への供給電力の補正に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示される制御フローは、具体的には、アンチロックブレーキ制御の減圧制御において制御装置60の制御部62によって行われ、終了した後に繰り返し開始される。図6におけるステップS101及びステップS106は、図6に示される制御フローの開始及び終了にそれぞれ対応する。
【0055】
図6に示される制御フローでは、ブレーキ操作部11の操作状態量として、ブレーキ操作部11に付設されているマスタシリンダ21のマスタシリンダ圧が用いられるが、減圧制御におけるモータ35の回転数の制御(具体的には、モータ35への供給電力の補正に関する処理)において、ブレーキ操作部11の操作状態量として、ブレーキ操作部11のブレーキ操作量が用いられてもよい。
【0056】
また、図6に示される制御フローでは、後述するように、ステップS102,S104において、対象マスタシリンダ圧の増減傾向が判定される。対象マスタシリンダ圧は、増減傾向の判定の対象となるマスタシリンダ圧である。対象マスタシリンダ圧としては、種々の物理量が用いられ得る。
【0057】
例えば、制御部62は、減圧制御において、第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧、及び、第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧のうちの一方のみのマスタシリンダ圧(つまり、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bのうちの一方のみの操作状態量)に基づいて、モータ35への供給電力を補正してもよい。この場合、後述するように、モータサイクル100の挙動を安定化する観点では、対象マスタシリンダ圧として、前輪3のブレーキ液圧を生じさせる第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧が用いられることが好ましい。つまり、マスタシリンダ圧の増減傾向の判定の対象として、第1ブレーキ操作部11aの操作状態量が用いられることが好ましい。なお、対象マスタシリンダ圧として、後輪4のブレーキ液圧を生じさせる第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧が用いられてもよい。
【0058】
また、例えば、制御部62は、減圧制御において、第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧、及び、第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧の双方のマスタシリンダ圧(つまり、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bの双方の操作状態量)に基づいて、モータ35への供給電力を補正してもよい。この場合、後述するように、モータ35の回転数を適切に制御する観点では、対象マスタシリンダ圧として、第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧、及び、第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧のうちの大きい方のマスタシリンダ圧が用いられることが好ましい。つまり、マスタシリンダ圧の増減傾向の判定の対象として、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bの双方の操作状態量のうちの大きなマスタシリンダ圧と対応する方の操作状態量が用いられることが好ましい。なお、対象マスタシリンダ圧として、第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧、及び、第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧の双方を用いて特定されるマスタシリンダ圧(例えば、第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧、及び、第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧の平均値等)が用いられてもよい。
【0059】
図6に示される制御フローが開始されると、ステップS102において、制御部62は、対象マスタシリンダ圧が増加傾向であるか否かを判定する。
【0060】
増加傾向は、対象となる物理量が所定時間に亘って基本的に増加するように推移することを意味し、減少傾向は、対象となる物理量が所定時間に亘って基本的に減少するように推移することを意味し、維持傾向は、対象となる物理量が所定時間に亘って基本的に維持されるように推移することを意味する。
【0061】
ステップS102の判定処理では、例えば、制御部62は、基準時点(例えば、ステップS102が実行される時点)における対象マスタシリンダ圧の時間変化率が0より大きい場合、対象マスタシリンダ圧が増加傾向であると判定してもよい。また、例えば、制御部62は、基準時点を含む複数の時点(例えば、基準時点と、当該基準時点よりも過去の時点)での対象マスタシリンダ圧の時間変化率の平均値が0より大きい場合、対象マスタシリンダ圧が増加傾向であると判定してもよい。
【0062】
ステップS102でYESと判定された場合、ステップS103において、制御部62は、モータ35への供給電力を増加補正し、図6に示される制御フローは終了する。ステップS102でNOと判定された場合、後述するステップS104の判定処理に進む。
【0063】
ステップS103の供給電力の増加補正では、制御部62は、モータ35の回転数の検出値と目標回転数との偏差に基づくフィードバック制御を用いて、対象マスタシリンダ圧を加味せずに決定される値よりも大きな値をモータ35の電流指令値として決定し、このように決定された電力指令値になるようにモータ35への供給電力を制御する。それにより、対象マスタシリンダ圧が増加傾向ではない場合と比較して、モータ35への供給電力が大きくなる。
【0064】
例えば、制御部62は、まず、モータ35の回転数の検出値と目標回転数との偏差に基づくフィードバック制御を用いて、対象マスタシリンダ圧を加味せずに電流指令値を決定し、その後、決定された電力指令値を大きくなるように補正してもよい。また、例えば、制御部62は、モータ35の目標回転数を補正することによって、モータ35への供給電力を増加補正してもよい。
【0065】
上記のように、制御部62は、減圧制御において、操作状態量(図6の例では、対象マスタシリンダ圧)がマスタシリンダ圧の増加傾向を示す場合、操作状態量がマスタシリンダ圧の増加傾向を示さない場合と比較して、モータ35への供給電力を大きくする。ここで、マスタシリンダ圧が増加傾向である場合(つまり、維持傾向でもなく減少傾向でもない場合)には、モータ35に回転抵抗として掛かる負荷が増加するので、モータ35の回転数が低下しやすくなる。ゆえに、モータ35への供給電力を大きくすることによって、モータ35の回転数の低下を抑制することができる。なお、対象マスタシリンダ圧の増加傾向が強い程、モータ35への供給電力が大きくなってもよい。
【0066】
ステップS102でNOと判定された場合、ステップS104において、制御部62は、対象マスタシリンダ圧が減少傾向であるか否かを判定する。
【0067】
ステップS104の判定処理では、例えば、制御部62は、基準時点(例えば、ステップS104が実行される時点)における対象マスタシリンダ圧の時間変化率が0より小さい場合、対象マスタシリンダ圧が減少傾向であると判定してもよい。また、例えば、制御部62は、基準時点を含む複数の時点(例えば、基準時点と、当該基準時点よりも過去の時点)での対象マスタシリンダ圧の時間変化率の平均値が0より小さい場合、対象マスタシリンダ圧が減少傾向であると判定してもよい。
【0068】
ステップS104でYESと判定された場合、ステップS105において、制御部62は、モータ35への供給電力を減少補正し、図6に示される制御フローは終了する。ステップS104でNOと判定された場合、ステップS105が実行されずに、図6に示される制御フローは終了する。
【0069】
ステップS104の供給電力の減少補正では、制御部62は、モータ35の回転数の検出値と目標回転数との偏差に基づくフィードバック制御を用いて、対象マスタシリンダ圧を加味せずに決定される値よりも小さな値をモータ35の電流指令値として決定し、このように決定された電力指令値になるようにモータ35への供給電力を制御する。それにより、対象マスタシリンダ圧が減少傾向ではない場合と比較して、モータ35への供給電力が小さくなる。
【0070】
例えば、制御部62は、まず、モータ35の回転数の検出値と目標回転数との偏差に基づくフィードバック制御を用いて、対象マスタシリンダ圧を加味せずに電流指令値を決定し、その後、決定された電力指令値を小さくなるように補正してもよい。また、例えば、制御部62は、モータ35の目標回転数を補正することによって、モータ35への供給電力を減少補正してもよい。
【0071】
上記のように、制御部62は、減圧制御において、操作状態量(図6の例では、対象マスタシリンダ圧)がマスタシリンダ圧の減少傾向を示す場合、操作状態量がマスタシリンダ圧の減少傾向を示さない場合(つまり、維持傾向でもなく増加傾向でもない場合)と比較して、モータ35への供給電力を小さくする。ここで、マスタシリンダ圧が減少傾向である場合には、モータ35に回転抵抗として掛かる負荷が減少するので、モータ35の回転数が上昇しやすくなる。ゆえに、モータ35への供給電力を小さくすることによって、モータ35の回転数の上昇を抑制することができる。なお、対象マスタシリンダ圧の減少傾向が強い程、モータ35への供給電力が小さくなってもよい。
【0072】
<制御装置の効果>
本発明の実施形態に係る制御装置60の効果について説明する。
【0073】
制御装置60では、制御部62は、アンチロックブレーキ制御の実行中に、減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bのうちの少なくとも一方の操作状態量に基づいて、モータ35の回転数を制御する。それにより、モータ35に掛かる負荷の変動に応じてモータ35の回転数を制御することができるので、モータ35の回転数が目標回転数から乖離することを抑制することができる。ゆえに、モータサイクル100におけるアンチロックブレーキ制御の減圧制御においてモータ35の回転数を適切に制御することができる。
【0074】
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、アンチロックブレーキ制御の実行中に、減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bのうちの一方のみの操作状態量に基づいて、モータ35の回転数を制御する。それにより、第1ブレーキ操作部11aの操作状態量を検出するためのセンサ(例えば、第1マスタシリンダ圧センサ43a)及び第2ブレーキ操作部11bの操作状態量を検出するためのセンサ(例えば、第2マスタシリンダ圧センサ43b)のうちの一方を省略しつつ、減圧制御においてモータ35の回転数を適切に制御することができる。
【0075】
好ましくは、制御装置60では、第1ブレーキ操作部11aは、モータサイクル100の前輪3のブレーキ液圧を生じさせるブレーキ操作部であり、第2ブレーキ操作部11bは、モータサイクル100の後輪4のブレーキ液圧を生じさせるブレーキ操作部であり、制御部62は、アンチロックブレーキ制御の実行中に、減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bのうちの第1ブレーキ操作部11aのみの操作状態量に基づいて、モータ35の回転数を制御する。それにより、前輪3にロック又はロックの可能性が生じ、前輪3のロックを回避するためにアンチロックブレーキ制御が行われた場合に、当該アンチロックブレーキ制御の減圧制御においてモータ35の回転数を適切に制御することができる。ここで、前輪3がロックした場合、後輪4がロックした場合と比べて、モータサイクル100の挙動が不安定になりやすい。ゆえに、前輪3のロックを回避するためにアンチロックブレーキ制御の減圧制御においてモータ35の回転数を適切に制御することによって、モータサイクル100の挙動を安定化することができる。
【0076】
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、アンチロックブレーキ制御の実行中に、減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bの双方の操作状態量に基づいて、モータ35の回転数を制御する。それにより、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bのうちの一方のみの操作状態量に基づいて、モータ35の回転数を制御する場合よりも、モータ35に掛かる負荷の変動に関するより多くの情報を用いてモータ35の回転数を制御することができる。ゆえに、アンチロックブレーキ制御の減圧制御においてモータ35の回転数をより適切に制御することができる。
【0077】
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、アンチロックブレーキ制御の実行中に、減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bの双方の操作状態量のうちの大きなマスタシリンダ圧と対応する方の操作状態量に基づいて、モータ35の回転数を制御する。ここで、第1マスタシリンダ21aのマスタシリンダ圧、及び、第2マスタシリンダ21bのマスタシリンダ圧のうち、大きい方のマスタシリンダ圧は、小さい方のマスタシリンダ圧と比べて、モータ35に掛かる負荷の変動に大きく影響する。ゆえに、減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bの双方の操作状態量のうちの大きなマスタシリンダ圧と対応する方の操作状態量に基づいてモータ35の回転数を制御することによって、モータ35の回転数をさらに適切に制御することができる。
【0078】
好ましくは、制御装置60では、第1ポンプ34aは、往復運動する第1プランジャ341aを含み、第2ポンプ34bは、往復運動する第2プランジャ341bを含み、モータ35の出力軸351には、第1プランジャ341a及び第2プランジャ341bを断続的に押圧する偏心カム部36が設けられている。それにより、第1ポンプ34aの第1プランジャ341aを介してモータ35が受ける圧力P1と、第2ポンプ34bの第2プランジャ341bを介してモータ35が受ける圧力P2とが、各ブレーキ操作部11の操作に応じて個別に変化する。ゆえに、このような液圧制御ユニット50を用いた減圧制御において、第1ブレーキ操作部11a及び第2ブレーキ操作部11bのうちの少なくとも一方の操作状態量に基づいて、モータ35の回転数を制御することによって、減圧制御におけるモータ35の回転数が適切に制御される効果を有効に活用することができる。
【0079】
好ましくは、制御装置60では、第1ポンプ34aの第1プランジャ341aと第2ポンプ34bの第2プランジャ341bとは、偏心カム部36を挟んで互いに対向している。それにより、減圧制御におけるモータ35の回転数が適切に制御される効果を有効に活用しつつ、液圧制御ユニット50を小型化することができる。
【0080】
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、アンチロックブレーキ制御の実行中に、減圧制御において、操作状態量がマスタシリンダ圧の増加傾向を示す場合、操作状態量がマスタシリンダ圧の増加傾向を示さない場合と比較して、モータ35への供給電力を大きくする。上述したように、マスタシリンダ圧が増加傾向である場合(つまり、維持傾向でもなく減少傾向でもない場合)には、モータ35に回転抵抗として掛かる負荷が増加するので、モータ35の回転数が低下しやすくなる。ゆえに、モータ35への供給電力を大きくすることによって、モータ35の回転数の低下を抑制することができる。
【0081】
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、アンチロックブレーキ制御の実行中に、減圧制御において、操作状態量がマスタシリンダ圧の減少傾向を示す場合、操作状態量がマスタシリンダ圧の減少傾向を示さない場合と比較して、モータ35への供給電力を小さくする。上述したように、マスタシリンダ圧が減少傾向である場合(つまり、維持傾向でもなく増加傾向でもない場合)には、モータ35に回転抵抗として掛かる負荷が減少するので、モータ35の回転数が上昇しやすくなる。ゆえに、モータ35への供給電力を小さくすることによって、モータ35の回転数の上昇を抑制することができる。
【0082】
好ましくは、制御装置60では、操作状態量は、マスタシリンダ圧である。それにより、モータ35に掛かる負荷の変動に応じてモータ35の回転数を制御することを適切に実現することができる。
【0083】
好ましくは、制御装置60では、操作状態量は、ブレーキ操作量である。それにより、モータ35に掛かる負荷の変動に応じてモータ35の回転数を制御することを適切に実現することができる。
【0084】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、4 後輪、5 ロータ、6 ロータ、10 ブレーキシステム、11 ブレーキ操作部、11a 第1ブレーキ操作部、11b 第2ブレーキ操作部、12 制動機構、12a 第1制動機構、12b 第2制動機構、21 マスタシリンダ、21a 第1マスタシリンダ、21b 第2マスタシリンダ、22 リザーバ、22a 第1リザーバ、22b 第2リザーバ、23 ブレーキキャリパ、23a 第1ブレーキキャリパ、23b 第2ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、24a 第1ホイールシリンダ、24b 第2ホイールシリンダ、25 主流路、25a 第1主流路、25b 第2主流路、26 副流路、26a 第1副流路、26b 第2副流路、31 込め弁、31a 第1込め弁、31b 第2込め弁、32 弛め弁、32a 第1弛め弁、32b 第2弛め弁、33 アキュムレータ、33a 第1アキュムレータ、33b 第2アキュムレータ、34 ポンプ、34a 第1ポンプ、34b 第2ポンプ、35 モータ、36 偏心カム部、41 前輪車輪速センサ、42 後輪車輪速センサ、43 マスタシリンダ圧センサ、43a 第1マスタシリンダ圧センサ、43b 第2マスタシリンダ圧センサ、44 モータ回転数センサ、50 液圧制御ユニット、51 基体、60 制御装置、61 取得部、62 制御部、100 モータサイクル、341 プランジャ、341a 第1プランジャ、341b 第2プランジャ、351 出力軸、361 カム部材、362 転がり軸受、621 弁制御部、622 モータ制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6