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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20241204BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20241204BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20241204BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241204BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M10/0565
H01M50/178
H01M10/0562
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020087100
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182493
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】谷内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】大田 正弘
(72)【発明者】
【氏名】有賀 稔之
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139844(JP,A)
【文献】特開2008-243815(JP,A)
【文献】特開2005-310671(JP,A)
【文献】特開2003-077426(JP,A)
【文献】特開2000-090975(JP,A)
【文献】特開2016-136508(JP,A)
【文献】特開2009-016275(JP,A)
【文献】登録実用新案第3062551(JP,U)
【文献】特開2005-317312(JP,A)
【文献】特開2014-194883(JP,A)
【文献】特開2015-088408(JP,A)
【文献】特開2019-102335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-198
H01M 10/04-39
H01M 50/50-598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、電池を収容する外装体と、を備える電池セルであって、
前記電池における1つの端面から集電タブリードが延設されており、
前記外装体は、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う領域のみ、又は、前記集電タブリードが突出する端面を覆う領域及び前記集電タブリードを挟持して収容する領域のみに、外力の影響を低減する構造が設けられるものであり、
前記外力の影響を低減する構造は、前記外装体を構成するフィルムの表面であって、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う領域のみの表面、又は、前記集電タブリードが突出する端面を覆う領域及び前記集電タブリードを挟持して収容する領域のみの表面にエンボス(凹凸)を設ける構造である
電池セル。
【請求項2】
前記外装体は1枚のフィルムからなる請求項1に記載された電池セル。
【請求項3】
前記外装体の前記1枚のフィルムは、前記電池の前記集電タブリードが延設される端面に直交する天面、底面及び2つの側面と接して覆う部分、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う部分であって、前記端面の両側の短い辺側から折り込んで両側に三角錐状の空間部を形成するとともに、前記端面の両側の長い辺側から折り合わせて前記端面を包み込む部分、及び、前記端面を包み込む部分からさらに軸方向に延設されて上下の対向する双方の面を接合して前記集電タブリードを挟持する部分からなる請求項2に記載された電池セル。
【請求項4】
前記電池は、固体電解質を用いた積層体からなる全固体電池セルである請求項1~3のいずれかに記載された電池セル。
【請求項5】
前記エンボス(凹凸)は、前記外装体の内面の、前記集電タブリードを挟持して収容する領域から前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う領域まで連続して延びる請求項に記載された電池セル。
【請求項6】
前記エンボス(凹凸)は、前記外装体の展開図において把握され得る領域であって、前記外装体が、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う領域における、溶着することで強度が上がり電極割れの防止になる三角形部分を除く、溶着が施されない台形の領域において、前記台形の一辺の1点から当該一辺と平行な対向する別の一辺の1点に向かって、前記集電タブリードが延設される方向とは非平行に延びる請求項に記載された電池セル。
【請求項7】
前記エンボス(凹凸)は、前記外装体が、長方形の前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う領域において、前記長方形の一辺の1点又は複数のエンボス(凹凸)開始点から、当該一辺と平行な対向する別の一辺の1点又は複数のエンボス(凹凸)終了点に向かって、前記集電タブリードが延設される方向とは非平行に延びる複数本のエンボス(凹凸)からなる請求項に記載された電池セル。
【請求項8】
前記長方形の一辺の1点又は複数のエンボス(凹凸)開始点のそれぞれから、複数本のエンボス(凹凸)が延びる請求項に記載された電池セル。
【請求項9】
前記長方形の2本の辺と2本のエンボス(凹凸)で、少なくとも1つの四角形を形成する請求項に記載された電池セル。
【請求項10】
前記長方形の1本の辺と2本のエンボス(凹凸)で、少なくとも1つの三角形を形成する請求項に記載された電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セル、特に外装体で密閉された電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、パソコン、携帯電話等の大小さまざまな電気・電子機器の普及により、高容量、高出力の電池デバイスの需要が急速に拡大している。このような電池デバイスとしては、正極と負極との間に有機電解液を電解質として用いる液系電池セルや、有機電解液の電解質に代えて、難燃性の固体電解質を用いた固体電池セルなどが挙げられる。
【0003】
このような電池デバイスにおいて、電池をラミネートフィルム(外装体)で包み込んで板形状に密閉したラミネートセルタイプの電池セルが知られている。EVやHEV等の用途では、このようなラミネートセルタイプの電池セルを複数個並べてケース内に収納した電池セル集合体が使用されている。外装体で包み込むことにより、電池への大気の侵入を防ぐことができる(例えば、特許文献1)。なお、本明細書において、「電池」は、正負の電極と電解質からなる電池素子の積層体、及び、集電タブリードで構成される部材をいい、また、電池をラミネートフィルム(外装体)で包み込んで密閉したものを「電池セル」と呼ぶ。
【0004】
また、ラミネートフィルム(外装体)の密閉性を維持しつつ、電池モジュールの体積エネルギー密度を効果的に向上させることを目的に、電池を収容するように1枚のフィルムが折り返された外装体を備える電池セルが開示されている(特許文献2)。特許文献2によれば、この電池セルは、外装体の密閉性を維持しつつ、電池モジュールの体積エネルギー密度を効果的に向上させることができる。また、特許文献2には、このような電池セルにおいて、集電タブリードを外装体で上下から挟持して収容する構成についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-169204号公報
【文献】WO2019/188825
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラミネートセルタイプの電池セルで、集電タブリードを外装体で上下から挟持して収容する構成を取るものにあっては、集電タブリードが収容されている箇所に外力が加わると、集電タブリードに応力が加わることになり、電極が割れる可能性がある。
【0007】
本発明は、ラミネートセルタイプの電池セルで、集電タブリードを外装体で上下から挟持して収容する構成のものにおいて集電タブリードが収容されている箇所に外力が加わる場合にも、その外力が集電タブリードに与える影響を抑制すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の電池セルにおいては、電池と、電池を収容する外装体と、を備える電池セルであって、前記電池における1つの端面から集電タブリードが延設されており、前記外装体は、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所又は集電タブリードを挟持して収容する箇所に、外力の影響を低減する構造を設けることを特徴とする。
【0009】
電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所又は集電タブリードを挟持して収容する箇所に、外力の影響を低減する構造を設けることによって、集電タブリードが収容されている箇所に外力が加わる場合にも、その外力が集電タブリードに与える影響を抑制することができ、集電タブリードに応力が加わって電極が割れる可能性を低減できる。
【0010】
本発明においては、ラミネートセルタイプの電池セルであって、ラミネートフィルムの外装体が、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所又は集電タブリードを挟持して収容する箇所に、外力の影響を低減する構造を設ける場合において、前記外装体は1枚のフィルムからなることを特徴とする。
【0011】
前記外装体を1枚のフィルムからなるものとすることによって、包装時の接合箇所を極力減らし、密閉性を高めることができる。
【0012】
また、本発明においては、この場合に、前記外装体の前記1枚のフィルムは、前記電池の前記集電タブリードが延設される端面に直交する天面、底面及び2つの側面と接して覆う部分、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う部分であって、前記端面の両側の短い辺側から折り込んで両側に三角錐状の空間部を形成するとともに、前記端面の両側の長い辺側から折り合わせて前記端面を包み込む部分、及び、前記端面を包み込む部分からさらに軸方向に延設されて上下の対向する双方の面を接合して前記集電タブリードを挟持する部分からなることを特徴とする。
【0013】
前記1枚のフィルムからなる外装体のこのような形態は、前記集電タブリード及び前記集電タブリードが突出する端面を含む電池に対応させた形態であり、前記集電タブリードが突出する端面を効率的に包み込んで密閉できるとともに、前記集電タブリードに対しても上下の両面から覆って挟持することができ、少ない工程数で効率よく前記集電タブリードが突出した電池を包装することができる。
【0014】
また、本発明においては、この場合に、前記電池は、固体電解質を用いた積層体からなる全固体電池セルであることを特徴とする。
【0015】
全固体電池セルは、特に角部や端面で脆く、破損されやすい。そのため、本件発明の、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所又は前記集電タブリードを挟持して収容する箇所に、外力の影響を低減する構造を設けた前記外装体は、端面から集電タブリードが突出する全固体電池セルへの適用に有効である。
【0016】
また、本発明においては、この場合に、前記外力の影響を低減する構造は、前記外装体の、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所又は前記集電タブリードを挟持して収容する箇所の厚さを厚くする構造であることを特徴とする。
【0017】
前記外装体の、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所又は前記集電タブリードを挟持して収容する箇所の厚さを厚くすることによって、この部分を補強し、強度を高めて外力による変形や折れ曲がりを抑えることができる。したがって、この部分に外力が加えられても、この部分の変形や折れ曲がりは抑えられ、外力の前記集電タブリードの影響は低減される。
【0018】
また、本発明においては、この場合に、前記外力の影響を低減する構造は、前記外装体の、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所又は前記集電タブリードを挟持して収容する箇所にエンボス(凹凸)を設ける構造であることを特徴とする。
【0019】
前記外力の影響を低減する構造は、前記外装体の、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所又は前記集電タブリードを挟持して収容する箇所にエンボス(凹凸)を設けることによって、外力によるこの部分の変形を前記エンボス(凹凸)で吸収することができ、全体的としての変形を抑えることができる。したがって、この部分に外力が加えられても、この部分の変形は前記エンボス(凹凸)で吸収されて全体としての変形は抑えられ、外力の前記集電タブリードの影響は低減される。
【0020】
また、本発明においては、この場合に、前記エンボス(凹凸)は、前記外装体の前記集電タブリードを挟持して収容する箇所に、前記集電タブリードが延設される方向に沿って延びるように設けられていることを特徴とする。
【0021】
前記エンボス(凹凸)が、前記外装体の前記集電タブリードを挟持して収容する箇所に、前記集電タブリードが延設される方向に沿って延びるように設けられていることによって、前記集電タブリードを挟持して収容する箇所に、前記エンボス(凹凸)を横(幅)方向に引っ張る又は圧縮するような外力が生じたときに、前記エンボス(凹凸)に幅が拡がる又は縮まるような変形が生じて外力による変形を吸収し、全体としての変形を抑えることができる。また、前記集電タブリードを挟持して収容する箇所に前記エンボス(凹凸)の深さ方向に応力がかかったときに、前記エンボス(凹凸)を設けることにより強度が増し、前記エンボス(凹凸)の深さ方向に対し、たわみにくくなり集電タブリード及び集電タブへの影響が低減される。したがって、外力の前記集電タブリードの影響は低減される。
【0022】
また、本発明においては、この場合に、前記エンボス(凹凸)は、さらに、前記外装体内面の、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所まで連続して延びることを特徴とする。
【0023】
前記エンボス(凹凸)が、さらに、前記外装体内面の、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所まで連続して延びることによって、前記集電タブリードを挟持して収容する箇所に加えて前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所にも、前記エンボス(凹凸)を横(幅)方向に引っ張る又は圧縮するような外力が生じたときに、前記エンボス(凹凸)に幅が拡がる又は縮まるような変形が生じて外力による変形を吸収し、全体としての変形を抑えることができる。また、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所に前記エンボス(凹凸)の深さ方向に応力がかかったときに、前記エンボス(凹凸)を設けることにより強度が増し、前記エンボス(凹凸)の深さ方向に対し、たわみにくくなり集電タブリード及び集電タブへの影響が低減される。したがって、外力の前記集電タブリードの影響は低減される。
【0024】
また、本発明においては、この場合に、前記エンボス(凹凸)は、外装体が前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所における、溶着することで強度が上がり電極割れの防止になる三角形部分を除く、溶着が施されない台形の箇所において、前記台形の一辺の1点から当該一辺と平行な対向する別の一辺の1点に向かって、前記集電タブリードが延設される方向とは非平行に延びることを特徴とする。
【0025】
前記エンボス(凹凸)が、外装体が前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所における、溶着が施されない台形の箇所において、前記台形の一辺の1点から当該一辺と平行な対向する別の一辺の1点に向かって、前記軸の方向とは非平行に延びることによって、前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所に、前記端面の長軸方向(水平方向)に外力が生じた場合においても、また、前記端面の短軸方向(上下方向)に外力が生じた場合においても外力による変形をエンボス(凹凸)で吸収し、全体としての変形を抑えることができる。したがって、前記端面の水平方向の外力、上下方向の外力の幅広い外力に対して、前記集電タブリードの影響を低減することができる。また、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所に前記エンボス(凹凸)の深さ方向に応力がかかったときに、前記エンボス(凹凸)を設けることにより強度が増し、前記エンボス(凹凸)の深さ方向に対し、たわみにくくなり集電タブリード及び集電タブへの影響が低減される。
【0026】
また、本発明の前記エンボス(凹凸)においては、外装体が、長方形の前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所において、前記長方形の一辺の1点又は複数の点から、当該一辺と平行な対向する別の一辺の複数の点に向かって、前記集電タブリードが延設される方向とは非平行に延びる複数本のエンボス(凹凸)からなり、前記長方形の2本の辺と2本のエンボス(凹凸)で、少なくとも1つの四角形を形成することを特徴とする。
【0027】
前記エンボス(凹凸)の幅方向にかかった応力の前記エンボス(凹凸)の変形での吸収、及び、前記エンボス(凹凸)の深さ方向にかかった応力に対する強度の増加による、外力の前記集電タブリードへの影響の低減の効果は、エンボス(凹凸)が複数あることで増強される。
【0028】
また、本発明の前記エンボス(凹凸)においては、外装体が、長方形の前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所において、前記長方形の一辺の1点又は複数の点から、当該一辺と平行な対向する別の一辺の複数の点に向かって、前記集電タブリードが延設される方向とは非平行に延びる複数本のエンボス(凹凸)からなり、前記長方形の1本の辺と2本のエンボス(凹凸)で、少なくとも1つの三角形を形成することを特徴とする。
【0029】
前記エンボス(凹凸)の深さ方向にかかった応力に対する強度は、2本のエンボス(凹凸)が前記長方形の辺上の1点で交わり、前記長方形の別の1本の辺と2本のエンボス(凹凸)で三角形を形成するときに最大となり、外力の前記集電タブリードへの影響の低減の効果が最も大きくなる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本発明は、集電タブリードが突出した電池を収容する外装体が、前記電池の前記集電タブリードが突出する端面を覆う箇所又は集電タブリードを挟持して収容する箇所に、外力の影響を低減する構造を設けることによって、集電タブリードが収容されている箇所に外力が加わる場合にも、その外力が集電タブリードに与える影響を抑制することができ、集電タブリードに応力が加わって電極が割れる可能性を低減できるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の電池セルの中の電池の斜視図である。
図2】本発明の電池セルの外観を示す斜視図である。
図3】本発明の電池セルの外装体の展開図である。
図4】本発明の電池セルの斜視図において厚さを厚くする箇所を示す図である。
図5】本発明の外装体の展開図において厚さを厚くする箇所を示す図である。
図6】本発明の電池セルの斜視図において中心軸方向に延びるエンボス(凹凸)を示す図である。
図7】本発明の外装体の展開図において中心軸方向に延びるエンボス(凹凸)を示す図である。
図8】本発明の電池セルの斜視図において中心軸と非平行なエンボス(凹凸)を示す図である。
図9】本発明の外装体の展開図において中心軸と非平行なエンボス(凹凸)を示す図である。
図10】本発明の外装体の展開図において中心軸と非平行な複数のエンボス(凹凸)を示す図である。
図11】本発明の外装体の展開図において中心軸と非平行な別の複数のエンボス(凹凸)を示す図である。
図12】本発明の外装体の展開図において中心軸と非平行なさらに別の複数のエンボス(凹凸)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0033】
本発明の電池1は、実施例においては全固体電池であって、図1に示すように直方体の形状をしており、天面11a、底面11b、側面12a,12b及び端面13a,13bの6面を有している。端面13a及び13bそれぞれの中心を結ぶ中心軸15を仮想したとき、端面13a及び13bのそれぞれから、中心軸15の方向に、集電タブリード14a及び14bが延設されている。全固体電池は、特に角部、表面部(端面部)で脆く破損しやすいので、本発明の各実施形態の構成を適用することに、より適しているといえる。
【0034】
図2に本発明の電池1を外装体3(図3)で覆って包装した電池セル2を示す。電池セル2においても、前記電池1に対応して、天面21a,底面21b,及び側面22a,22bが規定される。前記電池1の端面13a,13bに対応した箇所は、外装体3が折り合わされた形態の端面折り合わせ部23a-1,23a-2,23b-1,23b-2となっており、外面上、三角柱状を呈している。また、端面折り合わせ部23a-1,23a-2及び23b-1,23b-2には、それぞれ、側面22a,22b側から折り込まれて形成される、三角錐状の空間部25a-1,25a-2及び25b-1,25b-2が、それぞれの側から2個ずつ合計4個形成される。そして、前記端面折り合わせ部23a-1,23a-2及び23b-1,23b-2から中心軸15の方向には、前記集電タブリード14a,14bを上下から挟み込んで収容している集電タブリード収容部24a-1,24a-2及び24b-1,24b-2が延設されている。
【0035】
図3に前記外装体3の展開図を示す。前記外装体3は、前記電池1の天面11a及び底面11bのそれぞれを覆う部分として、天面覆部31a及び底面覆部31bを有し、また、側面12aを覆う部分として側面覆部32a,側面12bを覆う部分として側面覆部32b-1及び32b-2を有する。前記側面覆部32b-1及び32b-2は、前記外装体3が前記電池1を覆って包み込んだ際に、相互に重なり合い接着される接着部である。したがって、前記電池1の側面12bは、前記外装体3の側面覆部32b-1及び32b-2によって、二重に覆われることになる。
【0036】
前記電池1の端面13a,13bを覆う箇所としては、電池セル2において前記外装体3が折り合わされた形態の三角柱状を呈している端面折り合わせ部23a-1,23a-2,23b-1,23b-2を形成する、端面覆部33a-1,33a-2,33b-1,33b-2が、両側の端面のそれぞれの上下方向に対応して備わっている。前記端面覆部33a-1,33a-2,33b-1,33b-2を中心軸15方向に延長した先に、前記両側の集電タブリード14a,14bを上下から挟み込む集電タブリード挟持部34a-1,34a-2,34b-1,34b-2が設けられている。また、側面22a,22b側から折り込まれて形成される、三角錐状の空間部25a-1,25a-2及び25b-1,25b-2を形成する部分である、三角錐状空間形成部35a-1,35a-21,35a-22及び35b-1,35b-21,35a-22が形成されている。三角錐状空間形成部35a-21と35a-22及び35b-21と35b-22は、それぞれにおいて重なり合って、三角錐状空間を形成することになる。
【0037】
本発明の1つの実施形態においては、前記外装体3の、前記電池の前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所又は前記集電タブリード14a,14bを挟持して収容する箇所の厚さを厚くする構造とする。この実施形態を図4の斜視図、図5の展開図で示すと、両図の斜線を施した部分の厚さを厚くするものである。具体的には、図4の斜視図においては、外装体3が折り合わされた形態の端面折り合わせ部23a-1,23a-2,23b-1,23b-2及び前記集電タブリード14a,14bを上下から挟み込んで収容している集電タブリード収容部24a-1,24a-2,24b-1,24b-2を厚くする。図5の展開図で示すと、端面覆部33a-1,33a-2,33b-1,33b-2及び前記両側の集電タブリード14a,14bを上下から挟み込む集電タブリード挟持部34a-1,34a-2,34b-1,34b-2を厚くする。これらの部分を厚くすることにより、これらの部分を補強し、強度を高めて外力による変形や折れ曲がりを抑えることができる。したがって、これらの部分に外力が加えられても、これらの部分の変形や折れ曲がりは抑えられ、外力の前記集電タブリード14a,14bへの影響は低減される。
【0038】
本発明の別の実施形態においては、前記外装体3の、前記電池の前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所又は前記集電タブリード14a,14bを挟持して収容する箇所にエンボス(凹凸)を設ける構造である。エンボス(凹凸)は、内面側に設けてもよいし、外面側に設けてもよい。エンボス(凹凸)の一例としては、前記集電タブリード14a,14bを挟持して収容する箇所に中心軸15方向に延びるエンボス(凹凸)であってもよい。この実施形態を図6の斜視図、図7の展開図で示すと、具体的には図6の集電タブリード収容部24a-1及び図7の集電タブリード挟持部34a-1に表されているエンボス(凹凸)4-1である。このエンボス(凹凸)は、さらに、図6の外装体3が折り合わされた形態の端面折り合わせ部23a-1まで、図7では、端面覆部33a-1にまで、エンボス(凹凸)4-2として追加して延伸されてもよい。
【0039】
前記エンボス(凹凸)4-1が、前記外装体3の前記集電タブリード14a,14bを挟持して収容する箇所に、前記集電タブリード14a,14bが延設される方向、すなわち、中心軸15の方向に延びるように設けられていることによって、前記集電タブリード14a,14bを挟持して収容する箇所に、前記エンボス(凹凸)4-1を横(幅)方向に引っ張る又は圧縮するような外力が生じたときに、前記エンボス(凹凸)4-1に幅が拡がる又は縮まるような変形が生じて外力による変形を吸収し、全体としての変形を抑えることができる。また、前記集電タブリード14a,14bを挟持して収容する箇所に前記エンボス(凹凸)4-1の深さ方向に応力がかかったときに、前記エンボス(凹凸)4-1を設けることにより強度が増し、前記エンボス(凹凸)4-1の深さ方向に対し、たわみにくくなり集電タブリード14a,14b及び集電タブへの影響が低減される。前記エンボス(凹凸)4-1が、さらに、前記外装体3内面の、前記電池の前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所まで連続してエンボス(凹凸)4-2として延びることによって、前記集電タブリード14a,14bを挟持して収容する箇所に加えて前記電池の前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所にも、前記エンボス(凹凸)4-2を横(幅)方向に引っ張る又は圧縮するような外力が生じたときに、前記エンボス(凹凸)4-2に幅が拡がる又は縮まるような変形が生じて外力による変形を吸収し、全体としての変形を抑えることができる。また、前記電池の前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所に前記エンボス(凹凸)4-2の深さ方向に応力がかかったときに、前記エンボス(凹凸)4-2を設けることにより強度が増し、前記エンボス(凹凸)4-2の深さ方向に対し、たわみにくくなり集電タブリード14a,14b及び集電タブへの影響が低減される。したがって、外力の前記集電タブリード14a,14bの影響は低減される。
【0040】
エンボス(凹凸)の別の例としては、前記外装体3が、前記電池の前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所(前記電池セル2の端面折り合わせ部23a-1)における溶着が施されない台形の箇所において、前記台形の一辺の1点から当該一辺と平行な対向する別の一辺の1点に向かって、前記軸の方向とは非平行に延びるエンボス(凹凸)4-3であってもよい。この実施形態を、図8の斜視図及び図9の外装体3の展開図で説明すると、前記外装体3を折りたたんで、電池1の天面11a、底面11b、側面12a,12bを覆う部分(天面覆部31a,底面覆部31b及び側面覆部32a-1,32a-2)を形成した後、側面12a,12b側から折り込んで三角錐状の空間部25a-1,25a-2及び25b-1,25b-2を形成する際に、前記外装体3の三角錐状空間形成部35a-1,35a-21,35a-22及び35b-1,35b-21,35b-22が接合する外装体3の相手側の内面部分は、図9の斜線を施した部分として表される。なお、図9の斜線を施した部分に関して、右上の斜線を施した部分に示したように、前記集電タブリード挟持部34b-2側の四角形部は溶着が必須であり、溶着必須部分であるといえるのに対して、前記端面覆部33b-2側の三角形部は、溶着が必須ではないが溶着することで強度が増して電極割れ防止になる部分であり、いわば、溶着要望部分といえる部分である。
【0041】
図9からわかるように、前記外装体3の端面覆部33a-1,33a-2,33b-1,33b-2には、それぞれに、前記溶着要望部分(溶着することで強度が上がり電極割れの防止になる三角形部分)を除く、溶着部が施されない台形部分を有することになる。本実施形態のエンボス(凹凸)4-3の例は、このうち、図9に示す前記外装体3の端面覆部33a-1に生じた台形ABCDにおいて、辺AB上の1点から、辺ABと平行な辺CD上の1点に向かい、前記中心軸15の方向(前記集電タブリード14a,14bが延びる方向)とは非平行に延びるエンボス(凹凸)である。
【0042】
前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所(前記電池セル2の端面折り合わせ部23a-1)に、前記端面の長軸方向(水平方向)に外力が生じた場合においても、また、前記端面の短軸方向(上下方向)に外力が生じた場合においても外力による変形をエンボス(凹凸)4-3で吸収し、全体としての変形を抑えることができる。したがって、前記端面の水平方向の外力や上下方向の外力などの幅広い外力に対して、前記集電タブリード14a,14bの影響を低減することができる。また、前記電池の前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所に前記エンボス(凹凸)4-3の深さ方向に応力がかかったときに、前記エンボス(凹凸)4-3を設けることにより強度が増し、前記エンボス(凹凸)4-3の深さ方向に対し、たわみにくくなり集電タブリード14a,14b及び集電タブへの影響が低減される。
【0043】
前記外装体3が、前記電池の前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所(前記電池セル2の端面折り合わせ部23a-1)における、前記軸の方向とは非平行に延びるエンボス(凹凸)についてはさらに種々の形態が考えられる。
【0044】
前記外装体3が前記電池の前記集電タブリード14a,14bが突出する端面を覆う箇所(電池セル2における端面折り合わせ部23a-1,23a-2,23b-1,23b-2を形成する、外装体3の端面覆部33a-1,33a-2,33b-1,33b-2)は長方形である。図10には、前記長方形において、前記長方形の一辺の1点又は2点から、当該一辺と平行な対向する別の一辺の2点に向かって、前記集電タブリード14a,14bが延設される方向とは非平行に延びる2本のエンボス(凹凸)を有するものが記載されている。前記エンボス(凹凸)の幅方向にかかった応力の前記エンボス(凹凸)の変形での吸収、及び、前記エンボス(凹凸)の深さ方向にかかった応力に対する強度の増加による、外力の前記集電タブリード14a,14bへの影響の低減の効果は、エンボス(凹凸)が複数あることで増強される。
【0045】
図11には、前記長方形の一辺の3点から、当該一辺と平行な対向する別の一辺の3点に向かって、前記集電タブリード14a,14bが延設される方向とは非平行に延びる3本のエンボス(凹凸)からなり、前記長方形の2本の辺と3本のエンボス(凹凸)で、2つの四角形を形成するものが記載されている。また、図12には、前記長方形の一辺の2点から、当該一辺と平行な対向する別の一辺の2点に向かって、前記集電タブリード14a,14bが延設される方向とは非平行に延びる3本のエンボス(凹凸)からなり、前記長方形の2本の辺と3本のエンボス(凹凸)で、2つの三角形を形成するものが記載されている。前記エンボス(凹凸)の深さ方向にかかった応力に対する強度は、2本のエンボス(凹凸)が前記長方形の辺上の1点で交わり、前記長方形の別の1本の辺と2本のエンボス(凹凸)で三角形を形成するときに最大となり、外力の前記集電タブリード14a,14bへの影響の低減の効果が最も大きくなる。
【0046】
以上、本発明を実施する態様について、実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々なる態様で実施できるものであることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 電池
11a 天面
11b 底面
12a,12b 側面
13a,13b 端面
14a,14b 集電タブリード
15 中心軸
2 電池セル
21a 天面
21b 底面
22a,22b 側面
23a-1,23a-2,23b-1,23b-2 端面折り合わせ部
24a-1,24a-2,24b-1,24b-2 集電タブリード収容部
25a-1,25a-2,25b-1,25b-2 三角錐状の空間部
3 外装体
31a 天面覆部
31b 底面覆部
32a,32b-1,32b-2 側面覆部
33a-1,33a-2,33b-1,33b-2 端面覆部
34a-1,34a-2,34b-1,34b-2 集電タブリード挟持部
35a-1,35a-21,35a-22,35b-1,35b-21,35b-22
三角錐状空間形成部
4-1,4-2,4-3 エンボス(凹凸)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12