(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ミクロトーム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/06 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G01N1/06 D
G01N1/06 A
(21)【出願番号】P 2020118902
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】10 2019 119 514.4
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500113648
【氏名又は名称】ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ディルク タウテンハーン
(72)【発明者】
【氏名】カール-ハインリッヒ ヴェスターホフ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ヴォル
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-532109(JP,A)
【文献】特開2017-148900(JP,A)
【文献】特表2012-514201(JP,A)
【文献】特表平04-507296(JP,A)
【文献】特開2001-162590(JP,A)
【文献】Tomoyuki Fujii,APPLICATION OF THE "NT-CUTTER" KNIFE BLADE TO MICROTOME SECTIONING OF WOOD,IAWA Journal,Vol. 24 (3),241頁-245頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織学的サンプル(3)を切断して薄切片を調製するための、ミクロトーム刃(6)を含む切断装置(2)を有するミクロトームであって、
光学的に読み取り可能な画像パターン(9)がミクロトーム刃(6)に配されていること;及び、ミクロトーム刃(6)から該画像パターン(9)を読み取り、読み取った画像パターン(9)についてのアナログ又はデジタルの画像信号を生成し、該画像信号をミクロトーム(1)の制御装置(10)へ送信する光学式読取装置(8)が設けられていること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項2】
請求項1に記載のミクロトームにおいて、
該ミクロトーム(1)は、ミクロトーム刃(6)を切断位置において着脱可能に固定するか又は固定可能にするミクロトーム刃ホルダ(7)を含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項3】
請求項2に記載のミクロトームにおいて、
光学式読取装置(8)は、ミクロトーム刃ホルダ(7)に配されたミクロトーム刃(6)から前記画像パターン(9)を読み取るよう構成されかつ配置されていること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のミクロトームにおいて、
光学式読取装置(8)は、ミクロトーム刃ホルダ(7)に組み込まれていること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のミクロトームにおいて、
該ミクロトーム(1)は、ミクロトーム刃供給コンテナ(19)を含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項6】
請求項5に記載のミクロトームにおいて、
光学式読取装置(8)は、ミクロトーム刃供給コンテナ(19)に配されたミクロトーム刃(6)から画像パターン(9)を読み取るよう構成されかつ配置されていること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項7】
請求項5に記載のミクロトームにおいて、
該ミクロトーム(1)は、ミクロトーム刃供給コンテナ(19)からミクロトーム刃(6)を取り出し、該ミクロトーム刃(6)をミクロトーム刃ホルダ(7)へ移送するよう構成されたミクロトーム刃交換装置(18)を含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項8】
請求項7に記載のミクロトームにおいて、
光学式読取装置(8)は、ミクロトーム刃ホルダ(7)への移送中に、ミクロトーム刃(6)から前記画像パターン(9)を読み取ること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のミクロトームにおいて、
光学式読取装置(8)は、ミクロトーム刃交換装置(18)に組み込まれていること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載のミクロトームにおいて、
制御装置(10)は、受信した画像信号を評価し、評価結果に依存して少なくとも1つの処理工程を決定すること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項11】
請求項10に記載のミクロトームにおいて、
a.前記少なくとも1つの処理工程は、切断装置(2)をブロックすることを含むこと;又は
b.前記少なくとも1つの処理工程は、ミクロトーム刃交換をブロック又は停止することを含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項12】
請求項10に記載のミクロトームにおいて、
前記少なくとも1つの処理工程は、切断装置(2)に少なくとも1つの切断オペレーションを実行させることを含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項13】
請求項10~12の何れかに記載のミクロトームにおいて、
前記少なくとも1つの処理工程は、ユーザに対し入力を要求することを含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項14】
請求項13に記載のミクロトームにおいて、
制御装置(10)は、入力を評価し、該入力に依存して、既に決定されている処理工程を取り消し及び/又は少なくとも1つの更なる処理工程を決定すること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のミクロトームにおいて、
制御装置(10)は、前記入力が到達するまで切断装置(2)をブロックすること;又は、制御装置(10)は、前記入力が到達するまでミクロトーム刃交換を停止すること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項16】
請求項10~15の何れかに記載のミクロトームにおいて、
前記少なくとも1つの処理工程は、ユーザへメッセージを出力することを含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項17】
請求項10~16の何れかに記載のミクロトームにおいて、
前記少なくとも1つの処理工程は、前記画像パターン(9)が既に読み取られたミクロトーム刃(6)を排出することを含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項18】
請求項10~17の何れかに記載のミクロトームにおいて、
前記少なくとも1つの処理工程は、読み取った画像パターン(9)の画像信号を記憶すること及び/又は制御装置(10)によって確認されたミクロトーム刃(6)に関する情報を記憶することを含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項19】
請求項1~18の何れかに記載のミクロトームにおいて、
制御装置(10)は、ミクロトーム刃(6)がミクロトーム(1)によって利用可能であるか否かについて、前記画像信号に基づき、確認すること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項20】
請求項1~19の何れかに記載のミクロトームにおいて、
複数の異なる画像パターン(9)と、ミクロトーム刃(6)がミクロトーム(1)によって利用可能であるか否かについての情報との間の対応関係が、制御装置(10)の記憶装置(17)に記憶されていること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項21】
請求項1~20の何れかに記載のミクロトームにおいて、
受信した画像信号を評価するために、制御装置(10)は、光学式読取装置(8)から受信した画像信号と少なくとも1つの参照画像パターンの画像信号とを対比すること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項22】
請求項21に記載のミクロトームにおいて、
少なくとも1つの参照画像パターンの画像信号が記憶されているか又は記憶可能な記憶装置が設けられていること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項23】
請求項1~22の何れかに記載のミクロトームにおいて、
制御装置(10)は、設定されるべき少なくとも1つの切断パラメータを、読み取った画像パターン(9)の画像信号に依存して、決定すること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項24】
請求項1~23の何れかに記載のミクロトームにおいて、
光学式読取装置(8)は、バーコード又はQRコード又はロゴ又はレタリング文字(lettering)又は順次番号として構成された画像パターン(9)を読み取るよう構成されかつ配置されていること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項25】
請求項1~24の何れかに記載のミクロトームにおいて、
該ミクロトーム(1)は、スライド式ミクロトーム又は回転式ミクロトーム又はビブラトーム又はのこぎり式ミクロトームとして構成されていること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項26】
請求項1~25の何れかに記載のミクロトームにおいて、
制御装置(10)は、常時的に、ログを保存すること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項27】
請求項26に記載のミクロトームにおいて、
制御装置(10)は、好ましくは、常時的に、ログデータをメモリにセーブし、及び/又は、ログデータをインターフェースを介して出力し、及び/又は、ログデータを出力装置において表示すること
を特徴とするミクロトーム。
【請求項28】
請求項27に記載のミクロトームにおいて、
前記ログデータは、処理工程及び/又はユーザ入力及び/又は読取装置(8)のデータ及び/又は制御装置(10)のデータ及び/又は位置データ及び/又は時間データを含むこと
を特徴とするミクロトーム。
【請求項29】
請求項1~28の何れかに記載のミクロトーム(1)と、該ミクロトーム(1)からログデータを受信する上位コンピュータとを含む組織学実験室システム。
【請求項30】
請求項29に記載の組織学実験室システムにおいて、
a.上位コンピュータは、他のミクロトームの及び/又は他の実験室装置の更なるログデータを受信すること;又は
b.上位コンピュータは、他のミクロトームの及び/又は他の実験室装置の更なるログデータを受信し、その都度、同じサンプルについての前記ログデータと前記更なるログデータを相互に対応付け、これらを一緒に記憶し及び/又は更に処理すること
を特徴とする組織学実験室システム。
【請求項31】
請求項1~28の何れかに記載のミクロトーム(1)のための又は請求項29又は30に記載の組織学実験室システムのための、ミクロトーム刃であって、
前記ミクロトーム(1)の前記光学式読取装置(8)によって光学的に読み取り可能な画像パターン(9)が配されていること
を特徴とするミクロトーム刃。
【請求項32】
請求項31に記載のミクロトーム刃において、
前記画像パターン(9)はプリントされている又は刻印されている又はエッチング処理によって配されていること
を特徴とするミクロトーム刃。
【請求項33】
請求項31又は32に記載のミクロトーム刃において、
前記画像パターン(9)は、ミクロトーム刃(6)の製造の時点及び/又は製造に使用された装置に関する、及び/又は製造業者に関する及び/又はナイフのタイプに関する及び/又は研磨のタイプに関する及び/又はミクロトーム刃のサイズに関する情報を含むこと
を特徴とするミクロトーム刃。
【請求項34】
請求項31~33の何れかに記載のミクロトーム刃において、
該ミクロトーム刃(6)は使い捨て刃として構成されること
を特徴とするミクロトーム刃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の記載)
本出願は、2019年7月18日出願のドイツ特許出願第10 2019 119 514.4号の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は、引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。
本発明は、組織学的サンプルを切断して薄切片を調製するための、ミクロトーム刃を含む切断装置を有するミクロトームに関する。
【0002】
本発明は、更に、ミクロトーム刃に関する。
【背景技術】
【0003】
患者から採取した組織学的サンプルは、組織学実験室の種々の処理ステーション(複数)において複数の処理工程を経た後、例えば顕微鏡による検査が可能になる。
【0004】
組織学的サンプルが後続のミクロトーム法のための包埋工程との関連において調製される場合、サンプルは、まず、固定媒体、例えばホルマリンを用いて固定される。次いで、サンプル中に存在する組織液が除去される。これは、複数の工程で、その都度純度を上げたアルコールでサンプルを処理することによって達成される。該サンプルを、そのような処理後に、ミクロトームによる切断が可能な状態にもたらすために、包埋媒体―例えばパラフィン、ゼラチン、アガー、ニトロセルロース、ポリエステルワックス、ポリエチレングリコール又はプラスチック―を該サンプルに含浸(浸透)させる。上記の工程(複数)中、サンプルは、通常、複数のふるい(sieve)状の孔を含むカセット内に存在するため、これらの化学物質はサンプルの周りを流動することができる。そのようなカセットの特別な一例は、例えば、DE 43 33 118 A1から既知である。
【0005】
包埋媒体の含浸後、サンプルはそのカセットから取り出され、ブロックの形でパラフィン包埋されることができる。次いで、このブロックをミクロトームを用いて切断することによって、個別に試料スライド上に載置される薄切片(複数)を作製することができる。薄切片は、次いで、顕微鏡検査のために着色(染色)されることができる。
【0006】
ミクロトームは、通常、組織学的サンプルの薄切片を作製するために使用される。ミクロトームは、通常、使い捨て刃のためのナイフホルダを含む;使い古した刃は、通常、とりわけ特定の回数の切断操作後に、廃棄され、新しい使い捨てミクロトーム刃で交換される。ミクロトームのためのナイフホルダの一例は、例えば、DE 10 2004 051 974 A1から既知である。
【0007】
US3,699,830は回転式ミクロトームを記載している。該回転式ミクロトームは、使い捨て刃を着脱可能に受容するよう構成されたミクロトーム刃ホルダを含んでいる。
【0008】
DE 10 2012 213 824 A1は、ミクロトームのための刃交換装置を有するナイフホルダを記載している。このナイフホルダを用いることにより、使用済みのミクロトーム刃は、最早、切断位置の刃受容部から、新しいミクロトーム刃によって、押し出される必要はなくなる。その代わりに、使用済みのミクロトーム刃は、重力によって運搬されることができ、例えば、廃棄位置の刃受容部内へと落下、滑動ないし滑落することができる。そして、新しいミクロトーム刃は、切断位置の空になった刃受容部内へと押し込まれることができる。
【0009】
DE 10 2013 106 023 A1は、組織スライド及び/又はそのような組織スライドに配された微細組織試料が組織コンテナに及び/又はそのような組織コンテナから取り出された組織試料に自動的かつ特異的に対応付けられる、微細組織試料を作製するためのシステム及び方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】DE 43 33 118 A1
【文献】DE 10 2004 051 974 A1
【文献】US3,699,830
【文献】DE 10 2012 213 824 A1
【文献】DE 10 2013 106 023 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
異なるミクロトーム刃、例えば異なる製造業者のミクロトーム刃又は複数の製造工程を用いて製造されたミクロトーム刃は非常に異なる性質を有することが、本発明によって認識された。このような場合としては、とりわけ、例えば、第1の製造業者のミクロトーム刃はある特定のミクロトームにおいては格別に効率的に使用可能であるのに対し、当該ミクロトームにおいて他の製造業者のミクロトーム刃を使用すると、良好な切断結果が得られないということがある。そのため、とりわけ、不利なことに、切片がクリーンでなかったり、穴や微細亀裂が薄切片に生じたり、ナイフの切断跡及び/又はチャターマークが薄切片に視認可能になったり、或いは、ひだ(しわ)が薄切片内部に生じたりすることが起こり得る。これは、例えば、異なる製造業者の又は異なる製品シリーズのミクロトーム刃は異なる材料又は材料混合物から、及び/又は異なる製造方法を用いて、製造されるという事実に起因し得る。
【0012】
これとの関連における著しい欠点は、ユーザは、一般的に、自身が使用するミクロトームとの組み合わせにおいて良好な切断結果が達成(実現)可能であるか否かについて、直接的には判断することができないということである。とりわけ、不利なことに、不十分な品質の薄切片が大量に作製されるが、実験室の技術者はミクロトーム刃の不適合性には直ちには気付かないということが起こり得る。そのため、面倒な染色(着色)後に次の顕微鏡検査の際に(薄切片の面倒な染色(着色)後に)ようやく、薄切片が不良であることが明らかになることがある。この不良の原因が不適切なミクロトーム刃の使用であるのか、或いは、例えば、実験室の技術者の操作ミスであるのかについては、大抵は、直ちには明らかにはならない。
【0013】
本発明の課題は、組織学的サンプルの処理との関連において処理シーケンスの信頼性を向上させるミクロトームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一視点において、組織学的サンプルを切断して薄切片を調製するための、ミクロトーム刃(ミクロトームブレード)を含む切断装置を有するミクロトームが提供される。該ミクロトームにおいては、光学的に読み取り可能な画像パターンがミクロトーム刃に配されている(施されている)こと、及び、ミクロトーム刃から該画像パターンを読み取り、読み取った画像パターンについてのアナログ又はデジタルの画像信号を生成し、該画像信号をミクロトームの制御装置へ送信する光学式読取装置が設けられていることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここに、本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の一視点参照。
(形態2)形態1のミクロトームにおいて、該ミクロトームは、ミクロトーム刃を切断位置において着脱可能に固定するか又は固定可能にするミクロトーム刃ホルダを含むことが好ましい。
(形態3)形態2のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃ホルダに配されたミクロトーム刃から前記画像パターンを読み取るよう構成されかつ配置されていることが好ましい。
(形態4)形態2又は3のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃ホルダに組み込まれていることが好ましい。
(形態5)形態1~4の何れかのミクロトームにおいて、該ミクロトームは、ミクロトーム刃供給コンテナを含むことが好ましい。
(形態6)形態5のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃供給コンテナに配されたミクロトーム刃から画像パターンを読み取るよう構成されかつ配置されていることが好ましい。
(形態7)形態5のミクロトームにおいて、該ミクロトームは、ミクロトーム刃供給コンテナからミクロトーム刃を取り出し、該ミクロトーム刃をミクロトーム刃ホルダへ移送するよう構成されたミクロトーム刃交換装置を含むことが好ましい。
(形態8)形態7のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃ホルダへの移送中に、ミクロトーム刃から前記画像パターンを読み取ることが好ましい。
(形態9)形態7又は8のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃交換装置に組み込まれていることが好ましい。
(形態10)形態1~9の何れかのミクロトームにおいて、制御装置は、受信した画像信号を評価し、評価結果に依存して少なくとも1つの処理工程を決定することが好ましい。
(形態11)形態10のミクロトームにおいて、
a.前記少なくとも1つの処理工程は、切断装置をブロック(制動ないし妨害)することを含むこと;又は
b.前記少なくとも1つの処理工程は、ミクロトーム刃交換をブロック(制動ないし妨害)又は停止することを含むこと
が好ましい。
(形態12)形態10のミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、切断装置に少なくとも1つの切断オペレーションを実行させることを含むことが好ましい。
(形態13)形態10[9]~12の何れかのミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、ユーザに対し入力を要求することを含むことが好ましい。
(形態14)形態13のミクロトームにおいて、制御装置は、入力を評価し、該入力に依存して、既に決定されている処理工程を取り消し及び/又は少なくとも1つの更なる処理工程を決定することが好ましい。
(形態15)形態13又は14のミクロトームにおいて、制御装置は、前記入力が到達するまで切断装置をブロックすること;又は、制御装置は、前記入力が到達するまでミクロトーム刃交換を停止することが好ましい。
(形態16)形態10[9]~15の何れかのミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、ユーザへメッセージを出力することを含むことが好ましい。
(形態17)形態10[9]~16の何れかのミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、前記画像パターンが既に読み取られたミクロトーム刃を排出することを含むことが好ましい。
(形態18)形態10[1]~17の何れかのミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、読み取った画像パターンの画像信号を記憶すること及び/又は制御装置によって確認されたミクロトーム刃に関する情報を記憶することを含むことが好ましい。
(形態19)形態1~18の何れかのミクロトームにおいて、制御装置は、ミクロトーム刃がミクロトームによって利用可能であるか否かについて、前記画像信号に基づき、確認することが好ましい。
(形態20)形態1~19の何れかのミクロトームにおいて、複数の異なる画像パターンと、ミクロトーム刃がミクロトームによって利用可能であるか否かについての情報との間の対応関係が、制御装置の記憶装置に記憶されていることが好ましい。
(形態21)形態1[9]~20の何れかのミクロトームにおいて、受信した画像信号を評価するために、制御装置は、光学式読取装置から受信した画像信号と少なくとも1つの参照画像パターンの画像信号とを対比することが好ましい。
(形態22)形態21のミクロトームにおいて、少なくとも1つの参照画像パターンの画像信号が記憶されているか又は記憶可能な記憶装置が設けられていることが好ましい。
(形態23)形態1~22の何れかのミクロトームにおいて、制御装置は、設定されるべき少なくとも1つの切断パラメータを、読み取った画像パターンの画像信号に依存して、決定することが好ましい。
(形態24)形態1~23の何れかのミクロトームにおいて、光学式読取装置は、バーコード又はQRコード又はロゴ又はレタリング文字(lettering)又は順次番号(ないしシリアルナンバー:sequential number)として構成された画像パターンを読み取るよう構成されかつ配置されていることが好ましい。
(形態25)形態1~24の何れかのミクロトームにおいて、該ミクロトームは、スライド式(滑走式)ミクロトーム又は回転式ミクロトーム又はビブラトーム(振動刃ミクロトーム)又はのこぎり式(ゼーゲ)ミクロトーム(saw microtome)として構成されていることが好ましい。
(形態26)形態1~25の何れかのミクロトームにおいて、制御装置は、常時的に、ログを保存(保持)することが好ましい。
(形態27)形態26のミクロトームにおいて、制御装置は、好ましくは常時的に、ログデータをメモリにセーブし、及び/又は、ログデータをインターフェースを介して出力し、及び/又は、ログデータを出力装置において表示することが好ましい。
(形態28)形態27のミクロトームにおいて、前記ログデータは、処理工程及び/又はユーザ入力及び/又は読取装置のデータ及び/又は制御装置のデータ及び/又は位置データ及び/又は時間データを含むことが好ましい。
(形態29)形態1~28の何れかのミクロトームと、該ミクロトームからログデータ(log data)を受信する上位コンピュータとを含む、組織学実験室システムも好ましい。
(形態30)形態29の組織学実験室システムにおいて、
a.上位コンピュータは、他のミクロトームの及び/又は他の実験室装置の更なるログデータを受信すること;又は
b.上位コンピュータは、他のミクロトームの及び/又は他の実験室装置の更なるログデータを受信し、その都度、同じサンプルについての前記ログデータと前記更なるログデータを相互に対応付け、これらを一緒に記憶し及び/又は更に処理すること
が好ましい。
(形態31)とりわけ形態1~28の何れかのミクロトームのための又は形態29又は30の組織学実験室システムのための、ミクロトーム刃(ミクロトームブレード)であって、前記ミクロトームの前記光学式読取装置によって光学的に読み取り可能な画像パターンが配されているミクロトーム刃も好ましい。
(形態32)形態31のミクロトーム刃において、前記画像パターンはプリントされている又は刻印されている又はエッチング処理によって配されていることが好ましい。
(形態33)形態31又は32のミクロトーム刃において、前記画像パターンは、ミクロトーム刃の製造の時点及び/又は製造に使用された装置に関する、及び/又は製造業者に関する及び/又はナイフのタイプに関する及び/又は研磨(grind)のタイプに関する及び/又はミクロトーム刃のサイズに関する情報を含むことが好ましい。
(形態34)形態31~33の何れかのミクロトーム刃において、該ミクロトーム刃は使い捨て刃として構成されることが好ましい。
【0016】
本発明によるミクロトームは、今まさに使用が意図されているミクロトーム刃によって良好な品質の薄切片が作成可能であるか否かについて、光学式読取装置を用いることによって、予め決定(確認)することができるという顕著な利点を有する。この目的のために、ミクロトームは、使用が意図されている特定のミクロトーム刃から、光学式読取装置を用いて、例えば製造業者のロゴ又は製品のロゴであり得るか又はこれらを含み得る画像パターンを読み取り、読み取った画像パターンに関する対応するアナログ又はデジタルの画像信号を制御装置へ送信(伝送)する。
【0017】
制御装置が、例えば受信した画像信号の評価後、ミクロトーム刃が特定の製造業者及び/又は特定の製品シリーズに対応付け可能であることを確認すると、次の段階において、制御装置は、切断オペレーション(切断操作)が実行されるべきか否か及び/又は切断オペレーションがどの切断パラメータで実行されるべきかについて、決定する。この目的のために、異なる製造業者の又は異なる製品シリーズのミクロトーム刃に関する関連データが制御装置の記憶装置に記憶されていると有利である。とりわけ、異なる画像パターンと、十分に高品質な切断結果の観点からミクロトーム刃がミクロトームにおいて使用可能であるか否かに関する情報との間の対応関係が、制御装置の記憶装置に記憶可能であると、有利である。とりわけ、ナイフのタイプ及び/又は研磨(grind)のタイプのようなミクロトームブレードの性質(特性)と、その画像パターンとの間の対応関係が記憶装置に記憶可能であることも有利である。
【0018】
とりわけ、制御装置は、ミクロトームとの組み合わせでは、画像パターンを丁度読み取ったミクロトーム刃を用いて十分な品質の薄切片を作製できないことを確認することがあり得る。そのような場合、例えば、当該ミクロトーム刃の使用は禁止されることができ及び/又はミクロトームのユーザに警告が出力されることができる。例えば、制御装置は、切断装置及び/又は、とりわけ自動化された、ミクロトーム刃交換装置をブロック(制動)するよう構成可能である。
【0019】
そのような場合、代替的に、切断装置及び/又はミクロトーム刃交換装置は、警告メッセージの出力後に及びそれにも拘らず切断オペレーションが望まれることを実験室技術者が確認した後にのみ、作動可能にされることも可能である。これに応じて、ミクロトーム刃が光学式読取装置によって検出可能な画像パターンを含まない場合又は検出された画像パターンが製造業者又は製品シリーズに対応付けできない場合も、念のため、同様の方法(手順)を行うことができる。
【0020】
極めて全般的に、制御装置は受信した画像信号を評価し、評価結果に依存して少なくとも1つの処理工程を決定するよう構成可能であると有利である。
【0021】
少なくとも1つの処理工程の決定は必ずしも最終的(決定的)なものではない。例えば、制御装置は、最初に、ユーザの入力が要求されることを、処理工程として、決定することができる。次いで、入力の受信後、ユーザの決定に依存して、制御装置は更なる処理工程を決定することができる。
【0022】
ユーザに対する入力の要求は、とりわけ、使用されるべきミクロトーム刃がミクロトームに適合しないものである場合、又は、ミクロトーム刃が光学式読取装置によって検出可能な画像パターンを含まない場合、又は製造業者及び/又は製品シリーズが、評価との関係で、検出された画像パターンに対応付けできない場合、実行されることができる。
【0023】
ユーザに対する入力の要求及び/又はユーザへの警告メッセージの出力は、とりわけ、例えば切断角度及び/又は切断速度に関連する、ミクロトームの実際の切断パラメータが、又はその画像パターンが読み取られたミクロトーム刃を用いて切断されるべきサンプルの性質が、良好な切断結果を生じないであろうことを制御装置が確認する場合に、実行されることもできる。「切断角度」とは、ミクロトーム刃の面の方向と切断方向との間の角度のことである。
【0024】
ミクロトームは、ユーザに入力の実行を可能にするボタン又はキーパッド及び/又はその他の入力装置を含むことができる。代替的に又は追加的に、入力は、ミクロトームが直接接続されているコンピュータを介して又はネットワークを介して入力されることも可能である。制御装置は入力を評価し、そして、入力の内容に依存して、既に決定されている処理工程を取り消すこと及び/又は少なくとも1つの更なる処理工程を決定することができる。例えば、制御装置は、ユーザの入力が、警告があるにも拘らず、不適合なミクロトーム刃を用いて実行されるべきというものであれば、切断装置がブロック(ないし阻止:inhibit)されるべきことを規定する当初に与えられた処理工程を取り消することができる。
【0025】
格別に有利な一実施形態では、制御装置は、入力(信号)が到達する(入力(信号)を受信する)まで、ミクロトーム刃の交換を停止することができる。
【0026】
既述の通り、処理工程(複数)の1つは、ユーザへメッセージを出力すること含むことができる。例えば、本発明によるミクロトームは、制御装置がミクロトーム刃を認識しかつ高品質の薄切片が作製可能であることを確認したとき、すべてがOKでありかつ正確な切断オペレーションが実行可能であるというメッセージを制御装置が出力するよう、構成されることができる。
【0027】
同様に、制御装置が十分に良好な品質の薄切片が作製可能ではないことを認識したとき、又は、制御装置が、評価との関連において、検出した画像パターンを製造業者及び/又は製品シリーズに対応付けできなかったとき、警告メッセージが出力されることも可能である。
【0028】
とりわけ、制御装置によって決定される処理工程は、その画像パターンが読み取られかつ評価されたミクロトーム刃を用いて切断オペレーションの実行を可能にすることを含むことができる。制御装置は、例えば、ミクロトーム刃から読み取った画像パターンを、ミクロトームとの組み合わせで良質な薄切片が作製可能であるという情報を制御装置が有する特定の製造業者及び/又は特定の製品シリーズに対応付けできたとき、この処理工程を決定する。
【0029】
この目的のために、とりわけ、異なる画像パターン(複数)と、十分な品質の薄切片が(作製)可能であるか否かについての情報との間の対応関係が制御装置の記憶装置に記憶されることができる。
【0030】
代替的に又は追加的に、制御装置の記憶装置に記憶される対応関係は、一層より詳細な情報、例えば少なくとも1つの必要な切断パラメータに関する情報を含むことも可能である。切断パラメータは、例えば、切断角度及び/又は切断速度に関するものであることが可能である。
【0031】
本発明によるミクロトームの格別にフレキシブルに使用可能な一実施形態では、制御装置は、ミクロトームの少なくとも1つの切断パラメータを、必要であると確認された(1つ以上の)切断パラメータに、個別に適合させる。
【0032】
光学式読取装置は、例えば、カメラとして、とりわけCCDカメラとして構成可能である。
【0033】
ミクロトームは、ミクロトーム刃を切断位置において着脱可能に固定可能なミクロトーム刃ホルダを含むことが好ましい。有利な一実施形態では、光学式読取装置は、ミクロトーム刃ホルダに配されたミクロトーム刃から画像パターンを読み取るよう構成されかつ配置される。とりわけ、光学式読取装置はミクロトーム刃ホルダに組み込まれることができる。
【0034】
格別に有利な一実施形態では、ミクロトームは、その内部に複数のミクロトーム刃が収容(ストック)されているミクロトーム刃供給コンテナを含む。かくして、現在使用しているミクロトーム刃が摩損したときは何時でも、交換を行うことができる。この実施形態では、光学式読取装置は、ミクロトーム刃供給コンテナに配されたミクロトーム刃から画像パターンを読み取るよう構成されかつ配置されることができる。
【0035】
代替的に又は追加的に、ミクロトームは、ミクロトーム刃供給コンテナからミクロトーム刃を、とりわけ自動的に、取り出し、該ミクロトーム刃をミクロトーム刃ホルダへ移送するよう構成されたミクロトーム刃交換装置を含むことができる。有利には、とりわけ、光学式読取装置は、ミクロトーム刃ホルダへの移送中に、ミクロトーム刃から画像パターンを読み取るよう構成可能である。これは、画像パターンの読み取りが時間寄生的(時間ないし時刻的にずれのない:chronologically parasitic)態様(ないしリアルタイムで)で実行可能であり、そのため、処理シーケンス全体がスローダウン(遅延)しないという格別な利点を有する。光学式読取装置は、とりわけ、ミクロトーム刃交換装置に組み込まれることができる。
【0036】
格別に有利な一実施形態では、制御装置はログ(log)を保存(保持)する。とりわけ、有利には、個別ミクロトーム刃の各々について、画像パターンを読み取ることができたか否か及び/又は読み取った画像パターンを評価することができたか否か及び/又は読み取った画像パターンを製造業者又は製品シリーズに対応付けることができたか否かに関するログが保存されるよう構成可能である。ログは、とりわけ、画像パターンそれ自体及び/又はミクロトーム刃に関するデータを含むことができる。ログは、更に、ミクロトーム刃が使用された時点に関する情報及び/又は切断される各サンプルに関する情報及び/又は対応付けられた患者に関する情報及び/又はミクロトーム刃が製造された時点に関する情報及び/又はミクロトーム刃のバッチ番号及び/又はミクロトーム刃の数字ないし英数字の順次番号(シリアルナンバー)及び/又は発せられた警告メッセージ(に関する情報)を含むことができる。
【0037】
制御装置は、常時的に、ログデータをメモリにセーブし、及び/又は、ログデータをインターフェースを介して出力することが好ましい。代替的に又は追加的に、制御装置は、ログデータを出力装置において、例えばミクロトームのディスプレイにおいて、表示することも、とりわけ常時的に表示することも可能である。
【0038】
格別に有利な一実施形態では、ログデータは、当該ログデータを記憶し及び/又は更に処理する上位コンピュータへ伝送される。
【0039】
とりわけ、更には独立の進歩的思想に応じて、有利には、上位コンピュータは他のミクロトームの及び/又は他の実験室装置の更なるログデータを受信して記憶し及び/又は当該(ログ)データをとりわけ(本発明による)ミクロトームのログデータと一緒に更に処理するよう構成可能である。極めて全般的に、更には独立の進歩的思想に応じて、本発明によるミクロトームからのログデータ、及び/又は他の実験室装置からの更なるログデータを受信し、記憶し及び/又は更に処理する上位コンピュータを含む組織学実験室システムは格別に有利である。
【0040】
上位コンピュータによって、同じサンプルについてのログデータと更なるログデータが相互に対応付けられ、(一緒に)記憶され及び/又は一緒に更に処理されることが好ましい。かくして、とりわけ、(本発明による)ミクロトームから送信されるログデータと他のミクロトーム及び/又は他の実験室装置の更なるログデータとを含む上位ログが、とりわけサンプル特異的な態様で、生成されることが可能になる。上位ログは、好ましくは、組織学実験室におけるサンプルの処理と関連するすべての処理工程に関するデータを含むことができる。上位ログは、これに関し、とりわけ、ログデータと、トリミングステーションから顕微鏡による診断に至るまでのサンプルの処理を含む更なるログデータを含むことができる。尤も、上位ログが、ログデータと、そのような処理シーケンスの一部の更なるログデータを含むことも可能である。
【0041】
1つのバリエーションでは、例えば画像パターンを読み取ることができなかったために又はその画像パターンが読み取られたミクロトーム刃を用いて十分に良質な薄切片を作製できないことが、評価後に、判明したために、問題があると認識された場合に限ってロギングが行われる。
【0042】
とりわけ、複数の処理工程の1つは、読み取った画像パターンの画像信号を記憶すること及び/又は制御装置によって確認されたミクロトーム刃に関する情報を記憶することを含むことができる。これは、とりわけ、対応するデータが上記のログに記録されるようにして、達成(実現)されることができる。
【0043】
格別に有利な一実施形態では、制御装置は、光学式読取装置から受信した画像信号と少なくとも1つの参照画像パターンとを対比する。この目的のために、少なくとも1つの参照画像パターンの画像信号が記憶されているか又は記憶可能な記憶装置を備えることができる。制御装置は、参照画像パターン(複数)を記憶装置から個別に取り出し(読み出し)、それらを光学式読取装置から受信した画像信号(複数)と対比する。
【0044】
光学式読取装置は、とりわけ、バーコード又はQRコード又はロゴ又はレタリング文字(lettering)として構成された画像パターンを読み取るよう構成されかつ配置されることができる。レタリング文字は英数字又は数字の順次番号(シリアルナンバー)として構成されることができる。尤も、原理的には、読み取り可能な画像パターンのタイプについての制限はない。
【0045】
格別に有利な一実施形態では、とりわけ、画像パターンは常にミクロトーム刃の同じ位置に配される必要はない。その代わりに、この実施形態では、評価可能な画像パターンの位置を確認するために、ミクロトーム刃全体が常に光学式読取装置を用いて検出される。
【0046】
本発明によるミクロトームは、とりわけ、スライド式(滑走式)ミクロトーム又は回転式ミクロトーム又はビブラトーム(振動刃ミクロトーム)又はのこぎり式(ゼーゲ)ミクロトーム(saw microtome)として構成されることができる。
【0047】
光学的に読み取り可能な画像パターンが配されている(形成されている)、とりわけ本発明によるミクロトームのための、ミクロトーム刃は格別に有利である。画像パターンは、例えば、プリントされることができる。或いは、例えば、画像パターンは、とりわけレーザによって、刻印されること、又は、エッチング法によって配される(施される)ことも可能である。
【0048】
画像パターンは、好ましくは、ミクロトーム刃が製造された時点に関する情報及び/又は製造業者に関する情報及び/又はナイフのタイプに関する情報及び/又は研磨(grind)のタイプに関する情報及び/又はミクロトーム刃のサイズに関する情報を含む。画像パターンは、例えば、製造業者のロゴ又は製品のロゴ、及び/又は数字又は英数字で構成された順次番号(シリアルナンバー)を含むことができる。そのような番号によって、例えば、製造の時間(時点)、製造の場所、及び、ミクロトーム刃の製造に使用された装置を決定する(確認する)ことができる。
【0049】
極めて全般的に、ミクロトームを操作するための方法は格別に有利であり、該方法は、ミクロトーム刃に配されている(形成されている)光学的に読み取り可能な画像パターンを読み取ること、及び、読み取った画像パターンに関するアナログ又はデジタルの画像信号を生成し、次いで、該画像信号を、とりわけ評価のために、ミクロトームの制御装置へ伝送すること、を含む。既に説明したように、本方法は、とりわけ、良好な品質の薄切片が今まさに使用が意図されているミクロトーム刃によって作製可能であるか否かについて確認すること含むことができる。
【0050】
本発明の主題(要旨)は図面に、例を用いて概略的に示されており、以下において図面を参照して説明される。同一の又は同じように機能する構成要素は、たとえ異なる実施例についてのものでも、通常は、同じ図面参照符号が付記されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図4】本発明による一ミクロトームの第4実施例の細部と、本発明によるミクロトーム刃の一例。
【実施例】
【0052】
図1は、本発明による一ミクロトーム1の第1実施例を示す。ミクロトーム1は、組織学的サンプル3を切断して薄切片を調製するための切断装置2を含む。切断装置2は、手回しクランク4で操作されるものであり、また、切断オペレーションとの関連において、ミクロトーム刃ホルダ7に固定されているミクロトーム刃6に対し相対的に運動するサンプルホルダ5を含む。
【0053】
ミクロトーム1は、ミクロトーム刃ホルダ7に組み込まれており、かつ、ミクロトーム刃6から画像パターン9(
図1では不可視)を読み取る光学式読取装置8を含む。
【0054】
光学式読取装置8は、読み取った画像パターン9に関するアナログ又はデジタルの画像信号を生成し、該画像信号をミクロトームの制御装置10へ伝送する。光学式読取装置8は、ミクロトーム刃ホルダ7のコンソール12の側部に固定された筒状マウント(取付部材)11によって横向きに固定される。光学式読取装置8と制御装置10とを接続するデータケーブル13は筒状マウント11内を通って延伸する。
【0055】
ミクロトーム1は、更に、ユーザに対しメッセージを出力可能にするディスプレイ14を含む。とりわけ、ディスプレイ14は、ユーザが例えばキーパッドとして構成可能な入力装置15を介して入力できる入力(入力信号;本書において「入力」は「入力信号」を意味することもある。)を、ユーザに対し要求するよう作動することも可能である。ディスプレイ14は、例えば、光学式読取装置8によって検出される画像パターンに関する情報及び/又は読み取った画像パターンに関する評価結果を常時的に表示するよう作動することも可能である。
【0056】
ミクロトーム1は、コンピュータネットワークとの接続のための又はコンピュータとの直接接続のためのインターフェース16を含む。
【0057】
制御装置10は記憶装置17を含む。該記憶装置17には、参照画像パターンの画像信号が記憶可能であり;及び/又は、光学的に読み取った画像パターン9に関する情報及び/又は評価結果に関する情報及び/又はミクロトーム刃6に関する情報;及び/又はその都度読み取った画像パターン9に関するデータ及び/又は実行されるべき又は実行された処理工程に関するデータ(ないし情報)が記憶可能である。とりわけ、接続されたコンピュータへインターフェース16を介して送信可能であり及び/又はディスプレイ14において提示(表示)可能なログが、記憶装置17に記憶可能であると有利である。
【0058】
ミクロトーム1は、現在まさに使用が意図されておりかつその画像パターン9が読み取られたミクロトーム刃6を用いて良好な品質の薄切片が作製可能であるか否かについて予め確認する。制御装置10が、受信した画像信号の評価に応じ、ミクロトーム刃6が特定の製造業者及び/又は特定の製品シリーズに対応付けできることを確認すると、制御装置10は、次の工程で、例えば、切断オペレーションが実行されるべきか否か及び/又は切断オペレーションがどの切断パラメータを用いて実行されるべきかについて、確認する。
【0059】
異なる製造業者の又は異なる製品シリーズのミクロトーム刃6についての関連データが、その目的のために、制御装置10の記憶装置17に記憶される。更に、異なる画像パターン(複数)9と、十分に良好な品質の切断結果の観点からミクロトーム刃6がミクロトーム1において使用可能であるか否かに関する情報との間の対応関係も記憶装置17に記憶される。
【0060】
十分な品質の薄切片がその画像パターン9が丁度読み取られたミクロトーム刃6を用いるミクロトーム1によって作製できないことを制御装置10が確認すると、ミクロトーム刃6の使用は禁止され及び/又は警告がミクロトーム1のユーザに対し発せられる。ミクロトーム1は、制御装置10が切断装置2をブロック(動作阻止)するよう予設定されることができる。そのような場合、切断装置2は、警告メッセージの出力後に及び切断オペレーションが依然として望まれていることを実験室技術者が確認した後にのみ、作動可能にされるよう構成される。ミクロトーム刃6が光学式読取装置8によって検出可能な画像パターン9を有しない場合又は製造業者又は製品シリーズが検出された画像パターンに対応付けできない場合、対応する(相応の)方法(手順)が使用される。
【0061】
これに対し、十分な品質の薄切片がその画像パターン9が丁度読み取られたミクロトーム刃6とミクロトーム1との組み合わせによって作製できることを制御装置10が確認すると、制御装置10は切断装置2を作動可能にする(作動させる)。
【0062】
図2は、
図1に示したミクロトーム1と全く同様に実体的に構成された本発明によるミクロトームの第2実施例を極めて概略的に示す。尤も、
図2に示したミクロトーム1は、付加的に、ミクロトーム刃交換装置18を含んでおり、該ミクロトーム刃交換装置18は、ミクロトーム刃ホルダ7に存在するミクロトーム刃6の交換が必要になると、複数のミクロトーム刃が収容(ストック)されているミクロトーム刃供給コンテナ19から1つのミクロトーム刃6を取り出し、このミクロトーム刃6をミクロトーム刃ホルダ7へ移送する。
【0063】
図3は、
図2に示したミクロトーム1と全く同様に実体的に構成された本発明によるミクロトームの第3実施例を極めて概略的に示す。
【0064】
図3に示したミクロトーム1もミクロトーム刃交換装置18を含んでおり、該ミクロトーム刃交換装置18は、ミクロトーム刃ホルダ7に存在するミクロトーム刃6の交換が必要になると、複数のミクロトーム刃を収容(ストック)しているミクロトーム刃供給コンテナ19から1つのミクロトーム刃6を取り出し、このミクロトーム刃6をミクロトーム刃ホルダ7へ移送する。この場合、光学式読取装置8は、ミクロトーム刃ホルダ7への移送中に、ミクロトーム刃6から画像パターン9を読み取る。
【0065】
図4は、本発明によるミクロトーム1の第4実施例の細部、具体的には、本発明によるミクロトーム刃6の一例から画像パターン9を現在まさに読み取っている、カメラ20として構成された、光学式読取装置8を示す。光学式読取装置8は、とりわけ、バーコード又はQRコード又はロゴ又はレタリング文字として、及び/又は順次番号(シリアルナンバー)として構成される画像パターン9を読み取るよう構成されかつ配置されることができる。
【0066】
ここに、本発明の可能な態様を付記する。
[付記1]組織学的サンプルを切断して薄切片を調製するための、ミクロトーム刃を含む切断装置を有するミクロトーム。
光学的に読み取り可能な画像パターンがミクロトーム刃に配されている(形成されている)。ミクロトーム刃から該画像パターンを読み取り、読み取った画像パターンについてのアナログ又はデジタルの画像信号を生成し、該画像信号をミクロトームの制御装置へ送信する光学式読取装置が設けられている。
[付記2]上記のミクロトームにおいて、該ミクロトームは、ミクロトーム刃を切断位置において着脱可能に固定するか又は固定可能にするミクロトーム刃ホルダを含む。
[付記3]上記のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃ホルダに配されたミクロトーム刃から前記画像パターンを読み取るよう構成されかつ配置されている。
[付記4]上記のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃ホルダに組み込まれている。
[付記5]上記のミクロトームにおいて、該ミクロトームは、ミクロトーム刃供給コンテナを含む。
[付記6]上記のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃供給コンテナに配されたミクロトーム刃から画像パターンを読み取るよう構成されかつ配置されている。
[付記7]上記のミクロトームにおいて、該ミクロトームは、ミクロトーム刃供給コンテナからミクロトーム刃を取り出し、該ミクロトーム刃をミクロトーム刃ホルダへ移送するよう構成されたミクロトーム刃交換装置を含む。
[付記8]上記のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃ホルダへの移送中に、ミクロトーム刃から前記画像パターンを読み取る。
[付記9]上記のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、ミクロトーム刃交換装置に組み込まれている。
[付記10]上記のミクロトームにおいて、制御装置は、受信した画像信号を評価し、評価結果に依存して少なくとも1つの処理工程を決定する。
[付記11]上記のミクロトームにおいて、
a.前記少なくとも1つの処理工程は、切断装置をブロック(制動ないし妨害)することを含む。又は
b.前記少なくとも1つの処理工程は、ミクロトーム刃交換をブロック(制動ないし妨害)するか又は停止することを含む。
[付記12]上記のミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、切断装置に少なくとも1つの切断オペレーションを実行させることを含む。
[付記13]上記のミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、ユーザに対し入力を要求することを含む。
[付記14]上記のミクロトームにおいて、制御装置は、入力を評価し、該入力に依存して、既に決定されている処理工程を取り消し及び/又は少なくとも1つの更なる処理工程を決定する。
[付記15]上記のミクロトームにおいて、制御装置は、前記入力が到達するまで切断装置をブロックすること;又は、制御装置は、前記入力が到達するまでミクロトーム刃交換を停止する。
[付記16]上記のミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、ユーザへメッセージを出力することを含む。
[付記17]上記のミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、前記画像パターンが既に読み取られたミクロトーム刃を排出することを含む。
[付記18]上記のミクロトームにおいて、前記少なくとも1つの処理工程は、読み取った画像パターンの画像信号を記憶すること及び/又は制御装置によって確認されたミクロトーム刃に関する情報を記憶することを含む。
[付記19]上記のミクロトームにおいて、制御装置は、ミクロトーム刃がミクロトームによって利用可能であるか否かについて、前記画像信号に基づき、確認する。
[付記20]上記のミクロトームにおいて、複数の異なる画像パターンと、ミクロトーム刃がミクロトームによって利用可能であるか否かについての情報との間の対応関係が、制御装置の記憶装置に記憶されている。
[付記21]上記のミクロトームにおいて、受信した画像信号を評価するために、制御装置は、光学式読取装置から受信した画像信号と少なくとも1つの参照画像パターンの画像信号とを対比する。
[付記22]上記のミクロトームにおいて、少なくとも1つの参照画像パターンの画像信号が記憶されているか又は記憶可能な記憶装置が設けられている。
[付記23]上記のミクロトームにおいて、制御装置は、設定されるべき少なくとも1つの切断パラメータを、読み取った画像パターンの画像信号に依存して、決定する。
[付記24]上記のミクロトームにおいて、光学式読取装置は、バーコード又はQRコード又はロゴ又はレタリング文字(lettering)又は順次番号(ないしシリアルナンバー:sequential number)として構成された画像パターンを読み取るよう構成されかつ配置されている。
[付記25]上記のミクロトームにおいて、該ミクロトームは、スライド式(滑走式)ミクロトーム又は回転式ミクロトーム又はビブラトーム(振動刃ミクロトーム)又はのこぎり式(ゼーゲ)ミクロトーム(saw microtome)として構成されている。
[付記26]上記のミクロトームにおいて、制御装置は、常時的に、ログを保存する。
[付記27]上記のミクロトームにおいて、制御装置は、好ましくは常時的に、ログデータをメモリにセーブし、及び/又は、ログデータをインターフェースを介して出力し、及び/又は、ログデータを出力装置において表示する。
[付記28]上記のミクロトームにおいて、前記ログデータは、処理工程及び/又はユーザ入力及び/又は読取装置のデータ及び/又は制御装置のデータ及び/又は位置データ及び/又は時間データを含む。
[付記29]上記のミクロトームと、該ミクロトームからログデータ(log data)を受信する上位コンピュータとを含む、組織学実験室システム。
[付記30]上記の組織学実験室システムにおいて、
a.上位コンピュータは、他のミクロトームの及び/又は他の実験室装置の更なるログデータを受信する。又は
b.上位コンピュータは、他のミクロトームの及び/又は他の実験室装置の更なるログデータを受信し、その都度、同じサンプルについての前記ログデータと前記更なるログデータを相互に対応付け、これらを一緒に記憶し及び/又は更に処理する。
[付記31]とりわけ上記のミクロトームのための又は上記の組織学実験室システムのための、ミクロトーム刃(ミクロトームブレード)。該ミクロトーム刃は、光学的に読み取り可能な画像パターンが配されている(形成されている)。
[付記32]上記のミクロトーム刃において、前記画像パターンはプリントされる又は刻印される又はエッチング処理によって配される(形成される)。
[付記33]上記のミクロトーム刃において、前記画像パターンは、ミクロトーム刃の製造の時点及び/又は製造に使用される装置に関する、及び/又は製造業者に関する及び/又はナイフのタイプに関する及び/又は研磨(grind)のタイプに関する及び/又はミクロトーム刃のサイズに関する情報を含む。
[付記34]上記のミクロトーム刃において、該ミクロトーム刃は使い捨て刃として構成される。
【0067】
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【0068】
また、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【0069】
更に、本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また本発明の全開示の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択または非選択が可能である。即ち本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想に従って当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
1 ミクロトーム
2 切断装置
3 サンプル
4 手回しクランク
5 サンプルホルダ
6 ミクロトーム刃
7 ミクロトーム刃ホルダ
8 光学式読取装置
9 画像パターン
10 制御装置
11 マウント
12 コンソール
13 データケーブル
14 ディスプレイ
15 入力装置
16 インターフェース
17 記憶装置
18 ミクロトーム刃交換装置
19 ミクロトーム刃供給コンテナ
20 カメラ