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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ガラスアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20241204BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20241204BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20241204BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20241204BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
H01Q7/00
H01Q1/50
B60J1/00 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020170829
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2021064942
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019187741
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】土居 亮吉
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-139513(JP,A)
【文献】特開2007-174614(JP,A)
【文献】特開2011-234187(JP,A)
【文献】特開2005-269602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 1/22
H01Q 7/00
H01Q 1/50
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓ガラスに設けられ、ITSの電波を送受信するガラスアンテナであって、
給電側接点、及び接地側接点を有する接続端子と、
前記給電側接点及び前記接地側接点に接続される第1導電体と、
前記給電側接点と前記接地側接点とを接続するループ状の第2導電体と、
を備え、
前記第1導電体は、前記接地側接点に接続される第1部位と、前記給電側接点に接続される第2部位とを有し、前記第1部位及び第2部位は開放端を有しており、
前記第2導電体の長さ及び前記両接点間の距離の合計が、前記電波の波長の0.5~0.9倍に相当する長さである、ガラスアンテナ。
【請求項2】
車両の窓ガラスに設けられ、ITSの電波を送受信するガラスアンテナであって、
給電側接点、及び接地側接点を有する接続端子と、
前記給電側接点及び前記接地側接点に接続される第1導電体と、
前記給電側接点と前記接地側接点とを接続し、前記第1導電体の一部を共有するループ状の第2導電体と、
を備え、
前記第1導電体は、前記給電側接点と前記接地側接点とを接続するループ状に形成されている、ガラスアンテナ。
【請求項3】
車両の窓ガラスに設けられ、ITSの電波を送受信するガラスアンテナであって、
給電側接点、及び接地側接点を有する接続端子と、
前記給電側接点及び前記接地側接点に接続される第1導電体と、
前記給電側接点と前記接地側接点とを接続するループ状の第2導電体と、
を備え、
前記第1導電体は、前記第2導電体を介して前記接地側接点に接続される第1部位と、前記第2導電体を介して前記給電側接点に接続される第2部位とを有し、前記第1部位及び第2部位は開放端を有しており、
前記第2導電体の長さ及び前記両接点間の距離の合計が、前記電波の波長の0.5~0.9倍に相当する長さである、ガラスアンテナ。
【請求項4】
前記第1導電体は、前記電波の送受信の感度を調整するように構成され、
前記第2導電体は、インピーダンスのマッチング特性を調整するように構成されている、請求項1からのいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項5】
前記第1導電体の水平方向の幅は、前記第2導電体の水平方向の幅よりも長い、請求項2または4に記載のガラスアンテナ。
【請求項6】
前記第1導電体の上下方向の幅は、前記第2導電体の上下方向の幅よりも短い、請求項2、4、5のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項7】
前記第1導電体の上下方向の長さ、及び前記第2導電体の上下方向の長さが、ともに、前記電波の波長の0.01~0.2倍に相当する長さである、請求項2、4から6のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項8】
前記第1導電体の長さ及び前記両接点間の距離の合計が、前記電波の波長の0.9~1.3倍に相当する長さである、請求項1からのいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項9】
前記窓ガラスの上縁から下方へ50mmの範囲に配置されている、請求項1からのいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項10】
前記接続端子は、前記第1導電体及び前記第2導電体の水平方向の中心から、水平方向にずれた位置に配置されている、請求項1からのいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項11】
前記第1導電体の少なくとも一部は、前記接続端子よりも上方に配置され、
前記第2導電体の少なくとも一部は、前記接続端子よりも下方に配置されている、請求項1から10のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【請求項12】
前記接続端子に接続される伝送路のインピーダンスが、40~80Ωである、請求項1から11のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ITSの電波を送受信し、車両の窓ガラスに設けられるガラスアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
ETCなどのITS(Intelligent Traffic System)は、双方向通信により車両間通信や、路車間通信の送受信を行うために用いられ、車両には、この電波を送受信するためのガラスアンテナが設けられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-5711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ITSの電波の送受信の感度の向上には改良の余地があり、さらなる向上が望まれていた。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、ITSの電波の送受信の感度を向上することができる、ガラスアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1のガラスアンテナは、車両の窓ガラスに設けられ、ITSの電波を送受信するガラスアンテナであって、給電側接点、及び接地側接点を有する接続端子と、前記給電側接点及び前記接地側接点に接続される第1導電体と、前記給電側接点と前記接地側接点とを接続するループ状の第2導電体と、を備えている。
【0006】
本発明に係る第2のガラスアンテナは、車両の窓ガラスに設けられ、ITSの電波を送受信するガラスアンテナであって、給電側接点、及び接地側接点を有する接続端子と、前記給電側接点及び前記接地側接点に接続される第1導電体と、前記給電側接点と前記接地側接点とを接続し、前記第1導電体の一部を共有するループ状の第2導電体と、を備えている。
【0007】
上記ガラスアンテナにおいて、前記第1導電体は、前記給電側接点と前記接地側接点とを接続するループ状に形成することができる。
【0008】
上記ガラスアンテナにおいて、前記第1導電体は、前記電波の送受信の感度を調整するように構成することができ、前記第2導電体は、インピーダンスのマッチング特性を調整するように構成することができる。
【0009】
上記ガラスアンテナにおいて、前記第1導電体の水平方向の幅は、前記第2導電体の水平方向の幅よりも長く、前記第1導電体の上下方向の幅は、前記第2導電体の上下方向の幅よりも短く形成することができる。
【0010】
上記ガラスアンテナにおいて、前記第1導電体の上下方向の長さ、及び前記第2導電体の上下方向の長さは、ともに、前記電波の波長の0.01~0.2倍に相当する長さにすることができる。
【0011】
上記ガラスアンテナにおいて、前記第2導電体の長さ及び前記両接点間の距離の合計は、前記電波の波長の0.5~0.9倍に相当する長さにすることができる。
【0012】
上記ガラスアンテナにおいて、前記第1導電体の長さ及び前記両接点間の距離の合計が、前記電波の波長の0.9~1.3倍に相当する長さにすることができる。
【0013】
上記ガラスアンテナは、前記窓ガラスの上縁から下方へ50mmの範囲に配置することができる。
【0014】
上記ガラスアンテナにおいて、前記接続端子は、前記第1導電体及び前記第2導電体の水平方向の中心から、水平方向にずれた位置に配置することができる。
【0015】
上記ガラスアンテナにおいて、前記第1導電体の少なくとも一部を、前記接続端子よりも上方に配置し、前記第2導電体の少なくとも一部を、前記接続端子よりも下方に配置することができる。
【0016】
上記ガラスアンテナにおいて、前記接続端子に接続される伝送路のインピーダンスを、40~80Ωとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るガラスアンテナによれば、ITSの電波の送受信の感度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明にガラスアンテナが配置された窓ガラスの一部平面図である。
図2】第1ガラスアンテナを示す平面図である。
図3】第2ガラスアンテナを示す平面図である。
図4】第3ガラスアンテナを示す平面図である。
図5】第3ガラスアンテナの変形例を示す平面図である。
図6】第3ガラスアンテナの変形例を示す平面図である。
図7】第4ガラスアンテナを示す平面図である。
図8】本発明に係るガラスアンテナの他の例を示す平面図である。
図9】本発明に係るガラスアンテナの他の例を示す平面図である。
図10】本発明に係るガラスアンテナの他の例を示す平面図である。
図11】本発明に係るガラスアンテナの他の例を示す平面図である。
図12】本発明に係るガラスアンテナの他の例を示す平面図である。
図13】本発明に係るガラスアンテナの他の例を示す平面図である。
図14】比較例に係るガラスアンテナの平面図である。
図15】実施例9に係るガラスアンテナの平面図である。
図16】実施例10に係るガラスアンテナの平面図である。
図17】実施例11に係るガラスアンテナの平面図である。
図18】実施例12に係るガラスアンテナの平面図である。
図19】周波数700~800MHzのインピーダンスカーブであり、実施例13,比較例1,2の760MHzのインピーダンスを示す図である。
図20】実施例13,比較例1,2におけるインピーダンス不整合によるアンテナ感度のロスを計算したグラフである。
図21】実施例14に係るガラスアンテナの平面図である。
図22】実施例15に係るガラスアンテナの平面図である。
図23】実施例16に係るガラスアンテナの平面図である。
図24】実施例17に係るガラスアンテナの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るガラスアンテナの実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、第1ガラスアンテナが配置された車両の窓ガラスを示す平面図である。対象となる窓ガラスは、車両の窓ガラスであれば、特には限定されず、ウインドシールド、リアガラス、サイドガラス等、いずれにも配置することができる。なお、本実施形態では、4種類のガラスアンテナ、つまり第1,第2,第3,及び第4ガラスアンテナ101~104について、順に説明する(図1には、第1ガラスアンテナ101が示されている)。以下では、まず、窓ガラス200について説明し、その後、ガラスアンテナ101~104について詳細に説明する。
【0020】
<1.ガラス板>
まず、ガラスアンテナ101~104が配置される窓ガラス200について説明する。窓ガラス200は、自動車用の公知のガラス板を利用することができる。例えば、ガラス板としては、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラス、濃色のプライバシーガラス若しくはグリーンガラス、又はUVグリーンガラスが利用されてもよい。ただし、このようなガラス板は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、日射吸収率、可視光線透過率などが安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラスの組成の一例と、熱線吸収ガラス組成の一例を示す。
【0021】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al23:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23):0.08~0.14質量%
【0022】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl23)をT-Fe23、CeO2及びTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0023】
なお、ガラス板の種類は、クリアガラス又は熱線吸収ガラスに限られず、実施の形態に応じて適宜選択可能である。例えば、ガラス板は、アクリル系、ポリカーボネート系等の樹脂窓であってもよい。
【0024】
また、この窓ガラス200は、適宜、湾曲した形状に形成される。そして、このような窓ガラス200は、単一のガラス板で構成するほか、2枚のガラスにより樹脂などの中間膜を挟持した合わせガラスであってもよい。窓ガラスが、単一のガラス板である場合には、ガラスアンテナは、窓ガラス200の車内側の面に配置される。一方、窓ガラス200が、合わせガラスの場合には、車内側のガラス板の車内側の面に、ガラスアンテナ101~104を配置するほか、2枚のガラス板の間に、ガラスアンテナ101~104を配置することができる。
【0025】
<2.第1ガラスアンテナ>
次に、第1ガラスアンテナ101について、図2を参照しつつ説明する。図2は第1ガラスアンテナを示す平面図である。第1ガラスアンテナ101は、窓ガラス200の車内側の面に配置される、接続端子1、ループ状に延びる第1導電体2、及びループ状に延びる第2導電体3、を備えている。以下、これらについて詳細に説明する。なお、以下では図2の紙面における方向にしたがって説明するが、本発明はこの方向に限定されない。
【0026】
<2-1.接続端子>
接続端子1は、矩形状に形成された接地側接点11と給電側接点12とを備えており、これらが水平方向に離れた位置に配置されている。そして、これら接点11,12は、車内側に設けられた接続端子(図示省略)と接続され、同軸ケーブル(図示省略)により、車内に設けられたITS用の送受信機(図示省略)に接続されている。
【0027】
以下では、説明の便宜のため、各接点11,12において、図2の右上、左上、左下、及び右下の角部をそれぞれ、第1角部111,121、第2角部112,122、第3角部113,123、及び第4角部114,124と称することとする。
【0028】
<2-2.第1導電体>
第1導電体2は、線状の導電体をループ状に配置したものであり、その両端が、接地側接点11及び給電側接点12に、それぞれ接続されている。第1導電体2は、5つの部位21~25によって形成されている。すなわち、接地側接点11の第3角部113から左方向に水平に延びる第1部位21、この第1部位21の左端部から上方に延びる第2部位22、この第2部位22の上端から右方向に水平に延びる第3部位23、この第3部位23の右端部から下方にやや延びる第4部位24、及びこの第4部位24の下端から左方向へ水平に延び、給電側接点12の第1角部121に接続される第5部位25により形成されている。第1導電体2の線幅は、例えば、0.3~5mmとすることができる。この点は、後述する第2導電体3でも同じである。
【0029】
図2に示すように、第2部位22の上端は、両接点11,12よりも上方に配置され、これによって、第3部位23は、両接点11,12の上方を水平方向に延びている。また、第3部位23は、給電側接点12を超えて、右側に延びている。
【0030】
このように、第1導電体2は、水平方向の幅X11が長く、上下方向の幅Y11が短く形成されている。また、第1導電体2は、主として、接続端子1の上方を通過するように配置されている。
【0031】
ここで、第1導電体2のループ長L11について説明する。ここでいうループ長L11は、第1導電体2の第1~第5部位21~25の合計長さに加え、両接点11,12間の距離も含む。両接点11,12間の距離とは、両接点11,12を通過する第1導電体2の両端部の間の距離である。具体的には、接地側接点11の第3角部113から給電側接点12の第4角部124までの長さと、給電側接点12の第4角部124から第1角部121までの長さとの合計を示し、これに、第1~第5部位21~25の長さを加えたものが、第1導電体2のループ長L11として定義される。
【0032】
そして、第1導電体のループ長L11は、以下の式(1)に示すように設定されることが好ましい。
0.9*αλ≦L11≦1.3*αλ (1)
ここで、λは、ITSの電波の波長、αはガラス板の波長短縮率である。なお、ガラス板の波長短縮率αは、ガラス板の組成等によっても変更されるが、例えば、約0.5~0.7である。以上のパラメータの意味は、後述する式でも同じである。
【0033】
このように、第1導電体2のループ長L11を設定することで、電波の送受信の感度を向上することができる。なお、第1導電体2のループ長L11は、0.95*αλ以上1.25*αλ以下であることがさらに好ましい。
【0034】
また、第1導電体2の上下方向の最大長さ、つまり、この例では、第2部位22の長さY11は、以下の式(2)に示すように設定されることが好ましい。
0.01*αλ≦Y11≦0.2*αλ (2)
【0035】
<2-3.第2導電体>
第2導電体3は、線状の導電体をループ状に配置したものであり、その両端が、接地側接点11及び給電側接点12に、それぞれ接続されている。第2導電体3は、6つの部位31~36によって形成されている。すなわち、接地側接点11の第3角部113から左方向に水平に延びる第1部位31、この第1部位31の左端部から下方に延びる第2部位32、この第2部位32の下端から右方向に水平に延びる第3部位33、この第3部位33の右端部から上方に延びる第4部位34、この第4部位34の上端から左方向へ水平に延びる第5部位35、及びこの第5部位35の右端部からやや上方に延び、給電側接点12の第3角部123に接続される第6部位36により形成されている。
【0036】
図2に示すように、第1部位31は、第1導電体2の第1部位21の一部と共通であり、第1導電体2の第1部位21の右端部から中央付近までが、第2導電体3の第1部位31を兼ねている。第3部位33は、接地側接点11の下方で上下方向に延びており、第3部位33の上端部が接地側接点11に近接している。そして、第5部位35の右端部は、給電側接点12の第3角部123の下方まで延びている。
【0037】
このように、第2導電体3は、水平方向の幅X12が第1導電体2の幅X11よりも短く、上下方向の幅Y12が第1導電体2の幅Y11よりも長く形成されている。また、第2導電体3は、接続端子1よりも下方を通過するように配置されている。
【0038】
ここで、第2導電体3のループ長L12について説明する。ここでいうループ長L12は、第2導電体3の第1~第6部位31~36の合計長さに加え、両接点11,12間の距離も含む。具体的には、接地側接点11の第3角部113から給電側接点12の第3角部123までの長さを示し、これに、第1~第6部位31~36の長さを加えたものが、第2導電体のループ長L12として定義される。
【0039】
そして、第2導電体のループ長L12は、以下の式(3)に示すように設定されることが好ましい。
0.5*αλ≦L12≦0.9*αλ (3)
【0040】
このように、第2導電体3のループ長L12を設定することで、インピーダンスのマッチング特性を向上することができる。なお、第2導電体のループ長L12は、0.6*αλ以上0.8*αλ以下であることがさらに好ましい。
【0041】
また、第2導電体3の上下方向の最大長さ、つまり、この例では、第2部位32の長さY12は、以下の式(4)に示すように設定されることが好ましい。
0.01*αλ≦Y12≦0.2*αλ (4)
【0042】
<3.第2ガラスアンテナ>
次に、第2ガラスアンテナ102について、図3を参照しつつ説明する。この第2ガラスアンテナ102は、第1ガラスアンテナ101とは、接続端子1の構成が同じであるため、説明を省略する。したがって、以下では、主として、これら導電体について説明する。
【0043】
<3-1.第1導電体>
第1導電体4は、線状の導電体をループ状に配置したものであり、その両端が、接地側接点11及び給電側接点12に、それぞれ接続されている。第1導電体4は、5つの部位41~45によって形成されている。すなわち、接地側接点11の第2角部112から左方向に水平に延びる第1部位41、この第1部位41の左端部から上方にやや延びる第2部位42、この第2部位42の上端から右方向に水平に延びる第3部位43、この第3部位43の右端部から下方にやや延びる第4部位44、及びこの第4部位44の下端から左方向へ水平に延び、給電側接点12の第1角部121に接続される第5部位45により形成されている。
【0044】
図3に示すように、第3部位43は、両接点11,12の上方を水平方向に延び、給電側接点12を超えて、右側に延びている。
【0045】
このように、第2ガラスアンテナ102の第1導電体4は、第1ガラスアンテナ101の第1導電体2と比べ、水平方向の幅は同じであるが、上下方向の幅が短く形成されている。
【0046】
この第1導電体4のループ長L21は、第1ガラスアンテナ101と同様に算出され、第1~第5部位41~45の合計長さに加え、両接点11,12間の距離も含む。両接点11,12間の距離は、接地側接点11の第2角部112から給電側接点12の第1角部121までの長さであり、これに、第1~第5部位41~45の長さを加えたものが、第1導電体4のループ長L21として定義される。
【0047】
そして、第1導電体4のループ長L21は、L11と同様に上述した式(1)により設定されることが好ましい(式(1)において、L11の代わりにL21が当てはめられる)。また、さらに好ましい範囲も、同様に設定される。この点は、式第1導電体4の上下方向の長さY21についても同様であり、式(2)に当てはめることができる。
【0048】
<3-2.第2導電体>
第2導電体5は、線状の導電体をループ状に配置したものであり、その両端が、接地側接点11及び給電側接点12に、それぞれ接続されている。第2導電体5は、4つの部位51~54によって形成されている。すなわち、接地側接点11の第3角部113から左方向に水平に延びる第1部位51、この第1部位51の左端部から下方にやや延びる第2部位52、この第2部位52の下端から右方向に水平に延びる第3部位53、及び、この第3部位53の右端部から上方に延び、給電側接点12の第3角部123に接続される第4部位54により形成されている。
【0049】
図3に示すように、第1部位51は、第1導電体4の第1部位41よりは短く形成されている。第3部位53は、接地側接点11を超え、さらに給電側接点12の第3角部123の下方まで延びている。
【0050】
このように、第2導電体5は、水平方向の幅X22が第1導電体4よりも短く、上下方向の幅Y22が第1導電体4よりもやや長く形成されている。
【0051】
ここで、第2導電体5のループ長L22について説明する。ここでいうループ長L22は、第2導電体5の第1~第4部位51~54の合計長さに加え、両接点11,12間の距離も含む。具体的には、接地側接点11の第3角部113から給電側接点12の第3角部123までの長さに、第1~第4部位51~54の長さを加えたものが、第2導電体5のループ長L22として定義される。
【0052】
そして、第2導電体5のループ長L22は、L12と同様に上述した式(3)により設定されることが好ましい(式(3)において、L12の代わりにL22が当てはめられる)。また、さらに好ましい範囲も、同様に設定される。この点は、式第2導電体5の上下方向の長さY22についても同様であり、式(4)に当てはめることができる。
【0053】
<4.第3ガラスアンテナ>
次に、第3ガラスアンテナ103について、図4を参照しつつ説明する。この第3ガラスアンテナ103は、第1ガラスアンテナ101とは、接続端子1の構成が同じであるため、説明を省略する。したがって、以下では、主として、これら導電体6,7について説明する。
【0054】
<4-1.第1導電体>
第1導電体6は、線状の導電体をループ状に配置したものであり、その両端が、接地側接点11及び給電側接点12に、それぞれ接続されている。第1導電体6は、6つの部位61~66によって形成されている。すなわち、接地側接点11の第3角部113から下方に延びる第1部位61、この第1部位61の下端部から左方向に水平に延びる第2部位62、この第2部位62の左端部から上方に延びる第3部位63、この第3部位63の上端部から右方向に水平に延びる第4部位64、この第4部位64の右端部から下方へやや延びる第5部位65、及び第5部位の65の下端部から左方向に水平に延び、給電側接点12の第1角部121に接続される第6部位66により形成されている。
【0055】
図4に示すように、第3部位63の上端は、両接点11,12よりも上方に配置され、これによって、第4部位64は、両接点11,12の上方を水平方向に延びている。また、第4部位64は、給電側接点12を超えて、右側に延びている。
【0056】
このように、第1導電体6は、水平方向の幅X31が長く、上下方向の幅Y31が短く形成されている。また、第1導電体6は、主として、接続端子1の上方を通過するように配置されている。
【0057】
ここで、第1導電体6のループ長L31について説明する。ここでいうループ長L31は、第1導電体6の第1~第6部位61~66の合計長さに加え、両接点11,12間の距離も含む。具体的には、接地側接点11の第3角部113から給電側接点12の第4角部124までの長さと、給電側接点12の第4角部124から第1角部121までの長さとの合計に、第1~第6部位61~66の長さを加えたものが、第1導電体6のループ長L31として定義される。
【0058】
そして、第1導電体6のループ長L31は、L11と同様に上述した式(1)により設定されることが好ましい(式(1)において、L11の代わりにL31が当てはめられる)。また、さらに好ましい範囲も、同様に設定される。この点は、式第1導電体6の上下方向の長さY31についても同様であり、式(2)に当てはめることができる。
【0059】
<4-2.第2導電体>
第2導電体7は、線状の導電体をループ状に配置したものであり、その両端が、接地側接点11及び給電側接点12に、それぞれ接続されている。第2導電体7は、7つの部位によって形成されている。すなわち、接地側接点11の第3角部113から下方に延びる第1部位71、この第1部位71の下端部から左方向に水平に延びる第2部位72、この第2部位72の左端部から下方に延びる第3部位73、この第3部位73の下端部から右方向に水平に延びる第4部位74、この第4部位74の右端部から上方に延びる第5部位75、この第5部位75の上端部から右方向に水平に延びる第6部位76、及び第6部位の76の右端部から上方に延び、給電側接点12の下辺に接続される第7部位77により形成されている。
【0060】
図4に示すように、第1部位71は、第1導電体6の第1部位61と共通である。また、第2部位72は、第1導電体6の第2部位62と一部共通であり、第1導電体6の第2部位62の右端部から中央付近までが、第2導電体7の第2部位72を兼ねている。第5部位75は、接地側接点11の下方で上下方向に延びており、第5部位75の上端部が接地側接点11に近接している。そして、第6部位76の右端部は、給電側接点12の第3角部123の下方まで延びている。
【0061】
このように、第2導電体7は、水平方向の幅X32が第1導電体6よりも短く、上下方向の幅Y32が第1導電体7よりも長く形成されている。また、第2導電体7は、接続端子1よりも下方を通過するように配置されている。
【0062】
ここで、第2導電体7のループ長L32について説明する。ここでいうループ長L32は、第2導電体7の第1~第7部位71~77の合計長さに加え、両接点11,12間の距離も含む。具体的には、接地側接点11の第3角部113から給電側接点12の下辺に接続されている第7部位の上端までの長さに、第1~第7部位71~74の長さを加えたものが、第2導電体7のループ長L32として定義される。
【0063】
そして、第2導電体7のループ長L32は、L12と同様に上述した式(3)により設定されることが好ましい(式(3)において、L12の代わりにL32が当てはめられる)。また、さらに好ましい範囲も、同様に設定される。この点は、第2導電体7の上下方向の長さY32についても同様であり、式(4)に当てはめることができる。
【0064】
なお、この第3ガラスアンテナ103においては、例えば、図5に示すように、第1導電体6の第3部位63の長さを、第2部位62をほぼ同じ長さにし、これに合わせて第2導電体7の第5部位75の長さを調整したものとすることもできる。また、第3部位73は、図4の例よりもやや右側、つまり、第1導電体6の第2部位62のほぼ中心から下方に延びている。
【0065】
さらに、図6に示すように、第1及び第2導電体6,7に加え、第3導電体60が設けることもできる。
【0066】
図6に示すように、第3導電体60は、線状の導電体をL字状に配置したものであり、2つの部位67,68によって形成されている。すなわち、接地側接点11の第3角部113から左方向に水平に延びる第1部位67、この第1部位67の左端部から下方に延びる第2部位68により形成されている。第1部位67は、第2導電体7の第2部位72と同じ長さであり、第2部位68の下端部は、第2導電体7の第2部位72の左端部に接続されている。このように、第3導電体60は、第1導電体6及び第2導電体7の両方に接続されている。
【0067】
<5.第4ガラスアンテナ>
次に、第4ガラスアンテナ104について、図7を参照しつつ説明する。この第4ガラスアンテナ104は、第1ガラスアンテナ101とは、接続端子1の構成が同じであるため、説明を省略する。したがって、以下では、主として、これら導電体8,9について説明する。
【0068】
<5-1.第1導電体>
第1導電体8は、線状の導電体をループ状に配置したものであり、その両端が、接地側接点11及び給電側接点12に、それぞれ接続されている。第1導電体8は、6つの部位81~86によって形成されている。すなわち、接地側接点11の第3角部113から下方に延びる第1部位81、この第1部位81の下端部から左方向に水平に延びる第2部位82、この第2部位82の左端部から上方に延びる第3部位83、この第3部位83の上端部から右方向に水平に延びる第4部位84、この第4部位84の右端部から下方へやや延びる第5部位85、及び第5部位85の下端部から左方向に水平に延び、給電側接点12の第1角部121に接続される第6部位86により形成されている。
【0069】
図7に示すように、第3部位83の上端は、両接点11,12よりも上方に配置され、これによって、第4部位84は、両接点11,12の上方を水平方向に延びている。また、第4部位84は、給電側接点12を超えて、右側に延びている。
【0070】
このように、第1導電体8は、水平方向の幅X41が長く、上下方向の幅Y41が短く形成されている。また、第1導電体8は、主として、接続端子1の上方を通過するように配置されている。
【0071】
ここで、第1導電体8のループ長L41について説明する。ここでいうループ長L31は、第1導電体8の第1~第6部位81~86の合計長さに加え、両接点11,12間の距離も含む。具体的には、接地側接点11の第3角部113から給電側接点12の第4角部124までの長さと、給電側接点12の第4角部124から第1角部121までの長さとの合計に、第1~第6部位81~86の長さを加えたものが、第1導電体8のループ長L41として定義される。
【0072】
そして、第1導電体8のループ長L41は、L11と同様に上述した式(1)により設定されることが好ましい(式(1)において、L11の代わりにL41が当てはめられる)。また、さらに好ましい範囲も、同様に設定される。この点は、式第1導電体8の上下方向の長さY41についても同様であり、式(2)に当てはめることができる。
【0073】
<5-2.第2導電体>
第2導電体9は、線状の導電体をループ状に配置したものであり、その両端が、接地側接点11及び給電側接点12に、それぞれ接続されている。第2導電体9は、7つの部位によって形成されている。すなわち、接地側接点11の第3角部113から下方に延びる第1部位91、この第1部位91の下端部から左方向に水平に延びる第2部位92、この第2部位92の左端部から下方に延びる第3部位93、この第3部位93の下端部から右方向に水平に延びる第4部位94、この第4部位94の右端部から上方に延びる第5部位95、この第5部位95の上端部から右方向に水平に延びる第6部位96、及び第6部位96の右端部から上方に延び、給電側接点12の第3角部123に接続される第7部位97により形成されている。
【0074】
図7に示すように、第1部位91は、第1導電体8の第1部位81と共通である。また、第2部位92も、第1導電体8の第2部位82と共通である。したがって、第3部位93は、第1導電体8の第2部位82の右端部下方に延びている。また、第5部位95は、接地側接点11の下方で上下方向に延びており、第5部位95の上端部が接地側接点11に近接している。そして、第6部位96の右端部は、給電側接点12の第3角部123の下方まで延びている。
【0075】
このように、第2導電体9は、水平方向の幅X42が第1導電体8よりも短く、上下方向の幅Y42が第1導電体8よりもやや長く形成されている。また、第2導電体9は、接続端子1よりも下方を通過するように配置されている。
【0076】
ここで、第2導電体9のループ長L42について説明する。ここでいうループ長L42は、第2導電体9の第1~第7部位91~97の合計長さに加え、両接点11,12間の距離も含む。具体的には、接地側接点11の第3角部113から給電側接点12の第3角部123までの長さに、第1~第7部位91~97の長さを加えたものが、第2導電体9のループ長L42として定義される。
【0077】
そして、第2導電体7のループ長L42は、L12と同様に上述した式(3)により設定されることが好ましい(式(3)において、L12の代わりにL42が当てはめられる)。また、さらに好ましい範囲も、同様に設定される。この点は、第2導電体9の上下方向の長さY42についても同様であり、式(4)に当てはめることができる。
【0078】
<6.材料>
上記のような導電体2~9は、線材を組み合わせることで構成されているが、これらは導電性を有する導電性材料を窓ガラス200の表面に所定のパターンを有するように積層することで形成することができる。そのような材料としては、導電性を有していればよく、例えば、銀、金、白金等を挙げることができる。具体的には、例えば、銀粉末、ガラスフリット等を含む導電性の銀ペーストを窓ガラス200の表面に印刷し焼成することによって形成することができる。
【0079】
<7.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上記各ガラスアンテナは、2つの導電体、つまりループ状の第1導電体2,4,6,8と第2導電体3,5,7,9とを備えているため、アンテナによる送受信の感度を向上することができる。
【0080】
(2)例えば、第1導電体2,4,6,8は、水平方向の長さが、第1導電体よりも長いため、送受信の感度向上に寄与する。特に、第1導電体2,4,6,8のループ長L11,L21,L31,L41が、式(1)を充足するように設定されていると、受信感度がより向上する。
【0081】
(3)両導電体2~9の上下方向の長さが、式(2),式(4)を充足するように設定されていると、アンテナの送受信の感度を向上することができる。
【0082】
(4)上記各ガラスアンテナ101~105では、接続端子1がガラスアンテナ101~105の水平方向の中央からずれているが、これによって、感度を向上することができる。
【0083】
(5)図1に示すように、ガラスアンテナ101~105は、窓ガラス200の上端から下方へ50mm以内に配置することができる。これにより、例えば、ガラス板の周縁にセラミックスなどでマスク層を形成する場合には、マスク層上にガラスアンテナ101~105を配置することができ、車外からガラスアンテナ101~105が見えるのを防止することができる。
【0084】
(6)本発明者は、接続端子1と送受信機との間の伝送路に、同軸ケーブルに加え、導電性の部材(例えば、接続端子など)が配置されているような場合、インピーダンスの不整合が生じ、感度が低下することを見出した。これに対して、本実施形態のように、第2導電体を設けると、インピーダンスのマッチング特性が向上し、感度の低下を抑制できることを見出した。この点については、後述の実施例13において検証している。したがって、例えば、第1導電体2,4,6,8により、アンテナの送受信の感度の向上に影響を与え、第2導電体3,5,7,9により、インピーダンスのマッチング特性の向上が期待できる。また、上述したように、第2導電体の形状を調整することで(例えば、式(2)の充足等)、インピーダンスのマッチング特性の向上に寄与すると考えられる。
【0085】
<8.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0086】
ガラスアンテナの形状は種々のものが可能であり、上記実施形態に限定されるものではない。
(1)第1導電体及び第2導電体のループの形状は特には限定されない。但し、第1導電体の水平方向の幅が第2導電体よりも長いことが好ましい。また、第2導電体の上下方向の幅が、第1導電体よりも長いことが好ましい。なお、本発明における「ループ状」との文言は、2つの接点11,12を接続する導電体が、一直線で接続されているのではなく、導電体で囲まれる空間を形成されるように延びていることを意味する。そして、その空間の形状は特には限定されないため、各導電体は直線及び曲線の少なくとも一方を含む線により構成することができる。また、両接点11,12は離れているため、ループ状とは、閉じた線を意味するものではない。
【0087】
(2)第1、第3,及び第4ガラスアンテナ101,103,104のように、第1導電体と第2導電体の一部が共用されていてもよい。
【0088】
(3)図6に示した第3ガラスアンテナ103の変形例のように、第1導電体及び第2導電体に接続される付加的な導電体を少なくとも1つ設けることもできる。
【0089】
(4)第1導電体は、ループ状に形成されていなくてもよく、例えば、図8に示すように、各接点11,12から延びる直線状のアンテナエレメント81,82によって、第1導電体80を形成することができる。この場合、図6に示すように、2つアンテナエレメント81,82が互いに離れるように延びていることが好ましい。図8の例における第1導電体のアンテナ長(ループ長に相当するもの)は、X51となる。また、第1導電体を構成するアンテナエレメント81,82は、直線状以外でもよく、例えば、図9に示すように、L字状に形成されていてもよい。図9の例における第1導電体のアンテナ長は、X51+Y51*2となる。
【0090】
(5)図10に示すガラスアンテナ107のように、第1導電体810のうち、接地側接点11に接続されるアンテナエレメント81をT字状に形成し、給電側接点12に接続されるアンテナエレメント82をL字状に形成することもできる。アンテナエレメント81は、接地側接点11から上方に延びる第1部位811と、第1部位811の上端から水平に延びる第2部位812とを有している。ここで、図10に示すように、第1部位811を長くすると、接地側接点11とガラス板200の上縁201との間に、コネクタの接続などの結線用の作業スペースを確保することができる。一方、給電側接点12に接続されるアンテナエレメント82は、給電側接点12から水平に延びる第1部位821と第1部位821の端部から上方に延びる第2部位822とを有しており、L字状ではあるものの、図9で示したアンテナエレメント82とは向きが相違している。
【0091】
図11に示すガラスアンテナ108のように、第1導電体810のうち、接地側接点11に接続されるアンテナエレメント81を直線状に形成し、給電側接点12に接続されるアンテナエレメント82をL字状に形成することもできる。但し、給電側接点12に接続されるンテナエレメント82は、給電側接点12から下方に延びる第1部位821と、この第1部位821の下端部から左側に延びる第2部位822とを有しており、L字状ではあるものの、図9及び図10で示したアンテナエレメント82とは向きが相違している。以上の図8図11で示したように、第1導電体80,810を2つのアンテナエレメントで構成する場合は、各アンテナエレメントの形状や向きは適宜変更することができ、例えば、図8図11で示したアンテナエレメント81,82のいずれかを適宜組み合わせることができる。
【0092】
(6)図12に示すガラスアンテナ109は、これまで説明したガラスアンテナと比べ、主として、ガラス板200に対し面方向に傾斜して配置されている点、及び第2導電体3が第1導電体800よりも上方に配置されている点が相違する。より詳細に説明すると、図12のガラスアンテナ109は、ガラス板200の上縁201と側縁202とが交差する角部203に対し、第2導電体82が斜めに延びており、ガラス板200の角付近に三角形状の隙間を形成するように配置されている。接地側接点11と給電側接点12とは、第1部位31、第2部位32、第3部位33、第4部位34、及び第5部位35により、斜めに延びる矩形のループ状に形成された第2導電体3によって接続されている。一方、第1導電体800は、2つのアンテナエレメント81,82により形成されており、給電側接点12に接続されたアンテナエレメント81はL字状に形成されている。また、接地側接点11に接続されたアンテナエレメント82は、U字状に形成されている。
【0093】
より詳細に説明すると、給電側接点12に接続されたアンテナエレメント81は、第2導電体3の第1部位31と第2部位32との接続部分からから左側に水平に延びる第1部位811と、第1部位811の端部から下方に延びる第2部位812とを有している。第2部位812は、このガラスアンテナ109の上下方向全体にわたって延びており、且つガラス板200の側縁202に沿って配置される車体のピラー500と平行に延びている。但し、第2部位812は、ピラー500に対して角度を調整することができ、例えば、ピラー500に対する角度αを0~45度にすることができる。このように、第2部位812の角度を調整することで、第2部位812は、ピラー500の反射部材としての効果を得やすくなり、これによって、矢印X側(助手席側にアンテナが設置されるとすれば運転席側)の感度を向上させることができる。また、このガラスアンテナ109は、ガラス板200の角部300付近に配置されるため、特に角部300付近で幅の大きいマスク層に隠しやすい。このアンテナエレメント81は、第2導電体3の途中に接続されているので、第2導電体3と一部が共有されているといえる。この点は、もう一つのアンテナエレメント82においても同じである。
【0094】
一方、接地側接点11に接続されたアンテナエレメント82は、第2導電体3の第5部位35から下方に延長される第1部位821と、この第1部位821の下端部からピラー500と平行に延びる第2部位822と、第2部位822の下端部から左側へ平行に延びる第3部位823と、を有している。
【0095】
また、このガラスアンテナ109は、ガラス板の角部から水平方向に約100mm、上下方向に約100mmの範囲に配置されることが好ましい(図23参照)。この点は、他のガラスアンテナにおいても同様である。
【0096】
(7)図13に示すガラスアンテナ110は、図12に示す例と類似した形状を有しているが、図12と比べ、給電側接点12に接続されたアンテナエレメント81の第2部位812が短く、接地側接点11に接続されたアンテナエレメント82の第3部位823が長くなっている。特に、この第3部位823は、このガラスアンテナ110の左右方向全体にわたって延びており、且つガラス板200の上縁201に沿って配置される車体のルーフ600と平行に延びている。但し、第3部位823は、ルーフ600に対して角度を調整することができ、例えば、ルーフ600に対する角度βを0~45度にすることができる。このように、第3部位823の角度を調整することで、第3部位823は、ルーフ600の反射部材としての効果を得やすくなり、これによって、矢印Y側(車両前方側)の感度を向上させることができる。
【0097】
図12及び図13の例から、ガラスアンテナは、ガラス板200の面方向の回転位置は特には限定されない。また、第2導電体を第1導電体よりも上方に配置することができる。さらに、第1導電体の端部に、ガラスアンテナの上下方向または水平方向の概ね全体に渡って延びるアンテナエレメントを設けると、ピラーまたはルーフの反射部材としての効果を得やすくなり、感度を向上することができる。
【0098】
(8)ガラスアンテナを設ける位置は、特には限定されず、窓ガラス200のいずれかの位置に設けることができる。したがって、窓ガラス200の上端から50mmを離れた位置に設けることもできる。
【実施例
【0099】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0100】
<A.第2導電体の有無の検討>
以下では、上記実施形態に係るガラスアンテナのループ長について、検討する。以下の受信性能の検討に当たっては、3次元電磁界シミュレーションソフトを用いた。このシミュレーションにおいては、厚みが3.1mmの一般的な強化ガラスを想定し、ガラス板をモデリングした。また、ガラスアンテナの線幅は1mm、ガラス板の短縮率αは0.61周波数が760MHzの電波を想定したモデルとした。シミュレーションの手順としては、(1)車両、誘電体、アンテナ等をモデリングし、材質を設定、(2)車両、誘電体、アンテナ等に妥当なメッシュを設定、を行った上で、シミュレーションを実行した。このようなシミュレーションの設定及び実行は、以下に示すすべての実施例及び比較例の検討において共通である。
【0101】
実施例1,3に係るガラスアンテナは、以下の通り、図2及び図4に示す形状を有している。実施例2については、図3におけるY21とY22を同じ長さにしたものである。さらに、第1導電体の第3部位の長さを短くし、第4部位を給電側接点の第1角部に直接連結した。すなわち、第5部位をなくした。また、実施例4については、図7における第2導電体9の第3部位93の上端を、第1導電体8の第2部位82の中央付近に連結している。比較例に係る図14に示すガラスアンテナは、ループ状の第1導電体6のみを有している。そして、各ガラスアンテナのループ長を、以下の通り設定した。
【表1】
なお、表1のループ長は、α*λ(1波長)に対する割合を示している。
【0102】
シミュレーションはモーメント法を用いた。給電部11と12の間を50Ωで接続し電圧を印加し、仰角0度のアンテナの放射パターンを計算した。またインピーダンスを計算し伝送ロスを求めた。放射パターンは1度毎に計算されるため車両全周囲で360個のデータを得る。このデータを平均し伝送ロスを引き算した値を平均感度とした。偏波は垂直偏波とした。
【0103】
上記実施例1~4及び比較例に係るガラスアンテナのV偏波の平均感度は、表2に示すとおりである。なお、ここでの平均感度dBiは、無指向性アンテナを基準とした感度である。
【表2】
【0104】
表2によれば、第2導電体を有する実施例1~4は、比較例に比べて感度が高くなっていることが分かる。
【0105】
<B.第1導電体の長さ(ループ長)の検討>
次に、実施例2において、第1導電体のループ長を調整した実施例5~8を以下の表3に示すように作成し、同様にシミュレーションにより評価した。実施例2の第1導電体とは上下方向の長さは同じであるが、ループ長が相違している。すなわち、左右方向の長さが相違している。結果は、表4に示すとおりである。
【表3】
【表4】
【0106】
表3に示すように、実施例6,7の第1導電体のループ長は、式(1)を充足しているため、実施例5,8よりも感度が高くなっている。しかし、式(1)を充足していない実施例5,8であっても、比較例よりも感度は高い。
【0107】
<C.第1導電体及び第2導電体の上下方向の長さの検討>
次に、第1導電体及び第2導電体の上下方向長さを調整した実施例9,10を以下の表5に示すように作製した。実施例9に係るガラスアンテナは図15に示す形状を有し、実施例10に係るガラスアンテナは、図16に示す形状を有している。すなわち、実施例9,10に係るガラスアンテナは、ともに実施例2に類似する形状であり、各導電体のループ長は同じであるが、上下方向の長さが相違している。具体的には、実施例9,10に係るガラスアンテナは、各導電体の上下方向の長さが反対になっている。結果は、表6に示すとおりである。
【0108】
【表5】
【表6】
【0109】
表6によれば、第1導電体及び第2導電体の上下方向の長さが互いに反対である場合、感度は概ね同じであるが、第1導電体の上下方向の長さが長い実施例9の方がやや感度が低くなった。両導電体の上下方向の長さが同じである実施例2と比べても、第1導電体の上下方向の長さが長くなると、感度が低くなっている。
【0110】
<D.第1導電体及び第2導電体の左右方向の長さの検討>
次に、第1導電体及び第2導電体の左右方向長さを調整した実施例11を作製した。実施例11に係るガラスアンテナは、図17に示す形状を有しており、実施例2における第1導電体と第2導電体を入れ替え、さらに上下を反転させて各接点に接続している。したがって、実施例2とは、第1導電体及び第2導電体の左右方向長さが反対になっている。結果は、表7に示すとおりである。
【0111】
【表7】
【0112】
表7によれば、実施例2に比べ、第1導電体及び第2導電体の左右方向の長さが互いに反対である場合、感度が大きく変化することが分かった。すなわち、第2導電体の左右方向の長さが、第1導電体の左右方向の長さよりも長くなると、感度が大きく低下することが分かった。
【0113】
<E.接点の位置の検討>
続いて、両接点の位置をガラスアンテナの中央付近に配置した実施例12を作製した。実施例12に係るガラスアンテナは、図18に示す形状を有しており、実施例2とは、第2導電体の左端を第1導電体の左端と概ね同じ位置まで延ばし、さらに両接点をガラスアンテナの左右方向の中央付近に移動している。結果は、表8に示すとおりである。
【表8】
【0114】
表8によれば、両接点をガラスアンテナの左右方向の中央付近に移動した場合、実施例2に比べ、感度が大きく低下することが分かった。
【0115】
<F.伝送路に関する検討>
本発明者により、例えば、接続端子と送受信機との間の伝送路に、同軸ケーブルに加え、導電性の部材(例えば、他の接続端子、接続端子用アタッチメントなど)が配置されている場合、インピーダンスのマッチング特性が低下し、結果として感度が低下することが見出された。これについて、本発明者は、第2導電体を設けることで、このような場合でもインピーダンスのマッチング特性が向上することを見出した。以下、検討する。
【0116】
この検討のため、3つのガラスアンテナを準備した。まず、図14に示す比較例1を準備し、その給電側接点及び接地側接点の両接点に、インピーダンスが50Ωの同軸ケーブルを介して送受信機に接続した場合をシミュレーションした。比較例2として、比較例1の両接点と同軸ケーブル(インピーダンスが50Ω)との間に、接続用のアタッチメントを配置したものを準備した。実施例13として、実施例1と同じガラスアンテナを準備し、その両接点に接続用のアタッチメントを介して同軸ケーブル(インピーダンスが50Ω)を接続した。
【0117】
図19は、各ガラスアンテナのインピーダンスを表すグラフである。図19のグラフの中心が同軸ケーブルのインピーダンスの50Ωを示している。同軸ケーブルのみが伝送路の比較例1においては、この同軸ケーブルに合わせてインピーダンスを調整しており、図19に示すように、同軸ケーブルのインピーダンスにマッチしている。一方、伝送路に接続用のアタッチメントが設けられた比較例2では、そのアタッチメントの影響で、インピーダンスが50Ωから離れてしまい、マッチング特性が悪化している。これに対し、第2導電体を有する実施例13は、アタッチメントの影響を解消し、同軸ケーブルのインピーダンスにマッチしている。
【0118】
この点について、さらに検討した。図20は、各ガラスアンテナと同軸ケーブルとのインピーダンスのマッチング特性によるアンテナ感度のロスを計算したものである。図20によると、比較例1と実施例13は、インピーダンスのミスマッチによる感度のロスが概ね0dBであることが分かる。一方、比較例2は、アタッチメントの影響で、感度のロスが大きいことが分かる。したがって、伝送路に同軸ケーブル以外のアタッチメント等が入っても、実施例13をはじめとする本発明の各実施例のように第2導電体を設けることで、インピーダンスのマッチング特性が向上し、その結果、感度が低下するのが抑制されることが分かった。
【0119】
<G.第1導電体の形状及びガラスアンテナの角度に関する検討>
図21図24は、それぞれ、実施例14~17に係るガラスアンテナである。これらガラスアンテナは、図10図13のガラスアンテナと同じであるので、図21図24では、符号等の記載を省略している。実施例14の各接点は、6mm×6mmの正方形状に形成されており、実施例15~17の各接点は、20mm×14mmの長方形状に形成されている。これら実施例14~17における感度は、以下の通りである。いずれも良好な感度が得られており、第1導電体がループ状ではなく、2つのアンテナエレメントにより構成されていても、良好な感度を示している。また、実施例16,17のように、ガラスアンテナが斜めに配置されても、感度には影響していない。
【表9】
【0120】
次に、実施例15についてさらに検討を行った。すなわち、第1導電体のうち、接地側接点11に接続されたアンテナエレメントを設けない実施例18を作製した。そして、実施例15及び18について、3方向の感度を算出した。結果は、以下の通りである。表10に示すとおり、接地側接点11に接続されたアンテナエレメントを有さない実施例18は、3方向の全てにおいて実施例15よりも感度が劣っていることが分かった。
【表10】
【符号の説明】
【0121】
1 接続端子
11 接地側接点
12 給電側接点
2,4,6,8 第1導電体
3,5,7,9 第2導電体
101~104 ガラスアンテナ
200 窓ガラス
図1
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