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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】電動車両の駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20241204BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20241204BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241204BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20241204BHJP
   B60L 53/38 20190101ALI20241204BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20241204BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60W30/06
B60L50/60
B60L53/12
B60L53/38
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020173298
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064583
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕太
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-188679(JP,A)
【文献】特開2017-093129(JP,A)
【文献】国際公開第2011/132271(WO,A1)
【文献】特開2018-039293(JP,A)
【文献】特開2016-007961(JP,A)
【文献】特開2019-038296(JP,A)
【文献】特開2007-290642(JP,A)
【文献】特開2002-249047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 60/00
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の電力を蓄積する走行用バッテリと、地上設備の送電コイルから非接触で受電可能な受電コイルとを有し、前記受電コイルが受けた電力で前記走行用バッテリを充電する電動車両に搭載される電動車両の駐車支援装置であって、
前記電動車両と前記送電コイルとが水平方向に離れている状態で前記送電コイルまでの距離を検出可能な第1検出部と、
前記送電コイルの位置合せ用の励磁を前記受電コイルを介して検出する第2検出部と、
電動車両の走行の制御が可能な駐車支援制御部と、
を備え、
前記駐車支援制御部は、前記受電コイルの位置を前記送電コイルに合わせる駐車支援の際に、前記第1検出部の検出に基づき、前記送電コイルまでの距離が第1距離閾値以下となったら、前記電動車両の制限速度を、第1制限速度から当該第1制限速度よりも低速な第2制限速度に切り替える速度制御を行い、前記受電コイルの電圧が所定値より大きい場合に、前記第2検出部の検出に基づく前記電動車両の速度制御を行い、
前記駐車支援制御部は、前記第2検出部の検出に基づく速度制御において、まず、前記電動車両の制限速度を前記第2制限速度から当該第2制限速度よりも低い第3制限速度に切り替え、前記受電コイルの電圧が前記所定値よりも大きい第1閾値以上となったら、前記電動車両の制限速度を、第3制限速度から当該第3制限速度よりも低速な第4制限速度に切り替えることを特徴とする電動車両の駐車支援装置。
【請求項2】
前記速度制御には制限速度を切り替える制御が含まれ、
前記第1検出部の検出に基づき切り替えられる制限速度は、前記第2検出部の検出に基づき切り替えられる制限速度よりも速度値が大きいことを特徴とする請求項1記載の電動車両の駐車支援装置。
【請求項3】
前記送電コイルまでの距離が前記第1距離閾値以下となったときの前記電動車両の位置から、水平方向において前記電動車両が前記送電コイルに到達する位置までの距離は、前記電動車両を前記第1制限速度から前記第2制限速度へ減速するのに要する制動距離以上であり、前記受電コイルの電圧が前記所定値より大きくなったときの前記電動車両の位置から、水平方向において前記電動車両が前記送電コイルに到達する位置までの距離は、前記電動車両を前記第2制限速度から前記第3制限速度へ減速するのに要する制動距離以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動車両の駐車支援装置。
【請求項4】
記第1制限速度と前記第2制限速度との差は、前記第2制限速度と前記第3制限速度との差よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動車両の駐車支援装置。
【請求項5】
前記第1距離閾値を決定するパラメータには、前記受電コイルの取り付け位置に生じる
可能性がある最大のズレ量が含まれることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか
一項に記載の電動車両の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触充電用に電動車両の駐車を支援する電動車両の駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、地上設備の送電コイルから電動車両の受電コイルへ非接触で電力を伝送し、電動車両の走行用バッテリを充電する非接触充電システムが提案されている。非接触充電システムにおいては、受電コイルの位置を送電コイルに合わせた状態で電力を伝送する必要がある。受電コイルは電動車両に取り付けられているため、受電コイルの位置合わせは、電動車両の駐車位置の調整により行われる。
【0003】
従来、受電コイルの位置合せの際には、送電コイルを位置合せ用に弱く励磁する一方、電動車両において受電コイルを介して上記の励磁を検出し、検出された励磁の大きさに基づいて受電コイルの位置が送電コイルに合ったか否かを判定するのが通常であった。
【0004】
特許文献1には、受電コイルの位置合せの際に電動車両の速度を制御して電動車両の駐車を支援する駐車支援装置について記載されている。この駐車支援装置は、受電コイルを介して検出された送電コイルの励磁の大きさに基づいて電動車両の速度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/132271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非接触充電を行う際、スムースにかつ短時間に受電コイルを位置合わせできるように、電動車両の駐車支援が行われると好ましい。しかしながら、特許文献1の駐車支援装置のように、送電コイルの励磁の検出に基づいて電動車両の速度を制御していたのでは、電動車両が高い車速で送電コイルに近づいた場合に、急減速しないと電動車両を適正な位置で停止できないという課題が生じる。
【0007】
一方、急減速を避けるために、送電コイルの励磁が検出可能となる範囲よりはるか前から、電動車両をすぐに停止できる速度に制限すると、無駄に電動車両が低速で走行する時間が長くなり、受電コイルの位置合せに長い時間を要するという課題が生じる。
【0008】
本発明は、スムースで短時間にコイルの位置合せを行うことのできる電動車両の駐車支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
走行用の電力を蓄積する走行用バッテリと、地上設備の送電コイルから非接触で受電可能な受電コイルとを有し、前記受電コイルが受けた電力で前記走行用バッテリを充電する電動車両に搭載される電動車両の駐車支援装置であって、
前記電動車両と前記送電コイルとが水平方向に離れている状態で前記送電コイルまでの距離を検出可能な第1検出部と、
前記送電コイルの位置合せ用の励磁を前記受電コイルを介して検出する第2検出部と、
電動車両の走行の制御が可能な駐車支援制御部と、
を備え、
前記駐車支援制御部は、前記受電コイルの位置を前記送電コイルに合わせる駐車支援の際に、前記第1検出部の検出に基づき、前記送電コイルまでの距離が第1距離閾値以下となったら、前記電動車両の制限速度を、第1制限速度から当該第1制限速度よりも低速な第2制限速度に切り替える速度制御を行い、前記受電コイルの電圧が所定値より大きい場合に、前記第2検出部の検出に基づく前記電動車両の速度制御を行い、
前記駐車支援制御部は、前記第2検出部の検出に基づく速度制御において、まず、前記電動車両の制限速度を前記第2制限速度から当該第2制限速度よりも低い第3制限速度に切り替え、前記受電コイルの電圧が前記所定値よりも大きい第1閾値以上となったら、前記電動車両の制限速度を、第3制限速度から当該第3制限速度よりも低速な第4制限速度に切り替えることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動車両の駐車支援装置おいて、
前記速度制御には制限速度を切り替える制御が含まれ、
前記第1検出部の検出に基づき切り替えられる制限速度は、前記第2検出部の検出に基づき切り替えられる制限速度よりも速度値が大きいことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電動車両の駐車支援装置おいて、
前記送電コイルまでの距離が前記第1距離閾値以下となったときの前記電動車両の位置から、水平方向において前記電動車両が前記送電コイルに到達する位置までの距離は、前記電動車両を前記第1制限速度から前記第2制限速度へ減速するのに要する制動距離以上であり、前記受電コイルの電圧が前記所定値より大きくなったときの前記電動車両の位置から、水平方向において前記電動車両が前記送電コイルに到達する位置までの距離は、前記電動車両を前記第2制限速度から前記第3制限速度へ減速するのに要する制動距離以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動車両の駐車支援装置おいて、
前記第1制限速度と前記第2制限速度との差は、前記第2制限速度と前記第3制限速度との差よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動車両の駐車
支援装置おいて、
前記第1距離閾値を決定するパラメータには、前記受電コイルの取り付け位置に生じる
可能性がある最大のズレ量が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、送電コイルの励磁の検出に基づく電動車両の速度制御に加えて、駐車支援制御部は、電動車両と送電コイルとが水平方向に離れている状態で送電コイルまでの距離を検出可能な第1検出部の検出に基づいて電動車両の速度制御を行う。したがって、駐車支援制御部は、電動車両の速度を、送電コイルの励磁を検出できない離れた箇所から制御することができ、この速度制御によって、電動車両が高い車速で送電コイルに近づくことで急減速を要するといった不都合や、送電コイルのはるか手前から電動車両が無駄に低速になるといった不都合を抑制できる。そして、スムースかつ短時間に受電コイルの位置を送電コイルに合わせることのできる駐車支援を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る駐車支援装置及び電動車両を示すブロック図である。
図2】駐車支援制御部が実行する非接触充電用の駐車支援処理の前半を示すフローチャートである。
図3】駐車支援制御部が実行する非接触充電用の駐車支援処理の後半を示すフローチャートである。
図4】駐車支援制御部が実行する送電コイルまでの距離取得処理を示すフローチャートである。
図5】駐車支援処理の一例を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る駐車支援装置及び電動車両を示すブロック図である。本実施形態に係る電動車両1は、EV(Electric Vehicle)であり、駆動輪2と、駆動輪2に動力を出力する走行モータ3と、走行モータ3を駆動するインバータ4と、走行モータ3を駆動する電力を蓄積する走行用バッテリ5と、外部から供給される電力を用いて走行用バッテリ5を充電する車載充電器6と、運転支援の際に電動車両1の周囲を検出する車載カメラ8及び測距センサ9とを備える。車載カメラ8及び測距センサ9は、本発明に係る第1検出部の一例に相当する。
【0017】
さらに、電動車両1は、運転者から運転操作を受ける運転操作部21と、電動車両1の走行制御を行う走行制御部31と備える。運転操作部21は、アクセル操作部、制動操作部及び操舵操作部を含む。走行制御部31は、1つのECU(Electronic Control Unit)又は互いに連携して動作する複数のECUである。通常の走行モードの際、走行制御部31は、アクセル操作部及び制動操作部の操作量に基づきインバータ4を動作させて、走行モータ3を力行運転又は回生運転する。このような走行モータ3の運転により、運転操作に応じた電動車両1の走行が実現する。
【0018】
さらに、電動車両1は、走行用バッテリ5の非接触充電を行うための構成として、地上設備100から非接触に電力を受ける非接触受電ユニット10と、非接触充電を行う前に電動車両1の駐車支援を行う駐車支援制御部32と、駐車支援を開始させるために運転者が操作する支援開始スイッチ22とを備える。駐車支援制御部32は、1つのECU又は互いに連携して動作する複数のECUである。非接触受電ユニット10は、地上設備100の送電コイル101と電磁結合して電力を受ける受電コイル11と、地上設備100と通信可能な通信部13と、地上設備100と連携して非接触充電用の受電制御を行う受電制御部12とを含む。受電コイル11は、電動車両1の車体底部に配置される。受電制御部12は、受電コイル11に生じる電圧を検出する電圧センサを含み、本発明に係る第2検出部として機能する。
【0019】
上記の構成のうち、車載カメラ8、測距センサ9、支援開始スイッチ22、駐車支援制御部32及び受電制御部12が、本実施形態の駐車支援装置50に相当する。
【0020】
地上設備100は、電動車両1が走行可能な走行レーン内に配置された送電コイル101と、電動車両1の通信部13と無線通信を行う通信部103と、電動車両1と連携して送電制御を行う送電制御部102と、送電コイル101に交流電流を流すインバータ104とを備える。電動車両1は、地上設備100の走行レーンを走行し、受電コイル11の位置を送電コイル101に合わせることで、非接触の電力伝送を開始することができる。受電コイル11に伝送された電力は車載充電器6へ送られ、車載充電器6が走行用バッテリ5を充電(非接触充電)する。非接触充電の際、受電制御部12と送電制御部102とが通信により連携することで、電力伝送の開始と停止、伝送される電力の大きさの調整を行うことができる。
【0021】
<駐車支援処理>
続いて、非接触充電用に受電コイル11の位置を送電コイル101に合わせる駐車支援処理について説明する。図2及び図3は、駐車支援制御部が実行する非接触充電用の駐車支援処理を示すフローチャートである。図4は、駐車支援制御部が実行する送電コイルまでの距離取得処理を示すフローチャートである。
【0022】
駐車支援処理は、電動車両1が地上設備100の走行レーンに位置し、かつ、支援開始スイッチ22が操作されることで開始される。駐車支援処理が開始されると、まず、駐車支援制御部32は、地上設備100に位置合せ処理の開始を通知するよう、非接触受電ユニット10の受電制御部12へ要求を出力する(ステップS1)。この要求に基づき、受電制御部12は、通信部13を介して地上設備100に位置合せ処理の開始を通知し、この通知に基づいて地上設備100の送電コイル101に位置合せ用の弱い励磁が行われる。
【0023】
次に、駐車支援制御部32は、送電コイル101までの距離を取得する距離取得処理を実行する(ステップS2)。ステップS2又は後述のステップS5の距離取得処理では、図4に示すように、駐車支援制御部32は、車載カメラ8から映像を取り込み(ステップS21)、画像認識により映像から送電コイルの位置を検出する(ステップS22)。地上設備100において送電コイル101は予め定められたマーク等の識別体により位置が示されており、駐車支援制御部32は上記識別体を画像認識することで、送電コイル101の位置を検出できる。そして、駐車支援制御部32は、認識した位置までの距離を測距センサ9を用いて測定し(ステップS23)、送電コイル101までの距離を取得する。測距センサ9としては、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)、レーダー、ソナー等を適用できる。
【0024】
なお、送電コイル101の位置の取得方法(位置の検出方法)は、上記の例に限られない。例えば、送電コイル101の位置情報が、地上設備100の座標データとして供給され、駐車支援制御部32が、地上設備100の座標を画像認識及び測距等を利用して識別することで、電動車両1から送電コイル101までの距離を計算により求めるようにしてもよい。また、駐車支援制御部32は、送電コイル101から予め定められた距離離れて配置された物体(ポール、輪留め等)をレーダー又はソナーにより識別及び測距することで、物体から所定距離離れて位置する送電コイル101までの距離を計算により求めるようにしてもよい。
【0025】
ステップS2で距離が取得されたら、駐車支援制御部32は、取得された距離が、第1距離閾値よりも長いか判別する(ステップS3)。その結果、YESであれば、電動車両1の制限速度を第1制限速度(例えば20km/h)に設定する(ステップS4)。一方、ステップS3の判別結果がNOであれば、例外であるとして位置合せ処理を終了し、処理をエラー処理へ移行する。
【0026】
ステップS4の制限速度の設定は、駐車支援制御部32が走行制御部31へ制限速度の設定要求を行うことで実現される。制限速度の設定要求があると、走行制御部31は、設定された制限速度に従って走行制御を行う。すなわち、現在の車速(電動車両1の速度)が制限速度以下である場合、走行制御部31は、アクセル操作量が増しても、車速の上限を制限速度に制限する。また、走行制御部31は、現在の車速が制限速度より大きい場合、車速を所定のレート制御で制限速度まで落とす。所定のレート制御とは、電動車両1に急加速又は急減速を与えずに電動車両1の車速を要求車速に近づける制御であり、レート制御により。例えば30km/hの車速の状態で制限速度20km/hが設定された場合に、搭乗者が異常を感じない所定の減速度で車速が20km/hまで徐々に低下する。なお、レート制御は、走行制御部31が行ってもよいし、駐車支援制御部32が行ってもよい。
【0027】
制限速度が第1制限速度に設定されたら、次に、駐車支援制御部32は、ステップS5、S6のループ処理により、送電コイル101までの距離が第1距離閾値以下となったか判別する処理を行う。すなわち、駐車支援制御部32は、まず、送電コイル101までの距離取得処理を実行し(ステップS5)、次に、距離が第1距離閾値以下であるか判別し(ステップS6)、NOであれば処理をステップS5へ戻す。距離が第1距離閾値以下となって、ステップS6の判別結果がYESになると、駐車支援制御部32は、電動車両1の制限速度の設定を第2制限速度(例えば5km/h)に切り替える(ステップS7)。
【0028】
ステップS7の制限速度の設定は、駐車支援制御部32が走行制御部31へ制限速度の設定要求を行うことで実現される。制限速度の設定要求があると、その後、走行制御部31は設定された制限速度に従って走行制御を行う。すなわち、現在の車速が制限速度以下である場合、走行制御部31は、アクセル操作量が増しても、車速の上限を制限速度に制限する。また、走行制御部31は、現在の車速が制限速度より大きい場合、車速を上述した所定のレート制御で制限速度まで落とす。レート制御により。例えば20km/hの車速の状態で制限速度5km/hが設定された場合に、搭乗者が異常を感じない所定の減速度で車速が5km/hまで徐々に低下する。
【0029】
続いて、駐車支援制御部32は、ステップS8、S9のループ処理により、送電コイル101の位置合せ用の励磁が受電コイル11に作用する位置に到達したか判別する処理を行う。すなわち、駐車支援制御部32は、まず、受電コイル11の電圧(起電力)を受電制御部12へ問い合わせることでこの電圧値を取得し(ステップS8)、次に、受電コイル11の電圧がゼロより大きいか判別し(ステップS9)、NOであれば処理をステップS8に戻す。送電コイル101の励磁が受電コイル11に作用する上記の位置とは、鉛直方向から見て、送電コイル101と受電コイル11とに重なりが生じる位置に相当する。受電コイル11に送電コイル101の励磁が作用する位置まで電動車両1が移動し、ステップS9の判別結果がYESになると、駐車支援制御部32は、電動車両1の制限速度の設定を第3制限速度(例えば3km/h)に切り替える。制限速度の切替えにより、その後、走行制御部31は、上記と同様に、切り替えられた制限速度に従って走行制御を行う。
【0030】
制限速度を第3制限速度に切替えたら、駐車支援制御部32は、続く、ステップS10、S11のループ処理により、電動車両1が非接触の電力伝送が可能な位置に到達したか判別する処理を行う。すなわち、駐車支援制御部32は、まず、受電コイル11の電圧を受電制御部12に問い合わせることでこの電圧値を取得し(ステップS11)、次に、取得した電圧が非接触の電力伝送が可能な第1閾値以上であるか判別し(ステップS12)、NOであれば処理をステップS11に戻す。受電コイル11の中心が送電コイル101の中心に近づき、ステップS11の判別結果がYESになると、駐車支援制御部32は、電動車両1の制限速度の設定を第4制限速度(例えば1km/h)に切り替える(ステップS13)。制限速度の切替えにより、その後、走行制御部31は、上記と同様に切り替えられた制限速度に従って走行制御を行う。
【0031】
制限速度を第4制限速度に切替えたら、駐車支援制御部32は、続く、ステップS14、S15のループ処理より、電動車両1が最も効率の高い非接触の電力伝送が可能な位置に到達したか判別する処理を行う。すなわち、駐車支援制御部32は、まず、受電コイル11にの電圧を受電制御部12に問い合わせることでこの電圧値を取得し(ステップS14)、次に、取得した起電力が最大となる位置、すなわち、起電力が上昇からほぼ一定又は下降に転じる位置であるか判別し(ステップS15)、NOであれば処理をステップS14に戻す。受電コイル11が送電コイル101と最も高効率に結合する位置に達しすることで、ステップS15の判別結果がYESになると、駐車支援制御部32は、電動車両1を停止する(ステップS15)。そして、非接触充電を開始するため、受電制御部12に位置合せが完了したことを通知し、駐車支援処理を終了する。
【0032】
受電制御部12は、位置合わせが完了した通知を受けると、電動車両1を駐車及び休止させ、地上設備100に送電開始を要求し、受電及び走行用バッテリ5の充電を開始する。その後、走行用バッテリ5の充電が完了すると、受電制御部12は、地上設備100に送電終了を要求し、受電と走行用バッテリ5の充電を終了する。
【0033】
<駐車支援処理の動作例>
図5は、非接触充電用の駐車支援処理の一例を説明するタイミングチャートである。上述の駐車支援処理によれば、図5の車速の欄に示すように、電動車両1は地上設備100の走行レーンにおいて急な減速を要さずにスムースかつ短時間に電動車両1を走行させ、受電コイル11の位置を地上設備100の送電コイル101に合わせることができる。
【0034】
すなわち、電動車両1が送電コイル101から未だ遠く、駐車支援を開始した直後の期間T1には、地上設備100の走行レーンに進入する際の通常の速度(約30km/h以下)から容易に減速できる第1制限速度(例えば20km/h)に制限速度が設定される。この期間T1に、電動車両1は、急な減速なく制限速度まで車速を低減できる。
【0035】
次に、電動車両1が送電コイル101から第1距離閾値まで近づくと(タイミングt1)、制限速度が第2制限速度(5km/h)に切り替えられる(期間T2)。ここで、第1距離閾値は、次のように設定されている。すなわち、電動車両1が第1距離閾値に到達したタイミングt1の位置から、水平方向において電動車両1が送電コイル101に到達するタイミングt2の位置までの距離が、第1制限速度から第2制限速度に減速を要する制動距離よりも長くなるように設定されている。
【0036】
ここで、上記の「水平方向において電動車両1が送電コイル101に到達する位置」とは、鉛直方向に見て、電動車両1の先端が送電コイル101と重なり始める位置に相当する。この位置は、受電コイル11に送電コイル101の励磁がまだ作用しない位置に相当する。上記の「第1制限速度から第2制限速度への減速に要する制動距離」とは、駐車支援で搭乗者に異常を感じさせない減速度として規定される最も大きな減速度で第1制限速度から第2制限速度へ減速できる制動距離を意味する。
【0037】
上記のような第1距離閾値の設定により、次のような作用が奏される。すなわち、図5の車速の欄の実速度のラインに示すように、電動車両1が第1距離閾値に達したタイミングt1で、仮に、電動車両1の実速度が第1制限速度のままであった場合でも、その後、駐車支援で規定される異常を感じさせない最大の減速度で電動車両1が減速した場合に、電動車両1が送電コイル101に達する前に、電動車両1の車速を第2制限速度まで低下することができる。したがって、その後、送電コイル101と受電コイル11とが近づいて受電コイル11に電圧が生じ始めるタイミングまでには、電動車両1の車速が第2制限速度以下になることが保証される。
【0038】
さらに、第2制限速度は、第3制限速度に近い速度に設定されている。したがって、その後、送電コイル101と受電コイル11とが重なり、電動車両1の細かな位置調整が行われる期間T3、T4には、速やかに電動車両1の車速を第3制限速度、続いて第4制限速度へと落とすことができる。そして、このような低速の速度制御により、細かな受電コイル11の位置合わせが可能となる。
【0039】
なお、第1距離閾値の設定は、次のように変更されてもよい。例えば、受電コイル11が、電動車両1の規定位置に取り付けられる一方、受電コイル11の取り付け位置に最大でズレ量αが生じる可能性があるとする。さらに、ここで、受電コイル11が規定位置に取り付けられていると仮定したときに、電動車両1が第1距離閾値に達した位置から受電コイル11が送電コイル101に重なり始める位置までが距離Lであるとする。このような場合、距離Lに最大のズレ量αを減じた長さ(L-α)が、上述の減速度で第1制限速度から第2制限速度まで減速できる制動距離以上となるように、第1距離閾値が設定されてもよい。このような設定によれば、受電コイル11の取り付け位置にズレが生じても、電動車両1が第1距離閾値に達してから、後に受電コイル11の電圧が検出されるまでに、電動車両1を第1制限速度から第2制限速度まで搭乗者に異常を感じさせずに減速することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の駐車支援装置50及び電動車両1によれば、送電コイル101の位置合わせ用の励磁を受電コイル11を介して検出する受電制御部12と、電動車両1と送電コイル101とが水平方向に離れている状態で送電コイル101までの距離を検出可能な車載カメラ8及び測距センサ9と、を備える。そして、駐車支援制御部32は、受電コイル11の位置合わせの際に、送電コイル101の励磁の検出に基づく電動車両1の速度制御に加え、車載カメラ8及び測距センサ9による送電コイル101までの距離の検出に基づいて電動車両1の速度制御を行う。したがって、送電コイル101の励磁を検出できない離れた箇所から電動車両1の速度制御が可能となり、電動車両1が高い車速で送電コイル101に近づくことで急減速を要するといった不都合や、送電コイル101のはるか手前から電動車両1が無駄に低速になるといった不都合を抑制し、スムースで短時間に受電コイルの位置を送電コイルに合わせることのできる駐車支援を実現できる。
【0041】
さらに、本実施形態の駐車支援装置50及び電動車両1によれば、電動車両1の速度制御には、制限速度を切替える制御が含まれる。また、車載カメラ8及び測距センサ9による送電コイル101までの距離の検出に基づいて切り替えられる制限速度(第1制限速度及び第2制限速度)の速度値は、送電コイル101の励磁の検出に基づき切り替えられる制限速度(第3制限速度及び第4制限速度)の速度値よりも大きい。このような制限速度の切替えにより、電動車両1が送電コイル101から離れているときには電動車両1が速やかに移動可能な速度制御が実現され、短時間での駐車支援を実現できる。
【0042】
さらに、本実施形態の駐車支援装置50及び電動車両1によれば、車載カメラ8及び測距センサ9による送電コイル101までの距離の検出に基づき、電動車両1から送電コイル101までの距離が第1距離閾値以下となったら、電動車両1の制限速度を第1制限速度からそれよりも低速な第2制限速度に切り替える。この制限速度の切替えにより、電動車両1が送電コイル101に近接するまでに、電動車両1を低い車速までスムースに減速することが可能となる。さらに、この減速により、続いて、電動車両1を、受電コイル11の細かな位置調整を可能とする、より低い車速まで、短い距離で減速することも容易となる。さらに、このような車速の制御を、複雑な制御動作を要せずに、距離に基づく制限速度の切替えといった少ない制御動作で実現することができる。
【0043】
さらに、本実施形態の駐車支援装置50及び電動車両1によれば、電動車両1が第1距離閾値に達してから、電動車両1が送電コイル101に到達するまでの距離が、第1制限速度から第2制限速度へ減速できる制動距離以上になるように第1距離閾値が設定されている。したがって、受電コイル11が電動車両1の前寄り又は後寄りなどいずれの位置に取り付けられていても、受電コイル11と送電コイル101とが重なり始めるよりも前に、電動車両1を第2制限速度まで減速することが可能となる。よって、受電コイル11の一部が送電コイル101と重なって電動車両1をより減速する必要が生じた際に、急激な減速が生じてしまうという状況をより抑制することができる。
【0044】
さらに、本実施形態の駐車支援装置50及び電動車両1によれば、電動車両1が送電コイル101に近接する前に切り替えられる第2制限速度の速度値が、それ以前に設定されていた第1制限速度よりも、送電コイル101に近接した後に切り替えられる第3制限速度に近い。すなわち、第1制限速度と第2制限速度との差が、第2制限速度と第3制限速度との差よりも大きい。このような制限速度の設定により、受電コイル11が送電コイル101に近接する際には、既に電動車両1の車速が第3制限速度に近い速度まで低下しているので、その後の受電コイル11の細かな位置調整の処理にスムースに移行することが可能となる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、送電コイルまでの距離を検出可能な第1検出部として、車載カメラ8と測距センサ9とを示したが、これらに限られず、離れた位置から送電コイルまでの距離が検出可能であれば、レーダー又はソナーなどの様々な検出器が適用されてもよい。また、上記実施形態では、電動車両の速度制御を、制限速度の切替えによって実現する例を示した。しかし、電動車両の速度制御には電動車両の実速度を直接に減速させる減速制御が含まれてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 電動車両
2 駆動輪
3 走行モータ
4 インバータ
5 走行用バッテリ
6 車載充電器
8 車載カメラ(第1検出部)
9 測距センサ(第1検出部)
10 非接触受電ユニット
11 受電コイル
12 受電制御部(第2検出部)
13 通信部
21 運転操作部
22 支援開始スイッチ
31 走行制御部
32 駐車支援制御部
100 地上設備
101 送電コイル
102 送電制御部
103 通信部
104 インバータ
図1
図2
図3
図4
図5