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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】画像形成システム、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/06 20060101AFI20241204BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241204BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20241204BHJP
   B65H 3/46 20060101ALI20241204BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B65H7/06
G03G21/00 510
G03G21/00 386
B65H3/06 A
B65H3/46 D
G03G15/00 405
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020196336
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2021091551
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019224024
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正季
(72)【発明者】
【氏名】矢野 崇史
(72)【発明者】
【氏名】潮津 英大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅人
(72)【発明者】
【氏名】荻野 康介
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-193767(JP,A)
【文献】特開2015-212789(JP,A)
【文献】特開2015-067397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/06
G03G 21/00
B65H 3/06
B65H 3/46
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置と画像形成装置とを有する画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
記録材を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録材を給紙する給紙手段と、
前記給紙手段により給紙された記録材を検知する検知手段と、
所定のタイミングから前記検知手段が前記記録材を検知するまでの時間を測定する測定手段と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記画像形成装置から前記測定手段によって測定された時間データを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した複数の前記時間データを、時間の長さに応じて第1グループと第2グループに分類する分類手段と、
前記分類手段により分類された前記第1グループと前記第2グループから、前記給紙手段の寿命を予測するためのグループを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたグループに含まれる前記時間データを用いて、前記給紙手段の寿命を予測する予測手段と、を有することを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記選択手段は、前記時間データが前記第2グループよりも大きい前記第1グループを選択することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記予測手段は、前記選択手段により選択されたグループに含まれる前記時間データに線形回帰モデルを用いることで、前記給紙手段の寿命を予測することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、更に、
前記受信手段で受信した複数の前記時間データの傾向変化を判定する傾向変化判定手段を有し、
前記分類手段は、前記傾向変化判定手段により前記時間データの傾向変化があると判定された時点以降の時間データを前記第1グループと前記第2グループに分類することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記傾向変化判定手段は、前記受信手段で受信した複数の前記時間データにおいて、所定の時間内の前記時間データの平均値の変化量が予め定めた値よりも大きい場合に前記傾向変化があると判定することを特徴とする請求項に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記画像形成装置は更に、
前記収容手段に収容されている記録材の量を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記記録材の量に応じて、前記測定手段により測定された前記時間データを補正する補正手段とを有し、
前記検出手段は、前記収容手段に収容されている前記記録材を給紙可能な給紙位置まで上昇させる上昇手段と、前記上昇手段により上昇された前記記録材を検知する記録材検知手段とを有し、
前記検出手段は、前記上昇手段により前記記録材の上昇を開始してから前記記録材検知手段が当該記録材を検知するまでの時間に基づいて前記収容手段に収容されている前記記録材の量を検出し、
前記上昇手段は、前記収容手段に収容されている前記記録材の量に応じて前記給紙位置にある前記記録材の先端位置が異なるよう揺動することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記給紙手段は、前記収容手段に収容された記録材を給送するための給送部材と、前記給送部材によって給送された記録材を搬送するための搬送部材と、前記搬送部材と分離ニップ部を形成し、複数枚の記録材を1枚に分離するための分離部材と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記測定手段は、前記給紙手段による記録材の給紙開始タイミングから前記検知手段が前記記録材を検知するまでの時間を測定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記画像形成装置は情報を表示するための表示手段を有し、
前記予測手段による前記給紙手段の寿命の進行度合いに従って、前記表示手段は前記給紙手段の寿命の進行度合いを示す情報を表示することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項10】
画像形成装置であって、
記録材を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録材を給紙する給紙手段と、
前記給紙手段により給紙された記録材を検知する検知手段と、
所定のタイミングから前記検知手段が前記記録材を検知するまでの時間を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定された複数の時間データを、時間の長さに応じて第1グループと第2グループに分類する分類手段と、
前記分類手段により分類された前記第1グループと前記第2グループから、前記給紙手段の寿命を予測するためのグループを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたグループに含まれる前記時間データを用いて、前記給紙手段の寿命を予測する予測手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置は、記録材(シート)を積載する積載部と、積載部に積載されたシートを搬送する給紙機構とを備える。この給紙機構では給紙ローラを使用し、その給紙ローラの回転により、積載されているシートを1枚ずつ送り出す構成が一般的である。給紙ローラは、シートの繰り返し搬送による表面の摩耗や劣化、紙粉の付着により、その搬送性能が低下するため、給紙ローラは消耗品として扱われ、ユーザやサービスマンにより交換される。そこで、給紙ローラの回転開始から、搬送路下流に設けられたセンサにシートが到着するまでの時間(以下、給紙時間)を測定し、その搬送遅れ(以下、給紙遅延)の発生率が所定の閾値を超えると、給紙ローラを交換する必要があることを報知する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-100181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、給紙遅延の発生率が所定の閾値を超えるまで、給紙ローラの状態を把握することができない。従って、給紙ローラの交換時期を早期に把握したり、交換時期に到達する前に、給紙ローラの使用環境を改善するなどが難しい。
【0005】
本発明の目的は、給紙手段の使用状況に基づき、給紙手段の寿命を予測する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像形成システムは以下のような構成を備える。即ち、
情報処理装置と画像形成装置とを有する画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
記録材を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された記録材を給紙する給紙手段と、
前記給紙手段により給紙された記録材を検知する検知手段と、
所定のタイミングから前記検知手段が前記記録材を検知するまでの時間を測定する測定手段と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記画像形成装置から前記測定手段によって測定された時間データを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した複数の前記時間データを、時間の長さに応じて第1グループと第2グループに分類する分類手段と、
前記分類手段により分類された前記第1グループと前記第2グループから、前記給紙手段の寿命を予測するためのグループを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたグループに含まれる前記時間データを用いて、前記給紙手段の寿命を予測する予測手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、給紙手段の使用状況に基づき、給紙手段の寿命を予測することにより、給紙手段の交換時期の早期把握を行うことができるという効果がある。
【0008】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。尚、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】実施形態1に係る、中間転写ベルトを採用して複数の画像形成部を並列に備える画像形成装置の概略構成図。
図2】実施形態1に係る画像形成装置における給紙動作を説明する概略断面図。
図3図2に示すような搬送機構で記録材Sの給紙動作を繰り返したときの給紙時間の推移の一例を示す図。
図4】実施形態1に係る画像形成装置のハードウェア構成と、画像形成装置を含む画像形成システムの構成を説明するブロック図。
図5】実施形態1に係るエンジン制御部及び寿命制御部の機能を説明する機能ブロック図。
図6】実施形態1における給紙枚数と給紙時間の一例を示す図。
図7】実施形態1における給紙時間のプロファイルを示すグラフ図。
図8】実施形態1に係る画像形成装置において給紙ローラの寿命を求める処理を説明するフローチャート。
図9】実施形態2における給紙時間の集合を示すグラフ図。
図10】実施形態2に係るエンジン制御部及び寿命制御部の機能を説明する機能ブロック図。
図11】実施形態2に係る画像形成装置において給紙ローラの寿命を求める処理を説明するフローチャート。
図12】実施形態3における実給紙時間データの集合の一例を示すグラフ図。
図13】実施形態3に係るエンジン制御部及び寿命制御部の機能を説明する機能ブロック図。
図14】実施形態3に係る画像形成装置において給紙ローラの寿命を求める処理を説明するフローチャート。
図15】実施形態4に係る、中間転写ベルトを採用して複数の画像形成部を並列に構成した画像形成装置の概略構成図。
図16】実施形態4に係る画像形成装置における記録材Sの残量検知動作を説明する概略断面図。
図17】実施形態4に係る画像形成装置のハードウェア構成と、画像形成装置を含む画像形成システムの構成を説明するブロック図。
図18】実施形態4に係るエンジン制御部及び寿命制御部の機能を説明する機能ブロック図。
図19】実施形態4に係る画像形成装置において、給紙動作を繰り返し行い、給紙カセット内に積載された記録材Sが無くなる度に記録材Sを補充した際の給紙時間の推移の一例を示す図。
図20】実施形態4に係る画像形成装置における、記録材の量に応じた記録材先端位置を示す断面図。
図21】実施形態4における給紙時間データの一例を示すグラフ図。
図22】実施形態4に係る画像形成装置において給紙ローラの寿命を求める処理を説明するフローチャート。
図23】文字列により通知例、信頼性の判定基準、傾向変化の判定基準、及び記録材の量に応じた給紙時間データの補正テーブルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これら複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。以下の実施形態では、電子写真方式の画像形成装置を例に説明する。
【0011】
図1は、実施形態1に係る、中間転写ベルトを採用して複数の画像形成部を並列に備える画像形成装置100の概略構成図である。
【0012】
画像形成装置100は、タンデム式のカラーレーザビームプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせることでカラー画像を形成(印刷)できる。図1において、各色に対応する画像形成部の構成は、参照番号に添え字Y、M、C、Kを付して示している。尚、以下の説明において、特にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを区別する必要のない部材の説明では、説明の便宜上、符号の添え字のY、M、C、Kを省略して説明する。
【0013】
プロセスカートリッジ5は、それぞれトナー容器6、像担持体である感光体ドラム1、帯電ローラ2、現像ローラ3、ドラムクリーニングブレード4、及び廃トナー容器7を有している。プロセスカートリッジ5の下方にはレーザユニット8が配置され、レーザユニット8は、画像信号に基づく露光を感光体ドラム1に対して行う。感光体ドラム1は、帯電ローラ2に所定の負極性の電圧を印加することで、その表面が所定の負極性の電位に帯電された後、レーザユニット8によって、各色に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像ローラ3に所定の負極性の電圧を印加することで反転現像されて感光体ドラム1上に、それぞれY、M、C、Kのトナー像が形成される。尚、実施形態1で使用するトナーは、負極性に帯電されている。
【0014】
中間転写体ユニットは、中間転写体11、駆動ローラ12、テンションローラ13、対向ローラ15を有している。また、感光体ドラム1に対向して、中間転写体11の内側に一次転写ローラ10が配設されており、一次転写ローラ10には、不図示の電圧印加手段により転写電圧が印加される。感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム及び中間転写体11が矢印方向に回転し、更に一次転写ローラ10に正極性の電圧を印加することにより、中間転写体11上に一次転写される。感光体ドラム1上のトナー像はY、M、C、Kの順に、中間転写体11上に一次転写され、4色のトナー像が重なった状態で二次転写ローラ14まで搬送される。
【0015】
給紙機構20は、シート状の記録材Sを積載して収容する給紙カセット21内から記録材Sを給紙する給紙ローラ22と、給紙された記録材Sを搬送する搬送ローラ23及び記録材Sを1枚ずつ分離搬送する分離ローラ24とを有している。そして、給紙機構20から搬送された記録材Sは、レジストローラ対25によって二次転写ローラ14に搬送される。中間転写体11から記録材Sへトナー像を転写するために、二次転写ローラ14に正極性の電圧を印加する。これにより、搬送されている記録材Sに、中間転写体11上のトナー像が二次転写される。こうしてトナー像が転写された記録材Sは定着装置30に搬送され、定着装置30の定着フィルム31と加圧ローラ32とによって加熱、加圧され、その記録材Sの表面にトナー像が定着される。こうして画像が定着された記録材Sは、排紙ローラ対33によって排出される。
【0016】
このとき画像形成装置は、搬送路センサ27を用いて記録材の早着或いは遅延やジャムなどの搬送異常が発生したかどうかを判定する。そして搬送異常が発生したと判定した場合、不図示の表示部に搬送異常が発生したことを通知する表示を行う。また、必要に応じて搬送異常を解消するための手法などを表示する。
【0017】
次に実施形態1に係る給紙機構20について図2を参照して詳しく説明する。
【0018】
図2は、実施形態1に係る画像形成装置100における給紙動作を説明する概略断面図である。
【0019】
図2(A)は、給紙カセット21に収容された最上位に位置する記録材S1を給紙するタイミングにおける、給紙機構の断面図である。給紙カセット21内の記録材S1は、給紙カセット21内の後端規制板26によって位置決めされ、記録材S1を給紙する際の先端はPsで示す位置にある。給紙動作が開始されると、給紙ローラ22、搬送ローラ23がそれぞれ回転し、記録材S1は、給紙ローラ22と記録材S1との間の摩擦により図2(A)の右方向(給紙方向)に移動を始める。その後、記録材S1は、搬送ローラ23と分離ローラ24で形成する分離ニップPnに到達する。
【0020】
このとき図2(B)に示すように記録材S1とS2の間でも摩擦力が生じ、記録材S2も移動する場合がある。この分離ニップPnは、給紙ローラ22の回転によって2枚以上の記録材S1,S2が分離ニップPnに搬送されてきたときに記録材S2を分離し、1枚の記録材S1だけ下流に送る機能を有している。分離ローラ24には不図示のトルクリミッタが接続されており、記録材S1の搬送方向とは逆方向に抵抗力としてのトルクが与えられている。このトルクは、分離ニップPnに記録材Sが1枚だけある時には分離ローラ24が搬送ローラ23に従動して回転し、分離ニップPnに記録材Sが2枚入ると停止するよう設定されている。よって、分離ニップPnで記録材を1枚ずつ下流に搬送することができる。
【0021】
その後、更に給紙ローラ22、搬送ローラ23が回転を続けると記録材S1はレジストローラ対25を通過し、図2(C)に示すように記録材S1の先端は搬送路センサ27によって検知される位置Prに到達する。この給紙動作の開始から記録材S1が搬送路センサ27に到達するまでの時間が給紙時間である。
【0022】
図3は、図2に示すような搬送機構で記録材Sの給紙動作を繰り返したときの給紙時間の推移の一例を示す図である。
【0023】
図3に示すように、記録材Sの給紙動作を繰り返すと、給紙時間が全体的に長くなる傾向にある。これは、記録材の給紙動作を繰り返すことで、給紙ローラ22が摩耗し、給紙ローラ22と記録材との摩擦力が低下するためである。また前述した通り、分離ニップPnから給紙を開始する場合は給紙時間が短くなり、給紙カセット21内の記録材の先端Psの位置から給紙開始する場合は給紙時間が長くなる。
【0024】
図4は、実施形態1に係る画像形成装置100のハードウェア構成と、画像形成装置100を含む画像形成システムの構成を説明するブロック図である。このシステムは、ホストコンピュータ400、画像形成装置100及びサーバ(情報処理装置)410を含んでいる。ホストコンピュータ400は、ネットワークを介して画像形成装置100へプリントを指示する本体部401と、ユーザの操作を受け付けるとともにユーザに対する表示を行う操作表示部402とを有する。ここで、ホストコンピュータ400が有する操作表示部402には、不図示のタッチパネル機能を有するディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイス等が含まれる。
【0025】
画像形成装置100は、ビデオコントローラ430と操作表示部431とプリンタエンジン420を有する。画像形成装置100が有する操作表示部431には、不図示のオペレーションパネルや操作ボタンなどが含まれる。ビデオコントローラ430は、ホストコンピュータ400から送信された印刷データやプリント指示をプリンタエンジン420に送信する。プリンタエンジン420は、CPU422とROM423とRAM424とを含むエンジン制御部421と、システムバス425、IOポート426を有している。CPU422は、ROM423に記憶されているプログラム及び各種データをRAM424に展開し、RAM424を作業領域とすることでプログラムを実行する。前述した構成要素は、双方向にアクセス可能なシステムバス425を介してIOポート426へアクセス可能となっている。IOポート426には、搬送路センサ27、給紙モータ90、給紙ソレノイド91が接続されている。CPU422は、IOポート426を介してこれらの装置を制御する。尚、このIOポート426に接続される装置は実施形態1の構成に限定されるものではない。
【0026】
サーバ410は、演算装置412と記憶装置413とを含む寿命制御部411を有し、画像形成装置100と双方向にアクセス可能なネットワークで接続されている。演算装置412は、記憶装置413に保存されたプログラムの実行や、各種データの読み書きを行う。演算装置412はCPUやGPU、記憶装置413にはRAM、HDDやSSDなどを直接割り当てても良いし、仮想マシンなどの仮想環境を割り当てても良い。寿命制御部411は、ビデオコントローラ430を経由することで、エンジン制御部421と情報の送受信を行うことが可能である。
【0027】
次に実施形態1に係るエンジン制御部421及び寿命制御部411の機能を図5を参照して説明する。尚、エンジン制御部421の機能は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行することにより実現される。また寿命制御部411の機能は、サーバ410の演算装置412が記憶装置413に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。エンジン制御部421は、給紙制御に関わる機能、給紙時間の測定に関わる機能を有し、寿命制御部411は、給紙機構の寿命の予測に関わる機能を有する。それぞれ順に説明する。
【0028】
図5は、実施形態1に係るエンジン制御部421及び寿命制御部411の機能を説明する機能ブロック図である。
【0029】
エンジン制御部421は、給紙制御に関わる機能として、給紙部501、駆動部502を有する。プリンタエンジン420がプリント指示を受けると、給紙部501は駆動部502に給紙動作を指示する。駆動部502は、給紙部501の指示に従って、給紙モータ90を回転駆動することで、搬送ローラ23及び分離ローラ24を回転させる。更に、給紙開始のタイミングで、給紙ソレノイド91を駆動することで、給紙ローラ22を1回転させる。この動作により、給紙カセット21内で押し上げられた記録材Sが1枚ずつ分離給紙され、搬送路センサ27まで搬送される。
【0030】
次に、給紙時間の測定に関わる機能として、測定部503、検知部504を有する。測定部503は、給紙部501が給紙動作を指示したタイミングから、記録材Sの先端が搬送路センサ27に到達するまでの時間を測定する。この測定は記録材Sを1枚給紙する毎に行われ、その測定された時間は給紙時間データとしてRAM424に保存される。この測定部503は、例えばCPU422に内蔵されたタイマを時間を測定する測定手段として用いている。RAM424に保存された給紙時間データは、ビデオコントローラ430を経由して寿命制御部411の記憶装置413にも保存される。検知部504は、搬送路センサ27からの入力信号に基づき、記録材Sの先端が搬送路センサ27に到達したことを検知する。
【0031】
寿命制御部411は、給紙機構の寿命の予測に関わる機能として、寿命算出部510を有する。寿命算出部510は、分類部511、選択部512、予測部513を有する。分類部511は、記憶装置413に保存された給紙時間データの集合を所定の基準に基づき複数の部分集合に分類する。実施形態1では、図6に示すように遅延側データ集合と早着側データ集合に分類する。
【0032】
図6は、実施形態1における給紙枚数と給紙時間の一例を示す図である。
【0033】
実施形態1では、給紙時間が1250ms以上を遅延側データとし、給紙時間が1250ms未満を早着側データとしている。
【0034】
選択部512は、分類部511によって分類された部分集合から、給紙機構の寿命算出に用いる部分集合を選択する。実施形態1では、遅延側データ集合を選択する。そして、予測部513は、選択部512によって選択された部分集合に基づき、給紙枚数に応じた給紙時間の推移を表す給紙時間プロファイルPFを予測する。一般に、給紙ローラが摩耗するに従って給紙時間が長くなるため、給紙時間の変化から給紙ローラの寿命を予測することが可能である。
【0035】
図7は、実施形態1における給紙時間のプロファイルを示すグラフ図である。
【0036】
実施形態1では、図7に示すように遅延側データ集合から上位10%のデータを抽出し、線形回帰モデルに当てはめることで給紙時間プロファイルPFを取得する。実施形態1における給紙時間プロファイルPFは、Psから給紙を開始したときの給紙時間を予測したものであり、xを給紙枚数、tを給紙時間、αを傾き、βを切片としたとき式(1)で示すような一次関数で表される。
【0037】
PF:t=αx+β …式(1)
この式(1)において、α,βは線形回帰モデルに当てはめることで決定されるパラメータであり、図6では、α=70/300000、β=1380である。この給紙時間プロファイルPFを用いることにより、給紙枚数に応じた給紙時間の推移を予測することができる。
【0038】
寿命算出部510は、Psから給紙を開始した場合の最大給紙時間Tsと、給紙時間プロファイルPFにより取得される給紙時間tに基づき、式(2)を用いて給紙ローラ22の寿命Lを取得する。その後、取得した給紙ローラの寿命Lをビデオコントローラ430に通知する。
【0039】
L(%)=(1-t/Ts)×100 …式(2)
尚、実施形態1における給紙時間tの単位はms、給紙枚数xの単位は枚、給紙ローラの寿命Lの単位は%である。また実施形態1では、Ts=1500msであり、Psから給紙を開始した場合に搬送を行うことが可能な最大時間を予め定めたものである。
【0040】
次に、実施形態1におけるエンジン制御部421及び寿命制御部411の動作を図8のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
図8は、実施形態1に係る画像形成装置100において給紙ローラ22の寿命を求める処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行し、寿命制御部411と協業することにより実現される。
【0042】
この処理は、プリンタエンジン420がプリント指示を受け取ることにより開始され、まずS801でCPU422は、給紙部501、駆動部502による給紙動作を開始して記録材Sの搬送を開始する。次にS802に進みCPU422は、給紙枚数を計数するx(RAM424に設けられている変数)を+1する。次にS803に進みCPU422は、測定部503、検知部504による給紙時間の測定を行う。即ち、搬送路センサ27からの入力信号に基づき、記録材Sの先端が搬送路センサ27に到達した時間を求め、その時間から給紙動作を開始したときの時間を差し引くことで給紙時間データを取得する。CPU422は取得した給紙時間データを寿命制御部411へ送信する。そしてS804に進み演算装置412は、受信した給紙時間データを記憶装置413に保存する。
【0043】
次にS805に進み演算装置412は寿命算出部510として機能し、S804で保存した給紙時間データの集合が所定量以上になったかどうか判定し、所定量以上でなければS811に進むが、所定量以上であればS806に進み演算装置412は分類部511として機能し、RAM424に保存された給紙時間データの集合を遅延側データ集合と早着側データ集合とに分類する。そしてS807に進み演算装置412は選択部512として機能し、図6を参照して前述したように、給紙ローラの寿命の予測に用いる給紙時間データの集合を選択する。尚、実施形態1における所定量は給紙枚数が500枚分のデータであり、選択する給紙時間データの集合は遅延側データ集合とする。
【0044】
そしてS808に進み演算装置412は予測部513として機能し、給紙時間プロファイルPFを取得する。例えば、図6に示す給紙時間データの集合に対しては、以下の式(3)が、取得された給紙時間プロファイルPFを示す式である。ここでxは、給紙枚数を示す。
【0045】
PF:t=x(70/300000)+1380 …式(3)
次にS809に進み演算装置412は寿命算出部510として機能し、給紙時間プロファイルPFと、位置Psから給紙を開始した場合の最大給紙時間Ts=1500msとに基づいて給紙ローラの寿命Lを取得する。実施形態1では、式(3)を用いて取得した給紙時間t及び、以下の式(4)を用いて給紙ローラの寿命Lを取得する。
【0046】
L=(1-t/1500)×100 …式(4)
例えば、給紙枚数x=300000における給紙時間tは、t=1450となるため、給紙ローラの寿命Lは、L=3.33%となる。
【0047】
次にS810に進み演算装置412は、S809で取得した給紙ローラの寿命Lをビデオコントローラ430に通知する。給紙ローラの寿命Lは、ビデオコントローラ430の判定により、必要に応じてホストコンピュータ400や、不図示のプリンタ管理ツールに通知される。そして最後にS811でCPU422は、次ページのプリント指示があるかどうか判定し、次ページのプリント指示があれば再びS801の給紙動作の開始に戻り、そうでなければ、この処理を終了する。
【0048】
尚、実施形態1では、給紙機構が1つの場合を示しているが、給紙機構が複数存在する構成に適用することも可能である。給紙機構が複数存在する場合は、エンジン制御部421及び寿命制御部411の動作を給紙機構毎に独立して実施し、その結果、給紙ローラの寿命Lは給紙機構毎に独立して取得される。
【0049】
以上説明したように実施形態1によれば、給紙ローラの寿命を精度良く予測することで、給紙ローラの交換時期を早期に把握することができる。また、給紙ローラの交換時期に到達する前に給紙ローラの寿命の進行度合いを把握することができるため、給紙ローラの交換時期より前に、記録材の種類を変更するなどの使用状況の改善につなげることが可能となる。
【0050】
尚、本発明は、この実施形態1に限られるものではない。例えば、プリンタエンジン420がサーバ410の寿命制御部411の機能を有する構成をとっても良い。また分類部511による給紙時間データの集合の分類手法は、ガウス混合モデルやK平均法などのクラスタリング手法を用いてもよい。更に、予測部513による給紙時間プロファイルPFの取得は、ニューラルネットワークや高次の多項式近似などに基づくフィッティング手法を用いてもよい。
【0051】
また実施形態1では、給紙ローラ22の寿命の単位は%としているが、給紙枚数の単位で示しても良い。また給紙ローラの寿命Lの通知は、例えば図23(A)に示すように給紙ローラの寿命Lの値に応じた文字列を通知しても良い。図23(A)は、給紙ローラの寿命Lに対応して通知する文字列の一例を示している。
【0052】
[実施形態2]
実施形態2では、選択部512が、分類部511によって分類された部分集合から、給紙機構の寿命の取得に用いる部分集合を選択する際に、データの信頼性が高い部分集合を選択する例で説明する。実施形態2に係る画像形成装置のハードウェア構成及びシステム構成等は前述の実施形態1と同様であるため、実施形態2では実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0053】
前述したように実施形態1では、選択部512は、分類部511によって分類された部分集合から遅延側データ集合を選択した。しかしながら、記録材の特性や給紙カセット等の構成によっては、遅延側データ集合を選択することが必ずしも適切ではない場合がある。例えば、分類部511による分類の結果、図9に示すような部分集合が得られたとする。
【0054】
図9は、実施形態2における給紙時間の集合を示すグラフ図である。
【0055】
図9の例では、給紙時間が1250ms以上の遅延側データ集合は分散が大きく、この遅延側データ集合を使用して給紙時間のプロファイルPFを予測すると誤差が大きくなる恐れがある。このように分散が大きいデータ集合は、信頼性が低いデータ集合と捉えることができる。一方、給紙時間が1250ms未満の早着側データ集合は遅延側データ集合に比べて分散が小さく、信頼性が高いデータ集合と捉えることができる。
【0056】
このような状況に鑑み実施形態2では、寿命算出部510は、信頼性判定部1001を有する。信頼性判定部1001は、信頼性を判定する所定の判定基準に従い、分類部511によって分類された部分集合のそれぞれの信頼性を判定する。選択部512は、信頼性判定部1001によって信頼性が高いと判定された部分集合を選択する。
【0057】
図10は、実施形態2に係るエンジン制御部421及び寿命制御部411の機能を説明する機能ブロック図である。前述の実施形態1の図5と共通する部分は同じ参照番号で示している。図5との違いは、寿命算出部510が信頼性判定部1001を有する点にある。尚、ここでも、プリンタエンジン420がサーバ410の寿命制御部411の機能を有する構成をとっても良い。
【0058】
実施形態2における信頼性の判定基準について、図23(B)を参照して説明する。図23(B)は、図9に示すような部分集合に対して信頼性を判定した結果を示している。実施形態2では、分散が1000(所定値)未満で、かつデータ数が1000(所定数)以上である部分集合を信頼性が高いと判定している。
【0059】
実施形態2におけるエンジン制御部421及び寿命制御部411の動作を、図11のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
図11は、実施形態2に係る画像形成装置100において給紙ローラ22の寿命を求める処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行し、寿命制御部411と協業することにより実現される。尚、図11において、前述の図8と共通する処理は同じ参照番号を付して、その説明を省略する。
【0061】
S806で演算装置412が分類部511として機能し、給紙時間データの集合の部分集合を分類した後S1101に進む。S1101で演算装置412は信頼性判定部1001として機能し、全ての部分集合を対象にして、給紙時間データの集合の信頼性を判定する。具体的には、前述の図23(B)に示すような信頼性の判定基準に従って、遅延側データと早着側データのいずれが信頼性が高いか判定する。そしてS1102に進み演算装置412は、信頼性が高い部分集合が存在するかを判定し、信頼性が高い部分集合が存在するときはS807に進み演算装置412は選択部512として機能し、寿命の取得に用いる給紙時間のデータ集合を選択する。一方、S1102で演算装置412は、信頼性が高い部分集合が存在しないと判定したときは給紙ローラの寿命の取得は行わずにS811に進む。
【0062】
尚、実施形態2において、S808で予測部513が取得する給紙時間プロファイルPFは、図3におけるPnから給紙開始した場合の給紙時間を予測したものとなる。従って、寿命算出部510はS809で、位置Pnから給紙開始した場合の最大給紙時間Tnと、給紙時間プロファイルPFにより取得される給紙時間tに基づき、以下の式(5)を用いて給紙ローラの寿命Lを取得する。
【0063】
L=(1-t/Tn)×100 …式(5)
尚、実施形態2における給紙時間tの単位はms、給紙枚数xの単位は枚、給紙ローラの寿命Lの単位は%である。またTn=1300msであり、Pnから給紙開始した場合に搬送を行うことが可能な最大時間を予め定めたものである。
【0064】
以上説明したように実施形態2によれば、データの信頼性が高い部分集合に基づいて給紙ローラの寿命を予測するため、より精度良く給紙ローラの寿命を予測できる。これにより給紙ローラの交換時期を早期に把握することができ、また給紙ローラの交換時期に到達する前に給紙ローラの寿命の進行度合いを把握することができるため、記録材の種類を変更するなどの使用状況の改善につなげることが可能となる。
【0065】
尚、本発明は実施形態2に限られるものではない。例えば、信頼性の判定基準は、記録材の種類や環境温湿度などの要因によって変更してもよい。
【0066】
[実施形態3]
実施形態3では、寿命算出部510の分類部511が、給紙時間データの集合を所定の基準に基づき複数の部分集合に分類する前に、給紙時間データの集合に傾向変化があるかを判定する。そして傾向変化があれば、その傾向変化がある以降の給紙時間データの集合に基づき、複数の部分集合に分類する。実施形態3に係る画像形成装置のハードウェア構成及びシステム構成等は前述の実施形態1と同様であるため、実施形態3では実施形態1と異なる部分のみを説明する。前述した実施形態1では、分類部511は、測定部503によってRAM424に保存された給紙時間データの集合を所定の基準に基づき複数の部分集合に分類した。しかしながら、給紙ローラ交換や使用する記録材の変更などの要因で、図12に示すように給紙時間の傾向が変化する場合がある。
【0067】
図12は、実施形態3における実給紙時間データの集合の一例を示すグラフ図である。
【0068】
図12では、給紙枚数が86517枚の時点で給紙ローラを交換しているため、この交換の前後で、給紙時間データが異なる傾向を示している。従って、このような異なる傾向を示す給紙時間データが混在したデータ集合に基づいて給紙機構の寿命を予測すると、その予測した寿命の精度が低下する恐れがある。そこで実施形態3では、図13に示すように、寿命算出部510が傾向変化判定部1301を有する。この傾向変化判定部1301は、傾向変化があるかどうかを判定する判定基準に従って、測定部503によって測定されRAM424に保存された給紙時間データの集合の傾向変化を判定する。分類部511は、その傾向変化判定部1301によって傾向変化があると判定された場合、その傾向変化がある時点以降の給紙時間データの集合に基づいて複数の部分集合に分類する。
【0069】
図13は、実施形態3に係るエンジン制御部421及び寿命制御部411の機能を説明する機能ブロック図である。前述の実施形態1の図5と共通する部分は同じ参照番号で示している。図5との違いは、寿命算出部510が傾向変化判定部1301を有する点にある。
【0070】
実施形態3における傾向変化の判定基準について、図23(C)を参照して説明する。図23(C)は、例えば図12に示すような給紙時間データの集合に傾向変化判定を実施した結果を示す。実施形態3では、給紙時間データの集合において、直近30枚分の給紙時間データの平均値が25以上変化した場合、傾向変化が発生したと判定する。実施形態3における傾向変化の判定基準によると、給紙枚数x=86517の時点で傾向変化が生じたと判定される。
【0071】
図14は、実施形態3に係る画像形成装置100において給紙ローラの寿命を求める処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行し、寿命制御部411と協業することにより実現される。尚、図14において、前述の図8と共通する処理は同じ参照番号を付して、その説明を省略する。
【0072】
S805で演算装置412は、給紙時間データの集合が所定量以上であると判定するとS1401に進む。S1401で演算装置412は傾向変化判定部1301として機能し、給紙時間データの集合の傾向変化の有無を判定する。具体的には、前述の図23(C)に示すような傾向変化の判定基準に従い、直近30枚分の給紙時間データの平均値を求め、給紙時間データが25ms以上変化した場合に、傾向が変化したと判定する。
【0073】
S1402で演算装置412は、給紙時間データの集合の傾向変化があるか否か判定し、傾向変化があると判定したときはS1403に進み演算装置412は、給紙時間データの集合から傾向変化があった時点以降のデータを抽出する。例えば図23(C)に示すように、所定の時間内(例えば直近の30分)で変化量が所定量以上である傾向変化があったと判定した場合は、その傾向変化があった給紙枚数x=86517以降の給紙時間データを抽出する。そしてS806に進み演算装置412は分類部511として機能し、抽出した給紙時間データの集合を遅延側データ集合と早着側データ集合とに分類する。尚、S1402で演算装置412は、傾向変化がないと判定したときはS806に進み、実施形態1と同様の処理を実行する。
【0074】
以上説明したように実施形態3によれば、例えば給紙ローラの交換などにより給紙時間データが大きく変動したような場合は、その変動以降の給紙時間データを採用して給紙ローラの寿命を予測することができる。これにより、より精度良く給紙ローラの寿命を予測できる。これにより給紙ローラの交換時期を早期に把握することができ、また給紙ローラの交換時期に到達する前に給紙ローラの寿命の進行度合いを把握することができるため、記録材の種類を変更するなどの使用状況の改善につなげることが可能となる。
【0075】
尚、本発明は、実施形態3に限られるものではない。例えば、実施形態3の構成に加えて、実施形態2に示す傾向変化判定を行っても良い。また、記録材の種類の変更や給紙ローラの交換などを別途検知できるように構成し、その検知結果に基づき傾向変化判定を行ってもよい。
【0076】
[実施形態4]
次に本発明の実施形態4を説明する。実施形態4では、給紙カセット21内に積載された記録材Sの量に応じて、最上位に位置する記録材S1が搬送路センサ27に到達するまでの給紙時間を補正する例で説明する。実施形態3に係る画像形成装置100のハードウェア構成及びシステム構成等は、基本的に前述の実施形態1と同様であるため、実施形態3では実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0077】
図15は、実施形態4に係る、中間転写ベルトを採用して複数の画像形成部を並列に構成した画像形成装置100の概略構成図である。図15において、前述の実施形態1に係る図1の構成と共通する部分は同じ参照番号を付し、それらの説明を省略する。
【0078】
図15では、図1の構成に対して、記録材検知センサ28と給紙カセットの有無検知センサ29を加えている。記録材検知センサ28は、給紙カセット21内に積載された記録材Sの量を検知する。また紙カセットの有無検知センサ29は、記録材Sを収容する給紙カセット21が画像形成装置100に装着されているか否かを検知する。
【0079】
次に実施形態4における記録材の残量検知機構について図16を参照して説明する。
【0080】
図16は、実施形態4に係る画像形成装置100における記録材Sの残量検知動作を説明する概略断面図である。
【0081】
図16(A)は、記録材Sを収容した給紙カセット21が画像形成装置100に装着された時点の給紙機構の断面図である。給紙機構20は、給紙カセットの有無検知センサ29により画像形成装置100に給紙カセット21が装着されたことを検知すると、図16(B)に示すように記録材検知センサ28で最上位に位置する記録材S1を検出するまで、不図示のリフトアップモータを駆動させて給紙カセット底板19を上昇させる。これにより記録材Sは、給紙カセット底板19の揺動中心40を中心として給紙カセット底板19で押し上げられ、給紙ローラ22により給紙可能な位置まで移動する。この際、給紙機構20は、リフトアップモータを駆動させた時間に基づき、給紙カセット21内に積載された記録材Sの量を検知することができる。
【0082】
ここで記録材Sの量は%で示され、この量は、予め規定した基準となるリフトアップモータの駆動時間に基づいて変換される。記録材Sの量が多い場合は、リフトアップモータを駆動後、直ぐに記録材検知センサ28で記録材S1を検知するため、記録材Sの量が多いことを検知することができる。一方、記録材Sの量が少ない場合は、リフトアップモータを駆動後、しばらくしてから記録材検知センサ28で記録材S1を検知するため、記録材Sの量が少ないことを検知することができる。そして給紙機構20は、給紙カセット21から記録材Sを1枚ずつ給紙する毎に、検知した記録材Sの量を減らすことにより、常に給紙カセット21内に積載された記録材Sの量を予測することができる。尚、実施形態4では、リフトアップモータの駆動時間で記録材Sの量を検知する方法で説明しているがこれに限定されるものでなく、例えば記録材Sの量が検知できれば、給紙カセット底板19の押し上げ量を別のセンサで検知するなど他の手段で検知しても良い。
【0083】
図17は、実施形態4に係る画像形成装置100のハードウェア構成と、画像形成装置100を含む画像形成システムの構成を説明するブロック図である。図17において、前述の実施形態1に係る図4と共通する部分は同じ参照番号を付し、それらの説明を省略する。実施形態4では図4に対して、記録材検知センサ28、給紙カセットの有無検知センサ29、リフトアップモータ92を加えた構成となっている。実施形態4の構成では、図17に示すようにプリンタエンジン420のIOポート426に、記録材検知センサ28、給紙カセットの有無検知センサ29、リフトアップモータ92が接続されている。CPU422は、このIOポート426を介してこれらの装置を制御する。
【0084】
図18は、実施形態4に係るエンジン制御部421及び寿命制御部411の機能を説明する機能ブロック図である。図18において、前述の実施形態1に係る図5と共通する部分は同じ参照番号を付して、それらの説明を省略する。
【0085】
ここでは、測定部503により測定された給紙時間を補正する機能として、補正部1801、記録材残量検知部1802を有する。補正部1801は、記録材残量検知部1802により検知した給紙カセット21内に積載された記録材Sの量に基づき、給紙部501で給紙動作を指示したタイミングから記録材Sの先端が搬送路センサ27に到達するまでの給紙時間を補正してRAM(メモリ)424に保存する。RAM424に保存された給紙時間は、ビデオコントローラ430を経由して寿命制御部411の記憶装置413にも保存される。尚、実施形態4における補正部1801による給紙時間の補正方法は後述する。記録材残量検知部1802は、給紙カセットの有無検知センサ29により画像形成装置100に給紙カセット21が装着されたことを検知すると、リフトアップモータ92を駆動して、記録材検知センサ28で最上位に位置する記録材S1を検出し、それに基づいて記録材Sの量を検知する。
【0086】
次に、実施形態4の特徴である補正部1801による補正制御を説明する。
【0087】
図19は、実施形態4に係る画像形成装置100において、給紙動作を繰り返し行い、給紙カセット21内に積載された記録材Sが無くなる度に記録材Sを補充した際の給紙時間の推移の一例を示す図である。
【0088】
図19に示すように、給紙カセット21内に積載された記録材Sの量が少なくなるにつれて給紙時間は増減する。これは、図20に示すように給紙カセット底板19の揺動中心40から記録材の先端位置までの距離に応じて、給紙カセット底板19で給紙可能な位置まで押し上げられた時の記録材Sの先端位置が変わるためである。
【0089】
図20は、実施形態4に係る画像形成装置100における、記録材の量に応じた記録材先端位置を示す断面図である。
【0090】
つまり、給紙カセット21内に積載された記録材Sの量に応じて、記録材Sの先端位置が変わることより給紙時間が変わるためである。そのため、実施形態4に係る補正部1801では、図23(D)に示すように、記録材残量検知部1802で検出した記録材の残量に応じて、給紙時間を補正する。
【0091】
記録材の量が少なくなるにつれて、記録材の先端位置が変化し給紙時間が短くなるため、測定部503で測定された給紙時間t_aと、図23(D)に示す給紙時間の補正量Zとに基づき、以下の式(6)を用いて補正後の給紙時間t_bを取得する。
【0092】
t_b =t_a + Z …式(6)
尚、実施形態4では、図23(D)に示すように、記録材の量の単位は%としているが、記録材の枚数を単位としても良いし、給紙時間を時間単位で補正しているものの距離単位としても良い。また図23(D)のようにテーブル形式で給紙時間を補正する補正量を格納しているが、計算式により給紙時間を補正しても良い。
【0093】
また実施形態4では、常に給紙時間を補正する例で説明しているが、記録材の種類によっては、補正部1801による補正を無効にする、即ち、給紙時間を補正しなくても良い場合がある。
【0094】
これは、例えば図21に示すように、記録材の種類によっては、給紙ローラ22で記録材S1を給紙する際にスリップ等が発生し、給紙時間が安定しない場合があるためである。図21は、実施形態4における給紙時間データの一例を示すグラフ図である。
【0095】
図22は、実施形態4に係る画像形成装置100において給紙ローラの寿命を求める処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU422がRAM424に展開したプログラムを実行し、寿命制御部411と協業することにより実現される。尚、図22において、前述の図8と共通する処理は同じ参照番号を付して、その説明を省略する。
【0096】
S804でCPU422は、測定部503及び検知部504による測定結果をRAM424に保存した後にS2201に進む。S2201でCPU422は補正部1801として機能し、記録材残量検知部1802により検知した給紙カセット21内に積載された記録材Sの量に基づき、給紙時間データを補正する。CPU422は補正した給紙時間データを寿命制御部411へ送信する。演算装置412は、受信した補正結果を記憶装置413に保存する。
【0097】
具体的には、前述の図23(D)に示す給紙時間補正テーブルを参照し、記録材の量に応じて給紙時間を補正する。そしてS806以降で演算装置412が寿命算出部510として機能し、給紙時間データの集合に基づいて給紙ローラの寿命を予測する際は、補正された給紙時間データを用いて給紙ローラの寿命Lが取得される。
【0098】
以上説明したように実施形態4によれば、記録材の量に基づいて給紙時間データのバラつきを補正することで、給紙ローラの寿命を精度良く予想することが可能となる。また給紙ローラの交換時期を早期に把握することができ、また給紙ローラの交換時期に到達する前に給紙ローラの寿命の進行度合いを把握することができるため、記録材の種類を変更するなどの使用状況の改善につなげることが可能となる。
【0099】
尚、本発明は実施形態4に限られるものではない。例えば、給紙時間の補正は画像形成装置100で実施したが、記録材の量をサーバに通知し、そのサーバで給紙時間データを補正しても良い。また実施形態4では、給紙時間プロファイルから給紙ローラの寿命を予測する方法で説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、給紙時間から給紙ローラの寿命を予測する方法であれば、どのような手法を用いても良い。
【0100】
(その他の実施形態)
上記の実施形態1乃至4では、給紙機構20は、給紙ローラ22と、搬送ローラ23と、分離ローラ24を有していた。しかし、これに限定されない。例えば、給紙ローラ22に比べてサイズの大きい給紙ローラを1つ設け、その給紙ローラ表面の第1の位置が給紙カセット21に収容された記録材Sと接触し、給紙ローラ表面の第2の位置が分離ローラ24と分離ニップ部を形成する構成であってもよい。つまり、この構成によれば搬送ローラ23は不要となる。
【0101】
また、上記の実施形態1乃至4では、給紙ローラ22が記録材Sの給紙を開始したタイミングから給紙時間のカウントを開始していたが、これに限定されない。例えば、搬送路センサ27とは別の位置に新たなセンサを配置して、その新たなセンサで記録材Sを検知したタイミングから給紙時間のカウントを開始してもよい。もしくは搬送路センサ27で記録材Sを検知したタイミングから給紙時間のカウントを開始し、新たなセンサで記録材Sを検知したタイミングで給紙時間のカウントを終了するようにしてもよい。
【0102】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0103】
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0104】
27…搬送路センサ、28…記録材検知センサ、29…給紙カセットの有無検知センサ、90…搬送モータ、100…画像形成装置、411…寿命制御部、420…プリンタエンジン、421…エンジン制御部、422…CPU、423…ROM、424…RAM、510…寿命算出部、511…分類部、512…選択部、513…予測部、100…信頼性判定部、1301…傾向変化判定部、1801…補正部、1802…記録材残量検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23