(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】鉄道車両用の冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20241204BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20241204BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L23/40 C
H01L23/46 C
H05K7/20 T
(21)【出願番号】P 2020197768
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川下 道宏
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】寺門 秀一
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭彦
(72)【発明者】
【氏名】小暮 浩史
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088744(JP,A)
【文献】特開2004-259980(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049405(WO,A1)
【文献】特開2000-195997(JP,A)
【文献】特開2010-287840(JP,A)
【文献】特開2015-141785(JP,A)
【文献】特開平11-074432(JP,A)
【文献】特開平11-083279(JP,A)
【文献】実開昭58-155537(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29、23/34-23/473
H02M 7/42-7/98
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を冷却する鉄道車両用の冷却装置であって、
前記発熱部品が固定された受熱板と、
前記発熱部品の固定面の反対面に取り付けられた片持ち梁構造の第1のフィンを含む複数のフィンと、
前記フィン間に接合された放熱部材と、を有し、
前記フィンには、前記フィンに対する前記放熱部材の接合位置を位置合せする箇所から前記フィン間へ突出する凸部が設けられている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記受熱板と共に前記複数のフィン及び前記放熱部材を取り囲むように固定し、前記複数のフィン間の前記放熱部材を冷却風が通過するように通風路を形成するダクト
を有することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記通風路のうちの前記複数のフィン間以外の流路を閉塞する集風板
を有することを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記集風板は、前記複数のフィン間以外の流路へ流入しようとする冷却風の風向を前記複数のフィン間へ変化させて集風する第2の傾斜面
を有することを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記複数のフィンのうち、少なくとも1つは前記第1のフィンであり、前記第1のフィン以外は第2のフィンである
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記第1のフィンは、多穴扁平管であり、
前記放熱部材は、コルゲートフィンである
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の冷却装置。
【請求項7】
一群をなす前記複数のフィン及び前記放熱部材の端部に片持ち梁構造の第3のフィンが設けられた
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記第3のフィンは、前記端部から前記複数のフィン間へ冷却風の風向を変化させて集風する第1の傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記第3のフィンは、前記端部への前記冷却風の回り込みを防止する折り返し面が設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記凸部が、前記フィンの片面に設けられた
ことを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記凸部が、前記フィンの両面に設けられた
ことを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記凸部は、前記フィン間へ突出する突出方向から前記放熱部材側へ向かう折り返し部分を有する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の冷却装置。
【請求項13】
鉄道車両用の発熱部品を冷却する冷却装置であって、
前記発熱部品に固定された受熱板と、
前記発熱部品の固定面の反対面に固定された片持ち梁構造の複数のフィンと、
前記フィン間に接合された放熱部材と、
前記受熱板と共に前記複数のフィン及び前記放熱部材を取り囲むように固定し、前記複数のフィン間の前記放熱部材を冷却風が通過するように通風路を形成するダクトと
、
前記通風路のうちの前記複数のフィン間以外の流路を閉塞する集風板と
を有することを特徴とする冷却装置。
【請求項14】
前記集風板は、前記複数のフィン間以外の流路へ流入しようとする冷却風の風向を前記複数のフィン間へ変化させて集風する傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項
13に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道車両(以下、鉄道車両)には、冷却を要する各種の機器が搭載されている。鉄道車両には、例えば車両を駆動する電動機を制御するために、コンバータやインバータ等の電力変換装置が搭載されている。これらの電力変換装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やGTO(Gate Turn-Off Thyristor)等の半導体素子により、高周波数でスイッチングを行うことで電力変換を行う。
【0003】
半導体素子においては、通電時及びスイッチング時に熱が発生する。この熱により半導体素子が高温になると変換効率が低下し、場合によっては素子破壊が発生するおそれがある。このため、半導体素子を所定の温度範囲になるように冷却する必要があるが、電力変換装置等は、主に搭載スペースの限られた車両床下等に搭載されるため、小型の装置構成で複数個の半導体素子を効率良く冷却する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1に、従来の鉄道車両の電力変換装置の一例が開示されている。特許文献1には、受熱部材を車体下部に鉛直方向に設置し、当該受熱部材の一面側にパワー半導体素子を取付け、受熱部材の反対面側にヒートパイプを取付け、車両の走行により生じる風をヒートパイプに設けたフィンに当てる構造が開示されている。この構造により、パワー半導体素子の熱を空気に放熱する。また、例えば特許文献2には、発熱体の冷却を小空間で有効に行うため、自励振動ヒートパイプ(PHP:Pulsating Heat Pipe)を鉄道車両の電力変換装置に適用した冷却構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-50166号公報
【文献】特開2018-88744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉄道車両が走行する際、冷却器は走行風に晒される。そのため、走行風によって冷却器の表面には変動する風圧が発生し、これに起因して冷却器の構造振動が発生する。また、走行時の車体振動も冷却器の構造振動が発生する一因となる。例えば特許文献2の冷却器では、受熱板に固定された片持ち梁構造の複数のフィンが別部材のフィンで相互に結合された構造になっているため、長手方向の一方である固定された基端部を中心に、長手方向の他方である端部が振動する基本振動モードが発生する。その結果、冷却器を構成する複数のフィン及び別部材のフィンには繰り返し応力が発生し、場合によっては疲労破壊に至る懸念がある。
【0007】
また、特許文献2においては、片持ち梁構造の複数のフィンとして多穴扁平管を選定し、自励振動ヒートパイプの冷却器を採用している。この冷却器では、半導体素子からの熱によって多穴扁平管全体が一定温度以上にならない限り、自励振動による冷却動作が開始されない。その結果、自励振動による冷却動作が開始するまでに半導体素子の温度が上昇し、電力変換装置の変換効率が低下する恐れがある。また、多穴扁平管の熱伝導率が低い場合は、冷却器自体の高さも制限される。
【0008】
そこで、冷却器の剛性を高め、走行風の振動で発生する応力を抑制することにより、冷却器の長期信頼性を確保することが望まれていた。さらに、電力変換装置の動作開始と共に多穴扁平管全体が一定温度以上になり、自励振動による冷却動作が瞬時に開始されるように、多穴扁平管の熱伝導率を高めることが望まれていた。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷却器の剛性を高めて走行風や走行振動で生じる冷却装置の構造振動を抑制し、さらに多穴扁平管の熱伝導率を高めて自励振動による冷却動作開始までの時間を短縮し、冷却器の長期信頼性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、発熱部品を冷却する鉄道車両用の冷却装置は、前記発熱部品が固定された受熱板と、前記発熱部品の固定面の反対面に取り付けられた片持ち梁構造の複数のフィンと、前記フィン間に接合された放熱部材と、を有し、前記フィンには、前記フィンに対する前記放熱部材の接合位置を位置合せする箇所から前記フィン間へ突出する凸部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷却器の剛性を高めて走行風や走行振動で生じる冷却装置の構造振動を抑制し、さらに多穴扁平管の熱伝導率を高めて自励振動による冷却動作開始までの時間を短縮し、冷却器の長期信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】鉄道車両に搭載された電力変換装置の断面図である。
【
図4】従来構造における多穴扁平管の断面図である。
【
図5】実施例1における多穴扁平管の断面構造を示す図である。
【
図6】実施例1における多穴扁平管の断面構造を示す図である。
【
図7】実施例1における基本振動モードを示す図である。
【
図8】従来構造における多穴扁平管とコルゲートフィンの接続を示す図である。
【
図9】実施例1における多穴扁平管とコルゲートフィンの接続を示す図である。
【
図10】実施例1における多穴扁平管とコルゲートフィンの接続を示す図である。
【
図11】実施例1における多穴扁平管とコルゲートフィンの接続を示す図である。
【
図12】実施例2における冷却装置の正面図である。
【
図13】実施例2における片持ち梁構造フィンの断面構造を示す図である。
【
図14】実施例2における片持ち梁構造フィンの断面構造を示す図である。
【
図15】実施例3における冷却装置の正面図である。
【
図16】実施例3における片持ち梁構造フィン(端部)の断面構造を示す図である。
【
図17】強制風冷の従来構造における冷却装置の正面図である。
【
図18】強制風冷の従来構造における冷却装置の平面図である。
【
図19】実施例4における冷却装置の断面図である。
【
図20】実施例4における冷却装置の平面図である。
【
図21】実施例4における冷却装置の正面図である。
【
図22】実施例4における集風板の詳細構造を示す図である。
【
図23】実施例4における冷却装置の平面図(集風板の他例)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施例の中で説明されている諸要素およびその組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また発明の構成に必須だが周知である構成については、図示および説明を省略する場合がある。また各図に示す各要素の数は一例であって、図示に限られるものではない。明細書全体を通して使用される用語は、例として提供されるものであり、限定を意図しない。
【0014】
以下の実施例では、開示の冷却構造を鉄道車両用の電力変換装置に適用する場合を例示するが、これに限らず、減流器など発熱する鉄道車両用の種々の装置や部品に適用可能である。
【0015】
数字に添え字を付した符号は、添え字によって同一又は類似の構成を区別するが、添え字を除いた数字のみでは同一又は類似の構成を総称する。
【0016】
(冷却装置5の概略構成)
実施例の説明に先立ち、電力変換装置1及び冷却装置5について説明する。
図1は、鉄道車両2に搭載された電力変換装置1の断面図である。
図1に示すように、XYZ座標系を定義する。XYZ座標系では、鉄道車両2の高さ方向をZ軸の正方向、鉄道車両2の
図1の紙面の左から右へ向かう幅方向をY軸の正方向、鉄道車両2の
図1の紙面の奥から手間へ向かう進行方向をX軸の正方向とする。
【0017】
電力変換装置1は、鉄道車両2の床下等に設置され、鉄道車両2を駆動する電動機(図示せず)に供給する電力の周波数を調整することにより、電動機の回転速度を制御する。電力変換装置1の内部には電力変換回路を構成する複数の半導体素子3と、電気部品群4が設置される。半導体素子3は、通電時及びON/OFF切替え時に熱を発生する。半導体素子3は高温になると変換効率が悪化するため、半導体素子3は冷却装置5が取り付けられて冷却される。
【0018】
冷却装置5は、半導体素子3及び電気部品群4を含んだ電力変換装置1を冷却する。冷却装置5には、鉄道車両2が走行した際に発生する走行風8が、鉄道車両2の進行方向であるX軸方向(
図1の紙面に対する垂直方向)に冷却風として供給され、半導体素子3から発生する熱を放出する。なお、鉄道車両2は、前後何れの方向にも移動するので、X軸の正方向及び負方向(紙面垂直方向に対する両方向)に走行風が生じることになる。また、ここで半導体素子3とは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等である。
【実施例1】
【0019】
(実施例1の冷却装置5Aの構成)
図2から
図11を用いて実施例1の冷却装置5Aについて説明する。
図2が冷却装置5Aの正面図(X軸の正方向から見た図)、
図3が冷却装置5Aの平面図(Y軸の正方向から見た図)である。
【0020】
冷却装置5Aは、受熱板6、多穴扁平管7、コルゲートフィン9、スリッド板10、ブロック板11を含んで構成される。受熱板6、多穴扁平管7、コルゲートフィン9、スリッド板10、及びブロック板11は、例えば、アルミニウム合金や銅、その他の金属、又はそれらのうち何れかを組み合わせた合金から成る。
【0021】
なお、実施例1では片持ち梁構造の複数のフィンを多穴扁平管7としているが、熱伝導性を有する片持ち梁構造のフィンの一例に過ぎず、必ずしもそれに限定されるものではない。また、コルゲートフィン9も放熱部材の一例に過ぎず、必ずしもコルゲートフィンに限定されない。そのため、コルゲートフィン9に代えてコルゲートタイプでないフィンあるいはフィンとは異なる他の放熱部材を用いてもよい。
【0022】
複数の半導体素子3が、グリース等の部材(図示せず)を介して、ねじ等(図示せず)の機械的固定手法によって、受熱板6の一方の面(Y軸の負方向の面)に固定される(
図2)。受熱板6の他方の面(Y軸の正方向の面)には、スリッド板10及びブロック板11を介して多穴扁平管7がロウ付け等の接着手法により接合される。
【0023】
多穴扁平管7は、複数の流路が長手方向(Y軸方向)に形成された板状の構造である。複数配置した多穴扁平管7と流路を設けたブロック板11及びスリッド板10とを組み合わせることで、一続きの長い流路を形成している。また、多穴扁平管7の向かい合う表面同士を連結するようにして、多穴扁平管7間にコルゲートフィン9がロウ付け等によって接合される。
【0024】
このような構成とすることにより、多穴扁平管7、ブロック板11、及びスリッド板10に亘って形成される一続きの長い流路は、受熱板6と接する部分である受熱部と、コルゲートフィン9と接する部分である放熱部とが交互に設けられることになる。
【0025】
(実施例1の多穴扁平管7の凸部)
実施例1の冷却装置5Aは、複数ある多穴扁平管7の少なくとも1つにおいて、従来断面に凸部が形成された構造である。
図4から
図6を用いて、多穴扁平管7の断面について説明する。
図4が多穴扁平管7の従来断面、
図5が実施例1において多穴扁平管7の片側のみに凸部を設けた断面、
図6が実施例1において多穴扁平管7の両側に凸部を設けた断面である。
【0026】
図4に示すように、従来の多穴扁平管7の断面は走行風8の方向(X軸方向)に平坦に伸びる断面構造であった。一方、
図5及び
図6に示すように、実施例1の多穴扁平管7の断面においては、断面の長手方向(X軸方向)に対する垂直方向(Z軸方向)に、また断面の片側もしくは両側に少なくとも1つの凸部を設けた構造である。
図5の(a)が多穴扁平管7の片側のみにI型の凸部7A(7A1,7A2)を設けた構造であり、
図5の(b)が多穴扁平管7の片側にL型の凸部7B(7B1,7B2)を設けた構造である。また、
図6の(a)が多穴扁平管7の両側にI型の凸部7A(7A1,7A2)を設けた構造であり、
図6の(b)が多穴扁平管7の両側にL型の凸部7B(7B1,7B2)を設けた構造である。
【0027】
このような断面構造にすることで多穴扁平管7の曲げ剛性が高まり、
図7に示す冷却装置5Aの基本振動モードによるZ軸方向の振動を抑えることができる。その結果、多穴扁平管7、コルゲートフィン9、及びロウ付け部に発生する応力を低減でき、冷却装置5Aの長期信頼性を確保することができる。また、多穴扁平管7の熱伝導率が向上し、自励振動による冷却動作を早期に開始することができる。なお、多穴扁平管7を押出し成形する場合は、実施例1の多穴扁平管7を、従来の多穴扁平管7と同じ工程で成形することができる。
【0028】
(実施例1の多穴扁平管7とコルゲートフィン9との接続)
図8から
図11を用いて、多穴扁平管7とコルゲートフィン9との接続について説明する。
図8に従来構造における多穴扁平管7とコルゲートフィン9との接続構造、
図9に実施例1において片側のみに凸部を設けた多穴扁平管7とコルゲートフィン9の接続構造、
図10に実施例1において両側に凸部を設けた多穴扁平管とコルゲートフィンの接続構造、
図11に実施例1において片側と両側に凸部を設けた多穴扁平管7とコルゲートフィン9との接続構造を示す。
図9では、凸部7A,7Bは、多穴扁平管7の一方の面から突出している態様を示すが、多穴扁平管7のZ軸方向の他方の面から突出していてもよい。Z軸方向に隣り合う多穴扁平管7が、
図9、
図10、及び
図11の何れかの組み合わせでコルゲートフィン9を介して積層するように接合されて一群の多穴扁平管7及びコルゲートフィン9の積層体をなす。
図11の多穴扁平管7の組み合せは、一群の多穴扁平管7及びコルゲートフィン9を積層したZ軸方向の端部に配置されることが好適である。何れのケースにおいても、多穴扁平管7の凸部が、多穴扁平管7に対するコルゲートフィン9の位置を位置合わせするので、位置合せ精度が向上する。
【0029】
(実施例1の効果)
実施例1では、冷却装置5Aにおいて、片持ち梁構造のフィンである多穴扁平管7に、隣り合う多穴扁平管7間へ突出するI型の凸部7AやL型の凸部7Bを設けた。これにより、冷却装置5Aの基本振動モードによる振動を抑制し、冷却装置5Aに発生する応力を低減できる。また、凸部7A,7Bの突出方向の断面2次モーメントを高めることができ、冷却装置5Aの曲げ剛性が向上する。さらに、凸部7A,7Bによって多穴扁平管7の断面積が大きくなることにより、熱伝導率が向上する。
【0030】
このように、走行風や車体振動で発生する片持ち梁構造フィンの構造振動に起因する応力を抑制でき、さらに片持ち梁構造のフィンが多穴扁平管の場合は自励振動による冷却動作開始までの時間を短縮できるため、冷却装置の長期信頼性を確保することができる。
【実施例2】
【0031】
(実施例2の冷却装置5Bの構成)
図12~
図14を用いて、実施例2の冷却装置5Bについて説明する。実施例1との違いは、多穴扁平管7と片持ち梁構造フィン12を併用している点である。
図12に冷却装置5Bの正面図を示す。
図12では、冷却装置5Bにおいて一部の多穴扁平管7に代えて片持ち梁構造フィン12を併用した構造になっている。本実施例では、6本の多穴扁平管7に代えてそれぞれが片持ち梁構造フィン12に置き換えられた構造とするが、併用する本数は任意で良い。また、片持ち梁構造フィン12の配置も任意で良い。
【0032】
(実施例2の凸部12A,12Bを有する片持ち梁構造フィン12の断面構造)
図13~
図14を用いて、片持ち梁構造フィン12の断面構造について説明する。
図13及び
図14に示すように、片持ち梁構造フィン12の断面においては、実施例1の多穴扁平管7の断面と同様に、断面の長手方向(X軸方向)に対する垂直方向(Z軸方向)に、また断面の片側もしくは両側に少なくとも1つの凸部を設けた構造である。
図13の(a)が片持ち梁構造フィン12の片側のみにI型の凸部12A(12A1,12A2)を設けた構造であり、
図13の(b)が片持ち梁構造フィン12の片側のみにL型の凸部12B(12B1,12B2)を設けた構造である。また、
図14の(a)が片持ち梁構造フィン12の両側にI型の凸部12A(12A1,12A2)を設けた構造であり、
図14の(b)が片持ち梁構造フィン12の両側にL型の凸部12B(12B1,12B2)を設けた構造である。
【0033】
このような断面構造の片持ち梁構造フィン12と多穴扁平管7を併用することにより、冷却装置5Bの曲げ剛性が高まり、冷却装置5Bの基本振動モードによる振動を抑えることができる。その結果、多穴扁平管7、コルゲートフィン9及びろう付け部に発生する応力を低減でき、冷却装置5Bの長期信頼性を確保することができる。また、多穴扁平管7を片持ち梁構造フィン12で置き換えることにより、コストダウンを図ることができる。
【実施例3】
【0034】
(実施例3の冷却装置5Cの構成)
図15~
図16を用いて、実施例3の冷却装置5Cについて説明する。実施例1及び実施例2との違いは、多穴扁平管7と片持ち梁構造フィン12を併設したZ軸方向の端部に、片持ち梁構造フィン(端部)13を配置した点である。
図15に冷却装置5Cの正面図を示す。冷却装置5Cを構成する多穴扁平管7及び片持ち梁構造フィン12の断面の形態は、端部の片持ち梁構造フィン(端部)13を除き、
図4に示す従来構造、
図5、
図6に示す実施例1の構造、もしくは
図13、
図14に示す実施例2の構造と同様である。
【0035】
(片持ち梁構造フィン(端部)13の構成)
図16に片持ち梁構造フィン(端部)13の断面図を示す。
図16の(a)がI型の片持ち梁構造フィン(端部)13Aの構造、
図16の(b)がL型の片持ち梁構造フィン(端部)13Bの構造である。
図2に示す実施例1の冷却装置5Aのように、複数の多穴扁平管7、ブロック板11及びスリッド板10とで一続きの流路を構成する場合、流路を設けるブロック板11の端部に多穴扁平管7が配置されないデッドスペースが生じる。そこで、
図16に示すように、ブロック板11のデッドスペースを最大限に活用して、曲げ剛性が高い片持ち梁構造フィン(端部)13Aをブロック板11のZ軸方向の端部に配置する。つまり一群をなす複数の多穴扁平管7及びコルゲートフィン9の端部に片持ち梁構造フィン(端部)13Aを配置する。
【0036】
図16の(a)に示す片持ち梁構造フィン(端部)13Aは、図中に示す矢印のように、ブロック板11のZ軸方向の端部から複数の多穴扁平管7へ冷却風の風向を変化させる傾斜面13A1を有する。また、
図16の(b)に示す片持ち梁構造フィン(端部)13Bは、図中に示す矢印のように、ブロック板11のZ軸方向の端部から複数の多穴扁平管7へ冷却風の風向を変化させる傾斜面13B1を有する。さらに片持ち梁構造フィン(端部)13Bは、図中に示す矢印のように、ブロック板11のZ軸方向の端部への冷却風の回り込みを防止する折り返し面13B2を有する。これにより、冷却装置5Cの曲げ剛性が向上することに加えて、積層した多穴扁平管7及び片持ち梁構造フィン12側への集風効果を得ることができ、冷却装置5Cの冷却性能向上を図ることができる。
【実施例4】
【0037】
図17~
図21を用いて、実施例4の冷却装置5Dについて説明する。実施例1~3では、鉄道車両2が走行することで発生する走行風8を活用して半導体素子3を冷却することを想定していた。一方、実施例4では冷却ファンを活用した強制風冷で半導体素子3を冷却することを想定している。
【0038】
(実施例4の冷却装置5D)
図17~
図18を用いて、強制風冷を用いる冷却装置5Dについて説明する。
図17が冷却装置5Dの正面図、
図18が冷却装置5Dの平面図である。
図18では、XZ平面と平行なダクト14の面の図示を省略している。
【0039】
図17~
図18に示すように、強制風冷では冷却ファン(不図示)で起こした風の拡散を防ぐため、冷却装置5Dを取り囲むようにダクト14を配置する。ダクト14は、受熱板6と共に複数の多穴扁平管7及びコルゲートフィン9を取り囲むようにしてこれらを固定し、複数の多穴扁平管7間のコルゲートフィン9を強制風が通過するように通風路を形成する。その結果として、強制風がダクト14内部をX軸方向へ通過するようになる。冷却装置5Dとダクト14との間に、コルゲートフィン9以外の流路となり得るデッドスペースが存在する場合は、主にデッドスペースを強制風が通過することになる。
【0040】
また、複数の多穴扁平管7及びコルゲートフィン9は、受熱板6及びダクト14によって固定されるので、冷却装置5Dの曲げ剛性が向上する。
【0041】
強制風がデッドスペースを通過することの防止を考慮した冷却装置5Dについて、
図19~
図21を用いて説明する。
図19は冷却装置5Dの正面方向から見たX軸方向のある断面図、
図20が冷却装置5Dの平面図、
図21が冷却装置5Dの正面図である。
図20では、XZ平面と平行なダクト14の面の図示を省略している。
【0042】
図19に示すように、冷却装置5Dにおいて、Z軸方向に積層した多穴扁平管7及びコルゲートフィン9の積層の両端部には、実施例3と同様に、片持ち梁構造フィン(端部)13を配置する。これにより、冷却装置5Dの曲げ剛性が向上する他、デッドスペースを通過していた強制風を多穴扁平管7及びコルゲートフィン9側へ集風することができる。
【0043】
図20の平面図に示すように、冷却装置5Dとダクト14との間には、スペース15が生じる。また、
図20中の破線で示すように、ブロック板11間にも、スペース15と平行なX軸方向の強制風の流路となるスペース151が生じる。
【0044】
そこで、
図20に示すように、スペース15に風が漏れ入ることを防ぐため集風板16(16A1)が、スペース151に風が漏れ入ることを防ぐため集風板16(16A2)が設置される。
図21の正面図を用いて、冷却装置5Dの集風板16について説明する。つまり、通風路のうちの多穴扁平管7間であるコルゲートフィン9以外の流路を閉塞するように集風板16が設けられる。
【0045】
図21に示すように、集風板16は、コルゲートフィン9を通過する強制風を遮らないように、正面(X軸方向)から見て片持ち梁構造フィン(端部)13とX軸方向に重なる位置に設置される。
図22に集風板16の詳細構造を示す。
【0046】
図22に示すように、集風板16は、集風効果を高めるパターン1の構造(集風板16A1,16A2)の他、スペースに風が漏れることを防ぐことのみに特化したパターン2(集風板16B1,16B2)の構造を取ることが考えられる。
【0047】
集風板16のパターン1の構造は、
図20にも示すように、集風板16A,16Bのそれぞれが傾斜面16A11,16A21を有する構成である。
図22は、集風板16のパターン1の構成として、
図20のX軸方向の最上部の集風板16A1,16A2を示している。集風板16A1,16A2によれば、X軸方向を流れる強制風が、スペース15及びスペース151に流入しようとした強制風を流入回避させると共に、
図20に示す矢印方向へ風向を変更し、多穴扁平管7及びコルゲートフィン9側へ集風する。
【0048】
また、集風板16のパターン2の構造は、
図23にも示すように、パターン1のような傾斜面を有さない構成である。
図23は、集風板16のパターン2の構成として、
図23のX軸方向の最上方の集風板16B1,16B2を示している。集風板16B1,16B2によれば、簡易な部材で、強制風がスペース15及びスペース151へ侵入することを阻止する。
【0049】
以上4つの実施例について述べたが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例における構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例における構成の一部について、他の構成の追加、削除、又は置換をすることも可能である。例えば、本発明は鉄道車両のみならず、自動車、航空機、又は船舶などの移動体用の冷却装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:電力変換装置、2:鉄道車両、3:半導体素子、4:電気部品群、5,5A,5B,5C,5D:冷却装置、6:受熱板、7:多穴扁平管、7A,7A1,7A2,7B,7B1,7B2:凸部、9:コルゲートフィン、10:スリッド板、11:ブロック板、12:片持ち梁構造フィン、12A,12B:凸部、13,13A,13B:片持ち梁構造フィン(端部)、13A1,13B1:傾斜面、13B2:折り返し面、14:ダクト、15,151:スペース、16,16A1,16A2,16B,16B1,16B2:集風板、16A11,16A21:傾斜面