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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/12 20160101AFI20241204BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20241204BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20241204BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20241204BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20241204BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20241204BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241204BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20241204BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B60W20/12
B60K6/46 ZHV
B60W10/26 900
B60W20/13
B60L15/20 J
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/13
G01C21/36
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020202709
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090353
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山内 康弘
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-264791(JP,A)
【文献】特開2003-009310(JP,A)
【文献】特開2015-155261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0235025(US,A1)
【文献】特開2010-125868(JP,A)
【文献】特開2010-052652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257608(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0001369(KR,A)
【文献】特開2017-087915(JP,A)
【文献】特開2010-213566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及びモータのうちの少なくとも1つを制駆動力源とし、前記モータとの間で電力の授受を行うバッテリを備える車両の制御方法であって、
分岐点から延びる複数のルートの各々のルートへ前記車両が進行する確率と、当該各々のルートの道路勾配を含む情報に基づき算出した前記バッテリのSOC増減量予測値とに基づいて、前記車両が走行すると予測される予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出する算出ステップと、
前記予測ルートにおけるSOC推移予測値の最大値が前記バッテリのSOC上限値を上回る場合に、当該SOC推移予測値が最大になると予測される前記予測ルートにおける第1地点と前記車両の現在地との間で前記バッテリの放電量を増加させる事前放電処理と、前記予測ルートにおけるSOC推移予測値の最小値が前記バッテリのSOC下限値を下回る場合には、当該SOC推移予測値が最小になると予測される前記予測ルートにおける第2地点と前記車両の現在地との間で前記バッテリの充電量を増加させる事前充電処理とのうちの少なくとも1つを実行する制御ステップと、を備えるとともに、
前記確率と前記SOC増減量予測値とに基づいて、分岐点から延びる各ルートにおけるSOC変化量期待値を算出し、当該各ルートのうちから、当該分岐点でのSOC変化量期待値の絶対値が最大となるルートを選択し、当該選択されたルートを分岐点毎に繋ぎ合わせたルートを前記予測ルートとして選択する選択ステップをさらに備え、
前記算出ステップでは、前記確率と前記SOC増減量予測値とに基づいて、前記予測ルートにおける各分岐点でのSOC推移予測値を算出し、当該各分岐点での前記SOC推移予測値を積算して前記予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出する、
車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御方法であって、
前記事前放電処理では、
前記車両の現在地と前記第1地点との間で、前記車両の走行時に放電可能な区間を抽出し、当該放電可能な区間毎に前記バッテリのSOC減少量を算出し、
前記放電可能な区間について、前記第1地点に近い区間から順番に前記車両の現在地に向かって前記SOC減少量を積算した積算SOC減少量を順次算出し、
前記車両の現在地と前記第1地点との間の前記放電可能な区間のうち、前記第1地点に近い区間から、前記積算SOC減少量が、当該SOC推移予測値の最大値の前記SOC上限値からの超過量以上となる区間までの各区間において事前放電を実施する、
車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の制御方法であって、
前記事前放電処理では、
前記車両の現在地と前記第1地点との間で、前記車両の走行時に放電可能な区間を抽出し、当該放電可能な区間毎に前記バッテリのSOC減少量を算出し、
前記放電可能な区間について、前記第1地点に近い区間から順番に前記車両の現在地に向かって前記SOC減少量を積算した積算SOC減少量を順次算出し、
前記車両の現在地と前記第1地点との間の前記放電可能な区間のうち、前記第1地点に近い区間から、前記積算SOC減少量が、前記SOC下限値から前記SOC上限値までの値の範囲内となる区間までの各区間において事前放電を実施する、
車両の制御方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の車両の制御方法であって、
前記事前充電処理では、
前記車両の現在地と前記第2地点との間で、前記車両の走行時に充電可能な区間を抽出し、当該充電可能な区間毎に前記バッテリのSOC増加量を算出し、
前記充電可能な区間について、前記第2地点に近い区間から順番に前記車両の現在地に向かって前記SOC増加量を積算した積算SOC増加量を順次算出し、
前記車両の現在地と前記第2地点との間の前記充電可能な区間のうち、前記第2地点に近い区間から、前記積算SOC増加量が、当該SOC推移予測値の最小値の前記SOC下限値からの超過量以上となる区間までの各区間において事前充電を実施する、
車両の制御方法。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の車両の制御方法であって、
前記事前充電処理では、
前記車両の現在地と前記第2地点との間で、前記車両の走行時に充電可能な区間を抽出し、当該充電可能な区間毎に前記バッテリのSOC増加量を算出し、
前記充電可能な区間について、前記第2地点に近い区間から順番に前記車両の現在地に向かって前記SOC増加量を積算した積算SOC増加量を順次算出し、
前記車両の現在地と前記第2地点との間の前記充電可能な区間のうち、前記第2地点に近い区間から、前記積算SOC増加量が、前記SOC下限値から前記SOC上限値までの値の範囲内となる区間までの各区間において事前充電を実施する、
車両の制御方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の車両の制御方法であって、
前記選択ステップでは、分岐点から延びる複数のルートのうち、次の分岐点までの距離が最も長いルートを基準として、前記SOC変化量期待値を当該複数のルート毎に算出し、当該複数のルート毎の当該SOC変化量期待値に基づいて、前記予測ルートを選択する、
車両の制御方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の車両の制御方法であって、
前記選択ステップでは、分岐点から延びる複数のルートのうち、前記確率が所定値以下であるルートを、前記予測ルートの選択対象から除外する、
車両の制御方法。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の車両の制御方法であって、
前記選択ステップでは、前記車両から最も近い分岐点から延びる複数のルートについて、当該分岐点から、当該複数のルートのそれぞれにおける所定数の分岐点までの前記確率と前記SOC増減量予測値とに基づいて、前記予測ルートを選択する、
車両の制御方法。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の車両の制御方法であって、
前記選択ステップでは、前記車両の目的地が設定された場合に、前記目的地までの案内ルートを前記予測ルートとして選択する、
車両の制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の車両の制御方法であって、
前記選択ステップでは、前記車両の目的地が設定された場合において、前記目的地までの案内ルートから前記車両が逸脱したときには、当該逸脱後の前記車両の現在地を基準として前記予測ルートを選択する、
車両の制御方法。
【請求項11】
内燃機関及びモータのうちの少なくとも1つを制駆動力源とし、前記モータとの間で電力の授受を行うバッテリと、前記バッテリの充放電制御を実行するコントローラとを備える車両の制御システムであって、
前記コントローラは、
分岐点から延びる複数のルートの各々のルートへ前記車両が進行する確率と、当該各々のルートの道路勾配を含む情報に基づき算出した前記バッテリのSOC増減量予測値とに基づいて、前記車両が走行すると予測される予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出し、
前記予測ルートにおけるSOC推移予測値の最大値が前記バッテリのSOC上限値を上回る場合に、当該SOC推移予測値が最大になると予測される前記予測ルートにおける第1地点と前記車両の現在地との間で前記バッテリの放電量を増加させる事前放電処理と、前記予測ルートにおけるSOC推移予測値の最小値が前記バッテリのSOC下限値を下回る場合に、当該SOC推移予測値が最小になると予測される前記予測ルートにおける第2地点と前記車両の現在地との間で前記バッテリの充電量を増加させる事前充電処理とのうちの少なくとも1つを実行するとともに、
前記確率と前記SOC増減量予測値とに基づいて、分岐点から延びる各ルートにおけるSOC変化量期待値を算出し、当該各ルートのうちから、当該分岐点でのSOC変化量期待値の絶対値が最大となるルートを選択し、当該選択されたルートを分岐点毎に繋ぎ合わせたルートを前記予測ルートとして選択し、
前記SOC推移予測値の算出に当たっては、前記確率と前記SOC増減量予測値とに基づいて、前記予測ルートにおける各分岐点でのSOC推移予測値を算出し、当該各分岐点での前記SOC推移予測値を積算して前記予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出する、
車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの充放電制御を実行可能な車両の制御方法及び車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行するルートに応じてバッテリの充放電制御を実行する車両が存在する。例えば、下り坂では回生発電によりバッテリの充電を行う車両が存在する。このような車両について、下り坂での回生発電の取りこぼしを防止するため、所定タイミングでバッテリのSOCを減らす技術が提案されている。例えば、車両の走行予定経路を予測できる場合に、バッテリのSOCが上限値に到達しないようにSOCを減らす制御を実行する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-087915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、車両の走行予定経路の予測が困難である場合には、放電増加制御を禁止する。このように、放電増加制御を禁止すると、走行中にSOCを減らす制御が実行されない。このため、例えば、長い下り坂の手前のルートでバッテリのSOCが上限値の近傍に近いような状態でも、SOCを減らすための制御が実行されないことも想定される。この場合には、長い下り坂での回生発電を取りこぼしてしまい、電力消費の効率(電費)が悪化するおそれがある。
【0005】
本発明は、適切な充放電制御を実行して電費を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内燃機関及びモータのうちの少なくとも1つを制駆動力源とし、モータとの間で電力の授受を行うバッテリを備える車両の制御方法である。この制御方法は、分岐点から延びる複数のルートの各々のルートへ車両が進行する確率と、当該各々のルートの道路勾配を含む情報に基づき算出したバッテリのSOC増減量予測値とに基づいて、車両が走行すると予測される予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出する算出ステップと、予測ルートにおけるSOC推移予測値の最大値がバッテリのSOC上限値を上回る場合に、当該SOC推移予測値が最大になると予測される予測ルートにおける第1地点と車両の現在地との間でバッテリの放電量を増加させる事前放電処理と、予測ルートにおけるSOC推移予測値の最小値がバッテリのSOC下限値を下回る場合には、当該SOC推移予測値が最小になると予測される予測ルートにおける第2地点と車両の現在地との間でバッテリの充電量を増加させる事前充電処理とのうちの少なくとも1つを実行する制御ステップとを備える。さらに、確率とSOC増減量予測値とに基づいて、分岐点から延びる各ルートにおけるSOC変化量期待値を算出し、各ルートのうちから、分岐点でのSOC変化量期待値の絶対値が最大となるルートを選択し、選択されたルートを分岐点毎に繋ぎ合わせたルートを予測ルートとして選択する選択ステップを備える。算出ステップでは、確率とSOC増減量予測値とに基づいて、予測ルートにおける各分岐点でのSOC推移予測値を算出し、各分岐点でのSOC推移予測値を積算して予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、適切な充放電制御を実行して電費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、車両の要部を示す概略構成図である。
図2図2は、車両が走行するルートとバッテリのSOCとの関係例を示す図である。
図3図3は、車両が走行するルートとバッテリのSOCとの関係例を示す図である。
図4図4は、3のルートに分岐する分岐点を示す図である。
図5図5は、SOC変化量期待値を算出する際に用いられる各情報を示す図である。
図6図6は、車両が走行すると推定されるルートにおける各分岐点でのSOC増減量予測値を模式的に示す図である。
図7図7は、車両の予測ルートにおけるSOC推移予測値の一例を示す図である。
図8図8は、分岐点間の距離が異なる複数のルートを示す図である。
図9図9は、SOC変化量期待値を算出する際に基準となる各ルート構成を示す図である。
図10図10は、SOC変化量期待値を算出する際に用いられる各情報を示す図である。
図11図11は、統合コントローラによる充放電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、統合コントローラによる事前放電制御計画処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、統合コントローラによる事前充電制御計画処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[車両の構成例]
図1は、車両1の要部を示す概略構成図である。車両1は、内燃機関2と、発電用モータ3と、走行用モータ4と、バッテリ5と、駆動輪6とを備える。
【0011】
内燃機関2は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンのいずれでもかまわない。発電用モータ3は、内燃機関2の動力によって駆動されることで発電する。走行用モータ4は、バッテリ5の電力により駆動されて、駆動輪6を駆動する。走行用モータ4は、減速時等に駆動輪6の回転に伴って連れ回されることにより減速エネルギを電力として回生する、いわゆる回生機能も有する。バッテリ5には、発電用モータ3で発電された電力と、走行用モータ4で回生された電力とが充電される。なお、本実施形態では、車両1が下り坂で回生発電を行う場合を下り坂回生による発電と称して説明する。
【0012】
車両1は、第1動力伝達経路21と第2動力伝達経路22とを有する。第1動力伝達経路21は、走行用モータ4と駆動輪6との間で動力を伝達する。第2動力伝達経路22は、内燃機関2と発電用モータ3との間で動力を伝達する。第1動力伝達経路21と第2動力伝達経路22とは、互いに独立した動力伝達経路、つまり第1動力伝達経路21及び第2動力伝達経路22の一方から他方に動力が伝達されない動力伝達経路になっている。
【0013】
第1動力伝達経路21は、走行用モータ4の回転軸4aに設けられた第1減速ギヤ11と、第1減速ギヤ11と噛み合う第2減速ギヤ12と、第2減速ギヤ12と同軸上に設けられてデファレンシャルギヤ14と噛み合う第3減速ギヤ13と、デファレンシャルケース15に設けられたデファレンシャルギヤ14とを有して構成される。
【0014】
第2動力伝達経路22は、内燃機関2の出力軸2aに設けられた第4減速ギヤ16と、第4減速ギヤ16と噛み合う第5減速ギヤ17と、発電用モータ3の回転軸3aに設けられ、第5減速ギヤ17と噛み合う第6減速ギヤ18とを有して構成される。
【0015】
第1動力伝達経路21及び第2動力伝達経路22それぞれは、動力伝達を遮断する要素を備えていない。すなわち、第1動力伝達経路21及び第2動力伝達経路22それぞれは常に動力が伝達される状態になっている。
【0016】
車両1はコントローラ30をさらに備える。コントローラ30は、内燃機関2の制御を行うエンジンコントローラ31、発電用モータ3の制御を行う発電用モータコントローラ32、走行用モータ4の制御を行う走行用モータコントローラ33、車両1の制御を統合する統合コントローラ34を有して構成される。
【0017】
エンジンコントローラ31は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。発電用モータコントローラ32、走行用モータコントローラ33及び統合コントローラ34についても同様である。エンジンコントローラ31、発電用モータコントローラ32及び走行用モータコントローラ33は、統合コントローラ34を介してCAN規格のバスにより互いに通信可能に接続される。
【0018】
コントローラ30には、内燃機関2の回転速度NEを検出するための回転速度センサ81、アクセルペダルの踏み込み量を指標するアクセル開度APOを検出するためのアクセル開度センサ82、内燃機関2の水温THWを検出するための水温センサ83、車速VSPを検出するための車速センサ84を含む各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。これらの信号は、直接或いはエンジンコントローラ31等の他のコントローラを介して統合コントローラ34に入力される。
【0019】
車両1は、内燃機関2の動力により駆動されて発電する発電用モータ3の電力を利用して走行用モータ4で駆動輪6を駆動するシリーズハイブリッド車両を構成する。
【0020】
また、統合コントローラ34は、シリーズ走行中において、エンジン停止モードと、エンジン発電モードとの切り替え制御を実行する。ここで、エンジン停止モードとは、内燃機関2を停止し、走行用モータ4への電力供給をバッテリ5から行う制御モードである。また、エンジン発電モードは、内燃機関2を駆動させ、発電用モータ3により発電された電力をバッテリ5に充電する制御モードである。なお、エンジン発電モードの設定時には、必要に応じて、バッテリ5及び発電用モータ3の双方から走行用モータ4へ電力供給が行われる。また、本実施形態では、エンジン停止モードでの走行をEV(Electric Vehicle)走行と称して説明する。なお、EV走行可能な区間は、車両1の走行時に放電可能な区間の一例である。また、下り坂回生による充電が可能な区間は、車両1の走行時に充電可能な区間の一例である。
【0021】
統合コントローラ34は、車両1が進行すると推定されるルートを検索する処理を実行する。例えば、統合コントローラ34は、記憶装置(図示省略)に記憶されている地図情報や、データセンタ(図示省略)から送信される各種情報に基づいて、車両1が進行すると予測されるルートを予測ルートとして求めることができる。なお、地図情報は、例えば、道路曲率半径、勾配、交差点、信号、踏み切り、横断歩道、制限速度、料金所等の道路環境情報や、道路属性情報(高速道路・幹線道路・一般道・住宅街、粗い路面、きれいな路面等)を含む情報である。また、記憶装置には、過去の走行区間における車両1のドライブデータ(アクセル操作、車速等)を記憶させておき、ルート予測に用いるようにしてもよい。また、データセンタからの情報は、通信装置(図示省略)、所定のネットワーク(図示省略)を介して、無線通信を利用して取得することができる。また、データセンタからの情報として、交通情報や統計交通データ、道路の状態(渋滞情報等)などを用いることができる。
【0022】
なお、車両1には、車両1の位置を自動的に割り出し、地図情報と照らし合わせて、入出力装置(図示省略)の画面上地図に経路を表示し、音声等で道案内を行い、ドライバを目的地まで導く機能を有するナビゲーション装置を備えるようにしてもよい。
【0023】
[走行する路面とSOCとの関係例]
図2は、車両1が走行するルートR1と、バッテリ5のSOC(States Of Charge)との関係例を示す図である。図2の上側には、ルートR1を示す。ルートR1は、平坦なルートR2、R4と、下り坂R3と、上り坂R5とにより構成されるものとする。なお、これらのルートに関する情報は、記憶装置に記憶されている地図情報や、データセンタから送信される各種情報に基づいて、取得可能である。
【0024】
図2の下側には、バッテリ5のSOCの遷移例を実線L1、L2で示す。なお、図2では、SOCの上限値を点線で示す。また、実線L1は、バッテリ5のSOCの予測値の遷移例である。この予測値(SOC推移予測値)については、図4乃至図7を参照して説明する。
【0025】
車両1が下り坂R3を走行している場合には、走行用モータ4で回生された電力がバッテリ5に充電されるため、実線L1のように、下り坂R3での車両1の走行に応じて、バッテリ5のSOCが増加する。ただし、このように下り坂R3でバッテリ5への充電が行われると、バッテリ5のSOCの上限値を超えてしまうことになる。このように、バッテリ5のSOCの上限値を超えた場合には、走行用モータ4で回生された電力を充電することができず、回生エネルギを回収できない。
【0026】
そこで、本実施形態では、車両1が走行すると予測される予測ルートを作成し、その予測ルートにおけるSOC推移予測値に基づいてバッテリ5の放充電制御を実行する。このようなSOC推移予測値によれば、矢印A1で示すように、車両1が下り坂R3に到達する前に、バッテリ5の事前放電を実行する。すなわち、SOC推移予測値がSOC上限値を超過する場合には、超過する分だけSOCが減少するように事前放電を行う。これにより、実線L2に示すように、下り坂R3でバッテリ5への充電が行われた場合でもバッテリ5のSOCの上限値に達することを防止することができ、回生エネルギのとりこぼしを防止することができる。
【0027】
図3は、車両1が走行するルートR6と、バッテリ5のSOCとの関係例を示す図である。図3の上側には、ルートR6を示す。ルートR6は、平坦なルートR7、R9と、下り坂R8と、上り坂R10とにより構成されるものとする。ただし、下り坂R8、平坦なルートR9、上り坂R10の区間は、渋滞等により車両1が低速で走行する区間(以下、低速エリアと称する)であるものとする。なお、これらのルートに関する情報は、記憶装置に記憶されている地図情報や、データセンタから送信される各種情報に基づいて、取得可能である。
【0028】
図3の下側には、バッテリ5のSOCの遷移例を実線L3、L4で示す。なお、図3では、SOCの下限値を点線で示す。また、実線L3は、バッテリ5のSOCの予測値の遷移例である。
【0029】
ここで、低速エリアは、車両1の車輪と路面との接触音に起因する音(いわゆる、走行時に発生する騒音、ロードノイズ)が小さく、車両1において発生する音に乗員が気づき易い道路である。そこで、車両1が低速エリアを走行している場合には、ロードノイズの影響を考慮して、内燃機関2を駆動させずに、バッテリ5の電力を用いて走行用モータ4により車両1が駆動される。このように、低速エリアでは、内燃機関2による発電が行われない状態で走行用モータ4による駆動が行われるため、バッテリ5からの電力が用いられる。このため、実線L3のように、低速エリアでの車両1の走行に応じて、バッテリ5のSOCが減少する。ただし、このように低速エリアでバッテリ5の放電が行われると、バッテリ5のSOCの下限値を下回ることになる。このように、バッテリ5のSOCの下限値を下回った場合には、内燃機関2の駆動による強制充電が実行されることになり、内燃機関2の駆動音が乗員に不快感を与えるおそれがある。
【0030】
そこで、本実施形態では、上述したように、予測ルートを作成し、その予測ルートにおけるSOC推移予測値に基づいてバッテリ5の放充電制御を実行する。このようなSOC推移予測値によれば、矢印A2で示すように、車両1が低速エリアに到達する前に、バッテリ5の事前充電を実行する。すなわち、SOC推移予測値がSOC下限値を超過する場合には、超過する分だけSOCが増加するように事前充電を行う。これにより、実線L4に示すように、車両1が低速エリアを走行する場合でもバッテリ5のSOCの下限値に達することを防止することができ、強制充電の実行を防止することができる。
【0031】
[SOC推移予測例]
最初に、予測ルート及びSOC推移予測値を作成する際に用いられる各情報について、図4図5を参照して説明する。
【0032】
[SOC変化量期待値の算出例]
図4は、3つのルートR22a乃至R22cに分岐する分岐点B21を示す図である。ルートR22aは、分岐点B21から次の分岐点B22aまでの道路であり、ルートR22bは、分岐点B21から次の分岐点B22bまでの道路であり、ルートR22cは、分岐点B21から次の分岐点B22cまでの道路であるものとする。なお、分岐点B21以前の各ルートと、分岐点B22a乃至B22c以降の各ルートについては、図示を省略する。
【0033】
図5は、図4に示す分岐点B21を基準とする場合のSOC変化量期待値を算出する際に用いられる各情報を示す図である。なお、図4図5では、車両1が走行すると想定されるルートにおける各分岐点でのSOC変化量期待値を計算する場合の計算方法の一例を示す。
【0034】
具体的には、図4に示す分岐点B21でのSOC変化量期待値を算出する場合には、分岐点B21から延びる各ルートR22a乃至R22cについてのSOC増減量予測値と、ルート選択確率とを求める。そして、それらの各値に基づいて各ルートR22a乃至R22cのSOC変化量期待値を求める。
【0035】
なお、SOC変化量期待値の算出対象となるルート(以下、対象ルートと称する)のSOC増減量予測値は、対象ルートにおいて発電用モータ3により発電可能な電力量(推定発電量)と、対象ルートにおいて走行用モータ4により消費される電力量(推定消費量)とに基づいて求めることができる。すなわち、対象ルートにおける推定発電量に基づくSOCの増加量と、対象ルートにおける推定消費量に基づくSOCの減少量との加算値を、対象ルートにおけるSOC増減量予測値とすることができる。なお、対象ルートにおいて発電用モータ3による発電が行われる区間(例えば、下り坂や粗い路面)を発電区間と称して説明する。
【0036】
なお、対象ルートにおける発電用モータ3による推定発電量は、公知の演算方法により求めることができる。例えば、対象ルートにおける発電区間での車両1の走行距離と、対象ルートの勾配(すなわち高低差)と、対象ルートにおける車両1の統計車速(統計的に予測される車速)とに基づいて、対象ルートでの消費電力量を演算することができる。また、対象ルートでの走行用モータ4の推定消費量は、公知の演算方法により求めることができる。例えば、対象ルートにおける車両1の走行距離と、対象ルートの勾配と、対象ルートにおける車両1の統計車速とに基づいて、対象ルートでの推定消費量を演算することができる。なお、駆動以外の消費エネルギ(例えば、エアコン、音響機器、ナビゲーション装置、冷却システムなどの消費量)を考慮して、対象ルートでの消費電力量を演算するようにしてもよい。また、これらの各演算に用いられる各情報については、記憶装置に記憶されている地図情報や、データセンタから送信される各情報から取得可能である。
【0037】
なお、これらの各演算に用いられる統計車速の代わりに、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)による速度情報、制限車速を用いるようにしてもよい。また、道路種別、道幅、車線数、気温のうちの少なくとも1つに基づいて、車速を推定するようにしてもよい。
【0038】
図5では、ルートR22aのSOC増減量予測値として「+10(%)」が算出され、ルートR22bのSOC増減量予測値として「+4(%)」が算出され、ルートR22cのSOC増減量予測値として「+2(%)」が算出される例を示す。
【0039】
また、対象ルートのルート選択確率は、SOC変化量期待値の算出対象となる分岐点(以下、対象分岐点と称する)から延びる複数のルートのうちから、車両1が進行すると推定されるルートとして対象ルートが選択される確率を意味する。なお、対象分岐点から延びる各ルートのルート選択確率の合計値は100(%)となる。また、ルート選択確率については、車両1のドライバ毎の走行履歴に基づいて統計的に算出された確率を用いるようにしてもよく、複数車両の走行履歴に基づいて統計的に算出された確率を用いるようにしてもよい。また、車幅や道路の種類(例えば、幹線道路、細い路地)に基づいて、ルート選択確率を求めるようにしてもよい。例えば、幹線道路のルート選択確率を高い値とし、細い路地のルート選択確率を低い値とすることができる。また、車両1に搭載される記憶装置に記憶されている地図情報や、データセンタから送信される各情報に基づいて、ルート選択確率を取得するようにしてもよい。
【0040】
図5では、ルートR22aのルート選択確率が80(%)であり、ルートR22bのルート選択確率が10(%)であり、ルートR22cのルート選択確率が10(%)である場合の例を示す。
【0041】
また、対象ルートのSOC変化量期待値は、対象ルートのSOC増減量予測値と、対象ルートのルート選択確率との演算により求めることができる。例えば、対象ルートのSOC増減量予測値と、対象ルートのルート選択確率とを乗算し、その演算結果を対象ルートのSOC変化量期待値とすることができる。例えば、図5に示すように、ルートR22aのSOC増減量予測値「+10(%)」と、ルートR22aのルート選択確率「80(%)」とを乗算し、その演算結果(+8.0=+10×0.8)をルートR22aのSOC変化量期待値とすることができる。
【0042】
次に、対象分岐点でのSOC推移予測値の算出に最も寄与するルートの選択方法について説明する。本実施形態では、SOC推移予測値の算出に最も寄与するルートとして、対象分岐点での各SOC変化量期待値の絶対値が最も大きいルートを選択する例を示す。なお、本実施形態では、SOC推移予測値の算出に最も寄与するルートとして選択された各ルートを繋ぎ合わせたルートを予測ルートと称して説明する。なお、予測ルートは、シナリオルート、期待ルートなどと称することができる。
【0043】
図5に示す例では、分岐点B21での各ルートR22a乃至22cのSOC変化量期待値の絶対値(+8.0、+0.4、+0.2)のうちで、最も大きい値(+8.0)であるルートR22aが選択される。
【0044】
次に、分岐点B21でのSOC推移予測値の算出方法について説明する。本実施形態では、分岐点B21での各ルートR22a乃至22cのSOC変化量期待値の合計値を、分岐点B21でのSOC推移予測値として算出する例を示す。図5に示す例では、分岐点B21での各ルートR22a乃至22cのSOC変化量期待値(+8.0、+0.4、+0.2)の合計値が、分岐点B21でのSOC推移予測値(+8.6)として算出される。
【0045】
以降も同様に、SOC変化量期待値の絶対値が最も大きいルートを車両1が走行すると想定してSOC推移予測値が順次算出される。図4に示す例では、分岐点B21についてルートR22aが選択されるため、ルートR22aの分岐点B22aについて、分岐点B21と同様の計算が行われる。
【0046】
このように、本実施形態では、車両1が走行すると予想される複数のルートについて、分岐点から延びる各ルートにおけるSOC増減量予測値及びルート選択確率を求める。そして、SOC増減量予測値及びルート選択確率に基づいて、各ルートにおけるSOC変化量期待値を求める。また、各分岐点でSOC変化量期待値のうち、絶対値が最大のルートを予測ルートとして選択し、これらの選択された各予測ルートを繋ぎ合わせたルートを、車両1の予測ルートとする。また、その予測ルートにおける各分岐点でのSOC推移予測値に基づいて、バッテリ5のSOC推移を予測する。
【0047】
なお、図4図5に示す例では、分岐点B21から延びる全てのルートR22a乃至R22cについて、SOC増減量予測値及びSOC変化量期待値を求める例を示した。ここで、車両1が進行することが少ない路地へ繋がる分岐が多い道路などでは、その路地へのルート選択確率が極端に低いことも想定される。そこで、そのようなルート選択確率が低いルートに対しては、SOC増減量予測値及びSOC変化量期待値の演算を省略するようにしてもよい。例えば、ルート選択確率が所定値以下(例えば、5%以下)のルートに対しては、それらの演算を省略することができる。すなわち、分岐点から延びる複数のルートのうち、ルート選択確率が所定値以下であるルートを、予測ルートの選択対象から除外することができる。
【0048】
また、車両1が走行すると推定されるルートの全てについて、SOC増減量予測値及びSOC変化量期待値を求めると、統合コントローラ34の処理負荷が増加する。そこで、統合コントローラ34の処理負荷を軽減するため、計算対象とする分岐点の上限数を設定するようにしてもよい。例えば、車両1の現在地から最も近い分岐点から延びる複数のルートについて、その分岐点から、所定数(例えば、10乃至100)の分岐点までをSOC増減量予測値及びSOC変化量期待値の演算対象とするようにしてもよい。図4に示す例では、分岐点B21から延びる各ルートR22a乃至R22cのうち、ルートR22aが予測ルートとして選択される。この場合に、所定数を10とすると、分岐点B22aからカウントして10までの分岐点を、SOC増減量予測値及びSOC変化量期待値の演算対象とすることができる。
【0049】
[予測ルートの作成例とSOC推移予測値の算出例]
次に、複数の分岐点を参照して、車両1の予測ルートを作成する作成例と、SOC推移予測値を算出する算出例について、図6図7を参照して説明する。
【0050】
図6は、車両1が走行すると推定されるルートにおける各分岐点でのSOC増減量予測値を模式的に示す図である。図6では、図4図5で示した例と同様に、車両1が走行すると推定される複数のルートについて、各分岐点におけるSOC増減量予測値、SOC変化量期待値を計算し、その各分岐点でのSOC変化量期待値の絶対値が最大のルートを予測ルートとして選択する例を示す。また、その選択された各予測ルートを繋ぎ合わせて車両1の予測ルートを作成し、車両1の予測ルートにおける各分岐点でのSOC推移予測値を積算し、車両1の予測ルートにおけるSOC推移予測値を求める例を示す。
【0051】
なお、図6では、説明を容易にするため、予測ルートとして選択されるルートと、この予想ルートの分岐点から延びるルートの一部を示す。具体的には、車両1が走行すると推定されるルートにおける各分岐点を、分岐点B11乃至B15bとして示す。また、分岐点B11乃至B15bから延びる各ルートを、ルートRB12a乃至RB15bとして示す。また、分岐点B11乃至B15bにおけるSOC増減量予測値の大きさを白抜きの矢印で模式的に示す。なお、上向きの白抜きの矢印は、SOC増減量予測値が正の値であることを示し、下向きの白抜きの矢印は、SOC増減量予測値が負の値であることを示す。
【0052】
分岐点B11は、車両1の現在地に最も近い分岐点を示す。分岐点B11からは、分岐点B12aに向かうルートRB12aと、分岐点B12bに向かうルートRB12bとが延びているものとする。この場合には、ルートRB12a、RB12bのそれぞれについて、SOC増減量予測値が求められる。すなわち、車両1がルートRB12aを走行した場合におけるSOC増減量予測値と、車両1がルートRB12bを走行した場合におけるSOC増減量予測値とが求められる。なお、ルートRB12aを走行した場合におけるSOC増減量予測値を上側の白抜きの矢印で示し、ルートRB12bを走行した場合におけるSOC増減量予測値を下側の白抜きの矢印で示す。
【0053】
また、分岐点B11から車両1が進行するルートとしてルートRB12a、RB12bが選択される確率(ルート選択確率)を求められる。そして、ルートRB12aについて求められたSOC増減量予測値及びルート選択確率に基づいて、ルートRB12aのSOC変化量期待値が求められる。同様に、ルートRB12bについて求められたSOC増減量予測値及び選択確率に基づいて、ルートRB12bのSOC変化量期待値が求められる。なお、SOC変化量期待値の算出方法は、図5に示す例と同様である。
【0054】
そして、求められたルートRB12aのSOC変化量期待値と、ルートRB12bのSOC変化量期待値とに基づいて、SOC推移予測値の算出に最も寄与するルートが選択される。具体的には、求められたルートRB12aのSOC変化量期待値と、ルートRB12bのSOC変化量期待値とのうちから、絶対値が大きいルートが、予測ルートとして選択される。図6に示す例では、ルートRB12aのSOC変化量期待値の絶対値の方が大きく、ルートRB12aが予測ルートとして選択された場合を示す。
【0055】
このように、ルートRB12aが予測ルートとして選択された場合には、分岐点B11での予測ルートの選択方法と同様に、ルートRB12aの次の分岐点B12aでの予測ルートを選択する。また、分岐点B12a以降の各分岐点でも同様に、予測ルートを選択する。図6に示す例では、分岐点B12aではルートRB13aが予測ルートとして選択され、分岐点B13aではルートRB14aが予測ルートとして選択され、分岐点B14aではルートRB15aが予測ルートとして選択され、分岐点B15aではルートRB15aが予測ルートとして選択された場合の例を示す。なお、本実施形態では、分岐点B11から順次選択された各予測ルートを分岐点毎に繋ぎ合わせたルートを、車両1の予測ルートと称して説明する。
【0056】
また、車両1の予測ルートにおける各分岐点B11、B12a、B13a、B14a、B15aで求められたSOC推移予測値を積算し、その積算値(合計値)を、車両1の予測ルートにおけるSOC推移予測値として求める。図6に示す例で求められたSOC推移予測値を図7に示す。
【0057】
図7は、車両1の予測ルートにおけるSOC推移予測値の一例を示す図である。図7では、図6に示す例で求められた車両1の予測ルートの各分岐点におけるSOC推移予測値に対応する直線を繋ぎ合わせた線を太線L11で簡略化して示す。なお、図7に示すグラフの縦軸は、バッテリ5のSOCの値を示し、横軸は、車両1の走行距離を示す。
【0058】
図7に示すように、車両1の予測ルートに対して、SOC推移予測値が求められるため、SOC推移予測値に基づいて、バッテリ5の充放電の制御を実行することができる。例えば、SOC推移予測値に基づいて、バッテリ5のSOCが上限値に到達することが予測できる場合には、バッテリ5のSOCが上限値に到達する前に、車両1をEV走行させてバッテリ5のSOCを減少させるように制御する。例えば、図7の太線L11で示すように、位置D12のタイミングでバッテリ5のSOCが上限値に到達することが予測できる場合には、位置D12よりも前の位置D11のタイミングで、車両1をEV走行させてバッテリ5のSOCを減少させる。なお、バッテリ5のSOCを減少させた場合のSOCの遷移例を直線L12で示す。このように、SOC推移予測値に基づく事前放電制御を実行することにより、下り坂での回生エネルギのとりこぼしを防止することができる。
【0059】
また、例えば、SOC推移予測値に基づいて、バッテリ5のSOCが下限値に到達することが予測できる場合には、バッテリ5のSOCが下限値に到達する前に、内燃機関2を駆動させてバッテリ5への充電を行い、バッテリ5のSOCを増加させるように制御する。このように、SOC推移予測値に基づく事前充電制御を実行することにより、強制充電せずEV走行できるようにSOC計画を実行することができる。なお、図6図7では、バッテリ5のSOCの上限値及び下限値が固定の場合の例を示した。ただし、気温に応じて、バッテリ5のSOCの上限値及び下限値が変更されることも想定される。そこで、気温に応じて、バッテリ5のSOCの上限値及び下限値が変更される場合には、気温に応じた変更後のSOCの上限値及び下限値を用いて、上述したSOC推移予測値に基づく充放電制御を実行するようにする。
【0060】
[分岐点間の距離を考慮した予測ルートの作成例とSOC推移予測値の算出例]
図4乃至図7では、分岐点間の距離を考慮せずに予測ルートを作成する作成例とSOC推移予測値を算出する算出例を示した。ここで、分岐点から次の分岐点までの距離を考慮して予測ルートの作成とSOC推移予測値の算出をするようにしてもよい。そこで、図8乃至図10では、分岐点から次の分岐点までの距離を考慮して、車両1の予測ルートを作成する作成例と、SOC推移予測値を算出する算出例について説明する。
【0061】
図8は、分岐点間の距離が異なる複数のルートを示す図である。なお、ルートR31aは、分岐点B31から次の分岐点B34までの道路であり、ルートR31bは、分岐点B31から次の分岐点B32までの道路であるものとする。また、ルートR32aは、分岐点B32から次の分岐点B33までの道路であり、ルートR32bは、分岐点B32から次の分岐点B37までの道路であるものとする。また、ルートR33aは、分岐点B33から次の分岐点B35までの道路であり、ルートR33bは、分岐点B33から次の分岐点B36までの道路であるものとする。ルートR31aの距離を100m、ルートR31bの距離を50m、ルートR32aの距離を30mとする。また、ルートR33aの距離は20mよりも長く、ルートR33bの距離は20mよりも長く、ルートR32bの距離は50mよりも長いものとする。また、分岐点B31を基準とした場合のルートR31aの距離と同じ距離の範囲を、点線RA1で示す。
【0062】
図9は、図8に示す分岐点B31でのSOC変化量期待値を算出する際に基準となる各ルート構成を示す図である。図8乃至図10に示す例では、分岐点から次の分岐点までのルートの長さが異なる場合には、基準となる分岐点からの距離が最も長いルートを基準ルートして、各ルートのSOC増減量予測値、ルート選択確率、SOC変化量期待値を求め、SOC変化量期待値に基づいて予測ルートを選択する。
【0063】
具体的には、図8に示す分岐点B31を基準とする場合には、分岐点B31からの距離が最も長いルートR31aを基準ルートとする。また、基準ルートR31a以外の各ルートについては、分岐点B31からの距離が基準ルートR31aと同じ距離となるように、分岐点B31以降の各分岐点からのルートを選択する。
【0064】
具体的には、図8に示す分岐点B31を基準とする場合には、分岐点B34に延びる第1ルート(基準ルートR31a)と、分岐点B35に延びる第2ルートR31b→R32a→R33aと、分岐点B36に延びる第3ルートR31b→R32a→R33bと、分岐点B37に延びる第4ルートR31b→R32bとが選択される。ここで、第2乃至第4ルートの距離を、基準ルートR31aの距離と同じにするため、第2ルートのルートR33aと、第3ルートのルートR33bと、第4ルートのルートR32bとについては、点線RA1で示す範囲内のルートのみを使用する。このルートの構成例を図9に示す。
【0065】
図9に示すように、第2ルートのルートR33aについては、最初の20mのみを計算対象とする。また、第3ルートのルートR33bについても、最初の20mのみを計算対象とする。また、第4ルートのルートR32bについては、最初の50mのみを計算対象とする。
【0066】
図10は、図8に示す分岐点B31を基準とする場合のSOC変化量期待値を算出する際に用いられる各情報を示す図である。
【0067】
最初に、図10の上から3行目までに示すように、基準分岐点B31から最も遠い分岐点B33についてSOC変化量期待値を求める。具体的には、第2ルートのルートR33aの最初の20mと、第3ルートのルートR33bの最初の20mとについて、SOC増減量予測値(+5、-3)、ルート選択確率(70%、30%)が求められる。なお、ルート選択確率については、各ルートR33a、R33bについて求められる値が用いられる。次に、それらの各値に基づいて、各区間のSOC変化量期待値(+3.5、-0.9)が求められる。次に、上述した各区間のSOC変化量期待値(+3.5、-0.9)に基づいて、分岐点B33以降の20mの区間におけるSOC変化量期待値(+2.6)が求められる。この例では、第2ルートのルートR33aの最初の20mと、第3ルートのルートR33bの最初の20mとについて求められた各区間のSOC変化量期待値(+3.5、-0.9)を加算してSOC変化量期待値(+2.6)を求める例を示す。
【0068】
次に、図10の上から4行目から7行目までに示すように、基準分岐点B31から2番目に遠い分岐点B32についてSOC変化量期待値を求める。具体的には、第2、第3ルートの分岐点B33までの30(m)と分岐点B33以降の20(m)とについて、SOC増減量予測値(+0.6)、ルート選択確率(40%)が求められる。なお、この場合のSOC増減量予測値(+0.6)については、上述した分岐点B33についてのSOC変化量期待値(+2.6)と、分岐点B32から分岐点B33までの30(m)の区間におけるSOC増減量予測値(-2)とを合計した値(+0.6=(-2)+(+2.6))とする。また、第4ルートのルートR32bのうちの最初の50(m)について、SOC増減量予測値(-10)、ルート選択確率(60%)が求められる。次に、それらの各値に基づいて、各区間のSOC変化量期待値(+0.2、-6.0)が求められる。次に、上述した各区間のSOC変化量期待値(+0.2、-6.0)に基づいて、分岐点B32以降の50mの区間におけるSOC変化量期待値(-5.8)が求められる。
【0069】
次に、図10の上から8行目から11行目までに示すように、基準分岐点B31についてSOC変化量期待値を求める。具体的には、第2乃至第4ルートの分岐点B32までの50(m)と分岐点B32以降の50(m)とについて、SOC増減量予測値(-7.8)、ルート選択確率(20%)が求められる。なお、この場合のSOC増減量予測値(-7.8)については、上述した分岐点B32についてのSOC変化量期待値(-5.8)と、分岐点B32までの50(m)の区間におけるSOC増減量予測値(-2)とを合計した値(-7.8=(-2)+(-5.8))とする。また、第1ルートのルートR31aの100(m)について、SOC増減量予測値(+10)、ルート選択確率(80%)が求められる。次に、それらの各値に基づいて、各区間のSOC変化量期待値(-1.6、+8.0)が求められる。なお、図10では、説明を容易にするため、小数点第二位を四捨五入する例を示す。次に、上述した各区間のSOC変化量期待値(-1.6、+8.0)に基づいて、分岐点B31からの100mの区間におけるSOC変化量期待値(+6.4)が求められる。
【0070】
このようにして求められた各区間のSOC変化量期待値に基づいて、予測ルートが選択される。図10に示す例では、第1ルートのルートR31aのSOC変化量期待値(+8.0)が最も大きいため、ルートR31aが予測ルートとして選択される。また、この場合におけるSOC推移予測値は、+6.4となる。
【0071】
このように、分岐点間の距離を考慮して車両1の予測ルートの作成とSOC推移予測値の算出をする場合には、基準分岐点から最も遠い分岐点から計算を開始し、その最も遠い分岐点から基準分岐点に遡るように順次計算をする。すなわち、基準分岐点から延びるルートのうちから、距離が最も長いルートを選択し、その選択されたルートの距離の範囲内に含まれる他の分岐点のうちの末端の分岐点から計算が開始される。
【0072】
なお、図8乃至図10では、基準分岐点B31からの距離が最も長いルートR31aが予測ルートとして選択されるため、次の基準分岐点が分岐点B34となる例を示した。ただし、図8に示すルート構成の場合に、ルートR31a以外のルートが予測ルートとして選択された場合についても同様に、車両1の予測ルートの作成とSOC推移予測値の算出をすることができる。例えば、第2乃至第4ルートの何れかのルートが予測ルートとして選択された場合を想定する。この場合には、ルートR31bが予測ルートとして選択され、分岐点B31の次の基準分岐点が分岐点B32となる。また、基準分岐点B31におけるSOC推移予測値の算出には、ルートR31a、R31bについて求められる各値が用いられる。
【0073】
このように、図8乃至図10に示す例では、分岐点から延びる複数のルートのうち、次の分岐点までの距離が最も長いルートを基準として、SOC変化量期待値を複数のルート毎に算出する。そして、複数のルート毎のSOC変化量期待値に基づいて、予測ルートを選択する。
【0074】
[充放電制御処理例]
図11は、統合コントローラ34による充放電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この処理手順は、記憶部(図示省略)に記憶されているプログラムに基づいて実行される。また、本実施形態では、統合コントローラ34により放充電制御処理を実行する例を示すが、1または複数の他のコントローラにより充放電制御処理を実行するようにしてもよい。
【0075】
また、図11に示す処理手順は、所定タイミングで開始される。例えば、目的地が設定されない状態で車両1が走行を開始したタイミングで、この処理手順を実施してもよい。また、ナビゲーション機能を使用して乗員により車両1の目的地が設定された後において、ナビゲーション機能による案内ルートに対して逸脱が発生したタイミングで、この処理手順を実施してもよい。なお、逸脱は、例えば、案内ルートとは異なるルートに車両1が進行したことを意味する。
【0076】
ステップS301において、統合コントローラ34は、車両1が走行すると推定されるルートを検索する。なお、ナビゲーション装置、MPP(most probable path)、データセンタを利用してルート検索をするようにしてもよい。例えば、図6に示すように、複数のルートが探索される。
【0077】
ステップS302において、統合コントローラ34は、検索されたルートにおける各分岐点でのSOC増減量予測値とルート選択確率とをルート毎に求める。例えば、図5に示すように、分岐点B21でのSOC増減量予測値とルート選択確率とがルートR22a乃至R22cについて求められる。
【0078】
ステップS303において、統合コントローラ34は、検索されたルートにおける各分岐点でのSOC変化量期待値をルート毎に算出する。例えば、図5に示すように、分岐点B21でのSOC変化量期待値がルートR22a乃至R22cについて求められる。
【0079】
ステップS304において、統合コントローラ34は、検索されたルートにおける各分岐点でのSOC変化量期待値の絶対値が最も大きいルートを予測ルートとして選択する。図5に示す例では、分岐点B21でのSOC変化量期待値の絶対値が最も大きいルートR22aが予測ルートとして選択される。なお、乗員により車両1の目的地が設定された場合には、その目的地までの案内ルート(例えば、ナビゲーション機能により求められた案内ルート)を予測ルートとして選択するようにしてもよい。この場合には、その案内ルートにおける各分岐点について、SOC増減量予測値、ルート選択確率、SOC変化量期待値、SOC推移予測値の算出が行われる。また、車両1の目的地が設定された場合において、その目的地までの案内ルートから車両1が逸脱したときには、その逸脱後の車両1の現在地を基準として、上述した予測ルートの選択処理、SOC増減量予測値、ルート選択確率、SOC変化量期待値、SOC推移予測値の算出処理が実行される。
【0080】
ステップS305において、統合コントローラ34は、選択された予測ルートにおける各分岐点でのSOC推移予測値を算出する。図5に示す例では、分岐点B21でのSOC変化量期待値の合計値(+8.6)が、分岐点B21でのSOC推移予測値として算出される。
【0081】
ステップS306において、統合コントローラ34は、選択された予測ルートにおける各分岐点でのSOC推移予測値を積算して車両1の予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出する。図6に示す例では、選択された予測ルートにおける各分岐点B11、B12a、B13a、B14a、B15aでのSOC推移予測値を積算して車両1の予測ルートにおけるSOC推移予測値が算出される。
【0082】
ステップS307において、統合コントローラ34は、選択された予測ルートにおけるSOC推移予測値がSOC上限値を上回っているか否かを判定する。例えば、図7に示す例では、SOC推移予測値がSOC上限値を上回っていると判定される。選択された予測ルートにおけるSOC推移予測値がSOC上限値を上回っている場合には、ステップS320に進む。一方、選択された予測ルートにおけるSOC推移予測値がSOC上限値を上回っていない場合には、ステップS308に進む。
【0083】
ステップS308において、統合コントローラ34は、選択された予測ルートにおけるSOC推移予測値がSOC下限値を下回っているか否かを判定する。選択された予測ルートにおけるSOC推移予測値がSOC下限値を下回っている場合には、ステップS330に進む。一方、選択された予測ルートにおけるSOC推移予測値がSOC下限値を下回っていない場合には、充放電制御処理の動作を終了する。
【0084】
ステップS320において、統合コントローラ34は、事前放電制御計画処理を実行する。すなわち、統合コントローラ34は、車両1の予測ルートにおけるSOC推移予測値が最大になると予測される予測ルートにおける第1地点と、車両1の現在地との間でバッテリ5の放電量を増加させる制御を実行する。例えば、図7に示す例では、車両1が位置D13を通過するタイミングで、予測ルートにおけるSOC推移予測値が最大になると予測される。この場合には、予測ルートにおける第1地点は、位置D13である。なお、この事前放電制御計画処理については、図12を参照して説明する。
【0085】
ステップS330において、統合コントローラ34は、事前充電制御計画処理を実行する。すなわち、統合コントローラ34は、車両1の予測ルートにおけるSOC推移予測値が最小になると予測される予測ルートにおける第2地点と、車両1の現在地との間でバッテリ5の充電量を増加させる制御を実行する。例えば、図3に示す例では、位置D2を通過するタイミングで、予測ルートにおけるSOC推移予測値が最小になると予測される。この場合には、予測ルートにおける第2地点は、位置D2である。なお、この事前放電制御計画処理については、図13を参照して説明する。
【0086】
[事前放電制御計画処理例]
図12は、統合コントローラ34による事前放電制御計画処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理手順は、図11に示す処理手順のうちの事前放電制御計画処理(図11に示すステップS320の処理手順)である。
【0087】
ステップS321において、統合コントローラ34は、車両1の予測ルートにおいて車両1の走行時に放電可能なSOC減少量を放電可能区間毎に算出する。
【0088】
例えば、統合コントローラ34は、SOC推移予測値が最大になると予測される予測ルートにおける第1地点と車両1の現在地との間で、車両1の走行時に放電可能な区間を抽出する。ここで、放電可能な区間は、例えば、車両1がEV走行をする低速エリア、渋滞区間などである。また、駆動以外の消費エネルギ(例えば、エアコン、冷却システムなどの消費量)が高いと想定される区間(例えば冬場の寒冷地、真夏の走行区間)も、放電可能な区間として考えられる。そして、統合コントローラ34は、その抽出された放電可能な区間毎に、バッテリ5のSOC減少量を算出する。なお、SOC減少量の算出方法は、上述したSOC増減量予測値の算出方法と同様である。
【0089】
ステップS322において、統合コントローラ34は、SOC減少量の合計値を算出する。例えば、統合コントローラ34は、ステップS321で抽出された放電可能な区間について、第1地点に近い区間から順番に車両1の現在地に向かってSOC減少量を順次積算(すなわち加算)し、その積算結果をSOC減少量の合計値(積算SOC減少量)とする。
【0090】
ステップS323において、統合コントローラ34は、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値のSOC上限値からの超過量以上であるか否かを判定する。SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値のSOC上限値からの超過量以上である場合には、ステップS324に進む。一方、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値のSOC上限値からの超過量未満である場合には、ステップS325に進む。
【0091】
ステップS324において、統合コントローラ34は、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値のSOC上限値からの超過量以上となるように、放電可能区間において事前放電制御を実行する。すなわち、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値のSOC上限値からの超過量以上であるため、全ての放電可能区間で放電を実行せずに、一部の放電可能区間でのみ放電を実行する。
【0092】
この場合に、統合コントローラ34は、ステップS321で抽出された放電可能な区間のうちから、上述した第1地点に近い区間側で事前放電を実施するようにする。すなわち、統合コントローラ34は、ステップS321で抽出された放電可能な区間のうち、上述した第1地点に最も近い区間から、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値の最大値のSOC上限値からの超過量以上となる区間までの各区間において、事前放電を実施する。
【0093】
例えば、ステップS321において、放電可能な区間として、10区間IN1乃至IN10が抽出された場合を想定する。なお、車両1の現在地に最も近い区間を区間IN1とし、第1地点に最も近い区間を区間IN10とする。この場合に、第1地点側の区間IN6乃至10における事前放電を実施することにより、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値の最大値のSOC上限値からの超過量以上となるものとする。この場合には、統合コントローラ34は、ステップS321で抽出された放電可能な区間IN1乃至IN10のうち、区間IN6乃至IN10において、事前放電を実施する。このように、本実施形態では、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値のSOC上限値からの超過量以上となる場合には、SOC推移予測値が最大になると予測される第1地点に近い側の区間において、事前放電を実行する。
【0094】
ただし、他の条件に基づいて事前放電をする区間を選択するようにしてもよい。例えば、放電効率が高い区間を選択するようにしてもよく、所定間隔毎に事前放電をする区間を選択するようにしてもよい。また、車両1側の区間や、車両1と第1地点との中間に存在する区間のみを選択するようにしてもよい。
【0095】
また、放電量については、他の基準に基づいて決定してもよい。例えば、バッテリ5のSOC下限値からSOC上限値までの値(すなわちバッテリ5のSOC下限値からSOC上限値までの幅)を基準にして、放電量を決定するようにしてもよい。すなわち、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値のSOC上限値からの超過量以上となる場合には、SOC減少量の合計値が、バッテリ5のSOC下限値からSOC上限値までの値の範囲内となる放電量を、放電可能な各区間において事前放電を実施するようにしてもよい。この場合には、第1地点に近い側の各区間において事前放電を実行することが好ましい。
【0096】
ステップS325において、統合コントローラ34は、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値のSOC上限値からの超過量以上となるように、放電可能区間とともに、放電可能区間以外の区間においても、事前放電制御を実行する。
【0097】
例えば、ステップS321において、放電可能な区間として、10区間IN1乃至IN10が抽出された場合を想定する。この場合には、統合コントローラ34は、放電可能な区間IN1乃至IN10の全ての区間において事前放電を実施する。ただし、このような事前放電を実施しても、SOC減少量の合計値が、SOC推移予測値の最大値のSOC上限値からの超過量以上とならない。そこで、統合コントローラ34は、他の区間において放電が可能であるか否かを判定し、放電が可能である区間が存在する場合には、その区間において放電を実行する。この区間は、例えば、駆動以外の消費エネルギ(例えば、エアコン、冷却システムなどの消費量)を多くできる区間である。なお、統合コントローラ34は、放電が可能である区間が存在しない場合には、放電可能な区間IN1乃至IN10においてのみ事前放電を実施する。
【0098】
[事前充電制御計画処理例]
図13は、統合コントローラ34による事前充電制御計画処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理手順は、図11に示す処理手順のうちの事前充電制御計画処理(図11に示すステップS330の処理手順)である。
【0099】
ステップS331において、統合コントローラ34は、車両1の予測ルートにおいて車両1の走行時に充電可能なSOC増加量を充電可能区間毎に算出する。
【0100】
例えば、統合コントローラ34は、SOC推移予測値が最小になると予測される予測ルートにおける第2地点と車両1の現在地との間で、車両1の走行時に充電可能な区間を抽出する。ここで、充電可能な区間は、例えば、下り回生による発電が行われる下り坂、ロードノイズの影響が大きい環境であって車内騒音に影響なく充電が可能な粗い路面などである。そして、統合コントローラ34は、その抽出された充電可能な区間毎に、バッテリ5のSOC増加量を算出する。なお、SOC増加量の算出方法は、上述したSOC増減量予測値の算出方法と同様である。
【0101】
ステップS332において、統合コントローラ34は、SOC増加量の合計値を算出する。例えば、統合コントローラ34は、ステップS331で抽出された充電可能な区間について、第2地点に近い区間から順番に車両1の現在地に向かってSOC増加量を順次積算(すなわち加算)し、その積算結果をSOC増加量の合計値(積算SOC増加量)とする。
【0102】
ステップS333において、統合コントローラ34は、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値のSOC下限値からの超過量以上であるか否かを判定する。SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値のSOC下限値からの超過量以上である場合には、ステップS334に進む。一方、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値のSOC下限値からの超過量未満である場合には、ステップS335に進む。
【0103】
ステップS334において、統合コントローラ34は、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値のSOC下限値からの超過量以上となるように、充電可能区間において事前充電制御を実行する。すなわち、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値のSOC下限値からの超過量以上であるため、全ての充電可能区間で充電を実行せずに、一部の充電可能区間でのみ充電を実行する。
【0104】
この場合に、統合コントローラ34は、ステップS331で抽出された重電可能な区間のうちから、上述した第2地点に近い区間側で事前充電を実施するようにする。すなわち、統合コントローラ34は、ステップS331で抽出された充電可能な区間のうち、上述した第2地点に最も近い区間から、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値の最小値のSOC下限値からの超過量以上となる区間までの各区間において、事前充電を実施する。
【0105】
例えば、ステップS331において、充電可能な区間として、10区間IN11乃至IN20が抽出された場合を想定する。なお、車両1の現在地に最も近い区間を区間IN11とし、第2地点に最も近い区間を区間IN20とする。この場合に、第2地点側の区間IN16乃至20における事前充電を実施することにより、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値の最小値のSOC下限値からの超過量以上となるものとする。この場合には、統合コントローラ34は、ステップS331で抽出された充電可能な区間IN11乃至IN20のうち、区間IN16乃至IN20において、事前充電を実施する。このように、本実施形態では、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値のSOC下限値からの超過量以上となる場合には、SOC推移予測値が最小になると予測される第2地点に近い側の区間において、事前充電を実行する。
【0106】
ただし、他の条件に基づいて事前充電をする区間を選択するようにしてもよい。例えば、充電効率が高い区間を選択するようにしてもよく、所定間隔毎に事前充電をする区間を選択するようにしてもよい。また、車両1側の区間や、車両1と第2地点との中間に存在する区間のみを選択するようにしてもよい。
【0107】
また、充電量については、他の基準に基づいて決定してもよい。例えば、バッテリ5のSOC下限値からSOC上限値までの値(すなわちバッテリ5のSOC下限値からSOC上限値までの幅)を基準にして、充電量を決定するようにしてもよい。すなわち、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値のSOC下限値からの超過量以上となる場合には、SOC増加量の合計値が、バッテリ5のSOC下限値からSOC上限値までの値の範囲内となる充電量を、充電可能な各区間において事前充電を実施するようにしてもよい。この場合には、第2地点に近い側の各区間において事前充電を実行することが好ましい。
【0108】
ステップS335において、統合コントローラ34は、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値のSOC下限値からの超過量以上となるように、充電可能区間とともに、充電可能区間以外の区間においても、事前充電制御を実行する。
【0109】
例えば、ステップS331において、充電可能な区間として、10区間IN11乃至IN20が抽出された場合を想定する。この場合には、統合コントローラ34は、充電可能な区間IN11乃至IN20の全ての区間において事前充電を実施する。ただし、このような事前充電を実施しても、SOC増加量の合計値が、SOC推移予測値の最小値のSOC下限値からの超過量以上とならない。そこで、統合コントローラ34は、他の区間において充電が可能であるか否かを判定し、充電が可能である区間が存在する場合には、その区間において充電を実行する。なお、統合コントローラ34は、充電が可能である区間が存在しない場合には、充電可能な区間IN11乃至IN20においてのみ事前充電を実施する。
【0110】
なお、図11乃至図13では、予測ルートにおけるSOC推移予測値と、バッテリ5のSOC上限値及びSOC下限値とに基づいて、事前放電制御計画処理または事前充電制御計画処理を実行する例を示した。ただし、予測ルートにおけるSOC推移予測値がSOC上限値を上回るとともに、SOC下限値を下回ることも想定される。この場合には、事前放電制御計画処理及び事前充電制御計画処理の双方を実行することが可能である。例えば、予測ルートにおける前半区間では、SOC推移予測値がSOC上限値を上回るが、予測ルートにおける後半区間では、SOC推移予測値がSOC下限値を下回ることが考えられる。このような場合には、予測ルートにおける前半区間では、第1地点と車両1の現在地との間でバッテリ5の放電量を増加させる事前放電制御計画処理を実行し、予測ルートにおける後半区間では、第2地点と車両1の現在地(または第1地点)との間でバッテリ5の充電量を増加させる事前充電制御計画処理を実行することができる。ただし、予測ルートにおける後半区間では、前半部分における事前放電制御計画処理での放電量を考慮した充電量を設定し、第1地点及び第2地点間で事前充電を実行することが好ましい。または、予測ルートにおける前半区間での事前放電制御計画処理が終了した後(すなわち第1地点を経過した後)に、予測ルート及びSOC推移予測値を新たに作成し、新たな予測ルート及びSOC推移予測値に基づいて事前放電制御計画処理または事前充電制御計画処理を実行するようにしてもよい。
【0111】
なお、上述したように、統合コントローラ34は、道路の分岐点において各ルートへ進行する確率を予測するルート選択確率予測手段、道路情報取得手段によって得られる道路情報に基づいて道路の分岐点におけるルート選択確率を予測するルート選択確率予測手段として機能する。なお、道路情報取得手段は、ナビゲーション装置や、インターネットへの常時接続機能を具備するコネクテッド手段により実現される。また、統合コントローラ34は、ルート毎に車両1の走行負荷を予測する予測手段として機能する。また、統合コントローラ34は、各ルートにおける車両1のエネルギ消費量を演算するエネルギ消費量演算手段として機能する。このエネルギ消費量演算手段は、例えば、降坂路における回生可能なエネルギ量を演算する回生可能エネルギ演算手段と、エネルギ蓄積手段(例えばバッテリ5)で蓄積可能なエネルギ量を演算する蓄積可能量演算手段と、渋滞路や低速エリアにおける消費エネルギ演算手段と、登坂路における消費エネルギ演算手段とを含む。また、統合コントローラ34は、道路情報に基づいて、バッテリ5の充放電計画を作成する充放電計画作成手段として機能する。
【0112】
なお、本実施形態では、シリーズハイブリッド車両を例にして説明したが、本実施形態は、これに限定されない。例えば、プラグインハイブリッド車両についても本実施形態を適用可能である。また、内燃機関とモータとの両方を制駆動力源として、車両を駆動するパラレルハイブリット車両についても本実施形態を適用可能である。
【0113】
[本実施形態の構成及び効果]
本実施形態に係る車両1の制御方法は、走行用モータ4を制駆動力源とし、走行用モータ4との間で電力の授受を行うバッテリ5を備える車両の制御方法である。この制御方法は、分岐点から延びる各ルートへ車両1が進行する確率と、当該各ルートにおけるバッテリ5のSOC増減量予測値とに基づいて、車両1が走行すると予測される予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出する算出ステップ(ステップS305、S306)と、予測ルートにおけるSOC推移予測値の最大値がバッテリ5のSOC上限値を上回る場合に、SOC推移予測値が最大になると予測される予測ルートにおける第1地点と車両1の現在地との間でバッテリ5の放電量を増加させる事前放電制御計画処理(事前放電処理の一例)と、予測ルートにおけるSOC推移予測値の最小値がバッテリ5のSOC下限値を下回る場合には、SOC推移予測値が最小になると予測される予測ルートにおける第2地点と車両1の現在地との間でバッテリ5の充電量を増加させる事前充電制御計画処理(事前充電処理の一例)とのうちの少なくとも1つを実行する制御ステップ(ステップS307、S308、S320、S330)とを備える。なお、本実施形態に係る車両1の制御方法は、内燃機関及びモータのうちの少なくとも1つを制駆動力源とする車両にも適用可能である。
【0114】
このような車両1の制御方法によれば、予測ルートにおけるSOC推移予測値と、バッテリ5のSOC上限値及びSOC下限値とに基づいて、バッテリ5の充放電制御を適切に実行することができる。例えば、予測ルートにおけるSOC推移予測値に基づいて事前放電することで、下り坂での回生エネルギを回収できるため、電費及び燃費の悪化を防止することができる。また、例えば、予測ルートにおけるSOC推移予測値に基づいて事前充電することで、SOC下限値まで事前放電してしまい、強制発電が発生することを防止し、低速エリア等でのEV走行を適切に実行することができる。また、車両1が走行すると推定される全てのルートについてSOC推移予測値を算出せず、予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出するため、コントローラの演算負荷を下げることができる。また、目的地が設定されていない場合でも、予測ルート及びSOC推移予測値を求めることができるため、適切な充放電制御を実行して電費及び燃費を向上させることができる。
【0115】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法において、事前放電制御計画処理(事前放電処理の一例)(ステップS321乃至S325)では、車両1の現在地と第1地点との間で、車両1の走行時に放電可能な区間を抽出し、当該放電可能な区間毎にバッテリ5のSOC減少量を算出し、放電可能な区間について、第1地点に近い区間から順番に車両1の現在地に向かってSOC減少量を積算した積算SOC減少量を順次算出し、車両1の現在地と第1地点との間の放電可能な区間のうち、第1地点に近い区間から、積算SOC減少量が、当該SOC推移予測値の最大値のSOC上限値からの超過量以上となる区間までの各区間において事前放電を実施する。
【0116】
このような車両1の制御方法によれば、第1地点側の各区間において事前放電を実施するため、車両1の現在地に近い位置でSOC下限値まで事前放電してしまうことを防止することができる。
【0117】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法において、事前放電制御計画処理(事前放電処理の一例)(ステップS321乃至S325)では、車両1の現在地と第1地点との間で、車両1の走行時に放電可能な区間を抽出し、当該放電可能な区間毎にバッテリ5のSOC減少量を算出し、放電可能な区間について、第1地点に近い区間から順番に車両1の現在地に向かってSOC減少量を積算した積算SOC減少量を順次算出し、車両1の現在地と第1地点との間の放電可能な区間のうち、第1地点に近い区間から、積算SOC減少量が、SOC下限値からSOC上限値までの値の範囲内となる区間までの各区間において事前放電を実施する。
【0118】
このような車両1の制御方法によれば、第1地点側の各区間において事前放電をする放電量を、SOC下限値からSOC上限値までの値の範囲内とするため、放電し過ぎることを防止することができる。
【0119】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法において、事前充電制御計画処理(事前充電処理の一例)(ステップS331乃至S335)では、車両1の現在地と第2地点との間で、車両1の走行時に充電可能な区間を抽出し、当該充電可能な区間毎にバッテリ5のSOC増加量を算出し、充電可能な区間について、第2地点に近い区間から順番に車両1の現在地に向かってSOC増加量を積算した積算SOC増加量を順次算出し、車両1の現在地と第2地点との間の充電可能な区間のうち、第2地点に近い区間から、積算SOC増加量が、当該SOC推移予測値の最小値のSOC下限値からの超過量以上となる区間までの各区間において事前充電を実施する。
【0120】
このような車両1の制御方法によれば、第2地点側の各区間において事前充電を実施するため、車両1の現在地に近い位置でSOC上限値まで事前充電してしまうことを防止することができる。
【0121】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法において、事前充電制御計画処理(事前充電処理の一例)(ステップS331乃至S335)では、車両1の現在地と第2地点との間で、車両1の走行時に充電可能な区間を抽出し、当該充電可能な区間毎にバッテリ5のSOC増加量を算出し、充電可能な区間について、第2地点に近い区間から順番に車両1の現在地に向かってSOC増加量を積算した積算SOC増加量を順次算出し、車両1の現在地と第2地点との間の充電可能な区間のうち、第2地点に近い区間から、積算SOC増加量が、SOC下限値からSOC上限値までの値の範囲内となる区間までの各区間において事前充電を実施する。
【0122】
このような車両1の制御方法によれば、第2地点側の各区間において事前充電をする充電量を、SOC下限値からSOC上限値までの値の範囲内とするため、充電し過ぎることを防止することができる。
【0123】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法において、分岐点から延びる各ルートへ車両1が進行する確率と、当該各ルートにおけるバッテリ5のSOC増減量予測値とに基づいて、分岐点から延びる各ルートにおけるSOC変化量期待値を算出し、当該各ルートのうちから、当該分岐点でのSOC変化量期待値の絶対値が最大となるルートを選択し、当該選択されたルートを分岐点毎に繋ぎ合わせたルートを予測ルートとして選択する選択ステップ(ステップS302乃至S304)をさらに備える。また、算出ステップ(ステップS305,S306)では、それらの確率とSOC増減量予測値とに基づいて、予測ルートにおける各分岐点でのSOC推移予測値を算出し、当該各分岐点でのSOC推移予測値を積算して予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出する。
【0124】
このような車両1の制御方法によれば、目的地が設定されていない場合でも、予測ルート及びSOC推移予測値を求めることができる。
【0125】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法において、選択ステップ(ステップS302乃至S304)では、分岐点から延びる複数のルートのうち、次の分岐点までの距離が最も長いルートを基準として、SOC変化量期待値を当該複数のルート毎に算出し、当該複数のルート毎の当該SOC変化量期待値に基づいて、予測ルートを選択する。
【0126】
このような車両1の制御方法によれば、分岐点間の距離を考慮した適切な予測ルートを選択することができる。
【0127】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法において、選択ステップ(ステップS302乃至S304)では、分岐点から延びる複数のルートのうち、分岐点から延びる各ルートへ車両1が進行する確率が所定値以下であるルートを、予測ルートの選択対象から除外する。
【0128】
このような車両1の制御方法によれば、分岐点から延びる各ルートへ車両1が進行する確率が所定値以下であるルートを予測ルートの選択対象から除外するため、コントローラの演算負荷を下げることができる。
【0129】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法において、選択ステップ(ステップS302乃至S304)では、車両1から最も近い分岐点から延びる複数のルートについて、当該分岐点から、当該複数のルートのそれぞれにおける所定数の分岐点までの確率とSOC増減量予測値とに基づいて、予測ルートを選択する。
【0130】
このような車両1の制御方法によれば、所定数の分岐点までの演算処理をするため、コントローラの演算負荷を下げることができる。
【0131】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法において、選択ステップ(ステップS302乃至S304)では、車両1の目的地が設定された場合に、その目的地までの案内ルートを予測ルートとして選択する。
【0132】
このような車両1の制御方法によれば、乗員により目的地が設定された場合でも、その目的地までの案内ルートについてSOC推移予測値を求めることができるため、適切な充放電制御を実行して電費及び燃費を向上させることができる。
【0133】
また、本実施形態に係る車両1の制御方法では、選択ステップ(ステップS302乃至S304)では、車両1の目的地が設定された場合において、その目的地までの案内ルートから車両1が逸脱したときには、その逸脱後の車両1の現在地を基準として予測ルートを選択する。
【0134】
このような車両1の制御方法によれば、乗員により目的地が設定された場合において、その案内ルートから車両1が逸脱したときでも、新たに予測ルートを選択して、その予測ルートについてSOC推移予測値を求めることができるため、適切な充放電制御を実行して電費及び燃費を向上させることができる。
【0135】
また、本実施形態に係る車両1の制御システムは、走行用モータ4を制駆動力源とし、走行用モータ4との間で電力の授受を行うバッテリ5と、バッテリ5の充放電制御を実行する統合コントローラ34とを備える車両の制御システムである。統合コントローラ34は、分岐点から延びる各ルートへ車両1が進行する確率と、当該各ルートにおけるバッテリ5のSOC増減量予測値とに基づいて、車両1が走行すると予測される予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出する。また、統合コントローラ34は、予測ルートにおけるSOC推移予測値の最大値がバッテリ5のSOC上限値を上回る場合に、SOC推移予測値が最大になると予測される予測ルートにおける第1地点と車両1の現在地との間でバッテリ5の放電量を増加させる事前放電処理と、予測ルートにおけるSOC推移予測値の最小値がバッテリ5のSOC下限値を下回る場合に、SOC推移予測値が最小になると予測される予測ルートにおける第2地点と車両1の現在地との間でバッテリ5の充電量を増加させる事前充電処理とのうちの少なくとも1つを実行する。なお、本実施形態に係る車両1の制御システムは、内燃機関及びモータのうちの少なくとも1つを制駆動力源とする車両にも適用可能である。
【0136】
このような車両1の制御システムによれば、予測ルートにおけるSOC推移予測値と、バッテリ5のSOC上限値及びSOC下限値とに基づいて、バッテリ5の充放電制御を適切に実行することができる。例えば、予測ルートにおけるSOC推移予測値に基づいて事前放電することで、下り坂での回生エネルギを回収できるため、電費及び燃費が悪化することを防止することができる。また、例えば、予測ルートにおけるSOC推移予測値に基づいて事前充電することで、SOC下限値まで事前放電してしまい、強制発電が発生することを防止し、低速エリア等でのEV走行を適切に実行することができる。また、車両1が走行すると推定される全てのルートについてSOC推移予測値を算出せず、予測ルートにおけるSOC推移予測値を算出するため、コントローラの演算負荷を下げることができる。また、目的地が設定されていない場合でも、予測ルート及びSOC推移予測値を求めることができるため、適切な充放電制御を実行して電費及び燃費を向上させることができる。
【0137】
なお、本実施形態で示した各処理は、各処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムに基づいて実行されるものである。このため、本実施形態は、それらの各処理を実行する機能を実現するプログラム、そのプログラムを記憶する記録媒体の実施形態としても把握することができる。例えば、車両に新機能を追加するためのアップデート作業により、そのプログラムを車両の記憶装置に記憶させることができる。これにより、そのアップデートされた車両に本実施形態で示した各処理を実施させることが可能となる。なお、そのアップデートは、例えば、車両の定期点検時等に行うことができる。また、ワイヤレス通信によりそのプログラムをアップデートするようにしてもよい。
【0138】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0139】
1 車両
2 内燃機関
3 発電用モータ
4 走行用モータ
5 バッテリ
6 駆動輪
30 コントローラ
31 エンジンコントローラ
32 発電用モータコントローラ
33 走行用モータコントローラ
34 統合コントローラ
81 回転速度センサ
82 アクセル開度センサ
83 水温センサ
84 車速センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13