(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】車両用運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241204BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20241204BHJP
B60W 50/10 20120101ALI20241204BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/10
B60W50/10
(21)【出願番号】P 2020213448
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由川 輝
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021471(WO,A1)
【文献】特開2017-030436(JP,A)
【文献】特開2015-205558(JP,A)
【文献】特開2017-215900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
B62D 6/00- 6/10
B60Q 1/00- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進路を変更する際に運転者がオン操作するターンシグナルスイッチと、
進路変更側の道路を走行する接近車両を検出する後側方検出部と、
前記自車両の車幅方向左右にそれぞれ配設され、進路変更の際に車線変更側を点灯させるターンシグナルランプと、
前記ターンシグナルスイッチがオンされた際に前記ターンシグナルランプの表示処理を行うターンシグナル表示処理部と
を備える車両用運転支援装置において、
前記ターンシグナル表示処理部は、
前記ターンシグナルスイッチがオンされた際に、前記後側方検出部で前記接近車両を検出した場合、前記自車両と該接近車両との関係に基づき該接近車両が該自車両に近接しているか否かを判断する近接判定部と、
前記近接判定部で前記接近車両が前記自車両に近接していると判定した場合、前記ターンシグナルランプをスタンバイ状態にすると共に該スタンバイ状態であることを前記自車両の運転者に報知するスタンバイ処理部と
、
スタンバイ終了判定処理部と
を有し、
前記スタンバイ終了判定処理部は、前記接近車両が前記自車両の横位置に到達する前に、前記運転者の意図的な車線変更の意思を示す操作を検出した場合は前記スタンバイ状態を終了し、前記ターンシグナルランプをオンさせる
ことを特徴とする車両用運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が車線変更しようとしてターンシグナルスイッチをONしても、変更先の隣接車線に接近する後続車を検出した場合はターンシグナルランプの点灯をスタンバイさせるようにした車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が走行中において自車両を車線変更させようとする場合、先ず、運転者はターンシグナルスイッチをONし、車線変更しようとする側のターンシグナルランプを点灯させることで、自車両の走行車線、及び変更先の車線を走行する後続車に対して、自車両が車線変更する意思を表示する。
【0003】
又、最近の車両用運転支援装置には、システムが運転者の車線変更の意思を認識し、適正なタイミングで車線変更を開始させる自動車線変更(ALC:Auto Lane Changing)制御機能を備えたものが知られている。このALC制御には、運転者が車線変更しようとターンシグナルスイッチをONし、システムに対し車線変更を指示することで、システムが車線変更を開始する運転者指示タイプと、システムが運転者に対し車線変更を提案し、運転者がそれを承認すると、システムが車線変更を開始する運転者承認タイプとがある。
【0004】
運転者承認タイプのALC制御として、例えば、特許文献1(特開2016-71514号公報)には、システムが車線変更を提案して、所定時間経過するまでに運転者がターンシグナルレバーの操作を行わない場合は、車線変更に同意したと判定し、車線変更側のターンシグナルランプを点灯させる。又、所定時間内に運転者がターンシグナルレバーを操作した場合は、車線変更の提案に対して非同意(キャンセル)と判定して、ターンシグナルランプを点灯させないようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、システムに備えられているALC制御によって自動的に車線変更するに際しては、必ず、車線変更側のターンシグナルランプを点灯させて、車線変更する意思を、後続車に報知する必要がある。
【0007】
この場合、当然、ALC制御では、変更先の車線に、接近する後続車(接近車両)を検出したか否かを調べ、接近車両が検出された場合は、当該接近車両が通過するまで、車線変更を開始せず、接近車両が通過した後に車線変更を開始することになる。
【0008】
このような状況であっても、ALC制御では、車線変更側のターンシグナルランプを点灯させて接近車両の通過を待つことになるが、自車両に対し接近車両が近接してきた直後に、ターンシグナルランプがいきなり点灯すると、接近車両の運転者に接触の不安を誘発させ、慌てさせてしまうことになる。
【0009】
一方、ターンシグナルランプを点灯させることなく、接近車両が通過するまで待機していた場合、自車両の運転者は、接近車両の近接によりターンシグナルランプが自動的に消灯したと勘違いされてしまう可能性がある。そして、自車両が接近車両を通過させた後に、ターンシグナルランプが点灯した場合、原因が分からず運転者に不快感を覚えさせてしまうことになる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、走行中に進路変更を行うに際し、変更先の車線に接近車両が検出されたために、自車両が接近車両の通過を待っている状態であっても、接近車両の運転者を慌てさせることがなく、一方、自車両の運転者に対しても不快感を与えることのない車両用運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、自車両の進路を変更する際に運転者がオン操作するターンシグナルスイッチと、進路変更側の道路を走行する接近車両を検出する後側方検出部と、前記自車両の車幅方向左右にそれぞれ配設され、進路変更の際に車線変更側を点灯させるターンシグナルランプと、前記ターンシグナルスイッチがオンされた際に前記ターンシグナルランプの表示処理を行うターンシグナル表示処理部とを備える車両用運転支援装置において、前記ターンシグナル表示処理部は、前記ターンシグナルスイッチがオンされた際に、前記後側方検出部で前記接近車両を検出した場合、前記自車両と該接近車両との関係に基づき該接近車両が該自車両に近接しているか否かを判断する近接判定部と、前記近接判定部で前記接近車両が前記自車両に近接していると判定した場合、前記ターンシグナルランプをスタンバイ状態にすると共に該スタンバイ状態であることを前記自車両の運転者に報知するスタンバイ処理部と、スタンバイ終了判定処理部とを有し、前記スタンバイ終了判定処理部は、前記接近車両が前記自車両の横位置に到達する前に、前記運転者の意図的な車線変更の意思を示す操作を検出した場合は前記スタンバイ状態を終了し、前記ターンシグナルランプをオンさせる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ターンシグナルスイッチがONされた際に、後側方検出部で接近車両を検出した場合、自車両と接近車両との関係に基づき、接近車両が自車両に近接していると判定した場合、ターンシグナルランプをスタンバイ状態にすると共に、スタンバイ状態であることを自車両の運転者に報知するようにしたので、進路変更を行うに際し、変更先の車線に接近車両が検出された場合には、ターンシグナルランプがOFF状態となるため、接近車両の運転者に対し、ターンシグナルランプがいきなり点灯することにより慌てさせることがない。一方、ターンシグナルランプがスタンバイ状態のときは、スタンバイ状態であることが自車両の運転者に報知されるため、運転者に不快感を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】HMIモニタを備えたインストルメントパネルの概略図
【
図3】ターンシグナル表示処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
【
図4】ターンシグナル表示処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
【
図5】(a)は隣接車線を走行する接近車両の前方に対して車線変更を開始する態様を示す俯瞰図、(b)は接近車両の通過を待つ態様を示す俯瞰図、(c)は接近車両が通過した後に車線変更を開始する態様を示す俯瞰図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図5に示す符号Mは自車両、Pは直前を走行する先行車、Fは隣接車線から自車両Mに接近する後続車(接近車両)である。尚、本実施形態では左側通行を前提に説明する。従って、右側通行の場合は、左右が逆の説明となる。
【0015】
自車両Mには、
図1に示す車両用運転支援装置1が搭載されている。この車両用運転支援装置1に運転支援制御ユニット11が備えられている。尚、この運転支援制御ユニット11はCPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ等を備えたマイクロコンピュータにより構成されており、ROMにはシステムの動作を実現するための制御プログラムや固定データ等が記憶されている。
【0016】
この運転支援制御ユニット11の入力側に、前方認識センサ21、運転者がALC(Auto Lane Changing)制御を選択する際にONするALCスイッチ22、自車両Mの車速(自車速)を検出する車速センサ23、運転者のハンドル操作によって生じるトルクを検出する操舵トルクセンサ24、運転者のアクセルペダルの踏込み量を検出するアクセル開度センサ25、前側方センサ26、後側方検出部としての後側方センサ27、運転者が車線変更等の進路変更を走行中に行うに際して進路変更側のスイッチをONするターンシグナルスイッチ28等のセンサ・スイッチ類が接続されている。尚、本実施形態では、ターンシグナルスイッチ28としてオルタネイト式を採用しているが、モメンタリ式であっても良い。
【0017】
ここで、前方認識センサ21は、メインカメラ21aとサブカメラ21bとからなるステレオカメラと、画像処理ユニット(IPU)21cとを有し、両カメラ21a,21bで撮像した自車前方の走行環境画像がIPU21cで所定に画像処理された後、運転支援制御ユニット11に送信される。尚、ステレオカメラは前方走行環境を認識するセンサの例示であり、前方走行環境を認識できるものであれば、前方認識センサ21は、ステレオカメラに代えて、ミリ波レーダ、音波レーダ、LiDAR(Light detection and Ranging)等を適用してもよく、更には、これらと単眼カメラとを組み合わせて採用しても良い。或いは、単眼カメラ単体であっても良い。
【0018】
又、各センサ26,27は、カメラ、ミリ波センサ、マイクロ波センサ、LiDAR(Light Detection and Ranging)等であり、前側方センサ26はフロントバンパの左右側部に一対配設されており、後側方センサ27はリヤバンパの左右側部に一対配設されている。この各センサ26,27は上述した前方認識センサ21からの画像では認識することの困難な左右斜め前方、及び左右斜め後方の領域を監視する。運転支援制御ユニット11は各センサ26,27からの信号に基づき、自車両M周辺の物標を検出する。
【0019】
そして、運転支援制御ユニット11は、物標が自車両Mと同一方向に進行している場合、前側方センサ26からの信号に基づいて検出した物標を先行車Pと認識し、後側方センサ27からの信号に基づいて検出した物標を接近車両Fと推定する。更に、運転支援制御ユニット11は認識した先行車P及び接近車両Fと自車両Mとの相対距離、相対車速を求める。
【0020】
又、この運転支援制御ユニット11の出力側に、ターンシグナルランプ31、駆動源制御部32、ブレーキ制御部33、操舵制御部34、及びHMI(Human Machine Interface)モニタ35等が接続されている。ここで、ターンシグナルランプ31は、車線変更等の進路変更を行うに際し、進路変更方向を点灯により外部に知らせるものであり、自車両Mの車幅方向左右であって、車体前後に配設されている。尚、このターンシグナルランプ31にはLEDランプも含まれる。
【0021】
駆動源制御部32は自車両Mに搭載されているエンジンや電動モータ等の駆動源の出力を制御するものである。ブレーキ制御部33は各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整することで、各車輪に発生するブレーキ力を制御するものである。操舵制御部34は電動パワステ(EPS)モータによって発生する操舵トルクを制御するものである。
【0022】
又、HMIモニタ35は、車線変更時の各種情報を、HMIを介して運転者に対して報知するものである。報知する内容としては、接近車両の有無、自車両と接近車両との相対車速や相対位置、先行車Pとの車間距離、車線変更が可能か否か等がある。又、接近車両によって車線変更が困難な場合は、ターンシグナルランプ31をスタンバイ状態、すなわち、点灯していない状態である旨を報知する。
【0023】
因みに、本実施形態では、
図2に示すように、このHMIモニタ35を、インストルメントパネル2に配設されている、コンビネーションメータ3のマルチインフォメーションディスプレイ4やカーナビゲーションシステムのナビ表示装置(ナビモニタ)5と兼用させている。又、図示しないが、運転者に報知する情報は、HMIモニタ35に表示する画像と共に音声によっても行っている。
【0024】
運転支援制御ユニット11は、後側方センサ27からの信号に基づいて後方からの接近車両Fを常時監視し、運転者がターンシグナルスイッチ28をONした際に、進路変更側の車線を走行する接近車両Fと自車両Mとの相対距離、及び相対車速に基づいて車線変更のタイミングを演算する。そして、接近車両Fの前方へ車線変更可能と判定した際には、ターンシグナルランプ31を直ちに点灯させる。一方、接近車両Fの後方へ車線変更させると判定した際には、接近車両Fが少なくとも自車両Mの真横に到達するまでは、ターンシグナルランプ31をスタンバイ状態にする。
【0025】
上述した運転支援制御ユニット11で実行されるターンシグナルランプ31の表示制御は、具体的には、
図3~
図4に示すターンシグナル表示処理ルーチンに従って処理される。尚、このルーチンでの処理が本発明のターンシグナル表示処理部に対応している。
【0026】
このルーチンでは、先ず、ステップS1で、一対の後側方センサ27からの信号に基づき隣接車線の後側方の情報を取得する。そして、ステップS2へ進み、当該情報に基づき接近車両Fの有無を調べる接近車両検出処理を行う。この接近車両検出処理では、先ず、隣接車線の後側方の情報に基づき、自車両Mと物標との相対距離、及び相対車速から、物標が自車両Mと同方向へ進行し、且つ自車両Mに接近しているか否かを調べる。そして、物標が自車両Mと同方向へ進行し、且つ自車両Mに接近している場合、当該物標を接近車両Fと推定する。
【0027】
次いで、ステップS3へ進み、ターンシグナルスイッチ28がONか否か、すなわち、運転者が車線変更の意思を示しているか否かを調べる。そして、ターンシグナルスイッチ28がONの場合は、ステップS4へ進む。又、ターンシグナルスイッチ28がOFFの場合は、ステップS5へ進み、ターンシグナルランプ31をOFF、或いはOFF状態を維持させてルーチンを抜ける。
【0028】
ステップS4へ進むと、上述のステップS2での処理にて、ターンシグナルスイッチ28をONした側の隣接車線に接近車両Fが検出されているか否かを調べる。そして、接近車両Fが検出されている場合はステップS6へ進む。又、接近車両Fが検出されていない場合は、ステップS12へジャンプする。
【0029】
ステップS6へ進むと、前述のステップS2での処理で検出した接近車両Fと自車両Mとの相対距離、及び相対車速を求める。或いは、この相対距離と相対車速とに基づいて、接近車両Fの自車両Mに対する到達予測時間を、周知の衝突予測時間TTC(Time To Collision)を適用して求める。
【0030】
次いで、ステップS7へ進むと、ALCスイッチ22がONか否かを調べる。そして、ALCスイッチ22がONの場合は、ALC制御が実行されていると判定し、ステップS8へ進む。又、ALCスイッチ22がOFFの場合は、運転者がハンドルを手動操作していると判定し、ステップS13へ分岐する。尚、ステップS13以降の処理は後述する。
【0031】
その後、ステップS8へ進み、上述した相対距離と相対車速とに基づき、或いは到達予測時間に基づいて自車両Mが接近車両Fの前方へ余裕を持って車線変更可能か否かを調べる。尚、このステップでの処理が本発明の近接判定部に対応している。
【0032】
そして、接近車両Fの前方へ車線変更可能と判定した場合は、ステップS12へジャンプする。例えば、
図5(a)に示すように、自車両Mの直前を走行する先行車Pを追い越そうとして、運転者がターンシグナルスイッチ28をONすると、ALC制御は車線変更を開始しようとする。その際、接近車両Fが遠方を走行していると判定した場合は、破線矢印で示すように、接近車両Fの前方へ車線変更を行う。
【0033】
又、ステップS8において、接近車両Fの前方への車線変更が困難と判定した場合は、ステップS9へ進む。その際、
図5(b)に示すように、ALC制御は自車両Mに接近車両Fが近接していると判定した場合、接近車両Fが通過するまで車線変更を中断する。
【0034】
ステップS9へ進むとターンシグナルランプスタンバイ処理を実行する。尚、このステップでの処理が、本発明のスタンバイ処理部に対応している。
【0035】
このターンシグナルランプスタンバイ処理は、先ず、ターンシグナルランプ31をスタンバイ状態にする。又、HMIモニタ35に対し、ターンシグナルランプ31がスタンバイ状態(消灯している状態)であることを示す画像を表示させる。
【0036】
すなわち、自車両Mとターンシグナルスイッチ28がONされている側の隣接車線を走行している接近車両Fとの距離が短い状態でターンシグナルランプ31がいきなり点灯すると、接近車両Fの運転者に接触するという不安を誘発し、慌てさせてしまうことになる。そのため、ターンシグナルランプ31を点灯させず、スタンバイ状態にする。
【0037】
一方、運転者側からすれば、ターンシグナルスイッチ28をONしたにも拘わらずターンシグナルランプ31が点灯しないため故障と誤解される可能性がある。そのため、スタンバイ状態をHMIモニタ35に表示させることで運転者の抱く不安を解消させる。
【0038】
HMIモニタ35に表示させるスタンバイ状態を示す画像としては、スタンバイしている旨を文字で表示してもよいが、運転者が前方を視認した状態で容易に理解できる表示が好ましい。
【0039】
好ましい表示態様としては、
(1)HMIモニタ35にスタンバイ状態が終了するまでの時間をカウントダウンで表示させる。尚、カウントダウンの時間は到達予測時間から容易に求めることができる。
(2)HMIモニタ35に表示される進路変更方向を運転者に示す矢印の灯色を通常の灯色(例えば、黄色)から異なる灯色(例えば、赤色)に変える。
(3)HMIモニタ35に表示される進路変更方向を運転者に示す矢印を点灯させる。
(4)HMIモニタ35に対し、接近車両Fの近接状態をイメージ図やアニメーションで表示する。
(5)(1)~(4)の態様に加えて、これらを音声により報知する。
等が考えられる。
【0040】
その後、ステップS9からステップS10へ進むと、スタンバイ終了判定処理を実行してステップS11へ進む。このスタンバイ終了判定処理は自車両Mと接近車両Fとの位置関係から判定する。スタンバイ終了時期の判定としては種々の態様が考えられる。例えば、
(i)接近車両Fが自車両Mの横位置に到達したとき
(ii)自車両Mが接近車両Fに追い抜かれ、その後システムがALC制御による車線変更を開始するとき
が考えられる。
【0041】
又、(i)或いは(ii)の条件を満足する前に
(iii)接近車両Fが車線変更しようとする隣接車線から外れたとき
もスタンバイ状態が終了する。
【0042】
更に、(i)~(iii)の条件を満足する前に、運転者が意図的な操作を行った場合にスタンバイ状態を終了させるようにしても良い。運転者の意図的な操作としては、
(iv)運転者が2回目の車線変更意思を示したとき、例えば、ターンシグナルスイッチ28以外にスタンバイを強制的に終了させるサブスイッチを設け、このサブスイッチをONする。或いは、ターンシグナルスイッチ28がモメンタリ式であれば、このターンシグナルスイッチ28を再度同じ方向にONする。
(v)操舵トルクセンサ24で運転者が車線変更方向へのハンドル操作を検出したとき
(vi)アクセル開度センサ25で運転者による意図的な加速操作を検出したとき、すなわち、運転者が自車両Mを加速させて、接近車両Fの前方へ車線変更させようとしている
等が考えられる。
【0043】
ステップS11へ進むと、上述した条件に基づきスタンバイ状態が終了したか否かを調べる。そして、スタンバイ終了条件が満足されていない場合は、ステップS9へ戻り、スタンバイ終了条件が満足されるまでステップS9~S11の処理を繰り返し実行する。又、スタンバイ終了条件が満足された場合、スタンバイ終了と判定し、ステップS12へ進む。尚、このステップS10,S11での処理が、本発明のスタンバイ終了判定処理部に対応している。
【0044】
その際、
図5(c)に示すように、ALC制御は接近車両Fが自車両Mを追い抜いたと判定した場合、所定時間経過後に車線変更を開始する。
【0045】
そして、ステップS12へ進むと、ターンシグナルランプ31をONさせてルーチン抜ける。車線変更側のターンシグナルランプ31が点灯することにより、車線変更の意思が囲に報知される。すると、運転支援制御ユニット11は、所定時間経過後に、ALC制御による車線変更を開始させる。
【0046】
一方、ステップS7においてALCスイッチ22がOFF(手動による車線変更)と判定されて、ステップS13へ分岐すると、上述したステップS6で求めた自車両Mと接近車両Fとの相対距離及び相対車速に基づき、或いは到達予測時間に基づいて、接近車両Fが自車両Mに近接しているか否かを調べる。尚、このステップS13での処理が、本発明の近接判定部に対応している。ところで、運転者がターンシグナルスイッチ28をONするに際しては、接近車両Fの有無を運転者自身が当然認識している。
【0047】
そして、運転支援制御ユニット11が、接近車両Fは自車両Mが近接していない、すなわち、遠方を走行していると判断した場合は、ステップS12へジャンプし、ターンシグナルランプ31を即時にONさせてルーチンを抜ける。運転者はターンシグナルスイッチ28をONして、所定時間(例えば、3[sec])経過後、ハンドルを操作し、接近車両Fの前方への車線変更を開始する。
【0048】
一方、接近車両Fが近接していると判定した場合は、ステップS14へ進み、ターンシグナルランプスタンバイ処理を、上述したステップS9と同様に行ってステップS15へ進む。尚、このステップS14での処理が、本発明のスタンバイ処理部に対応している。
【0049】
運転者がハンドル操作により車線変更を行おうとした際に、当該運転者がHMIモニタ35に表示されたスタンバイ状態を示す画像を認識することで、接近車両Fの前方への無理な車線変更を行わず、接近車両Fの通過を待つことになる。又、接近車両Fの運転者に対しては、ターンシグナルランプ31がいきなり点灯することによる、接触すると云う不安感を抱かせることがない。
【0050】
次いで、ステップS15へ進み、スタンバイ終了判定処理を上述したステップS10と同様に実行してステップS16へ進む。ステップS16へ進むとスタンバイ状態が終了したか否かを、スタンバイ終了条件が満足されたか否かで判定し、スタンバイ終了条件が満足されていない場合は、ステップS14へ戻る。又、スタンバイ終了条件が満足された場合、スタンバイ終了と判定し、ステップS12へ進む。尚、このステップS15,S16での処理が、本発明のスタンバイ終了判定処理部に対応している。
【0051】
そして、ステップS12においてターンシグナルランプ31をONして、ルーチンを抜ける。運転者はターンシグナルランプ31がONされたことを認識することで、車線変更のタイミングを容易に把握することができる。
【0052】
このように、本実施形態によれば、運転者がターンシグナルスイッチ28をONして車線変更の意思を示し、運転支援制御ユニット11はALC制御により車線変更を行おうとした際に、変更先の車線を走行する接近車両Fの前方に車線変更することが困難と判定した場合は、ターンシグナルランプ31をOFFとしたので、接近車両Fの運転者に対し、いきなりターンシグナルランプ31が点灯することによる、接触すると云う不安感を抱かせず、接近車両Fの運転者を慌てさせることがなくなる。
【0053】
又、自車両Mの運転者に対しては、HMIモニタ35等によりターンシグナルランプ31がOFFのスタンバイ状態を報知するようにしているので、自車両Mの運転者に対しては接近車両Fの近接によりALC制御が解除されたと勘違いされることがなく、更に、スタンバイ終了後にターンシグナルランプ31が点灯しても運転者に不快感を与えることがない。
【0054】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、
図3~
図4に示すターンシグナル表示処理は、走行車線から追越車線へ車線変更する場合に限らず、追越車線から走行車線へ戻る場合も適用される。
【符号の説明】
【0055】
1…車両用運転支援装置、
2…インストルメントパネル、
3…コンビネーションメータ、
4…マルチインフォメーションディスプレイ、
5…ナビ表示装置、
11…運転支援制御ユニット、
21…前方認識センサ、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
21c…画像処理ユニット、
22…ALCスイッチ、
23…車速センサ、
24…操舵トルクセンサ、
25…アクセル開度センサ、
26…前側方センサ、
27…後側方センサ、
28…ターンシグナルスイッチ、
31…ターンシグナルランプ、
32…駆動源制御部、
33…ブレーキ制御部、
34…操舵制御部、
35…HMIモニタ、
F…接近車両、
M…自車両、
P…先行車、
TTC…衝突予測時間