(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】血管内治療に続く炎症反応の調整
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20241204BHJP
A61F 2/958 20130101ALI20241204BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/958
(21)【出願番号】P 2020560309
(86)(22)【出願日】2019-04-22
(86)【国際出願番号】 US2019028538
(87)【国際公開番号】W WO2019209731
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520413025
【氏名又は名称】エンドロジックス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】イフテカール モハメド アリフ
(72)【発明者】
【氏名】コスタンディ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】オルテガ カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ クリス
(72)【発明者】
【氏名】ウェルク クレイグ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0036745(US,A1)
【文献】特表2011-518620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
A61F 2/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な人工器官を展開するシステムであって、前記システムは、拡張の
ために大動脈瘤空間に置かれるように構成された少なくとも1つの人工器官を含み、前記人工器官は、
第1の圧力で拡張バルーンにより拡張するステント移植片と、
二重壁充填構造と、を含み、該充填構造は、外壁、内壁、及び該外壁と該内壁との間の充填可能な空間を含み、
前記充填構造は、
第1の圧力で第1の充填剤で充填されて拡張し前記
大動脈瘤空間の壁と接触するように構成され、
前記充填構造は、該充填構造から前記第1の充填剤が除去された後に第2の充填剤で充填されて拡張し前記
大動脈瘤空間の壁と接触するように構成され、前記ステント移植片は、第2の圧力で拡張バルーンにより半径方向に拡張するように構成され、それによって、前記第2の充填剤を有する前記充填構造が、追加の圧力を前記
大動脈瘤空間の壁に印加し、
前記ステント移植片は、第2の圧力で拡張バルーンにより半径方向に拡張され、それによって、前記第
2の充填剤を有する前記充填構造が、約190mmHgと約300mmHgの間の圧力を前記
大動脈瘤空間の壁に印加するように構成され、
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも高く、前記第2の充填剤は、硬化性ポリマーである、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記システムは、前記充填構造とは別の少なくとも第1の骨組を更に含
むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記人工器官は、前記人工器官の位置を固定して近位開口部を前記
大動脈瘤空間に密封するカフ部分及び係止ステント部分を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、1又は2以上のステントを含み、各ステントは、20mmよりも小さい全体直径を有する血流の位置にそれぞれ管腔を形成
することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムの外面は、組織内成長又は前記
大動脈瘤空間の内面との機械的連動を容易にするように部分的に又は完全に修正されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムの前記外面は、面粗面化、面点刻、面フロック加工、面にわたって配置された繊維、面にわたって配置された発泡体層、及び/又はリングにより修正されることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
生物学的活性物質が前記システムの前記外面の全て又は一部分にわたって設けられ
ることを特徴とする請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
付着を高めるように前記システムの面にわたって合成接着剤が設けら
れることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、流体が逃れるためのチャネルを
含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムは、第1及び第2の二重壁充填構造をそれぞれ含む第1及び第2の人工器官を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記充填構造の各々は、それぞれ送出カテーテル上に装着されることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記充填構造は、概ね非対称構成を有することを特徴とする請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の充填剤は、生理食塩水を
含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の圧力は、少なくとも約180mmHgで
あることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記
大動脈瘤空間は、胸部、腹部、腎臓下、腎近、腎傍、又は膀胱側腔、又はその組合せであることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の
骨組は、ステント移植片を形成するように、膜で部分的に又は全体として覆われることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項17】
前記全体直径は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19mmであることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項18】
前記生物学的活性物質は、治療剤、血栓形成物質、組織成長促進剤、及び/又は生体接着剤を含むことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項19】
前記合成接着剤は、薬剤的に許容されるポリアクリルアミドであることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項20】
前記充填構造が、流体が近位に又は遠位に流れるためのチャネルを含むことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項21】
前記第2の充填剤は、硬化性ポリマーを含むことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記第2の圧力は、約190mmHgと約300mmHgの間であることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、本明細書に引用によってその内容全体が組み込まれている2018年4月23日出願の米国仮特許出願第62/661,569号からの優先権を主張するものである。
【0002】
本発明の技術は、一般的に管腔内人工血管及びそのような人工器官を置く方法に関する。より具体的には、様々な実施形態は、管腔内人工血管及び大動脈瘤を治療するためにそのような人工器官を置く方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術の以下の説明は、それが従来技術を説明する又は構成するといういずれの受容もなく理解するための補助として提供するものである。
【0004】
動脈瘤は、多くの場合に破裂し易く、従って患者に深刻なリスクを呈する血管の拡大又は膨隆である。動脈瘤は、いずれの血管でも生じる場合があるが、それらが脳血管系又は患者の大動脈に生じる時に特に懸念される。
【0005】
腹部大動脈瘤(AAA)は、大動脈内のそれらの場所、並びにそれらの形状及び複雑性に基づいて分類される。腎動脈の下に見出される動脈瘤は、腎臓下腹部大動脈瘤と呼ばれる。腎臓上腹部大動脈瘤は、腎動脈の上方に生じる。胸部大動脈瘤(TAA)は、上部大動脈の上行、横断、又は下行部に生じる。腎臓下動脈瘤は、最も一般的であり、全ての大動脈瘤の約70%を表している。腎臓上動脈瘤はそれほど一般的ではなく、大動脈瘤の約20%を表している。胸部大動脈瘤は一般的ではなく、かつ多くの場合に治療するのが最も困難である。
【0006】
動脈瘤の最も一般的な形態は、拡大が大動脈円周全体の周りに延びる「紡錘状」である。それほど一般的ではないが、動脈瘤は、狭い頸部に付着した血管の一方の側の膨隆によって特徴付けられる場合がある。胸部大動脈瘤は、通常は中間層内の大動脈壁での出血性分離よって引き起こされる解離性動脈瘤であることが多い。これらのタイプ及び形態の動脈瘤の各々に対する一般的な治療は、開腹外科的修復である。開腹外科的修復は、他にかなり健康であり、かつ有意な合併症がない患者ではかなり成功している。しかし、そのような開腹外科手順は、腹部及び胸部大動脈へのアクセスを得ることが困難であるので、かつ大動脈をクランプ締めして切り離さなければならず、患者の心臓に有意な負担を掛けることに起因して問題がある。
【0007】
管腔内移植片は、患者の大動脈瘤の治療に広く使用されるようになってきた。典型的な移植片内手順は、動脈瘤を治療するのにステント移植片配置を利用する。移植片の目的は、一般的に、大動脈壁の病変部分を大動脈血圧から隔離し、かつ大動脈壁の病変部分の更なる膨脹又は破裂を防止することである。一般的に、管腔内修復は、総腸骨動脈のいずれか又は両方を通して「管腔内的に」動脈瘤にアクセスする。移植片は、その後に埋め込まれる。成功裏の管腔内手順は、開腹外科手順よりも遥かに短い回復期間を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4,683,195号明細書
【文献】米国特許第6,939,377号明細書
【文献】米国特許第5,017,664号明細書
【文献】米国特許第5,589,563号明細書
【文献】米国特許公開第2002/0187288 A1号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Sambrook及びRussell編(2001)「分子クローニング:実験室マニュアル」第3版
【文献】連続出版物Ausubel他編(2007)「分子生物学での現在のプロトコル」
【文献】連続出版物「酵素学での方法」(Academic Press,Inc.、ニューヨーク)
【文献】MacPherson他(1991)「PCR 1:実用的手法」(オックスフォード大学出版局でのIRL出版)
【文献】MacPherson他(1995)「PCR 2:実用的手法」
【文献】Harlow及びLane編(1999)「抗体、実験室マニュアル」;Freshney(2005)「動物細胞の培養:基礎技術のマニュアル」、第5版
【文献】Gait編(1984)「オリゴヌクレオチド合成」
【文献】Hames及びHiggins編(1984)「核酸混成」
【文献】Anderson(1999)「核酸混成」
【文献】Hames及びHiggins編(1984)「転写及び翻訳」
【文献】「固定された細胞及び酵素」(IRL Press(1986))
【文献】Perbal(1984)「分子クローニングの実用的ガイド」
【文献】Miller及びCalos編(1987)「哺乳類細胞に対する遺伝子導入ベクトル」(Cold Spring Harbor Laboratory)
【文献】Makrides編(2003)「哺乳類細胞内の遺伝子導入及び発現」
【文献】Mayer及びWalker編(1987)「細胞及び分子生物学での免疫化学的方法」(Academic Press,ロンドン)
【文献】Herzenberg他編(1996)「Weirの実験免疫学ハンドブック」
【文献】Velazquez他、Amer J Surg.178:185-9(1999)
【文献】Arnaoutoglou他、J Vac Surg.63:1248-55(2016)
【文献】Roumen-Klappe他、J Vas Surg.35(4):701-6(2002)
【文献】Berg他、J End Ther.24(5):67-4(2017)
【文献】Remington’s Pharmaceutical Sciences(第20版,編集A.Gennaro,2000,Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia,Pa.)
【文献】Willerson他、Circulation 109[suppl II]:II-2-II-10(2004)
【文献】Thompson他、J EndoVasc Ther.23(5):5:685-692(2016)
【文献】Van Noor他、Vasc.25(5):542-548(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、管腔内移植片の設計及び使用を改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の開示は、大動脈瘤を含む動脈瘤の治療のための改善された方法、システム、及びデバイスを提供する。様々な実施形態は、血管内移植片システムの展開時に、取りわけ、急性及び/又は慢性移植後炎症反応の低減を可能にする。慢性炎症反応は、主要な有害心臓事象(MACE)、急性腎不全、再入院、及び更に死亡のような主要な有害事象に潜在的に至る可能性がある。様々な実施形態は、移植後の急性並びに慢性の炎症を調整して最小にすることになる改善された構成、システム、及びそのようなシステムを置く方法を提供する。従って、例示的実施形態では、治療に関連付けられた移植後症候群を軽減する血管内移植片システムを使用して患者の大動脈瘤を治療する方法を提供する。本方法は、ステント移植片と二重壁充填構造とを含む少なくとも1つの人工器官を大動脈瘤空間に置く段階を含む。充填構造は、外壁、内壁、及び外壁と内壁間の充填可能な空間を含む。以下で更に詳細に説明するように、システムは、複数の充填構造及びステント移植片を含むことができる。更に、配置及び展開(拡張及び充填を含む)の順番は、変わる場合がある。動脈瘤にわたるステント移植片の配置に続いて、それは、拡張バルーンのような拡張構造を用いて第1の圧力で半径方向に拡張される。充填構造は、次に、充填構造が拡張して動脈瘤空間に配置された血栓と接触するように第1の充填剤で充填される。第1の充填剤が除去された状態で、充填構造は、次に、充填構造が拡張して再度血栓と接触するように第2の充填剤で充填される。次に、ステント移植片が、第2の圧力で拡張バルーンを用いて半径方向に膨張され、第2の圧力は、第1の圧力よりも高く、これは、第2の充填剤を有する充填構造に血栓上に有効量の圧力を印加させる。一般的に、血栓上に印加される有効量の圧力は、炎症反応のような人工器官に関連付けられた移植後症候群の影響を実質的に軽減することができる。炎症の軽減に潜在的に寄与する機構は、以下に詳細に更に説明するが、空間充填、灌流排除、緊急加圧、及び長期加圧を含む。
【0012】
血管内移植片システムを用いて治療を必要とする患者の血管内の大動脈瘤を治療する方法である別の例示的実施形態は、治療されることになる血管のセグメントの管腔内血栓又は血管壁上に有効量の圧力を及ぼして血栓又は血管壁から生体液を変位させ、それによって治療に関連付けられた炎症反応を低減する段階を含む。
【0013】
血管内移植片システムを用いて治療を必要とする患者の血管内の大動脈瘤を治療する別の例示的方法は、治療されることになる血管のセグメントでの新しい血栓形成を防止し、それによって治療に関連付けられた炎症反応を低減する段階を含む。
【0014】
血管内移植片システムを用いて治療を必要とする患者の血管内の大動脈瘤を治療する別の例示的方法は、治療されることになる血管のセグメント内の管腔内血栓の循環血液へのアクセスを遮断し、それによって治療に関連付けられた炎症反応を低減する段階を含む。
【0015】
血管内移植片システムを用いて治療を必要とする患者の血管内の大動脈瘤を治療する更に別の方法は、流体又はポリマーで血管内移植片システムの周りの動脈瘤内の空間を充填し、それによって治療に関連付けられた炎症反応を低減する段階を含む。
【0016】
更に別の例では、大動脈瘤を治療するために血管内移植片システム移植を受けている患者の炎症反応を低減する方法は、治療されることになる血管のセグメントの管腔内血栓又は血管壁上に有効量の圧力を及ぼして血栓又は血管壁から流体を変位させ、それによって移植に関連付けられた炎症反応を低減する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
ここで、本発明の開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点を添付図面を参照して非限定的実施形態に関連して以下に説明する。しかし、例示的な実施形態は、単に例であり、本発明を限定するように意図していない。以下は、縮尺通りに描かれない場合がある図面の簡単な説明である。
【0018】
【
図1】送出カテーテルの上に装着された充填構造を含む人工器官システムを示す図である。
【
図2】腎臓下腹部大動脈瘤を治療するための
図1の人工器官システムの実施形態の使用を示す図である。
【
図3】送出カテーテル上に装着された充填構造を各人工器官が含む腎臓下腹部大動脈瘤への送出のための1対の人工器官を含むシステムを示す図である。
【
図4】腎臓下腹部大動脈瘤を治療するための
図3のシステムの使用を示す図である。
【
図5A】血管内大動脈修復(EVAR)システムと比較した血管内動脈瘤密封(EVAS)システム内で充填剤で動脈瘤空間の流れ管腔を充填することによる初発血栓の形成の低減を描く図である。
【
図5B】血管内大動脈修復(EVAR)システムと比較した血管内動脈瘤密封(EVAS)システム内で充填剤で動脈瘤空間の流れ管腔を充填することによる初発血栓の形成の低減を描く図である。
【
図6】血栓への潅流の防止又は排除と血栓から全身循環の中への炎症誘発剤の連通の結果的低減とを描く図である。
【
図7】血栓及び/又は壁から生物活性流体を変位させる血栓の緊急加圧を描く図である。
【
図8】血栓及び/又は壁から生物活性流体を変位させて細胞外液貯留を低減する血管内移植片システムの展開後の血栓の長期加圧を描く図である。
【
図9】血管内移植片システムに使用する材料を最適化することによる流れ管腔と血栓の間の連通の低減又は排除を描く図である。
【
図10】例示的実施形態により動脈瘤にわたって展開されたステント移植片システムを描く図である。
【
図11】例示的実施形態により動脈瘤を治療する段階と移植後症候群の影響を軽減する段階とを全体的に示す流れ図である。
【
図12】例示的実施形態により動脈瘤を治療する段階と移植後症候群の影響を軽減する段階とを示す流れ図である。
【
図13】別の例示的実施形態により動脈瘤を治療する段階と移植後症候群の影響を軽減する段階とを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な実施形態を以下に説明する。特定の実施形態は、包括的説明として又は本明細書に議論するより広範な態様に対する制限として意図していないことを注意しなければならない。特定の実施形態に関連して説明する一態様は、必ずしもその実施形態に限定されず、あらゆる他の実施形態を用いて実施することができる。
【0020】
本発明の方法を実施するのに、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、微生物学、及び遺伝子組換えDNAでの多くの技術が使用される。例えば、Sambrook及びRussell編(2001)「分子クローニング:実験室マニュアル」第3版、連続出版物Ausubel他編(2007)「分子生物学での現在のプロトコル」、連続出版物「酵素学での方法」(Academic Press,Inc.、ニューヨーク)、MacPherson他(1991)「PCR 1:実用的手法」(オックスフォード大学出版局でのIRL出版)、MacPherson他(1995)「PCR 2:実用的手法」、Harlow及びLane編(1999)「抗体、実験室マニュアル」;Freshney(2005)「動物細胞の培養:基礎技術のマニュアル」、第5版、Gait編(1984)「オリゴヌクレオチド合成」、米国特許第4,683,195号明細書、Hames及びHiggins編(1984)「核酸混成」、Anderson(1999)「核酸混成」、Hames及びHiggins編(1984)「転写及び翻訳」、「固定された細胞及び酵素」(IRL Press(1986))、Perbal(1984)「分子クローニングの実用的ガイド」、Miller及びCalos編(1987)「哺乳類細胞に対する遺伝子導入ベクトル」(Cold Spring Harbor Laboratory)、Makrides編(2003)「哺乳類細胞内の遺伝子導入及び発現」、Mayer及びWalker編(1987)「細胞及び分子生物学での免疫化学的方法」(Academic Press,ロンドン)、及びHerzenberg他編(1996)「Weirの実験免疫学ハンドブック」を参照されたい。
【0021】
全体的概要
【0022】
1990年代後半に腎臓下大動脈瘤の治療のためのステント移植片ベースの内部人工器官の患者数が増加した時に、早期の体験は、開腹外科的修復の代わりにこの低侵襲性の罹患率及び死亡率の利益に注目された。注目されたのは、後で移植後症候群(PIS)と呼ばれる一部の患者が体験する急性炎症反応であった。Velazquez他、Amer J Surg.178:185-9(1999)は、発熱及び白血球増加症が血管内大動脈修復(EVAR)後の数日にわたって観察されたそのような症候群を説明している。12の選択的症例のこれらの遡及解析では、67%は、38.6℃(p<0.05)を超える高位発熱を体験したが、58%は、11,000細胞/μL(p<0.05)を超える白血球細胞の増殖を体験し、敗血症評価は大部分の患者(97%)で感染源を識別しなかった。これらの結果は、PISが局所炎症反応、潜在的にはEVARに続く治癒反応の一部に関連している場合があることを示唆した。
【0023】
これらの患者での観察結果を明らかにするために、幾人かの著者は、基礎的な病態生理学のより機械的説明を識別することに目標を定められた。Arnaoutoglou他、J Vac Surg.63:1248-55(2016)は、下流の発熱及び白血球増加症だけではなく、移植後の時点を超えて延びる固有の炎症マーカ(高感度C反応性タンパク質[hs-CRP]及びインターロイキン-6[IL-6])及び顕著な有害事象(主要な有害心臓事象[MACE]、急性腎不全、再入院、及びあらゆる原因による死亡)を観察した182例の患者の前望的研究を行った。彼らの先輩と同じく、彼らは、1日よりも長い間持続する38℃を超える持続的な発熱、及び血液培養が陰性の12,000細胞/μLよりも多い白血球数(WBC)としてPICを定義した。彼らは、患者の35.7%のPISに注目した。WBC、hs-CRP、及びIL-6は、術後最初の月ではPISグループ対非PISグループ(p<0.001)で全て統計的に上昇し、更なる粒度は、ポリエステルで作られた移植片が、拡張したポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)で作られたものよりもPIS発症し易いことを示唆した。hs-CRP及びIL-6レベルは、1年経過観察で一般的な水準まで弱毒化して戻ったが、WBCは上昇したままであった(p<0.05)。罹患率及び死亡率に関して、これらの著者は、PISと診断された患者が非PIS患者よりもMACE(p=0.007)に罹患する可能性が約4.5倍高く、非有害心臓事象(p=0.005)に罹患する可能性が4.51倍高いことを見出した。これらの結果は、PISの臨床現象を裏付け、それを重症の有害事象との関連で炎症誘発動力学の上方制御に関連付けている。
【0024】
EVARの代わりの血管内動脈瘤密封(EVAS)の出現は、あらゆるその後に起こる炎症反応を調整する可能性を導入する。EVARにより、ステント移植片は、既存の血流管腔内に円筒形の導管を形成し、一般的に、ステント移植片の外径は、流れ管腔の断面全体を充填せず、むしろデバイスの境界と既存の血栓の間に空間を可能にする。この空間は、新鮮な血栓の形成によって広がる可能性が最も高くなり、潜在的に血栓活性に関連付けられた炎症反応を悪化させる(Roumen-Klappe他、J Vas Surg.35(4):701-6(2002))。対照的に、EVASは、移植片導管の外側の非流れ管腔空間をポリマーで占有し、更なる血栓形成を防止することに目標を定めている。技術間のこの根本的な違いは、EVASが血栓形成及び結果的としてPISの発症に関して有益な効果を有する機会を提供することができる。
【0025】
Berg他、J End Ther.24(5):67-4(2017)は、EVARとEVASの間のPISでのこの違いを調査した。これらの著者は、以前の報告と同様であるが動脈瘤治療タイプの追加変数を有するPIS、炎症マーカ、及び臨床的合併症に対して30日間を通じて63人のEVAR及41人のEVAS患者の遡及単一中心データを解析した。解析の第2の層として、彼らは、対形成アルゴリズムを使用して治療選択バイアス及びグループ間の基線患者特性の考えられる不均衡を調節した傾向スコアマッチ解析を行なった。PISは、EVAS患者の5.1%対EVAR患者の20.5%で注目された。発熱(最高温度>38℃)、WBC(>12,000細胞/μL)、及びhs-CRPは、EVAS対EVAR(それぞれp=0.05、p=0.003、及びp<0.001)で全て低減した。傾向スコアマッチ部分集合(各グループの39人の患者)では、重篤な有害事象(すなわち、心代償不全、I型内部漏出に対する2次関与、及びトロポニンレベルが上昇した狭心症)及び30日間を通じての内部漏出は、EVASでは頻度が少なかったが、割合に有意差はなかった。彼らはまた、EVAR移植片材料の選択が術後及び30日間の臨床結果に影響を与え、ポリエステル移植片でより大きい全体リスクが観察されたと結論を下した。
【0026】
本発明の技術は、EVASが炎症反応を低減し、かつEVARに対する全ての原因による死亡率利益をもたらすことができる経路への新しい洞察に一部基づいている。EVASの新しい作用機構の発見に一部基づいて、一態様では、本発明の技術は、移植後のかつ血管内移植片の急性及び慢性炎症反応を調整するためのシステム及び方法を説明する。
【0027】
別に定めない限り、本明細書に使用する全ての技術的及び科学的用語は、一般的にこの技術が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書及び特許請求の範囲に使用される時に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他を明示的に指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「薬剤」への言及は、2又は3以上の薬剤などの組合せを含む。一般的に、本明細書に使用する命名法及び細胞培養内の実験室手順、分子遺伝学、有機化学、解析化学及び核酸化学、並びに以下に説明する混成は、公知であり、当業技術で一般的に使用されている。本明細書内の値の範囲の列挙は、本明細書で他の指示がない限り、範囲に入る各個別の値を個々に参照する速記方法として機能することが単に意図され、各個別の値は、本明細書に個々に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に説明する全ての方法は、本明細書で他の指示がない限り又は文脈によって明確に他に矛盾がない限り、あらゆる適切な順序で実行することができる。本明細書に提供するいずれか及び全ての例又は例示的言語(例えば、「のような」)の使用は、単に実施形態をより良く例示するように意図し、別に定めない限り、特許請求の範囲に制限をもたらすものではない。本明細書での言語は、いずれの非特許請求要素も不可欠として示すように解釈すべきではない。
【0028】
本明細書に使用される時に、「約」は、当業者によって理解されるであろうし、それが使用される文脈に応じてある程度変化することになる。当業者に明確でない用語の使用がある場合に、それが使用される文脈から判断すると、「約」は特定の用語の±10%までを意味する。本明細書に使用される時に、数字を参照する用語「約」及び「実質的に」は、一般的に、別に定めない限り及び文脈からそれ以外の証拠がない限り、数の(より大きく又はより小さい)いずれかの方向に1%、5%、又は10%の範囲に含まれる数を含むように取られる(そのような数が可能値の0%よりも小さく又は100%を超える場合を除く)。
【0029】
本明細書に使用される時に、被験者に対する薬剤又は薬物の「投与」は、その意図する機能を実行する化合物を被験者に導入又は送出するあらゆる経路を含む。投与は、以下に限定されないが、血管内移植片送出システムを通じて、経口的に、鼻腔内に(静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、又は皮下に)、直腸に、髄腔内に、又は局所的にを含むあらゆる適切な経路によって行うことができる。投与は、自己投与及び別の投与を含む。
【0030】
本明細書に使用される時に、用語「及び/又は」は、関連の列挙項目のうちの1又は2以上のいずれか及び全ての組合せを含む。
【0031】
本明細書に使用される時に、「有効量」は、望ましい治療及び/又は予防効果を得るのに十分な量を指す。従って、有効量の圧力は、生物組織から流体の変位をもたらす圧力を指す場合がある。これは、以下に限定されないが、炎症反応の予防又は低減をもたらす血栓又は動脈瘤組織からの流体及び/又は炎症誘発剤又は分子の変位を含む。望ましい効果を得るのに印加する圧力の量は、動脈瘤の場所、程度、及びタイプ、並びに個々の患者に依存する可能性がある。更に、有効量の圧力はまた、血栓又は動脈瘤組織の生物学的改造をもたらす圧力を指す場合がある。改造は、血管系を含む流体通路の構成又は遮断を含む場合がある。更に、有効量の圧力は、本発明の開示を更に精緻化するために固有の圧力値又は圧力範囲を定量的に指す場合がある(持続時間も考慮して)。
【0032】
本明細書に使用される時に、用語「個人」、「患者」、又は「被験者」は、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物、又は人間とすることができる。一部の実施形態では、個人、患者、又は被験者は人間である。
【0033】
本明細書に使用される時に、用語「薬剤的に許容される担体」は、薬剤投与と互換性があるいずれか及び全ての溶媒、分散培地、コーティング、抗菌及び抗真菌化合物、及び等張及び吸収遅延化合物などを含むように意図している。薬剤的に許容される担体及びこれらの製剤は、当業者に公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第20版,編集A.Gennaro,2000,Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia,Pa.)に説明されている。
【0034】
本明細書に使用される時に、用語「治療剤」は、有効量で存在する時にそれを必要とする被験者に望ましい治療効果を生む化合物を意味するように意図している。
【0035】
本明細書に使用する「治療する」又は「治療」は、人間のような被験者での本明細書に説明する疾患又は病気の治療を網羅し、(i)疾患又は病気を抑制し、すなわち、その発症を停止し、(ii)疾患又は病気を軽減し、すなわち、疾患の退化を引き起こし、(iii)疾患又は病気の進行を遅らせ、及び/又は(iv)疾患又は病気のうちの1又は2以上の症状の進行を抑制し、軽減し、又は遅らせること含む。一部の実施形態では、治療は、疾患又は病気に関連付けられた症状が、例えば、軽減され、低減され、治癒され、又は寛解状態に置かれることを意味する。
【0036】
本明細書に説明するような疾患又は病気の治療の様々なモードは、「実質的」を意味するように意図し、これは、完全治療を含むが、完全未満の治療を含み、何らかの生物学的又は医学的に関連の結果が達成されることも認められるであろう。治療は、慢性疾患に対する連続的な長期治療、又は急性の病気の治療に対する1回又は数回の投与とすることができる。治療は、疾患又は病気を治療するのに人工器官(例えば、血管内移植片システム)の外科的手順又は配置を指す場合もある。
【0037】
移植後炎症を調整する方法:
【0038】
EVASは、移植後に続く30日期間でのEVARと比較して鈍い全身炎症反応に潜在的に関連付けられることが示されている(Berg他、J End Ther.24(5):67-4(2017))。Berg他は、主要な心臓又は非心臓関連の有害事象の観点からEVASとEVARの間に統計的有意差を明らかにすることはできなかった。しかし、全てのEVAS及びEVAR患者が含まれた非スコア適合解析では、EVASは主要な有害心臓事象の発生率に有意差を示す(p=0.04)(データは示さず)。理論に拘束されることなく、EVASが炎症反応を低減することができる経路への新しい洞察に基づいて、本発明の技術は、血管内移植片システムの移植後の急性及び慢性炎症の両方を調整して最小にする動脈瘤修復の方法及びシステムに関連する。炎症と心血管リスクの間の相関関係(Willerson他、Circulation 109[suppl II]:II-2-II-10(2004))、及びPISと関連の炎症マーカの間の有害事象に対する相関関係に基づいて、炎症の低減は、主要な心血管、並びに非心血管の有害事象の発生率の低下に更に変換される。本発明の技術は、血管内移植片システムの移植に関連付けられた急性、並びに慢性炎症の両方を軽減することができる(例えば、腹部大動脈瘤(AAA)及び胸部大動脈瘤(TAA)の両方を含む大動脈瘤を治療するのに)いくつかの作用機構の発見に一部基づいている。しかし、本発明の技術は、胸部、腹部、腎臓下、腎近、腎傍、又は膀胱側腔、又はその組合せを含む動脈瘤の多くの形態に関して考えられていることに注意されたい。
【0039】
A.空間充填機構:
【0040】
研究は、PISと関連の炎症マーカの間の有害な結果に対する相関関係を示している。血栓はこの関係の媒体であることを本明細書で提案する。動脈瘤嚢内の化膿血栓及び治療後に新たに形成された血栓の両方は、炎症誘発サイトカイン及び他の薬剤に環境を提供し、これらの細胞信号伝達経路を容易にすることができる。そのような血栓形成を通じて浸透する患者血管及び毛細血管を通じた循環系との連通の何らかのレベルにより、中央循環系へのアクセスが可能である。次に、因果関係は、長期罹患率及び死亡率をもたらす炎症反応の媒体として血栓に関与することが可能である。EVARと比較して新たな堆積物の容積を低減するEVASの特定の特性が移植後の炎症反応を調整するために得られる場合がある(
図5A及び5B)。従って、一態様では、本発明の技術は、治療されることになる血管のセグメント内の新たな血栓形成の防止及びそれによる治療に関連付けられた炎症反応の低減を含む動脈瘤、特に腹部大動脈瘤(AAA)及び胸部大動脈瘤(TAA)の両方を含む大動脈瘤の管腔内治療の方法及びシステムに関するものである。
【0041】
一部の実施形態では、本発明の技術は、充填剤が既存の血栓を完全に又は部分的に変位させる及び/又は新しい血栓の形成を防止するように充填剤(例えば、気体、流体、ポリマー、又はその組合せ)で患者動脈瘤空間を恒久的に充填することを含む動脈瘤を治療するシステム及び方法に関するものである。血栓容積のこの低減は、炎症誘発分子(例えば、以下に限定されないが、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)又はシクロフィリンA、及びアンジオテンシンII、及び反応性酸素、並びに窒素種(ROS/RNS)のような炎症誘発サイトカイン)の全体レベルを低減することができる。一部の実施形態では、充填剤は、硬化後に固定形状を有することになる硬化性ポリマーである。ポリマーは、液体、ゲル、発泡体、又はスラリなどとして送出することができる。一部の実施形態では、ポリマーは、エポキシ又は他の硬化性2部システムとすることができる。一部の実施形態では、ポリマーは、血管環境に露出された時に典型的には0から10分の時間にわたって状態を変化させる単一物質を含むことができる。一部の実施形態では、充填剤は生理食塩水である。一部の実施形態では、充填剤は、血管内移植片システムの一部を形成する1又は2以上の充填構造に存在する。一部の実施形態では、充填構造は、二重壁充填構造であり、充填剤は、外壁と内壁の間の内部空間の中に注入され、その結果、外壁は動脈瘤の形状に適合するようになる。二重壁充填構造は、予備成形されるか又は他に適応され、充填する時に動脈瘤、特に紡錘状動脈瘤の拡大容積を実質的に充填し、血流に対して管腔を定位置に残す。一部の実施形態では、二重壁充填構造の外壁は分解性であり、ある期間にわたって身体内で分解し、例えば、固くなった又は硬化したポリマー充填物を残す。一部の実施形態では、充填剤(例えば、流体、ポリマー、又はその組合せ)は、患者動脈瘤空間の中に直接に注入され、血管内移植片システムを取り囲む。充填剤を患者動脈瘤空間の中に直接に注入することは、治療されている血管のセグメントの血栓又は壁に直接に圧力を印加する機能を提供し、治療部位からの炎症誘発分子の変位を更に補助する。
【0042】
B.潅流の排除:
【0043】
EVAS技術は、EVAR(Thompson他、J EndoVasc Ther.23(5):5:685-692(2016))と比較してII型内部漏出の発生率を低減することが示されている。ポリマーで動脈瘤空間を充填する機能は、内部漏出を持続する必要がある入口及び出口の腰椎血管の間の連通を防止することができる(
図6)。理論に拘束されることなく、嚢充填を通じて患者血管を密封することによって循環血液への化膿血栓のアクセスを防止することは、生物学的に活性な血栓に存在する炎症誘発分子の細胞信号伝達経路を更に低減又は排除することができる。これは、PIS、並びに慢性炎症を媒介する血栓の機能を実質的に鈍くすることができる。従って、一態様では、本発明の技術は、治療されることになる血管のセグメント内の管腔内血栓の循環血液へのアクセスを遮断し、それによって治療に関連付けられた炎症反応を低減することを含む動脈瘤、特に腹部大動脈瘤(AAA)及び胸部大動脈瘤(TAA)の両方を含む大動脈瘤の管腔内治療の方法及びシステムに関するものである。
【0044】
一部の実施形態では、本発明の技術は、充填剤が血栓への灌流を低減又は排除し、結果的に血栓から循環への炎症誘発分子の放出を低減又は排除するように、充填剤(例えば、気体、流体、ポリマー、又はその組合せ)で患者動脈瘤空間を充填することを含む動脈瘤を治療するシステム及び方法に関するものである。血栓容積に対する灌流の低減又は排除は、全身循環への炎症誘発分子(例えば、以下に限定されないが、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)又はシクロフィリンA、及びアンジオテンシンII、及び活性酸素、並びに窒素種(ROS/RNS)のような炎症誘発サイトカイン)の連通を低減することができる。一部の実施形態では、充填剤は、硬化後に固定形状を有することになる硬化性ポリマーである。ポリマーは、液体、ゲル、発泡体、又はスラリなどとして送出することができる。一部の実施形態では、ポリマーは、エポキシ又は他の硬化性2部システムとすることができる。一部の実施形態では、ポリマーは、血管環境に露出された時に典型的に0から10分の時間にわたって状態を変化させる単一物質を含むことができる。一部の実施形態では、充填剤は生理食塩水である。一部の実施形態では、充填剤は、血管内移植片システムの一部を形成する1又は2以上の充填構造に存在する。一部の実施形態では、充填構造は二重壁充填構造であり、充填剤は外壁と内壁の間の内部空間の中に注入され、その結果、外壁は動脈瘤の形状に適合するようになる。二重壁充填構造は、予備成形されるか又は他に適応され、充填される時に動脈瘤、特に紡錘状動脈瘤の拡大容積を実質的に充填し、血流に対して管腔を定位置に残す。一部の実施形態では、二重壁充填構造の外壁は分解性であり、ある期間にわたって身体内で分解し、例えば、固くなった又は硬化したポリマー充填物を残す。一部の実施形態では、充填剤(例えば、流体、ポリマー、又はその組合せ)は、患者動脈瘤空間の中に直接に注入され、血管内移植片システムを取り囲む。充填剤を患者動脈瘤空間の中に直接に注入することは、治療されている血管のセグメントの血栓又は壁に直接に圧力を印加する機能を提供し、治療部位から炎症誘発分子の変位を更に補助する。
【0045】
C.緊急血栓加圧
【0046】
EVASの展開中に、様々な実施形態では、内部バッグは、移植片システムの密封及び固定を達成するために上収縮期ターゲットに対して加圧される。Van Noor他、Vasc.25(5):542-548(2017)は、管腔内腹部大動脈瘤血栓が短期間で生理的圧力に露出される時に流体の変位を受ける場合があることを示している。動脈瘤密封中の化膿血栓にかかる圧力の印加は、血栓内の生物活性流体の遠位循環の中への変位を容易にすることができ、それによって血栓に残っている炎症誘発剤の量及び活性を低減する。動脈瘤内の活性血栓が少ないことは、PISの低減をもたらすことができる。従って、一態様では、本発明の技術は、治療されることになる血管のセグメントの管腔内血栓又は血管壁にかかる有効量の圧力を血栓又は血管壁から生物学的液体を変位させるように働かせ、それによって治療に関連付けられた炎症反応を低減することを含む動脈瘤、特に腹部大動脈瘤(AAA)及び胸部大動脈瘤(TAA)の両方を含む大動脈瘤の管腔内治療の方法及びシステムに関するものである。
【0047】
一部の実施形態では、本発明の技術は、血管の血栓及び/又は壁にかかる緊急圧力が血栓及び/又は壁から生物活性流体を変位させるように、充填剤(例えば、気体、流体、ポリマー、又はその組合せ)で患者動脈瘤空間を充填することを含む動脈瘤を治療するシステム及び方法に関するものである。血栓及び/又は壁からの流体のこの変位は、炎症誘発分子(例えば、以下に限定されないが、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)又はシクロフィリンA、及びアンジオテンシンII、及び反応性酸素及び窒素種(ROS/RNS)のような炎症誘発サイトカイン)の全体レベル及び活性を低減することができる。一部の実施形態では、充填剤は、硬化後に固定形状を有することになる硬化性ポリマーである。ポリマーは、液体、ゲル、発泡体、又はスラリなどとして送出することができる。一部の実施形態では、ポリマーは、エポキシ又は他の硬化性2部システムとすることができる。一部の実施形態では、ポリマーは、血管環境に露出される時に典型的に0から10分の時間にわたって状態を変化させる単一物質を含むことができる。一部の実施形態では、充填剤は生理食塩水である。一部の実施形態では、充填剤は、血管内移植片システムの一部を形成する1又は2以上の充填構造に存在する。
【0048】
一部の実施形態では、充填構造は二重壁充填構造であり、充填剤は、外壁と内壁の間の内部空間の中に注入され、その結果、外壁は動脈瘤の形状に適合するようになる。二重壁充填構造は、予備成形されるか又は他に適応され、充填される時に動脈瘤、特に紡錘状動脈瘤の拡大容積を実質的に充填し、血流に対して管腔を定位置に残す。一部の実施形態では、二重壁充填構造の外壁は分解性であり、ある期間にわたって身体内で分解し、例えば、固くなった又は硬化したポリマー充填物を残す。一部の実施形態では、充填剤(例えば、流体、ポリマー、又はその組合せ)は、患者動脈瘤空間の中に直接に注入され、血管内移植片システムを取り囲む。充填剤を患者動脈瘤空間の中に直接に注入することは、治療されている血管のセグメントの血栓又は壁に直接に圧力を印加する機能を提供し、治療部位から炎症誘発分子の変位を更に補助する。一部の実施形態では、充填剤は気体であり、充填過程は、圧力が有限期間にわたって血栓及び/又は壁に維持されることを保証する動的過程である。一部の実施形態では、二重壁充填構造の外壁は、外壁が血栓及び/又は壁をより良く接着して血栓及び/又は壁にかかる外向きの力をより実質的に印加して維持することを可能にするという特徴を含む。一部の実施形態では、外壁は、動脈瘤の内面で組織内成長又は機械的連動を容易にするように部分的に又は完全に修正することができる。そのような面修正は、面粗面化、面点刻、面フロック加工、面にわたって配置された繊維、面にわたって配置された発泡体層、及びリングなどを含むことができる。血栓形成物質、組織成長促進剤、及び生体接着剤などのような生物学的活性物質を移植片システムの外面の全て又は一部分にわたって設けることができる。付着を高めるようにシステムの面にわたって薬剤的に許容されるポリアクリルアミドのような合成接着剤を設けることが更に可能になる。
【0049】
一部の実施形態では、充填剤の容積は、充填の容積の低減が嚢退化を促進するように経時的に低減するが、十分な接着を有する。
【0050】
一部の実施形態では、段階的又はアルゴリズミックベースの圧力プロファイルは、血管の血栓及び/又は壁への圧力印加を最適化するように充填中に得られる。これは、アルゴリズムに情報を与えることになる動脈瘤の長さを通した壁厚のような動脈瘤の特徴の先駆的知識で達成することができる。この情報は、血栓及び/又は壁のコンピュータ断層撮影(CT)走査又は磁気共鳴撮像(MRI)評価により移植前に、又はセンサにより移植後又は移植中に得ることができる。センサは、情報を感知してフィードバックループを通じてそれをアルゴリズムに中継する電気、磁気、機械、又は光センサとすることができる。
【0051】
一部の実施形態では、動脈瘤空間は、約80mmHgから約1000mmHgまでの範囲の圧力で充填剤で充填されることになる。一部の実施形態では、圧力は、約80-200、約120-300、約200-400、約400-600、約600-800、又は約800-1000mmHgの範囲である。一部の実施形態では、圧力は収縮期圧力を超える。印加する圧力の上限は、破裂することなく圧力を持続する動脈瘤壁による機能によって決定されることになる。
【0052】
一部の実施形態では、血管内移植片システムは、隣接ポリマー塊の形成を促進するように設計される。一部の実施形態では、これは、充填剤が血管の血栓及び/又は壁に外向きの圧力をより効率的に働かせて伝達することができるように、充填剤と動脈瘤空間の間の追加構造を低減又は排除することによって達成することができる。一部の実施形態では、充填剤は、血管の血栓及び/又は壁に外向きの圧力を効率的に働かせて伝達することができる単一隣接塊の中への改善された凝集体を示すポリマーである。
【0053】
一部の実施形態では、本発明の技術の方法及びシステムは、治療されている血管のセグメントでの血栓の急速な化膿を促進する薬剤を投与又は送出することを含む。当業技術で公知のあらゆる適切な血栓形成剤を使用することができる。理論に拘束されることなく、隣接固体血栓への緩い血栓の変換は、より容易にそれを加圧することを可能にする。更に、治療剤は、動脈瘤空間の中に直接に送出されるか又は人工器官と共に導入することができる。従って、例示的実施形態では、充填構造の外壁の外面は治療剤を含む。別の例示的実施形態では、治療剤は、充填可能な構造を充填する前に動脈瘤空間の中に直接に導入される。
【0054】
D.長期血栓加圧:
【0055】
EVAS展開後に、様々な実施形態では、たとえ内部バッグ内の静水圧が、ポリマーが硬化する時にゼロに近づくことになっても、周囲の構造体に印加する圧力は長期的に維持されることになる。ポリマー充填内部バッグによる既存の化膿血栓又は動脈瘤壁のいずれかにかかるこの持続的残留正味外向き圧力の存在は、細胞外液採取を低減するか又は血栓内の血管新生を促進するあらゆるファクタを低減することにより、炎症性経路を容易にする血栓の機能を潜在的に低下又は廃止することができる。次に、血栓の生物活性は、必要な培地がない場合に低減することができる。従って、一態様では、本発明の技術は、治療されることになる血管のセグメントの管腔内血栓又は血管壁にかかる有効量の圧力を血栓又は血管壁から生物学的液体を変位させるように働かせ、それによって治療に関連付けられた炎症反応を低減することを含む動脈瘤、特に腹部大動脈瘤(AAA)及び胸部大動脈瘤(TAA)の両方を含む大動脈瘤の管腔内治療の方法及びシステムに関するものである。
【0056】
一部の実施形態では、本発明の技術は、血管の血栓及び/又は壁にかかる長期的圧力が血栓及び/又は壁から生物活性流体を変位させるように充填剤(例えば、気体、流体、ポリマー、又はその組合せ)で患者動脈瘤空間を充填することを含む動脈瘤を治療するシステム及び方法に関するものである。長期的な血栓及び/又は壁からの流体のこの変位は、炎症誘発分子(例えば、以下に限定されないが、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)又はシクロフィリンA、及びアンジオテンシンII、及び反応性酸素及び窒素種(ROS/RNS)のような炎症誘発サイトカイン)の全体レベル及び活性を低減することができる。一部の実施形態では、充填剤は、硬化後に固定形状を有することになる硬化性ポリマーである。ポリマーは、液体、ゲル、発泡体、又はスラリなどとして送出することができる。一部の実施形態では、ポリマーは、エポキシ又は他の硬化性2部システムとすることができる。一部の実施形態では、ポリマーは、血管環境に露出される時に典型的に0から10分の時間にわたって状態を変化させる単一物質を含むことができる。一部の実施形態では、充填剤は生理食塩水である。一部の実施形態では、充填剤は、血管内移植片システムの一部を形成する1又は2以上の充填構造に存在する。
【0057】
一部の実施形態では、充填構造は二重壁充填構造であり、充填剤は、外壁と内壁の間の内部空間の中に注入され、その結果、外壁は動脈瘤の形状に適合するようになる。二重壁充填構造は、予備成形されるか又は他に適応され、充填される時に動脈瘤、特に紡錘状動脈瘤の拡大容積を実質的に充填し、血流に対して管腔を定位置に残す。一部の実施形態では、二重壁充填構造の外壁は分解性であり、ある期間にわたって身体内で分解し、例えば、血栓及び/又は血管壁に対して長期的圧力を維持する固くなった又は硬化したポリマー充填物を残す。一部の実施形態では、充填剤(例えば、流体、ポリマー、又はその組合せ)は、患者動脈瘤空間の中に直接に注入され、血管内移植片システムを取り囲む。充填剤を患者動脈瘤空間の中に直接に注入することは、治療されている血管のセグメントの血栓又は壁に直接に圧力を印加する機能を提供し、治療部位から炎症誘発分子の変位を更に補助する。一部の実施形態では、充填剤は気体であり、充填の過程は、圧力が有限期間にわたって血栓及び/又は壁に維持されることを保証する動的過程である。一部の実施形態では、二重壁充填構造の外壁は、外壁が血栓及び/又は壁により良く接着して長期的に血栓及び/又は壁にかかる外向きの力をより実質的に印加して維持することを可能にするという特徴を含む。一部の実施形態では、外壁は、組織内成長又は動脈瘤の内面との機械的連動を容易にするように部分的に又は完全に修正することができる。そのような面修正は、面粗面化、面点刻、面フロック加工、面にわたって配置された繊維、面にわたって配置された発泡体層、及びリングなどを含むことができる。血栓形成物質、組織成長促進剤、及び生体接着剤などのような生物学的活性物質を移植片システムの外面の全て又は一部分にわたって設けることができる。付着を高めるようにシステムの面にわたって薬剤的に許容されるポリアクリルアミドのような合成接着剤を設けることが更に可能になる。
【0058】
一部の実施形態では、血栓及び/又は血管壁上の血管内移植片が作用する長期的圧力は、約80-200、約80-100、約100-120、約120-140、約140-160、約160-180、又は約180-200mmの範囲である。
【0059】
一部の実施形態では、充填剤の容積は、充填の容積の低減が嚢退化を促進するように経時的に低減するが、十分な接着を有する。
【0060】
一部の実施形態では、段階的又はアルゴリズミックベースの圧力プロファイルは、血管の血栓及び/又は壁への圧力印加を最適化するように充填中に得られる。これは、アルゴリズムに情報を与えることになる動脈瘤の長さを通した壁厚のような動脈瘤の特徴の先駆的知識で達成することができる。この情報は、血栓及び/又は壁のCT又はMRI評価により移植前に、又はセンサにより移植後又は移植中に得ることができる。センサは、情報を感知してフィードバックループを通じてそれをアルゴリズムに中継する電気、磁気、機械、又は光センサとすることができる。これはまた、治療されている血管のセグメントの血栓及び/又は血管壁に移植片システムが長期的に作用することになる圧力に情報を与えることになる。
【0061】
一部の実施形態では、血管内移植片システムは、隣接ポリマー塊の形成を促進するように設計される。一部の実施形態では、これは、充填剤が血管の血栓及び/又は壁に外向きの圧力をより効率的に働かせて伝達することができるように、充填剤と動脈瘤空間の間の追加構造を低減又は排除することによって達成することができる。一部の実施形態では、充填剤は、長期的に血管の血栓及び/又は壁に外向きの圧力を効率的に働かせて伝達することができる単一隣接塊の中への改善された凝集体を示すポリマーである。
【0062】
一部の実施形態では、本発明の技術の方法及びシステムは、治療されている血管のセグメントでの血栓の急速な化膿を促進する薬剤を投与又は送出することを含む。理論に拘束されることなく、隣接固体血栓への緩い血栓の変換は、より容易にそれを加圧することを可能にする。
【0063】
一部の実施形態では、本発明の技術のシステムは、管腔崩壊を防ぐように及び従って長期的に血栓及び/又は壁への圧力の印加を保証するように血管内移植片システムの流れ管腔での追加支持構造又は面修正を含む。一部の実施形態では、システムは、編組補強層及びフィラメント補強層などを含む。一部の実施形態では、システムは、リングなどのような面修正を含む。
【0064】
E.材料の相互作用
【0065】
歴史的には、ステント移植片材料は、公知の生体適合性に起因してポリエステル及びePTFEに限定されている。重症の免疫反応の観点から不活性であるがいずれかの異物の存在は、何らかの生化学的反応をもたらすことになる。理論に拘束されることなく、様々な実施形態でポリエステル及びePTFE材料の化学官能基及び微多孔性を不浸透性のポリウレタン材料と置換することは、流れ管腔と血栓の間の全ての連通を排除することにより、大量の炎症誘発宿主組織反応又は瘢痕組織形成を軽減することができる(
図9)。これは、血管系を通して持続炎症反応を低減することになる。従って、一態様では、本発明の技術は、管腔を血流に提供するポリウレタンを含むステント移植片を含む血管内移植片システムを提供する。一部の実施形態では、血管内移植片システムは、管腔を血流に提供するポリエチレングリコール又はコラーゲンを含むステント移植片を含む。
【0066】
ポリウレタンの例は、Thoralon(登録商標)(カリフォルニア州のプレザントン所在のTHORATEC)、BIOSPAN(登録商標)、BIONATE(登録商標)、ELASTHANE(登録商標)、PURSIL(登録商標)、及びCARBOSIL(登録商標)(カリフォルニア州のバークレー所在のPOLYMER TECHNOLOGY GROUP)を含む。引用によって本明細書にその内容全体が組み込まれている米国特許第6,939,377号明細書に説明されているように、Thoralon(登録商標)は、シロキサン含有面修正添加剤と混合されたポリエーテルウレタン尿素である。具体的には、ポリマーは、ベースポリマーBPS-215及び添加剤SMA-300の混合物である。添加剤の濃度は、ベースポリマーの重量で0.5%から5%の範囲とすることができる。BPS-215成分(THORATEC)は、軟質セグメント及び硬質セグメントを含有するセグメント化されたポリエーテルウレタン尿素である。軟質セグメントは、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)で作られ、硬質セグメントは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びエチレンジアミン(ED)の反応から作られる。Thoralon(登録商標)は、一定の血管用途に使用されており、血栓抵抗性、高引張強度、低吸水、低臨界面張力、及び良好な屈曲寿命によって特徴付けられる。Thoralon(登録商標)は、生体安定性及び耐漏れ性を必要とする長期血液接触用途において生体安定性であって生体内で有用であると考えられる。その柔軟性のために、Thoralon(登録商標)は、弾性及び柔順性が有益である腹部大動脈のようなより大きい血管で有用である。他のポリウレタン尿素をThoralon(登録商標)に加えて使用することができる。ポリウレタン尿素に加えて、他のポリウレタン、例えば、ジオールを用いて延びる伸張する鎖を有するものを移植片材料として使用することができる。カチオン、アニオン、及び脂肪族側鎖で修飾されたポリウレタンも使用することができる。例えば、引用によって本明細書にその内容全体が組み込まれている米国特許第5,017,664号明細書を参照されたい。ポリウレタンはまた、例えば、ポリジメチルシロキサン、フルオロポリマー、ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、又は他の適切な基のような面活性末端基で末端キャップすることができる。例えば、引用によって本明細書にその内容全体が組み込まれている米国特許第5,589,563号明細書に開示されている面活性末端基を参照されたい。一部の実施形態では、移植片材料は、シロキサンポリウレタンとも呼ばれるシロキサンセグメントを有するポリウレタンを含有することができる。シロキサンセグメントを含有するポリウレタンの例は、ポリエーテルシロキサンポリウレタン、ポリカーボネートシロキサンポリウレタン、及びシロキサンポリウレタン尿素を含む。具体的には、シロキサンポリウレタンの例は、ELAST-EON2及びELAST-EON3(オーストラリアのビクトリア州所在のAORTECH BIOMATERIALS)のようなポリマー、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)及びPURSIL-10、-20、及び-40TSPUのようなポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリエーテルベースの芳香族シロキサンポリウレタン、PURSIL AL-5及びAL-10TSPUのようなPTMO及びPDMSポリエーテルベースの脂肪族シロキサンポリウレタン、脂肪族、ヒドロキシ末端ポリカーボネート、及びCARBOSIL-10、-20、及び-40TSPU(POLYMER TECHNOLOGY GROUPから全て入手可能)のようなPDMSポリカーボネートベースのシロキサンポリウレタンを含む。PURSIL、PURSIL-AL、及びCARBOSILポリマーは、軟質セグメントにシロキサンを含有する熱可塑性エラストマーウレタンコポリマーであり、コポリマー中のパーセントシロキサンは等級名で呼ばれる。例えば、PURSIL-10は、10%シロキサンを含有する。シロキサンポリウレタンの例は、引用によって本明細書にその内容全体が組み込まれている米国特許公開第2002/0187288 A1号明細書に開示されている。
【0067】
F.表面積
【0068】
ステントの内部をePTFE裏打ち上の堆積物の証拠がある。従って、様々な実施形態により堆積物に利用することができる内面積を低減することは、ステント内に炎症誘発堆積物の存在を低減することによって炎症反応を軽減することができる。一部の実施形態では、本発明の開示の血管内移植片システムは、20mmよりも小さい全体直径を有する血流に対して定位置に管腔を形成する1又は2以上のステントを含む。一部の実施形態では、全体直径は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19mmである。
【0069】
本明細書に説明する実施形態のいずれでも、血管内移植片システムは、近位及び/又は遠位密封場所に(例えば、腎臓下大動脈瘤を治療する時に頸部及び腸骨に)固定することができる。追加の密封又は係止機構は、以下に限定されないが、ステント、骨組、フック、逆刺、シール、及び密封カフなどを含む。腎臓下人工器官の近くに延びる密封カフ又はステントに関して、血流を腎動脈の中に浸透させながら開口部又はポートを設けて係止又は密封デバイスが腎口にわたって延びることを可能にすることが望ましい場合がある。密封又は係止デバイスは、典型的には、人工器官の充填構造に付着する及び/又はそれと重なるようになり、大動脈及び/又は腸骨管腔から展開された充填構造によって提供される管状内腔の中に滑らかな移行を提供することになる
【0070】
本明細書に説明する実施形態のいずれでも、血管内移植片システムは、動脈瘤空間内の配置を高めるように他の方法で修正することができる。一部の実施形態では、システムの外面は、組織内成長又は動脈瘤の内面との機械的連動を容易にするように部分的に又は完全に修正することができる。そのような面修正は、面粗面化、面点刻、面フロック加工、面にわたって配置された繊維、面にわたって配置された発泡体層、及びリングなどを含むことができる。血栓形成物質、組織成長促進剤、及び生体接着剤などのような生物学的活性物質を移植片システムの外面の全て又は一部分にわたって設けることができる。付着を高めるようにシステムの面にわたって薬剤的に許容されるポリアクリルアミドのような合成接着剤を設けることが更に可能になる。
【0071】
本明細書に説明する実施形態のいずれでも、充填剤の容積は、充填の容積の低減が嚢退化を促進するように経時的に低減するが、十分な接着を有する。
【0072】
本明細書に説明する実施形態のいずれでも、本発明の技術の方法及びシステムは、生体液が動脈瘤空間から遠位に逃れることを可能にするように更に修正することができる。一部の実施形態では、血管内移植片システムは、流体が逃れるためのチャネルを含む。例示的実施形態では、充填構造は、流体が近位に又は遠位に流れるためのチャネルを含む。
【0073】
本明細書に説明する実施形態のいずれでも、本発明の技術の方法及びシステムは、動脈瘤空間から血栓を機械的に吸引する段階を更に含むことができる。これは、血管内移植片システムを使用して実施することができ、又は個別に達成することができる。このようにして血栓を低減することは、血管内移植片システムの展開に関連付けられた炎症を低減することになる。
【0074】
本明細書に説明する実施形態のいずれも、抗血小板療法、スタチン療法、又はACE阻害剤療法のような療法と組み合わせることができる。そのような療法は当分野で公知であり、適切な治療法を選択することは、熟練技術者の権限内にある。
【0075】
移植片システム:
【0076】
一態様では、本発明の技術は、動脈瘤、特に腹部大動脈瘤(AAA)及び胸部大動脈瘤(TAA)の両方を含む大動脈瘤の管腔内治療の方法及びシステムを提供する。特に、胸部、腹部、腎臓下、腎近、腎傍、又は膀胱側腔動脈瘤の治療が本明細書で考えられている。システムは、予備成形されるか又は他に適応され、充填される時に動脈瘤、特に紡錘状動脈瘤の拡大容積を実質的に充填する二重壁充填構造を含む人工器官を提供し、血流に対して管腔を定位置に残す。一部の実施形態では、システムは、血流に対して管腔を有する単一壁構造を含む。
【0077】
送出カテーテルの上に装着された充填構造を含む例示的単一人工器官システムが
図1に示されている。二重壁充填構造12を動脈瘤に送出するように構成されたシステム10は、その遠位端に拡張可能な要素16、典型的には膨張可能なバルーンを有する充填構造及び送出カテーテル14を含む。カテーテル14は、ガイドワイヤ管腔18、バルーン膨張管腔(図示せず)又は他の拡張可能な構成要素を拡張するための他の構造、及び二重壁充填構造12の内部空間22に充填剤を送出するための充填チューブ20を含むことになる。内部空間22は、充填構造の外壁24と内壁26の間に定められる。充填剤による膨張により、外壁24は、破線に示すように半径方向外向きに、かつ破線に示す内壁26と同様に半径方向外向きに拡張することになる。内壁26の拡張は内部キャビティ28を定める。拡張可能なバルーン又は他の構造16は、同じく
図1の破線にあるように、管腔28の内面を支持するように拡張可能になる。充填剤は、気体、流体、ポリマー、又はその組合せとすることができる。
【0078】
図1の治療システムは、
図2に示すように、送出カテーテル14を最初に位置決めすることによって複雑な形状の貫壁性腹部大動脈瘤(AAA)を治療し、腎動脈(RA)の下の大動脈の領域から腸骨動脈(IA)の上の領域まで動脈瘤をほぼ横切って二重壁充填構造12を置くのに利用することができる(その未充填構成で)。送出カテーテル14は、セルジンガー技術によって腸骨動脈にアクセスする患者の鼠径部での穿刺を通じてガイドワイヤ(GW)上に導入することができる。二重壁充填構造12が適正に位置決めされた後に、充填剤は、内部空間22に導入され、内側空間22の充填は、それが動脈瘤空間の内面(S)に適合するように構造体の外壁24を外向きに拡張する。二重壁充填構造12を膨張媒体で充填する前、充填中、又はその後にバルーン16又は他の拡張可能な構造も、内壁26内によって定められた管状管腔を開放するように膨張又は拡張することになる。充填剤は、気体、流体、ポリマー、又はその組合せとすることができる。一部の実施形態では、充填剤は生理食塩水である。一部の実施形態では、充填剤は気体である。
【0079】
いずれの実施形態でも、1対の二重壁充填構造を使用して、
図2に示すように単一充填構造の代わりに大動脈瘤(例えば、腎臓下大動脈瘤)を治療することができる。そのような1対の充填構造を含むシステムは、第1の充填構造112及び第2の充填構造212を含む
図3に例示されている。充填構造112及び212の各々は、それぞれ送出カテーテル114及び214上に装着される。充填構造112及び212、並びに送出カテーテル114及び214の構成要素は、
図1の単一充填構造システム10に関して上述したものとほぼ同じである。
図3に示すように、送出カテーテル114及び214は、それぞれガイドワイヤ管腔118及び218を含む。拡張内壁128及び228は、それぞれバルーン116及び216で支持される。充填構造は、流れチューブ120及び220を使用して充填することができる。一方で充填構造112及び212と
図1の充填構造12との間の主な違いは、充填構造の対が、一般的に、動脈瘤空間内で互いに隣接して位置決めされ、組み合わせてその空間を充填することを意味する非対称構成を有することになるということである。
図3の充填構造112及び212を充填剤で充填した後に、送出カテーテル114及び214は、それぞれ除去される。次に、充填構造は、腎動脈の下の大動脈から右及び左腸骨動脈に開く1対の管状管腔を提供することになる。動脈瘤の内面に対応する充填構造112及び212の機能は、ほとんど又は全く移動せずに動脈瘤内に構造が固定されたままに留まることを補助する。充填剤は、気体、流体、ポリマー、又はその組合せとすることができる。一部の実施形態では、充填剤は、充填構造内で硬化する硬化性ポリマーである。一部の実施形態では、充填剤は生理食塩水である。一部の実施形態では、充填剤は気体である。
【0080】
図4は、展開された時の
図3のステント移植片システムを示している。
図3及び
図4を参照すると、それぞれ充填構造112及び212の外面124及び224は、動脈瘤空間に位置決めされた動脈瘤面(S)及び血栓(T)と接触する。特に、ポリマー材料で充填された充填構造112及び212は、ステント移植片が拡張される時に動脈瘤面(S)及び/又は血栓(T)に有効量の圧力を印加することができる。
【0081】
例示的実施形態の利点を更に示して
図5A及び5Bは、治療している動脈瘤の概念的断面表現を提供する。
図5Aでは、EVASシステムは、二重流れ管腔508を提供し、各々は、拡張可能な構造(内部バッグ)510を有し、これは、拡張された時に、拡張可能な構造510と動脈瘤壁500の間に位置決めされた既存の血栓502に圧力を印加する。対照的に、
図5Bに示すEVARシステムは、動脈瘤壁500上の既存の血栓502と流れ管腔504の間に初発の血栓形成506を可能にする。
【0082】
上述のようにかつ例示的実施形態により、PISの影響は、灌流の排除を通じて軽減することができる。この概念は、
図6に動脈瘤断面表現で示されている。図示のように、動脈瘤壁600を横切って循環系(図示せず)から血栓602への流体流れ(血液)経路608は、充填構造604で除去することができる。更に、充填構造604は、流れ管腔606と血栓602の間の流体連通に対して障壁として作用することができる。
【0083】
緊急血栓加圧に対する概念的表現は、
図7に示されている。ここで、血栓702(及び動脈瘤壁700)に対する充填構造704からの圧力708は、血栓702又は動脈瘤壁700から生物活性流体を変位させることができる。特に、ステント移植片の半径方向拡張(管腔706内の)は、充填構造704が有効量の圧力を血栓/動脈瘤壁に印加することを可能にすることができる。これに関連して、長期血栓加圧は、
図8に概念的に表されている。ここで、圧力808は、充填構造804で血栓802(及び動脈瘤壁800)にかけられる。ここでもまた、管腔806内のステント移植片の半径方向拡張は、血栓802に有効量の圧力をもたらし、生物学的流体を変位させてPISの影響を軽減することができる。
【0084】
血栓と流れ管腔の間の相互作用除去は、上述のように
図9に例示されている。図示のように、管腔906を形成するステント移植片のための材料の選択は、動脈瘤壁900内(動脈瘤空間)の管腔906と血栓902の間の流体連通908を排除することができる。これは、取りわけ、より低い孔隙率、孔隙サイズ、又はその両方で材料を選択することによって達成することができる。充填構造904はまた、流体流れに対しても障壁として作用することができる。
【0085】
上述の充填構造に加えて、システムは、充填構造とは別の少なくとも第1の骨組を更に含むことができ、ここで、骨組は、充填構造が動脈瘤において展開された後に血流を提供するほぼ管状内腔内で拡張することができる。第1の骨組は、充填構造の管状管腔の少なくとも第1の部分内で拡張するように適応されることになり、1又は2以上の固有の利点を提供することができる。例えば、骨組は、ポリマー充填物の硬化中に潜在的に他に不均一になる可能性があると考えられる管状内腔の内壁を支持して滑らかにすることができる。骨組はまた、特にAAAに置く時に移植片の大動脈端に充填構造の係止を提供することができる。骨組は、ステント移植片を形成するように、膜で部分的に又は全体として覆うことができる。そのような場合に、移植片構造は、大動脈端から充填構造のほぼ管状内腔までの血管からの移行を提供するのを補助することができる。これに代えて、移植片構造は、充填構造の腸骨端から1つの又は1対の移行部を提供することができる。特定の例では、移植片構造は、隣接する血管において追加の又は継続する動脈瘤領域を治療するために充填構造の両側に使用することができる。いずれの実施形態でも、システムは、複数の骨組構造を含むことができる。例えば、システムは、少なくとも第1及び第2の骨組をそれぞれ第1及び第2の二重壁充填構造によって定められた管状管腔の各々に対して1つ含むことができる。骨組は、多くの場合に重なって直列に置くように適応させることができ、又はいずれかの又は両方の端部で及び任意的に端部間の領域で離間するように適応させることができる。
【0086】
様々な実施形態では、単一人工器官システムのための短いステント状骨組構造を使用することができる。骨組は、構造の上端を係止して動脈瘤の外壁と内面の間の領域への血液の侵入を防止し、一般的に大動脈から環状管腔への移行を改善するのを補助するために、充填構造の管状管腔の上側近位開口部に埋め込むことができる。ステント状構造は、あらゆる従来のステント、移植片、又は当業技術で公知の他の拡張可能な管腔支持構造を含むことができる。例えば、移植片は、移植片本体の円周全体の周りに延びる1又は2以上の周方向の膨張可能なチャネルを含むことができ、又は移植片本体の円周の周りに部分的に延びることができる。周方向の膨張可能なチャネルは、長手方向に膨張可能な充填チャネルを通じて互いに連通状態にすることができる。膨張可能なチャネルのネットワークは、チャネルの中に注入された後に固くなる、硬化する、又は他に粘性が増加する又はより剛的になるように構成することができる硬化可能な材料で任意的に充填することができる。より固い又は実質的に硬化した状態まで硬化性であるゲル、液体、又は他の流動性材料のような硬化可能な膨張材料を使用して、チャネル内に配置された硬化材料の機械的特性によって移植片本体に機械的支持を提供することができる。一部の実施形態では、充填剤は生理食塩水である。一部の実施形態では、充填剤は気体である。
【0087】
図10は、例示的実施形態により動脈瘤にわたって展開されたステント移植片システムを示している。図示のように、ステント移植片人工器官1002は、充填構造1000が、充填剤で充填され、かつ動脈瘤壁1008及び/又はその上に位置付けられた血栓1010と接触するように拡張された動脈瘤にわたって位置決めされる。人工器官1002は、ここでカフ部分1004及び係止ステント部分1006を含み、人工器官の位置を固定して近位開口部を動脈瘤の中に密封する。様々な実施形態では、
図10のステント移植片システムは、上記で議論した(A)空間充填、(B)灌流の排除、(C)緊急血栓加圧、(D)長期血栓加圧、(E)材料の相互作用、及び(F)表面積機構のうちの1又は2以上を実施するように構成される。
【0088】
様々な実施形態は、
図11、12、及び13の流れ図にも例示されている。
図11では、簡易流れ図を提供し、ここで段階1100から始まって、充填構造及びステント移植片を含む人工器官が、患者の動脈瘤にわたって置かれる。次の段階1102では、充填構造は、充填剤で充填されて動脈瘤に位置付けられた血栓と接触する。充填剤は、方法に応じて第1の充填剤又は第2の充填剤とすることができる。人工器官のステント移植片は、充填された充填構造に対して次の段階1104で拡張される。その結果、充填構造は、血栓に有効量の圧力を印加する。
【0089】
人工器官の各部分の充填、拡張、及び/又は展開の順序は変えることができる。例えば、
図12では、ステント移植片は、段階1202で第1の圧力で拡張バルーンを使用して最初に拡張される。これは、段階1204で第1の充填剤で充填される時に充填構造の拡張に対して支持を提供することができる。第1の充填剤は、ここでは生理食塩水とすることができ、それによって構造を充填するのに使用する量は、動脈瘤空間の容積の近似値として使用することができる。第1の充填剤が段階1206で除去された後に、充填構造は、段階1208で第2の充填剤で再充填される。第2の充填剤は、硬化性ポリマー材料を含むことができる。次の段階1210では、ステント移植片は、再度拡張されるが、今度は第2の圧力で拡張される。ここでの第2の圧力は、第1の圧力よりも実質的に大きい。従って、ステント移植片が充填構造に対して拡張される時に、充填構造の外壁は、血栓に対して有効量の圧力を及ぼす。
【0090】
別の例示的実施形態は、
図13に示されている。段階1302から始まって、第1の充填剤は、充填構造の中に導入されて動脈瘤空間内の血栓と接触する。好ましくは、充填剤は、容易に導入して引き抜くことができる生理食塩水又は別の流体である。この段階は、取りわけ、充填構造(例えば、内部バッグ)を広げるのを補助し、より良い密封を達成するのを潜在的に補助することができる。更に、充填構造は、ステント移植片の拡張前にそれが管腔構造を提供するように予備成形することができる。次に、段階1304では、ステント移植片は、充填構造に対して拡張され、充填構造外壁が有効量の圧力を血栓に印加することを引き起こす。次に、第1の充填剤が、段階1306で除去される。拡張されたステント移植片が定位置にある状態で、段階1308では、充填構造は、取りわけ、動脈瘤の容積を決定するのに使用することができる第1の充填剤で再度充填される。この情報は、段階1312で使用され(段階1310で充填剤を除去した後に)、動脈瘤空間内の血栓と接触するように第2の充填剤(例えば、硬化性ポリマー)で構造を充填する。最後に、ステント移植片は、段階1314で充填構造に対して第2の圧力で再拡張され、それによって充填構造が有効量の圧力を血栓に印加する。
【0091】
例示的実施形態では、第1又は第2の充填剤で充填された充填構造は、有効量の圧力を動脈瘤空間内の1つの血栓(又は複数の血栓)と接触させてこの圧力を印加することができる。例えば、充填剤溶液で充填する時に、充填圧力は、外壁が有効量の圧力を血栓に印加するのに十分とすることができる。次に、充填構造壁に対するステント移植片の拡張は、追加の有効量の圧力をもたらすことができる。従って、本発明の開示は、有効量の圧力が血栓に印加される複数の事例を考えている。
【0092】
薬剤を充填する第1の充填剤は、充填構造と共に使用する時に、取りわけ、血栓にかかる有効量の圧力を及ぼす動脈瘤の密封及び血栓容積の測定を可能にする、あらゆる流体を含むことができる。適切な候補は、気体、液体、又はその組合せを含むことができる。好ましくは、充填剤は、漏れが生じる場合に生体適合性であって患者に有害ではない。例示的実施形態では、第1の充填剤は、生理食塩水のような水溶液である。
【0093】
第2の充填剤は、充填構造と共に使用する時に、動脈瘤を密封し、構造支持体を人工器官に提供し、取りわけ、動脈瘤空間内の血栓に有効量の圧力を印加することを可能にするあらゆる流体を含むことができる。好ましい候補は、限定ではないがポリマー材料を含む。特に、第2の充填剤は、各成分が時間と共に充填構造の中に導入される多成分システムとすることができる。これに代えて、成分は、送出前に混合することができる。第2の充填剤の非限定的な例は、2部溶液として充填構造の中に注入することができるポリエチレングリコール(PEG)ベースのポリマーを含む。溶液は、送出時に混合されてポリマー鎖の小型ネットワークを生成することができる。
【0094】
上記で議論したように、血栓、動脈瘤壁、又はその両方に印加される有効量の圧力は、数値的に説明することができる。すなわち、圧力は、一定の圧力値又は圧力範囲とすることができる。更にかつ理論に拘束されることなく、充填構造を充填する、拡張バルーンを充填する、又はその両方に使用する圧力は、動脈瘤壁の血栓又は一部に印加する圧力の近似値として使用することができる。勿論、各患者の動脈瘤は異なっており、圧力は、患者の生体構造の撮像及び解析に基づいて同様に修正することができる。これは、血栓のサイズ、形状、及び場所の識別を含むことができる。そのように言及した上で、例示的実施形態では、印加する有効量の圧力は、少なくとも約180mmHgである。例示的実施形態では、有効量の圧力は、範囲内の全ての整数値を含む約180mmHgから約300mmHgである。
【0095】
膨張バルーン(及びステント移植片)を拡張するための第1の圧力及び第2の圧力は、例示的方法を実施する異なる段階で説明することができる。例えば、第1の圧力は、充填バルーンが第1の充填剤で充填される前又は後にステント移植片を拡張するのに使用することができる。例示的実施形態では、第1の圧力は、少なくとも約180mmHgである。別の例示的実施形態では、第1の圧力は、範囲内の全ての整数値を含む約180mmHgから約300mmHgである。第2の圧力は、第1の圧力よりも実質的に大きく、かつ拡張バルーンを拡張するのに使用される。特に、第2の圧力は、充填構造が第2の充填剤で充填される時に印加することができる。例示的実施形態では、第2の圧力は、少なくとも約190mmHgである。別の例示的実施形態では、第1の圧力は、範囲内の全ての整数値を含む約190mmHgから約300mmHgである。従ってかついずれの特定の理論にも拘束されることなく、充填構造内のものよりも高い圧力で充填構造に対してバルーンを拡張することは(充填される時)、血栓、動脈瘤壁の各部分、又はその両方にかかる圧力の上昇をもたらすことができる。この圧力の上昇は、有効量の圧力とすることができ、又は既に血栓に印加された有効量の圧力の影響を更に増大させることができる。
【0096】
有効量の圧力印加の持続時間は変わる場合がある。例示的実施形態では、有効量の圧力は、少なくとも30秒間及び好ましくは1分間維持される。別の例示的実施形態では、有効量の圧力は、約1から10分間維持される。勿論、有効量の圧力は、充填構造、並びに拡張バルーンを充填するのに使用する圧力に関連付けることができる。従って、例示的実施形態では、拡張バルーンは、血栓、動脈瘤壁、又はその組合せにかかる有効量の圧力を生成するのに十分な圧力に持続時間にわたって維持される。
【0097】
血栓又は動脈瘤壁にかかる有効量の圧力は、一定である、循環する、又はその両方とすることができる。例示的実施形態では、充填構造内、膨張バルーン内、血栓/動脈瘤壁上、又はその組合せの圧力は、血栓/動脈瘤壁にかかる有効量の圧力を生成してPISの影響を軽減する望ましい利益を達成するのに十分な期間にわたって一定とすることができる。例示的実施形態では、充填構造内、膨張バルーン内、血栓/動脈瘤壁上、又はその組合せの圧力は、少なくとも2つの異なる圧力値の間で循環される。組み合わされた各循環又は全ての循環の持続時間は、血栓/動脈瘤壁にかかる有効量の圧力を生成してPISの影響を軽減するような望ましい利益をもたらすのに十分な期間にわたるものとすることができる。更に、圧力は、2又は3以上の圧力値の間で循環させることができる。特に、圧力循環は、有効量の圧力が血栓/動脈瘤壁上で達成される点及び有効量の圧力が存在しない点を含むことができる。例示的実施形態では、拡張バルーン圧力は、少なくとも1分間にわたって第1の圧力と第2の圧力の間で循環される。理論に拘束されることなく、有効量の圧力の循環的印加は、例えば、血栓から生物学的流体を変位させる際により効率的である場合がある。更に、例示的実施形態では、有効量の圧力の印加の少なくとも2つの循環が適用される。別の例示的実施形態では、2から100循環が適用される。
【0098】
例示的実施形態では、有効量の圧力の印加は、第1又は第2の充填剤に基づいて変わる場合がある。例えばかつここでもまた理論に拘束されることなく、生理食塩水が第1の充填剤に対して使用される時に、充填構造の機械的特性は、それが充填されたままに留まる期間にわたってかなり一定に留まると予想される。第2の充填剤として使用する硬化性ポリマーにより、充填された充填構造の機械的特性は、ポリマーが硬化する時に変化する場合がある。従って、例示的実施形態では、充填構造に対して拡張バルーンを拡張するのに使用する圧力は、充填バッグの変化する物理特性に基づいて変化する。例えば、バルーンの圧力は、ポリマーが硬化する時に急速に又は徐々に増加する場合がある。これに代えて、バルーンの圧力は、ポリマーが硬化する時に急速に又は徐々に低減することができる。これに関連して、充填剤の選択は、拡張バルーンを充填することによって生成される有効量の圧力を最適化するように考慮することができる。例示的実施形態では、第2の充填剤として使用するポリマーは、遅い硬化時間を有してポリマーの前の圧力印加のより長い持続時間を可能にすることができる。別の例示的実施形態では、充填剤として使用するポリマーは、ポリマーが固化した時に有効量の圧力を印加することが望ましい時に急速な硬化時間を有する場合がある。
【0099】
例示的方法を更に最適化するために、1又は2以上の圧力センサを使用することができる。例示的実施形態では、治療されることになる動脈瘤内の圧力プロファイルは、動脈瘤の配置前又は後に測定される。このデータは、取りわけ、充填剤の選択、血栓又は動脈瘤壁に印加された圧力のモードの情報を与えることができる。例示的実施形態では、動脈瘤空間内の充填構造、拡張バルーン、又は他の領域の圧力は、手順中にモニタされて有効量の圧力が得られたことを保証する。一部の事例では、動脈瘤空間で測定された圧力に基づいて、第1の圧力、第2の圧力、又はその両方は、動脈瘤内の圧力を超えるように調節される。
【0100】
本発明の技術は、本発明の技術の個々の態様の単一の例示を意図する本出願に説明する特定の実施形態によって制限されない。当業者に明らかなように、本発明の技術の多くの修正及び変更をその精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本発明の技術の範囲の機能的に同等のシステム及び方法は、本明細書に列挙されたものに加えて以上の説明から当業者には明らかである。そのような修正及び変更は、本発明の技術の範囲に含まれるように意図している。本発明の技術は、当然変わる可能性がある特定のシステム及び方法に限定されないことは理解されるものとする。本明細書に使用する用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、制限するように意図していないことも理解されるものとする。
【0101】
これに加えて、本発明の開示の特徴又は態様がマルクーシュグループの観点から説明される場合に、当業者は、本発明の開示がそれによってマルクーシュグループのいずれかの個々のメンバ又はメンバのサブグループの観点からも説明されることを認識するであろう。
【0102】
当業者が理解するように、いずれか及び全ての目的に対して、特に書面による説明を提示する観点から本明細書に開示する全ての範囲は、いずれか及び全ての可能な部分範囲、並びにその部分範囲の組合せも包含する。あらゆる列挙した範囲は、少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解される同じ範囲を十分に説明して可能にすることを容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で議論する各範囲は、下側3分の1、中間3分の1、及び上側3分の1などに容易に分解することができる。同じく当業者が理解するように、「まで」、「少なくとも」、「よりも大きい」、及び「よりも少ない」などのような全ての言語は、引用した数を含み、上記で議論したようにその後に部分範囲に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者が理解するように、範囲は各個々のメンバを含む。すなわち、例えば、1から3個の薬剤を有するグループは、1、2、又は3個の薬剤を有するグループを指す。同様に、1から5個の薬剤を有するグループは、1、2、3、4、又は5個の薬剤を有するグループを指す等々である。
【0103】
本明細書で参照した又は引用した全ての特許、特許出願、仮特許出願、及び公開特許は、それらが本明細書の明示的な教示に反しない範囲で全ての図及び表を含むそれらの全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【符号の説明】
【0104】
10 人工器官システム
12 二重壁充填構造
14 カテーテル
16 バルーン
20 充填チューブ