IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業機械 図1
  • 特許-作業機械 図2
  • 特許-作業機械 図3
  • 特許-作業機械 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20241204BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/22 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021006635
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110910
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】東 祐司
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-204216(JP,A)
【文献】特開平11-351007(JP,A)
【文献】特開2018-003515(JP,A)
【文献】特開2018-080510(JP,A)
【文献】特開平09-068169(JP,A)
【文献】国際公開第2020/065739(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0039187(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、
前記原動機によって駆動される油圧ポンプと、
作業装置と、
前記作業装置を駆動させる油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
前記原動機の回転数を設定する回転数設定装置と、
前記作業装置の姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢センサと、
前記操作装置からの操作信号および前記姿勢センサからの姿勢情報に基づいて、前記作業装置が予め設定された目標面、または、前記目標面の上方で動くように前記油圧アクチュエータを制御するマシンコントロール制御を行うコントローラと、を備えた作業機械において、
前記マシンコントロール制御は、有効と無効とに切り換えが可能であり、
前記コントローラは、
予め定めた時間の間、前記操作装置が操作されていない場合に、前記原動機の回転数を前記回転数設定装置により設定された回転数よりも低いアイドル回転数となるアイドル状態に遷移させるアイドル制御と、前記アイドル制御後の前記アイドル状態において前記操作装置が操作された場合に、前記原動機の回転数を前記アイドル回転数から前記回転数設定装置により設定された回転数に復帰させる復帰制御と、を行い、
前記復帰制御を実行するときに、前記マシンコントロール制御が有効に切り換えられている場合には、前記原動機の回転数が前記回転数設定装置により設定された回転数に達するまで、前記油圧アクチュエータを動作させないように制御し、前記マシンコントロール制御が無効に切り換えられている場合には前記操作装置からの操作信号に基づいて前記油圧アクチュエータを動作させることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、
前記操作装置から出力される操作信号に基づいて前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油の方向および流量を制御するコントロールバルブと、
前記操作装置から前記コントロールバルブに送られる操作信号を補正するマシンコントロール電磁弁と、を備え、
前記コントローラは、前記復帰制御を実行するときに、前記マシンコントロール制御が有効に切り換えられている場合には、前記マシンコントロール電磁弁を制御することにより、前記原動機の回転数が前記回転数設定装置により設定された回転数に達するまで、前記油圧アクチュエータを動作させないようにすることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1記載の作業機械において、
前記アイドル制御および前記復帰制御の有効と無効とを切り換えるオートアイドルスイッチを備え、
前記コントローラは、前記アイドル制御後の前記アイドル状態において、前記オートアイドルスイッチにより前記アイドル制御および前記復帰制御が無効に切り換えられた場合には、前記原動機の回転数を前記回転数設定装置により設定された回転数に復帰させることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1記載の作業機械において、
前記作業装置の前記姿勢情報を表示する表示装置を備え、
前記コントローラは、前記マシンコントロール制御が有効に切り換えられているときの前記復帰制御において、前記原動機の回転数が前記回転数設定装置により設定された回転数に達していない場合には、前記油圧アクチュエータを動作させないように制御している旨を前記表示装置に表示することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業機械の一つである油圧ショベルは、ブーム、アーム、及び、作業具(例えば、バケットなどのアタッチメント)などから構成される作業装置(フロント作業機)を備えている。作業装置には、ブームを駆動するブームシリンダ、アームを駆動するアームシリンダ、及び、作業具を駆動する作業具シリンダなどの複数の油圧アクチュエータが備えられており、エンジンなどの原動機によって駆動される油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータにそれぞれ供給される圧油の方向および流量を制御することにより作業装置の動作が制御される。
【0003】
このような作業機械においては、近年、情報化施工への対応に伴い、作業装置(フロント作業機)の姿勢やバケット等の作業具の位置をオペレータに対して表示するマシンガイダンス機能や、バケット等の作業具が目標面を越えないように制御するマシンコントロール制御機能などを有する作業機械が実用化されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、操作部材による操作量に応じて吐出圧を可変にしうるポンプを有する流体圧回路に接続されるとともに該ポンプからの吐出圧で動作するシリンダ式アクチュエータで、建設機械本体に装備された関節式アーム機構を駆動する建設機械において、該操作部材が該シリンダ式アクチュエータの非駆動位置にある場合でも、該ポンプの吐出圧を所定値以上に保持しておくことを特徴とする、建設機械の制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-252092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術においては、操作レバーが中立位置(非駆動位置)に配置されて、油圧ポンプがほとんど作動油を吐出してない状態(アイドリング状態)となっている場合の油圧ポンプの吐出圧を所定値以上に保持することで、マシンコントロール制御における油圧ポンプの応答遅れや不感帯の増大を抑制して作業部材による仕上げ精度の向上を図っている。
【0007】
ところで、油圧ショベルなどの作業機械では、省エネの観点から、操作レバーを一定時間操作していない場合にエンジン回転数を低下させ(アイドル状態)、その後のレバー操作時にエンジン回転数を通常の回転数(定格回転)に復帰させることで、燃料を節約するオートアイドル制御を行う場合がある。このオートアイドル制御では、レバー操作時に即座にエンジンに対して通常の回転数(定格回転数)への復帰を指示するが、エンジンが実際に定格回転数に達するのに若干のタイムラグを要する。
【0008】
上記従来技術のようなマシンコントロール制御においては、通常のエンジン回転数(定格回転数)の状態で学習を実施しているため、操作レバーの操作に応答してエンジン回転数がアイドル回転数から定格回転数に復帰する際には、タイムラグによって作業装置が学習しているエンジン回転数と実際の回転数とが乖離した状態が生じる。このため、例えば、バケットの爪先が目標面近傍にある場合には、マシンコントロール制御の精度が低下して爪先が目標面よりも下方に到達してしまい、仕上げ精度が大きく低下してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、エンジンがアイドル状態から復帰する際のマシンコントロール制御の精度低下を抑制することができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、原動機と、前記原動機によって駆動される油圧ポンプと、作業装置と、前記作業装置を駆動させる油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、前記原動機の回転数を設定する回転数設定装置と、前記作業装置の姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢センサと、前記操作装置からの操作信号および前記姿勢センサからの姿勢情報に基づいて、前記作業装置が予め設定された目標面、または、前記目標面の上方で動くように前記油圧アクチュエータを制御するマシンコントロール制御を行うコントローラと、を備えた作業機械において、前記マシンコントロール制御は、有効と無効とに切り換えが可能であり、前記コントローラは、予め定めた時間の間、前記操作装置が操作されていない場合に、前記原動機の回転数を前記回転数設定装置により設定された回転数よりも低いアイドル回転数となるアイドル状態に遷移させるアイドル制御と、前記アイドル制御後の前記アイドル状態において前記操作装置が操作された場合に、前記原動機の回転数を前記アイドル回転数から前記回転数設定装置により設定された回転数に復帰させる復帰制御と、を行い、前記復帰制御を実行するときに、前記マシンコントロール制御が有効に切り換えられている場合には、前記原動機の回転数が前記回転数設定装置により設定された回転数に達するまで、前記油圧アクチュエータを動作させないように制御し、前記マシンコントロール制御が無効に切り換えられている場合には前記操作装置からの操作信号に基づいて前記油圧アクチュエータを動作させるものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジンがアイドル状態から復帰する際のマシンコントロール制御の精度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。
図2】油圧ショベルの上部旋回体を上方から見た様子を模式的に示す部分透視図である。
図3】、油圧ショベルの油圧回路システムを関連構成とともに抜き出して示す図である。
図4】オートアイドル制御の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、作業機械の一例として油圧ショベルを例示して説明するが、油圧アクチュエータで駆動される作業装置を有する他の作業機械にも本発明を適用することが可能である。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。また、図2は、油圧ショベルの上部旋回体を上方から見た様子を模式的に示す部分透視図である。また、図3は、油圧ショベルの油圧回路システムを関連構成とともに抜き出して示すシステム構成図である。なお、図2においては、作業装置及び下部走行体を省略して示している。
【0015】
図1及び図2において、油圧ショベル100は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム5、アーム6、バケット(作業具)7)を連結して構成された多関節型の作業装置(フロント作業機)1Aと、車体1Bを構成する上部旋回体4及び下部走行体3とを備え、上部旋回体4は下部走行体3に対して旋回可能に設けられている。また、フロント作業機1Aのブーム5の基端は上部旋回体4の前部に上下方向に回動可能に支持されており、アーム6の一端はブーム5の基端とは異なる端部(先端)に上下方向に回動可能に支持されており、アーム6の他端にはバケット7が回動可能に支持されている。ブーム5、アーム6、バケット7、上部旋回体4、及び下部走行体3は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ86、アームシリンダ87、バケットシリンダ88、旋回油圧モータ12、及び左右の走行油圧モータ9,10(ただし、図1においては一方の走行油圧モータのみを図示し、他方の走行油圧モータは符号のみを括弧書きで示す)によりそれぞれ駆動される。
【0016】
上部旋回体4は、メインフレーム11と、メインフレーム11上に配置されたコントロールバルブ13、エンジン21などが収納されたエンジン室20、及び、メインポンプ31やパイロットポンプ32などが収納されたポンプ室30と、メインフレーム11とともにエンジン室20やポンプ室30などを構成する建屋カバー50と、運転室8とにより概略構成されている。
【0017】
メインフレーム11は、上部旋回体4のベース(基体)であり、複数の鋼板、鋼材を接合することにより、車体の前後左右に延びる支持構造体を成しており、その前方中央部に作業装置1Aが俯仰動作可能に取り付けられている。
【0018】
エンジン室20に配置される原動機であるエンジン21には、その出力軸にメインポンプ31及びパイロットポンプ32が接続され、メインポンプ31及びパイロットポンプ32はポンプ室30内に配置される。
【0019】
運転室8は、メインフレーム11の前方左側に搭載されており、その内部にはオペレータが着座する運転席61が設けられている。運転席61左右には作業装置1Aや上部旋回体4を操作するための操作信号を出力する操作レバー(操作装置)64、65が設けられており、また、運転席61の近傍であってオペレータによる外部視界の妨げにならない位置には、油圧ショベル100や作業装置1Aなどの姿勢情報を含む種々の情報を表示してオペレータに報知するモニタ(表示装置)68と、オペレータが種々の設定を入力するための入力装置62とが設けられている。
【0020】
また、運転室8内には、油圧ショベル100の全体の動作を制御するコントローラ63と、オペレータに種々の警報を発報するブザー(警告音発生装置)72とが備えられている。
【0021】
入力装置62は、図3に示すようにエンジン21の目標回転数(定格回転数)を設定するためのエンジンコントロールダイヤル69と、オートアイドル制御(後述)のON(有効)とOFF(無効)とを切り換えるためのオートアイドルスイッチ70と、マシンコントロール制御(後述)のON(有効)とOFF(無効)とを切り換えるためのマシンコントロールスイッチ71とを有している。
【0022】
操作レバー(操作装置)64,65には、操作レバー64,65の操作量に応じてパイロットポンプ32の吐出圧から操作信号(パイロット圧)を生成するパイロットバルブ66、67が設けられている。図示しないが操作レバー64,65はそれぞれ前後左右に傾倒可能であり、レバーの傾倒量(レバー操作量)に応じてパイロットバルブ66,67からパイロット圧(操作信号)をマシンコントロール電磁弁14を介してコントロールバルブ13に送ることにより、各油圧アクチュエータ86,87,88,12の操作を行うことができる。すなわち、操作レバー64,65の前後方向または左右方向には、油圧アクチュエータ86,87,88の操作がそれぞれ割り当てられている。なお、詳述を省略するが、運転室8には走行油圧モータ9,10を操作するための操作信号を出力する走行操作レバー(走行操作ペダル)も設けられている。
【0023】
作業装置1Aのブーム5、アーム6、及びバケット7には、それぞれ、姿勢センサとして慣性計測装置(IMU: Inertial Measurement Unit)91,92,93が配置されている。慣性計測装置91,92,93は、角速度及び加速度を計測するものである。慣性計測装置91,92,93が配置されたブーム5、アーム6、バケット7(被駆動部材)が静止している場合を考えると、各慣性計測装置91,92,93に設定されたIMU座標系における重力加速度の方向(つまり、鉛直下向き方向)と、各慣性計測装置91,92,93の取り付け状態(つまり、各慣性計測装置91,92,93と各被駆動部材5,6,7との相対的な位置関係)とに基づいて、各被駆動部材5,6,7の向き(対地角度:水平方向に対する角度)を姿勢に関する情報(姿勢情報)として検出することができる。
【0024】
図3に示すように、油圧ショベル100の油圧回路システムは、原動機であるエンジン21と、エンジン21によって駆動されるメインポンプ(油圧ポンプ)31及びパイロットポンプ32と、メインポンプ31から複数の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ86、アームシリンダ87、バケットシリンダ88、旋回油圧モータ12)に供給される圧油の方向および流量をそれぞれ制御するコントロールバルブ13と、操作レバー64,65(操作装置)の操作量に応じてコントロールバルブ13を制御するためのパイロット圧(操作信号)を生成するパイロットバルブ66,67と、コントローラ51からの制御信号に基づいて、パイロットバルブ66,67からコントロールバルブ13に送られる操作信号を補正するマシンコントロール電磁弁14とから概略構成されている。なお、マシンコントロール電磁弁14は、パイロットポンプ32のパイロット圧から直接コントロールバルブ13のパイロット圧を生成しても良い。
【0025】
エンジン21は、コントローラ51からの回転数制御信号に応じて回転数を制御される。回転数制御信号は、コントローラ51によりエンジンコントロールダイヤル69の設定に基づいて生成される。すなわち、エンジン21の回転数は、基本的には、エンジンコントロールダイヤル69により設定されたエンジン回転数(定格回転数)に制御される。エンジン21の動力により、メインポンプ31及びパイロットポンプ32が駆動される。
【0026】
操作レバー64,65の操作量に応じてパイロットバルブ66,67で生成されるパイロット圧の流路であって、マシンコントロール電磁弁14の下流側(コントロールバルブ13側)には、各油圧アクチュエータ86,87,88,12に対応した操作信号(パイロット圧)をそれぞれ検出してコントローラ51に送信するパイロット圧力センサ96a,96b,97a,98a,98b,99a,99bが設けられている。より具体的には、ブームシリンダ86の伸長及び縮退に対応する操作信号をパイロット圧力センサ96a,96bが、アームシリンダ87の伸長及び縮退に対応する操作信号をパイロット圧力センサ97a,97bが、バケットシリンダ88の伸長及び縮退に対応する操作信号をパイロット圧力センサ98a,98bが、旋回油圧モータ12の左右の旋回動作に対応する操作信号をパイロット圧力センサ99a,99bがそれぞれ検出する。
【0027】
コントローラ51は、油圧ショベル100の全体の動作を制御するものであり、エンジン21に回転数制御信号を出力することによってエンジン回転数を制御したり、マシンコントロール制御やオートアイドル制御などを行ったりする。
【0028】
マシンコントロール制御は、マシンコントロールスイッチ71がON(有効)に設定されている場合であって、操作レバー64,65の操作時に、予めコントローラ51に記憶された目標面に対してバケット7の爪先の角度や進行方向が一定となるように、より具体的には、作業装置1Aが設計データ上に設定される目標面およびその上方の領域内で動くように、マシンコントロール電磁弁14を介してコントロールバルブ13を制御することによりブーム5、アーム6、バケット7の姿勢、動作方向、速度等を制御するものである。コントローラ51には、マシンコントロール電磁弁14の特性、各油圧アクチュエータ86,87,88が動き出すパイロット圧、パイロット圧とシリンダ速度との関係などが事前に記憶されており、その記憶内容と、姿勢センサ91,92,93から送信される姿勢情報と、パイロット圧力センサ96a,96b,97a,98a,98b,99a,99bからの検出信号とに基づいてマシンコントロール電磁弁14を制御することで、コントロールバルブ13を介して各油圧アクチュエータ86,87,88へ供給される圧油の流量を調整し、作業装置1Aの姿勢を制御する。また、コントローラ51は、姿勢センサ91,92,93からの姿勢情報に基づいて、作業装置1Aの姿勢をモニタ68に表示する。なお、マシンコントロールスイッチ71がOFF(無効)に設定されている場合には、マシンコントロール制御は無効となり、パイロットバルブ66,67で生成された操作信号が補正されることなくコントロールバルブ13の制御に用いられる。
【0029】
オートアイドル制御は、オートアイドルスイッチ70がON(有効)に設定されている場合であって、予め定めた一定時間(例えば、2秒間)の間、操作レバー64,65が操作されない(非操作)である場合に、エンジン回転数を定格回転数から予め定めたアイドル回転数まで低下させてアイドル状態に遷移させるアイドル制御と、アイドル状態において操作レバー64,65が操作された場合に、エンジン回転数をエンジンコントロールダイヤル69が指示する目標回転数(定格回転数)に復帰させる復帰制御とを行うものである。ここで、アイドル状態とは、エンジン回転数を定格回転数よりも低い回転数であって非作動時の待機状態に適した回転数(アイドル回転数)に制御した状態である。
【0030】
なお、コントローラ51からの回転数制御信号の送信に対するエンジン21の実際の回転数の変化にはタイムラグが生じる。すなわち、このタイムラグの間は、回転数制御信号により指示されるエンジン回転数と実際のエンジン回転数との間には差異が生じることになる。本実施の形態におけるオートアイドル制御では、回転数制御信号により指示されるエンジン回転数と実際のエンジン回転数との間の差異が予め定めた範囲外の場合(すなわち、アイドル回転数からの復帰指示がなされた直後でエンジン回転数が定格回転数に復帰していない状態)において、操作レバー64,65の操作によらず各油圧アクチュエータ86,87,88,12の動作を停止させることにより、エンジンがアイドル状態から復帰する際のマシンコントロール制御の精度低下を抑制する。
【0031】
図4は、オートアイドル制御の処理内容を示すフローチャートである。
【0032】
図4において、コントローラ51は、オートアイドル制御として、以下のステップS100~S220の処理を予め定めた制御サイクル毎に繰り返す。コントローラ51は、図示しないカウンタ機能(時計機能)により経過時間を常時カウントしており、まず、パイロット圧力センサ96a,96b,97a,98a,98b,99a,99bからの検出結果に基づいて、操作レバー64,65が予め定めた一定時間非操作であったか否かを判定し(ステップS100)、判定結果がNOの場合には、処理を終了する。
【0033】
また、ステップS100での判定結果がYESの場合、すなわち、操作レバー64,65が予め定めた一定時間非操作であった場合には、続いて、MCスイッチ71がON(有効)であるか否かを判定し(ステップS110)、さらに、オートアイドルスイッチ70がON(有効)であるか否かを判定する(ステップS120)。ステップS110,S120の少なくとも何れか一方の判定結果がNOの場合には、処理を終了する。
【0034】
また、ステップS110,S120の判定結果の両方がYESである場合には、続いて、エンジン21にアイドル指令(アイドル状態への遷移を指示する回転数制御信号)を送信して、エンジン21をアイドル状態に移行させ(ステップS130)、モニタ68に警告表示指令(アイドル状態)を送信して、エンジン21がアイドル状態であることをオペレータに報知する警告表示をモニタ68に表示させる(ステップS140)。
【0035】
続いて、パイロット圧力センサ96a,96b,97a,98a,98b,99a,99bからの検出結果に基づいて、操作レバー64,65が操作されたか否かを判定し(ステップS150)、判定結果がNOの場合には、オートアイドルスイッチ70がON(有効)であるか否かを判定する(ステップS151)。ステップS151での判定結果がYESの場合、すなわち、ステップS150で操作レバー64,65が操作されず、かつ、オートアイドルスイッチ70がON(有効)である場合には、ステップS150の処理に戻る。
【0036】
また、ステップS150での判定結果がYESの場合、すなわち、操作レバー64,65が操作された場合、又は、ステップS151での判定結果がNOの場合、すなわち、オートアイドルスイッチ70がOFF(無効)である場合には、マシンコントロールスイッチ71がON(有効)であるか否かを判定し(ステップS160)、判定結果がNOの場合には、エンジン21に復帰指令(定格回転数で駆動する状態への遷移を指示する回転数制御信号)送信して、エンジン21を定格回転数に復帰させ(ステップS161)、モニタ68への警告表示指令を解除して、モニタ68における警告表示を停止させ(ステップS220)、処理を終了する。
【0037】
また、ステップS160での判定結果がYESの場合、すなわち、ステップS150で操作レバー64,65が操作されず、かつ、マシンコントロールスイッチ71がON(有効)である場合には、マシンコントロール電磁弁14にパイロット圧遮断指令を送信して、コントロールバルブ13へのパイロット圧を遮断することで、各油圧アクチュエータ86,87,88,12の動作を停止し(ステップS170)、エンジン21に復帰指令送信して(ステップS180)、モニタ68に警告表示指令(復帰中)を送信して、エンジン21がアイドル状態から復帰中であること、すなわち、エンジン回転数が定格回転数に達していない可能性があることをオペレータに報知する警告表示をモニタ68に表示させる(ステップS190)。
【0038】
続いて、エンジン回転数が復帰完了したかどうか、すなわち、例えば、実際のエンジン回転数が定格回転数に対して予め定めた値の範囲内となったか否かを判定し(ステップS200)、判定結果がNOの場合には、判定結果がYESになるまでステップS200の判定を繰り返す。また、ステップS200での判定結果がYESの場合、すなわち、エンジン回転数が復帰完了した場合には、続いて、マシンコントロール電磁弁14へのパイロット圧遮断指令を解除し(ステップS210)、モニタ68への警告表示指令を解除して、モニタ68の警告表示を停止させ(ステップS220)、処理を終了する。
【0039】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0040】
油圧ショベルなどの作業機械では、省エネの観点から、操作レバーを一定時間操作していない場合にエンジン回転数を低下させ(アイドル状態)、その後のレバー操作時にエンジン回転数を通常の回転数(定格回転)に復帰させることで、燃料を節約するオートアイドル制御を行う場合がある。このオートアイドル制御では、レバー操作時に即座にエンジンに対して通常の回転数(定格回転数)への復帰を指示するが、エンジンが実際に定格回転数に達するのに若干のタイムラグを要する。従来技術のようなマシンコントロール制御においては、通常のエンジン回転数(定格回転数)の状態で学習を実施しているため、操作レバーの操作に応答してエンジン回転数がアイドル回転数から定格回転数に復帰する際には、タイムラグによって作業装置が学習しているエンジン回転数と実際の回転数とが乖離した状態が生じる。このため、例えば、爪先が目標面近傍にある場合には、マシンコントロール制御の精度が低下して爪先が目標面よりも下方に到達してしまい、仕上げ精度が大きく低下してしまうおそれがある。
【0041】
これに対して、本実施の形態においては、エンジン21と、エンジン21によって駆動されるメインポンプ31と、ブーム5、アーム6、及び、バケット7で構成された多関節型の作業装置1Aと、操作信号に基づいてブーム5、アーム6、及び、バケット7をそれぞれ駆動するブームシリンダ86、アームシリンダ87、及び、バケットシリンダ88と、オペレータの操作に基づいて、ブームシリンダ86、アームシリンダ87、及び、バケットシリンダ88を作動させるための操作信号を出力する操作レバー64,65と、操作レバー64,65からの操作信号に基づいてメインポンプ31からブームシリンダ86、アームシリンダ87、及び、バケットシリンダ88に供給される圧油の方向および流量をそれぞれ制御するコントロールバルブ13と、操作レバー64,65からコントロールバルブ13に送られる操作信号を補正するマシンコントロール電磁弁14と、ブーム5、アーム6、及び、バケット7のそれぞれの姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢センサ91,92,93と、操作レバー64,65からの操作信号および姿勢センサ91,92,93からの姿勢情報に基づいて、マシンコントロール電磁弁14を制御することにより、作業装置1Aが予め設定された目標面およびその上方の領域内で動くようにコントロールバルブを制御するマシンコントロール制御を行うコントローラ51とを備えた油圧ショベル100において、コントローラ51は、操作レバー64,65が予め定めた時間操作されていない場合に、エンジン21の回転数を定格回転数からアイドル回転数に下げたアイドル状態に遷移させるアイドル制御と、アイドル状態において操作装置が操作された場合に、エンジン21の回転数をアイドル回転数から定格回転数に復帰させる復帰制御とを行うオートアイドル制御を行い、復帰制御において、エンジン21の回転数が定格回転数に達していない場合には、操作レバー64,65からの操作信号によらずブームシリンダ86、アームシリンダ87、及び、バケットシリンダ88を動作させないように制御するよう構成したので、エンジン21がアイドル状態から復帰する際のマシンコントロール制御の精度低下を抑制することができる。
【0042】
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
【0043】
(1)上記の実施の形態では、原動機(例えば、エンジン21)と、前記原動機によって駆動される油圧ポンプ(例えば、メインポンプ31)と、作業装置1Aと、前記作業装置を駆動させる油圧アクチュエータ(例えば、ブームシリンダ86、アームシリンダ87、バケットシリンダ88)と、前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置(例えば、操作レバー64,65)と、前記原動機の回転数を設定する回転数設定装置(例えば、エンジンコントロールダイヤル69)と、前記作業装置の姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢センサ91,92,93と、前記操作装置からの操作信号および前記姿勢センサからの姿勢情報に基づいて、前記作業装置が予め設定された目標面、または、前記目標面の上方で動くように前記油圧アクチュエータを制御するマシンコントロール制御を行うコントローラ51と、を備えた作業機械において、前記マシンコントロール制御は、有効と無効とに切り換えが可能であり、前記コントローラ51は、予め定めた時間の間、前記操作装置(例えば、操作レバー64,65)が操作されていない場合に、前記原動機(例えば、エンジン21)の回転数を前記回転数設定装置(例えば、エンジンコントロールダイヤル69)により設定された回転数よりも低いアイドル回転数となるアイドル状態に遷移させるアイドル制御と、前記アイドル制御後の前記アイドル状態において前記操作装置が操作された場合に、前記原動機の回転数を前記アイドル回転数から前記回転数設定装置により設定された回転数に復帰させる復帰制御と、を行い、前記復帰制御を実行するときに、前記マシンコントロール制御が有効に切り換えられている場合には、前記原動機の回転数が前記回転数設定装置により設定された回転数に達するまで、前記油圧アクチュエータを動作させないように制御し、前記マシンコントロール制御が無効に切り換えられている場合には前記操作装置からの操作信号に基づいて前記油圧アクチュエータを動作させるものとした。
【0044】
これにより、エンジンがアイドル状態から復帰する際のマシンコントロール制御の精度低下を抑制することができる。
【0045】
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記操作装置(例えば、操作レバー64,65)から出力される操作信号に基づいて前記油圧ポンプ(例えば、メインポンプ31)から前記油圧アクチュエータ(例えば、ブームシリンダ86、アームシリンダ87、バケットシリンダ88)に供給される圧油の方向および流量を制御するコントロールバルブ13と、前記操作装置から前記コントロールバルブに送られる操作信号を補正するマシンコントロール電磁弁14と、を備え、前記コントローラ51は、前記復帰制御を実行するときに、前記マシンコントロール制御が有効に切り換えられている場合には、前記マシンコントロール電磁弁を制御することにより、前記原動機(例えば、エンジン21)の回転数が前記回転数設定装置(例えば、エンジンコントロールダイヤル69)により設定された回転数に達するまで、前記油圧アクチュエータを動作させないようにするものとした。
【0046】
(3)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記アイドル制御および前記復帰制御の有効と無効と切り換えるオートアイドルスイッチ70を備え、前記コントローラ51は、前記アイドル制御後の前記アイドル状態において、前記オートアイドルスイッチにより前記アイドル制御および前記復帰制御が無効に切り換えられた場合には、前記原動機(例えば、エンジン21)の回転数を前記回転数設定装置(例えば、エンジンコントロールダイヤル69)により設定された回転数に復帰させるものとした。
【0048】
(4)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記作業装置1Aの前記姿勢情報を表示する表示装置(例えば、モニタ68)を備え、前記コントローラ51は、前記マシンコントロール制御が有効に切り換えられているときの前記復帰制御において、前記原動機(例えば、エンジン21)の回転数が前記回転数設定装置(例えば、エンジンコントロールダイヤル69)により設定された回転数に達していない場合には、前記油圧アクチュエータ(例えば、ブームシリンダ86、アームシリンダ87、バケットシリンダ88)を動作させないように制御している旨を前記表示装置に表示するものとした。

【0049】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1A…作業装置(フロント作業機)、1B…車体、3…下部走行体、4…上部旋回体、5…ブーム、6…アーム、7…バケット、8…運転室、9,10…走行油圧モータ、11…メインフレーム、12…旋回油圧モータ、13…コントロールバルブ、14…マシンコントロール電磁弁、20…エンジン室、21…エンジン、30…ポンプ室、31…メインポンプ(油圧ポンプ)、32…パイロットポンプ、50…建屋カバー、51…コントローラ、61…運転席、62…入力装置、63…コントローラ、64,65…操作レバー(操作装置)、66,67…パイロットバルブ、68…モニタ(表示装置)、69…エンジンコントロールダイヤル、70…オートアイドルスイッチ、71…マシンコントロールスイッチ、72…ブザー(警告音発生装置)、86…ブームシリンダ、87…アームシリンダ、88…バケットシリンダ、91,92,93…慣性計測装置(姿勢センサ)、96a,96b,97a,97b,98a,98b,99a,99b…パイロット圧力センサ、100…油圧ショベル
図1
図2
図3
図4