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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ポリウレタンエラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20241204BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20241204BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20241204BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C08G18/66 040
C08G18/12
C08G18/42 069
C08G18/76 057
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021032627
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133751
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】田子 浩明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕司
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛史
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-143187(JP,A)
【文献】特表2010-503750(JP,A)
【文献】特開2020-063379(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038968(WO,A1)
【文献】特開2009-214281(JP,A)
【文献】特公昭44-020247(JP,B1)
【文献】特公昭43-007426(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/033734(WO,A1)
【文献】特開平08-073552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応生成物を含むポリウレタンエラストマーであって、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、
ジフェニルメタンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、
数平均分子量400以上5000以下の高分子量ポリオールおよび分子量40以上300以下の低分子量ポリオールを含むポリオール成分と
の反応生成物を含み、
前記高分子量ポリオールは、数平均分子量850以上3500以下のポリエステルポリオールを含み、
前記高分子量ポリオール100質量部に対して、前記低分子量ポリオールが1.0質量部以上7.0質量部以下であり、
前記硬化剤が、分子量40以上300以下の低分子量ポリオールからなり、
前記ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度が2.40mmol/g以上3.30mmol/g以下である、ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオールが、ポリカプロラクトンジオールを含む、請求項1に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
前記イソシアネート基末端プレポリマーにおいて、前記低分子量ポリオールが、分岐状アルコールを含む、請求項1または2に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項4】
前記イソシアネート基末端プレポリマーにおいて、前記低分子量ポリオールが、ジプロピレングリコールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項5】
前記硬化剤において、前記低分子量ポリオールが、1,4-ブタンジオールを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネートおよび低分子量ポリオールの反応により形成されるハードセグメントと、ポリイソシアネートおよび高分子量ポリオールの反応により形成されるソフトセグメントとを有している。ポリウレタンエラストマーは、ゴム弾性体であり、各種産業分野において広範に使用される。
【0003】
より具体的には、以下の方法で得られるポリウレタンエラストマーが知られている。すなわち、この方法では、まず、高分子量ポリエステルポリオールと、低分子量ジオールと、ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて、NCO基含有率11質量%のプレポリマーを得る。次いで、プレポリマーと、高分子量ポリエステルポリオールおよび低分子量ポリオールを含む硬化剤とを反応させて、ポリウレタンエラストマーを得る(例えば、特許文献1(実施例1~3)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-44264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ポリウレタンエラストマーには、用途に応じて、各種機械物性が要求される。しかし、特許文献1のポリウレタンエラストマーは、十分な引裂強度を有していない。
【0006】
これに対して、プレポリマーのNCO基含有率を増加させ、ポリウレタンエラストマーの引裂強度を向上させることも検討される。しかし、このような場合、プレポリマーと硬化剤との反応におけるポットライフが短くなり、また、ポリウレタンエラストマーの外観不良が惹起される。
【0007】
さらに、ポリウレタンエラストマーには、用途に応じて、より低温においてもゴム特性を維持する性質(低温特性)が要求される場合がある。
【0008】
本発明は、優れたポットライフ、外観、引裂強度および低温特性を兼ね備えるポリウレタンエラストマーである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応生成物を含むポリウレタンエラストマーであって、前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ジフェニルメタンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含み、前記高分子量ポリオールは、数平均分子量850以上3500以下のポリエステルポリオールを含み、前記高分子量ポリオール100質量部に対して、前記低分子量ポリオールが1.0質量部以上7.0質量部以下であり、前記硬化剤が、低分子量ポリオールからなり、前記ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度が2.40mmol/g以上3.30mmol/g以下である、ポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【0010】
本発明[2]は、前記ポリエステルポリオールが、ポリカプロラクトンジオールを含む、上記[1]に記載のポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記イソシアネート基末端プレポリマーにおいて、前記低分子量ポリオールが、分岐状アルコールを含む、上記[1]または[2]に記載のポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、前記イソシアネート基末端プレポリマーにおいて、前記低分子量ポリオールが、ジプロピレングリコールを含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【0013】
本発明[5]は、前記硬化剤において、前記低分子量ポリオールが、1,4-ブタンジオールを含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリウレタンエラストマーにおいて、イソシアネート基末端プレポリマーは、ジフェニルメタンジイソシアネートと、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールとの反応生成物を含む。また、硬化剤が、低分子量ポリオールからなる。このような本発明では、イソシアネート基末端プレポリマーの原料として、低分子量ポリオールが使用されているため、イソシアネート基末端プレポリマーと、硬化剤としての低分子量ポリオールとの相溶性に優れる。
【0015】
また、イソシアネート基末端プレポリマーにおいて、高分子量ポリオールは、所定の数平均分子量を有するポリエステルポリオールを含む。また、高分子量ポリオールに対する低分子量ポリオールが所定範囲である。さらに、ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度が所定範囲である。
【0016】
そのため、本発明のポリウレタンエラストマーは、優れたポットライフ、外観、引裂強度および低温特性を兼ね備える。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のポリウレタンエラストマーは、イソシアネート基末端プレポリマーと、硬化剤(後述)との反応生成物を含むウレタン硬化物である。
【0018】
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応生成物である。
【0019】
ポリイソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を、必須成分として含んでいる。ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート単量体およびジフェニルメタンジイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0020】
ジフェニルメタンジイソシアネート単量体としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。これらは単独使用または2種類以上併用できる。
【0021】
ジフェニルメタンジイソシアネート誘導体としては、上記ジフェニルメタンジイソシアネート単量体を公知の方法で変性した変成体が挙げられる。より具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート誘導体としては、例えば、多量体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。また、ジフェニルメタンジイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(p-MDI)も挙げられる。これらは単独使用または2種類以上併用できる。
【0022】
ジフェニルメタンジイソシアネートとして、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート単量体が挙げられ、より好ましくは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0023】
ポリイソシアネート成分は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、その他のポリイソシアネートを、任意成分として含有できる。その他のポリイソシアネートとしては、その他のポリイソシアネート単量体、および、その他のポリイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0024】
その他のポリイソシアネート単量体としては、例えば、MDIを除く芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。MDIを除く芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、および、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、および、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。その他のポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0025】
その他のポリイソシアネート誘導体としては、その他のポリイソシアネート単量体を公知の方法で変性した変成体が、挙げられる。より具体的には、例えば、多量体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0026】
その他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用できる。その他のポリイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0027】
すなわち、ジフェニルメタンジイソシアネートの含有割合が、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、80質量%以上、さらに好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。換言すれば、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネートからなる。
【0028】
ポリオール成分は、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールを含む。
【0029】
高分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物である。高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、300を超過、好ましくは、400以上である。また、高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下、さらに好ましくは、2000以下である。また、高分子量ポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、2以上である。また、高分子量ポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下である。
【0030】
高分子量ポリオールは、必須成分として、数平均分子量850以上3500以下のポリエステルポリオールを含む。ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(後述)と多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0031】
多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、その他のカルボン酸、酸無水物および酸ハライドが挙げられる。飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸およびセバシン酸が挙げられる。不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸およびナフタレンジカルボン酸が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。その他のカルボン酸としては、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸が挙げられる。酸無水物としては、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水アルキルコハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、および、無水トリメリット酸が挙げられる。酸ハライドとしては、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライドおよびセバシン酸ジクロライドが挙げられる。
【0032】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオールが挙げられる。植物由来のポリエステルポリオールは、具体的には、低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸のヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる。
【0033】
また、ポリエステルポリオールとして、ラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。ラクトン系ポリエステルポリオールは、例えば、低分子量ポリオールを開始剤としたラクトン類の開環重合により得られる。ラクトン類としては、例えば、ε-カプロラクトンおよびγ-バレロラクトンが挙げられる。ラクトン系ポリエステルポリオールとして、より具体的には、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリバレロラクトンポリオールが挙げられる。また、ポリエステルポリオールとして、ラクトン系ポリエステルポリオールに上記した2価アルコールを共重合したアルコール変性ラクトン系ポリエステルポリオールも挙げられる。
【0034】
ポリエステルポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。ポリエステルポリオールとして、低温特性の観点から、好ましくは、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリカプロラクトンジオールが挙げられる。
【0035】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、低温特性の観点から、850以上、好ましくは、900以上、より好ましくは、1000以上、さらに好ましくは、1500以上、とりわけ好ましくは、1800以上である。
【0036】
また、ポリエステルポリオールの数平均分子量は、ポットライフの観点から、3500以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2800以下、さらに好ましくは、2500以下、とりわけ好ましくは、2200以下である。
【0037】
なお、数平均分子量は、公知のゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって、ポリスチレン換算分子量として求めることができる。
【0038】
高分子量ポリオールは、任意成分として、その他のマクロポリオールを含有できる。その他のマクロポリオールは、ポリエステルポリオールを除くマクロポリオールである。その他のマクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。マクロポリオールとしては、好ましくは、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0039】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0040】
ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールは、例えば、低分子量ポリオールまたは低分子量ポリアミンを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合物である。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2~3のアルキレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドとして、より具体的には、例えば、エチレンオキサイド(IUPAC名:オキシラン)、プロピレンオキサイド(1,2-プロピレンオキサイド(IUPAC名:メチルオキシラン))、および、トリエチレンオキサイド(1,3-プロピレンオキサイド)が挙げられる。これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。アルキレンオキサイドとして、好ましくは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが挙げられる。ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールとして、より具体的には、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシトリエチレンポリオール、および、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0041】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール)が挙げられる。また、ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールも挙げられる。非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールでは、テトラヒドロフランと、アルキル置換テトラヒドロフランおよび/または2価アルコールとが共重合される。なお、結晶性とは、25℃において固体である性質を示す。また、非晶性とは、25℃において液体である性質を示す。
【0042】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物が挙げられる。また、上記開環重合物と、2価アルコールとを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールも挙げられる。
【0043】
その他のマクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。その他のマクロポリオールの含有割合は、引裂強度の観点から、高分子量ポリオールの総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0044】
すなわち、ポリエステルポリオールの含有割合が、引裂強度の観点から、高分子量ポリオールの総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、80質量%以上、さらに好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。換言すれば、高分子量ポリオールは、好ましくは、ポリエステルポリオールからなる。
【0045】
低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的低分子量の有機化合物である。低分子量ポリオールの分子量は、例えば、40以上であり、300以下、好ましくは、200以下、より好ましくは、150以下である。
【0046】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。また、低分子量ポリオールとしては、数平均分子量が300以下になるように、2~4価アルコールに対してアルキレン(C2~3)オキサイドを付加重合した重合物も挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0047】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、ジプロピレングリコールが挙げられる。これらを使用することにより、イソシアネート基末端プレポリマーの貯蔵安定性の向上を図ることができ、さらに、優れた引裂強度を有するポリウレタンエラストマーが得られる。
【0048】
また、低分子量ポリオールは、分子構造によって分類できる。より具体的には、低分子量ポリオールとしては、直鎖状アルコールおよび分岐状アルコールとが挙げられる。直鎖状アルコールは、分岐構造を有しないアルコールである。直鎖状アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールが挙げられる。分岐状アルコールは、分岐構造を有するアルコールである。分岐状アルコールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0049】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、分岐状アルコールが挙げられ、より好ましくは、ジプロピレングリコールが挙げられる。これらを使用することにより、イソシアネート基末端プレポリマーの貯蔵安定性の向上を図ることができ、さらに、優れた引裂強度を有するポリウレタンエラストマーが得られる。
【0050】
ポリオール成分において、低分子量ポリオールの含有割合は、優れた外観を得る観点から、高分子量ポリオール100質量部に対して、1.0質量部以上、好ましくは、1.5質量部以上、より好ましくは、1.8質量部以上である。
【0051】
また、低分子量ポリオールの含有割合は、優れた低温特性を得る観点から、高分子量ポリオール100質量部に対して、7.0質量部以下、好ましくは、6.0質量部以下、より好ましくは、5.0質量部以下、さらに好ましくは、4.0質量部以下、さらに好ましくは、3.0質量部以下、さらに好ましくは、2.5質量部以下、とりわけ好ましくは、2.0質量部以下である。
【0052】
イソシアネート基末端プレポリマーは、例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを、所定の割合で反応させることによって得られる(プレポリマー工程)。
【0053】
ポリイソシアネート成分とポリオール成分との配合割合は、水酸基に対してイソシアネート基が過剰となるように、調整される。より具体的には、ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、1.5以上、好ましくは、1.8以上、より好ましくは、2以上、さらに好ましくは、2.5以上である。また、ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、10以下、好ましくは、7以下、より好ましくは、5以下、さらに好ましくは、4.5以下である。
【0054】
重合方法としては、例えば、バルク重合および溶液重合が挙げられる。バルク重合では、例えば、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を、窒素気流下で反応させる。反応温度は、例えば、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、15時間以下である。溶液重合では、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を、公知の有機溶剤の存在下で反応させる。反応温度は、例えば、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、15時間以下である。
【0055】
また、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加することができる。ウレタン化触媒の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0056】
これによりイソシアネート基末端プレポリマーを含む反応混合物が得られる。反応混合物のイソシアネート基濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、4質量%以上である。また、反応混合物のイソシアネート基濃度は、例えば、30質量%以下、好ましくは、19質量%以下、より好ましくは、16質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。なお、イソシアネート基濃度(イソシアネート基含有率)は、ジ-n-ブチルアミンによる滴定法や、FT-IR分析などの公知の方法によって求めることができる。
【0057】
また、上記の反応で得られる反応混合物は、イソシアネート基末端プレポリマーの他、未反応のポリイソシアネート成分(イソシアネートモノマー)を含有できる。未反応のポリイソシアネート成分は、必要に応じて、公知の除去方法により反応混合物から除去される。除去方法としては、例えば、蒸留法および抽出法が挙げられる。
【0058】
そして、ポリウレタンエラストマーは、上記のイソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤とを反応させることにより、得られる(鎖伸長工程)。
【0059】
硬化剤は、低分子量ポリオールからなる。すなわち、硬化剤は、高分子量ポリオールおよびアミン類を含まず、低分子量ポリオールのみを含有する。これにより、ポリウレタンエラストマーが、優れたポットライフ、外観、引裂強度および低温特性を兼ね備えることができる。
【0060】
低分子量ポリオールとしては、上記の低分子量ポリオールが挙げられる。より具体的には、低分子量ポリオールとしては、例えば、上記の2価アルコール、上記の3価アルコール、および、上記の4価以上のアルコールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。また、低分子量ポリオールの分子量は、例えば、40以上であり、300以下、好ましくは、200以下、より好ましくは、150以下である。
【0061】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、1,4-ブタンジオールが挙げられる。すなわち、低分子量ポリオールは、好ましくは、1,4-ブタンジオールを含み、より好ましくは、1,4-ブタンジオールからなる。これにより、優れた引裂強度を有するポリウレタンエラストマーが得られる。
【0062】
また、低分子量ポリオールとしては、例えば、直鎖状アルコール、および分岐状アルコールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。低分子量ポリオールとして、好ましくは、直鎖状アルコールが挙げられ、より好ましくは、1,4-ブタンジオールが挙げられる。すなわち、低分子量ポリオールは、好ましくは、1,4-ブタンジオールを含み、より好ましくは、1,4-ブタンジオールからなる。これにより、優れた引裂強度を有するポリウレタンエラストマーが得られる。
【0063】
イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との配合割合は、ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度が後述の範囲となるように、適宜設定される。例えば、硬化剤(低分子量ポリオール)の水酸基に対する、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)として、例えば、0.75以上、好ましくは、0.9以上、例えば、1.3以下、好ましくは、1.2以下である。
【0064】
また、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤(低分子量ポリオール)との反応では、例えば、バルク重合および/または溶液重合が、採用される。反応温度は、例えば、室温以上、好ましくは、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、反応時間が、例えば、5分以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、72時間以下、好ましくは、48時間以下である。イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との混合時には、必要に応じて、ウレタン化触媒を、適宜の割合で添加できる。
【0065】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応生成物を含むポリウレタンエラストマーが得られる。
【0066】
また、好ましくは、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との混合物は、必要に応じて脱泡され、予備加熱した成形型内で硬化し、脱型される。これにより、所望形状に成形されたポリウレタンエラストマーが得られる。
【0067】
また、ポリウレタンエラストマーを、熱処理することができる。熱処理温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、熱処理温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、熱処理時間が、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上である。また、熱処理時間が、例えば、30時間以下、好ましくは、20時間以下である。
【0068】
また、ポリウレタンエラストマーを、養生することができる。養生温度は、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上である。また、養生温度は、例えば、50℃以下、好ましくは、40℃以下である。また、養生時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、10時間以上である。また、養生時間が、例えば、20日間以下、好ましくは、10日間以下である。
【0069】
ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度は、2.40mmol/g以上、好ましくは、2.50mmol/g以上、より好ましくは、2.60mmol/g以上、さらに好ましくは、2.70mmol/g以上、とりわけ好ましくは、2.80mmol/g以上である。また、ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度は、3.30mmol/g以下、好ましくは、3.20mmol/g以下、より好ましくは、3.10mmol/g以下、さらに好ましくは、3.00mmol/g以下、とりわけ好ましくは、2.90mmol/g以下である。なお、ウレタン基濃度は、後述の実施例に準拠して、測定できる。
【0070】
ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度が上記下限を上回っていれば、引裂強度が向上する。また、ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度が上記上限を下回っていれば、ポットライフおよび外観が向上する。
【0071】
ポリウレタンエラストマーは、必要に応じて、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応生成物の他、公知の添加剤を含むことができる。すなわち、ポリウレタンエラストマーは、ポリウレタンエラストマー組成物であってもよい。
【0072】
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、ブロッキング防止剤、離型剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤、防錆剤およびブルーイング剤が挙げられる。添加剤の添加量および添加タイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0073】
そして、上記のポリウレタンエラストマーは、優れたポットライフ、外観、引裂強度および低温特性を兼ね備える。
【0074】
より具体的には、ポリウレタンエラストマーにおいて、イソシアネート基末端プレポリマーは、ジフェニルメタンジイソシアネートと、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールとの反応生成物を含む。また、硬化剤が、低分子量ポリオールからなる。このような本発明では、イソシアネート基末端プレポリマーの原料として、低分子量ポリオールが使用されているため、イソシアネート基末端プレポリマーと、硬化剤としての低分子量ポリオールとの相溶性に優れる。
【0075】
また、イソシアネート基末端プレポリマーにおいて、高分子量ポリオールは、所定の数平均分子量を有するポリエステルポリオールを含む。また、高分子量ポリオールに対する低分子量ポリオールが所定範囲である。さらに、ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度が所定範囲である。
【0076】
そのため、上記のポリウレタンエラストマーは、優れたポットライフ、外観、引裂強度および低温特性を兼ね備える。
【0077】
ポリウレタンエラストマーの引裂強度は、例えば、100kN/m以上、好ましくは、110kN/m以上、より好ましくは、120kN/m以上、さらに好ましくは、130kN/m以上、とりわけ好ましくは、140kN/m以上である。また、ポリウレタンエラストマーの引裂強度は、例えば、300kN/m以下、好ましくは、200kN/m以下、より好ましくは、180kN/m以下、さらに好ましくは、160kN/m以下である。なお、引裂強度は、後述する実施例に準拠し、JIS K 7311(1995)に従って測定される。
【0078】
また、ポリウレタンエラストマーのガラス転移温度は、例えば、-50℃以上、好ましくは、-30℃以上である。また、ガラス転移温度は、例えば、0℃未満、好ましくは、-2℃以下、より好ましくは、-5℃以下、さらに好ましくは、-10℃以下、とりわけ好ましくは、-20℃以下である。なお、ガラス転移温度は、後述の実施例に準拠して、動的粘弾性装置により測定できる。
【0079】
ポリウレタンエラストマーは、TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)またはTSU(熱硬化性ポリウレタン樹脂)として製造される。好ましくは、ポリウレタンエラストマーは、TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)として製造される。ポリウレタンエラストマーは、公知の成形法で成形される。
【0080】
成形法としては、例えば、熱圧縮成形、射出成形、押出成形、溶融紡糸成形が挙げられる。また、成形後の形状としては、例えば、ペレット状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム状、シート状、パイプ状、ボトル状、中空状、箱状およびボタン状が挙げられる。
【0081】
このような成形品は、生産性に優れ、また、外観、引裂強度および低温特性に優れる。そのため、成形品は、各種産業分野において、好適に使用される。
【0082】
成形品の用途としては、例えば、透明性硬質プラスチック、コーティング材料、粘着剤、接着剤、防水材、ポッティング剤、インク、バインダー、フィルム、シート、バンド、ベルト、チューブ、ブレード、スピーカー、センサー、アウトソール、糸、繊維、不織布、化粧品、靴用品、断熱材、シール材、テープ材、封止材、太陽光発電部材、ロボット部材、アンドロイド部材、ウェアラブル部材、衣料用品、衛生用品、化粧用品、家具用品、食品包装部材、スポーツ用品、レジャー用品、医療用品、介護用品、住宅用部材、音響部材、照明部材、防振部材、防音部材、日用品、雑貨、クッション、寝具、応力吸収材、応力緩和材、自動車内装材、自動車外装材、鉄道部材、航空機部材、光学部材、OA機器用部材、雑貨表面保護部材、半導体封止材、自己修復材料、健康器具、メガネレンズ、玩具、パッキン、ケーブルシース、ワイヤーハーネス、電気通信ケーブル、自動車配線、コンピューター配線、工業用品、衝撃吸収材および半導体用品が挙げられる。
【実施例
【0083】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0084】
1.原料
<ポリイソシアネート成分>
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、商品名;コスモネートPH、三井化学SKC社製
【0085】
<高分子量ポリオール成分>
1)PCL#800(数平均分子量800):ポリカプロラクトンポリオール、商品名;PLACCEL208、水酸基価=140.3mgKOH/g、ダイセル社製
2)PCL#1000(数平均分子量1000):ポリカプロラクトンポリオール、商品名;PLACCEL210N、水酸基価=112.2mgKOH/g、ダイセル社製
3)PCL#2000(数平均分子量2000):ポリカプロラクトンポリオール、商品名;PLACCEL220N、水酸基価=56.1mgKOH/g、ダイセル社製
4)PCL#3000(数平均分子量3000):ポリカプロラクトンポリオール、商品名;PLACCEL230N、水酸基価=37.4mgKOH/g、ダイセル社製
5)PCL#4000(数平均分子量4000):ポリカプロラクトンポリオール、商品名;PLACCEL240、水酸基価=28.1mgKOH/g、ダイセル社製
6)PPG#2000(数平均分子量2000):ポリプロピレングリコール、商品名;アクトコールD2000、水酸基価=56.1mgKOH/g、三井化学SKC社製
7)PEA#2000(数平均分子量2000):ポリエチレンアジペートポリオール、商品名;ニッポラン4040、水酸基価=56.1mgKOH/g、東ソー社製
【0086】
<低分子量ポリオール成分>
1)DPG:ジプロピレングリコール
2)1,3-BG:1,3-ブチレングリコール
3)DEG:ジエチレングリコール
4)1,4-BD:1,4-ブタンジオール
【0087】
<ポリアミン>
1)MOCA:4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)
【0088】
<添加剤>
1)酸化防止剤:商品名;イルガノックス245、BASFジャパン社製
2)耐熱安定剤:商品名;JPP100、城北化学工業社製
3)消泡剤:商品名;BYK-088、ビックケミー・ジャパン社製
【0089】
2.製造
実施例1~10および比較例1~10
<イソシアネート基末端プレポリマーの製造>
表1~表2に記載の処方に従い、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを、還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に仕込んだ。
【0090】
その後、イルガノックス245を0.1質量部、JPP100を0.1質量部、BYK-088を0.1質量部、o-トルエンスルホンアミドを0.05質量部、フラスコに添加した。その後、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを、窒素雰囲気下、80℃反応させた。また、これらの混合物のイソシアネート基含有率が、表に記載の値に達したときに、反応を停止させた。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応混合物を得た。なお、上記反応(プレポリマー化反応)におけるイソシアネート基に対する活性水素基の当量比(NCO/活性水素基)を、表1~表2に示す。
【0091】
<ポリウレタンエラストマーの製造>
イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応混合物と、硬化剤とを、80℃にて、当量比(活性水素基/NCO)が0.95となる割合で混合し、これらを攪拌および真空脱泡した。これらの混合物を、予め110℃に温調した金型(2mm厚みのシート形状)に流し込み、110℃のオーブン中で2時間硬化させ、ポリウレタンエラストマーを得た。また、金型からポリウレタンエラストマーを脱型した。その後、ポリウレタンエラストマーを、110℃のオーブン中で15時間熱処理をした後、室温23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生し、シート形状のポリウレタンエラストマーを得た。
【0092】
3.測定
<イソシアネート基濃度>
電位差滴定装置を用いて、JIS K-1556(2006)に準拠したn-ジブチルアミン法により、イソシアネート基濃度を測定した。
【0093】
<ウレタン基濃度>
ポリウレタンエラストマーのウレタン基濃度を、以下の方法で測定した。すなわち、ポリウレタンエラストマーの原料であるポリイソシアネート成分中のイソシアネート基が全てウレタン基に変換したと仮定し、ウレタン基濃度を以下の計算式で算出した。
[ポリウレタンエラストマーの原料であるポリイソシアネート成分中のイソシアネート基数(mmol)]/[ポリウレタンエラストマーの重量(g)]
【0094】
<プレポリマー貯蔵安定性>
イソシアネート基末端プレポリマーを、窒素雰囲気中の密閉容器に封入し、80℃のオーブン中に静置して、外観の変化を、以下の評価5~1の5段階で評価した。
評価5:10日以内では、白濁や濁りが生じない。
評価4:10日以内に白濁や濁りが生じる。
評価3:5日以内に白濁や濁りが生じる。
評価2:2日以内に白濁や濁りが生じる。
評価1:1日以内に白濁や濁りが生じる。
【0095】
<ポットライフ>
イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤を80℃にて混合開始してから流動性を失うまでの時間を、以下の評価5~1の5段階で評価した。
評価5:混合開始8分以内では、混合液は流動性を失わない。
評価4:混合開始8分以内に、混合液は流動性を失う。
評価3:混合開始6分以内に、混合液は流動性を失う。
評価2:混合開始4分以内に、混合液は流動性を失う。
評価1:混合開始2分以内に、混合液は流動性を失う。
【0096】
<外観>
2mm厚みのシートから100cmの小片を切り出し、成形品外観を、以下の評価5~1の5段階で評価した。
評価5:0.1mm以上の白点が3個未満存在する。
評価4:0.1mm以上の白点が3個以上存在する。
評価3:0.1mm以上の白点が10個以上存在する。
評価2:0.1mm以上の白点が20個以上存在する。
評価1:0.1mm以上の白点が50個以上存在する。
【0097】
<引裂強度>
2mm厚みのシートから、JIS K 7311(1995)に従って作製した直角型引裂試験片を切り出し、その試験片の引裂強度を、引張速度500mm/minの条件で測定した。
【0098】
<低温特性(ガラス転移温度)>
2mm厚みのシートから、幅5mmの短冊状サンプル片を切り出し、そのガラス転移温度(Tg)を測定した。なお、測定では、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、型式:DVA-220)を用いた。また、測定条件を、昇温速度5℃/分、引張モード、標線間長20mm、振動数10Hz、歪み0.2%の温度分散モードとした。そして、損失正接(tanδ)のピーク値の温度を、Tgとした。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】