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特許7598265積層フィルム及びその最外層を構成するポリオレフィン系フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】積層フィルム及びその最外層を構成するポリオレフィン系フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20241204BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241204BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20241204BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20241204BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B32B27/18 D
B32B27/32 Z
C08K5/103
C08K5/521
C08L23/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021034813
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2021138144
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020037324
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健
(72)【発明者】
【氏名】柿田 泰宏
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-006570(JP,A)
【文献】特開2021-095506(JP,A)
【文献】特開2002-194227(JP,A)
【文献】特開2021-054993(JP,A)
【文献】特開平10-000033(JP,A)
【文献】特開2007-002223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0283386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のフィルムが積層された積層フィルムであって、その最外層がポリウレタン系接着剤で基材層と接着されたポリオレフィン系フィルムであり、該最外層が下記(A)成分及び(B)成分を含有してなる、積層フィルム。
(A)成分:3~6価の多価アルコールと炭素数8~22の脂肪酸とのエステル
(B)成分:下記化学式(1)で表されるリン酸エステル化合物
【化1】
(式中、Rは炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1~10の数であり、mは1~3の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、第2族金属、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。)
【請求項2】
前記ポリオレフィン系フィルムに前記(A)成分と(B)成分を(A)/(B)=1/99~99/1の割合(質量比)で配合してなる、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系フィルムが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、前記(A)成分と(B)成分を合計0.01~3.0質量部配合してなるポリオレフィン系フィルムである、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルムの最外層を構成するポリオレフィン系フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関し、さらに詳しくは、最外層がポリオレフィン系フィルムである積層フィルムにおける帯電防止性と接着強度を得るのに好適な帯電防止剤を含有するポリオレフィン系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品包装用フィルム等において、耐水性やガスバリア性等を付与するために最外層にポリオレフィン系フィルムを積層したフィルムが広く使用されている。ポリオレフィン樹脂は、透明性や防湿性、機械的強度等に優れるが、電気の不導体であるが故に静電気がなかなか逃げず帯電しやすい。その為、フィルムの表面に塵や埃が付着したり、フィルム加工時の帯電による障害は数多い。
【0003】
上記の問題を解決するための方法の一つとして、ポリオレフィンフィルムに帯電防止剤を添加し、これらの帯電防止剤をポリオレフィンフィルム表面にブリードさせることにより、フィルム表面に帯電防止性を付与する方法が用いられてきた。例えば二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム用の帯電防止剤としては、従来グリセリン脂肪酸エステルと脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルが併用されている(特許文献1~3参照)
【0004】
しかしながら、ポリオレフィン系積層フィルムに広く用いられているポリウレタン系接着剤を用いて積層された積層フィルムにおいて、最外層のポリオレフィン系樹脂に公知の界面活性剤から選ばれる帯電防止剤を練りこんだ場合、その帯電防止効果は、単層のポリオレフィン系フィルムに帯電防止剤を練りこんだ場合と比べ、著しく帯電防止効果が低下するという問題がある。この現象は、イソシアネート等の極性の高い官能基を有する接着剤層に帯電防止剤が移行しているために生じていると考えられる。さらに、これら公知の帯電防止剤は、ポリオレフィン系フィルムとその他の基材フィルムとの接着を阻害し、デラミネーションを引き起こす問題もある。これは、帯電防止剤中のヒドロキシ基と接着剤中のイソシアネート基が反応してしまい、接着剤の硬化を阻害しているものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭60-57461号公報
【文献】特開2000-7854号公報
【文献】特開2003-268166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術における問題を解決することを目的とするものであって、最外層がポリオレフィン系フィルムであり、該フィルムがポリウレタン系接着剤で基材フィルムと接着された積層フィルムにおいて、十分な帯電防止性と接着性とを同時に付与したポリオレフィン系フィルムを開発することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]2以上のフィルムが積層された積層フィルムであって、その最外層がポリウレタン系接着剤で基材層と接着されたポリオレフィン系フィルムであり、該最外層が下記(A)成分及び(B)成分を含有してなる、積層フィルム。
(A)成分:3~6価の多価アルコールと炭素数8~22の脂肪酸とのエステル
(B)成分:下記化学式(1)で表されるリン酸エステル化合物
【化1】
(式中、Rは炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1~10の数であり、mは1~3の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、第2族金属、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。)
[2]前記ポリオレフィン系フィルムに前記(A)成分と(B)成分を(A)/(B)=1/99~99/1の割合(質量比)で配合してなる、[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記ポリオレフィン系フィルムが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、前記(A)成分と(B)成分を合計0.01~3.0質量部配合してなるポリオレフィン系フィルムである、[1]または[2]に記載の積層フィルム。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルムの最外層を構成するポリオレフィン系フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層フィルムは、最外層がポリオレフィン系フィルムであり、該フィルムと基材フィルムとがポリウレタン系接着剤で接着された積層フィルムにおいて、十分な帯電防止性と接着性とを同時に付与することができる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いる3~6価の多価アルコールと炭素数8~22の脂肪酸とのエステル(A)は、例えば、3~6価の多価アルコールと炭素数8~22の脂肪酸又はその誘導体とのエステル化反応により得ることができるが、特にそれに限定されるものではない。
【0011】
3~6価の多価アルコールとしては、ヒドロキシ基を3個以上有するものであれば特に制限されず、例えば、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4-ヘキサントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ソルビタン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;さらには、トリペンタエリスリトールが挙げられる。また、多価アルコール化合物の分子量には特に制限はなく、ポリペンタエリスリトールやポリビニルアルコールなどの高分子量のポリオールも使用でき、ポリエステルポリオール等も使用できる。好ましくはグリセリン、ジグリセリン、ソルビタンである。かかる多価アルコール化合物は、2種以上を使用してもよい。
【0012】
炭素数8~22の脂肪酸は、適度なブリード性を付与する観点から、炭素数が8以上であるが、12以上であることが好ましい。また、当該炭素数は22以下であり、好ましくは20以下であり、さらに好ましくは18以下である。脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、中でもラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、及びミリスチン酸から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0013】
本発明に用いる3~6価の多価アルコールと炭素数8~22の脂肪酸とのエステル(A)としては、適度なブリード性を付与する観点から、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、中でもジグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。具体例としては、例えば、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレートが挙げられるが、特にそれに限定されるものではない。
【0014】
本発明のポリオレフィン系フィルムに配合する帯電防止剤において、3~6価の多価アルコールと炭素数8~22の脂肪酸とのエステル(A)の含有量は、帯電防止性や接着性の観点で好ましくは1~95質量%、より好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%、特に好ましくは30~50質量%の割合で配合される。
【0015】
本発明で用いられるリン酸エステル化合物(B)は、下記の一般式(1)で表わされる化合物である。
【0016】
【化1】
(式中、Rは炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1~10の数であり、mは1~3の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、第2族金属、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。)
【0017】
炭素数1~24のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、1-アダマンチル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミルスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、イコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)、テトラコシル基等が挙げられる。
炭素数2~24のアルケニル基としては、具体的には、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられ、これらは分岐構造、環状構造を有していてもよい。
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、ナフチル基等の無置換のアリール基、炭素数1~24の炭化水素基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルコキシ基等の置換基を有する前記アリール基が挙げられる。
これらの中でも、適度なブリード性を付与する観点から、炭素数8~22のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、特にドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が好ましい。
【0018】
前記一般式(1)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、具体的にはオキシエチレン基、1,2-または1,3-オキシプロピレン基、1,2-、1,3-または1,4-オキシブチレン基が挙げられる。これらの中でも、好ましいのはオキシエチレン基と1,2-オキシプロピレン基であり、特に好ましいのはオキシエチレン基である。nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、1~10の数であるが、帯電防止効果の観点から好ましくは1~6の数である。nが2以上の場合、n個のAOは同一でも異なっていてもよく、異なる場合は-(AO)-はランダム付加、ブロック付加または交互付加のいずれの付加形式でもよい。mは1~3の整数であり、好ましくは1または2である。
【0019】
前記一般式(1)中、Mは水素原子、アルカリ金属、第2族金属、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。アルカリ金属としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等が挙げられ、第2族金属としては、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等が挙げられる。有機アンモニウム基とは、有機アミン由来のアンモニウム基であり、前記有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。これらのMの中でも、水素原子が好ましい。
【0020】
本発明のポリオレフィン系フィルムに配合する帯電防止剤において、リン酸エステル化合物(B)の含有量は、帯電防止性や接着性の観点で好ましくは1~99質量%、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは8~40質量%、特に好ましくは10~30質量%の割合で配合される。
【0021】
本発明のポリオレフィン系フィルムに配合する帯電防止剤は、本発明の目的を損なわない範囲で、3~6価の多価アルコールと炭素数8~22の脂肪酸とのエステル(A)、リン酸エステル化合物(B)以外の成分を含有していてもよい。例えば、リン酸エステル化合物(B)の未反応原料として残存する非イオン成分やリン酸、多価アルコール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、その他公知の帯電防止剤が挙げられる。具体的にはたとえば、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン等のアルキルジエタノールアミンや、ラウリルジエタノールアミンモノラウレート、ラウリルジエタノールアミンモノミリステート、ラウリルジエタノールアミンモノパルミテート、ラウリルジエタノールアミンモノステアレート、ラウリルジエタノールアミンモノオレート、ミリスチルジエタノールアミンモノラウレート、ミリスチルジエタノールアミンモノミリステート、ミリスチルジエタノールアミンモノパルミテート、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレート、ミリスチルジエタノールアミンモノオレート、パルミチルジエタノールアミンモノラウレート、パルミチルジエタノールアミンモノミリステート、パルミチルジエタノールアミンモノパルミテート、パルミチルジエタノールアミンモノステアレート、パルミチルジエタノールアミンモノオレート、ステアリルジエタノールアミンモノラウレート、ステアリルジエタノールアミンモノミリステート、ステアリルジエタノールアミンモノパルミテート、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート、ステアリルジエタノールアミンモノオレート、オレイルジエタノールアミンモノラウレート、オレイルジエタノールアミンモノミリステート、オレイルジエタノールアミンモノパルミテート、オレイルジエタノールアミンモノステアレート、オレイルジエタノールアミンモノオレート等のアルキルジエタノールアミンや、ラウリルジエタノールアミンジラウレート、ラウリルジエタノールアミンジミリステート、ラウリルジエタノールアミンジパルミテート、ラウリルジエタノールアミンジステアレート、ラウリルジエタノールアミンジオレート、ミリスチルジエタノールアミンジラウレート、ミリスチルジエタノールアミンジミリステート、ミリスチルジエタノールアミンジパルミテート、ミリスチルジエタノールアミンジステアレート、ミリスチルジエタノールアミンジオレート、パルミチルジエタノールアミンジラウレート、パルミチルジエタノールアミンジミリステート、パルミチルジエタノールアミンジパルミテート、パルミチルジエタノールアミンジステアレート、パルミチルジエタノールアミンジオレート、ステアリルジエタノールアミンジラウレート、ステアリルジエタノールアミンジミリステート、ステアリルジエタノールアミンジパルミテート、ステアリルジエタノールアミンジステアレート、ステアリルジエタノールアミンジオレート、オレイルジエタノールアミンジラウレート、オレイルジエタノールアミンジミリステート、オレイルジエタノールアミンジパルミテート、オレイルジエタノールアミンジステアレート、オレイルジエタノールアミンジオレート等のアルキルジエタノールアミンジエステル等が挙げられ、1種または2種以上であっても良い。これらの合成法について特に限定は無いが、アルキルジエタノールアミンと脂肪酸をエステル化反応する際に脂肪酸の反応比を調整することにより混合物を得たり、アルキルジエタノールアミンと脂肪酸を反応させた後に精製してそれぞれを別個に得たりすることができる。
【0022】
本発明のポリオレフィン系フィルムの製造に使用するポリオレフィン系樹脂は、特に限定されず、公知のものが用いられる。例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンの単独重合体、前記α-オレフィン同士の共重合体、前記α-オレフィンと共重合可能なα-オレフィン以外の単量体とα-オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物等である。
具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン-1共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリブテン-1、ブテン・エチレン共重合体が挙げられる。これら単独または2種類以上を混合して用いてもよい。
前記α-オレフィンと共重合可能なα-オレフィン以外の単量体としては、酢酸ビニル、マレイン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等を挙げることが出来る。
【0023】
本発明のポリオレフィン系フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と上記の帯電防止剤を含む。ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる帯電防止剤の含有量については、特に限定はないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~3質量部であり、より好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.10~1.5質量部である。この範囲内とすると、特に優れた帯電防止性と接着強度を提供することができる。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂組成物は、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、一軸押出機及び多軸押出機などの公知の混合機又は押出機を用いてポリオレフィン系樹脂と本発明の帯電防止剤とを加熱混練する等により得ることができる。本発明の帯電防止剤を構成する(A)乃至(B)成分は、それぞれ別々にポリオレフィン系樹脂に添加してもよいが、予め混合してからポリオレフィン系樹脂に添加することもできる。ポリオレフィン樹脂の量に対し添加する帯電防止剤の量が少ないと、これらが樹脂中で均一に分散され難くなる。このため、予め高濃度の帯電防止剤を含むマスターバッチを作製し、これを帯電防止剤を含まないポリオレフィン樹脂と混練して所定含有量とするマスターバッチ法を採用することが好ましい。
【0025】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で通常ポリオレフィン系樹脂組成物に用いられる各種添加剤を添加することができる。各種添加剤としては、例えば、防曇剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、安定剤、スリップ剤、粘着性付与剤、アンチブロッキング剤などが挙げられる。
【0026】
本発明のポリオレフィン系フィルムの製造方法としては、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が例示できるが、中でも、Tダイを用いて溶融混練して押し出すTダイ法が好ましい。Tダイ法の製法例としては、上記ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機ホッパーに供給し、押出機を例えばシリンダー温度180~240℃、Tダイ温度200~230℃に加熱し、溶融混練して押し出し、20~40℃に制御された冷却ロールで冷却し、厚さ100~500μmの未延伸シートを得る。フィルムに強度やその他の機能を付与する目的に共押出し法や、他のフィルムなどのラミネーションによる多層化もできる。
【0027】
未延伸シートの二軸延伸方法としては、テンター方式による同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。同時二軸延伸の代表例としては、上述の如く得られた未延伸シートを予熱・延伸温度70~90℃、熱固定温度100~150℃のテンターにて面倍率9~16倍に延伸しフィルムを得る。また、逐次二軸延伸の代表例としては、未延伸シートを駆動ロールの回転速度比によって縦方向にロール表面温度50~80℃、延伸倍率1.5~5倍で延伸し、引き続き連続して横方向に延伸温度50~90℃、延伸倍率1.5~8倍、熱固定温度100~150℃の条件下で延伸しフィルムを得る。
【0028】
本発明に係るポリオレフィン系フィルムの厚みは特に制限なく、用途、要求性能、価格等によって適宜設定すればよい。一般的には、10~100μm程度の厚さを例示できる。さらに、フィルムの印刷性、ラミネート性、コーティング適性等を向上させる目的で、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸処理等が挙げられ、いずれの方法も用いることができる。これらの中では、簡便さの点からコロナ放電処理が最も好ましいものとして例示できる。
【0029】
本発明の積層フィルムには、前記ポリオレフィン系フィルムを最外層として片面のみに有するものと、両面に有するものとが包含される。かかる最外層のポリオレフィン系フィルムとポリウレタン系接着剤で貼り合わされる他のフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、メタキシレンジアミン等のフィルムが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
ポリウレタン系接着剤はポリイソシアネートとポリオールとのウレタン形成反応によって得られる公知のものである。ポリウレタン系接着剤の厚み、すなわちフィルム単位面積当たりの塗布量について本発明は特に制限するものではないが、通常はポリウレタン系接着剤を塗布した基材フィルムに溶融樹脂をラミネートする押し出しラミネート法において0.1~0.5g/m(固形分)、またドライラミネート法において1.0~5.0g/m(固形分)である。本発明はポリウレタン系接着剤の塗布量が多いほどその効果が顕著であり、特にドライラミネート法においてより有効である。
【実施例
【0031】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、配合量は質量部で示す。
【0032】
各評価項目の測定及び評価は、下記の方法により行った。
【0033】
(1)帯電防止性
製膜後45℃で24時間エージングしたフィルムを25℃、50%RH雰囲気下にて、高抵抗絶縁試験機(株式会社三菱ケミカルアナリテック社製、ハイレスタUP MCP-HT450)を用い、フィルムを主電極と対向電極との間に挟み、JIS-K-6911に従って印加電圧500Vにて表面固有抵抗値を測定した。
【0034】
(2)接着強度
JIS-K-6854-2に準拠し測定した(試験機械: テンシロン万能試験機、試験片: 幅15mm 、長さ150mm、速度:100mm/min)。
評価基準
荷重(N/15mm)評価
6以上 : ◎
3~5 : ○
1~2 : △
1未満 : ×
【0035】
実施例1
ポリオレフィン樹脂として、メルトフローレートが3.0g/10分のポリエチレン樹脂100部、帯電防止剤として、ジグリセリンモノステアレート0.70部、ポリオキシエチレン(6)ドデシルエーテルリン酸0.30部をヘンシェルミキサーにて混合した後、ペレタイザーを備えた二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット状のポリエチレン樹脂組成物を得た。
【0036】
得られたポリエチレン樹脂組成物からT-ダイ成形によりフィルム成形し、厚み30μmのフィルムを得た。
【0037】
ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」とを13.5:1(質量比)の割合で配合)をグラビアコート法により内面コロナ処理済み二軸延伸ナイロン6フィルム(厚さ15μm、ユニチカ社製)のコロナ処理面に塗布した。塗布後、80℃の熱風にて30秒間乾燥させた。そして二軸延伸ナイロン6フィルムのポリウレタン系接着剤塗布面と上記の作製したポリオレフィン系フィルムのコロナ放電処理面とを0.2MPa圧力をかけて圧着ロールにてドライラミネートし、40℃ の恒温器中に48時間放置し、積層フィルムを得た。
【0038】
得られた積層フィルムについて、帯電防止性、接着強度を上記方法に従って評価した。これらの結果を表1に示す。
【0039】
実施例2~14、比較例1,2
上記実施例1において、押出機に供給するポリオレフィン樹脂と帯電防止剤の種類および配合量を、それぞれ表1、表2に記載のとおりとしたほかは、実施例1と同様にして積層フィルム製造し、それぞれ評価した。評価結果を表1、表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
実施例の結果より、最外層に本発明の帯電防止剤を配合した実施例1~14の積層フィルムは、いずれも帯電防止性、接着性に優れるものであった。
これに対し、最外層に(B)成分を含まない比較例1と2の積層フィルムは、帯電防止性、接着強度に劣るものであった。