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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20241204BHJP
   C02F 3/06 20230101ALI20241204BHJP
   C02F 3/08 20230101ALI20241204BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20241204BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20241204BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
C02F3/06
C02F3/08
B01D61/00
C02F1/20 A
C02F3/34 101A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021035014
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022007997
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2020040014
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020200276
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】山東 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】中原 禎仁
(72)【発明者】
【氏名】小寺 博也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和史
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231603(JP,A)
【文献】特開2020-028816(JP,A)
【文献】特開2013-128929(JP,A)
【文献】特開平08-047697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/02- 3/10
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 1/20- 1/26
C02F 1/30- 1/38
C02F 1/58- 1/64
C02F 3/28- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア態窒素及びメタンを含み、メタン濃度が12mg/L以上である被処理水を処理する装置であって、
前記被処理水中のメタン濃度を11mg/L以下に低減して第1の処理水とする低減手段と、
前記第1の処理水を生物硝化処理して第2の処理水とする生物処理手段とを備え
前記低減手段は、前記被処理水を脱気処理して前記第1の処理水を得るための脱気槽を備え、
前記生物処理手段は、前記脱気槽から引き抜かれた前記第1の処理水を生物硝化処理するための硝化槽を備える、水処理装置。
【請求項2】
前記被処理水が地下水である、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記低減手段は、スプレー機構、エアレーション機構、曝気塔機構及び脱気膜からなる群より選ばれる1つ以上を備える、請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記低減手段は前記スプレー機構を備え、
前記スプレー機構は、前記被処理水を前記脱気槽に噴出する手段である、請求項3に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記水処理装置は、前記被処理水を前記低減手段に供給する原水供給流路をさらに備え、
前記スプレー機構は、管状のスプレーノズルからなり、前記原水供給流路の他端に接続され、
前記スプレーノズルには、前記被処理水を噴出するノズル口が前記スプレーノズルの長手方向に沿って下向きに形成されている、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記脱気槽の開口部から前記ノズル口までの距離が、前記脱気槽の深さの20%以下となる位置に前記スプレー機構が設置されている、請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記生物処理手段が流動床式又は固定床式である、請求項1~のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項8】
アンモニア態窒素及びメタンを含み、メタン濃度が12mg/L以上である被処理水を処理する方法であって、
前記被処理水を脱気槽内で脱気処理し、前記被処理水中のメタン濃度を11mg/L以下に低減して第1の処理水とする低減工程と、
前記脱気槽から引き抜かれた前記第1の処理水を硝化槽内で生物硝化処理して第2の処理水とする生物処理工程とを有する、水処理方法。
【請求項9】
前記被処理水が地下水である、請求項に記載の水処理方法。
【請求項10】
前記低減工程は、スプレー機構、エアレーション機構、曝気塔機構及び脱気膜からなる群より選ばれる1つ以上を用いて行われる、請求項又はに記載の水処理方法。
【請求項11】
前記低減工程では、前記スプレー機構に供給された前記被処理水を前記脱気槽に噴出する、請求項10に記載の水処理方法。
【請求項12】
前記スプレー機構は、管状のスプレーノズルからなり、
前記スプレーノズルの長手方向に沿って下向きに形成されたノズル口から前記被処理水を前記脱気槽に噴出する、請求項11に記載の水処理方法。
【請求項13】
前記脱気槽の開口部から前記ノズル口までの距離が、前記脱気槽の深さの20%以下となる位置に設置された前記スプレー機構を用いて前記被処理水を前記脱気槽に噴出する、請求項12に記載の水処理方法。
【請求項14】
前記生物処理工程は、流動床法又は固定床法により行われる、請求項13のいずれか一項に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水や表流水等の原水(被処理水)は、アンモニア態窒素を含むことが多い。窒素を含む原水を飲用化する場合、水道法に基づく水質基準に適合させる必要がある。
アンモニア態窒素を含む被処理水を処理する方法として、例えば硝化菌を用いて被処理水のアンモニア(NH)を亜硝酸イオン(NO )を経由して硝酸イオン(NO )まで酸化する生物硝化処理が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、生物硝化処理は被処理水のpH、溶存酸素量(DO)等の水質や水温、処理装置内の硝化菌の菌体量や硝化菌の必須元素量などの因子に影響を受けやすい。そのため、安定して生物硝化処理を行うためには、充分な制御管理が必要となる。
例えば、処理装置へ流入する被処理水の窒素負荷が変動する場合の硝化性能が検討されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-202473号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Water Research,Volume64,1,November,2014,p226-236.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、処理装置へ流入する被処理水の窒素負荷を徐々に上げていくと、硝化速度が急速に低下し、目標の硝化速度に達しない場合がある。
本発明は、硝化速度の低下を防止できる水処理装置及び水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、硝化反応の阻害要因が被処理水に含まれるメタンであることを突き止めた。特に深井戸から汲み上げられた地下水の場合、メタンが飽和溶解度の数倍量、地下水に溶解していることがあり、硝化反応が阻害され硝化速度が低下しやすい傾向にある。そこで、被処理水中のメタン濃度を低減した後に生物硝化処理すればよいとの着想に基づき、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] アンモニア態窒素及びメタンを含む被処理水を処理する装置であって、
前記被処理水中のメタン濃度を12mg/L以下に低減して第1の処理水とする低減手段と、
前記第1の処理水を生物硝化処理して第2の処理水とする生物処理手段とを備える、水処理装置。
[2] 前記被処理水が地下水である、前記[1]の水処理装置。
[3] 前記低減手段は、スプレー機構、エアレーション機構、曝気塔機構及び脱気膜からなる群より選ばれる1つ以上を備える、前記[1]又は[2]の水処理装置。
[4] 前記生物処理手段が流動床式又は固定床式である、前記[1]~[3]のいずれか1つの水処理装置。
[5] アンモニア態窒素及びメタンを含む被処理水を処理する方法であって、
前記被処理水中のメタン濃度を12mg/L以下に低減して第1の処理水とする低減工程と、
前記第1の処理水を生物硝化処理して第2の処理水とする生物処理工程とを有する、水処理方法。
[6] 前記被処理水が地下水である、前記[5]の水処理方法。
[7] 前記低減工程は、スプレー機構、エアレーション機構、曝気塔機構及び脱気膜からなる群より選ばれる1つ以上を用いて行われる、前記[5]又は[6]の水処理方法。
[8] 前記生物処理工程は、流動床法又は固定床法により行われる、前記[5]~[7]のいずれか1つの水処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硝化速度の低下を防止できる水処理装置及び水処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の水処理装置の一例を模式的に示す概略図である。
図2】低減手段の他の例を示す概略図である。
図3】低減手段の他の例を示す概略図である。
図4】本発明の水処理装置の他の例を模式的に示す概略図である。
図5】実施例1~3及び比較例1、2におけるメタン濃度と最大硝化速度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る水処理方法及び水処理装置の一実施形態を挙げ、図1~4を適宜参照しながら詳述する。
なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
また、図2~4において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0012】
<水処理装置>
図1に本発明の水処理装置の一例を模式的に示す。
図1に示す水処理装置1は、アンモニア態窒素及びメタンを含む被処理水を処理する装置であり、井戸等の水源100と、水源100から汲み上げられた被処理水(原水)である地下水中のメタン濃度を12mg/L以下に低減して第1の処理水とする低減手段10と、第1の処理水を生物硝化処理して第2の処理水とする生物処理手段20とを備える。
【0013】
水処理装置1は、さらに、水源100から汲み上げられた被処理水を低減手段10に供給する原水供給流路31と、原水供給流路31の始端(一端)に設けられた水中ポンプ31aと、低減手段10で得られた第1の処理水を生物処理手段20に送液する処理水供給流路32と、処理水供給流路32の途中に設けられたポンプ32aと、生物処理手段20で得られた第2の処理水を排出する処理水排出流路33とを備える。
なお、ポンプは、その動作を制御する制御部(図示略)に電気的に接続されている。
【0014】
低減手段10は、被処理水中のメタン濃度を12mg/L以下に低減して第1の処理水とする手段である。
この例の低減手段10は、脱気槽11と、スプレー機構12と、エアレーション機構13とを備える。
脱気槽11は、被処理水を脱気処理して第1の処理水を得るための水槽である。
【0015】
スプレー機構12は、被処理水を脱気槽11に噴出する手段である。
この例のスプレー機構12は、スプレーノズル12aからなり、原水供給流路31の他端に接続されている。
この例のスプレーノズル12aは、長手方向に垂直な断面が円形の円管からなり、その周壁の下部には被処理水を噴出するためのノズル口12bが複数、スプレーノズル12aの長手方向に沿って下向きに一列に形成されている。
ここで、「周壁の下部」とは、スプレーノズル12aをその長手方向が略水平となるように配置した際に、スプレーノズル12aの軸線よりも下側に位置する部分の周壁である。
【0016】
スプレー機構12は、脱気槽11内の上部に設置されている。具体的には、脱気槽11の開口部11aからスプレーノズル12aのノズル口12bまでの距離が、脱気槽11の深さの20%以下となる位置にスプレー機構12が設置されていることが好ましく、より好ましくは15%以下となる位置である。
【0017】
エアレーション機構13は、脱気槽11に噴出された被処理水に気体を送り、被処理水を脱気槽11内で曝気する手段である。
この例のエアレーション機構13は、脱気槽11内の底部近傍に略水平に配置され散気管13aと、散気管13aに気体を送気するブロワ13bと、ブロワ13bから送気された気体を散気管13aへ供給する気体供給管13cとを備える。
気体供給管13cの一端はブロワ13bに接続され、他端は散気管13aに接続されている。
この例の散気管13aは、長手方向に垂直な断面が円形の円管からなり、その周壁の上部には気体を噴出するための円形の散気孔13dが複数、散気管13aの長手方向に沿って一列に形成されている。
ここで「周壁の上部」とは、散気管13aをその長手方向が略水平となるように配置した際に、散気管13aの軸線よりも上側に位置する部分の周壁である。
【0018】
散気管13aに供給される気体としては空気が一般的であるが、空気以外の気体(例えば酸素、窒素、アルゴンなど)を用いてもよい。ブロワ13bが後述の酸素供給機構23に備わるブロワを兼ねる場合、散気管13aに供給される気体としては空気又は酸素が好ましく、空気がより好ましい。
【0019】
生物処理手段20は、低減手段10で得られた第1の処理水を生物硝化処理して第2の処理水とする手段である。
生物処理手段20は、生物保持担体22が充填された硝化槽21と、酸素供給機構23とを備える。
【0020】
この例の硝化槽21は、その底部近傍に設けられた酸素供給機構23から酸素含有ガスを供給することによって、硝化槽21に供給された第1の処理水を曝気すること、及び旋回流を生じさせることのできる流動床型の水槽である。すなわち、本実施形態の生物処理手段は流動床式である。
硝化槽21の底部の酸素供給機構23から供給された酸素含有ガスが第1の処理水中を上昇することによって上昇流が生じ、液面に近づいた上昇流が下降流に転じて旋回流が形成される。
【0021】
硝化槽21に充填された生物保持担体22は、前記旋回流により硝化槽21内を自由に流動できるようになっている。
生物保持担体22は、第1の処理水に含まれるアンモニア態窒素を生物硝化処理するための微生物、つまり硝化菌を保持するためのものである。硝化槽21に生物保持担体22が充填されていることで、硝化槽21内の硝化菌濃度を高めることができる。
生物保持担体22としては特に限定されず、流動床型の硝化槽21に用いられる担体として公知のものを用いることができる。
生物保持担体22を構成する材料としては、例えばポリビニールアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン等が挙げられる。
生物保持担体22の形状としては、例えば直方体、球体、筒体、糸状体等が挙げられる。
生物保持担体22は、多孔状でも非多孔状でもよく、硝化菌をより多く保持できる点で、多孔状であることが好ましい。
【0022】
硝化槽21への生物保持担体22の充填率は、硝化槽21中の第1の処理水の水量に対して10~90体積%が好ましく、25~50体積%がより好ましい。生物保持担体22の充填率が、上記下限値以上であれば処理能力がより優れ、上記上限値以下であれば生物保持担体22の流動状態がより優れる。
【0023】
酸素供給機構23は、硝化槽21に供給された第1の処理水に酸素含有ガスを送り、第1の処理水を硝化槽21内で曝気する手段である。
この例の酸素供給機構23は、硝化槽21内の底部近傍に略水平に配置され散気管23aと、散気管23aに気体を送気するブロワ13bと、ブロワ13bから送気された気体を散気管23aへ供給する酸素供給管23cとを備える。
酸素供給管23cの一端はブロワ13bに接続され、他端は散気管23aに接続されている。
この例の散気管23aは、長手方向に垂直な断面が円形の円管からなり、その周壁の上部には気体を噴出するための円形の散気孔23dが複数、散気管23aの長手方向に沿って一列に形成されている。
ここで「周壁の上部」とは、散気管23aをその長手方向が略水平となるように配置した際に、散気管23aの軸線よりも上側に位置する部分の周壁である。
なお、本実施形態では、エアレーション機構13のブロワ13bが、酸素供給機構23のブロワを兼ねているが、ブロワ13bとは別のブロワから散気管23aに酸素含有ガスを送気してもよい。
【0024】
散気管23aに供給される酸素含有ガスとしては空気が一般的であるが、酸素ガスを含むガスであれば特に限定されない。酸素含有ガスが酸素ガスと酸素ガス以外のガスとの混合ガスである場合は、酸素ガス以外のガスは不活性ガスが主成分であることが好ましい。空気以外の酸素含有ガスとしては、工業用の高純度酸素ガス(純度99.5体積%以上)、医療用の酸素ガス(酸素濃度約25体積%以上)、水の電気分解により発生させた酸素ガス及び光合成により発生させた酸素ガスが例示されるが、これらに限定されることなく、使用できる。
【0025】
硝化槽21内には、さらに、生物保持担体22と第2の処理水とを分離するための固液分離機構(図示略)を設置してもよい。固液分離機構を設置することにより、硝化槽21から生物保持担体22が排出されることを抑制しつつ、第2の処理水を排出することが容易になる。
固液分離機構としては、例えばスクリーンが挙げられる。
【0026】
<水処理方法>
水処理装置1を用いた水処理方法の一例について説明する。
本実施形態の水処理方法は、被処理水を汲み上げる汲み上げ工程と、被処理水中のメタン濃度を12mg/L以下に低減して第1の処理水とする低減工程と、第1の処理水を生物硝化処理して第2の処理水とする生物処理工程とを有する。
【0027】
汲み上げ工程では、水中ポンプ31aを駆動させて水源100から被処理水を汲み上げる。
汲み上げられた被処理水は、原水供給流路31を通って低減手段10のスプレー機構12に供給される。
【0028】
水源100から汲み上げられた被処理水は、アンモニア態窒素及びメタンを含む。
被処理水のアンモニア態窒素濃度は特に限定されないが、例えば1~100mg/L程度である。アンモニア態窒素濃度は、連続的にはイオン電極、回分式には比色計等により測定される。
被処理水のメタン濃度は特に限定されないが、例えば12mg/L以上である。メタン濃度は、接触燃焼式ガス検知器、ガスクロマトグラフィー、ガス検知管等により測定される。
被処理水の生物化学的酸素要求量(BOD)は、5mg/L以下が好ましい。BODは、溶存酸素の減少速度から測定される。
被処理水の水温は、10~50℃が好ましく、15~40℃がより好ましい。
なお、被処理水のアンモニア態窒素濃度、メタン濃度、BOD及び水温は、低減手段10に供給される直前の被処理水を採取して測定される値である。
【0029】
低減工程は、被処理水中のメタン濃度を12mg/L以下に低減して第1の処理水とする工程である。
低減工程では、まず、スプレー機構12に供給された被処理水をスプレーノズル12aのノズル口12bから脱気槽11へ噴出する。被処理水が噴出される勢いで、大気と接触した被処理水からメタンを大気へ移し、被処理水中のメタンが除去される。
スプレー機構12から噴出された被処理水は脱気槽11内に貯留される。
次いで、ブロワ13bを駆動させることで空気等の気体を、気体供給管13cを経て脱気槽11内の散気管13aに供給する。これにより、脱気槽11内に貯留された被処理水中に散気管13aから気体が供給され、曝気が行われる。被処理水を曝気することで被処理水中のメタンが大気へ移動し、被処理水中のメタンが除去される。
【0030】
こうして、メタン濃度が12mg/L以下に低減された第1の処理水が得られる。
低減工程では、第1の処理水のメタン濃度が12mg/L以下となるように、スプレー機構12から被処理水を噴出する際の水量や圧力、散気管13aへの気体の供給量を調節すればよい。
第1の処理水は、ポンプ32aを駆動させることで脱気槽11から引き抜かれ、処理水供給流路32を通って生物処理手段20の硝化槽21に供給される。
【0031】
生物処理工程は、第1の処理水を生物硝化処理して第2の処理水とする工程である。
生物処理工程では、ブロワ13bを駆動させることで空気等の酸素含有ガスを、酸素供給管23cを経て硝化槽21内の散気管23aに供給する。これにより、散気管23aから第1の処理水中に酸素含有ガスが供給され、曝気が行われる。
曝気により、生物保持担体22が充填された硝化槽21内に酸素が供給されると、第1の処理水中のアンモニア態窒素は、硝化菌の作用により硝化槽21内で次の2段階の化学反応により、亜硝酸イオンを経て硝酸イオンに酸化される。
2NH+3O → 2H+2NO +2HO (1)
2NO +O → 2NO (2)
【0032】
上述したように、硝化槽21の底部の酸素供給機構23から供給された酸素含有ガスが第1の処理水中を上昇することによって上昇流が生じ、液面に近づいた上昇流が下降流に転じて旋回流が形成される。
硝化槽21に充填された生物保持担体22は、前記旋回流により硝化槽21内を自由に流動できるようになっている。すなわち、本実施形態における生物処理工程は、流動床法により行われる。
【0033】
硝化菌としては、アンモニア態窒素の生物硝化に用いられる公知の硝化菌を利用でき、通常、アンモニア酸化細菌及び亜硝酸酸化細菌の2群に大別される。
アンモニア酸化細菌は、酸素を用いてアンモニア(アンモニウムイオンを含む。)を亜硝酸イオンまで酸化する能力を有する細菌群である。アンモニア酸化細菌を含む属としては、例えばNitrosomonas属、Nitorosococcus属及びNitrosospira属、Nitrosovibrio属、Nitrosolobus属が挙げられる。
亜硝酸酸化細菌は、酸素を用いて亜硝酸イオン(NO )を硝酸イオン(NO )まで酸化する能力を有する細菌群である。亜硝酸酸化細菌を含む属としては、例えばNitrobacter属及びNitrospira属、Nitrococcus属が挙げられる。
硝化菌の生物保持担体22への付着は、例えば、種菌が付着した生物保持担体を一定量添加する方法により行うことができる。
【0034】
生物処理手段20に供給される第1の処理水のアンモニア態窒素濃度は特に限定されないが、1~100mg/Lが好ましい。
第1の処理水のメタン濃度は12mg/L以下であり、11mg/L以下が好ましく、10mg/L以下がより好ましく、6mg/L以下がさらに好ましく、3mg/L以下が特に好ましく、1mg/L以下が最も好ましい。メタン濃度は低いほど好ましく、メタン濃度の下限値は0mg/Lである。
第1の処理水の溶存酸素量(DO)は、0.2mg/L以上が好ましい。DOは溶存酸素計により測定される。
第1の処理水の生物化学的酸素要求量(BOD)は、5mg/L以下が好ましい。
第1の処理水の水温は、生物硝化反応を高く保持する観点から、10~50℃が好ましく、15~40℃がより好ましい。
なお、第1の処理水のアンモニア態窒素濃度、メタン濃度、DO、BOD及び水温は、生物処理手段20に供給された直後の第1の処理水を採取して測定される値である。
【0035】
生物処理手段20への第1の処理水の供給量は、第1の処理水のアンモニア態窒素濃度、アンモニア態窒素負荷、硝化槽21内での第1の処理水の滞留時間(HRT)等を考慮して設定される。
第1の処理水のアンモニア態窒素負荷は特に限定されないが、50~500gN/m/dが好ましく、150~250gN/m/dがより好ましい。第1の処理水のアンモニア態窒素負荷がこの範囲内であると、水処理装置1の処理水量及び処理水質のバランスに優れる。
第1の処理水の滞留時間は、硝化槽21から排出される第2の処理水の所望のアンモニア態窒素濃度に応じて設定され、特に限定されないが、通常、0.5~2.0時間程度である。
【0036】
酸素供給機構23から第1の処理水に供給される酸素含有ガスの供給量(曝気量)は特に限定されないが、供給された酸素含有ガスによって形成される旋回流の上昇流の流速が0.1~0.5m/sの範囲内に保持される量とすることが好ましい。旋回流の上昇流の流速は、0.1~0.2m/sの範囲内であることがより好ましい。また、第1の処理水の1mあたり、1分間に0.01m以上の酸素含有ガスを供給することが好ましい。
旋回流の上昇流の流速は、電磁流速計等により測定できる。
【0037】
こうして、生物硝化処理された第2の処理水が得られる。
第2の処理水は、処理水排出流路33を経て硝化槽21から排出される。
第2の処理水のアンモニア態窒素濃度は、5mg/L以下が好ましく、3mg/L以下がより好ましく、1.5mg/L以下がさらに好ましく、0.5mg/L以下が特に好ましい。
【0038】
なお、硝化菌の増殖を維持し活性を良好に維持する目的で、必要に応じて金属を硝化槽21に添加してもよい。金属としては、銅、コバルト、クロム、モリブデン、ニッケル、タングステン、亜鉛等が挙げられる。
第1の処理水中の金属濃度は、通常、硝化菌の活性が高い状態を維持できる濃度範囲内となるようにすることが好ましい。例えば、銅の場合で、第1の処理水中の銅イオン濃度を0.5~10.0μg/Lとすることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態の水処理装置1を用いて被処理水を連続処理する場合であっても、低減手段10に被処理水を供給しない期間や生物処理手段20に第1の処理水を供給しない期間を設けてもよい。
例えば、被処理水の飲用化処理においては、飲用水需要が多い昼間に水処理装置1を稼働して水処理を行い、飲用水需要が少ない夜間に水処理装置1を停止して水処理を行わないようにすることがある。飲用水需要に応じて水処理装置1の稼働期間及び停止期間を設定することにより、水処理装置1の運転コストを低減でき、さらに、飲用化処理における第2の処理水の水質変動を抑制できる。
【0040】
<作用効果>
本実施形態の水処理装置及びこれを用いた水処理方法にあっては、被処理水を生物硝化処理する前に被処理水中のメタン濃度を充分に低減しているので、具体的には被処理水中のメタン濃度を12mg/L以下に低減しているので、硝化速度の低下を防止しつつ、被処理水を生物硝化処理できる。被処理中のメタン濃度を充分に低減することで硝化速度の低下を防止できる理由は、以下のように考えられる。
被処理水中のメタン濃度を充分に低減せずに生物硝化処理を行う場合、硝化槽内で硝化菌の増殖と共にメタン酸化細菌も増殖する。メタン酸化細菌は硝化菌よりも増殖速度が速いため、生物保持担体で硝化菌よりも優先的に増殖する傾向にある。加えて、メタンとアンモニウムイオンは分子の形状が似通っているため、アンモニウムイオンの硝化については拮抗阻害を起こすことがある。さらに、銅などの金属を添加しても、メタン酸化細菌が金属を利用するため、硝化菌の増殖が抑制されてしまう。その結果、処理水中のメタン濃度を充分に低減せずに生物硝化処理を行う場合は、硝化速度が低下してしまうと考えられる。
しかし、本発明であれば、被処理水を生物硝化処理する前に被処理水中のメタン濃度を充分に低減しているので、硝化槽内でのメタン酸化細菌の増殖が抑制されるため、硝化菌の増殖が妨げられず、硝化速度の低下を防止できる。
【0041】
<他の態様>
本発明の水処理装置及び水処理方法は、上述した実施形態に限定されない。
上述した実施形態では被処理水が地下水であるが、被処理水は地下水に限定されず、アンモニア態窒素及びメタンを含む水であればよい。地下水以外の被処理水としては、例えば河川水や沢水等の表流水などが挙げられる。特に、地下水は硝化反応の阻害要因であるメタンを多く含んでいることから、本発明は地下水を処理する場合に好適である。
また、上述した実施形態では水源から汲み上げた被処理水を直接、低減手段に供給しているが、水源から汲み上げた被処理水を原水槽等の水槽(図示略)に一旦貯留してもよい。
【0042】
上述した実施形態では、低減手段はスプレー機構とエアレーション機構を備えているが、スプレー機構及びエアレーション機構のいずれか一方のみを備えていてもよい。すなわち、低減工程は、スプレー機構及びエアレーション機構のいずれか一方のみを用いて行われてもよい。
また、低減手段は、スプレー機構やエアレーション機構に代えて、曝気塔機構及び脱気膜の少なくとも一方を備えていてもよいし、スプレー機構、エアレーション機構、曝気塔機構及び脱気膜からなる群より選ばれる1つ以上を備えていてもよい。
【0043】
曝気塔機構としては特に限定されず、市販品を用いることができる。曝気塔機構を備えた低減手段の一例を図2に示す。図2に示す低減手段10は、中空状の充填材14aを曝気塔14b内に充填した曝気塔機構14を備える。充填材14aが充填された曝気塔14b内に被処理水を通過させることで、被処理水中のメタンが除去される。
【0044】
脱気膜としては水中のメタンを除去できるものであれば特に限定されず、市販品を用いることができ、例えば中空糸膜等が挙げられる。脱気膜を備えた低減手段の一例を図3に示す。図3に示す低減手段10は、脱気槽11と、脱気槽11内に設置された脱気膜15と、脱気膜15に接続されたガス排出流路16と、ガス排出流路16の途中に設けられたポンプ16aとを備える。ポンプ16aを駆動させて脱気膜15の二次側(すなわちガスの透過側)を減圧させることで、脱気膜15と接触した被処理液中のメタンが脱気膜15の二次側から透過し、被処理液から除去される。
また、例えば図4に示すように、原水供給流路31内に脱気膜15を設けてもよい。この場合、水源100から汲み上げられた被処理水は、原水供給流路31を通り、脱気膜15と接触する。このとき、ポンプ16aを駆動させて脱気膜15の二次側を減圧させることで、被処理液中のメタンが脱気膜15の二次側から透過し、被処理液から除去される。図4に示す水処理装置2では、原水供給流路31が処理水供給流路を兼ねており、脱気膜15を通過した被処理水は第1の処理水となって、原水供給流路31から生物処理手段20の硝化槽21に供給される。
【0045】
上述した実施形態では、生物処理手段は流動床式であり、生物処理工程は流動床法により行われているが、生物処理手段は固定床式であってもよく、生物処理工程を固定床法により行ってもよい。また、流動床法や固定床法に代えて、活性汚泥法や膜ろ過法等を採用してもよい。ただし、高濃度に安定して硝化菌を硝化槽内にて保持できることから生物処理工程は流動床法又は固定床法により行われることが好ましく、担体充填部の閉塞のおそれがない点で流動床法がより好ましい。
【実施例
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
[試験1]
本試験においては、図1に示す水処理装置1を用いて、以下の手順で被処理水の生物硝化処理を連続して行った。
被処理水として、アンモニア態窒素濃度が10mg/L前後であり、メタン濃度が20mg/L前後であり、溶存酸素量が6~7mg/Lであり、温度が20℃である地下水を水源100から汲み上げた。
脱気槽11として、幅:1m、奥行き:1m、高さ:3m(容量3m)の水槽を用いた。脱気槽11の上部にはスプレー機構12を設け、脱気槽11の底部にはエアレーション機構13を設けた。スプレー機構12としては、長手方向に垂直な断面が円形の円管からなり、その周壁の下部に5つのノズル口12bが長手方向に沿って下向きに一列に形成されているスプレーノズル12aを用いた。なお、脱気槽11の開口部11aからスプレーノズル12aのノズル口12bまでの距離は0.3mであった。
硝化槽21として、幅:2m、奥行き:3m、高さ:2.25m(容量13.5m)の流動床型の水槽を用いた。硝化槽21の底部には酸素供給機構23を設けた。硝化槽21に生物保持担体22を充填率が30体積%となるように充填した。生物保持担体22としては、発泡ポリウレタン製のスポンジ担体(株式会社イノアックコーポレーション製、商品名「ウォターフレックス」、5mm角型:品番「AQ-14」)を用いた。
スポンジ担体を硝化槽21に充填する前に、すでに培養して硝化菌が付着しているスポンジ担体を一定量添加した。
【0048】
(比較例1)
まず、水中ポンプ31aを駆動させて水源100から被処理水を汲み上げ、低減手段10に供給せずに生物処理手段20の硝化槽21に被処理水を直接、供給した。ブロワ13bを駆動させることで空気を、酸素供給管23cを経て硝化槽21内の散気管23aに供給し、被処理水を曝気することで、生物硝化処理を行った。硝化槽21へ供給される被処理水の流量は16m/hとし、連続して被処理水を硝化槽21に供給した。硝化槽21への曝気量は2m/minとした。
水処理装置1の運転開始から30日目の時点での、硝化槽21に供給される直前の被処理水のアンモニア態窒素濃度、アンモニア態窒素負荷、メタン濃度及びメタン負荷と、処理水排出流路33から排出された処理水のアンモニア態窒素濃度を測定した。また、水処理装置1の運転開始から30日目の時点での硝化速度を求め、これを水処理装置1の運転開始1日目から30日までの間における最大硝化速度とした。これらの結果を表1に示す。また、被処理水のメタン濃度と最大硝化速度の結果を図5に示す。
【0049】
(比較例2)
水処理装置1の運転開始から31日目において、水源100から汲み上げられた被処理水を、スプレー機構12を介さずに脱気槽11に供給した。具体的には、スプレーノズル12aを介さずに原水供給流路31から被処理水を直接、脱気槽11に供給した。エアレーション機構13を稼働させることなく脱気槽11内の被処理水を生物処理手段20の硝化槽21に供給した。具体的には、気体供給管13cに設けられた弁(図示略)を閉じて空気が脱気槽11内の散気管13aに供給されないようにした状態で、ポンプ32aを駆動させて脱気槽11から被処理水を引き抜き、硝化槽21に供給し、生物硝化処理を行った。硝化槽21へ供給される被処理水の流量は16m/hとし、連続して被処理水を硝化槽21に供給した。硝化槽21への曝気量は2m/minとした。
水処理装置1の運転開始から85日目の時点で、硝化槽21に供給される直前の被処理水のアンモニア態窒素濃度、アンモニア態窒素負荷、メタン濃度及びメタン負荷と、処理水排出流路33から排出された処理水のアンモニア態窒素濃度を測定した。また、水処理装置1の運転開始から85日目の時点での硝化速度を求め、これを水処理装置1の運転開始31日目から85日までの間における最大硝化速度とした。これらの結果を表1に示す。また、被処理水のメタン濃度と最大硝化速度の結果を図5に示す。
【0050】
(実施例1)
水処理装置1の運転開始から86日目において、水源100から汲み上げられた被処理水をスプレー機構12に供給し、脱気槽11に被処理水を噴出しながら貯留した。次いで、気体供給管13cに設けられた弁(図示略)を開けて空気を、気体供給管13cを経て脱気槽11内の散気管13aに供給し、脱気槽11に貯留された被処理水を曝気し、第1の処理水を得た。脱気槽11への曝気量は0.3m/minとした。引き続き、脱気槽11から第1の処理水を引き抜き、硝化槽21に供給し、生物硝化処理を行った。硝化槽21へ供給される第1の処理水の流量は16m/hとし、連続して第1の処理水を硝化槽21に供給した。硝化槽21への曝気量は2m/minとした。
水処理装置1の運転開始から180日目の時点で、硝化槽21に供給される直前の第1の処理水のアンモニア態窒素濃度、アンモニア態窒素負荷、メタン濃度及びメタン負荷と、処理水排出流路33から排出された第2の処理水のアンモニア態窒素濃度を測定した。また、水処理装置1の運転開始から180日目の時点での硝化速度を求め、これを水処理装置1の運転開始86日目から180日までの間における最大硝化速度とした。これらの結果を表1に示す。また、第1の処理水のメタン濃度と最大硝化速度の結果を図5に示す。
【0051】
(実施例2)
水処理装置1の運転開始から181日目において、水源100から汲み上げられた被処理水をスプレー機構12に供給し、脱気槽11に被処理水を噴出しながら貯留し、第1の処理水を得た。次いで、エアレーション機構13を稼働させることなく脱気槽11内の第1の処理水を生物処理手段20の硝化槽21に供給した。具体的には、気体供給管13cに設けられた弁(図示略)を閉じて空気が脱気槽11内の散気管13aに供給されないようにした状態で、ポンプ32aを駆動させて脱気槽11から被処理水を引き抜き、硝化槽21に供給し、生物硝化処理を行った。硝化槽21へ供給される第1の処理水の流量は16m/hとし、連続して被処理水を硝化槽21に供給した。硝化槽21への曝気量は2m/minとした。
水処理装置1の運転開始から200日目の時点で、硝化槽21に供給される直前の第1の処理水のアンモニア態窒素濃度、アンモニア態窒素負荷、メタン濃度及びメタン負荷と、処理水排出流路33から排出された第2の処理水のアンモニア態窒素濃度を測定した。また、水処理装置1の運転開始から200日目の時点での硝化速度を求め、これを水処理装置1の運転開始181日目から200日までの間における最大硝化速度とした。これらの結果を表1に示す。また、第1の処理水のメタン濃度と最大硝化速度の結果を図5に示す。
【0052】
(実施例3)
水処理装置1の運転開始から201日目において、水源100から汲み上げられた被処理水を、スプレー機構12を介さずに脱気槽11に供給した。具体的には、スプレーノズル12aを介さずに原水供給流路31から被処理水を直接、脱気槽11に供給した。次いで、気体供給管13cに設けられた弁(図示略)を開けて空気を、気体供給管13cを経て脱気槽11内の散気管13aに供給し、脱気槽11に供給された被処理水を曝気し、第1の処理水を得た。脱気槽11への曝気量は0.3m/minとした。引き続き、脱気槽11から第1の処理水を引き抜き、硝化槽21に供給し、生物硝化処理を行った。硝化槽21へ供給される第1の処理水の流量は16m/hとし、連続して第1の処理水を硝化槽21に供給した。硝化槽21への曝気量は2m/minとした。
水処理装置1の運転開始から235日目の時点で、硝化槽21に供給される直前の第1の処理水のアンモニア態窒素濃度、アンモニア態窒素負荷、メタン濃度及びメタン負荷と、処理水排出流路33から排出された第2の処理水のアンモニア態窒素濃度を測定した。また、水処理装置1の運転開始から235日目の時点での硝化速度を求め、これを水処理装置1の運転開始201日目から235日までの間における最大硝化速度をとした。これらの結果を表1に示す。また、第1の処理水のメタン濃度と最大硝化速度の結果を図5に示す。
【0053】
<測定方法>
(アンモニア態窒素濃度の測定方法)
アンモニア態窒素濃度は、比色計を用いて測定した。
【0054】
(アンモニア態窒素負荷の測定方法)
アンモニア態窒素負荷は、硝化槽21の容量(13.5m)、硝化槽21に供給される直前の被処理水又は第1の処理水の流量(16m/h=384m/d)及びアンモニア態窒素濃度から求めた。具体的には、下記式(i)より求めた。
アンモニア態窒素負荷(gN/m/d)=被処理水又は第1の処理水のアンモニア態窒素濃度(g/m)÷(硝化槽の容量(m)÷被処理水又は第1の処理水の流量(m/d)) ・・・(i)
【0055】
(メタン濃度の測定方法)
メタン濃度は、サンプル水をヘッドスペース法によって処理した後、ガス気相部についてガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0056】
(メタン負荷の測定方法)
メタン負荷は、硝化槽21の容量(13.5m)、硝化槽21に供給される直前の被処理水又は第1の処理水の流量(16m/h=384m/d)及びメタン濃度から求めた。具体的には、下記式(ii)より求めた。
メタン負荷(gCH/m/d)=被処理水又は第1の処理水のメタン濃度(g/m)÷(硝化槽の容量(m)÷被処理水又は第1の処理水の流量(m/d)) ・・・(ii)
【0057】
(硝化速度の測定方法)
硝化速度は、硝化槽21の容量(13.5m)、硝化槽21に供給される直前の被処理水又は第1の処理水の流量(16m/h=384m/d)及びアンモニア態窒素濃度、処理水排出流路33から排出された処理水(第2の処理水)のアンモニア態窒素濃度から求めた。具体的には、下記式(iii)より求めた。
硝化速度(gN/m/d)=(被処理水又は第1の処理水のアンモニア態窒素濃度(g/m)-処理水排出流路から排出された処理水(第2の処理水)のアンモニア態窒素濃度(g/m))÷(硝化槽の容量(m)÷被処理水又は第1の処理水の流量(m/d)) ・・・(iii)
【0058】
【表1】
【0059】
表1中、「原水アンモニア濃度」は、被処理水又は第1の処理水のアンモニア態窒素濃度である。「原水アンモニア負荷」は、被処理水又は第1の処理水のアンモニア態窒素負荷である。「原水メタン濃度」は、被処理水又は第1の処理水のメタン濃度である。「原水メタン負荷」は、被処理水又は第1の処理水のメタン負荷である。「流量」は、硝化槽21へ供給される被処理水又は第1の処理水の流量である。「処理水アンモニア濃度」は、処理水排出流路33から排出された処理水(第2の処理水)のアンモニア態窒素濃度である。
【0060】
表1及び図5から明らかなように、被処理水中のメタン濃度を12mg/L以下に低減した後に生物硝化処理した場合(実施例1~3)は、比較例1、2に比べて最大硝化速度が大きく、硝化速度の低下を防止できることが示された。また、実施例1~3の場合、比較例1、2に比べて処理水アンモニア濃度が低く、充分に被処理水を生物硝化処理できることが示された。
【符号の説明】
【0061】
1,2 水処理装置
10 低減手段
11 脱気槽
11a 開口部
12 スプレー機構
12a スプレーノズル
12b ノズル口
13 エアレーション機構
13a,23a 散気管
13b ブロワ
13c 気体供給管
13d,23d 散気孔
14 曝気塔機構
14a 充填材
14b 曝気塔
15 脱気膜
16 ガス排出流路
16a,32a ポンプ
20 生物処理手段
21 硝化槽
22 生物保持担体
23 酸素供給機構
23c 酸素供給管
31 原水供給流路
31a 水中ポンプ
32 処理水供給流路
33 処理水排出流路
100 水源
図1
図2
図3
図4
図5