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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】防音緩衝材及び防音緩衝材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/18 20060101AFI20241204BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B62D25/18 F
G10K11/162
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021040038
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139584
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391006083
【氏名又は名称】三光合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(72)【発明者】
【氏名】直井義秋
(72)【発明者】
【氏名】大岡慶一
(72)【発明者】
【氏名】二塚元忠
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-013538(JP,A)
【文献】特開2003-112661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/18
G10K 11/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を配置した防音緩衝領域と、防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する連続樹脂領域とを備える防音緩衝材において、前記防音緩衝領域は、タイヤ側の表面に連続樹脂領域と共にこれと並設・隣接して実質的に連続して露出し、かつ防音緩衝材のタイヤ側の表面と反対側の表面も防音緩衝領域の不織布表面が露出し、これと並設・隣接して実質的に連続して連続樹脂領域表面が露出すると共に前記境界部の前記樹脂領域側に前記防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を設定してなることを特徴とする防音緩衝材。
【請求項2】
車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を配置した防音緩衝領域と、防音緩衝領域と境界部を介して防音緩衝領域面よりも突出して形成されるリブ樹脂領域とを備える防音緩衝材において、前記防音緩衝領域は、タイヤ側の表面に連続樹脂領域と共にこれと並設・隣接して実質的に連続して露出し、かつ防音緩衝材のタイヤ側の表面と反対側の表面も防音緩衝領域の不織布表面が露出し、これと並設・隣接して実質的に連続して連続樹脂領域表面が露出すると共に前記境界部の前記樹脂領域側に前記防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を設定してなることを特徴とする防音緩衝材。
【請求項3】
車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を配置した防音緩衝領域と、防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する連続樹脂領域と、防音緩衝領域と境界部を介して防音緩衝領域面よりも突出して形成されるリブ樹脂領域とを備える防音緩衝材において、前記防音緩衝領域は、タイヤ側の表面に連続樹脂領域と共にこれと並設・隣接して実質的に連続して露出し、かつ防音緩衝材のタイヤ側の表面と反対側の表面も防音緩衝領域の不織布表面が露出し、これと並設・隣接して実質的に連続して連続樹脂領域表面が露出すると共に前記境界部の前記樹脂領域側に前記防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を設定してなることを特徴とする防音緩衝材。
【請求項4】
車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布からなる防音緩衝領域と、前記防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する樹脂領域とを備える防音緩衝材の製造方法であり、不織布側で界面部の境界を制圧するために不織布を圧縮し、密度を上げることで樹脂の流れを抑え込み防音緩衝領域と連続樹脂領域との境界部を安定させる防音緩衝材の製造方法において、前記境界部に、樹脂の板厚の6~8割まで不織布を圧縮させる帯状の押し当て面を金型に設定し、その金型に設定する押し当て面の位置が、前記樹脂領域に前記防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を設定することが可能な程度に、前記防音緩衝領域の外縁よりも内側に設定され、前記金型に互いに絡合した多数の短繊維を有する不織布を金型を樹脂射出前に所定にセットした状態で、不織布が境界部を形成するための境界部形成凸部の頂面である帯状の押し当て面上を被覆して不織布の外縁が押し当て面外側に延出して、樹脂領域に防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を設定することが可能な態様で配置し、その状態で金型内に樹脂を射出し、樹脂領域に防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を形成することを特徴とする防音緩衝材の製造方法。
【請求項5】
車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布からなる防音緩衝領域と、前記防音緩衝領域と境界部を介して防音緩衝領域面よりも突出して形成されるリブ樹脂領域とを備える防音緩衝材の製造方法であり、防音緩衝領域側で界面部の境界を制圧するために不織布を圧縮し、密度を上げることで樹脂の流れを抑え込み防音緩衝領域とリブ樹脂領域との境界部を安定させる防音緩衝材の製造方法において、前記境界部に、樹脂の板厚の6~8割まで不織布を圧縮させる帯状の押し当て面を金型に設定し、その金型に設定する押し当て面の位置が、前記樹脂領域に前記防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を設定することが可能な程度に、前記防音緩衝領域の外縁よりも内側に設定され、前記金型に互いに絡合した多数の短繊維を有する不織布を金型を樹脂射出前に所定にセットした状態で、不織布が境界部を形成するための境界部形成凸部の頂面である帯状の押し当て面上を被覆して不織布の外縁が押し当て面外側に延出して、樹脂領域に防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を設定することが可能な態様で配置し、その状態で金型内に樹脂を射出し、樹脂領域に防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を形成することを特徴とする防音緩衝材の製造方法。
【請求項6】
車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を配置した防音緩衝領域と、防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する連続樹脂領域と、防音緩衝領域と境界部を介して防音緩衝領域面よりも突出して形成されるリブ樹脂領域とを備える防音緩衝材の製造方法であり、防音緩衝領域側で界面部の境界を制圧するために不織布を圧縮し、密度を上げることで樹脂の流れを抑え込み防音緩衝領域と連続樹脂領域及び/又はリブ樹脂領域との境界部を安定させる防音緩衝材の製造方法において、前記境界部に、樹脂の板厚の6~8割まで不織布を圧縮させる帯状の押し当て面を金型に設定し、その金型に設定する押し当て面の位置が、前記樹脂領域に前記防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を設定することが可能な程度に、前記防音緩衝領域の外縁よりも内側に設定され、前記金型に互いに絡合した多数の短繊維を有する不織布を金型を樹脂射出前に所定にセットした状態で、不織布が境界部を形成するための境界部形成凸部の頂面である帯状の押し当て面上を被覆して不織布の外縁が押し当て面外側に延出して、樹脂領域に防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を設定することが可能な態様で配置し、その状態で金型内に樹脂を射出し、樹脂領域に防音緩衝領域の不織布が延出した接合領域を形成することを特徴とする防音緩衝材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のタイヤハウス内面に装着され、車両の走行時に跳ね上げられた小石等の異物が車体に衝突することによる衝撃を吸収し、衝撃音を抑えると共にタイヤ近傍の車体の破損を抑制する防音緩衝材及び防音緩衝材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を備えた防音緩衝材(フェンダーライナー)が示されている。このように、不織布で形成された防音緩衝材は、互いに絡合した繊維間に形成された無数の空隙が異物の衝突による衝撃を吸収するため、耐衝撃性や防音性(特に吸音性)に優れている。
【0003】
しかし、上記のように短繊維からなる不織布のみで形成された防音緩衝材は、短繊維間に形成された空隙が表面に露出することにより表面積が非常に大きくなるため、水分を吸収しやすい。このため冬期には、不織布内に吸収された水分が凍結し、この不織布表面に着氷した氷がタイヤと接近する方向に成長すると、氷がタイヤと干渉して車両の操舵性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0004】
これに対して特許文献2に示されている防音緩衝材は、不織布で形成された防音緩衝材表面を耐水性フィルムで被覆することにより、耐水性及び耐異物付着性の向上を図っている。しかし、このように不織布の表面を耐水性フィルムで完全に被覆してしまうと、耐水性フィルムにより空気が遮断されるため、不織布による吸音効果を十分に発揮することができない 。
【0005】
このような問題を解消するために特許文献3では耐衝撃性及び防音性に優れ、さらに耐着氷性、防水性に優れた防音緩衝材を提供することを課題とし、車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布からなる基層と、基層の表面を覆う樹脂表層とを備え、樹脂表層が、基層と外気とを連通する無数の空孔を有し、且つ、目付け量が50~400g/m 2の範囲内であり、さらに、溶融樹脂成分を60%以上含むことを特徴とする防音緩衝材が開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-264255号公報
【文献】特開2002-348767号公報
【文献】特開2008-132972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示された防音緩衝材では不織布の表面を覆う樹脂表層が設けられているため吸音性能が不十分であった。具体的には樹脂表層が、基層と外気とを連通する無数の空孔を有していても、吸気と吸音とは異なり、空孔径よりも波長の大きな音は樹脂表層で反射され多数の短繊維を互いに絡合させた不織布からなる基層で減衰(吸音)されることはなく、実際に特許文献3には吸音性能に関する評価試験結果は記載されていない。
【0008】
本発明は以上の従来技術に関する問題に鑑み、耐衝撃性及び防音性に優れ、さらに耐着氷性、防水性に優れた防音緩衝材及び防音緩衝材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明の防音緩衝材は、車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を配置した防音緩衝領域と、防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する連続樹脂領域とを備えることを特徴とする。
【0010】
また本発明の防音緩衝材は、車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を配置した防音緩衝領域と、防音緩衝領域と境界部を介して防音緩衝領域面よりも突出して形成されるリブ樹脂領域とを備えることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の防音緩衝材は、車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を配置した防音緩衝領域と、防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する連続樹脂領域と、防音緩衝領域と境界部を介して防音緩衝領域面よりも突出して形成されるリブ樹脂領域とを備えることを特徴とする。
【0012】
加えて本発明の防音緩衝材の製造方法は、車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布からなる防音緩衝領域と、前記防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する樹脂領域とを備える防音緩衝材の製造方法であり、不織布側で界面部の境界を制圧するために不織布を圧縮し、密度を上げることで樹脂の流れを抑え込み防音緩衝領域と連続樹脂領域との境界部を安定させることを特徴とする。
【0013】
また本発明の防音緩衝材の製造方法は、車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布からなる防音緩衝領域と、前記防音緩衝領域と境界部を介して防音緩衝領域面よりも突出して形成されるリブ樹脂領域とを備える防音緩衝材の製造方法であり、防音緩衝領域側で界面部の境界を制圧するために不織布を圧縮し、密度を上げることで樹脂の流れを抑え込み防音緩衝領域とリブ樹脂領域との境界部を安定させることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の防音緩衝材の製造方法は、車体のタイヤハウス内面に装着される防音緩衝材であって、多数の短繊維を互いに絡合させた不織布を配置した防音緩衝領域と、防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する連続樹脂領域と、防音緩衝領域と境界部を介して防音緩衝領域面よりも突出して形成されるリブ樹脂領域とを備える防音緩衝材の製造方法であり、防音緩衝領域側で界面部の境界を制圧するために不織布を圧縮し、密度を上げることで樹脂の流れを抑え込み防音緩衝領域と連続樹脂領域及び/又はリブ樹脂領域との境界部を安定させることを特徴とする。
【0015】
このように、本発明の防音緩衝材は、互いに絡合した多数の繊維を有する不織布からなる防音緩衝領域を有するため、優れた吸音性及び耐衝撃性が得られる。また、この防音緩衝材では、防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する連続樹脂領域及び/又は防音緩衝領域と境界部を介して防音緩衝領域面よりも突出して形成されるリブ樹脂領域とを備えることによって耐水性を高め、耐着氷性、防水性の向上を図っている。特に連続樹脂領域とリブ樹脂領域とが一体に形成されてなり、リブ樹脂領域が連続樹脂領域からの突出部を有するだけでなく、リブ樹脂領域が2の防音緩衝領域間に形成されてなるようにすることで、防音緩衝領域と境界部を介して連続面を形成する連続樹脂領域の双方につき充分な合成が付与される。特に一のリブ樹脂領域と他のリブ樹脂領域とが交差する交差部が形成されることによって剛性についての異方性は排除され、防音緩衝材全体として全方向で剛性が付与される。
【0016】
境界部が防音緩衝領域の不織布よりも圧縮された圧縮不織布領域とされる結果、射出成形時における防音緩衝領域の不織布への連続樹脂領域及び/又はリブ樹脂領域からの樹脂の含浸が防止され、防音緩衝領域の不織布による吸音性能が高く維持される。
【0017】
具体的には圧縮不織布領域が防音緩衝領域と比較して3倍以上の密度を有する結果、射出成形時における防音緩衝領域の不織布への連続樹脂領域及び/又はリブ樹脂領域からの樹脂の含浸が充分に防止される。圧縮不織布領域が防音緩衝領域と比較して3倍未満の密度である場合には射出成形時における防音緩衝領域の不織布への連続樹脂領域及び/又はリブ樹脂領域からの樹脂の含浸が完全には防止されず充分な吸音性能は生じない。圧縮不織布領域が防音緩衝領域と比較して6倍以上の密度を有する様にするのは工業的には容易ではなく、また必要以上の生産コストが生じる。
【0018】
境界部の樹脂領域側に防音緩衝領域の不織布が延出する領域を設定することによって、樹脂領域と防音緩衝領域との充分な一体性、連続性、接合性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明の防音緩衝材によれば、耐衝撃性及び吸音性に優れ、さらに耐着氷性、防水性にも優れるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車体のタイヤハウス周辺を示す部分側面図である。
図2】本発明の一実施の形態の防音緩衝材の斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態の防音緩衝材の部分断面模式図である。
図4】本発明の一実施の形態の防音緩衝材の他の部分断面模式図である。
図5】本発明の一実施の形態の防音緩衝材の他の斜視図である。
図6】本発明の一実施の形態の防音緩衝材の別の部分断面模式図である。
図7】本発明の一実施の形態の防音緩衝材のまた別の部分断面模式図である。
図8】本発明の実施例の防音緩衝材の写真である。
図9】本発明の実施例の防音緩衝材の写真である。
図10】本発明の実施例の防音緩衝材の写真である。
図11】本発明の実施例の防音緩衝材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る防音緩衝材1を装着した自動車のタイヤ102周辺における部分側面図を示す。防音緩衝材1は、車体100のタイヤハウス101の内面101aに沿った形状を成し、その内面101aに装着される。
【0022】
図2図5に、防音緩衝材1の斜視図を模式的に示す。この防音緩衝材1は、上面を車体に取り付けられた防音緩衝領域2と、防音緩衝領域2と並設・隣接して実質的に連続して設けられる樹脂領域3とで構成される。
樹脂領域3は、図2図5に示す連続樹脂領域3aと、図5に示すリブ樹脂領域3bとを一体に射出成形してなる。
【0023】
防音緩衝領域2は、互いに絡合した多数の短繊維を有する不織布4が境界部5を介して樹脂領域3に保持され、樹脂領域3間の領域に帳設される態様で設けられる。その結果、樹脂領域3は、防音緩衝領域2と並設・隣接して実質的に連続して設けられ、防音緩衝材1のタイヤ側の表面に防音緩衝領域2と共にこれと並設・隣接して実質的に連続して露出している。また防音緩衝材1のタイヤ側の表面と反対側の表面も防音緩衝領域2の互いに絡合した多数の短繊維を有する不織布4表面が露出し、これと並設・隣接して実質的に連続して連続樹脂領域3a表面が露出している。防音緩衝領域2がこのように形成される結果、防音緩衝領域2の表裏面共にこれを被覆するものはなく、被覆物によって防音緩衝領域2の吸音能力が低減されることはない。
【0024】
防音緩衝材1は、防音緩衝領域2を構成する不織布4の内部に無数の微小な空隙が形成されることにより、優れた吸音性及び耐衝撃性を有する。また、この防音緩衝材1は、防音緩衝領域2と並設・隣接して実質的に連続して連続樹脂領域3aが設けられ、これによって吸水率を低下させることにより、耐水性が高められ、耐着氷性、防水性の向上が図られる。特に、樹脂領域3を疎水性の樹脂材料で形成すると、耐水性をさらに向上させることができる。
【0025】
リブ樹脂領域3bは防音緩衝領域2と境界部5を介して防音緩衝領域2面よりも突出して形成される。このリブ樹脂領域3bは連続樹脂領域3aと一体に射出成形されてなる。またリブ樹脂領域3bは2の防音緩衝領域2間に形成されてなる。さらに一のリブ樹脂領域3bと他のリブ樹脂領域3bが交差する交差部6が形成される。
【0026】
境界部5は互いに絡合した多数の短繊維を有する不織布4からなる防音緩衝領域2の不織布4よりも圧縮された圧縮不織布領域4aとされる。この圧縮不織布領域4aは防音緩衝領域2と比較して3倍以上で6倍以下の密度を有するものとされる。
境界部5の樹脂領域3側には防音緩衝領域2の不織布4が延出する延出領域7が設定される。
【0027】
次に、本発明の一実施の形態の防音緩衝材1の製造方法を説明する。
先ず金型8に境界部5を形成するための境界部形成凸部9の頂面である帯状の押し当て面9aを形成する。この押し当て面9aと金型8における対向面との間隔は射出成形によって得られる樹脂の板厚の6~8割程度とされる。この金型8に設定する押し当て面9aの位置は、樹脂領域3に防音緩衝領域2の不織布4が延出する延出領域7を設定することが可能な程度に、防音緩衝領域2の外縁2aよりも内側に設定される。
【0028】
さらに金型8にはリブ樹脂領域3bを形成するためのリブ樹脂形成領域8aが設けられる。このリブ樹脂形成領域8aは2の防音緩衝領域2間にリブ樹脂領域3bが形成されるように配置される。またリブ樹脂形成領域8aは縦横に形成される結果、一のリブ樹脂形成領域8aと他のリブ樹脂形成領域8aとが交差するリブ樹脂形成領域交差部8bが形成される。
【0029】
以上の金型8に互いに絡合した多数の短繊維を有する不織布4を配置する。その配置の態様は、金型8を樹脂射出前に所定にセットした状態で、不織布4が境界部5を形成するための境界部形成凸部9の頂面である帯状の押し当て面9a上を被覆して不織布4の外縁が押し当て面9a外側に延出して、樹脂領域3に防音緩衝領域2の不織布4が延出する延出領域7を設定することが可能な態様とする。
【0030】
その状態で金型8内に樹脂を射出し、本発明の実施の形態の防音緩衝材1を得ることができる。すなわち金型8内に射出された樹脂は、帯状の押し当て面9aによって形成された境界部5によってせき止められて防音緩衝領域2に含浸することはなく、連続樹脂領域3aと、リブ樹脂領域3bとが形成され、樹脂の含浸による防音緩衝領域2の吸音能力の低減が防止される。樹脂領域3に防音緩衝領域2の不織布4が延出する延出領域7を設定するため防音緩衝領域2と連続樹脂領域3aとリブ樹脂領域3bとの連続性が保持され、一体性のある防音緩衝材1を得ることができる。
【実施例1】
【0031】
本発明の有用性を確認するため、本発明に係る防音緩衝材1、すなわち不織布4からなる防音緩衝領域2と境界部5を介して連続面を形成する連続樹脂領域3aと、リブ樹脂領域3bとが形成された防音緩衝材1(実施例)の写真を図8図11に示す。
【符号の説明】
【0032】
1・・・防音緩衝材、3・・・樹脂領域、2・・・防音緩衝領域、4・・・不織布、7・・・延出領域、3b・・・リブ樹脂領域、5・・・境界部、9a・・・押し当て面、8・・・金型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11