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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】リレー
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/12 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
H01H50/12 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021059794
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156213
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】附田 幸広
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-009635(JP,U)
【文献】特開2020-053195(JP,A)
【文献】特開2007-165406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源と電気負荷との間に接続されるリレーであって、
接点部を有する固定端子と、
前記固定端子の前記接点部に対して近接または離間可能に設けられる接点部を有する可動端子と、
前記固定端子および前記可動端子の少なくとも一部を覆うカバーと、
前記カバーの内部に設けられる摩擦熱用固定板と、
前記カバーの内部において前記摩擦熱用固定板に対向して配置される摩擦熱用可動板と、
前記摩擦熱用可動板の面方向の両側に取り付けられ、前記摩擦熱用可動板を前記面方向に振動可能に支持する弾性部材と、
前記カバーの内部において前記摩擦熱用可動板に隣接して配置される熱変形部材と、
を備え、
前記熱変形部材の温度が氷点下の第1閾値以上である場合、前記熱変形部材の先端部は、前記摩擦熱用可動板から離隔した退避位置に配置され、
前記熱変形部材の温度が前記第1閾値未満である場合、前記熱変形部材が変形することにより、前記熱変形部材の先端部は、前記摩擦熱用可動板に当接して、前記摩擦熱用可動板を前記摩擦熱用固定板に向けて押圧する押圧位置に配置され、前記面方向に振動する前記摩擦熱用可動板と前記摩擦熱用固定板との間で摩擦熱を発生させる、リレー。
【請求項2】
前記熱変形部材の先端部が前記退避位置に配置されているとき、前記摩擦熱用固定板と前記摩擦熱用可動板は、互いに離隔して配置される、請求項1に記載のリレー。
【請求項3】
前記摩擦熱用固定板、前記摩擦熱用可動板および前記熱変形部材は、前記カバーの内部において前記固定端子側および前記可動端子側の双方に設けられる、請求項1または2に記載のリレー。
【請求項4】
前記摩擦熱用固定板、前記摩擦熱用可動板および前記熱変形部材は、前記カバーの内部において前記固定端子側に設けられる、請求項1または2に記載のリレー。
【請求項5】
前記弾性部材は、
前記摩擦熱用可動板を、前記面方向のうち第1方向に振動可能に支持する一対の第1弾性部材と、
前記摩擦熱用可動板を、前記面方向のうち第2方向に振動可能に支持する一対の第2弾性部材と、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のリレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるリレーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるメインリレーは、例えば、車両各部の電気負荷と電源との間に接続され、電気負荷に対する電力の供給と遮断とを切り替えるためのスイッチとして利用される。このようなメインリレーとして、例えば、電磁リレーなどのメカニカルリレーが用いられる。電磁リレーは、励磁コイルの電磁誘導作用により可動端子を固定端子に対して近接または離間する方向に移動させることで、スイッチングを行う(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-165406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のリレーでは、極低温環境下(例えば、外気温が-30℃~-10℃)において、リレー内部の可動端子と固定端子との接点部に結露水由来の氷結が発生して、当該接点部が接触不良となる場合がある。その結果、リレーのスイッチングをオンにしたとしても、リレーが通電しないため、車両各部の電気負荷に対して電力が供給されず、車両の始動性不良等の不具合が発生するおそれがある。
【0005】
この点、上記特許文献1には、リレーの凍結を防止するために、コントロールユニットが温度センサの検出値に基づいてリレー内の凍結の有無を判定し、リレーの筐体または凍結発生個所を振動させることで、凍結を解除する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の凍結解除方法では、凍結解除のための振動発生装置とその制御装置が必要であるので、リレーの装置構成が複雑になり、既存車両に対する汎用性に欠け、コスト増にもつながるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、制御装置を使用しない簡易な構造を用いて、低温環境下における氷結に起因するリレー端子接点の接触不良を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るリレーは、
車両に搭載される電源と電気負荷との間に接続されるリレーであって、
接点部を有する固定端子と、
前記固定端子の前記接点部に対して近接または離間可能に設けられる接点部を有する可動端子と、
前記固定端子および前記可動端子の少なくとも一部を覆うカバーと、
前記カバーの内部に設けられる摩擦熱用固定板と、
前記カバーの内部において前記摩擦熱用固定板に対向して配置される摩擦熱用可動板と、
前記摩擦熱用可動板の面方向の両側に取り付けられ、前記摩擦熱用可動板を前記面方向に振動可能に支持する弾性部材と、
前記カバーの内部において前記摩擦熱用可動板に隣接して配置される熱変形部材と、
を備え、
前記熱変形部材の温度が氷点下の第1閾値以上である場合、前記熱変形部材の先端部は、前記摩擦熱用可動板から離隔した退避位置に配置され、
前記熱変形部材の温度が前記第1閾値未満である場合、前記熱変形部材が変形することにより、前記熱変形部材の先端部は、前記摩擦熱用可動板に当接して、前記摩擦熱用可動板を前記摩擦熱用固定板に向けて押圧する押圧位置に配置され、前記面方向に振動する前記摩擦熱用可動板と前記摩擦熱用固定板との間で摩擦熱を発生させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御装置を使用しない簡易な構造を用いて、低温環境下における氷結に起因するリレー端子接点の接触不良を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るメインリレーを備えた車両を示す概略図である。
図2図2は、同実施形態に係る通常環境下におけるメインリレーの状態を示す縦断面図である。
図3図3は、同実施形態に係る極低温環境下におけるメインリレーの状態を示す縦断面図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に係る極低温環境下におけるメインリレーの状態を示す縦断面図である。
図5図5は、本発明の第3の実施形態に係る極低温環境下におけるメインリレーの状態を示す縦断面図である。
図6図6は、本発明の第4の実施形態に係るメインリレーにおいて、複数対のスプリングにより摩擦熱用可動板を複数方向に振動可能に支持する状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
[1.リレーの用途、設置場所]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るメインリレーの用途、設置場所について説明する。図1は、本実施形態に係るメインリレー10を備えた車両1を示す概略図である。
【0012】
図1に示すように、車両1は、例えば、走行用の駆動源としてエンジン4が設けられたエンジン車両である。なお、車両1は、走行用の駆動源としてエンジンとモータとが駆動源として設けられたハイブリッド車両であってもよいし、走行用の駆動源としてモータが設けられた電動車両であってもよい。
【0013】
車両1の前部には、フロントパネル2の内部にエンジンルーム3が設けられる。エンジンルーム3には、エンジン4、ラジエータ5、トランスミッション(図示せず。)等の各種装置(駆動装置、冷却装置、空調装置、電源、制御装置、センサ等)が設置される。さらに、エンジンルーム3内には、本実施形態に係るメインリレー10を収容するリレーボックス8も設置される。図1の例では、リレーボックス8は、エンジンルーム3内の左後方の上部側に配置されているが、エンジンルーム3内の他の場所に配置されてもよい。エンジンルーム3のリレーボックス8内にメインリレー10を設置することにより、水分や粉塵等がメインリレー10に浸入することを抑制できる。
【0014】
本実施形態に係るメインリレー10は、本発明のリレーの一例である。メインリレー10は、電気負荷6と電源7との間に接続されて、電源7から電気負荷6への電力供給のオンとオフ(電力の供給と遮断)を切り替えるスイッチング装置である。メインリレー10は、例えば、エンジン4またはトランスミッション等の各種装置の制御に必要な電力の供給をオンまたはオフするために用いられる。
【0015】
電気負荷6は、例えば、エンジン4の空燃比、点火タイミング、電子制御式スロットルバルブ等を制御する制御装置(ECU:エンジン コントロール ユニット)、トランスミッションを制御する制御装置(TCU:トランスミッション コントロール ユニット)、その他各種の車載装置を制御する制御装置などである。また、電気負荷6は、車両駆動用モータ、その他のモータなどの駆動装置であってもよいし、補機、冷却装置、空調装置、センサ、カーナビゲーション装置、表示装置、音響装置、電動スライドドアなど、電力が必要な各種の車載電装部品であってもよい。
【0016】
電源7は、上記電気負荷6に供給する電力を蓄えるバッテリである。電源7は、車両1に搭載されるバッテリ、例えば、補機用バッテリで構成される。しかし、電源7は、かかる例に限定されず、ハイブリッド車両または電動車両の駆動用モータのためのメインバッテリなど、車両1に搭載される各種のバッテリ、または外部電源などであってもよい。
【0017】
[2.リレーの基本構成]
次に、図2を参照して、本実施形態に係るメインリレー10の基本構成について説明する。図2は、本実施形態に係るメインリレー10を示す縦断面図である。
【0018】
図2に示すように、メインリレー10は、例えば、電磁リレーなどのメカニカルリレーで構成される。メカニカルリレーは、機械的に近接または離間する接点を有するリレーである。図2に示すメインリレー10は、例えば、4つの外部端子を有する4極の電磁リレーで構成される。電磁リレーは、励磁コイル11の電磁誘導作用により、固定端子20の接点部26に対して可動端子30の接点部36を近接または離間する方向に移動させることで、スイッチングを行う。これにより、上記の電源7と電気負荷6との通電の有無が切り替えられて、電源7から電気負荷6に電力が供給(リレーオン)または遮断(リレーオフ)される。
【0019】
メインリレー10は、励磁コイル11と、ヨーク12と、鉄芯13と、一対のコイル用端子14と、ベース15と、スプール16と、カバー17と、ストッパー18と、固定端子20と、可動端子30とを備える。
【0020】
励磁コイル11は、ボビンなどに巻回されている。励磁コイル11に電流が流れると、その巻回中心および周囲に磁束が発生する。ヨーク12は、鉄などの金属材料で形成される部品であり、電磁石の効果を高めるために磁路に設けられる。ヨーク12は、励磁コイル11の外周を覆うように配置されており、励磁コイル11の通電時に磁気回路を形成する。鉄芯13は、励磁コイル11の巻回中心を通るように、ヨーク12の内部に軸方向に挿通されている。励磁コイル11は、ヨーク12および鉄芯13に対して絶縁されている。コイル用端子14は、励磁コイル11に電流を流すための端子である。図2の紙面垂直方向に並んで一対のコイル用端子14が設けられており、当該一対のコイル用端子14はそれぞれ励磁コイル11の両端に接続されている。
【0021】
これら励磁コイル11と、ヨーク12と、鉄芯13と、コイル用端子14は、導電性を有する金属材料で形成されており、上記電磁誘導作用による磁力を用いて可動端子30を動かすための電磁石として機能する。
【0022】
ベース15およびスプール16は、上記励磁コイル11、ヨーク12、鉄芯13およびコイル用端子14等からなる電磁石を支持する支持部材として機能する。ベース15は、鉄芯13およびスプール16の下側に設けられ、ヨーク12、鉄芯13およびスプール16を下方から支持する。また、ベース15は、カバー17の開口部を閉塞する。スプール16は、励磁コイル11の上側、下側および内周側に沿って配置されており、励磁コイル11を鉄芯13の周囲の所定位置に固定する。
【0023】
これらベース15、スプール16およびカバー17は、導電性を有しない絶縁材料、例えば樹脂等で形成されている。かかる非導電性のベース15、スプール16を用いて、導電性を有する励磁コイル11、ヨーク12、鉄芯13、コイル用端子14、固定端子20および可動端子30などの金属製部品を支持することにより、これら金属製部品間の短絡を防止できる。
【0024】
カバー17は、例えば、メインリレー10の上部側(例えば、ベース15より上側の部分)を覆うキャップであり、メインリレー10内の各種部品を保護する。励磁コイル11、ヨーク12、鉄芯13、ベース15およびスプール16と、固定端子20および可動端子30の上部は、カバー17の内部に収容されている。一方、固定端子20および可動端子30の下部(端子部22、端子部32)と、一対のコイル用端子14は、カバー17の外部に露出している。これら4極の端子は、例えば、リレーボックス8内に設けられるコネクタ(図示せず。)に対して着脱可能に接続されている。ストッパー18は、可動端子30の接点部36の上方に配置され、可動端子30の可動範囲を規制する。
【0025】
固定端子20は、メインリレー10の一側(例えば、図2の左側)に配置される。可動端子30は、メインリレー10の他側(例えば、図2の右側)に配置される。固定端子20および可動端子30は、ベース15により支持および固定されている。固定端子20および可動端子30は、導電性を有する材料、例えば、銅、鉄、りん青銅などの金属材料で形成されている。固定端子20および可動端子30は、上記電源7の電力を電気負荷6に供給するための電気回路の一部を構成する。
【0026】
固定端子20は、メインリレー10内に固定的に設置される端子であり、可動部を有していない。図示の例の固定端子20は、例えば、1つの金属部品で一体構成されているが、複数部品を組み合せて構成されてもよい。
【0027】
固定端子20は、ベース部21と、端子部22と、フランジ部23と、接点部26と、とを備える。
【0028】
ベース部21は、固定端子20の本体を構成する部分である。ベース部21は、メインリレー10内の一側(例えば、図2の左側)において、上下方向に延設される。ベース部21の下部側には、端子部22が設けられている。端子部22は、ベース部21から下方に延設されて、カバー17の外部に露出する部分であり、上記コネクタ等に接続される。ベース部21の上部側には、接点部26を設置するためのフランジ部23が設けられている。フランジ部23は、例えば、ベース部21の上端部を曲げて水平方向に延びるように設けられる。
【0029】
固定端子20のフランジ部23の上面には、接点部26が設けられている。接点部26は、後述する可動端子30の接点部36に対向する位置に配置される。接点部26は、可動端子30に対する固定端子20の接点となる部分である。
【0030】
可動端子30は、ベース部31と、端子部32と、可動部33とを備える。可動部33は、板バネ34と、可動板35と、接点部36とからなる。
【0031】
ベース部31は、可動端子30の本体を構成する部分である。ベース部31は、メインリレー10内の他側(固定端子20のベース部21とは反対側。例えば、図2の右側)において、上下方向に延設される。ベース部31の下部側には、端子部32が設けられている。端子部32は、ベース部31から下方に延設されて、カバー17の外部に露出する部分であり、上記コネクタ等に接続される。ベース部31の上端には、例えば鉤型に湾曲した係止部31aが設けられている。係止部31aは、可動部33の可動板35の一端部を抱え込むようにして係止する。
【0032】
可動部33は、メインリレー10のスイッチを開閉(即ち、リレーオンまたはオフ)するための可動部材である。可動部33は、メインリレー10内の上部において、左右方向に延びるように配置される。可動部33は、例えば、ベース部31の係止部31aを支点として、回動可能に設けられる。
【0033】
可動部33は、板バネ34により可動板35と接点部36とが連結された構造を有する。板バネ34の基端は、上記ベース部31の係止部31aに固定されている。板バネ34の先端は、自由端であり、固定端子20の接点部26の上方に配置される。板バネ34は、例えば、りん青銅などのように、電気抵抗が小さく、ある程度の剛性を有する金属材料で形成される。
【0034】
可動板35は、例えば、板バネ34よりも厚い平板状の金属板で構成され、板バネ34の下面側に取り付けられる。可動板35の一端部は、ベース部31の係止部31aにより係止される。可動部33が回動したときに板バネ34が撓みすぎないように、可動板35は、板バネ34を補強する機能を有する。
【0035】
可動部33の先端部(例えば、板バネ34の先端部)には、接点部36が設けられている。接点部36は、前述の固定端子20の接点部26の上方において、当該接点部26に対向する位置に配置される。接点部36は、固定端子20に対する可動端子30の接点となる部分である。
【0036】
固定端子20の接点部26と、可動端子30の接点部36は、例えば、銅などの耐熱性を有する金属材料で形成されることが好ましい。これにより、通電時における接点部26および接点部36の焼き付きを抑制することができる。
【0037】
以上のような構成のメインリレー10によれば、電磁石の磁力により、可動端子30の接点部36を固定端子20の接点部26に対して近接または離間させて、メインリレー10のスイッチを開閉(即ち、リレーオンまたはオフ)することができる。
【0038】
具体的には、励磁コイル11の非通電時(リレーオフ時)には、励磁コイル11の電磁誘導作用が生じず、励磁コイル11、ヨーク12、鉄芯13等からなる電磁石に磁力が発生しない。このため、可動端子30の可動部33は、板バネ34の付勢力により上方に回動した状態となり、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26とは離間して、非接触状態となる(図2の実線で示す状態。)。この結果、可動端子30と固定端子20が通電せず、メインリレー10のスイッチがオフの状態となり、電気負荷6と電源7とが電気的に切り離されて、電気負荷6に対する電力供給が遮断される。
【0039】
なお、リレーオフ時に、上方に向けて移動した可動端子30の接点部36は、当該接点部36の上方に配置されたストッパー18に当接する。これにより、当該接点部36の上方への移動量がストッパー18により規制される。
【0040】
一方、励磁コイル11の通電時(リレーオン時)には、励磁コイル11の電磁誘導作用により、上記電磁石は、可動端子30の可動部33を固定端子20に近づける方向の磁力を発生させる。この磁力により、板バネ34の付勢力に抗して、可動端子30の可動部33を下方に回動させる力が作用する。これにより、可動端子30の可動部33が固定端子20に向けて下方に移動して、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26とが接触する接触状態となる(図2の二点鎖線で示す状態。)。この結果、可動端子30と固定端子20とが通電して、メインリレー10のスイッチがオンの状態となり、電気負荷6と電源7とが電気的に接続されて、電気負荷6に対して電力が供給される。
【0041】
なお、可動端子30の板バネ34は、ある程度の柔軟性および弾性を有する薄い金属板で形成されている。このため、リレーオン時に、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26とが接触状態となるとき、板バネ34により接点部36が接点部26に押し付けられる。これにより、両接点部26、36間の寸法差や設置誤差等を吸収して、両接点部26、36同士を安定的に接触させることができる。
【0042】
[3.リレーの氷結対策構造の背景と目的]
次に、本実施形態に係るメインリレー10の特徴である氷結対策構造50の背景と目的について説明する。
【0043】
上述したように、メインリレー10は、励磁コイル11に対する通電が制御されることにより、可動端子30の接点部36を固定端子20の接点部26に対して近接または離間させる方向に移動させて、メインリレー10のスイッチングのオンとオフを切り替える。
【0044】
このようなメインリレー10では、寒冷地または早朝等の低温環境下(例えば、外気温が氷点下)、特に極低温環境下(例えば、外気温が-30℃~-10℃)において、固定端子20の接点部26と可動端子30の接点部36(以下、「リレー端子接点」と総称する場合もある。)に、結露水由来の氷結が発生して、リレー端子接点間の接触不良の問題が生じることがある。例えば、外気温の変化や湿度の変化の激しい極低温環境下では、メインリレー10のカバー17内における空気雰囲気(以下、「リレー内部雰囲気」と称する場合もある。)中の水分などが結露して、固定端子20の接点部26または可動端子30の接点部36に対して付着および氷結する。このため、当該結露水の氷結により接点部26、36の表面に氷結層が形成されてしまい、接点部26、36が接触不良となることがある。その結果、メインリレー10のスイッチングをオンにしたとしても、氷結層によりリレー端子接点が通電しないため、エンジン、モータの制御装置等の電気負荷6に対して電力が供給されず、始動性不良等の不具合が発生する場合がある。
【0045】
特に、例えば図2に示すような構造のメインリレー10では、固定端子20の構成部品数は可動端子30よりも少なく、固定端子20の部品長は可動端子30よりも短い。このため、メインリレー10のカバー17外に露出した端子部22が極低温の外気に晒されると、端子部22からベース部21を通じた冷却熱の伝熱により、固定端子20の接点部26は、可動端子30の接点部36よりも低温になりやすく、氷結の可能性が高くなる。したがって、リレー内部雰囲気よりも低温化した固定端子20の接点部26を覆うようにして、結露水の氷結層が形成されやすい。この結果、固定端子20の接点部26と可動端子30の接点部36との間に接触不良が生じ、スイッチとしての機能を適切に発揮することが困難になってしまう。
【0046】
ここで、リレー端子接点における氷結形成条件と氷結形成メカニズムの具体例について、より詳細に説明する。
【0047】
例えば、極低温環境下において車両1を初始動し、短時間走行した後に、所定時間ソーク(エンジン停止)した場合、リレー端子接点に氷結層が形成されて、接触不良が生じやすい。このような極低温環境における走行条件下では、車両1の走行時の走行風により、メインリレー10の固定端子20および可動端子30は、極低温に冷却される。一方、リレー内部雰囲気は、エンジン4の熱により加熱されて、極低温の外気よりも高い温度を有する。このため、上記ソーク中は、リレー端子接点の温度T1よりも、リレー内部雰囲気の温度T2が高くなっており(T2>T1)、リレー端子接点の温度T1とリレー内部雰囲気の温度T2との間に温度差ΔT1(ΔT1=T2-T1)が生じる。例えば、寒冷地では、温度差ΔT1が10℃以上になる場合もある。
【0048】
したがって、上記ソーク中において、当該温度差ΔT1が所定の閾値(例えば、約6℃)以上になった場合、リレー内部雰囲気中の水分が結露してリレー端子接点に付着し、さらに、当該結露水が冷却されて氷結し、リレー端子接点の表面に氷結層が形成されてしまう。この際、上述したように、可動端子30の構成部品は多く、走行風による冷却熱の伝達を低減しやすい構造であるため、可動端子30の接点部36よりも固定端子20の接点部26の方が氷結しやすい。
【0049】
上記のような氷結形成条件およびメカニズム等によって、極低温環境下において、リレー端子接点に結露水由来の氷結が発生して、リレー端子接点の接触不良の問題が生じることがある。
【0050】
そこで、かかる問題を解決するために、本実施形態に係るメインリレー10は、極低温環境下の熱(冷却熱)を利用した氷結対策構造50を用いて、極低温環境下における氷結に起因するリレー端子接点の接触不良を回避することを目的としている。
【0051】
本実施形態に係るメインリレー10は、制御装置等を使用しない簡易な機械的構造からなる氷結対策構造50を有しており、極低温環境下における冷却熱を利用して、氷結対策構造の熱変形部材58を熱変形させることを特徴とする。即ち、本実施形態に係る氷結対策構造50は、極低温環境下において熱変形部材58が熱変形することにより、メインリレー10内の摩擦部品を擦り合わせて摩擦熱を発生させる。この摩擦熱により、固定端子20と可動端子30を加熱することにより、固定端子20や可動端子30の氷結に起因する接触不良を回避する。このように、本実施形態に係る氷結対策構造50は、固定端子20の接点部26および可動端子30の接点部36(リレー端子接点)が氷結することを抑制することにより、氷結によるリレー端子接点の接触不良の問題を回避する。
【0052】
[4.リレーの氷結対策構造]
次に、図2図3を参照して、本実施形態に係るメインリレー10の氷結対策構造50の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る通常環境下におけるメインリレー10の状態を示す縦断面図である。図3は、本実施形態に係る極低温環境下におけるメインリレー10の状態を示す縦断面図である。
【0053】
図2図3に示すように、本実施形態に係るメインリレー10は、上記のように極低温環境下においてリレー端子接点が氷結により接触不良になるという問題の対策として、氷結対策構造50を備える。氷結対策構造50は、極低温環境下で熱変形部材58が冷却熱を利用して変形することにより、摩擦熱を発生させて、固定端子20および可動端子30を加熱し、リレー端子接点の接触不良を回避するためのものである。
【0054】
本実施形態に係るメインリレー10の氷結対策構造50は、摩擦熱用固定板52と、摩擦熱用可動板54と、スプリング56と、熱変形部材58とを備える。
【0055】
摩擦熱用固定板52(以下、単に「固定板52」と称する場合もある。)は、メインリレー10のカバー17内部において摩擦熱を発生させるための固定式の板状部材である。固定板52は、カバー17内部の所定箇所に固定的に設置される。摩擦熱用可動板54(以下、単に「可動板54」と称する場合もある。)は、メインリレー10のカバー17内部において摩擦熱を発生させるための可動式の板状部材である。可動板54は、カバー17内部の所定箇所に振動可能に設置される。
【0056】
固定板52および可動板54の材質は、熱伝導性を有し、摩擦熱を発生させることが可能な材質であれば、任意の材質であってよい。固定板52および可動板54の材質は、摩擦熱を発生させるために適度な摩擦係数を有するとともに、摩擦しにくい材質であることが好ましい。例えば、固定板52および可動板54の材質は、鉄、銅などの金属材料であってもよいし、樹脂材料であってもよい。固定板52および可動板54の材質を金属材料にすることで、金属板である固定板52および可動板54の耐摩擦性や伝熱性を向上できる。また、固定板52および可動板54の材質は、例えば、繊維基材と樹脂基材とを組み合わせた有機系摩擦材または無機系摩擦材等の摩擦材、あるいはその他の複合材料であってもよい。これにより、固定板52と可動板54との間の摩擦係数をある程度大きくすることができ、摩擦熱を効率的に発生させることが可能になる。
【0057】
また、固定板52と可動板54の材質は、同一の材質であってもよいし、相互に異なる材質であってもよい。固定板52と可動板54が相互に異なる材質であれば、固定板52と可動板54が摩擦したときに、両者が溶着することを抑制できる。
【0058】
固定板52および可動板54は、例えば、矩形平板状を有し、相互に平行に対向配置される。固定板52の表裏両面のうち可動板54に対して対向する面は、摩擦面となる。同様に、可動板54の表裏両面のうち固定板52に対して対向する面も、摩擦面となる。固定板52の摩擦面と固定板52の摩擦面とは、相互に平行に対向配置される平坦面である(図2参照。)。図3に示すように、固定板52の摩擦面と可動板54の摩擦面とが相互に擦り合わされることにより、両者の摩擦により摩擦熱が発生する(図3参照。)。
【0059】
固定板52の面方向とは、固定板52の摩擦面に対して平行な方向である。同様に、可動板54の面方向とは、可動板54の摩擦面に対して平行な方向である。固定板52の摩擦面と可動板54の摩擦面とは、相互に平行であるので、固定板52の面方向と可動板54の面方向とも、相互に平行である。図2の例では、固定板52および可動板54の面方向は、メインリレー10の上下方向に対して平行な方向である。すなわち、固定板520と可動板54は、上下方向に平行に配置され、かつ、相互に平行に配置される。
【0060】
なお、固定板52と可動板54は、相互に擦り合わせることが可能な摩擦面を有する板状部材であれば、それらの形状は問わない。固定板52と可動板54の形状は、上記の矩形平板状以外にも、例えば、円板状、楕円板状、多角形板状、帯状、ブロック状など、任意の形状であってもよい。
【0061】
固定板52および可動板54は、メインリレー10のカバー17の内部に設けられる。固定板52および可動板54の配置は、カバー17の内部であれば任意の位置であってよい。固定端子20および可動端子30を摩擦熱により効率的に加熱するためには、固定板52および可動板54は、固定端子20または可動端子30の一方もしくは双方に隣接して配置されることが好ましい。
【0062】
図2の例では、カバー17の内部において固定端子20側および可動端子30側の双方に、2組の氷結対策構造50、50(固定板52、可動板54、スプリング56および熱変形部材58の組合せ)が設けられている。具体的には、カバー17の内部の一側(例えば、図2の左側)において、固定端子20に隣接して、1組の固定板52、可動板54、スプリング56および熱変形部材58(第1氷結対策構造50)が設置されている。さらに、カバー17の内部の他側(例えば、図2の右側)において、可動端子30に隣接して、1組の固定板52、可動板54、スプリング56および熱変形部材58(第2氷結対策構造50)が設置されている。これにより、2組の氷結対策構造50、50により固定端子20および可動端子30の双方を同時に加熱できる。
【0063】
固定板52は、カバー17の一側の側壁の内面に固定的に取り付けられ、上下方向に対して平行に配置される。可動板54は、カバー17の内部において、固定板52に対向して配置される。固定板52と可動板54は、相互に平行に配置される。図2に示す通常環境下では、固定板52と可動板54は、対向方向(例えば左右方向)に相互に隙間を空けて対向配置される。このため、通常環境下では、固定板52と可動板54は、相互に接触していない非接触状態となる。一方、図3に示す極低温環境下では、固定板52と可動板54は、後述する熱変形部材58の押圧力により対向方向(例えば左右方向)に押圧されて、相互の摩擦面が面接触する。このため、極低温環境下では、固定板52と可動板54、相互には接触する接触状態となる。
【0064】
可動板54は、上記の面方向(摩擦面に対して平行な方向:図2の例の上下方向)に振動可能に設けられる。可動板54を振動可能に設置するために、スプリング56が用いられる。
【0065】
スプリング56は、可動板54を振動可能に支持する弾性部材の一例である。図示の例のスプリング56は、コイルバネで構成されているが、板バネ、ゴムばね等の他のバネ部材で構成されてもよい。スプリング56は、弾力性を有する。スプリング56は、鉄、銅等の金属で形成されるが、金属以外の材料で形成されてもよい。なお、弾性部材は、図2スプリング56以外にも、ゴム等の他の弾性部材で構成されてもよい。
【0066】
1つの可動板54に対して少なくとも一対のスプリング56、56が取り付けられる。一対のスプリング56、56は、可動板54の面方向(例えば上下方向)の両側にそれぞれ取り付けられる。図2の例では、可動板54の上端面に1つのスプリング56が取り付けられ、可動板54の下端面に、もう1つのスプリング56が取り付けられている。上側のスプリング56は、可動板54の上端面と、カバー17の上壁の内面との間に懸架されている。下側のスプリング56は、可動板54の下端面と、ベース15の上面との間に懸架されている。なお、可動板54の面方向の両側に複数対のスプリング56、56が設けられてもよい。
【0067】
このように、上下一対のスプリング56、56により可動板54の面方向の両端を弾性的に支持することにより、可動板54は、その面方向(例えば上下方向)に沿って自由振動することが可能となる。このため、車両1の各種の動作に伴う振動源からの外部振動がメインリレー10に伝達されたとき、メインリレー10の内部で、可動板54も当該外部振動に応じて振動する。ここで、振動源からの外部振動は、例えば、車両1のエンジン4、モータ等の駆動源で発生する振動、または車両1の走行振動などである。かかる外部振動を利用することにより、別途の振動発生装置や振動制御装置等を設置することなく、可動板54を面方向に振動させることができる。
【0068】
以下では、可動板54の面方向のうち可動板54が振動する方向を振動方向と称する。図2の例では、可動板54の振動方向は、メインリレー10の上下方向(例えば、車両1の上下方向に相当する。)である。しかし、かかる例に限定されず、可動板54の振動方向は、車両1の前後方向、左右方向、上下方向、または斜め方向など、任意の方向であってよい。ここで、可動板54の振動方向は、メインリレー10に伝達され得る複数種類の外部振動のうち、メインの振動の振動方向に合わせることが好ましい。メインの振動は、例えば、複数種類の外部振動のうち、振幅が最も大きい振動、周波数が最も高い振動、または振動継続時間が最も長い振動など、振動エネルギーが比較的大きい振動である。例えば、エンジン4からの外部振動が、振動エネルギーが最も大きいメインの振動である場合、可動板54の振動方向を当該エンジン4からのメインの外部振動の方向に合わせることが好ましい。これにより、可動板54を好適に振動させて、摩擦熱を効率的に発生させることができる。
【0069】
可動板54に対する一対のスプリング56、56の取付位置と取付方向を調整することにより、可動板54が振動可能な方向を調整することがである。例えば、図2の例では、可動板54の上下方向の両端に一対のスプリング56、56を取り付けているため、可動板54の振動方向は上下方向となる。これに替えて、例えば、可動板54の左右または前後方向の両端に一対のスプリング56、56を取り付ければ、可動板54の振動方向を左右または前後方向とすることができる。
【0070】
また、固定板52の摩擦面と可動板54の摩擦面は、摩擦熱を発生させやすい表面性状を有することが好ましい。当該摩擦面の表面粗さが大きすぎると、固定板52と可動板54との間の摩擦力により可動板54の振動が停止してしまい、固定板52と可動板54の間で摩擦熱が発生しなくなる。一方、当該摩擦面の表面粗さが小さすぎると、固定板52と可動板54を擦り合わせたとしても、摩擦熱を効率的に発生させることが困難になる。したがって、固定板52に対する可動板54の振動を継続でき、かつ、両者間で摩擦熱を好適に発生できるように、固定板52の摩擦面と可動板54の摩擦面の表面粗さを適切なに調整することが好ましい。
【0071】
このように、本実施形態に係る氷結対策構造50は、所定の振動方向に振動する可動板54を、固定配置された固定板52に対して擦り合わせて、両者の摩擦面の間で摩擦熱を発生させる構造である。このため、固定板52の摩擦面の面積は、可動板54の摩擦面の面積よりも大きく、かつ、可動板54の振動方向(例えば図2の上下方向)の長さよりも、固定板52の振動方向の長さの方が長い方が好ましい。これにより、振動する可動板54の摩擦面の全体を、固定板52の摩擦面に対して擦り合わせる続けることができる。
【0072】
熱変形部材58は、氷結対策構造50による摩擦熱の発生の有無を切り替える機能を有する。具体的には、図2に示すように通常環境下においては、熱変形部材58は、可動板54を押圧しないことにより、可動板54を固定板52から離間させて、固定板52と可動板54の摩擦を解除し、摩擦熱の発生を停止させる。一方、図3に示すように極低温環境下においては、熱変形部材58は、可動板54を固定板52に押し付けて、固定板52と可動板54とを摩擦させて摩擦熱を発生させる。
【0073】
熱変形部材58は、例えば、板状の金属部材で構成される。熱変形部材58は、メインリレー10のカバー17の内部において、可動板54に隣接して配置される。熱変形部材58は、可動板54を挟んで固定板52とは反対側に配置される。本実施形態では、メインリレー10内の左右両側に2つの熱変形部材58、58が設けられており、それぞれの熱変形部材58は、固定端子20、可動端子30に取り付けられている。具体的には、一側(例えば、図2の左側)の熱変形部材58は、固定端子20のベース部21に固定されている。他側(例えば、図2の右側)の熱変形部材58は、可動端子30のベース部31に固定されている。ここで、熱変形部材58の全体が固定端子20または可動端子30に固定されるのではなく、熱変形部材58の一部(一側の基端部)のみが固定端子20または可動端子30に固定されている。熱変形部材58の他側の先端部58aは、固定端子20または可動端子30に固定されておらず、自由に変形可能になっている。
【0074】
熱変形部材58は、自身の温度Tに応じて自律的に熱変形する部材である。熱変形部材58は、温度Tに応じて熱変形する特性を有する金属材料、例えば、バイメタル、形状記憶合金などで形成される。バイメタルは、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせた板状の金属部材である。バイメタルは、2枚の金属板の熱膨張の差により、温度変化に応じて所定方向に反るように湾曲する特性を有する。即ち、バイメタルの温度が高くなるにつれ、熱膨張率が大きい方の金属板が熱膨張率が小さい方の金属板より延びる。このため、バイメタルは、熱膨張率が大きい方の金属板が外側、熱膨張率が小さい方の金属板が内側になって反るように、湾曲変形する。また、形状記憶合金は、所定の温度(変態点)以上では、変形を受けても元の形状に回復する性質を有する合金である。
【0075】
このように、熱変形部材58をバイメタルまたは形状記憶合金などで形成することにより、熱変形部材58の温度Tに応じて、熱変形部材58を所定方向に湾曲するように熱変形させることができる。これにより、熱変形部材58の温度Tの所定の閾値T(第1閾値)を基準として、熱変形部材58の形状を、所定方向に湾曲した湾曲形状、または直線状に延びる直線形状のいずれかに変形させることができる。
【0076】
図2に示すように、通常環境下において、熱変形部材58の温度Tが閾値T以上である場合、熱変形部材58の先端部58aが略上下方向に真っすぐ延びるように、熱変形部材58が熱変形する。この結果、熱変形部材58の形状が、略上下方向に真っすぐ延びた直線形状になる。これにより、熱変形部材58の先端部58aは、可動板54から離隔した退避位置に配置され、可動板54に対して非接触状態となる。このように、熱変形部材58の先端部58aが退避位置に配置されているときは、熱変形部材58は、可動板54を固定板52に向けて押圧しない。したがって、固定板52と可動板54は、左右方向に隙間を開けて相互に離間して配置される。よって、可動板54が面方向(例えば上下方向)に振動したとしても、可動板54と固定板52とが摩擦されず、摩擦熱は発生しない。
【0077】
一方、図3に示すように、極低温環境下において、熱変形部材58の温度Tが閾値T未満である場合、熱変形部材58の先端部58aが可動板54に向けて反るように、熱変形部材58が熱変形する。この結果、熱変形部材58の形状が、可動板54に向けて湾曲した湾曲形状になる。これにより、熱変形部材58の先端部58aは、可動板54に当接して、可動板54を固定板52に向けて押圧する押圧位置に配置され、可動板54に対して接触状態となる。この結果、熱変形部材58により可動板54が押圧されて、固定板52に向けて左右方向に移動し、可動板54の摩擦面と固定板52の摩擦面とが面接触する。よって、面方向(例えば上下方向)に振動する可動板54と、固定された固定板52とが面方向に摩擦されて、固定板52と可動板54との間で摩擦熱が発生する。
【0078】
なお、上記熱変形部材58の熱変形の基準となる温度Tの閾値T(第1閾値)は、固定端子20の接点部26や可動端子30の接点部36が氷結し得る氷点下の所定温度に設定されることが好ましい。閾値Tは、熱変形部材58の材質、形状、変形特性や、熱変形部材58と可動板54と固定板52の配置関係、車両1が使用される温度環境等に応じて、適切な温度に適宜調整されてもよい。閾値Tは、0℃未満、-10℃以上の範囲内の所定温度に設定されることが好ましく、例えば、約-6℃に設定することができる。上記のように、リレー端子接点の温度T1とリレー内部雰囲気の温度T2との間の温度差ΔT1が6℃以上になると、リレー端子接点が氷結しやすいことを考慮すると、例えば、閾値Tを-6℃程度に設定することが好適である。
【0079】
これにより、極低温環境下でリレー端子接点に、結露水由来の氷結層が形成されるおそれがある場合には、冷却熱により熱変形部材58が熱変形して、熱変形部材58の先端部58aが退避位置から押圧位置に自律的に移動する。これにより、振動する可動板54と固定板52とを摩擦させて摩擦熱を発生させることができる。
【0080】
[5.リレーの動作]
次に、図2図3を参照して、本実施形態に係るメインリレー10の動作について説明する。
【0081】
(1)通常環境下(熱変形部材58の温度T≧閾値T
まず、図2を参照して、通常環境下(例えば、外気温が-10℃超)におけるメインリレー10の状態と動作を説明する。図2は、本実施形態に係る通常環境下におけるメインリレー10の状態を示す縦断面図である。この図2の状態では、熱変形部材58の先端部58aは、例えば上方に真っすぐ延びて退避位置に配置されている。
【0082】
図2に示すように、通常環境下では、外気温およびリレー内部雰囲気の温度T2が比較的高いため、リレー端子接点の温度T1とリレー内部雰囲気の温度T2との間の温度差ΔT1が、所定の閾値(例えば、約6℃)以上である。このため、メインリレー10の内部において、結露水が発生せず、リレー端子接点である固定端子20の接点部26も氷結しない。したがって、特段の氷結対策は不要である。
【0083】
したがって、図2の通常環境下では、メインリレー10は、一般的なメインリレーと同様に動作して、リレーをオンまたはオフする。具体的には、図2に示すリレーオフ時には、可動端子30の可動部33は、固定端子20の接点部26から上方に離間した離間位置(図2の実線で示す位置)に配置されており、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26は非接触状態である。よって、固定端子20と可動端子30は通電せず、電源7から電気負荷6への電力供給が遮断されている。
【0084】
そして、リレーをオンにする時には、励磁コイル11が通電される。すると、電磁石の電磁誘導作用により、可動端子30の可動部33が固定端子20の接点部26に向けて下方に回動して接触位置(図2の二点鎖線で示す位置)に配置され、可動端子30の接点部36が固定端子20の接点部26に近接して接触する。この結果、固定端子20と可動端子30とが通電し、電源7から電気負荷6へ電力が供給される。
【0085】
このような通常環境下におけるリレーオフおよびリレーオンのいずれの場合でも、熱変形部材58の温度Tが閾値T以上であるので、熱変形部材58の先端部58aは、上方に真っすぐ延びて退避位置に配置されている。このため、熱変形部材58は可動板54を押圧しないので、固定板52と可動板54は非接触状態である。したがって、可動板54が上下方向に振動したとしても、固定板52と可動板54の間で摩擦熱は発生しない。
【0086】
(2)極低温環境下(熱変形部材58の温度T<閾値T
次に、図3を参照して、極低温環境下(例えば、外気温が-30°~-10℃)におけるメインリレー10の状態と動作を説明する。図3は、本実施形態に係る極低温環境下におけるメインリレー10の状態を示す縦断面図である。この図3の状態では、熱変形部材58の先端部58aは、可動板54に向けて湾曲するように変形して、可動板54を押圧する押圧位置に配置されている。
【0087】
極低温環境下においては、リレー端子接点の温度T1とリレー内部雰囲気の温度T2との間の温度差ΔT1が、所定の閾値(例えば、約6℃)未満となる場合がある。この場合、当該温度差ΔT1により、メインリレー10の内部で結露水が発生して、固定端子20の接点部26が氷結する可能性がある。もし仮に固定端子20の接点部26が氷結してしまうと、リレーオン時に可動端子30の可動部33が下方に回動したとしても、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26との間に氷結層が介在するため、両接点部26、36は通電できない。したがって、極低温環境下では、本実施形態に係る氷結対策構造50により摩擦熱を発生させて、固定端子20の接点部26と可動端子30の接点部36を加熱し、氷結を抑制することが求められる。
【0088】
そこで、図3に示すように、本実施形態に係る氷結対策構造50では、上記の極低温環境下において、熱変形部材58に冷却熱が伝達されて、熱変形部材58の温度Tが閾値T以上未満になると、熱変形部材58が自律的に変形する。すると、熱変形部材58の先端部58aは、可動板54に向けて側方に湾曲した押圧位置に配置される。これにより、熱変形部材58の先端部58aは、可動板54の面方向(例えば上下方向)に振動する可動板54に当接して、当該可動板54を固定板52に向けて押圧する。この結果、振動する可動板54と固定板52とが面接触して、相互の摩擦面が擦り合わされるため、可動板54と固定板52の間で摩擦熱が発生する。
【0089】
そうすると、当該発生した摩擦熱は、相互に接触している固定板52、可動板54および熱変形部材58を通じて、固定端子20のベース部21および可動端子30のベース部31に伝達される。さらに、当該摩擦熱は、固定端子20および可動端子30の内部を、ベース部21、31から接点部26、36に伝達される。かかる摩擦熱の伝熱により、固定端子20の接点部26および可動端子30の接点部36(リレー端子接点)が加熱される。よって、当該リレー端子接点の結露および氷結を抑制できるので、リレーオン時に、リレー端子接点の接触不良を回避でき、可動端子30と固定端子20とが好適に通電可能になる。
【0090】
以上のように、本実施形態によれば、リレー端子接点が氷結しない通常環境下(図2)では、熱変形部材58の温度Tが閾値T(第1閾値)以上である(T≧T)。したがって、熱変形部材58の先端部58aは、上下方向に真っ直ぐに延びる直線形状となり、可動板54を押圧しない退避位置に配置される。この結果、振動する可動板54と固定板52とは接触しないので、両者の間で摩擦熱が発生しない。
【0091】
一方、リレー端子接点が氷結し得る極低温環境下(図3)では、熱変形部材58は、固定端子20、可動端子30等を通じて伝達される冷却熱により冷却される。この結果、熱変形部材58温度Tが閾値T未満となったときに(T<T)、熱変形部材58の先端部58aは、可動板54に向けて湾曲した湾曲形状になり、可動板54に当接して、可動板54を固定板52に向けて押圧する押圧位置に配置される。この結果、振動する可動板54が固定板52に擦り合わされるため、可動板54と固定板52との間で摩擦熱が発生し、当該摩擦熱の伝熱によりリレー端子接点が加熱される。
【0092】
このように、自身の温度Tに応じて熱変形部材58が熱変形することによって、熱変形部材58が、摩擦熱の発生の有無を自動的に切り替えるスイッチとして機能する。したがって、極低温環境下においてリレー端子接点が氷結する前に、摩擦熱によりリレー端子接点を自動的に加熱できる。したがって、リレー端子接点の氷結を防止でき、リレー端子接点の接触不良を未然に回避することができる。
【0093】
例えば、寒冷地等の極低温環境下では、車両1の走行中のリレー端子接点(接点部26、36等)の温度T1と、リレー内部雰囲気の温度T2との温度差ΔT1が、10°以上になることもある。しかし、本実施形態によれば、氷結対策構造50により発生させた摩擦熱により、リレー端子接点を好適に加熱できる。したがって、リレー端子接点の温度T1と、リレー内部雰囲気の温度T2との温度差ΔT1を、所定の閾値(例えば6°)以内に抑えることができるので、リレー端子接点に対する結露および氷結を好適に抑制できる。よって、極低温環境下においても、リレーオン時に、固定端子20と可動端子30とが好適に通電可能になる。
【0094】
また、本実施形態によれば、熱変形部材58が、自身の温度Tに応じて自律的に熱変形して、その先端部58aの位置が、退避位置と押圧位置との間で自動的に変更される。また、車両1の振動源からメインリレー10に伝達する外部振動をエネルギー源として、可動板54を振動させて、摩擦熱を発生させることができる。よって、別途の加熱装置や振動発生装置、制御装置等を用いることなく、低コストで簡易な装置構成の氷結対策構造50を用いて、リレー端子接点を自動的に加熱することができる。
【0095】
なお、極低温環境下において、熱変形部材58は、可動板54の振動が停止しない程度の適切な押圧力で、可動板54を固定板52に対して押し付けることが好ましい。これにより、振動する可動板54と固定板52とを継続的に擦り合わせて、十分な摩擦熱を発生させることができる。
【0096】
また、本実施形態によれば、熱変形部材58により可動板54を固定板52に押し付けているときには、熱変形部材58の先端部58aも、可動板54と当接している。このため、振動する固定板52と熱変形部材58との間でも、摩擦熱を発生させることができる。ただし、可動板54と熱変形部材58との間の接触面積よりも、可動板54と固定板52との間の接触面積の方が広いので、後者の方が大きな摩擦熱を発生させることができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、極低温環境以外の通常環境下や高温環境下では、熱変形部材58により可動板54を押圧しないので、固定板52と可動板54は非接触状態となり、固定板52と可動板54の間で摩擦熱は発生しない。したがって、氷結が生じない環境下では、摩擦熱によるリレー端子接点の不要な加熱を自動的に行わないようにすることができる。よって、例えば、夏季の最高気温が約40℃以上なる地域など、熱害が厳しい高温環境下において、メインリレー10が高温化することを抑制できる。
【0098】
[6.他の実施形態]
次に、図4図6を参照しながら、本発明の第2~4の実施形態に係るメインリレー10について説明する。
【0099】
上述した第1の実施形態に係る氷結対策構造50によれば、図2図3に示すように、メインリレー10のカバー17の内部において、可動板54と固定板52がカバー17側(外側)に配置され、熱変形部材58が固定端子20または可動端子30側(内側)に配置されている。これにより、熱変形部材58よりも広い設置スペースが必要な可動板54と固定板52を、設置スペースに余裕のあるカバー17側に配置することができる。よって、固定板52や可動板54の形状、配置等の自由度を高めて、設置スペースの制約を緩和することができる。
【0100】
しかしながら、氷結対策構造50の配置は、図2図3に示す第1の実施形態の例に限定されない。例えば、図4に示す第2の実施形態のように、氷結対策構造50の配置を変更してもよい。図4は、第2の実施形態に係る極低温環境下におけるメインリレーの状態を示す縦断面図である。
【0101】
図4に示すように、第2の実施形態に係る氷結対策構造50では、メインリレー10のカバー17の内部において、可動板54と固定板52が固定端子20または可動端子30側(内側)に配置され、熱変形部材58がカバー17側(外側)に配置されている。カバー17の両側の側壁の内面にそれぞれ、熱変形部材58が取り付けられ、固定端子20のベース部21と可動端子30のベース部31にそれぞれ、固定板52が取り付けられている。
【0102】
このような第2の実施形態に係る氷結対策構造50の配置によっても、上記第1の実施形態と同様に、極低温環境下において熱変形した熱変形部材58により可動板54を固定板52に向けて押圧して、可動板54と固定板52との間で摩擦熱を好適に発生させることができる。さらに、第2の実施形態によれば、固定板52が固定端子20または可動端子30に対して広い面積で面接触しているので、摩擦熱の主たる発生源である可動板54と固定板52との摩擦により発生させた摩擦熱を、固定板52から固定端子20および可動端子30に対して直接的かつ効率的に伝熱することができる。よって、当該摩擦熱により固定端子20の接点部26および可動端子30の接点部36を、より効率的に加熱することができる。
【0103】
また、上記第1の実施形態によれば、図2図3に示すように、メインリレー10のカバー17の内部において、2組の氷結対策構造50(固定板52、可動板54、スプリング56および熱変形部材58の組合せ)が、固定端子20側(左側)および可動端子30側(右側)の双方に設けられている。これにより、2組の氷結対策構造50により、固定端子20および可動端子30の双方を同時に加熱することができるので、固定端子20および可動端子30の氷結をより確実に抑制できる。
【0104】
しかしながら、氷結対策構造50の設置数は、図2図3に示す第1の実施形態の例に限定されない。例えば、図5に示す第3の実施形態のように、氷結対策構造50の設置数を変更してもよい。図5は、第3の実施形態に係る極低温環境下におけるメインリレーの状態を示す縦断面図である。
【0105】
第3の実施形態に係る氷結対策構造50では、メインリレー10のカバー17の内部において、1組の氷結対策構造50(固定板52、可動板54、スプリング56および熱変形部材58の組合せ)が、固定端子20側(左側)、または可動端子30側(右側)のいずれか一方にのみ設けられる。特に、図5に示すように、1組の氷結対策構造50が、固定端子20側(左側)のみに設けられることが好ましい。固定端子20は、可動端子30よりも、構成部品数が少なく、部品長も短い。このため、走行風等による冷却熱が、固定端子20の端子部22から接点部26に伝達されやすく、接点部26が氷結しやすい。そこで、図5に示すように、氷結対策構造50を固定端子20側に設けることにより、氷結しやすい固定端子20の接点部26の氷結をより確実に抑制できる。
【0106】
また、上記第1の実施形態によれば、図2図3に示すように、上下一対のスプリング56、56により、可動板54が、面方向のうちの1つの方向(上下方向)に振動可能に支持されている。そして、可動板54の振動方向をメインの外部振動の方向に合わせている。これにより、メインの外部振動の振動エネルギーを効率的に利用して、当該外部振動の方向に可動板54を振動させることができるので、摩擦熱を効率的に発生させることができる。
【0107】
しかしながら、可動板54の振動方向は、図2図3に示す第1の実施形態の例に限定されない。例えば、図6に示す第4の実施形態のように、複数対の弾性部材(例えばスプリング56)を可動板54に取り付けて、相異なる2以上の方向に可動板54を振動可能に支持してもよい。図6は、第4の実施形態に係るメインリレー10において、複数対のスプリング56、56により可動板54を複数方向に振動可能に支持する状態を示す側面図である。
【0108】
図6に示すように、第4の実施形態によれば、可動板54は、可動板54の面方向のうち第1方向(例えば上下方向)と、当該第1方向に交差する第2方向(例えば左右方向)に振動可能に支持されている。具体的には、可動板54の上下両端面には、一対のスプリング56A、56A(第1弾性部材)が取り付けられている。さらに、上下両端面よりも相対的に長い可動板54の左右両端面には、二対のスプリング56B、56B(第2弾性部材)が取り付けられている。スプリング56A、56Aはそれぞれ、可動板54の上端面、下端面と、カバー17の上壁の内面、ベース15の上面との間に懸架されている。スプリング56B、56Bはそれぞれ、可動板54の左端面、右端面と、カバー17の側壁の内面との間に懸架されている。
【0109】
このように、第4の実施形態によれば、複数対のスプリング56A、56A、56B、56Bを用いて、例えば上下及び左右の2方向に可動板54を弾性的に支持する。これににより、可動板54は当該2方向に振動方向に好適に振動可能となる。したがって、車両1の各種の振動源から複数方向の外部振動がメインリレー10に伝達される場合に、当該複数方向の外部振動に合わせて可動板54を二次元的に振動させて、摩擦熱を効率的に発生させることができる。
【0110】
また、図6の例では、1つの固定板52に対応して1つの可動板54を複数の振動方向に振動させているが、かかる例に限定されない。例えば、図示はしないが、1つの固定板に対応して複数の可動板(第1方向に振動する第1可動板と、第2方向に振動する第2可動板など)を設け、当該複数の可動板を1つの固定板に同時に擦り合せて、摩擦熱を発生させてもよい。
【0111】
[7.まとめ]
以上説明したように、本実施形態によれば、
車両1に搭載される電源7と電気負荷6との間に接続されるリレー(メインリレー10)であって、
接点部26を有する固定端子20と、
前記固定端子20の前記接点部26に対して近接または離間可能に設けられる接点部36を有する可動端子30と、
前記固定端子20および前記可動端子30の少なくとも一部を覆うカバー17と、
前記カバー17の内部に設けられる摩擦熱用固定板52と、
前記カバー17の内部において前記摩擦熱用固定板52に対向して配置される摩擦熱用可動板54と、
前記摩擦熱用可動板54の面方向(即ち、前記摩擦熱用可動板54の摩擦面に対して平行な方向)の両側に取り付けられ、前記摩擦熱用可動板54を前記面方向に振動可能に支持する弾性部材(スプリング56)と、
前記カバー17の内部において前記摩擦熱用可動板54に隣接して配置される熱変形部材58と、
を備え、
前記熱変形部材58の温度Tが氷点下の第1閾値T以上である場合(例えば、通常環境下のとき)、前記熱変形部材58の先端部58aは、前記摩擦熱用可動板54から離隔した退避位置に配置され、
前記熱変形部材58の温度Tが前記第1閾値T未満である場合(例えば、極低温環境下のとき)、前記熱変形部材58が変形することにより、前記熱変形部材58の先端部58aは、前記摩擦熱用可動板54に当接して、前記摩擦熱用可動板54を前記摩擦熱用固定板52に向けて押圧する押圧位置に配置され、前記面方向に振動する前記摩擦熱用可動板54と前記摩擦熱用固定板52との間で摩擦熱を発生させる、リレーが提供される。
【0112】
これにより、極低温環境下において、固定端子20の接点部26や可動端子30の接点部36(リレー端子接点)が氷結し得る場合には、冷却熱により熱変形部材58が自律的に変形することで、摩擦熱用可動板54を前記摩擦熱用固定板52に向けて押圧する。これにより、面方向に振動する摩擦熱用可動板54と摩擦熱用固定板52との間で摩擦熱を発生させる。そして、当該摩擦熱を熱変形部材58を通じて固定端子20、可動端子30のリレー端子接点に伝熱して、リレー端子接点を加熱できる。したがって、リレー端子接点の結露および氷結を抑制できるので、固定端子20と可動端子30の接触不良を回避することができる。よって、制御装置を使用しない簡易な氷結対策構造50を用いて、極低温環境下における氷結に起因するリレー端子接点の接触不良を回避することができる。
【0113】
前記熱変形部材58の先端部が前記退避位置に配置されているとき、前記摩擦熱用固定板52と前記摩擦熱用可動板54は、互いに離隔して配置されるようにしてもよい。
これにより、摩擦熱用固定板52と摩擦熱用可動板54は接触しないので、摩擦熱用可動板54が振動したとしても摩擦熱は発生しない。よって、リレー端子接点の氷結が生じない通常環境時は、不要な摩擦熱の発生を防止できる。
【0114】
前記摩擦熱用固定板52、前記摩擦熱用可動板54および前記熱変形部材58は、前記カバー17の内部において前記固定端子20側および前記可動端子30側の双方に設けられるようにしてもよい。
これにより、固定端子20側および可動端子30側の双方で摩擦熱を発生させて、固定端子20および可動端子30の双方を同時に加熱できるので、固定端子20および可動端子30の氷結をより確実に抑制できる。
【0115】
前記摩擦熱用固定板52、前記摩擦熱用可動板54および前記熱変形部材58は、前記カバー17の内部において前記固定端子20側に設けられるようにしてもよい。
これにより、氷結しやすい固定端子20側で摩擦熱を発生させて、固定端子20を重点的に加熱できるので、固定端子20の氷結をより確実に抑制できる。
【0116】
前記弾性部材(スプリング56)は、
前記摩擦熱用可動板54を、前記面方向のうち第1方向に振動可能に支持する一対の第1弾性部材(スプリング56A)と、
前記摩擦熱用可動板54を、前記面方向のうち第2方向に振動可能に支持する一対の第2弾性部材(スプリング56B)と、
を含むようにしてもよい。
これにより、車両1の振動源から複数方向の外部振動がメインリレー10に伝達される場合に、当該複数方向に摩擦熱用可動板54を振動させて、摩擦熱を効率的に発生させることができる。
【0117】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0118】
例えば、上記実施形態では、車両1に搭載される各種装置の制御装置に対する電力供給をオンまたはオフするためのメインリレー10に適用する例について説明したが、かかる例に限定されない。本発明のリレーは、上記メインリレー10の例以外にも、エンジンルーム3内に設置される各種のリレーに好適に適用可能であり、エンジンルーム3以外にも、車両1の各場所(例えば、車室、トランクルーム、フロア下など)に設置される他のリレーにも適用されうる。
【符号の説明】
【0119】
1 車両
6 電気負荷
7 電源
8 リレーボックス
10 メインリレー
20 固定端子
26 接点部
30 可動端子
33 可動部
34 板バネ
35 可動板
36 接点部
50 氷結対策構造
52 摩擦熱用固定板
54 摩擦熱用可動板
56、56A、56B スプリング
58 熱変形部材
58a 先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6