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特許7598293車両内装材用積層シートのリサイクル方法及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】車両内装材用積層シートのリサイクル方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021095122
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022187222
(43)【公開日】2022-12-19
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】590000927
【氏名又は名称】龍田化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】本多 太陽
(72)【発明者】
【氏名】小泉 琢仁
(72)【発明者】
【氏名】小山 瑞
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸一
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-320532(JP,A)
【文献】特開平11-156978(JP,A)
【文献】特開昭53-079975(JP,A)
【文献】特開平11-090935(JP,A)
【文献】特開平9-248826(JP,A)
【文献】特開平11-156854(JP,A)
【文献】米国特許第5288760(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂表皮材、及び熱可塑性樹脂表皮材の第1表面に配置されている架橋樹脂発泡体を含む車両内装材用積層シートのリサイクル方法であって、
前記積層シートの廃材を加熱する工程、
前記加熱後の積層シートの廃材を衝撃粉砕機にて粉砕する粉砕工程、
前記粉砕された積層シートの廃材を、風力分離により、熱可塑性樹脂表皮材の粉砕物であるリサイクル材と、架橋樹脂発泡体の粉砕物を含む異物に分離する分離工程、及び
前記分離工程を経て得られたリサイクル材を含むリサイクル樹脂組成物を溶融混練し、成形してリサイクルシートを得るシート成形工程を含み、
前記加熱工程において、前記積層シートの廃材を前記熱可塑性樹脂表皮材の最も低い融点Tminより25℃以上高い温度に加熱しており、
前記粉砕工程において、下記数式(1)で表される衝撃粉砕機の回転数R(rpm)と、スクリーンの目開きS(m)の関係係数は、0.500rpm・m2以上2.650rpm・m2以下の範囲を満たすことを特徴とする、車両内装材用積層シートのリサイクル方法。
【数4】
【請求項2】
前記積層シートは、表面処理剤層を含み、分離工程において、粉砕された積層シートの廃材を、風力分離により、熱可塑性樹脂表皮材の粉砕物であるリサイクル材と、架橋樹脂発泡体及び表面処理剤層の粉砕物を含む異物に分離する、請求項1に記載の車両内装材用積層シートのリサイクル方法。
【請求項3】
前記リサイクル材は、異物残存率が0.10重量%以下であり、かつ異物付着個数率が8.0%以下である、請求項1又は2に記載の車両内装材用積層シートのリサイクル方法。
【請求項4】
前記リサイクル材において、異物残存塗膜厚が25μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の車両内装材用積層シートのリサイクル方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂表皮材は、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上を含む、請求項1~4のいずれかに記載の車両内装材用積層シートのリサイクル方法。
【請求項6】
前記架橋樹脂発泡体は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体で形成されている、請求項1~5のいずれかに記載の車両内装材用積層シートのリサイクル方法。
【請求項7】
前記リサイクル樹脂組成物は、前記リサイクル材を1重量%以上60%重量以下、及び前記リサイクル材と同じ組成の未使用の熱可塑性樹脂を40重量%以上99重量%以下含む、請求項1~6のいずれかに記載の車両内装材用積層シートのリサイクル方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の車両内装材のリサイクル方法で得られたリサイクルシートを用いることを特徴とする、車両内装材用積層シートの製造方法。
【請求項9】
前記リサイクルシートを用いて熱可塑性樹脂表皮層を形成し、表面処理剤層、熱可塑性樹脂表皮層及び架橋樹脂発泡体を含む積層シートを得る、請求項8に記載の車両内装材用積層シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂表皮材及び架橋樹脂発泡体を含む車両内装材用積層シートをリサイクルし、熱可塑性樹脂表皮層の粉砕物をリサイクル材として得られる車両内装材用積層シートのリサイクル方法、及び該リサイクル材を用いる車両内装材用積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装材等の車両内装材、特にインスメルトパネルやドアパネル等には、耐熱性、成型加工性、及びクッション感が良いことから、熱可塑性樹脂表皮材及び架橋樹脂発泡体を積層した積層シートが広く使用されている。しかし、架橋樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂表皮材に比べて溶融しにくく、また、架橋樹脂発泡体における架橋部分が異物となり、該積層シートをそのままリサイクル材として使用することは困難であった。また、このような積層シートは通常表面処理剤層を含み、該積層シートをそのままリサイクル材として使用した場合、表面処理剤も異物となり外観異常が発生することがあった。
【0003】
合成樹脂を含む製品のリサイクル方法として、特許文献1には、合成樹脂材積層物を破砕処理することで、合成樹脂の表皮材と合成樹脂のクッション材を分離分別することが記載されている。特許文献2には、非晶性ポリエチレンテレフタレートと硬質ポリウレタンフォームで構成される成形品からなる一体型断熱体を、溶融温度以下の高温雰囲気下に放置して加熱処理した後、非晶性ポリエチレンテレフタレートと硬質ポリウレタンフォームを分別することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-167832号公報
【文献】特開平9-248869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法を車両内装材として用いる熱可塑性樹脂表皮材及び架橋樹脂発泡体を含む積層シートのリサイクルに用いた場合、熱可塑性樹脂と架橋発泡樹脂の分離が不十分であるという問題があった。
【0006】
本発明は、車両内装材として用いる熱可塑性樹脂表皮材及び架橋樹脂発泡体を含む積層シートから架橋発泡樹脂を除去し、熱可塑性樹脂をリサイクル材として効率的に回収し、車両内装材用積層シートの熱可塑性樹脂表皮材として再利用することができる車両内装材用積層シートのリサイクル方法及び車両内装材用積層シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂表皮材、及び前記熱可塑性樹脂表皮材の第1表面に配置された架橋樹脂発泡体を含む車両内装材用積層シートのリサイクル方法であって、前記積層シートの廃材を加熱する工程、前記加熱後の積層シートの廃材を衝撃粉砕機にて粉砕する粉砕工程、前記粉砕された積層シートの廃材を、風力分離により、熱可塑性樹脂表皮材の粉砕物であるリサイクル材と、架橋樹脂発泡体の粉砕物を含む異物に分離する分離工程、及び前記分離工程を経て得られたリサイクル材を含むリサイクル樹脂組成物を溶融混練し、成形してリサイクルシートを得るシート成形工程を含み、前記加熱工程において、前記積層シートの廃材を前記熱可塑性樹脂表皮材の最も低い融点Tminより25℃以上高い温度に加熱しており、前記粉砕工程において、下記数式(1)で表される衝撃粉砕機の回転数R(rpm)と、スクリーンの目開きS(m)の関係係数は、0.500rpm・m2以上2.650rpm・m2以下の範囲を満たすことを特徴とする、車両内装材用積層シートのリサイクル方法に関する。
【数1】
【0008】
本発明は、また、前記車両内装材のリサイクル方法で得られたリサイクルシートを用いることを特徴とする、車両内装材用積層シートの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両内装材用積層シートのリサイクル方法によれば、熱可塑性樹脂表皮材及び架橋樹脂発泡体を含む積層シートから架橋発泡樹脂成分を効果的に除去し、熱可塑性樹脂成分をリサイクル材として効率的に回収し、車両内装材用積層シートの熱可塑性樹脂表皮材に再利用することができる。
また、本発明の車両内装材用積層シートの製造方法によれば、リサイクル材として回収した熱可塑性樹脂成分を用いた車両内装材用積層シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、熱可塑性樹脂表皮材、及び前記熱可塑性樹脂表皮材の第1表面に配置されている架橋樹脂発泡体を含む積層シートの廃材を所定温度で加熱した後、回転数R(rpm)とスクリーンの目開きS(m)の関係係数が所定の範囲を満たす条件で衝撃粉砕機にて粉砕し、粉砕された積層シートの廃材を風力分離で選別することで、架橋発泡樹脂成分等の異物を効果的に除去し、熱可塑性樹脂成分をリサイクル材として効率的に回収し得ることを見出した。
【0011】
(車両内装材用積層シートのリサイクル方法)
まず、加熱工程において、熱可塑性樹脂表皮材及び架橋樹脂発泡体を含む車両内装材用積層シートの廃材を加熱する。積層シートにおいて、熱可塑性樹脂表皮材(熱可塑性樹脂表皮層)の第1表面上に架橋樹脂発泡体(架橋樹脂発泡層)が積層されている。前記加熱工程において、前記積層シートの廃材を前記熱可塑性樹脂表皮材の最も低い融点Tminより25℃以上高い、すなわち「Tmin+25℃」以上の温度に加熱する。これにより、熱可塑性樹脂表皮材が軟化され、その後に積層シートの廃材を粉砕し、風力分離することで、熱可塑性樹脂表皮材の粉砕物が、架橋樹脂発泡体の粉砕物と分離しやすくなる。加熱温度は、[Tmin+30℃]以上であることが好ましく、[Tmin+35℃]以上であることがより好ましく、[Tmin+40℃]以上であることが特に好ましい。加熱温度の上限は、熱可塑性樹脂が分解する温度未満であればよく、特に限定されないが、例えば、樹脂の劣化、加工性の観点から、250℃以下であってもよく、200℃以下であってもよい。
【0012】
熱可塑性樹脂表皮材の最も低い融点Tminは、熱可塑性樹脂表皮材又は積層シートの廃材を用い、示差走査熱量測定(DSC)を行うことで確認することができる。具体的には、熱可塑性樹脂表皮材の最も低い融点Tminは、表皮材8mg(5~15mg)或いは積層シートの廃材8mg(5~15mg)を10℃/分の昇温速度で40℃から200℃まで昇温(1回目昇温)して融解させ、その後、10℃/分の降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/分の昇温速度で40℃から200℃まで昇温(2回目昇温)することで得られるDSC曲線の全て(1回目昇温→降温→2回目昇温)の中、2回目昇温で得られるDSC曲線における最小の融解ピークの値を求めることで確認することができる。
【0013】
前記加熱工程において、加熱時間は、特に限定されないが、例えば、樹脂劣化の抑制及び加工性の観点から、10秒以上5分以下であってもよく、20秒以上3分以下であってもよい。
【0014】
前記熱可塑性樹脂表皮材を構成する熱可塑性樹脂は、特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。架橋樹脂発泡体との分離性に優れ、リサイクル材として車両内装材用積層シートの表皮層に好適に用いる観点から、熱可塑性樹脂表皮材はオレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上を含むことが好ましい。高温、長時間変形時のゴム弾性に優れ、耐熱性も高い観点から、熱可塑性樹脂表皮材はオレフィン系熱可塑性エラストマーを含むことがより好ましく、熱可塑性樹脂表皮材はオレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系樹脂を含むことがさらに好ましい。熱可塑性樹脂表皮材はオレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上を含む場合、加熱温度は、135℃以上250℃以下であることが好ましく、140℃以上230℃以下であることがより好ましく、150℃以上195℃以下であることが特に好ましい。
【0015】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、特に限定されず、ブレンドタイプ、重合タイプ(リアクターTPOとも称される)、及び動的架橋タイプ(TPVとも称される)のいずれでもよい。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。コスト及び性能の観点から、重合タイプ及び動的架橋タイプを併用することが好ましい。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィンの重合体であればよく、特に限定されない。例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、4-メチル-1-ペンテン等のオレフィンの単独重合体、二つ以上のオレフィンの共重合体、オレフィンと他の単量体との共重合体等が挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。共重合体は、三元共重合体でもよい。オレフィンと他の単量体との共重合体において、オレフィンは50重量%以上であることが望ましい。他の単量体としては、例えば、ジエン、シクロペンタジエン、及びビニル化合物等が挙げられる。具体的には、ホモポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ランダムポリプロピレン(以下、R-PPとも記す)、ブロックポリプロピレン、エチレン・1-ブテン共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEとも記す)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0017】
前記架橋樹脂発泡体は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂表皮材との分離性に優れる観点から、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であることが好ましい。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂を従来公知の方法で架橋させた後に、発泡させたものでもよい。ポリオレフィン系樹脂としては、上述したもののいずれでもよい。
【0018】
前記熱可塑性樹脂表皮材と前記架橋樹脂発泡体は、接着される表面の表面温度が120℃以上200℃に加熱され直接接合されてもよく、接着剤を介して接合されてもよい。熱可塑性樹脂表皮材がオレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上を含み、前記架橋樹脂発泡体が架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体で形成されている場合、直接接合することができる。
【0019】
前記積層シートは、さらに表面処理剤層を含んでもよい。表面処理剤層を構成する表面処理剤としては、特に限定されず、例えば、水系ウレタン塗料、溶剤系ウレタン塗料等が挙げられ、シリコン、シリコンビーズ、ウレタンビーズ等があってもよい。熱可塑性樹脂表皮材がオレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上を含む場合は、耐傷性、耐摩耗性等の観点から、表面処理剤層を含むことが多い。前記表面処理剤層は、熱可塑性樹脂表皮材の第1表面の反対側の第2表面に配置され、プライマーを介して熱可塑性樹脂表皮材と接合してもよい。本発明のリサイクル方法によると、熱可塑性樹脂表皮材から表面処理剤層を効果的に除去することができる。
【0020】
前記積層シートの廃材は、車両内装材の作製時の廃棄物でもよく、使用済みの車両内装材から回収したものでもよい。前記積層シートの廃材は、必要に応じて、例えば、裁断機や打ち抜き機を用いて5cm以上30cm以下のサイズにカットされて用いてもよい。ここで、積層シートの廃材のサイズとは、積層シートの廃材の最大長を意味する。
【0021】
次に、粉砕工程において、加熱後の積層シートの廃材を衝撃粉砕機にて粉砕する。前記粉砕工程において、下記数式(1)で表される衝撃粉砕機の回転数R(rpm)と、スクリーンの目開きS(m)の関係係数は、0.500rpm・m2以上2.650rpm・m2以下の範囲を満たす。以下の説明において、関係係数の単位を省略する。
【数2】
但し、前記数式(1)において、R(rpm)は衝撃粉砕機の回転数を示し、S(m)は衝撃粉砕機のスクリーンの目開きサイズを示す。
【0022】
前記関係係数は、粉砕能力(加工性)とリサイクル材の品質に影響するものである。前記関係係数が0.500未満の場合、熱可塑性樹脂表皮材と、架橋樹脂発泡体及び表面処理剤層等の熱可塑性樹脂表皮材以外の異物との分離が不十分になり、リサイクル材の品質が劣る。また、粉砕物のスクリーン通過性が低下し、粉砕能力が著しく低下する。一方、前記関係係数が2.650を超える場合は、リサイクル材としての熱可塑性樹脂表皮材と、架橋樹脂発泡体及び表面処理剤層等の熱可塑性樹脂表皮材以外の異物の分離が不十分になり、リサイクル材の品質が劣る。前記関係係数は、0.550以上2.500以下であることが好ましく、0.550以上2.000以下であることがより好ましい。
【0023】
衝撃粉砕機は、衝撃式で対象物を粉砕し得るものであればよく、特に限定されない。例えば、衝撃力を得るために高速で回転体を回転し、回転体に装着したハンマ(回転刃)により対象物を粉砕する粉砕機を用いることができる。衝撃粉砕機は、積層シートの廃材を大きい衝撃力で効率よく粉砕でき、架橋樹脂発泡体及び表面処理剤を分離する観点から、スイングハンマークラッシャー型であることが好ましい。
【0024】
積層シートの廃材を1mm以上80mm以下のサイズの粉砕物に粉砕することが望ましく、3mm以上40mm以下のサイズの粉砕物に粉砕することが望ましい。ここで、粉砕物のサイズは、粉砕物の最大長を意味する。粉砕物のサイズが上述した範囲内であると、熱可塑性樹脂表皮材から架橋樹脂発泡体や表面処理剤層等の異物が剥離されやすい。粉砕物のサイズは、衝撃粉砕機のスクリーンの目開きのサイズ等により調整することができる。
【0025】
衝撃粉砕機のスクリーンの目開きのサイズは、前記関係係数を満たす範囲内において、積層シートの廃材を上述したサイズに粉砕しやすい観点から、0.015m以上0.030m以下であることが好ましく、0.015m以上0.025m以下であることがより好ましい。スクリーンの目開きの形状は特に限定されず、円形であってもよく、楕円形、矩形やその他の形状でもよい。ここで、スクリーンの目開きのサイズは、目開きの形状が円形の場合は、直径を意味し、その他の形状の場合は、最大長を意味する。
【0026】
衝撃粉砕機の回転数は、前記関係係数を満たせばよく特に限定されないが、例えば、効率よく熱可塑性樹脂表皮材から架橋樹脂発泡体や表面処理剤層等の異物が剥離し、粉砕できる観点から、2500rpm以上4500rpm以下であってもよく、2500rpm以上4000rpm以下であってもよい。
【0027】
次に、分離工程において、前記粉砕された積層シートの廃材を、風力分離により、熱可塑性樹脂表皮材の粉砕物であるリサイクル材と、架橋樹脂発泡体の粉砕物等を含む異物に分離し、リサイクル材を回収する。風力分離は、特に限定されず、例えば、風力選別機(風力分級機とも称される)を用いて行うことができる。前記粉砕された積層シートの廃材を風力選別機に輸送する送風機の風量は、特に限定されないが、例えば、5m3/min以上100m3/min以下であってもよい。風力選別機の風速は、特に限定されないが、例えば、5m/秒以上30m/秒以下であってもよい。
【0028】
分離工程において、風力分離後に回収したリサイクル材を振動スクリーンにて篩選別することで、リサイクル材の表面に付着した架橋樹脂発泡体の粉砕物等の異物をさらに除去することが好ましい。振動スクリーンの目開きは、例えば、衝撃粉砕機のスクリーンの目開きと同等であることが望ましい。
【0029】
風力選別機として、エアーセパレータと振動スクリーンを備えたものを用いることで、風力分離と篩選別を行ってもよい。
【0030】
前記リサイクル材は、リサイクル性及びリサイクルシートの表面平滑性の観点から、異物残存率が0.10重量%以下であることが好ましく、0.090重量%以下であることがより好ましく、0.080重量%以下であることがさらに好ましく、0.070重量%以下であることがさらにより好ましく、0.060重量%以下であることが特に好ましい。リサイクル材の異物残存率の下限は0重量%に近いほど良好であり、例えば、0.001重量%以上でもよい。
【0031】
前記リサイクル材は、リサイクル性及びリサイクルシートの表面美麗性の観点から、異物付着個数率が8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下であることがより好ましく、6.0%以下であることがさらに好ましく、5.0%以下であることが特に好ましい。リサイクル材の異物付着個数率の0%に近いほど良好であり、例えば、0.010%以上でもよい。
【0032】
前記リサイクル材の異物残存率及び異物付着個数率は、下記のように測定することができる。
(1)任意に約100gのリサイクル材を採集して試料とし、試料の重量を電子天秤で小数点以下3桁まで正確に測定してW0とする。また、該試料に含まれる粉砕物の総数を測定してN0とする。なお、リサイクル材の重量が100g未満の場合、全てのリサイクル材を試料とする。
(2)試料における個々の粉砕物の外観を観察し、異物が付着している粉砕物を選別する。
(3)選別した異物が付着している粉砕物の個数を測定してN1とする。
(4)異物が付着して粉砕物から異物をヤスリで除去し、異物を除去した後の試料の重量を電子天秤で小数点以下3桁まで正確に測定してW1とする。
(5)リサイクル材の異物残存率を下記式(2)で算出する。
リサイクル材の異物残存率(重量%)=(W0-W1)/W0×100 (2)
(6)リサイクル材の異物付着個数率を下記式(3)で算出する。
リサイクル材の異物付着個数率(%)=N1/N0×100 (3)
【0033】
前記リサイクル材は、リサイクルシートの表面平滑性及び表面美麗性の観点から、異物残存塗膜厚が25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
【0034】
次に、シート成形工程において、前記分離工程を経て得られたリサイクル材を含むリサイクル樹脂組成物を溶融混錬し、成形してリサイクルシートを得る。リサイクル性及びリサイクルシートの物性の観点から、前記リサイクル樹脂組成物は、リサイクル材を1重量%以上60%重量以下、及び前記リサイクル材と同じ組成の未使用(バージン)の熱可塑性樹脂を40重量%以上99重量%以下含むことが好ましく、前記リサイクル材を5重量%以上60%重量以下、及び前記リサイクル材と同じ組成の未使用(バージン)の熱可塑性樹脂を40重量%以上95重量%以下含むことがより好ましく、前記リサイクル材を20重量%以上60%重量以下、及び前記リサイクル材と同じ組成の未使用(バージン)の熱可塑性樹脂を40重量%以上80重量%以下含むことがさらに好ましく、前記リサイクル材を30重量%以上60%重量以下、及び前記リサイクル材と同じ組成の未使用(バージン)の熱可塑性樹脂を40重量%以上70重量%以下含むことが特に好ましい。
【0035】
前記リサイクル樹脂組成物は、必要に応じて、軟化剤、無機充填剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、及び着色剤等の添加剤の一つ又は二つ以上を含んでもよい。前記添加剤の含有量は、例えば、0.1重量%以下でもよい。
【0036】
シート成形は、特に限定されず、カレンダー成形でもよく、押出成形でもよい。リサイクルシートの厚みは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定すればよい。リサイクルシートの厚みは、例えば、300μm以上1500μm以下でもよい。
【0037】
(車両内装材用積層シートの製造方法)
車両内装材用積層シートは、前記車両内装材のリサイクル方法で得られたリサイクルシートを用いること以外は、公知の方法と同様の方法で作製することができる。
架橋樹脂発泡体(架橋樹脂発泡層)の表面上に、カレンダー成形又は押出成形で得られたリサイクルシートを熱ラミネートする方法で積層して熱可塑性樹脂表皮層を形成することで、車両内装材用積層シートを得ることができる。或いは、架橋樹脂発泡体(架橋樹脂発泡層))の表面上に、二液硬化型接着剤等の接着剤を用いてカレンダー成形又は押出成形で得られたリサイクルシートを接合することで、車両内装材用積層シートを得ることができる。
カレンダーロールによって圧延された溶融状態のリサイクル材、或いはリサイクル材とリサイクル材と同じ組成の未使用(バージン)の熱可塑性樹脂を含むリサイクル樹脂組成物を架橋樹脂発泡体の表面にトッピングしてリサイクルシート(熱可塑性樹脂表皮層)を形成する方法(カレンダートッピング法)で、車両内装材用積層シートを得てもよい。或いは、溶融状態のリサイクル材、或いはリサイクル材とリサイクル材と同じ組成の未使用(バージン)の熱可塑性樹脂を含むリサイクル樹脂組成物を、押出機のTダイより架橋樹脂発泡体表面上に押し出し、リサイクルシート(熱可塑性樹脂表皮層)を形成することで、車両内装材用積層シートを得てもよい。
【0038】
前記リサイクルシートは、高温、長時間変形時のゴム弾性に優れ、耐熱性も高い観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性樹脂表皮材由来のリサイクル材を用いたものであることが好ましく、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂表皮材由来のリサイクル材を用いたものであることがさらに好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系樹脂としては、それぞれ、上述したものが挙げられる。
【0039】
前記架橋樹脂発泡体は、特に限定されないが、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であることが好ましい。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂を従来公知の方法で架橋させた後に、発泡させることで得ることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、上述したものを適宜用いることができる。架橋構造を形成する方法は、特に限定されず、例えば、α線、β線、γ線及び電子線等の電離性放射線を照射する方法、紫外線を照射する方法、有機過酸化物及びシラン化合物等の架橋剤を用いる方法等が挙げられる。発泡方法は、特に限定されず、例えば、押出発泡、型内発泡、常圧発泡、化学反応発泡等が挙げられる。発泡剤としては、無機ガス、沸点が-50~120℃である炭化水素またはハロゲン化炭化水素、水、熱分解型発泡剤等を用いることができる。
【0040】
前記架橋樹脂発泡体は、特に限定されないが、例えば、成型性の観点から、架橋度が30%以上65%以下であってもよく、40%以上55%以下でもよい。架橋樹脂発泡体の架橋度は、例えば、有機溶剤を使用した架橋分以外を溶解後に重量の減衰率にて測定することができる。
【0041】
前記架橋樹脂発泡体は、特に限定されないが、例えば、柔軟性やクッション感の観点から、発泡倍率が10倍以上40倍以下であってもよい。架橋樹脂発泡体の発泡倍率は、例えば、発泡前の発泡性樹脂シートと架橋樹脂発泡体シートの比容積(単位cm3/g)を測定し、架橋樹脂発泡体シートの比容積/発泡前の発泡性樹脂シートの比容積にて算出することができる。
【0042】
前記架橋樹脂発泡体は、必要に応じて、発泡助剤、軟化剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、及び無機充填剤等の添加剤を含んでもよい。
【0043】
車両内装材用積層シートは、さらに表面処理剤層を含んでもよい。表面処理剤層を構成する表面処理剤としては、特に限定されず、例えば、水系ウレタン塗料、溶剤系ウレタン塗料等が挙げられる。熱可塑性樹脂表皮層がオレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上を含む場合は、耐傷性、耐摩耗性等の観点から、表面処理剤層を含むことが好ましい。前記表面処理剤層は、熱可塑性樹脂表皮材の架橋樹脂発泡体が配置されている第1表面の反対側の第2表面に配置され、プライマーを介して熱可塑性樹脂表皮材と接合してもよい。これにより、熱可塑性樹脂表皮材の耐傷性や耐摩耗性が向上する。
【0044】
車両内装材用積層シートは、特に限定されないが、例えば、自動車等の車両のインストルメントパネル、ドアトリム、トランクトリム、座席シート、ピラーカバー、天井材、リアトレイ、コンソールボックス、エアバッグカバー、アームレスト、ヘッドレスト、メーターカバー、クラッシュパッド等の車両内装材として好適に用いることができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(積層シートの廃材)
表皮材:動的架橋タイプのオレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学社製ミラストマー(登録商標)「8030NHS」)40重量%、重合タイプのオレフィン系熱可塑性エラストマー(株式会社プライムポリマー製「R-110E」)50重量%、ランダムポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製「B-221WA」)10質量%、樹脂合計100重量部に対して、添加剤として滑剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を合計0.65重量部、厚み500μm
架橋樹脂発泡体:架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体(東レ社製「JP17―15025」)、架橋度:43%、発泡倍率:15倍、厚み2.5mm)
表面処理剤層:ウレタン系塗料(大日精化工業社製「レザロイドLU-855SP」)、厚み6μm
積層シートにおいて、表皮材の一方の表面に架橋樹脂発泡体が積層され、表皮材と直接接合しており、表皮材の他方の表面に1液型プライマー(大日精化工業社製「レザロイドLU-236」)を介して表面処理剤層が積層され接合している。該積層シートを自動車ドアトリムとしてトリミングし、残った廃材を回収した。
【0047】
上記表皮材のTminを、示差走査熱量計(島津製作所製「DSC-60Plus」)にて、表皮材8gを10℃/分の昇温速度で40℃から200℃まで昇温(1回目昇温)して融解させ、その後、10℃/分の降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/分の昇温速度で40℃から200℃まで昇温(2回目昇温)することで得られるDSC曲線の全中、2回目昇温で得られるDSC曲線における最小の融解ピークの値を求めることで確認したところ、110.6℃であった。
【0048】
(実施例1)
積層シートの廃材を刃物にて約5cm角(約25cm2)にカットし、赤外線ヒーターにて140℃になるように加熱し、140℃で5秒間放置した後、衝撃粉砕機(槇野産業社製、スリングハンマークラッシャー、型式「HC-20」)を用い、下記表1に示す回転数及びスクリーンの目開きサイズの条件下で衝撃粉砕を行った。衝撃粉砕機において、スクリーンの目開きの形状は円形であった。衝撃粉砕機の回転数は電流値で判断した。
その後、ホーライ社製のDF型ファン(DF-1:0.75KW、2P、風量:6.5m3/min、静風圧:2MPa)でホーライ社製のASセパレーター(プリエアーセパレーター、メインセパレーター、振動スクリーン)に粉砕物を送り込み風速10~15m/秒でリサイクル材と、架橋樹脂発泡体及び表面処理剤層を風力分離し、リサイクル材を回収した。ASセパレーターにおいて、振動スクリーンの目開きの形状は円形であり、サイズ(直径)は30mmであった。
リサイクル材50gをテストロールにて180℃で5分間溶融混錬し、厚みが約500μmのリサイクルシートを作製した。
【0049】
(実施例2~4)
積層シートの廃材のカットサイズ、加熱温度及び衝撃粉砕の条件を下記表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして、リサイクル材を回収し、リサイクルシートを作製した。
【0050】
(実施例5~7)
尾上機器社製の衝撃粉砕機(スリングハンマークラッシャー、型式「WALD―15」)を用い、積層シートの廃材のカットサイズ、加熱及び衝撃粉砕の条件を下記表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして、リサイクル材を回収し、リサイクルシートを作製した。
【0051】
(比較例1)
カットした積層シートの廃材を加熱せずに衝撃粉砕機で粉砕した以外は、実施例1と同様にして、リサイクル材を回収し、リサイクルシートを作製した。
【0052】
(比較例2)
積層シートの廃材を約15cm角(約225cm2)にカットし、カットした積層シートの廃材を加熱せず、衝撃粉砕の条件を下記表2に示すとおりにして粉砕した以外は、実施例1と同様にして、リサイクル材を回収し、リサイクルシートを作製した。
【0053】
(比較例3~5)
加熱温度を下記表2に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして、リサイクル材を回収し、リサイクルシートを作製した。
【0054】
(比較例6、7)
積層シートの廃材のカットサイズ、加熱温度及び衝撃粉砕の条件を下記表2に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして、リサイクル材を回収し、リサイクルシートを作製した。
【0055】
(比較例8)
積層シートの廃材のカットサイズ及び衝撃粉砕の条件を下記表2に示すとおりにし、風力分離を行わない以外は、実施例1と同様にして、リサイクル材を回収し、リサイクルシートを作製した。
リサイクル材には架橋樹脂発泡体の粉砕物が混入していた。
【0056】
(比較例9)
積層シートの廃材を約15cm角(約225cm2)にカットし、赤外線ヒーターにて160℃になるように加熱し、160℃で5秒間放置した後、剪断粉砕機(ホーライ社製「BOー480」)を用い、下記表1に示す回転数及びスクリーンの目開きサイズの条件下で剪断粉砕を行った。剪断粉砕機において、スクリーンの目開きの形状は円形であった。剪断粉砕機の回転数は電流値で判断した。
その後、実施例1と同様にして、リサイクル材と、架橋樹脂発泡体及び表面処理剤層を風力分離し、リサイクル材を回収し、リサイクルシートを作製した。
【0057】
実施例1~7、比較例1~7、9において、下記数式1で示される粉砕機の回転数R(rpm)と、スクリーンの目開きS(m)の関係係数を算出し、その結果を下記表1及び2に示した。
【数3】
【0058】
実施例1~7、比較例1~7、9において、リサイクル材の異物残存率及び異物付着個数率は、下記のように測定した。また、リサイクル材における異物残存塗膜厚を下記にように観察評価した。結果を下記表1及び2に示した。また、リサイクルシートの外観を下記のように観察評価し、結果を下記表1及び2に示した。
【0059】
(異物残存率及び異物付着個数率)
(1)任意に約100gのリサイクル材を採集して試料とし、試料の重量を電子天秤で小数点以下3桁まで正確に測定してW0とした。また、該試料に含まれる粉砕物の総数を測定してN0とした。
(2)試料における個々の粉砕物の外観を観察し、異物が付着している粉砕物を選別した。
(3)選別した異物が付着している粉砕物の個数を測定してN1とした。
(4)異物が付着して粉砕物から異物をヤスリで除去し、異物を除去した後の試料の重量を電子天秤で小数点以下3桁まで正確に測定してW1とした。
(5)リサイクル材の異物残存率を下記数式(2)で算出した。
リサイクル材の異物残存率(重量%)=(W0-W1)/W0×100 (2)
(6)リサイクル材の異物付着個数率を下記数式(3)で算出した。
リサイクル材の異物付着個数率(%)=N1/N0×100 (3)
【0060】
(異物残存塗膜厚)
異物残存率及び異物付着個数率の測定時に選別した異物が付着している粉砕物を、異物に対して垂直に鋭利な刃物で切断し、異物が付着している断面をキーエンス(株)社製ワンショットVR-5000にて
300倍に拡大して観察し(検出限度:0.01μm)、リサイクル材の表面に付着した異物を検出し機器内にあるスケール計測システムを使用して、異物残存塗膜厚を確認した。
【0061】
(リサイクルシートの外観)
リサイクルシートの表面を拡大鏡で20倍に拡大して観察し、以下の5段階の基準にて外観を評価した。下記において、サイズは、凸部及び/又は凹部のシート表面における最大長を意味する。
1:シート表面に凹凸がほとんどなく良好
2:シート表面に小さな凹凸(サイズ1mm以下)が疎らにある
3:シート表面にはっきりとした凹凸(サイズ1mm超え)が少量あり、外観がやや悪い
4:シート表面のはっきりとした凹凸(サイズ1mm超え)が多数あり、外観が悪い
5:溶融混錬したリサイクル材がテストロールに貼り付き、シートを形成不可
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1から分かるように、実施例では、熱可塑性樹脂表皮材及び架橋樹脂発泡体を含む積層シートから架橋発泡樹脂成分を効果的に除去し、熱可塑性樹脂成分をリサイクル材として効率的に回収し、車両内装材用積層シートの熱可塑性樹脂表皮材に再利用することができる。
一方、表2から分かるように、積層シートの廃材を加熱せず、或いは加熱温度が低い比較例1~5では、積層シートから架橋発泡樹脂成分を含む異物を効果的に除去することができず、異物残存率及び/又は異物付着個数率が高かった。また、関係係数が低い比較例6或いは関係係数が高い比較例7の場合も、積層シートから架橋発泡樹脂成分を含む異物を効果的に除去することができず、異物残存率及び/又は異物付着個数率が高かった。風力分離を行っていない比較例8の場合、架橋発泡樹脂成分を除去することができなかった。衝撃粉砕ではなく剪断粉砕を行った比較例9の場合、積層シートから架橋発泡樹脂成分を含む異物を効果的に除去することができず、異物残存率及び異物付着個数率が高かった。