IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝電子管デバイス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-放射線検出器 図1
  • 特許-放射線検出器 図2
  • 特許-放射線検出器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/18 20060101AFI20241204BHJP
   H01J 47/06 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G01T1/18 A
H01J47/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021096663
(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公開番号】P2022188544
(43)【公開日】2022-12-21
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石澤 和哉
(72)【発明者】
【氏名】疋田 憲之
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-260121(JP,A)
【文献】特開2017-058171(JP,A)
【文献】特開平05-297199(JP,A)
【文献】実開昭57-108171(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/18
H01J 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内に配置された陽極と、
前記容器内に封入された電離ガスと、
前記容器に設けられた放射線入射部材と、を備え、
前記容器は、
放射線が通過する開口部と、
前記開口部の周辺域に設けられ、前記放射線入射部材の周辺部が接合される接合面と、
前記開口部と前記接合面との間に設けられた段差部と、
前記段差部によって前記開口部と前記接合面との間に設けられ、前記開口部の外形よりも大きい空間部と、を有する
ことを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
容器と、
前記容器内に配置された陽極と、
前記容器内に封入された電離ガスと、
前記容器に設けられた放射線入射部材と、を備え、
前記容器は、
放射線が通過する開口部と、
前記開口部の周辺域に設けられ、前記放射線入射部材の周辺部が接合材によって接合される接合面と、
前記開口部と前記接合面との間に設けられた段差部と、
前記段差部によって前記開口部と前記接合面との間に設けられ、前記接合面と前記放射線入射部材との間から前記開口部の方向へ向けてはみ出す前記接合材を受け入れる接合材受部と、を有する
ことを特徴とする放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線を検出する放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線検出器の種類に、蛍光エックス線を測定する比例計数管がある。この比例計数管は、容器内に陽極が配置されるとともに電離ガスが封入されている。容器には、放射線入射窓として開口部が設けられ、この開口部を密封するように放射線入射部材が接合されている。
【0003】
放射線入射部材は、容器の開口部の周辺域に接着剤またはろう材により接合されている。接着剤を使用する場合は、容器と放射線入射部材との気密性を維持するために、接着剤の使用量を多くする必要がある。また、ろう材については、溶融した後のろう流れを制御することが難しい。このことから、接着剤またはろう材のいずれも、容器の接合面と放射線入射部材との間から開口部内にはみ出してしまうことがある。
【0004】
接着剤またはろう材が開口部内にはみ出した場合、接着剤またはろう材により容器内に入射する蛍光エックス線を遮蔽してしまうため、放射線検出器の検出効率にばらつきが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-290794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、検出効率が安定した放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の放射線検出器は、容器と、容器内に配置された陽極と、容器内に封入された電離ガスと、容器に設けられた放射線入射部材と、を備える。容器は、放射線が通過する開口部と、開口部の周辺域に設けられ、放射線入射部材の周辺部が接合される接合面と、開口部と接合面との間に設けられた段差部と、段差部によって開口部と接合面との間に設けられ、開口部の外形よりも大きい空間部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態を示す放射線検出器の断面図である。
図2】同上放射線検出器の側面図である。
図3】比較例の放射線検出器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1および図2に、本実施形態の放射線検出器10を示す。放射線検出器10は、蛍光エックス線などの放射線を測定する比例計数管である。
【0011】
放射線検出器10は、密封容器である容器11を備えている。容器11は、例えばステンレス製で、直径が25.4mmから50.8mmの筒状に設けられている。容器11は、円筒状の容器本体12と、この容器本体12の両端面を密封する端面部13,14とを有している。一方の端面部13には、容器11内に放射線を入射するための放射線入射窓15が設けられている。
【0012】
容器11の軸心には、線径が10μmから50μmの陽極16が配置されている。陽極16の一端は、端面部13に取り付けられた支持部材17に絶縁部材18を介して支持され、他端は電極19に連結され、この電極19が絶縁部材20を介して他方の端面部14に支持されているとともに容器11の外部に突出されている。支持部材17および絶縁部材18は、放射線入射窓15に対向する領域から外れた位置に配置されている。
【0013】
容器11内には、放射線を吸収し、電離する例えばネオン、クリプトン、キセノンなどの希ガスを主成分とした電離ガス21が封入されている。
【0014】
また、容器11の放射線入射窓15は、端面部13を貫通する開口部22を有し、この開口部22が放射線入射部材23によって密封されている。
【0015】
開口部22は、長孔状に形成されている。端面部13の内面側において、開口部22の周辺域には、放射線入射部材23の周辺部を接合する接合面24が設けられている。さらに、端面部13の内面側において、開口部22の周辺域には、開口部22と接合面24との間に段差部25が設けられ、この段差部25によって開口部22と接合面24との間に空間部26が設けられている。空間部26の外形は、開口部22の外形よりも大きく、接合面24よりも小さい関係にある。これら接合面24、段差部25および空間部26は、開口部22の形状に近似した長溝状に形成されている。
【0016】
放射線入射部材23は、放射線の透過率に優れた例えばベリリウムなどの材料によって形成されている。放射線入射部材23は、開口部22の形状に近似した長円形の平板状に形成されている。放射線入射部材23は、周辺部が接着剤またはろう材などの接合材27により接合面24に接合され、開口部22を密封している。
【0017】
そして、放射線検出器10では、放射線が開口部22から放射線入射部材23を透過して容器11内に入射し、容器11内の電離ガス21と相互作用すると、電離ガス21が電離し、電子とイオンの対が生成される。この際、電子とイオンの対の数は、入射した放射線のエネルギーに応じた数となる。ここで生成された電子が、陽極16と陰極である容器11との間に印加した例えば2000V前後の電位差によって陽極16に引かれ、陽極16付近の強い電界により増幅され、これが電気パルス信号として電極19から外部に出力される。この電気パルス信号の波高は入射した放射線エネルギーに依存するため、電気パルス信号の波高値から、入射した放射線のエネルギーを知ることができる。
【0018】
ここで、図3に比較例の放射線検出器10の構成を示し、この放射線検出器10では、開口部22と接合面24との間に空間部26が設けられておらず、開口部22と接合面24とが直接的に隣り合う配置となる。
【0019】
放射線入射部材23は、容器11の接合面24に接合材27により接合されるが、接合材27が接着剤を使用する場合、容器11と放射線入射部材23との気密性を維持するために、接着剤の使用量を多くする必要があり、また、ろう材を使用する場合、溶融した後のろう流れを制御することが難しい。このことから、容器11の接合面24と放射線入射部材23との間から接合材27がはみ出してしまうことがある。接合材27のはみ出しは、放射線入射部材23の外周側へのはみ出しと、開口部22へのはみ出しとがある。
【0020】
接合材27が開口部22内にはみ出した場合、接合材27により容器11内に入射する放射線を遮蔽してしまうため、放射線検出器10の検出効率にばらつきが生じる。この場合、30keV以下の低エネルギーの放射線を測定する場合、放射線検出器10の検出効率のばらつきが顕著となる。
【0021】
それに対して、図1に示す本実施形態の放射線検出器10では、開口部22と接合面24との間に空間部26が設けられているため、容器11の接合面24と放射線入射部材23との間から開口部22の方向へ向けて接合材27がはみ出したとしても、その接合材27を空間部26内に受け入れて開口部22にはみ出すのを防止できる。そのため、検出効率が安定した放射線検出器10を提供できる。
【0022】
しかも、空間部26の存在により放射線入射部材23の応力を逃がすことができる。
【0023】
なお、開口部22と接合面24との間には、開口部22を設けることに限らず、例えば、開口部22の周辺域に沿って接合面24に溝を設けてもよい。この場合、溝よりも外側において接合面24と放射線入射部材23の周辺部とを接合材27で接合することにより、接合面24と放射線入射部材23との間から開口部22の方向へ向けてはみ出す接合材27を溝に受け入れ、開口部22内への接合材27のはみ出しを防止できる。
【0024】
したがって、空間部26や溝を含めて、接合面24と放射線入射部材23との間から開口部22の方向へ向けてはみ出す接合材27を受け入れる接合材受部28が設けられていればよい。また、接合材受部28は、放射線入射部材23に設けられていてもよい。
【0025】
また、容器11の容器本体12の外周面に放射線入射窓15が設けられる場合にも、上述した放射線入射窓15の構成を適用してもよい。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
10 放射線検出器
11 容器
16 陽極
21 電離ガス
22 開口部
23 放射線入射部材
24 接合面
25 段差部
26 空間部
27 接合材
28 接合材受部
図1
図2
図3