(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/475 20060101AFI20241204BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20241204BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20241204BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61F13/475 110
A61F13/47 100
A61F13/539
A61F13/533
(21)【出願番号】P 2021132989
(22)【出願日】2021-08-17
【審査請求日】2024-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彩
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茜
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153389(JP,A)
【文献】特開2000-288012(JP,A)
【文献】特開平10-52457(JP,A)
【文献】特開平8-663(JP,A)
【文献】特開2019-205549(JP,A)
【文献】特開2014-147424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/475
A61F 13/47
A61F 13/539
A61F 13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に積層された状態で接合された内面側シートと吸収体と外面側シートと、幅方向の両端部において前記外面側シートに接合されて長手方向に延びた帯状の立体ギャザーと、を備え、
前記内面側シートは、前記立体ギャザーの、前記外面側シートに接合された端部間の幅よりも広い幅に形成され、
前記内面側シートは、前記幅方向の両端縁から所定の長さの範囲を前記内面側シートのおもて面側に折り返した折り返し部を有し、
前記折り返し部のうち、着用者の肛門に対向する肛門当接部に対応する前記長手方向における範囲及び前記肛門当接部の近傍に対応する前記長手方向における範囲のうち少なくとも一方の範囲は、前記内面側シートに接合され、
前記折り返し部のうち、前記内面側シートに接合された範囲を除く他の前記長手方向における範囲の少なくとも一部は、前記立体ギャザーに重ねられた状態で、前記両端縁が前記立体ギャザーに接合されて、前記折り返し部と前記立体ギャザーとにより、前記長手方向に延びた筒状のポケットを形成している吸収性物品。
【請求項2】
前記折り返し部のうち前記内面側シートに接合された範囲は、前記長手方向における前記肛門当接部を含んで前記肛門当接部を跨いだ範囲である請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記内面側シートのうち、前記肛門当接部から、前記折り返し部の前記内面側シートに接合された範囲までの部分に、軟便を誘導する誘導部が形成されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記誘導部は、スリット又はエンボスで凹ませた部分である請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記折り返し部のうち、前記ポケットを形成する範囲は、前記幅方向に拡張する蛇腹状に形成されている請求項1から4のうちいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ポケットに対応する前記長手方向における範囲における前記吸収体を、他の部分における前記吸収体よりも、前記幅方向における長さを短く形成した請求項1から5のうちいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつの内面側に配置される、別体のインナーパッドが知られている。このインナーパッドの一例として軟便パッドがある。軟便パッドは、着用者の肌に触れる内面に配置されたトップシートに多数の開孔が形成されていて、軟便を、開口を通過させることでセカンドシート等の下層に迅速に移行させることができる。
【0003】
しかし、軟便量が多い場合や固形分が多い場合は、セカンドシート以下への軟便の移行が、想定されたものよりも遅くなる可能性がある。このような場合は、軟便がトップシートの表面上で広がって着用者の肌を広い範囲で汚染したり、立体ギャザーの立ち上がり基部に溜まった軟便が、着用者が側臥位になって立体ギャザーが倒れた際に、外部に漏れたりする恐れがある。
【0004】
幅方向の端部から軟便等が漏れるいわゆる横漏れを防止する吸収性物品として、例えば、立体ギャザーの基部に、軟便等を収容するポケットを形成したものや、中空部を有するループ状の防漏壁に開孔を形成したものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-061760号公報
【文献】特開2012-095790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された吸収性物品は、立体ギャザーが倒れると、立体ギャザーの基部に溜まった軟便が横漏れする恐れがある。また、特許文献2に記載された吸収性物品は、開孔が目詰まりして迅速な吸収を妨げる恐れがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、立体ギャザーの基部に溜まった軟便が横漏れするのを防止又は抑制するとともに、軟便を迅速に吸収することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、厚さ方向に積層された状態で接合された内面側シートと吸収体と外面側シートと、幅方向の両端部において前記外面側シートに接合されて長手方向に延びた帯状の立体ギャザーと、を備え、前記内面側シートは、前記立体ギャザーの、前記外面側シートに接合された端部間の幅よりも広い幅に形成され、前記内面側シートは、前記幅方向の両端縁から所定の長さの範囲を前記内面側シートのおもて面側に折り返した折り返し部を有し、前記折り返し部のうち、着用者の肛門に対向する肛門当接部に対応する前記長手方向における範囲及び前記肛門当接部の近傍に対応する前記長手方向における範囲のうち少なくとも一方の範囲は、前記内面側シートに接合され、前記折り返し部のうち、前記内面側シートに接合された範囲を除く他の前記長手方向における範囲の少なくとも一部は、前記立体ギャザーに重ねられた状態で、前記両端縁が前記立体ギャザーに接合されて、前記折り返し部と前記立体ギャザーとにより、前記長手方向に延びた筒状のポケットを形成している吸収性物品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る吸収性物品によれば、立体ギャザーの基部に溜まった軟便が横漏れするのを防止又は抑制するとともに、軟便を迅速に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】軟便パッドを展開した状態でトップシートの側(内側)から見た平面図である。
【
図2】軟便パッドの
図1におけるA-A線に沿った面による断面図である。
【
図3】軟便パッドの
図1におけるB-B線に沿った面による断面図である。
【
図4】軟便パッドの
図1におけるC-C線に沿った面による断面図である。
【
図5】軟便パッドが着用者に着用されて長手方向Lが湾曲し、立体ギャザーが立ち上がった状態を示す斜視図である。
【
図6】肛門当接部からポケットへの入口の間に、軟便を誘導する誘導部を形成した軟便パッドを示す
図1相当の平面図である。
【
図7】折り返し部のうち立体ギャザーに接合されてポケットを形成する範囲が蛇腹状に形成された例を示す
図2~4相当の部分断面図である。
【
図8】立体ギャザーの先端部分自体が、
図2~4に示した軟便パッドの覆い部分を構成し、先端部分が幅方向Wの外側に折り返されていない軟便パッドを示す
図1相当の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる吸収性物品の一実施形態である軟便パッドについて、図面を用いて説明する。
【0012】
図1は軟便パッド100を展開した状態でトップシート10の側(内側)から見た平面図、
図2は軟便パッド100の
図1におけるA-A線に沿った面による断面図、
図3は軟便パッド100の
図1におけるB-B線に沿った面による断面図、
図4は軟便パッド100の
図1におけるC-C線に沿った面による断面図である。
図1に示した軟便パッド100は本発明に係る吸収性物品の一実施形態である。
【0013】
<構成>
図示の軟便パッド100は、使い捨ておむつの内側に重ねて配置されるインナーパッドであり、特に、着用者の軟便を吸収するのに適したものである。軟便パッド100は、
図1に示す長手方向Lの後側が着用者の背側に対応し、長手方向Lの前側が着用者の腹側に対応して、着用者に装着される。
【0014】
軟便パッド100は、使い捨ておむつに重ねて着用者に着用された状態で、長手方向Lに沿って、臀部、股部及び下腹部を覆う。なお、軟便パッド100の長手方向Lに直交する方向を、以下、幅方向Wという。
【0015】
軟便パッド100は、
図2,3,4に示すように、厚さ方向Dにおいて、トップシート10と、セカンドシート20と、吸収体30と、バックシート40と、外装シート50が、この順序で積層して形成されている。トップシート10、セカンドシート20、吸収体30、バックシート40及び外装シート50は、積層された厚さ方向Dにおいて隣接した各シート10,20,40,50や吸収体30と略全面がホットメルトなどで接合されている。
【0016】
トップシート10のおもて面10aは、着用者の肌に触れる面である。トップシート10及びセカンドシート20は、本発明に係る吸収性物品における内面側シートの一例である。内面側シートにおける「内面側」とは、着用者の肌に相対的に近い面側であり、後述する外面側シートにおける「外面側」とは、着用者の肌に相対的に遠い面側である。
【0017】
セカンドシート20を備えない吸収性物品においては、トップシート10が内面側シートに該当する。トップシート10とセカンドシート20は、いずれも液透過性であり、バックシート40は液不透過性である。
【0018】
吸収体30は、水分を吸着する吸収部材を、液透過性の包装体で包んで形成されていて、所定量の水分を吸収することができる程度の厚さを有している。
【0019】
バックシート40及び外装シート50は、本発明に係る吸収性物品における外面側シートの一例である。外装シート50を備えない吸収性物品においては、バックシート40が外面側シートに該当する。バックシート40と外装シート50のうち少なくとも一方は液不透過性である。本実施形態においてはバックシート40が液不透過性である。
【0020】
また、軟便パッド100は、
図1に示すように、幅方向Wの両側部において、長手方向Lに延びた帯状の立体ギャザー60,60を備えている。立体ギャザー60は、液不透過性である。
【0021】
立体ギャザー60は、
図3に示すように、幅方向Wの側端部63が外装シート50に接合されている。なお、軟便パッド100が外装シート50を備えないものであるときは、立体ギャザー60の側端部63はバックシート40に接合されている。
【0022】
立体ギャザー60は、
図2~4に示すように、トップシート10の幅方向Wの両側部をおもて面10a側から覆って配置されている。立体ギャザー60の、トップシート10を覆っている部分のうち先端部分61は、幅方向Wの外側に折り返されている。なお、立体ギャザー60は、先端部分61が幅方向Wの外側に折り返されていなくてもよい。この場合、覆い部分62が先端部分61を兼ねた構造となる。
【0023】
立体ギャザー60の先端部分61には、長手方向Lに沿って、伸ばされた状態の糸ゴムが接合されている。一方、立体ギャザー60の、トップシート10を覆っている部分のうち先端部分61を除いた覆い部分62には、糸ゴムは設けられていない。なお、立体ギャザー60は、先端部分61に加えて、覆い部分62にも糸ゴムを設けたものであってもよいし、先端部分61には糸ゴムを設けずに、覆い部分62に糸ゴムを設けたものであってもよい。
【0024】
立体ギャザー60は、
図1におけるA-A線で示す、軟便パッド100の長手方向Lの前端部近傍や後端部近傍においては、
図2の断面で示すように、覆い部分62がトップシート10のおもて面10aに接合され、また、先端部分61が覆い部分62に接合されている。
【0025】
一方、立体ギャザー60は、
図1におけるB-B線やC-C線で示す、軟便パッド100の長手方向Lの前端部近傍よりも中心側の領域や後端部近傍よりも中心側の領域においては、
図3,4の断面で示すように、覆い部分62がトップシート10のおもて面10aに接合されず、かつ、先端部分61も覆い部分62に接合されていない。
【0026】
なお、
図1におけるC-C線の長手方向Lにおける位置は、B-B線の位置よりも、長手方向Lの中心側の領域であり、トップシート10のおもて面10aにおいて、着用者の肛門が対向する肛門当接部15に対応した位置である。
【0027】
図5は軟便パッド100が着用者に着用されて長手方向Lが湾曲し、立体ギャザー60が立ち上がった状態を示す斜視図である。軟便パッド100は、着用者が着用することで長手方向Lが湾曲した状態では、糸ゴムの収縮しようとする弾性力によって、トップシート10のおもて面10aに接合されていない範囲では、
図5に示すように、覆い部分62及び先端部分61が湾曲したトップシート10から離れて立ち上がった姿勢となる。これにより立ち上がった姿勢の立体ギャザー60は、軟便パッド100からの、いわゆる横漏れを防止又は抑制する。
【0028】
ここで、トップシート10及びセカンドシート20は、立体ギャザー60の、外装シート50に接合された両側端部63間の幅W1(
図2参照)よりも広い幅に形成されている。そして、トップシート10及びセカンドシート20は、幅方向Wの両端縁12,22からそれぞれ所定の長さW2の範囲をトップシート10のおもて面10a側に折り返した折り返し部11,21を有している。
【0029】
折り返し部11,21のうち、肛門当接部15に対応する長手方向Lにおける範囲とその近傍の長手方向Lにおける範囲を含む所定の範囲L1(
図1,5参照)は、
図4に示すように、トップシート10のおもて面10aに接合されている。所定の範囲L1は、例えば、30~90[mm]であるが、40~60[mm]がより好ましい。
【0030】
一方、折り返し部11,21のうち、上記所定の範囲L1を除いた長手方向Lにおける他の範囲は、
図3に示すように、立体ギャザー60に重ねられた状態で、両端縁12,22が立体ギャザー60の覆い部分62に、例えばホットメルトによって接合されている。
【0031】
これにより、軟便パッド100は、長手方向Lの所定の範囲L1を除いた範囲(所定の範囲L1よりも長手方向Lの前側の範囲と後側の範囲)において、立体ギャザー60が立ち上がった状態で、折り返し部11,21と立体ギャザー60とによって長手方向Lに延びた筒状のポケットPを形成している。
【0032】
そして、軟便パッド100は、所定の範囲L1において、
図4に示すように、折り返し部11,21が、立体ギャザー60から離れてトップシート10に接合されていることで、所定の範囲L1は上述した2つのポケットPの内部に臨んだ状態となっている。つまり、所定の範囲L1は、ポケットPへの入口Eを形成する。
【0033】
<作用>
以上の構成により、本実施形態の軟便パッド100は、トップシート10の肛門当接部15に排泄された軟便の固形分は、トップシート10に捕捉される。一方、軟便の液状分は、液透過性のトップシート10を浸潤してセカンドシート20に移行し、さらに、液透過性のセカンドシート20から吸収体30に移行し、吸収体30の液透過性の包装体を通じて吸収体30の吸収部材に吸着される。
【0034】
吸収体30の外側に積層されたバックシート40は液不透過性であるため、吸収体30に移行した液状分が、吸収体30に移行してきた範囲の吸収部材で吸着しきれなかった場合にも、バックシート40で遮蔽され、外装シート50に浸潤することはない。したがって、軟便パッド100は、外装シート50の外面側に液状分が漏れることはない。
【0035】
吸収体30に移行した液状分のうち、吸収体30に移行してきた範囲の吸収部材で吸着しきれなかったものは、バックシート40で遮蔽されることにより、吸収体30に移行してきた範囲に隣接する近傍範囲に広がって、近傍範囲の吸収部材によって吸着される。
【0036】
ここで、トップシート10上に排出された軟便の量が多い場合などでは、トップシート10のおもて面10a上を、軟便が長手方向Lや幅方向Wに広がっていく。幅方向Wに広がった軟便は、長手方向Lにおける所定の範囲L1において、
図4の矢印で示すように、トップシート10のおもて面10aに接合された折り返し部11,21を乗り越えて、立体ギャザー60の根元(基部)に到達する。
【0037】
立体ギャザー60は液不透過性であるため、軟便は立体ギャザー60を浸潤することによって軟便パッド100から横漏れすることは無く、立体ギャザー60に沿って、長手方向Lの前側又は後側に広がる。
【0038】
そして、立体ギャザー60と折り返し部11,21とによって形成された前側の筒状のポケットPや後側の筒状のポケットPの内部に収容される。ポケットPの内部には、吸収体30が臨んでいるため、ポケットPに収容された軟便の液状分は吸収体30の包装体を浸潤して、吸収体30の吸収部材に吸着される。
【0039】
したがって、本実施形態の軟便パッド100は、立体ギャザー60に到達した軟便をポケットPに収容して吸収体30に迅速に吸着させることができるため、軟便の量が多い場合にも、軟便が立体ギャザー60の先端部分61を乗り越えて横漏れするのを防止し、又はポケットPが形成されていない軟便パッドに比べて軟便が立体ギャザー60の先端部分61を乗り越えるのを抑制することができる。
【0040】
なお、軟便パッド100は、所定の範囲L1が30[mm]より短いと、軟便を入口Eに適切に誘導しにくくなり、所定の範囲が90[mm]より長いと、ポケットPの長さが短くなって軟便の収容量が少なくなるため、所定の範囲L1は30~90[mm]に設定されているが、本発明に係る吸収性物品において、所定の範囲の長さは。必ずしも30~90[mm]の範囲に限定されない。
【0041】
ポケットPは、内部に軟便を収容するため、ポケットPに収容された軟便の液状分がポケットPの外部に浸潤しないことが好ましい。したがって、ポケットPを形成するトップシート10の折り返し部11及びセカンドシート20の折り返し部21のうち少なくとも一方は、液不透過性に形成することが好ましい。
【0042】
この場合、液透過性のトップシート10の一部分(折り返し部11)や液透過性のセカンドシート20の一部分(折り返し部21)だけに、液不透過性のコーティングを施したり、撥水剤を塗布したりして液不透過性に形成するのがコスト面で好ましい。
【0043】
本実施形態の軟便パッド100は、折り返し部11,21がトップシート10に接合されてポケットPへの入口Eを形成する所定の範囲L1が、長手方向Lにおける肛門当接部15を含んで肛門当接部15を跨いだ前側及び後側の近傍の範囲であるため、軟便が肛門当接部15よりも長手方向Lの前側や後側のいずれに偏りながら幅方向Wに移行した場合でも、ポケットPの入口Eに軟便を適切に誘導することができる。
【0044】
なお、本発明に係る吸収性物品は、折り返し部11,21がトップシート10に接合されてポケットPへの入口Eを形成する所定の範囲L1が、肛門当接部15を含んで肛門当接部15を跨いだ長手方向Lの前側及び後側の近傍の範囲に限定されるものではなく、所定の範囲L1が、肛門当接部15の長手方向Lの範囲を含まずに、肛門当接部15よりも長手方向Lの前側の近傍の範囲であってもよいし、肛門当接部15よりも長手方向Lの後側の近傍の範囲であってもよい。
【0045】
所定の範囲L1が肛門当接部15よりも長手方向Lの前側に偏った範囲(肛門当接部15の範囲を含んでもよいし、含まなくてもよい)である軟便パッド100は、主に座位や立位の姿勢の時間が長い着用者に適し、所定の範囲L1が肛門当接部15よりも長手方向Lの後側に偏った範囲(肛門当接部15の範囲を含んでもよいし、含まなくてもよい)である軟便パッド100は、主に仰臥位の姿勢の時間が長い着用者に適している。
【0046】
図6は肛門当接部15からポケットPへの入口Eの間に、軟便を誘導する誘導部16を形成した軟便パッド100を示す
図1相当の平面図である。
【0047】
本実施形態の軟便パッド100は、
図6に示すように、トップシート10のうち、肛門当接部15から、ポケットPへの入口Eの間に、軟便を誘導する誘導部16を形成することが好ましい。誘導部16は、例えば、スリットやエンボスでトップシート10を厚さ方向Dに凹ませた部分により形成することができる。
【0048】
なお、誘導部16は、軟便を集まりやすくする目的で、親水性であることが好ましい。親水性の誘導部16は、肛門当接部15の近傍に軟便を、誘導部16に集め易くなるため、誘導部16を通じてポケットPの入口Eに軟便を、より誘導させ易くすることができる。
【0049】
図7は折り返し部11,21のうち立体ギャザー60に接合されてポケットPを形成する範囲が蛇腹状に形成された例を示す
図2~4相当の部分断面図である。本実施形態の軟便パッド100は、
図7に示すように、トップシート10の折り返し部11及びセカンドシート20の折り返し部21のうち、立体ギャザー60に接合されてポケットPを形成する範囲は、幅方向Wに拡張する蛇腹状に形成されていることが好ましい。
【0050】
このように、ポケットPを形成する折り返し部11,21が蛇腹状に形成されていることで、折り返し部11,21の蛇腹が、
図7の上段に示した畳まれた状態から同図の下段に示す展開した状態になることで、ポケットPの容量を拡張することができ、より多くの軟便をポケットPの内部に収容することができる。
【0051】
また、ポケットPに軟便が収容された状態であっても、折り返し部11,21の蛇腹が畳まれた状態のときは、着用者の姿勢の変化によってポケットPに着用者の体圧が作用しても、ポケットPは折り返し部11,21の蛇腹が展開することにより、ポケットPの内圧が高くなるのを防止又は抑制することができる。したがって、着用者の体圧によってポケットPの内圧が高くなってポケットPが破損するのを防止又は抑制することができる。
【0052】
なお、ポケットPの容量を拡張する手段としては、上述した折り返し部11,21を蛇腹状に形成する手段の他に、例えば、ポケットPに対応する長手方向Lにおける範囲では、他の部分よりも、吸収体30を幅方向Wに短く形成してもよい。このように形成された軟便パッド100は、吸収体30の幅が短くなった分だけ、ポケットPの容量を拡張することができる。
【0053】
図8は立体ギャザー60の先端部分61自体が、
図2~4に示した軟便パッド100の覆い部分62を構成し、先端部分61が幅方向Wの外側に折り返されていない軟便パッド200を示す
図1相当の平面図である。
【0054】
上述した実施形態の軟便パッド100は、立体ギャザー60の先端部分61が覆い部分62に対して幅方向Wの外側に向けて折り返された形態であるが、本発明に係る吸収性物品は、この形態のものに限定されるものではなく、例えば、
図8に示すように、立体ギャザー60が、先端部分61が幅方向Wの外側に折り返されずに覆い部分62の一部を構成している軟便パッド200に適用することもできる。
【0055】
なお、軟便パッド100としては、トップシート10に、軟便の固形分を通過させる開孔が形成されて、固形分を、開孔を通じてセカンドシート20に移行させることができるものであるのが好ましいが、本実施形態のように、トップシート10に開孔が形成されていないものであってもよい。
【0056】
本実施形態は、本発明に係る吸収性物品の一例として、軟便パッド100を適用したが、本発明に係る吸収性物品は軟便パッド100に限定されるものではなく、使い捨ておむつ、使い捨ておむつに重ねて使用される他のインナーパッド、女性用生理用品、尿失禁用吸収体等の種々の吸収性物品を適用することができる。この場合、本発明における吸収性物品のポケットに収容するものは、軟便に限定されない。
【符号の説明】
【0057】
10 トップシート
10a おもて面
11,21 折り返し部
12,22 端縁
15 肛門当接部
20 セカンドシート
30 吸収体
40 バックシート
50 外装シート
60 立体ギャザー
63 側端部
100 軟便パッド
E 入口
L1 所定の範囲
P ポケット
D 厚さ方向
L 長手方向
W 幅方向