(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】インバータ装置、駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241204BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/08 A
(21)【出願番号】P 2021144514
(22)【出願日】2021-09-06
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】彭 博
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-040967(JP,A)
【文献】特開2013-183584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の高電圧を供給する高電圧ラインと直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に接続される少なくとも一つのトランジスタのスイッチング動作によって交流を出力するインバータと、
前記トランジスタの制御端子に前記スイッチング動作のためのパルスを供給するパルス供給部と、
前記低電圧ライン側に接続される前記トランジスタの低電圧端子に前記制御端子より低い電圧
であって、前記低電圧ラインと異なる電圧を印加するツェナーダイオードと、
を備えるインバータ装置。
【請求項2】
前記ツェナーダイオードは、前記高電圧ラインと異なる高電圧サブラインと前記低電圧ラインと異なる低電圧サブラインの間に接続され、当該高電圧サブラインと当該低電圧サブラインの間の電圧を入力として前記低電圧端子に印加される電圧を出力する、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記制御端子と前記低電圧端子はコンデンサを介して接続される、請求項1または2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記インバータは、前記高電圧ラインと前記低電圧ラインの間に直列に接続される高電圧側トランジスタおよび低電圧側トランジスタからなるトランジスタ対を複数備え、当該各トランジスタ対のスイッチング動作によって多相の交流を出力し、
前記ツェナーダイオードは、全てのトランジスタ対における前記高電圧側トランジスタに併設される一方、少なくとも一つのトランジスタ対における前記低電圧側トランジスタには併設されない、
請求項1から3のいずれかに記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記ツェナーダイオードが併設されない低電圧側トランジスタの低電圧端子は、前記ツェナーダイオードが併設される低電圧側トランジスタの低電圧端子に接続される、請求項4に記載のインバータ装置。
【請求項6】
被駆動体と、
交流に基づいて前記被駆動体を駆動するモータと、
直流の高電圧を供給する高電圧ラインと直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に接続される少なくとも一つのトランジスタのスイッチング動作によって前記モータに対して交流を出力するインバータと、
前記トランジスタの制御端子に前記スイッチング動作のためのパルスを供給するパルス供給部と、
前記低電圧ライン側に接続される前記トランジスタの低電圧端子に前記制御端子より低い電圧
であって、前記低電圧ラインと異なる電圧を印加するツェナーダイオードと、
を備える駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流を交流に変換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流を交流に変換するインバータが開示されている。このインバータは、直流の高電圧を供給する高電圧ライン(Vpp)と直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に直列に接続されるトランジスタ対を三つ備え、各トランジスタ対のスイッチング動作によって3相の交流をモータに対して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータにおける各トランジスタは、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)によってデューティ比が制御されたパルスに応じて、オン状態とオフ状態の間でスイッチング動作を行う。オフ状態ではトランジスタが非導通状態となるのが理想的であるが、トランジスタの各端子間の電圧の変動によってトランジスタが導通状態となってしまう可能性もある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、オフ状態のトランジスタを非導通状態に保持しやすくできるインバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインバータ装置は、直流の高電圧を供給する高電圧ラインと直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に接続される少なくとも一つのトランジスタのスイッチング動作によって交流を出力するインバータと、トランジスタの制御端子にスイッチング動作のためのパルスを供給するパルス供給部と、低電圧ライン側に接続されるトランジスタの低電圧端子に制御端子より低い電圧を印加するツェナーダイオードと、を備える。
【0007】
この態様では、ツェナーダイオードによってトランジスタの低電圧端子に制御端子より低い電圧が印加されるため、オフ状態のトランジスタを非導通状態に保持しやすくできる。
【0008】
本発明の別の態様は、駆動装置である。この装置は、被駆動体と、交流に基づいて被駆動体を駆動するモータと、直流の高電圧を供給する高電圧ラインと直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に接続される少なくとも一つのトランジスタのスイッチング動作によってモータに対して交流を出力するインバータと、トランジスタの制御端子にスイッチング動作のためのパルスを供給するパルス供給部と、低電圧ライン側に接続されるトランジスタの低電圧端子に制御端子より低い電圧を印加するツェナーダイオードと、を備える。
【0009】
この態様では、ツェナーダイオードによってトランジスタの低電圧端子に制御端子より低い電圧が印加されるため、オフ状態のトランジスタを非導通状態に保持しやすくできる。従って、インバータから交流が供給されるモータの制御性や駆動精度を向上できる。このため、本態様の駆動装置は、高い駆動精度が求められる装置、例えば、露光装置、イオン注入装置、熱処理装置、アッシング装置、スパッタリング装置、ダイシング装置、検査装置、洗浄装置等の半導体製造装置において、処理対象の半導体ウエハ等を載置するテーブルを被駆動体とする用途に好適である。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インバータにおいてオフ状態のトランジスタを非導通状態に保持しやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】3相の交流を出力するインバータ装置の構成例を示す。
【
図3】インバータ装置を適用可能なステージ装置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明または図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るインバータ装置1の概要を模式的に示す。インバータ装置1は、インバータ2と、ドライバ3と、周辺回路4を備える。インバータ2は、直流の高電圧Vddを供給する高電圧ライン21と直流の低電圧Vssを供給する低電圧ライン22の間に接続される少なくとも一つのトランジスタ23のスイッチング動作によって交流を出力する。後述するように、トランジスタ23は、高電圧ライン21と低電圧ライン22の間に直列に接続される高電圧側トランジスタ23Hと低電圧側トランジスタ23Lを含み、高電圧側トランジスタ23Hの低電圧端子と低電圧側トランジスタ23Lの高電圧端子の接続点である出力端子から交流を出力する。また、高電圧側トランジスタ23Hおよび低電圧側トランジスタ23Lからなるトランジスタ対を並列に複数(例えば三つ)設けることで多相(例えば3相)の交流を出力するインバータを構成できる。
【0015】
トランジスタ23は、制御端子としてのゲート231と、高電圧ライン21側に接続される高電圧端子としてのコレクタ232と、低電圧ライン22側に接続される低電圧端子としてのエミッタ233を備える絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。なお、トランジスタ23は、制御端子としてのゲートと、高電圧端子としてのドレインと、低電圧端子としてのソースを備える電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)でもよいし、制御端子としてのベースと、高電圧端子としてのコレクタと、低電圧端子としてのエミッタを備えるバイポーラトランジスタでもよい。
【0016】
集積回路(IC:Integrated Circuit)として構成されるドライバ3は、トランジスタ23のゲート231にスイッチング動作のためのパルスVOUTを供給するパルス供給部としてのパルス供給端子31と、後述するツェナーダイオード等に直流の高電圧VCを供給する高電圧供給端子32と、後述するツェナーダイオード等に直流の低電圧VEEを供給する低電圧供給端子33を備える。パルス供給端子31は、PWMによってデューティ比が制御されたパルスをトランジスタ23のゲート231に印加する。トランジスタ23は、パルスの有無に応じてオン状態とオフ状態の間でスイッチング動作を行う。具体的には、パルスがゲート231に印加されている間はトランジスタ23がオン状態となり、コレクタ232とエミッタ233の間が導通状態となる。また、パルスがゲート231に印加されていない間はトランジスタ23がオフ状態となり、コレクタ232とエミッタ233の間が非導通状態となる。
【0017】
高電圧供給端子32は、前述の高電圧ライン21と異なる高電圧サブライン321を構成する。高電圧供給端子32が高電圧サブライン321に供給する直流の高電圧VCと、高電圧ライン21が供給する直流の高電圧Vddの大小関係は問わないが、典型的にはVCはVdd以下である。また、低電圧供給端子33は、前述の低電圧ライン22と異なる低電圧サブライン331を構成する。低電圧供給端子33が低電圧サブライン331に供給する直流の低電圧VEEと、低電圧ライン22が供給する直流の低電圧Vssの大小関係は問わないが、典型的にはVEEはVss以上である。
【0018】
周辺回路4は、抵抗41と、ツェナーダイオード42と、コンデンサ43と、コンデンサ44を備える。高電圧サブライン321上に設けられる抵抗41は、ドライバ3の高電圧供給端子32に接続される入力端子411と出力端子412を備える。
【0019】
ツェナーダイオード42は、低電圧サブライン331またはドライバ3の低電圧供給端子33と接続される入力端子421と、抵抗41の出力端子412に接続される出力端子422を備える。ツェナーダイオードは定電圧ダイオードとも呼ばれ、流れる電流によらず略一定の電圧を出力可能なダイオードである。
図1におけるツェナーダイオード42は、低電圧サブライン331から抵抗41に向かう方向、すなわち、低電圧側から高電圧側に向かう逆方向に配置され、抵抗41を介して高電圧サブライン321から供給される高電圧(抵抗41における電圧降下をVCから引いた電圧)と低電圧サブライン331から供給される低電圧VEEの電圧差を入力として、略一定の負のバイアス電圧-Vbを出力端子422から出力する。ツェナーダイオード42の出力端子422は、トランジスタ23の低電圧端子としてのエミッタ233に接続され、制御端子としてのゲート231より低い略一定の負のバイアス電圧-Vbをエミッタ233に印加する。
【0020】
コンデンサ43は、ツェナーダイオード42が出力する略一定の負のバイアス電圧-Vbを保持して急激な変動を抑制するために、ツェナーダイオード42と並列に設けられる。具体的には、コンデンサ43の一方の端子はツェナーダイオード42の入力端子421と接続され、コンデンサ43の他方の端子はツェナーダイオード42の出力端子422と接続される。
【0021】
コンデンサ44は、ツェナーダイオード42の出力端子422またはトランジスタ23のエミッタ233とトランジスタ23のゲート231の間に設けられる。すなわち、トランジスタ23の制御端子としてのゲート231と低電圧端子としてのエミッタ233はコンデンサ44を介して接続される。このようにエミッタ233がコンデンサ44によってゲート231から隔てられていることで、ドライバ3のパルス供給端子31からゲート231に印加されるパルスによらず、エミッタ233にはツェナーダイオード42からの略一定の負のバイアス電圧-Vbが印加される。
【0022】
ドライバ3のパルス供給端子31からトランジスタ23のゲート231に印加される電圧を、パルスありの時はVhと表し、パルスなしの時はVlと表す。Vhはバイアス電圧の絶対値Vbより十分に大きい正の電圧であり、Vlは典型的には零である。トランジスタ23のゲート231にパルス電圧Vhが印加されている場合、ゲート231とエミッタ233の間の電圧はVh-Vbと十分に大きい正の値を取るため、トランジスタ23がオン状態となり、コレクタ232とエミッタ233の間が導通状態となる。また、トランジスタ23のゲート231にVlが印加されている場合(またはパルス電圧Vhが印加されていない場合)、ゲート231とエミッタ233の間の電圧はVl-Vbと十分に大きい負の値を取るため、トランジスタ23がオフ状態となり、コレクタ232とエミッタ233の間が非導通状態となる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、ツェナーダイオード42が生成する略一定の負のバイアス電圧-Vbによって、パルス非印加時のトランジスタ23を確実にオフ状態または非導通状態に保持できる。なお、ツェナーダイオード42の代わりに三端子レギュレータを用いて負のバイアス電圧を生成することもできるが、三端子レギュレータは自身の周波数特性や併設されるコンデンサ(43)の特性の影響を受けやすいため、安定したバイアス電圧を供給するのが難しいという課題がある。これに対して、ツェナーダイオード42を用いれば、三端子レギュレータより簡易な回路構成で安定した負のバイアス電圧-Vbをエミッタ233に供給できる。
【0024】
図2は、U相、V相、W相の3相の交流を出力するインバータ装置1の構成例を示す。
図1で説明した構成要素には同一の符号を付すか符号自体を省略し、重複した説明を省略する。インバータ装置1は、U相の交流を出力するU相インバータ2Uと、V相の交流を出力するV相インバータ2Vと、W相の交流を出力するW相インバータ2Wを備える。各相のインバータ2U、2V、2Wは、高電圧ライン21と低電圧ライン22の間に直列に接続される高電圧側トランジスタ23Hおよび低電圧側トランジスタ23Lからなるトランジスタ対を備え、高電圧側トランジスタ23Hの低電圧端子としてのエミッタ233Hと低電圧側トランジスタ23Lの高電圧端子としてのコレクタ232Lの接続点である各出力端子24U、24V、24Wから各相の交流を出力する。モータ5は、各出力端子24U、24V、24Wから供給される3相の交流に基づいて回転動力を発生させる。
【0025】
トランジスタ23のエミッタ233に略一定の負のバイアス電圧-Vbを印加するツェナーダイオード42は、U相、V相、W相の全てのトランジスタ対における高電圧側トランジスタ23Hに併設される一方、U相、V相、W相の少なくとも一つのトランジスタ対における低電圧側トランジスタ23Lには併設されない。
図2の例では、U相の低電圧側トランジスタ23Lにはツェナーダイオード42が併設されるが、V相およびW相の低電圧側トランジスタ23Lにはツェナーダイオード42が併設されない。
【0026】
ここで、ツェナーダイオード42が併設されないV相およびW相の低電圧側トランジスタ23Lの低電圧端子としてのエミッタ233Lは、ツェナーダイオード42が併設されるU相の低電圧側トランジスタ23Lのエミッタ233Lと接続ライン45によって接続される。このため、U相の低電圧側トランジスタ23Lに併設されたツェナーダイオード42が生成する負のバイアス電圧-Vbは、接続ライン45を介してV相およびW相の低電圧側トランジスタ23Lのエミッタ233Lにも印加されるため、U相に限らずV相およびW相の低電圧側トランジスタ23Lもパルス非印加時に確実にオフ状態または非導通状態に保持できる。
【0027】
以上のように、接続ライン45を設けることで、全ての相の低電圧側トランジスタ23Lにツェナーダイオード42を併設する必要がなくなるため、回路構成を簡素化できる。一方、各相の高電圧側トランジスタ23Hのエミッタ233Hを相互に接続すると、各相の出力端子24U、24V、24Wが短絡し、3相の交流を出力できなくなってしまうため、各相の高電圧側トランジスタ23Hにはツェナーダイオード42を個別に併設するのが好ましい。
【0028】
図3は、
図2のインバータ装置1を適用可能な駆動装置の一例としてのステージ装置100を模式的に示す斜視図である。ステージ装置100は、定盤102と、定盤102を下方から支持する除振台104と、除振装置106と、半導体ウエハ等の処理対象物を載置する被駆動体としてのテーブル20、X軸に沿って延びる1本のX軸アクチュエータ120、Y軸に沿って延びる2本のY軸アクチュエータ130A、130B(以下、Y軸アクチュエータ130と総称する)を備える。X軸アクチュエータ120およびY軸アクチュエータ130A、130Bは上面視でH型をなす。除振装置106は、X軸アクチュエータ120やY軸アクチュエータ130A、130Bの動作に起因する力や床からの振動を吸収して定盤102の振動を抑制する。
【0029】
X軸アクチュエータ120およびY軸アクチュエータ130A、130Bには、
図2に示されるインバータ装置1およびモータ5がそれぞれ設けられる。各モータ5が発生させる回転動力は、ラック・ピニオン機構等によってX軸方向またはY軸方向の直線動力に変換され、被駆動体としてのテーブル20をX軸方向またはY軸方向に直線駆動する。X軸アクチュエータ120は、X軸方向に延在するスクエアシャフトまたはX軸ガイド122と、X軸ガイド122に沿ってX軸方向に移動可能なX軸スライダ124を備える。同様に、Y軸アクチュエータ130は、Y軸方向に延在するスクエアシャフトまたはY軸ガイド132と、Y軸ガイド132に沿ってY軸方向に移動可能なY軸スライダ134を備える。
【0030】
X軸ガイド122の両端部は、Y軸アクチュエータ130A、130BのY軸スライダ134に固定される。Y軸アクチュエータ130A、130Bにおけるモータ5が互いに同期してY軸スライダ134をY軸方向に駆動すると、Y軸スライダ134に固定されたX軸ガイド122ごとX軸アクチュエータ120がY軸方向に移動する。X軸アクチュエータ120のX軸スライダ124にはテーブル20が固定されているため、被駆動体としてのテーブル20はY軸アクチュエータ130のモータ5によってY軸方向に駆動される。また、X軸アクチュエータ120のモータ5は、テーブル20ごとX軸スライダ124をX軸方向に駆動する。このように、ステージ装置100は、X軸アクチュエータ120およびY軸アクチュエータ130のモータ5によって、被駆動体としてのテーブル20をXY平面内で駆動する。
【0031】
位置センサ140はテーブル20のX軸方向の位置を測定し、位置センサ142はテーブル20のY軸方向の位置を測定する。測定されたX軸方向およびY軸方向の位置を時間で微分すれば、X軸方向およびY軸方向の速度が得られる。また、X軸方向およびY軸方向の速度を時間で微分すれば、X軸方向およびY軸方向の加速度が得られる。これらの位置、速度、加速度の測定データに基づくフィードバック制御によって、被駆動体としてのテーブル20を高精度に駆動できる。
【0032】
図1および
図2で説明したように、本実施形態のインバータ装置1では、ツェナーダイオード42が生成する略一定の負のバイアス電圧-Vbによって、パルス非印加時のトランジスタ23を確実にオフ状態または非導通状態に保持できるため、インバータ装置1から交流が供給されるモータ5の制御性や、駆動装置としてのステージ装置100の駆動精度を向上できる。このような駆動精度が高い本実施形態のステージ装置100は、精密な位置決めが求められる各種の装置、例えば、露光装置、イオン注入装置、熱処理装置、アッシング装置、スパッタリング装置、ダイシング装置、検査装置、洗浄装置等の半導体製造装置やFPD(Flat Panel Display)製造装置において、処理対象の半導体ウエハ等を載置するテーブル20を被駆動体とする用途に好適である。
【0033】
なお、
図3ではX軸方向およびY軸方向にテーブル20を直線駆動するステージ装置100を例示したが、テーブル20をZ軸方向に直線駆動するステージ装置や、テーブル20をX軸、Y軸、Z軸の周りに回転駆動するステージ装置にも、本実施形態のインバータ装置1は適用可能である。
【0034】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0035】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 インバータ装置、2 インバータ、3 ドライバ、5 モータ、20 テーブル、21 高電圧ライン、22 低電圧ライン、23 トランジスタ、23H 高電圧側トランジスタ、23L 低電圧側トランジスタ、31 パルス供給端子、32 高電圧供給端子、33 低電圧供給端子、42 ツェナーダイオード、44 コンデンサ、45 接続ライン、100 ステージ装置、231 ゲート、232 コレクタ、233 エミッタ、321 高電圧サブライン、331 低電圧サブライン。