(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】モデル作成装置、伝搬特性特定装置、モデル作成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/391 20150101AFI20241204BHJP
H04B 17/309 20150101ALI20241204BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20241204BHJP
【FI】
H04B17/391
H04B17/309
H04W16/18 110
(21)【出願番号】P 2021170707
(22)【出願日】2021-10-19
【審査請求日】2024-01-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度総務省、「仮想空間における電波模擬システム技術の高度化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140585(JP,A)
【文献】特開2020-174343(JP,A)
【文献】特開2019-029915(JP,A)
【文献】特開2015-080061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置から視認することができる領域を示す学習用可視領域画像データを取得する画像データ取得部と、
前記学習用可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置とを検出する学習用物体検出部と、
前記学習用可視領域画像データに対応する三次元空間において電波を送信する送信機から当該電波を受信する受信機まで当該電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す学習用電波伝搬特性データを取得する特性データ取得部と、
前記学習用可視領域画像データと、前記学習用物体検出部が検出した前記物体の種別及び当該物体の位置を示す情報を含む学習用物体検出情報と、前記送信機が設置された送信位置と、前記受信機が設置された受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを教師データとして機械学習し、基準位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データと、当該可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を示す情報を含む物体検出情報と、前記送信機が設置された入力送信位置と、前記受信機が設置された入力受信位置と、が入力されると、入力された当該入力送信位置から当該入力受信位置まで前記電波が送信された場合の電波伝搬特性を示す電波伝搬特性データを出力する電波伝搬特性モデルを作成するモデル作成部と、
を有するモデル作成装置。
【請求項2】
前記学習用物体検出部は、前記物体の材質をさらに検出し、
前記モデル作成部は、前記学習用物体検出部が検出した前記物体の種別、当該物体の位置及び当該物体の材質を示す情報を含む前記学習用物体検出情報と、前記学習用可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記可視領域画像データと、前記物体の材質を示す情報をさらに含む前記物体検出情報と、前記入力送信位置と、前記入力受信位置と、が入力されると、前記電波伝搬特性データを出力する前記電波伝搬特性モデルを作成する、
請求項1に記載のモデル作成装置。
【請求項3】
前記モデル作成部は、前記所定位置から被写体までの距離を示す深度情報を含む前記学習用可視領域画像データと、前記学習用物体検出情報と、前記送信位置と、前記受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記基準位置から被写体までの距離を示す深度情報をさらに含む前記可視領域画像データと、前記物体検出情報と、前記入力送信位置と、前記入力受信位置と、が入力されると、前記電波伝搬特性データを出力する前記電波伝搬特性モデルを作成する、
請求項1又は2に記載のモデル作成装置。
【請求項4】
前記モデル作成部は、前記所定位置から視認することができる全方位の領域を示す前記学習用可視領域画像データと、当該学習用可視領域画像データに対応する全天球画像において前記学習用物体検出部が検出した前記物体の種別及び当該物体の位置を示す情報を含む前記学習用物体検出情報と、前記送信位置と、前記受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記基準位置から視認することができる全方位の領域を示す前記可視領域画像データと、当該可視領域画像データに対応する全天球画像に写っている物体の種別及び位置を示す物体検出情報と、前記入力送信位置と、前記入力受信位置と、が入力されると、前記電波伝搬特性データを出力する前記電波伝搬特性モデルを作成する、
請求項2又は3に記載のモデル作成装置。
【請求項5】
前記モデル作成部は、前記物体検出情報と、前記学習用可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、第1周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す第1学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記第1周波数の電波の電波伝搬特性を示す前記電波伝搬特性データを出力する第1の前記電波伝搬特性モデルを作成し、前記物体検出情報と、前記学習用可視領域画像データと、前記入力送信位置と、前記受信位置と、第2周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す第2学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記第2周波数の電波の電波伝搬特性を示す前記電波伝搬特性データを出力する第2の前記電波伝搬特性モデルを作成する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のモデル作成装置。
【請求項6】
前記モデル作成部は、前記学習用物体検出部が検出した所定の種別の物体を除く前記物体の種別と、当該物体の位置とを示す情報を含む前記物体検出情報と、前記学習用可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記第1周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す前記第1学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記第1の電波伝搬特性モデルを作成し、前記学習用物体検出部が検出した前記所定の種別の物体を含む前記物体の種別と前記物体の位置とを示す情報を含む前記物体検出情報と、前記第1周波数より高い前記第2周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す前記学習用可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記第2学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記第2の電波伝搬特性モデルを作成する、
請求項5に記載のモデル作成装置。
【請求項7】
前記学習用物体検出部は、移動する物体が含まれている前記学習用可視領域画像データを検出し、
前記モデル作成部は、移動する物体が含まれていることを前記学習用物体検出部が検出した前記学習用可視領域画像データを除く前記学習用可視領域画像データを含む前記教師データを用いて機械学習することにより、前記電波伝搬特性モデルを作成する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のモデル作成装置。
【請求項8】
基準位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データを取得するデータ取得部と、
当該可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別及び位置を検出する推定用物体検出部と、
電波を送信する送信機が設置された入力送信位置と、前記電波を受信する受信機が設置された入力受信位置とを指定するユーザの操作を受け付ける受付部と、
請求項1から5のいずれか一項に記載のモデル作成装置が作成した学習済みの電波伝搬特性モデルに対し、前記データ取得部が取得した可視領域画像データと、前記推定用物体検出部が検出した前記物体の種別及び位置を示す物体検出情報と、前記受付部が受け付けた前記入力送信位置と、受け付けた前記入力受信位置と、を入力データとして入力し、前記電波伝搬特性モデルが出力する前記電波伝搬特性データを特定する特定部と、
前記特定部が特定した前記電波伝搬特性データを出力する出力部と、
を備える伝搬特性特定装置。
【請求項9】
コンピュータが実行する、
所定位置から視認することができる領域を示す学習用可視領域画像データを取得するステップと、
前記学習用可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を検出するステップと、
前記学習用可視領域画像データに対応する三次元空間において電波を送信する送信機から当該電波を受信する受信機まで当該電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す学習用電波伝搬特性データを取得するステップと、
前記学習用可視領域画像データと、検出した前記物体の種別及び当該物体の位置を示す情報を含む学習用物体検出情報と、前記送信機が設置された送信位置と、前記受信機が設置された受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを教師データとして機械学習し、基準位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データと、当該可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を示す情報を含む物体検出情報と、前記送信機が設置された入力送信位置と、前記受信機が設置された入力受信位置と、が入力されると、入力された当該入力送信位置から当該入力受信位置まで前記電波が送信された場合の電波伝搬特性を示す電波伝搬特性データを出力する電波伝搬特性モデルを作成するステップと、
を有するモデル作成方法。
【請求項10】
コンピュータに、
所定位置から視認することができる領域を示す学習用可視領域画像データを取得するステップと、
前記学習用可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を検出するステップと、
前記学習用可視領域画像データに対応する三次元空間において電波を送信する送信機から当該電波を受信する受信機まで当該電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す学習用電波伝搬特性データを取得するステップと、
前記学習用可視領域画像データと、検出した前記物体の種別及び当該物体の位置を示す情報を含む学習用物体検出情報と、前記送信機が設置された送信位置と、前記受信機が設置された受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを教師データとして機械学習し、基準位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データと、当該可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を示す情報を含む物体検出情報と、前記送信機が設置された入力送信位置と、前記受信機が設置された入力受信位置と、が入力されると、入力された当該入力送信位置から当該入力受信位置まで前記電波が送信された場合の電波伝搬特性を示す電波伝搬特性データを出力する電波伝搬特性モデルを作成するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の電波伝搬特性を特定するために用いられるモデル作成装置、モデル作成方法、プログラム、並びに、このモデル作成装置により作成された機械学習モデルを用いて電波の電波伝搬特性を特定する伝搬特性特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間内の電波の伝搬特性を推定する手法として、受信点を含む地図データにCNN(Convolutional Neural Network)を適用して都市構造パラメータを特徴量として抽出し、抽出された特徴量からFNN(Fully-connected Neural Network)により推定する手法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電波伝搬特性には、送信点及び受信点から視認可能な構造物が大きく影響するが、従来の手法においては、構造物等の形状情報のみが用いられており、電波伝搬特性への影響を及ぼす材質情報は使用されていない。したがって、電波伝搬特性の精度が劣化するという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、空間の画像データを用いた機械学習により電波の伝搬特性の推定精度を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のモデル作成装置は、所定位置から視認することができる領域を示す学習用可視領域画像データを取得する画像データ取得部と、前記学習用可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置とを検出する学習用物体検出部と、前記学習用可視領域画像データに対応する三次元空間において電波を送信する送信機から当該電波を受信する受信機まで当該電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す学習用電波伝搬特性データを取得する特性データ取得部と、前記学習用可視領域画像データと、前記学習用物体検出部が検出した前記物体の種別及び当該物体の位置を示す情報を含む学習用物体検出情報と、前記送信機が設置された送信位置と、前記受信機が設置された受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを教師データとして機械学習し、基準位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データと、当該可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を示す情報を含む物体検出情報と、前記送信機が設置された入力送信位置と、前記受信機が設置された入力受信位置と、が入力されると、入力された当該入力送信位置から当該入力受信位置まで前記電波が送信された場合の電波伝搬特性を示す電波伝搬特性データを出力する電波伝搬特性モデルを作成するモデル作成部と、を有する。
【0007】
前記学習用物体検出部は、前記物体の材質をさらに検出し、前記モデル作成部は、前記学習用物体検出部が検出した前記物体の種別、当該物体の位置及び当該物体の材質を示す情報を含む前記学習用物体検出情報と、前記学習用可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記可視領域画像データと、前記物体の材質を示す情報をさらに含む前記物体検出情報と、前記入力送信位置と、前記入力受信位置と、が入力されると、前記電波伝搬特性データを出力する前記電波伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0008】
前記モデル作成部は、前記所定位置から被写体までの距離を示す深度情報を含む前記学習用可視領域画像データと、前記学習用物体検出情報と、前記送信位置と、前記受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記基準位置から被写体までの距離を示す深度情報をさらに含む前記可視領域画像データと、前記物体検出情報と、前記入力送信位置と、前記入力受信位置と、が入力されると、前記電波伝搬特性データを出力する前記電波伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0009】
前記モデル作成部は、前記所定位置から視認することができる全方位の領域を示す前記学習用可視領域画像データと、当該学習用可視領域画像データに対応する全天球画像において前記学習用物体検出部が検出した前記物体の種別及び当該物体の位置を示す情報を含む前記学習用物体検出情報と、前記送信位置と、前記受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記基準位置から視認することができる全方位の領域を示す前記可視領域画像データと、当該可視領域画像データに対応する全天球画像に写っている物体の種別及び位置を示す物体検出情報と、前記入力送信位置と、前記入力受信位置と、が入力されると、前記電波伝搬特性データを出力する前記電波伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0010】
前記モデル作成部は、前記物体検出情報と、前記学習用可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、第1周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す第1学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記第1周波数の電波の電波伝搬特性を示す前記電波伝搬特性データを出力する第1の前記電波伝搬特性モデルを作成し、前記物体検出情報と、前記学習用可視領域画像データと、前記入力送信位置と、前記受信位置と、第2周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す第2学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記第2周波数の電波の電波伝搬特性を示す前記電波伝搬特性データを出力する第2の前記電波伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0011】
前記モデル作成部は、前記学習用物体検出部が検出した所定の種別の物体を除く前記物体の種別と、当該物体の位置とを示す情報を含む前記物体検出情報と、前記学習用可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記第1周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す前記第1学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記第1の電波伝搬特性モデルを作成し、前記学習用物体検出部が検出した前記所定の種別の物体を含む前記物体の種別と前記物体の位置とを示す情報を含む前記物体検出情報と、前記第1周波数より高い前記第2周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す前記学習用可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記第2学習用電波伝搬特性データとを前記教師データとして機械学習させることにより、前記第2の電波伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0012】
前記学習用物体検出部は、移動する物体が含まれている前記学習用可視領域画像データを検出し、前記モデル作成部は、移動する物体が含まれていることを前記学習用物体検出部が検出した前記学習用可視領域画像データを除く前記学習用可視領域画像データを含む前記教師データを用いて機械学習することにより、前記電波伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の伝搬特性特定装置は、基準位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データを取得するデータ取得部と、当該可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別及び位置を検出する推定用物体検出部と、電波を送信する送信機が設置された入力送信位置と、前記電波を受信する受信機が設置された入力受信位置とを指定するユーザの操作を受け付ける受付部と、モデル作成装置が作成した学習済みの電波伝搬特性モデルに対し、前記データ取得部が取得した可視領域画像データと、前記推定用物体検出部が検出した前記物体の種別及び位置を示す物体検出情報と、前記受付部が受け付けた前記入力送信位置と、受け付けた前記入力受信位置と、を入力データとして入力し、前記電波伝搬特性モデルが出力する前記電波伝搬特性データを特定する特定部と、前記特定部が特定した前記電波伝搬特性データを出力する出力部と、を備える。
【0014】
本発明の第3の態様のモデル作成方法は、コンピュータが実行する、所定位置から視認することができる領域を示す学習用可視領域画像データを取得するステップと、前記学習用可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を検出するステップと、前記学習用可視領域画像データに対応する三次元空間において電波を送信する送信機から当該電波を受信する受信機まで当該電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す学習用電波伝搬特性データを取得するステップと、前記学習用可視領域画像データと、検出した前記物体の種別及び当該物体の位置を示す情報を含む学習用物体検出情報と、前記送信機が設置された送信位置と、前記受信機が設置された受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを教師データとして機械学習し、基準位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データと、当該可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を示す情報を含む物体検出情報と、前記送信機が設置された入力送信位置と、前記受信機が設置された入力受信位置と、が入力されると、入力された当該入力送信位置から当該入力受信位置まで前記電波が送信された場合の電波伝搬特性を示す電波伝搬特性データを出力する電波伝搬特性モデルを作成するステップと、を有する。
【0015】
本発明の第4の態様のプログラムは、コンピュータに、所定位置から視認することができる領域を示す学習用可視領域画像データを取得するステップと、前記学習用可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を検出するステップと、前記学習用可視領域画像データに対応する三次元空間において電波を送信する送信機から当該電波を受信する受信機まで当該電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す学習用電波伝搬特性データを取得するステップと、前記学習用可視領域画像データと、検出した前記物体の種別及び当該物体の位置を示す情報を含む学習用物体検出情報と、前記送信機が設置された送信位置と、前記受信機が設置された受信位置と、前記学習用電波伝搬特性データとを教師データとして機械学習し、基準位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データと、当該可視領域画像データに対応する画像に写っている物体の種別と当該物体の位置を示す情報を含む物体検出情報と、前記送信機が設置された入力送信位置と、前記受信機が設置された入力受信位置と、が入力されると、入力された当該入力送信位置から当該入力受信位置まで前記電波が送信された場合の電波伝搬特性を示す電波伝搬特性データを出力する電波伝搬特性モデルを作成するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空間の画像データを用いた機械学習により電波伝搬特性の推定精度を改善するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るモデル作成装置の概要を示す。
【
図3】学習用物体検出部による物体の種別及び位置の検出の例を示す。
【
図4】学習用物体検出部による物体の種別及び位置の検出の別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[モデル作成装置の概要]
図1は、本実施形態に係るモデル作成装置の概要を示す。モデル作成装置は、電波伝搬特性を示す電波伝搬特性モデルを作成するためのコンピュータである。電波伝搬特性は、例えば遅延スプレッド、角度スプレッド、ドップラースプレッド、Kファクタ、シャドウフェージング偏差又は伝搬損失である。
【0019】
図1は、構造物が存在する領域を上方から見た状態を模式的に示している。構造物は、例えばビル、家、ホール等の建物であり、電波伝搬特性に影響を与える物体である。
図1には、電波を送信する送信機Tと、電波を受信する受信機Rとが示されている。送信機Tが送信した電波はアンテナの指向性に対応する方向に放射されるが、
図1においては、受信機Rに向けて放射される電波W1、構造物B1に向けて放射される電波W21、及び構造物B2に向けて放射される電波W31が示されている。
【0020】
図1(a)においては、電波W1は送信機Tから受信機Rに直接届く。電波W21は、構造物B1の壁で反射し、反射したW22が受信機Rに届く。しかし、構造物B2に向けて放射された電波W31は、構造物B1で遮られて構造物B2には届かない。
図1(b)においては、電波W31が構造物B2に届いて構造物B2の壁で反射するが、反射した電波W32は構造物B1に遮られて受信機Rには届かない。
【0021】
以上のように、送信機Tから送信された電波は、構造物B2で反射して受信機Rに到達しないので、送信機Tから受信機Rへの電波伝搬特性に、構造物B2の存在は影響しない。従来、送信機Tから受信機Rへの電波伝搬特性を推定する際には、送信機T及び受信機Rの周辺の全ての構造物の影響が考慮されていた。しかし、本実施形態に係るモデル作成装置は、
図1に示す構造物B2のように伝搬特性に影響しない構造物等の構造物を考慮することなく、送信機T又は受信機Rの少なくともいずれかから見通すことができる構造物の位置及び形状等に基づいて電波伝搬特性を機械学習することにより、電波伝搬特性モデルを作成するために要する時間を短縮することができる。
【0022】
本実施形態に係るモデル作成装置は、
図1に示す構造物B2のように伝搬特性に影響しない構造物等の構造物を考慮することなく、送信機T又は受信機Rの少なくともいずれかから見通すことができる構造物の位置及び形状等に基づいて電波伝搬特性を機械学習することにより、電波伝搬特性モデルを作成するために要する時間を短縮することができる。
【0023】
また、構造物B1の材質によって電波の反射係数等が変化する。このため、構造物B1の材質は、送信機Tから受信機Rへの電波の電波伝搬特性に影響を与える要素の一つであることが分かっている。本実施形態に係るモデル作成装置は、
図1に示す構造物B1を撮像した撮像画像を画像認識することにより、構造物B1が看板であるか、ブロック塀であるか等の種別を検出する。構造物B1の種別によって構造物B1の材質が一定程度決まるので、構造物B1の種別は、構造物B1の材質を間接的に示すものであるということができる。
【0024】
モデル作成装置は、構造物の位置と、形状とに加えて、検出した構造物の種別も教師データとして利用して電波伝搬特性を機械学習することにより、電波伝搬特性モデルを作成する。モデル作成装置は、構造物の材質を間接的に示す構造物の種別を教師データに含めることにより、作成した電波伝搬特性モデルによる送信機Tから受信機Rへの電波伝搬特性を推定する精度をさらに向上させることができる。
【0025】
以下、本実施形態に係るモデル作成装置、及びモデル作成装置が作成した電波伝搬特性モデルに基づいて電波伝搬特性を特定する電波伝搬特性特定装置の構成及び動作を詳細に説明する。
【0026】
[モデル作成装置1の構成]
図2は、モデル作成装置1の構成を示す。モデル作成装置1は、送信機Tが設置された入力送信位置と受信機Rが設置された入力受信位置との間での電波の電波伝搬特性を示すモデルを作成するための装置であり、例えばコンピュータである。モデル作成装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。制御部13は、画像データ取得部131と、学習用物体検出部132と、特性データ取得部133と、モデル作成部134と、を有する。
【0027】
通信部11は、ネットワークを介して各種のデータを送受信するための通信インターフェースを有する。通信部11は、モデル作成装置1がモデルを作成するために使用する複数の学習用可視領域画像データ及び複数の学習用電波伝搬特性データを外部装置から取得する。
【0028】
学習用可視領域画像データは、所定位置から視認することができる領域を示す。所定位置は、例えば学習用可視領域画像データの撮影位置であり、電波を送信する送信機Tが設置された送信位置、又は電波を受信する受信機Rが設置された受信位置の少なくとも一方である。学習用可視領域画像データは、例えば三次元空間における構造物の位置及び向きの情報を含む全天球画像データであり、モデル作成部134が機械学習により電波伝搬特性モデルを構築するための教師データとして使用される。学習用可視領域画像データは、送信位置又は受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域の画像データのみを含んでもよい。
【0029】
学習用可視領域画像データは、例えば、三次元空間における深度を示す深度情報及び自由空間伝搬損失(FSPL:Free Space Path Loss)情報を含んでいる。深度は、例えば、可視領域画像の撮影方向における基準位置(例えば観測点の位置)から構造物の表面までの距離である。通信部11は、例えば、外部のコンピュータに記憶されている三次元構造物情報データベース、点群情報データベース、又は実測全天球画像データベースにアクセスすることにより、学習用可視領域画像データを取得する。
【0030】
本明細書の例では、通信部11は、複数の学習用可視領域画像データのそれぞれに対応する複数の参照画像を外部装置から取得する。参照画像は、例えば、学習用可視領域画像データと同じ所定位置からから視認することができる領域を示すRGB画像である。学習用可視領域画像データが全天球画像データである場合、参照画像は全天球画像であることが好ましい。参照画像は、RGB画像に限定されず、YCbCr色空間で表現された画像であってもよい。
【0031】
学習用電波伝搬特性データは、対応する三次元空間において送信機Tから受信機Rまで電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す。学習用電波伝搬特性データは、送信機Tから受信機Rまで電波が伝送される間に生じる電波伝搬特性を示す実測データであり、モデル作成部134が機械学習により電波伝搬特性モデルを構築するための教師データとして使用される。
【0032】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部12は、モデル作成部134により作成される電波伝搬特性モデル121を記憶する。電波伝搬特性モデル121は、モデル作成部134により作成された後に更新されてもよい。記憶部12には、撮像画像を入力データとし、この撮像画像に写っている物体の種別と物体の位置とを出力データとする学習済みの機械学習モデルが記憶されている。機械学習モデルは、例えば、R-CNN(Region Based Convolutional Neural Networks)又はYOLO(You only look once)である。
【0033】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、画像データ取得部131、学習用物体検出部132、特性データ取得部133及びモデル作成部134として機能する。
【0034】
画像データ取得部131は、通信部11を介して、モデル作成部134が機械学習に使用する複数の学習用可視領域画像データを取得する。学習用可視領域画像データは、三次元空間がカメラで撮影されることにより作成された撮像画像データであってもよく、三次元空間内の構造物の位置及び形状が実測されて作成された画像データであってもよい。画像データ取得部131は、学習用可視領域画像データとともに、学習用可視領域画像データに対応する参照画像を取得する。画像データ取得部131は、取得した学習用可視領域画像データをモデル作成部134に入力する。画像データ取得部131は、取得した参照画像を学習用物体検出部132へ出力する。
【0035】
画像データ取得部131は、取得した学習用可視領域画像データをそのままモデル作成部134に入力してもよいが、取得した学習用可視領域画像データに、送信位置及び受信位置の両方から視認できない領域の画像データが含まれている場合、取得した学習用可視領域画像データのうち、送信位置又は受信位置の少なくともいずれかから視認可能な領域の画像データのみを抽出し、抽出した学習用可視領域画像データをモデル作成部134に入力してもよい。画像データ取得部131は、送信位置及び受信位置の両方から視認可能な領域の画像データのみを抽出し、抽出した学習用可視領域画像データをモデル作成部134に入力してもよい。
【0036】
学習用物体検出部132は、画像データ取得部131が取得した、学習用可視領域画像データに対応する参照画像に写っている物体の種別と物体の位置とを検出する。例えば、学習用物体検出部132は、検出した種別の物体に対応する画素の位置を全て検出する。より詳しくは、学習用物体検出部132は、画像を入力データとし、この撮像画像に写っている物体の種別と物体の位置とを出力データとする学習済みの機械学習モデルを記憶部12から読み出す。学習用物体検出部132は、学習用可視領域画像データに対応する参照画像を入力データとして、読み出した機械学習モデルに入力し、参照画像に写っている物体の種別と物体の位置とを出力データとして機械学習モデルに出力させることにより、物体の種別と物体の位置とを検出する。
【0037】
図3(a)及び
図3(b)は、学習用物体検出部132による物体の種別及び位置の検出の例を示す。
図3(a)は、画像データ取得部131が取得した参照画像を示す。
図3(b)は、学習用物体検出部132が
図3(a)に示す参照画像に写っている物体の種別及び位置を検出した検出結果を示す。
図3(b)の例では、学習用物体検出部132が検出した物体の位置を矩形の枠線で示す。学習用物体検出部132は、参照画像の中央付近に写っている物体の種別「信号」を検出する。学習用物体検出部132は、参照画像の左側に写っている物体の種別「樹木」を検出する。
【0038】
図4は、学習用物体検出部132による物体の種別及び位置の検出の別の例を示す。
図4の例では、学習用物体検出部132は、屋内で撮像された参照画像に写っている物体の種別と物体の位置とを検出した検出結果を示す。学習用物体検出部132は、参照画像に写っている種別「コンピュータ」に対応する複数の物体を検出する。
【0039】
図4中に示すように、学習用物体検出部132は、参照画像に写っている種別「窓」の物体を検出する。窓は、他の壁面とは材質が異なり、電波の反射係数に影響を与える。このため、学習用物体検出部132は、物体の種別「窓」の検出結果を含む教師データを利用して電波伝搬特性を機械学習することにより、作成した電波伝搬特性モデルが屋内の電波の電波伝搬特性を推定する精度を向上させることができる。
【0040】
学習用物体検出部132は、参照画像において移動する物体が含まれている学習用可視領域画像データを検出してもよい。移動する物体は、例えば、自転車、自動車、ヒト又は動物である。移動する物体は、撮像時に移動中であるものに限定されず、撮像時に静止しているものであってもよい。学習用物体検出部132は、検出した物体の種別及び位置を示す情報を含む学習用物体検出情報をモデル作成部134へ出力する。
【0041】
また、学習用物体検出部132は、物体の材質をさらに検出してもよい。例えば、学習用物体検出部132は、物体の種別及び位置を検出した後、既知の画像認識技術により、物体が金属光沢を有することを認識し、この物体の材質が「金属」であることを検出してもよい。学習用物体検出部132は、検出した物体の種別、物体の位置、及び物体の材質を示す情報を含む学習用物体検出情報をモデル作成部134へ出力する。
【0042】
特性データ取得部133は、通信部11を介して、モデル作成部134が機械学習に使用する学習用電波伝搬特性データを取得する。学習用電波伝搬特性データは、学習用可視領域画像データに対応する三次元空間内の2つの位置の組み合わせに関連付けられている。学習用電波伝搬特性データは、例えば、可視領域画像に含まれる三次元空間内の送信機Tが設置された送信位置を示す緯度・経度情報及び受信機Rが設置された受信位置を示す緯度・経度情報に関連付けられており、送信機Tから受信機Rに電波が送信された際の電波伝搬特性を実測した結果に基づいて作成されている。
【0043】
特性データ取得部133は、電波の周波数ごとに異なる学習用電波伝搬特性データを取得してもよい。例えば、特性データ取得部133は、送信機Tが設置された送信位置から受信機Rが設置された受信位置に第1周波数の電波が送信された場合の電波伝搬特性を示す第1学習用電波伝搬特性データと、送信機Tから受信機Rに第2周波数の電波が送信した場合の電波伝搬特性を示す第2学習用電波伝搬特性データとをそれぞれ取得してもよい。特性データ取得部133は、取得した学習用電波伝搬特性データをモデル作成部134に入力する。
【0044】
[機械学習モデルの作成]
モデル作成部134は、複数の学習用可視領域画像データと、学習用物体検出部132が検出した物体の種別及び位置を示す学習用物体検出情報と、送信機Tが設置された送信位置と、受信機Rが設置された受信位置と、学習用電波伝搬特性データとを教師データとして機械学習させることにより、入力送信位置から入力受信位置まで電波が送信された場合の電波伝搬特性を示す電波伝搬特性データを出力する電波伝搬特性モデル121を作成する。可視領域画像データは、基準位置から視認することができる領域を示す。基準位置は、例えば可視領域画像データの撮影位置であり、電波を送信する送信機が設置された入力送信位置、又は電波を受信する受信機が設置された入力受信位置の少なくとも一方である。可視領域画像データは、後述する伝搬特性特定装置2のデータ取得部251により取得される。
【0045】
モデル作成部134は、所定位置から視認することができる領域を示す情報に加えて、この所定位置から被写体までの距離を示す深度情報を含む学習用可視領域画像データを教師データとして電波伝搬特性モデル121の機械学習に利用してもよい。深度データは、構造物の表面における複数の位置それぞれの所定位置からの距離を示す。
【0046】
モデル作成部134は、学習用物体検出部132が検出した物体の種別及び物体の位置に加えて、検出した物体の材質を示す学習用物体検出情報を含む教師データを電波伝搬特性モデル121の機械学習に利用してもよい。材質は、例えば、金属、樹脂、ガラス又は木材のように、電波の伝搬に与える影響が異なる複数の材質に分類されている。モデル作成部134は、所定位置から視認することができる全方位の領域を示す学習用可視領域画像データと、この学習用可視領域画像データに対応する全天球の参照画像において学習用物体検出部132が検出した物体の種別及び物体の位置を示す学習用物体検出情報とを含む教師データを電波伝搬特性モデル121の機械学習に利用してもよい。
【0047】
モデル作成部134は、移動する物体が含まれていることを学習用物体検出部132が検出した学習用可視領域画像データを除く学習用可視領域画像データを含む教師データを電波伝搬特性モデル121の機械学習に利用してもよい。このようにして、モデル作成部134は、学習用可視領域画像データの撮像時に自動車等が写り込んでしまったことに起因して、この学習用可視領域画像データを含む教師データを用いた際に電波伝搬特性モデルの作成に失敗することを抑制することができる。
【0048】
電波の電波伝搬特性は、その周波数に依存して変化する。モデル作成部134は、電波の周波数ごとに電波伝搬特性モデルを作成してもよい。モデル作成部134は、第1周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す第1学習用電波伝搬特性データを含む教師データを用いて機械学習させることにより、第1周波数の電波の電波伝搬特性を示す電波伝搬特性データを出力するための第1の電波伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0049】
モデル作成部134は、第2周波数の電波を送信した場合の電波伝搬特性を示す第2学習用電波伝搬特性データを含む教師データを用いて機械学習させることにより、第2周波数の電波の電波伝搬特性を示す電波伝搬特性データを出力するための第2の電波伝搬特性モデルを作成してもよい。第2周波数は、第1周波数より高い周波数である。このようにして、モデル作成部134は、送信する複数の電波の周波数に対応する電波伝搬特性モデルをそれぞれ作成することにより、送信する複数の電波の周波数に対応する電波伝搬特性の電波伝搬特性モデル121による推定精度をそれぞれ向上させることができる。
【0050】
一例として、第1周波数の電波は樹木等の所定の種別の物体の影響を比較的受けにくいが、第1周波数より高い第2周波数の電波は、この所定の種別の物体の影響を比較的受けやすいとする。この場合、モデル作成部134は、この所定の種別の物体の影響を考慮して第2周波数の電波の電波電波特性を推定することが可能な第2の電波電波特性モデルを作成することを目的として、第2の電波電波特性モデルの機械学習に利用する教師データに含まれる物体検出情報がこの所定の種別を含む物体の種別とこの物体の位置を示す情報を含むようにしてもよい。
【0051】
一方、第1周波数の電波の電波伝搬特性の推定においては、所定の種別の物体の影響を考慮する必要はない。そこで、モデル作成部134は、第1の電波伝搬特性モデルの機械学習に利用する教師データに含まれる物体検出情報がこの所定の種別を除く物体の種別とこの物体の位置を示す情報を含むようにしてもよい。
【0052】
[伝搬特性特定装置2の構成]
図5は、伝搬特性特定装置2の構成を示す。伝搬特性特定装置2は、モデル作成装置1が作成した電波伝搬特性モデル121を用いて、指定された入力送信位置と入力受信位置との間での電波の伝搬特性を特定するための装置であり、例えばコンピュータである。
【0053】
伝搬特性特定装置2は、通信部21と、表示部22と、操作部23と、記憶部24と、制御部25と、を有する。制御部25は、データ取得部251と、指定受付部252と、推定用物体検出部253と、特定部254と、出力部255と、を有する。
【0054】
通信部21は、ネットワークを介して各種のデータを送受信するための通信インターフェースを有する。通信部21は、伝搬特性特定装置2が電波伝搬特性を特定するために使用する可視領域画像データと、この可視領域画像データに対応する参照画像を外部装置から受信する。通信部21は、受信した可視領域画像データ及び参照画像をデータ取得部251に入力する。可視領域画像データは、基準位置から視認することができる領域を示す。基準位置は、例えば可視領域画像データの撮影位置であり、電波を送信する送信機が設置された入力送信位置、又は電波を受信する受信機が設置された入力受信位置の少なくとも一方である。参照画像は、例えば、可視領域画像データと同じ基準位置からから視認することができる領域を示すRGB画像である。
【0055】
表示部22は、各種のデータを表示するためのディスプレイである。表示部22は、例えば、出力部255から入力された、特定した電波伝搬特性を示すデータを表示する。
【0056】
操作部23は、伝搬特性特定装置2を使用するユーザの操作を受け付けるデバイスであり、例えばキーボード、マウス又はタッチパネルである。操作部23は、ユーザにより入力された操作の内容を示す情報を指定受付部252に通知する。
【0057】
記憶部24は、ROM、RAM及びSSD等の記憶媒体を有する。記憶部24は、制御部25が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部24は、モデル作成装置1が作成した電波伝搬特性モデル121を記憶している。電波伝搬特性モデル121は、所定位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データと、この可視領域画像データに対応する参照画像に写っている物体の種別及び位置を示す物体検出情報と、送信機が設置された入力送信位置と、受信機が設置された入力受信位置とが入力データとして入力されると、当該三次元空間において指定された入力送信位置から入力受信位置まで電波が送付された場合の遅延スプレッド、角度スプレッド及び伝搬損失等の電波伝搬特性を示す電波伝搬モデルを出力する機械学習モデルである。
【0058】
モデル作成部134が深度情報を含む学習用可視領域画像データがさらに含まれる教師データを用いて機械学習させることにより作成された電波伝搬特性モデル121では、この電波伝搬特性モデル121に入力データとして入力される可視領域画像データは、基準位置から視認することができる領域を示す情報に加えて、基準位置から被写体までの距離を示す深度情報をさらに含んでもよい。モデル作成部134が物体の材質を示す情報を含む学習用物体検出情報がさらに含まれる教師データを用いて機械学習させることにより作成された電波伝搬特性モデルでは、機械学習モデルに入力データとして入力される物体検出情報が物体の材質を示す情報をさらに含んでもよい。
【0059】
所定位置から視認することができる全方位の領域を示す学習用可視領域画像データが含まれる教師データを用いて機械学習させることにより作成された電波伝搬特性モデルでは、この電波伝搬特性モデルに入力データとして入力される可視領域画像データは、基準位置から視認することができる全方位の領域を示すものであってもよい。全方位の領域を示す学習用可視領域画像データに対応する全天球の参照画像において学習用物体検出部132が検出した物体の種別及び物体の位置を示す情報を含む学習用物体検出情報が含まれる教師データを用いて機械学習させることにより作成された電波伝搬特性モデルでは、この電波伝搬特性モデルに入力データとして入力される物体検出情報は、全方位の領域を示す可視領域画像データに対応する全天球画像に写っている物体の種別及び位置を示すものであってもよい。
【0060】
制御部25は、例えばCPUを有しており、記憶部24に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部251、指定受付部252、推定用物体検出部253、特定部254及び出力部255として機能する。
【0061】
データ取得部251は、基準位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データを取得する。基準位置は、伝搬特性特定装置2を使用するユーザが電波伝搬特性を知りたい位置である。当該可視領域画像データは、ユーザが伝搬特性を知りたい位置で撮影されることにより作成された画像データであってもよく、ユーザが伝搬特性を知りたい位置を視認できる位置で撮影されることにより作成された画像データであってもよい。データ取得部251は、可視領域画像データに対応する参照画像を取得する。参照画像は、例えば、可視領域画像データと同じ所定位置からから視認することができる領域を示すRGB画像である。データ取得部251は、取得した可視領域画像データを特定部254へ出力する。データ取得部251は、取得した参照画像を推定用物体検出部253へ出力する。
【0062】
指定受付部252は、可視領域画像データにおける、電波を送信する送信機Tが設置された入力送信位置、及び電波を受信する受信機Rが設置された入力受信位置を指定するユーザの操作を受け付ける。指定受付部252は、例えば、可視領域画像データが表示部22に表示された状態で、ユーザが操作部23を用いて行った操作の内容を取得し、操作の内容に基づいて、可視領域画像データにおけるユーザが指定した入力送信位置及び入力受信位置の座標を特定する。
【0063】
推定用物体検出部253は、学習用物体検出部132と同様に、可視領域画像データに対応する参照画像に写っている物体の種別及び位置を検出する。推定用物体検出部253は、検出した物体の種別及び位置を示す物体検出情報を特定部254へ出力する。
【0064】
特定部254は、モデル作成装置1が作成した電波伝搬特性モデル121に、データ取得部251が取得した可視領域画像データと、物体検出情報と、指定受付部252が受け付けた入力送信位置及び入力受信位置とを入力データとして入力し、電波伝搬特性モデル121から出力される電波伝搬特性データを取得することにより、入力送信位置から入力受信位置まで電波が伝搬した場合の電波伝搬特性データを特定する。
【0065】
出力部255は、特定部254が特定した電波伝搬特性データを出力する。例えば、出力部255は、この電波伝搬特性データを表示部22に出力させてもよく、プリンタに出力させてもよい。
【0066】
なお、以上の説明においては、記憶部24が電波伝搬特性モデル121を記憶している場合を例示したが、記憶部24が電波伝搬特性モデル121を記憶していなくてもよい。この場合、出力部255は、通信部11を介して、モデル作成装置1又は他のコンピュータが記憶している電波伝搬特性モデル121にアクセスすることにより、電波伝搬特性データを取得してもよい。
【0067】
[モデル作成装置1による効果]
以上説明したように、モデル作成装置1は、電波を送信する送信機が設置された送信位置、又は前記電波を受信する受信機が設置された受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域を示す機械学習用の可視領域画像データを用いて機械学習することにより、電波伝搬特性モデル121を作成する。モデル作成装置1がこのような可視領域画像データを用いることにより、送信位置及び受信位置から視認できない構造物に関するデータも含むデータを用いて機械学習をする場合に比べて、推定精度を落とすことなく電波伝搬特性モデルを作成するために要する計算時間を短縮することができる。モデル作成装置1は、構造物の位置と形状とに加えて、構造物の種別も教師データとして利用して電波伝搬特性を機械学習することにより、作成した電波伝搬特性モデル121による送信機Tから受信機Rへの電波の電波伝搬特性を推定する精度を向上させることができる。
【0068】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0070】
1 モデル作成装置
2 伝搬特性特定装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
21 通信部
22 表示部
23 操作部
24 記憶部
25 制御部
121 電波伝搬特性モデル
131 画像データ取得部
132 学習用物体検出部
133 特性データ取得部
134 モデル作成部
251 データ取得部
252 指定受付部
253 推定用物体検出部
254 特定部
255 出力部