(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/107 20060101AFI20241204BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L31/10 B
H01L27/146 A
(21)【出願番号】P 2021202434
(22)【出願日】2021-12-14
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】国分 弘一
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/195781(WO,A1)
【文献】特開2011-119441(JP,A)
【文献】特開2021-027192(JP,A)
【文献】特開平10-189928(JP,A)
【文献】特開平09-232556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0315135(US,A1)
【文献】特開2019-161047(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110277414(CN,A)
【文献】CHARBON, Edoardo,“SPAD based image sensors”,2014 IEEE International Electron Devices Meeting,2014年12月,pp. 10.2.1-10.2.4,DOI: 10.1109/IEDM.2014.7047022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 27/144-27/148
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出部と、
前記光検出部が出力する電気信号を処理する回路部と、
を備え、
前記光検出部は、
第1導電型の基板と、
前記基板上に設けられた第2導電型の半導体層と、
前記基板の裏面に設けられた裏面電極と、
前記半導体層内に設けられた第1導電型層と、
前記第1導電型層上に設けられ、前記第1導電型層に接する第2導電型層と、
前記第2導電型層と電気的に接続された表面電極と、
を有し、
前記回路部は、
前記半導体層内に設けられた第1導電型の第1ウェルと、
前記第1ウェル内に設けられた第2導電型の第2ウェルと、
前記第1ウェル内に設けられた第2導電型の第1ドレイン層と、
前記第1ウェル内に設けられた第2導電型の第1ソース層と、
前記第1ドレイン層と前記第1ソース層との間における前記第1ウェルの表面上に設けられた第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に設けられた第1ゲート電極と、
前記第2ウェル内に設けられた第1導電型の第2ドレイン層と、
前記第2ウェル内に設けられた第1導電型の第2ソース層と、
前記第2ドレイン層と前記第2ソース層との間における前記第2ウェルの表面上に設けられた第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に設けられた第2ゲート電極と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1ウェルは、前記第1ドレイン層及び前記第1ソース層に接する上部領域と、前記半導体層と前記上部領域との間に位置する下部領域とを含み、
前記下部領域の第1導電型不純物濃度は、前記上部領域の第1導電型不純物濃度よりも低い請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記光検出部は、前記第2導電型層と電気的に接続されたクエンチ抵抗をさらに有する請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1導電型はP型であり、前記第2導電型はN型であり、
前記第1導電型層はアノード層であり、前記第2導電型層はカソード層である請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記光検出部は、前記表面電極と前記裏面電極との間に並列接続された複数のアバランシェフォトダイオードを含むSiPM(Silicon Photomultiplier)である請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ウェルの深さは、前記光検出部の前記第1導電型層の深さよりも深い請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SiPM(Silicon Photomultiplier)は、ガイガーモードと呼ばれる領域で駆動されるアバランシェフォトダイオードアレイを有し、フォトンカウンティングが可能なデバイスである。また、SiPMとCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)回路とを混載したデバイスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6738129号公報
【文献】特許第6730820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、光検出部の受光面積の低減を抑えつつ、光検出部と回路部とを基板上に混載することができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体装置は、光検出部と、前記光検出部が出力する電気信号を処理する回路部と、を備える。前記光検出部は、第1導電型の基板と、前記基板上に設けられた第2導電型の半導体層と、前記基板の裏面に設けられた裏面電極と、前記半導体層内に設けられた第1導電型層と、前記第1導電型層上に設けられ、前記第1導電型層に接する第2導電型層と、前記第2導電型層と電気的に接続された表面電極と、を有する。前記回路部は、前記半導体層内に設けられた第1導電型の第1ウェルと、前記第1ウェル内に設けられた第2導電型の第2ウェルと、前記第1ウェル内に設けられた第2導電型の第1ドレイン層と、前記第1ウェル内に設けられた第2導電型の第1ソース層と、前記第1ドレイン層と前記第1ソース層との間における前記第1ウェルの表面上に設けられた第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート絶縁膜上に設けられた第1ゲート電極と、前記第2ウェル内に設けられた第1導電型の第2ドレイン層と、前記第2ウェル内に設けられた第1導電型の第2ソース層と、前記第2ドレイン層と前記第2ソース層との間における前記第2ウェルの表面上に設けられた第2ゲート絶縁膜と、前記第2ゲート絶縁膜上に設けられた第2ゲート電極と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】実施形態の半導体装置の光検出部の等価回路図である。
【
図3】実施形態の半導体装置の回路部における半導体層の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。以下の実施形態では第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明するが、第1導電型をN型、第2導電型をP型としてもよい。
【0008】
図1は、実施形態の半導体装置1の模式断面図である。
【0009】
半導体装置1は、光検出部10と回路部30とを有する。光検出部10と回路部30は、同じ基板81上に混載されている。
【0010】
光検出部10は、P型の基板81と、基板81上に設けられたN型の半導体層82と、基板81の裏面に設けられた裏面電極19と、半導体層82内に設けられたP型層11と、P型層11上に設けられ、P型層11に接するN型層12と、N型層12と電気的に接続された表面電極18とを有する。
【0011】
基板81はシリコン基板である。半導体層82、P型層11、及びN型層12はシリコン層である。半導体層82は、基板81上にエピタキシャル成長される。例えば、基板81のP型不純物濃度は、1×1018/cm3である。P型層11とN型層12とはPN接合を形成し、フォトダイオードを構成している。
【0012】
光検出部10の半導体層82の表面及びN型層12の表面には、例えばLOCOS(local oxidation of silicon)構造の絶縁膜14が設けられている。なお、LOCOS構造の代わりに、トレンチ構造の絶縁部が設けられていてもよい。
【0013】
光検出部10は、N型層12と電気的に接続されたクエンチ抵抗13をさらに有することができる。クエンチ抵抗13の材料は、例えばポリシリコンである。クエンチ抵抗13は絶縁膜14上に設けられている。絶縁膜14上には、クエンチ抵抗13を覆うように、絶縁性の保護膜15が設けられている。
【0014】
N型層12は、導電部材16を介して表面電極18と電気的に接続されている。導電部材16は、表面電極18の下方において保護膜15及び絶縁膜14を貫通してN型層12に達する。
【0015】
クエンチ抵抗13は、導電部材17を介して表面電極18と電気的に接続されている。導電部材17は、表面電極18の下方において保護膜15を貫通してクエンチ抵抗13に達する。
【0016】
光検出部10は、N型層12の表面側から光の入射を受け、受光した光を電気信号に変換する。光検出部10は、表面電極18と裏面電極19とを結ぶ方向(縦方向)に電流が流れる縦型フォトダイオード構造を有する。
【0017】
【0018】
光検出部10は、表面電極18と裏面電極19との間に並列接続された複数のアバランシェフォトダイオード20を含むSiPM(Silicon Photomultiplier)である。P型層11がアバランシェフォトダイオード20のアノード層であり、N型層12がアバランシェフォトダイオード20のカソード層である。
【0019】
表面電極18と裏面電極19との間には、アバランシェフォトダイオード20の降伏電圧よりも高い逆方向電圧が印加される。SiPMにおいては、ガイガーモードと呼ばれる領域(光電流の増倍率が高く動作電圧に比例する領域)においてフォトンの検出が可能となる。また、クエンチ抵抗13により、ガイガーモードの特性(傾きなど)を調整できる。
【0020】
回路部30は、光検出部10が出力する電気信号を処理する。回路部30は、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)回路を含む。CMOS回路は、N型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)40と、P型MOSFET60を含む。
【0021】
図1に示すように、回路部30の半導体層82内に、P型の第1ウェル90が設けられている。CMOS回路を構成する各半導体層は、第1ウェル90内に設けられている。第1ウェル90、及びCMOS回路を構成する各半導体層は、シリコン層である。第1ウェル90は光検出部10のP型層11よりも深く、第1ウェル90の深さは例えば3μm以上5μm以下程度である。
【0022】
N型MOSFET40は、第1ウェル90内に設けられたN型の第1ドレイン層41と、第1ウェル90内に設けられたN型の第1ソース層42と、第1ゲート絶縁膜43と、第1ゲート絶縁膜43上に設けられた第1ゲート電極44とを有する。
【0023】
第1ドレイン層41と第1ソース層42は、第1ウェル90内で互いに離間している。第1ゲート絶縁膜43は、第1ドレイン層41と第1ソース層42との間における第1ウェル90の表面上に設けられている。
【0024】
P型MOSFET60は、第1ウェル90内に設けられたN型の第2ウェル65と、第2ウェル65内に設けられたP型の第2ドレイン層61と、第2ウェル65内に設けられたP型の第2ソース層62と、第2ゲート絶縁膜63と、第2ゲート絶縁膜63上に設けられた第2ゲート電極64とを有する。
【0025】
第2ドレイン層61と第2ソース層62は、第2ウェル65内で互いに離間している。第2ゲート絶縁膜63は、第2ドレイン層61と第2ソース層62との間における第2ウェル65の表面上に設けられている。
【0026】
図3は、回路部30における第1ウェル90、第2ウェル65、第1ドレイン層41、第1ソース層42、第2ドレイン層61、及び第2ソース層62の模式平面図である。
【0027】
図3に示す平面視において、第1ウェル90は、第2ウェル65、第1ドレイン層41、第1ソース層42、第2ドレイン層61、及び第2ソース層62を囲んでいる。
【0028】
図1に示すように、絶縁膜83が、回路部30の各半導体層(第1ウェル90、第2ウェル65、第1ドレイン層41、第1ソース層42、第2ドレイン層61、及び第2ソース層62)の表面を覆っている。また、絶縁膜83は、第1ゲート電極44及び第2ゲート電極64を覆っている。
【0029】
第1ドレイン層41は、導電部材48を介して第1ドレイン電極52と電気的に接続されている。導電部材48は、第1ドレイン電極52の下方において絶縁膜83を貫通して第1ドレイン層41に達する。
【0030】
第1ソース層42は、導電部材46を介して第1ソース電極49と電気的に接続されている。導電部材46は、第1ソース電極49の下方において絶縁膜83を貫通して第1ソース層42に達する。
【0031】
第1ゲート電極44は、導電部材47を介して第1ゲート配線51と電気的に接続されている。導電部材47は、第1ゲート配線51の下方において絶縁膜83を貫通して第1ゲート電極44に達する。
【0032】
第2ドレイン層61は、導電部材68を介して第2ドレイン電極72と電気的に接続されている。導電部材68は、第2ドレイン電極72の下方において絶縁膜83を貫通して第2ドレイン層61に達する。
【0033】
第2ソース層62は、導電部材66を介して第2ソース電極69と電気的に接続されている。導電部材66は、第2ソース電極69の下方において絶縁膜83を貫通して第2ソース層62に達する。
【0034】
第2ゲート電極64は、導電部材67を介して第2ゲート配線71と電気的に接続されている。導電部材67は、第2ゲート配線71の下方において絶縁膜83を貫通して第2ゲート電極64に達する。
【0035】
光検出部10は、半導体層82の表面と基板81の裏面のそれぞれに電極を有する縦型構造である。このような縦型構造は、半導体層82の表面側にアノードとカソードの両電極を配置した横型構造に比べて、受光面積を広くでき、感度の向上を図れる。
【0036】
基板81には裏面電極19の電位が与えられる。この基板81は回路部30の領域にも設けられている。回路部30は、ドレイン、ソース、及びゲートの各電極が半導体層82の表面側に設けられた横型構造である。そのため、基板81と回路部30とを電気的に分離することが求められる。
【0037】
本実施形態によれば、回路部30の半導体層82内に設けた第1ウェル90によって基板81と回路部30とを電気的に分離している。第1ウェル90に、基板81に与える電位(裏面電極19の電位)よりも高い電位を与えることで、半導体層82と第1ウェル90とのPN接合から空乏層を伸展させることができる。
【0038】
したがって、本実施形態によれば、光検出部10の受光面積の低減を抑えつつ、光検出部10と回路部30とを基板81上に混載することができる。
【0039】
第1ウェル90は、N型MOSFET40の第1ドレイン層41及び第1ソース層42に接する上部領域90aと、半導体層82と上部領域90aとの間に位置する下部領域90bとを含む。
【0040】
上部領域90aにおける第1ドレイン層41と第1ソース層42との間の領域にN型MOSFET40のチャネルが形成される。チャネルが形成される領域を含む上部領域90aのP型不純物濃度は、N型MOSFET40の閾値等によって設定される。上部領域90aは、N型MOSFET40のP型ウェルとして機能する。
【0041】
下部領域90bのP型不純物濃度は、半導体層82と第1ウェル90とのPN接合から空乏層を伸展させやすくして耐圧を確保する観点から、上部領域90aのP型不純物濃度よりも低いことが好ましい。
【0042】
アバランシェフォトダイオード20は、シリコンに限らず、化合物半導体から形成してもよい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1…半導体装置、10…光検出部、11…第1導電型層、12…第2導電型層、13…クエンチ抵抗、18…表面電極、19…裏面電極、20…アバランシェフォトダイオード、30…回路部、40…N型MOSFET、60…P型MOSFET、65…第2ウェル、81…基板、82…半導体層、90…第1ウェル、90a…上部領域、90b…下部領域