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特許7598317耐熱性テキスタイルスリーブおよび耐熱性テキスタイルスリーブの製造方法
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  • 特許-耐熱性テキスタイルスリーブおよび耐熱性テキスタイルスリーブの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】耐熱性テキスタイルスリーブおよび耐熱性テキスタイルスリーブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/643 20060101AFI20241204BHJP
   C03C 25/1095 20180101ALI20241204BHJP
   C03C 25/27 20180101ALI20241204BHJP
   D06M 101/00 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
D06M15/643
C03C25/1095
C03C25/27
D06M101:00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021516792
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019052881
(87)【国際公開番号】W WO2020068926
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】62/736,030
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/580,606
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 省三
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-006160(JP,B1)
【文献】特公昭47-038505(JP,B1)
【文献】特表2013-507536(JP,A)
【文献】特表2013-538993(JP,A)
【文献】米国特許第03445267(US,A)
【文献】米国特許第04316930(US,A)
【文献】特開昭55-154354(JP,A)
【文献】標準化学用語辞典,第3刷,丸善株式会社,1996年01月30日,p.296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
C03C 25/00 - 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い部材を保護するためのテキスタイルスリーブであって、前記テキスタイルスリーブは、
内面および外面を有する筒状体と、
前記外面に付着して前記筒状体に耐熱性を付与するコーティングとを備え、
前記コーティングは、一部が中に配置されたフェニル官能基を含むシリコーンゴムであって、
前記コーティングがメチル官能基を含まない、テキスタイルスリーブ。
【請求項2】
前記シリコーンゴムは、フェニルを含むポリシロキサンである、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項3】
前記シリコーンゴムは、式R-SiO3/2を有し、式中Rはフェニルおよび酸素を含む、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項4】
前記シリコーンゴムは、式R-SiO3/2を有し、式中Rはフェニルおよび酸素からなる、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項5】
前記筒状体は、織られたまたは編組されたガラス繊維糸から作製されたものである、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項6】
前記筒状体の耐熱性は550℃以上である、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項7】
テキスタイルスリーブの製造方法であって、前記方法は、
筒状体を準備するステップと、
フェニル官能基およびメチル官能基を含むシリコーン樹脂を含有する被覆組成物を形成するステップと、
前記筒状体を前記被覆組成物で被覆することにより、被覆筒状体を作製するステップと、
前記被覆筒状体に3段階硬化プロセスを適用して前記被覆筒状体を硬化させることにより、メチル官能基を含まない前記テキスタイルスリーブを作製するステップとを含み、
前記3段階硬化プロセスは、
前記被覆筒状体を200℃と250℃との間の乾燥温度で加熱することにより乾燥させる第1段階と、
前記乾燥温度を500℃と650℃との間の最終硬化温度まで上昇させることにより前記メチル官能基を分解する第2段階と、
前記被覆筒状体を580℃の前記最終硬化温度で脱ガスする第3段階とを含む、方法。
【請求項8】
前記乾燥温度を上昇させるステップは、前記乾燥温度を5℃/分と10℃/分との間の予め定められた率で前記最終硬化温度まで上昇させることであると定義される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記3段階硬化プロセスは、前記被覆筒状体を前記最終硬化温度で30分間以上加熱することにより前記被覆筒状体から脱ガスする第3段階を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記被覆組成物を形成するステップは、前記シリコーン樹脂をキシレンおよびキシレン添加溶液に溶解させることにより、濃度が50%のシリコーン溶液を形成するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記被覆組成物を形成するステップは、前記シリコーン溶液を蒸留水と混合することにより、濃度が2%と10%との間である前記被覆組成物を生成するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
テキスタイルスリーブの製造方法であって、前記方法は、
筒状体を準備するステップと、
2%と10%との間の濃度を有し、フェニル官能基およびメチル官能基を含むシリコーン樹脂を含有する、被覆組成物を形成するステップと、
前記筒状体を前記被覆組成物で被覆することにより、被覆筒状体を作製するステップと、
前記被覆筒状体に3段階硬化プロセスを適用して前記被覆筒状体を硬化させることによりメチル官能基を含まない前記テキスタイルスリーブを得るステップとを含み、
前記3段階硬化プロセスは
前記被覆筒状体を200℃と250℃との間の乾燥温度で加熱することにより乾燥させる第1段階と、
前記乾燥温度を500℃と650℃との間の最終硬化温度まで上昇させることにより前記メチル官能基を分解する第2段階と、
前記被覆筒状体を580℃の前記最終硬化温度で脱ガスする第3段階とを含む、方法。
【請求項13】
前記被覆組成物を形成するステップは、前記シリコーン樹脂をキシレンおよびキシレン添加溶液に溶解させることにより、濃度が50%のシリコーン溶液を形成するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記被覆組成物を形成するステップは、前記シリコーン溶液を蒸留水と混合することにより、濃度が2%と10%との間である前記被覆組成物を生成するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記乾燥温度を上昇させるステップは、前記乾燥温度を5℃/分と10℃/分との間の予め定められた率で前記最終硬化温度まで上昇させることであると定義される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記3段階硬化プロセスは、前記最終硬化温度で30分間以上脱ガスする第3段階を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年9月25日に出願された米国仮出願第62/736,030号および2019年9月24日に出願された米国実用特許出願第16/580,606号に基づく優先権を主張し、その全開示をそのまま本明細書に引用により援用する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、概して細長い部材を保護するためのテキスタイルスリーブおよび当該テキスタイルスリーブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.先行技術の説明
テキスタイルスリーブは、当該技術において周知であり、さまざまな用途に使用することができる。そのような用途の1つは、車両のエンジンの温度センサであり、温度センサの耐熱性を改善する。テキスタイルスリーブは、温度センサのワイヤハーネス上に適用されて各ワイヤに断熱性および絶縁性を付与することが多い。典型的に、産業界においてテキスタイルスリーブに求められる耐熱温度は、ガス放出および炭化なしでおよそ550℃である。同時に、テキスタイルスリーブは可撓性を有するものでなければならない。このような場合の解決策の1つは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料のスリーブである。しかしながら、PTFEは好ましい耐熱およびガス放出条件を満たさない場合がある。これに代わる別の解決策は、セラミック材料で作られたスリーブを使用することである。しかしながら、セラミック材料は、非常に脆く、外部からの刺激、たとえば振動によって簡単に割れる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明は、ガス放出を最小に抑えて耐熱性を改善したテキスタイルスリーブを提供する。加えて、本発明は、耐久性、可撓性、耐擦り切れ性が改善されたテキスタイルスリーブを提供する。
【0005】
本発明の一局面は、細長い部材を保護するためのテキスタイルスリーブを提供することである。このテキスタイルスリーブは、内面および外面を有する筒状体を備える。コーティングが外面に付着して筒状体に耐熱性を付与する。コーティングは、一部が中に配置されたフェニルを含むシリコーンゴムである。フェニルは650℃までの温度で分解する。したがって、フェニルがシリコーンゴムの中に存在することで、シリコーンゴムおよび筒状体の耐熱性が効果的に高められ、それによって筒状体は550℃以上の耐熱性を有することができる。加えて、シリコーンゴムは導電性ではないので、筒状体は絶縁性を有することになる。さらに、フェニル基の存在は、硬化した樹脂に可撓性を加え、それによってシリカの割れおよび編まれたもしくは編組された筒状体の端部の擦り切れを防止する。
【0006】
本発明の別の局面は、テキスタイルスリーブの製造方法を提供することである。この方法は、筒状体を準備する最初のステップを含む。この方法は、その後、フェニル官能基およびメチル官能基を含むシリコーン樹脂を含有する被覆組成物を形成するステップに続く。次に、この方法は、筒状体を被覆組成物で被覆することにより、被覆筒状体を作製するステップに続く。その後、この方法は、被覆筒状体に3段階硬化プロセスを適用して被覆筒状体を硬化させることにより、テキスタイルスリーブを製造するステップに続く。硬化処理を異なる3つの段階に分割することで加熱温度を徐々に上昇させることができ、このことは、被覆筒状体が可撓性だけでなく耐熱特性を保持するのに役立つ。被覆筒状体は、直ちに上昇または急上昇する加熱温度に晒されると、直ちに硬化し可撓性を持たずに破壊される可能性がある。水酸基、メチル基、およびフェニル基は、硬化処理中に被覆筒状体から取り除かれるので、被覆筒状体は、硬化処理プロセスを通して重量損失を示す。
【0007】
本発明の別の局面は、テキスタイルスリーブの製造方法を提供することである。この方法は、筒状体を準備する最初のステップを含む。この方法は、その後、2%と10%との間の密度を有し、フェニル官能基およびメチル官能基を含むシリコーン樹脂を含有する、被覆組成物を形成するステップに続く。次に、この方法は、筒状体を被覆組成物で被覆することにより、被覆筒状体を作製するステップに続く。その後、この方法は、被覆筒状体を硬化させることによりテキスタイルスリーブを得るステップに続く。重要なのは、被覆組成物の密度が確実に10%を超えないようにすることであり、その理由は、被覆組成物の密度が10%を超えると編組されたまたは織られたガラス繊維からなる被覆筒状体が可撓性を持たずに簡単に破壊される可能性があることにある。
【0008】
本発明のその他の利点は、以下の詳細な説明が参照され添付の図面とともに考慮されるとより適切に理解されそれに伴って直ちに認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のある実施形態に係るテキスタイルスリーブを含む温度センサの分解図である。
図2】テキスタイルスリーブの部分斜視図である。
図3】テキスタイルスリーブの製造方法の概略図である。
図4】テキスタイルスリーブの硬化処理における加熱温度対加熱時間をグラフで示した図である。
図5】テキスタイルスリーブの硬化処理中の重量%対加熱温度をグラフで示した図である。
図6】テキスタイルスリーブの熱重量(TG)分析および示差熱分析(DTA)の図である。
図7】テキスタイルスリーブの擦り切れテストのために配置されたテキスタイルスリーブを有するマンドレルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施を可能にする実施形態の説明
図面を参照すると、いくつかの図面において同様の番号は対応する部分を示しており、本発明の一実施形態に従い構成されたテキスタイルスリーブの概要が図1に示されている。
【0011】
概ね筒状の形状を有するテキスタイルスリーブ20は、温度センサ24のワイヤハーネス22の周りに配置され、温度センサ24のワイヤハーネス22に絶縁性と550℃以上の耐熱性とを付与する。金属カラー25がテキスタイルスリーブの周りに配置されてテキスタイルスリーブ20は金属カラー25とワイヤハーネス22との間に挟まれる。テキスタイルスリーブ20は、適切な硬度を有し、振動、屈曲に対する可撓性を有し、設置が容易である。また、テキスタイルスリーブ20は、温度センサ24のガス放出を防止することにより、干渉を最小にして温度センサ24が正確な検出を提供できるようにする。本発明の一実施形態ではテキスタイルスリーブ20の色を白色にすることにより温度センサ24の構成要素と区別する必要があることが理解されるはずである。
【0012】
図1および図2を参照して、テキスタイルスリーブ20は、織られたまたは編組された筒状体26を有する。本発明の一実施形態に従うと、筒状体26は、織られたまたは編組されたガラス繊維糸からなる。筒状体26は、長手方向軸Aに沿って延びる任意の適切な長さで構成される。したがって、筒状体26は、さまざまな構造上の特性および構成を有するように作製することができる。筒状体26は、長手方向軸Aを中心として延在する外面28と内面30とを有する。筒状体26の外面28は外径D1を定める。筒状体26の内面は内径D2を定める、本発明の一実施形態では外径D1を2.7mm以下に、内径D2を1.32mm以上にできることが理解されるはずである。
【0013】
筒状体26の外面28は、外面28上に配置され外面28に付着して筒状体26に耐熱性を付与するコーティング32を有する。コーティング32は、一部が中に配置されたフェニルまたはフェニル官能基を含むシリコーンゴムである。これに代えて、シリコーンゴムは、フェニルを含むポリシロキサンであってもよい。シリコーンゴムは、式R-SiO3/2を有する有機的に変性されたシロキサンからなる立体網目分子構造を有する硬質コーティングであり、式中、Rはフェニル(C)および酸素を含む。本発明の別の実施形態に従うと、シリコーンゴムは、式R-SiO3/2を有する有機的に変性されたシロキサンからなる立体網目分子構造を有する硬質コーティングであり、式中、Rはフェニル(C)および酸素からなる。重要なのは、シリコーンゴムがフェニル基を含むことである。特に、フェニル基は650℃までの温度で分解する。したがって、フェニル基がシリコーンゴムの中に存在することで、シリコーンゴムおよび筒状体26の耐熱性が効果的に高められ、それによって筒状体26は550℃以上の耐熱性を有することができる。加えて、シリコーンゴムは導電性ではないので、筒状体26は絶縁性を有することになる。さらに、フェニル基の存在は、硬化した樹脂に可撓性を加え、それによってシリカの割れおよび編まれたもしくは編組された筒状体26の端部の擦り切れを防止する。
【0014】
本発明の別の局面は、テキスタイルスリーブ20の製造方法を提供することである。図3に示されるこの方法は、筒状体26を準備する第1のステップを含む。本発明の一実施形態に従うと、筒状体26は、ガラス繊維糸を交絡させる(interlace)、たとえば織るまたは編組することによって形成できる。この方法は次に、フェニル官能基およびメチル官能基を含むシリコーン樹脂を含有する被覆組成物を形成するステップに進む。被覆組成物を形成するステップは、シリコーン樹脂をキシレンおよび添加溶液に溶解させて密度50%のシリコーン溶液を形成するステップを含む。キシレンおよび添加溶液は、水酸基、メチル、およびフェニル官能基の混合物を含み得ることが理解されるはずである。シリコーン溶液を蒸留水と混合することにより、密度が2%と10%との間である被覆組成物を生成する。重要なことは、被覆組成物の密度が確実に10%を超えないようにすることであり、その理由は、被覆組成物の密度が10%を超えると編組されたまたは織られたガラス繊維からなる被覆筒状体が可撓性を持たずに簡単に破壊される可能性があることにある。このため、本発明では、テキスタイルスリーブ20に要求される硬度、可撓性、および擦り切れ性能に応じて、被覆溶液の密度が10%未満で2%と8%との間にあることが好ましい。
【0015】
被覆溶液の調製後に、筒状体26を被覆組成物に浸漬することによって被覆組成物で被覆することにより、被覆筒状体を形成する。限定される訳ではないが、噴霧等の他の方法を利用して被覆溶液を筒状体に塗布することにより被覆筒状体を形成できることが理解されるはずである。
【0016】
次に、この方法は、被覆筒状体を硬化することによりテキスタイルスリーブ20を得るステップに進む。図3および図4において最も明確に示されているように、硬化ステップ中、被覆筒状体は、オーブンの中に置かれて3段階硬化プロセスを経ることにより、テキスタイルスリーブ20となる。3段階硬化プロセスの第1段階において、被覆筒状体は、200℃と250℃との間の乾燥温度で約10分間の乾燥時間加熱されて乾燥される。乾燥ステップ中に、被覆筒状体中の水酸基がSi-O-Si結合から取り除かれる。言い換えると、硬化処理という第1段階は、水酸基を被覆筒状体から蒸発させる/取り除く凝縮プロセスとみなすことができる。
【0017】
第1段階の後に、硬化プロセスは、被覆筒状体のメチル官能基を分解させる第2段階に進む。分解ステップにおいて、乾燥温度を、500℃と650℃との間の最終硬化温度まで徐々に上昇させる。好ましくは、乾燥温度を、5℃/分と10℃/分との間の予め定められた率で最終硬化温度まで上昇させる。分解ステップにおいて、300℃と400℃との間で分解するメチル官能基は被覆筒状体から取り除かれる。
【0018】
第2段階の後に、硬化プロセスは、脱ガスという第3段階に進む。脱ガスステップにおいて、被覆筒状体は、最終硬化温度で30分間以上加熱される。より好ましくは、被覆筒状体は、580℃の温度で、30分間以上加熱されることにより、筒状体26の上のシリコーンゴムを形成する。典型的に、フェニル官能基は、およそ650℃で分解する。したがって、硬化処理の第3段階において、被覆筒状体中のフェニル官能基の一部が分解されて取り除かれる。言い換えると、硬化処理の第3段階は、フェニル官能基の一部が分解されて被覆筒状体から取り除かれる一方でフェニル官能基の一部が被覆筒状体の上に形成されたシリコーンゴムの中で保持される第2分解プロセスとみなすことができる。硬化処理の第3段階の終了時に、筒状体の上に配置されているシリコーンゴムは、フェニルを含むシリカ(SiO)である。
【0019】
重要なのは、硬化処理を異なる3つの段階に分割することで加熱温度を徐々に上昇させることであり、その理由は、被覆筒状体は、直ちに上昇または急上昇する加熱温度に晒されると、直ちに硬化し可撓性を持たずに破壊される可能性があることにある。水酸基、メチル基、およびフェニル基は、硬化処理中に被覆筒状体から取り除かれるので、被覆筒状体は、硬化処理プロセスを通して重量損失を示す。硬化処理中の被覆筒状体の重量損失は図4に示される。
【0020】
硬化処理後、得られたテキスタイルスリーブ20を所望の長さに切断してもよい。テキスタイルスリーブ20は、ブレードで冷間切断してもよく、熱間切断(800℃超に加熱)してもよい。熱間切断方法はテキスタイルスリーブ20に強固な切断エッジを形成できることが理解されるはずである。
【0021】
熱重量(thermalgravimetric)(TG)分析および示差熱分析(differential thermal analysis)(DTA)を、硬化樹脂を含むテキスタイルスリーブ20を用いて実施した。図5に示されるように、加熱プロセス後、フェニル基の温度耐性が高いので、テキスタイルスリーブ20は、550℃付近において重量損失を示さない。このことは、550℃付近においてテキスタイルスリーブ20の脱ガスの実施はないことを示している。
【0022】
また、本発明の実施形態の一例に係るテキスタイルスリーブ20を用いて擦り切れテストが実行される。図7に示されるように、擦り切れテスト中、長さ14mmのテキスタイルスリーブ20が、外径1.5mmのマンドレル34上に置かれている。フランジプレート36をマンドレルに挿入してテキスタイルスリーブ20をマンドレル34とフランジプレート36の間に挟む。テキスタイルスリーブ20は、フランジプレート36との間でおよそ4mm圧縮され、解放され、これが10サイクル行われる。10サイクルの後、本発明に従って構成されたテキスタイルスリーブ20の切断エッジに沿って擦り切れを見ることはできなかった。同様に、硬化樹脂で被覆されていないテキスタイルスリーブに対しても擦り切れテストが実施される。5サイクル後に、テキスタイルスリーブの切断エッジはほつれ始める。
【0023】
本発明に従って構成されたテキスタイルスリーブ20は、必要とされる大きさおよび長さに関係なく、さまざまな用途での使用に適していることが、理解されるはずである。上記テキスタイルスリーブは、たとえば、自動車、船舶、工業、航空、もしくは宇宙用途、または、保護スリーブが近くにある構成要素を熱および/または火から保護するのが望ましいその他任意の用途において、使用することができる。
【0024】
本発明の多数の修正形および変形が、上記教示に照らして可能であり、以下の発明の範囲の中で、具体的に記載されているもの以外のやり方で実施し得ることは、明らかである。記載されている特徴およびすべての実施形態の特徴はすべて、互いに組み合わせることが、そのような組み合わせに相互の矛盾がない限り、可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7