(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】薬液拡散システムおよび薬液拡散促進装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20241204BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20241204BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20241204BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20241204BHJP
A61B 8/12 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61M5/158 500Z
A61M25/00 600
A61M25/00 530
A61M5/172
A61M5/168 512
A61B8/12
(21)【出願番号】P 2021558192
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036226
(87)【国際公開番号】W WO2021100316
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2019207836
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019207837
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇都 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】船村 重彰
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-521118(JP,A)
【文献】特表2017-502715(JP,A)
【文献】特表2010-520871(JP,A)
【文献】特表2011-500288(JP,A)
【文献】国際公開第2015/049886(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0046230(US,A1)
【文献】特表2013-517847(JP,A)
【文献】特開2001-025467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 25/00
A61M 5/172
A61M 5/168
A61B 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を生体内の対象組織に拡散するための薬液拡散システムであって、
対象組織に穿刺され、側壁部
と、薬液が流れる内腔と、を有する薬液注入管と、
前記薬液注入管の前記側壁部に設けられており、前記薬液を拡散させるための第1超音波を発生する第1超音波発生部と、
該第1超音波発生部に接続され、対象組織の二次元または三次元の像に応じて前記第1超音波の照射条件を制御する超音波制御部と、を有し、
前記超音波制御部は、前記第1超音波発生部で発生する前記第1超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを制御し、
前記側壁部は、前記内腔に面している内表面と、前記薬液注入管の外に面している外表面とを有し、
前記側壁部の外表面に凹部が設けられており、
前記第1超音波発生部は前記凹部内に配置されており、
前記薬液注入管の径方向において、前記第1超音波発生部の外方端は前記薬液注入管の外方端と同一の位置にあるか、または前記薬液注入管の外方端よりも内方に位置して
おり、
前記薬液注入管の径方向において、前記第1超音波発生部の内方端は前記側壁部の内表面よりも外方に位置している薬液拡散システム。
【請求項2】
前記第1超音波と異なる発振周波数の第2超音波を発生させる第2超音波発生部と、
前記超音波制御部に接続されており、前記第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて前記像を形成する像形成部と、
前記超音波制御部に接続されており、前記像形成部により形成された前記像を記憶する記憶部と、をさらに有する請求項1に記載の薬液拡散システム。
【請求項3】
前記超音波制御部に接続されている処理部をさらに有し、
前記処理部は、薬液注入前の対象組織の前記像と、薬液注入後であって前記第1超音波の照射後の対象組織の前記像とを比較するものであり、
前記超音波制御部は、前記処理部での比較結果を用いて前記第1超音波の照射条件を制御する請求項1または2に記載の薬液拡散システム。
【請求項4】
前記超音波制御部にそれぞれ接続されているデータ格納部と処理部とをさらに有し、
前記データ格納部には、腫瘍の種類に応じた薬液の拡散パターンのデータを備えた拡散パターンテーブルが格納されており、
前記処理部は、前記拡散パターンテーブルの参照結果と、薬液注入後であって前記第1超音波の照射後の対象組織の前記像とを比較するものであり、
前記超音波制御部は、前記処理部での比較結果を用いて前記第1超音波の照射条件を制御する請求項1または2に記載の薬液拡散システム。
【請求項5】
前記超音波制御部に接続されている計測部をさらに有し、
前記計測部は、薬液注入前の前記像から、腫瘍の形状、大きさ、広がりおよび硬さの少なくともいずれか1つを計測するものであり、
前記超音波制御部は、前記計測部での計測結果を用いて前記第1超音波の照射条件を制御する請求項1~4のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項6】
前記超音波制御部に接続されている処理部をさらに有し、
前記処理部は、薬液注入後であって前記第1超音波の照射前の対象組織の前記像と、薬液注入後であって前記第1超音波の照射後の対象組織の前記像を比較するものであり、
前記超音波制御部は、前記処理部での比較結果を用いて前記第1超音波の照射条件を制御する請求項1~5のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項7】
前記第1超音波と異なる発振周波数であって対象組織を加熱するための第3超音波を発生させる第3超音波発生部をさらに有する請求項1~6のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項8】
前記第1超音波発生部が、前記第1超音波と異なる発振周波数であって診断用の像形成に用いる第2超音波と、前記第1超音波と異なる発振周波数であって対象組織を加熱するための第3超音波を発生させる請求項1~6のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項9】
前記薬液注入管の近位部に接続され、前記薬液注入管内に薬液を供給する液体供給部と、
該液体供給部に接続されており、前記薬液を冷却させる冷却部と、をさらに有する請求項1~8のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項10】
前記薬液注入管の近位部に接続され、前記薬液注入管内に薬液を供給する液体供給部と、
前記超音波制御部に接続されているデータ格納部と、をさらに有し、
前記データ格納部は、薬液の種類のデータを備えた薬液テーブルと、過去に診断された腫瘍の状態を示すデータを備えた腫瘍テーブルと、を有し、
前記超音波制御部は、前記腫瘍テーブルの参照結果に基づき、前記薬液テーブルから薬液の種類を選択して、前記液体供給部に対して、選択された種類の薬液を前記薬液注入管内に供給する指令信号を発する請求項1~9のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項11】
前記データ格納部は、前記第1超音波の発振周波数のデータを備えた周波数テーブルをさらに有し、
前記超音波制御部は、前記腫瘍テーブルの参照結果に基づき、前記周波数テーブルから前記第1超音波の発振周波数の値を選択して、前記第1超音波発生部に対して、選択された発振周波数の前記第1超音波を発生する指令信号を発する請求項10に記載の薬液拡散システム。
【請求項12】
前記第1超音波発生部は少なくとも2つの振動子を含み、前記2つの振動子は、前記薬液注入管の側壁部に設けられている請求項1~11のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項13】
前記第1超音波発生部は、前記薬液注入管の径方向の外方に向かって前記第1超音波を発射する請求項1~12のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項14】
前記超音波制御部に接続されている計測部をさらに有し、
前記計測部は、薬液注入前の前記像から、腫瘍の形状、大きさ、広がりおよび硬さの少なくともいずれか1つを計測するものであり、
前記超音波制御部は、前記計測部での前記腫瘍の計測結果を用いて、前記第1超音波発生部に対して、前記薬液注入管の周方向の位置によって前記第1超音波の強度と発振周波数の少なくともいずれか一方を変化させる指令信号を発する請求項12または13に記載の薬液拡散システム。
【請求項15】
前記超音波制御部は、前記薬液注入管の周方向において、前記薬液注入管の長手軸中心から前記腫瘍の外縁までの径方向の距離が長いほど前記第1超音波の強度を大きくする指令信号を発する請求項14に記載の薬液拡散システム。
【請求項16】
前記超音波制御部は、前記薬液注入管の周方向において、前記薬液注入管の長手軸中心から前記腫瘍の外縁までの径方向の距離が長いほど前記第1超音波の発振周波数を低くする指令信号を発する請求項14または15に記載の薬液拡散システム。
【請求項17】
前記薬液はファインバブルを含んでいる請求項1~16のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項18】
全ての超音波発生部が
、前記薬液注入管の前記側壁部に設けられて
おり、
全ての超音波発生部が、薬液が流れる前記内腔に設けられていない請求項1~17のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項19】
前記薬液注入管は対象組織に挿入される穿刺部を有し、前記第1超音波発生部が前記穿刺部に設けられている請求項1~18のいずれか一項に記載の薬液拡散システム。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の薬液拡散システムに用いられる薬液拡散促進装置であって、
対象組織に穿刺される薬液注入管と、前記薬液注入管に設けられており、前記薬液を拡散させるための第1超音波を発生する第1超音波発生部と、を有し、
前記第1超音波発生部は少なくとも2つの振動子を含み、前記2つの振動子は、前記薬液注入管の側壁部に設けられている薬液拡散促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん等の治療において、体内に注入された薬液を拡散するためのシステムおよび薬液拡散促進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
がん等の腫瘍の治療において、腫瘍等の体内組織に薬液を局所的に投与した後、当該組織に超音波を照射することによって薬液を体内組織へ拡散させる方法が提案されている。そのような治療に用いる装置として、特許文献1には、生体に対して光の送受波を行う光送受波手段と、生体に対して超音波の送受波を行う電気音響変換手段と、光および超音波の送受波の方向を制御する制御手段と、治療用の超音波が照射される生体の近傍に薬剤を投与するための薬剤投与手段を少なくとも備え、薬剤投与手段が、カテーテル型アプリケータの先端部近傍に投与口が設けられている診断・治療装置が開示されている。また、特許文献2には、対象の1つ以上の位置における処置部位に治療を提供するための超音波カテーテル・システムが開示され、該システムは、管状部材と、マイクロバブル貯蔵器と、超音波エネルギー源であって、該超音波エネルギーは、該処置部位をイメージングすることと、該マイクロバブルを破裂させることとに対して適合される、超音波エネルギー源と、該超音波エネルギー源に電気的活性化を送るように構成される制御回路とを含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-290548号公報
【文献】特表2011-500288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~2に記載の装置は、腫瘍全体に薬液が拡散されにくい点で改善の余地があった。そこで、本発明は、薬液を適切に拡散することができる薬液拡散システムおよび薬液拡散促進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の薬液拡散システムの一実施態様は、薬液を生体内の対象組織に拡散するための薬液拡散システムであって、対象組織に穿刺される薬液注入管と、薬液注入管に設けられており、薬液を拡散させるための第1超音波を発生する第1超音波発生部と、第1超音波発生部に接続され、対象組織の二次元または三次元の像に応じて第1超音波の照射条件を制御する超音波制御部と、を有し、超音波制御部は、第1超音波発生部で発生する第1超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを制御する点に要旨を有する。上記薬液拡散システムでは、対象組織の二次元または三次元の像に応じて、第1超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを制御するため、対象組織の状態に応じて薬液を必要な部位に適切に拡散することできる。このため、治療に必要な超音波の照射時間を短くすることが可能であり、患者や術者の負担の軽減に寄与するものとなる。
【0006】
上記薬液拡散システムは、第1超音波と異なる発振周波数の第2超音波を発生させる第2超音波発生部と、超音波制御部に接続されており、第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて像を形成する像形成部と、超音波制御部に接続されており、像形成部により形成された像を記憶する記憶部と、をさらに有することが好ましい。
【0007】
上記薬液拡散システムは、超音波制御部に接続されている処理部をさらに有し、処理部は、薬液注入前の対象組織の像と、薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の像とを比較するものであり、超音波制御部は、処理部での比較結果を用いて第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。
【0008】
上記薬液拡散システムは、超音波制御部にそれぞれ接続されているデータ格納部と処理部とをさらに有し、データ格納部には、腫瘍の種類に応じた薬液の拡散パターンのデータを備えた拡散パターンテーブルが格納されており、処理部は、拡散パターンテーブルの参照結果と、薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の像とを比較するものであり、超音波制御部は、処理部での比較結果を用いて第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。
【0009】
上記薬液拡散システムは、超音波制御部に接続されている計測部をさらに有し、計測部は、薬液注入前の像から、腫瘍の形状、大きさ、広がりおよび硬さの少なくともいずれか1つを計測するものであり、超音波制御部は、計測部での計測結果を用いて第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。
【0010】
上記薬液拡散システムは、超音波制御部に接続されている処理部をさらに有し、処理部は、薬液注入後であって第1超音波の照射前の対象組織の像と、薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の像を比較するものであり、超音波制御部は、処理部での比較結果を用いて第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。
【0011】
上記薬液拡散システムは、第1超音波と異なる発振周波数であって対象組織を加熱するための第3超音波を発生させる第3超音波発生部をさらに有することが好ましい。
【0012】
上記薬液拡散システムにおいて、第1超音波発生部が、第1超音波と、第1超音波と異なる発振周波数であって診断用の像形成に用いる第2超音波と、第1超音波と異なる発振周波数であって対象組織を加熱するための第3超音波を発生させることが好ましい。
【0013】
上記薬液拡散システムは、薬液注入管の近位部に接続され、薬液注入管内に薬液を供給する液体供給部と、液体供給部に接続されており、薬液を冷却させる冷却部と、をさらに有することが好ましい。
【0014】
上記薬液拡散システムは、薬液注入管の近位部に接続され、薬液注入管内に薬液を供給する液体供給部と、超音波制御部に接続されているデータ格納部と、をさらに有し、データ格納部は、薬液の種類のデータを備えた薬液テーブルと、過去に診断された腫瘍の状態を示すデータを備えた腫瘍テーブルと、を有し、超音波制御部は、腫瘍テーブルの参照結果に基づき、薬液テーブルから薬液の種類を選択して、液体供給部に対して、選択された種類の薬液を薬液注入管内に供給する指令信号を発することが好ましい。
【0015】
上記薬液拡散システムにおいて、データ格納部は、第1超音波の発振周波数のデータを備えた周波数テーブルをさらに有し、超音波制御部は、腫瘍テーブルの参照結果に基づき、周波数テーブルから第1超音波の発振周波数の値を選択して、第1超音波発生部に対して、選択された発振周波数の第1超音波を発生する指令信号を発することが好ましい。
【0016】
上記薬液拡散システムにおいて、第1超音波発生部は少なくとも2つの振動子を含み、2つの振動子は薬液注入管の側壁部に設けられていることが好ましい。
【0017】
上記薬液拡散システムにおいて、第1超音波発生部は、薬液注入管の内腔に設けられており、かつ、薬液注入管の長手軸方向に平行な回転軸を有していることが好ましい。
【0018】
上記薬液拡散システムにおいて、第1超音波発生部は、薬液注入管の径方向の外方に向かって第1超音波を発射することが好ましい。
【0019】
上記薬液拡散システムは、超音波制御部に接続されている計測部をさらに有し、計測部は、薬液注入前の像から、腫瘍の形状、大きさ、広がりおよび硬さの少なくともいずれか1つを計測するものであり、超音波制御部は、計測部での腫瘍の計測結果を用いて、第1超音波発生部に対して、薬液注入管の周方向の位置によって第1超音波の強度と発振周波数の少なくともいずれか一方を変化させる指令信号を発することが好ましい。
【0020】
上記薬液拡散システムにおいて、超音波制御部は、薬液注入管の周方向において、薬液注入管の長手軸中心から腫瘍の外縁までの径方向の距離が長いほど第1超音波の強度を大きくする指令信号を発することが好ましい。
【0021】
上記薬液拡散システムにおいて、超音波制御部は、薬液注入管の周方向において、薬液注入管の長手軸中心から腫瘍の外縁までの径方向の距離が長いほど第1超音波の発振周波数を低くする指令信号を発することが好ましい。
【0022】
上記薬液拡散システムにおいて、薬液はファインバブルを含んでいることが好ましい。
【0023】
本発明は薬液拡散促進装置も提供する。上記薬液拡散システムに用いられる本発明の薬液拡散促進装置の一実施態様は、対象組織に穿刺される薬液注入管と、薬液注入管に設けられており、薬液を拡散させるための第1超音波を発生する第1超音波発生部と、を有し、第1超音波発生部は少なくとも2つの振動子を含み、2つの振動子は薬液注入管の側壁部に設けられている。これにより、第1超音波発生部を動かすことなく超音波の照射方向、照射位置、強度等を変えることができる。
【0024】
上記薬液拡散促進装置において、第1超音波発生部は、薬液注入管の内腔に設けられており、かつ、薬液注入管の長手軸方向に平行な回転軸を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
上記薬液拡散システムによれば、対象組織の二次元または三次元の像に応じて、第1超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを制御するため、対象組織の状態に応じて薬液を必要な部位に適切に拡散することできる。このため、治療に必要な超音波の照射時間を短くすることが可能であり、患者や術者の負担の軽減に寄与するものとなる。また、上記薬液拡散促進装置によれば、第1超音波発生部を動かすことなく超音波の照射方向、照射位置、強度等を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る薬液拡散システムのブロック図を表す。
【
図2】
図1に示した薬液拡散システムの薬液拡散促進装置の構造を示す断面側面図を表す。
【
図3】
図2に示した薬液拡散促進装置のIII-III線に沿った断面図を表す。
【
図4】
図2に示した薬液拡散促進装置の変形例を示す断面側面図を表す。
【
図5】
図2に示した薬液拡散促進装置の他の変形例を示す断面側面図を表す。
【
図6】
図5に示した薬液拡散促進装置のVI-VI線に沿った断面図を表す。
【
図7】
図2に示した薬液拡散促進装置の薬液注入管および超音波発生部を腫瘍内に穿刺したときの超音波診断画像のイメージ図を表す。
【
図8】
図1に示した薬液拡散システムにおける処置フローの一例を示す図を表す。
【
図9】
図1に示した薬液拡散システムにおける処置フローの他の例を示す図を表す。
【
図10】
図1に示した薬液拡散システムにおける処置フローのさらに他の例を示す図を表す。
【
図11】本発明の他の実施形態に係る薬液拡散システムのブロック図を表す。
【
図12】本発明のさらに他の実施形態に係る薬液拡散システムのブロック図を表す。
【
図13】
図12に示した薬液拡散システムにおける処置フローの一例を示す図を表す。
【
図14】本発明のさらに他の実施形態に係る薬液拡散システムのブロック図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0028】
本発明の薬液拡散システムの一実施態様は、薬液を生体内の対象組織に拡散するための薬液拡散システムであって、対象組織に穿刺される薬液注入管と、薬液注入管に設けられており、薬液を拡散させるための第1超音波を発生する第1超音波発生部と、第1超音波発生部に接続され、対象組織の二次元または三次元の像に応じて第1超音波の照射条件を制御する超音波制御部と、を有し、超音波制御部は、第1超音波発生部で発生する第1超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを制御する点に要旨を有する。上記薬液拡散システムによれば、対象組織の二次元または三次元の像に応じて、第1超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを制御するため、対象組織の状態に応じて薬液を必要な部位に適切に拡散することできる。このため、治療に必要な超音波の照射時間を短くすることが可能であり、患者や術者の負担の軽減に寄与するものとなる。
【0029】
薬液拡散システムは、がん等の腫瘍の治療方法の一つである薬物療法において、生体内の腫瘍等の対象組織に局所的に投与された薬液を拡散するために用いられる。
【0030】
薬液は、薬液注入管を用いて対象組織内に投与され、超音波発生部から照射される超音波によって対象組織内に拡散される。対象組織に投与される薬液は、抗がん剤を含むことができる。抗がん剤としては、例えば、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、抗腫瘍性抗生物質等の細胞障害性抗がん薬;内分泌療法薬;免疫チェックポイント阻害剤等の分子標的薬;腫瘍溶解性ウィルス等を含むウィルス療法薬等を用いることができる。あるいは、経皮的エタノール療法において抗がん剤として用いられる無水エタノールが薬液に含まれていてもよい。薬液は、ペルフルブタンやガラクトース・パルミチン酸混合物等の超音波造影剤を含んでいてもよい。
【0031】
薬液はファインバブルを含むことが好ましい。ファインバブルは、球相当直径が100μm以下の気泡である。ファインバブルと超音波の併用により、治療的観点では熱的効果またはキャビテーションもしくはラジエーションといった非熱的効果等の様々な機序で高いドラックデリバリー効果を発現することができる。また、診断的観点ではファインバブルを含有する組織の超音波反射強度を高めることができるため、超音波反射画像の輝度を上昇させることが可能となる。
【0032】
ファインバブルの気泡径、気泡内気体の種類、気体コアに対するシェルの有無については、腫瘍の状態に応じて適宜選択することができる。
【0033】
ファインバブルの気泡内気体の種類は特に限定されないが、例えば、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、水素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトン等の不活性ガスや、フッ化炭素、六フッ化硫黄等を挙げることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
気体コアに対するシェルを構成する材料としては、例えば、リン脂質、ポリカチオン性脂質、タンパク質、高級脂肪酸、糖類、ステロール類、界面活性剤、天然または合成分子等を挙げることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
図1~
図8を参照しながら、薬液拡散システムの構成例およびこのシステムにおける処置フローの例を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る薬液拡散システムのブロック図を表す。
図2は、
図1に示した薬液拡散システムの薬液拡散促進装置の構造を示す断面側面図を表す。
図3は、
図2に示した薬液拡散促進装置のIII-III線に沿った断面図を表す。
図4~
図5は、
図2に示した薬液拡散促進装置の変形例を示す断面側面図を表す。
図6は、
図5に示した薬液拡散促進装置のVI-VI線に沿った断面図を表す。
図7は、
図2に示した薬液拡散促進装置の薬液注入管および超音波発生部を腫瘍内に穿刺したときの超音波診断画像のイメージ図を表す。
図8は、
図1に示した薬液拡散システムにおける処置フローの一例を示す図を表す。薬液拡散システム1は、薬液注入管3と、第1超音波発生部11と、超音波制御部20と、を有する。
図1では、薬液拡散促進装置2が、対象組織に穿刺される薬液注入管3と、薬液注入管3に設けられており、薬液を拡散させるための第1超音波を発生する第1超音波発生部11と、を有している例を示している。
【0036】
薬液注入管3は長手軸方向に第1端と第2端を有している。第1端は遠位端、第2端は近位端ということもできる。薬液拡散システム1および薬液拡散促進装置2において、遠位側とは薬液注入管3の長手軸方向の第1端側であって処置対象側を指す。また近位側とは薬液注入管3の長手軸方向の第2端側であって使用者(術者)の手元側を指す。各部材をその長手軸方向で二等分割したときの近位側を近位部、遠位側を遠位部と称することがある。
図2においては左側が遠位側、右側が近位側を表している。また、薬液拡散促進装置2の内方とは、薬液注入管3の径方向において薬液注入管3の長手軸中心に向かう方向を指し、外方とは、内方とは反対方向の放射方向を指す。
【0037】
薬液注入管3は、生体内の対象組織に穿刺される管状の部材であり、対象組織内に局所的に薬液を投与する機能を有する。薬液注入管3は遠位部と近位部を有しており、遠位部に患者の対象組織に挿入される穿刺部3aが設けられている。また、薬液注入管3は、その長手軸方向に延在している一または複数の内腔3bを有しており、少なくとも1つの内腔3bは薬液が流れる流路として機能する。
【0038】
薬液注入管3の遠位端部には外部と連通する開口3cが設けられており、開口3cから薬液を薬液注入管3の外に放出可能であることが好ましい。開口3cは、
図2に示すように遠位側を向くように設けられていてもよく、図示していないが薬液注入管3の側壁部3dに設けられていてもよい。
【0039】
穿刺部3aを有する薬液注入管3として、
図2に示すように、薬液注入管3が針状に形成され、当該針の先端が遠位側に位置しているものが挙げられる。穿刺部3aは、組織に穿刺しやすいように形成されていれば特に限定されないが、
図2に示すように薬液注入管3の遠位端に傾斜した開口縁3eを有していることが好ましい。
【0040】
図2に示すように、薬液注入管3の近位部には術者が把持する第1把持部9が好ましく接続される。
【0041】
薬液注入管3は、一または複数の金属線材がらせん状に巻回され形成されている中空コイル、上記中空コイルまたは中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの、筒状の樹脂チューブ、またはこれらを長手軸方向に接続したものが挙げられる。薬液注入管3が筒状の樹脂チューブである場合、薬液注入管3は単層または複数層から構成することができ、長手軸方向または周方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0042】
薬液注入管3は樹脂または金属から構成されることが好ましい。薬液注入管3を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。薬液注入管3を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。特に、Ni-Ti合金から構成されている線材は、形状記憶性に優れており、高弾性である。また、線材は、上述の金属、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等の繊維材料であってもよい。繊維材料は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。また、樹脂から構成されている筒状体に金属線材等の補強材が配設されているものを薬液注入管3として用いてもよい。
【0043】
図2に示すように、薬液拡散促進装置2は、薬液注入管3を収容可能な外管5を有していることが好ましい。これにより、治療非対象組織部位や内視鏡の鉗子チャンネル内を傷つけないように、外管5の内腔5bに薬液注入管3を配置することができる。外管5は、遠位部と近位部を有する部材である。また外管5は長手軸方向に第1端(遠位端)と第2端(近位端)を有している。外管5はその遠位側に設けられている開口5aを介して外部と連通している。対象組織に薬液注入管3を穿刺する際には、開口5aから薬液注入管3の穿刺部3aを突出させる。なお、外管5の近位部には術者が把持するための第2把持部10が設けられていてもよい。第2把持部10は、例えば筒状に形成することができる。
【0044】
外管5は、薬液注入管3の構成材料の説明を参照することができる。外管5の材料は、薬液注入管3の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。外管5は薬液注入管3と同様に、樹脂チューブ、単線または複数の線材、撚線の線材を特定のパターンで配置することによって形成された筒状体、金属管またはこれらを組み合わせたものを用いることができる。
【0045】
第1超音波発生部11は、薬液注入管3に設けられており、薬液を拡散させるための第1超音波を発生する部分である。第1超音波は、薬液拡散のための治療用の超音波である。第1超音波発生部11で発生する第1超音波の発振周波数や超音波出力は、処置の種類、薬液の種類や用量に応じて適宜設定することができる。第1超音波発生部11における超音波のスキャン方式としては、電子走査式や機械走査式が挙げられる。また、超音波の発生方法としては、圧電方式や静電方式が挙げられる。
【0046】
第1超音波の発振周波数は、1kHz以上であることが好ましく、10kHz以上であることがより好ましく、100kHz以上であることがさらに好ましく、また、10MHz以下であることが好ましく、1MHz以下であることがより好ましく、500kHz以下であることがさらに好ましい。このように発振周波数を設定することにより、薬液を効果的に拡散することが可能となる。
【0047】
第1超音波の超音波出力Isptaは、100mW/cm2以上であることが好ましく、300mW/cm2以上であることがより好ましく、500mW/cm2以上であることがさらに好ましく、また、10W/cm2以下であることが好ましく、5W/cm2以下であることがより好ましく、1W/cm2以下であることがさらに好ましい。このように超音波出力を設定することにより、薬液を効果的に拡散することが可能となる。
【0048】
図2に示すように、第1音波発生部11は、薬液注入管3の径方向の外方に向かって第1超音波を発射することが好ましい。これにより、薬液注入管3を生体内の対象組織に挿入したときに、薬液注入管3の周りに存在する対象組織に向けて超音波を照射することが可能となる。
図2では、第1超音波の伝搬方向を方向zで示している。なお、第1超音波発生部11は、薬液注入管3の遠位側に向かって超音波を発射してもよい。
【0049】
第1超音波発生部11は、超音波探触子を含むことができる。超音波探触子は、電気信号を超音波に変換して、超音波の発信および受信を行うものである。超音波探触子は、一振動子型探触子であってもよく、発信振動子および受信振動子を有する二振動子型探触子であってもよい。振動子は、例えば、2つの電極と、この2つの電極に挟持されている圧電材料とを有する構成とすることができる。圧電材料は、圧電性を示す結晶性物質であり、機械的ひずみを与えたとき電圧を発生するか、逆に電圧を加えると機械的ひずみを発生する物質である。圧電材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)、ジルコンチタン酸鉛(PZT)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、1-3コンポジット複合圧電材料等を用いることができる。
【0050】
図2~
図3に示すように、第1超音波発生部11は、薬液注入管3の側壁部3dに設けられていることが好ましい。これにより、生体内の対象組織への超音波の照射が行いやすくなる。なお、第1超音波発生部11は、薬液注入管3の穿刺部3aに設けられていることがより好ましい。これにより、第1超音波発生部11を対象組織内に挿入することが可能となり、より一層、薬液拡散効果を高めることができる。
【0051】
図3に示すように、第1超音波発生部11は少なくとも2つの振動子11Aを含み、2つの振動子11Aは、薬液注入管3の側壁部3dに設けられていることが好ましい。第1超音波発生部11は少なくとも2つの一振動子型探触子を含み、少なくとも2つの一振動子型探触子の振動子11ABは薬液注入管3の側壁部3dに設けられていることがより好ましい。これにより、各振動子11Aの発信および受信のタイミングを電子制御することで、第1超音波発生部11そのものを動かすことなく、超音波の照射方向、照射位置、強度等を変えることができるフェーズドアレイ法を用いることができる。
【0052】
第1超音波発生部11は少なくとも2つの振動子11Aを含み、2つの振動子11Aは薬液注入管3の側壁部3dに設けられており、2つの振動子11Aから発生する超音波の位相は互いにずれていることが好ましい。これにより、第1超音波発生部11そのものを動かすことなく、超音波の照射方向、照射位置、強度等を変えることができる。
【0053】
2つの振動子11Aから発生する超音波の位相は互いにT/4以上ずれていることが好ましく、T/3以上ずれていることがより好ましく、2T/5以上ずれていることがさらに好ましく、また、3T/4以下ずれていることが好ましく、2T/3以下ずれていることがより好ましく、T/2以下ずれていることがさらに好ましい。なお、Tは超音波の振動周期(単位:s)である。このように超音波の位相のずれを上記範囲に設定することで、第1超音波発生部11を動かさなくても、超音波の照射方向、照射位置、強度等を変えることができる。
【0054】
超音波の位相が互いにずれている関係にある2つの振動子11Aは、薬液注入管3の周方向において隣り合って配置されていることが好ましい。このように振動子11Aを配置することにより、2つの振動子11Aの超音波の波面の干渉を制御しやすくなる。
【0055】
第1超音波発生部11は少なくとも2つの振動子11Aを含み、2つの振動子11Aは薬液注入管3の側壁部3dに設けられており、2つの振動子11Aから発生する超音波の強度がそれぞれ異なるように制御されていることが好ましい。このように第1超音波発生部11を構成することによっても、第1超音波発生部11そのものを動かすことなく、超音波の照射方向、照射位置、強度等を変えることができる。
【0056】
振動子11Aは、例えば、矩形状や帯状等の多角形状、リング状等に形成することができる。このような形状にすることでアレイ状つまり規則的に複数の振動子11Aを配列することができる。振動子11Aを矩形状や帯状等の多角形状にすることによって、複数の振動子11Aを薬液注入管3の長手軸方向または周方向に並べて配置しやすくなる。また、振動子11Aをリング状にすることによって、超音波を一度に広範囲に亘って発生させることができるため、対象組織に注入した薬液を周方向に拡散させやすくなる。また、リング状の複数の振動子11Aは薬液注入管3の長手軸方向に並べて配置しやすくなる。
【0057】
第1超音波発生部11に設けられる振動子11Aの数は特に限定されないが、8個以上設けられていることがより好ましく、16個以上設けられていることがさらに好ましく、32個以上設けられていることがさらにより好ましく、64個以上設けられていることが特に好ましく、また、256個以下設けられていてもよく、128個以下設けられていてもよい。このように振動子11Aの数を設定することにより、超音波の照射方向、照射位置、強度等を精度よく制御することができる。
【0058】
第1超音波発生部11が複数の振動子11Aを含み、複数の振動子11Aが連続的に配列されていることが好ましい。例えば、2つの振動子11Aが、薬液注入管3の周方向に隣り合って配置されていることが好ましい。このように振動子11Aが設けられている場合には、診断用超音波を周方向に順番に受信することで360度方向の画像を構築することが可能となる。また、薬液注入管3の周方向の位置によって超音波の強度や発振周波数を変化させることができる。その他、複数の振動子11Aの配列は特に限定されず、薬液注入管3の長手軸方向に並んで配置されていてもよく、薬液注入管3の長手軸方向および周方向に並んで配置されていてもよい。
【0059】
図4は、
図2に示した薬液拡散促進装置2の変形例を示す断面側面図である。
図4に示すように、薬液注入管3の側壁部3dに凹部3gが設けられていることが好ましい。その場合、第1超音波発生部11の少なくとも一部が凹部3gに配置されていることが好ましい。これにより、第1超音波発生部11の少なくとも一部を凹部3gに収めることができるため、薬液注入管3の径方向外方への第1超音波発生部11の過度な突出を防ぐことができる。このため、薬液注入管3の対象組織への穿刺が行いやすくなる。
【0060】
薬液注入管3の径方向において、第1超音波発生部11の外方端が薬液注入管3の外方端と同一の位置にあるか、または薬液注入管3の外方端よりも内方に位置していることが好ましい。このように第1超音波発生部11を配置することにより、第1超音波発生部11が薬液注入管3の表面から径方向外方に向かって突出しないため、薬液注入管3の対象組織への穿刺が行いやすくなる。このような薬液拡散促進装置2としては、
図4に示すように、薬液注入管3の凹部3gに第1超音波発生部11全体が配置されている態様が挙げられる。
【0061】
図2~
図3では、第1超音波発生部11は、薬液注入管3の側壁部3dの外表面よりも外方に配置されている例を示したが、
図4に示すように、第1超音波発生部11の少なくとも一部が、側壁部3dの壁内に配置されていてもよい。また、図示していないが、第1超音波発生部11の少なくとも一部が側壁部3dの内腔に配置されていてもよい。
【0062】
再び、
図3に戻って説明する。薬液注入管3の径方向において、振動子11Aよりも内方に吸音材11Bが設けられていることが好ましい。このように吸音材11Bを設けることにより、振動子11Aから内方に向かって照射される超音波を減衰することができる。なお、振動子11Aは吸音材11Bに支持されていることが好ましい。これにより、吸音材11Bによって振動子11Aを背面から支持することにより、振動子11Aの変形を抑えることができる。
【0063】
吸音材11Bは、超音波の減衰率や音響インピーダンスを適切に有している材料から構成されていればよく、例えば母材とフィラーを含む混合物から構成される。母材の材料としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂を挙げることができる。フィラーの材料としては、金属酸化物やセラミック系微粒子を挙げることができる。
【0064】
薬液注入管3の径方向において、振動子11Aは薬液注入管3よりも外方に配置されており、薬液注入管3の比重が1以下であることが好ましい。生体組織の比重はほぼ1であるため、このように薬液注入管3自体に吸音効果を付与することによっても、振動子から内方に向かって照射される超音波を減衰することができる。
【0065】
図示していないが、第1超音波発生部11は、超音波の伝搬方向に指向性を有していてもよい。その場合、薬液注入管3に複数の振動子11Aを設ける必要はないため、第1超音波発生部11が設けられている部分における薬液注入管3の大径化を抑制することができる。その結果、対象組織への薬液注入管3の穿刺の患者の負担を低減することができる。
【0066】
第1超音波発生部11において、振動子11Aよりも径方向の外方に音響整合層11Cが設けられていてもよい。これにより、第1超音波発生部11からの超音波が腫瘍内に入射しやすくなる。また、超音波を集束させる観点からは、第1超音波発生部11において、振動子11Aよりも径方向の外方に音響レンズが設けられていることが好ましい。音響レンズは、音響整合層11Cよりも径方向の外方に設けることができる。
【0067】
図示していないが、振動子11Aと電源などのエネルギー供給源は導線によって接続することができる。導線は、薬液注入管3の側壁部3dの内部や側壁部3dの外表面上または内表面上に配置することができる。導線としては、電気エネルギーや光エネルギーの導体を用いたものが挙げられ、表面にコーティングがされていてもよい。導線としては、導電性材料のコアに非導電性材料の被覆を行った導線、光ファイバーなどを用いることができる。
【0068】
図示していないが、薬液注入管3の外側であって第1超音波発生部11よりも近位側には、薬液注入管3の長手軸方向の中央位置での外径よりも大きい外径を有する大径部が設けられていてもよい。大径部としては、薬液注入管3の径方向の外方に設けられたリング状部材を挙げることができる。大径部の存在により、対象組織内に注入された薬液が近位側に逆流してもこれを堰き止めることが可能となる。
【0069】
図示していないが、第1超音波発生部11が側壁部3dに設けられている薬液注入管3の内腔3bに、生体内の対象組織に穿刺される第2薬液注入管がさらに設けられていてもよい。これにより、薬液注入管3だけでなく第2薬液注入管からも薬液を放出することができるため、薬液が腫瘍全体に行き渡りやすくなり、薬液による治療効果を高めることができる。
【0070】
第2薬液注入管の構成については、薬液注入管3の説明を参照することができる。第2薬液注入管の構成は、薬液注入管3の構成と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第2薬液注入管内に供給される薬液の種類は、薬液注入管3内に供給される薬液の種類と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0071】
第2薬液注入管は、薬液注入管3に対して薬液注入管3の長手軸方向に移動可能であることが好ましい。これにより、対象組織の形状等に応じて第2薬液注入管からの薬液の放出位置を調整することができる。
【0072】
第2薬液注入管を薬液注入管3に対して最も遠位側に移動させたときに、第2薬液注入管の遠位端は、薬液注入管3の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましい。これにより、薬液注入管3よりも遠位側の位置で第2薬液注入管から薬液を放出することができるため、薬液を対象組織の遠位側に到達させやすくなり、薬液による治療効果を高めることができる。
【0073】
図示していないが、第2薬液注入管の側壁部に超音波発生部(以下では「第4超音波発生部」と称する)が設けられていてもよい。第4超音波発生部は、第1超音波発生部11と同様に、薬液を拡散させるための第4超音波を発生する部分である。このように第4超音波発生部を設けることにより、薬液が腫瘍全体により一層行き渡りやすくなり、薬液による治療効果を高めることができる。
【0074】
第4超音波の発振周波数や超音波出力は、処置の種類、薬液の種類や用量に応じて適宜設定することができる。第4超音波の発振周波数や超音波出力は、第1超音波と同じであっても異なっていてもよい。第4超音波発生部の構成としては、第1超音波発生部11の説明を参照することができる。
【0075】
第4超音波発生部が第2薬液注入管の側壁部に設けられている場合、第2薬液注入管を薬液注入管3に対して最も遠位側に移動させたときに、第4超音波発生部の遠位端は、第超音波発生部11の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましい。これにより、薬液注入管3よりも遠位側の位置で第4超音波発生部により薬液拡散用の第4超音波を発生することができるため、薬液が腫瘍全体に行き渡りやすくなり、薬液による治療効果を高めることができる。
【0076】
図5は、
図2に示した薬液拡散促進装置の変形例を示す断面側面図を表し、
図6は、
図5に示した薬液拡散促進装置のVI-VI線に沿った断面図を表す。
図5~
図6に示すように、第1超音波発生部11は、薬液注入管3の内腔3bに設けられており、かつ、薬液注入管3の長手軸方向に平行な回転軸11dを有していてもよい。その場合、第1超音波発生部11は、回転軸11d周りに360度回転することが好ましい。このように第1超音波発生部11を設けることにより、機械走査式の薬液拡散促進装置2を得ることができる。なお、
図2~
図4に示した薬液拡散促進装置2と同様の構成については説明を省略する。
【0077】
第1超音波発生部11が薬液注入管3の内腔3bに設けられており、かつ、薬液注入管3の長手軸方向に平行な回転軸11dを有している場合、第1超音波発生部11は超音波の伝搬方向に指向性を有していることが好ましい。これにより、対象組織のうち必要な部分に対して第1超音波発生部11からの超音波を照射しやすくなる。
【0078】
第1超音波発生部11で発生する超音波が薬液注入管3に吸収されて減衰することを防ぐために、薬液注入管3の比重は1以上であることが好ましい。薬液注入管3の長手軸方向の少なくとも一部の比重が1以上であることが好ましく、例えば、薬液注入管3のうち長手軸方向において第1超音波発生部11と重なっている部分の比重が1以上であることがより好ましい。
【0079】
第1超音波発生部11を薬液注入管3の内腔3bに配置する構成としては、薬液拡散促進装置2が、薬液注入管3の内腔3bに配置されている内挿部材4をさらに有し、内挿部材4の遠位端部に第1超音波発生部11が保持されている態様が挙げられる。これにより、薬液注入管3の内腔3bであって、内挿部材4の外方に薬液を流すことができる。薬液注入管3の長手軸方向に平行な直線を回転軸11dとして内挿部材4を回転させることにより、第1超音波発生部11を回転させることが可能となる。
【0080】
内挿部材4は、
図5~
図6に示すように、薬液注入管3の長手軸方向に延在している中空状のシャフト4Aと、シャフト4Aの内腔に配置され、シャフト4Aの長手軸方向に延在している支持部材4Bと、を有している構成とすることができる。その場合、支持部材4Bの遠位部に第1超音波発生部11を固定することができる。支持部材4Bはシャフト4Aと固定されていてもよく、シャフト4Aと非固定であってもよい。なお、シャフト4Aの内腔への薬液の浸入を抑制するために、シャフト4Aの遠位端は閉じられていることが好ましい。
【0081】
シャフト4Aを構成する材料は、薬液注入管3の構成材料の説明を参照することができる。シャフト4Aの材料は、薬液注入管3の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。シャフト4Aとしては、薬液注入管3と同様に、樹脂チューブ、単線または複数の線材、撚線の線材を特定のパターンで配置することによって形成された筒状体、金属管またはこれらを組み合わせたものを用いることができる。しかしながら、第1超音波発生部11から発生した超音波がシャフト4Aに吸収されて減衰することを防ぐために、シャフト4Aのうち長手軸方向において第1超音波発生部11と重なっている部分の比重が1以上であることが好ましい。
【0082】
支持部材4Bの遠位部に第1超音波発生部11を固定する方法は特に限定されず、
図5に示すように支持部材4Bの遠位部に偏平部4Baが設けられ、偏平部4Baに第1超音波発生部11が固定されていてもよい。また、支持部材4Bの遠位端部に第1超音波発生部11が接続されていてもよい。支持部材4Bよりも遠位側に第1超音波発生部11が設けられていてもよい。
【0083】
支持部材4Bとしては、棒状部材やトルクワイヤが挙げられる。トルクワイヤとしては、一または複数の線材がらせん状に巻回されて形成されているコイル体が挙げられる。
【0084】
図5~
図6に示した薬液拡散促進装置2において超音波の伝搬方向を変えるには、支持部材4Bがシャフト4Aと非固定である場合には、支持部材4Bを手元側で回転させる必要がある。したがって、この場合、支持部材4Bがトルクワイヤであることが好ましい。これにより、近位側の回転トルクを第1超音波発生部11に効率よく伝達することができる。
【0085】
図示していないが、支持部材4Bがシャフト4Aと固定されている場合、超音波の伝搬方向を変えるにはシャフト4Aを手元側で回転させてもよい。したがって、この場合、線材がシャフト4Aに特定のパターンで配置されていることが好ましい。このようにシャフト4Aを構成することによっても、近位側の回転トルクを第1超音波発生部11に効率よく伝達することが可能となる。
【0086】
内挿部材4は、薬液注入管3に対して薬液注入管3の長手軸方向に移動可能であることが好ましい。これにより、対象組織の形状等に応じて第1超音波発生部11からの第1超音波の照射位置を調整することができる。
【0087】
内挿部材4を薬液注入管3に対して最も遠位側に移動させたときに、内挿部材4の遠位端は、薬液注入管3の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましい。これにより、薬液注入管3よりも遠位側の位置で第1超音波を発生させることができるため、薬液が腫瘍全体に行き渡りやすくなり、薬液による治療効果を高めることができる。
【0088】
その他、第1超音波発生部11の振動子の構成は、
図2~
図4に示した薬液拡散促進装置2の説明を参照することができる。
【0089】
図示していないが、
図2~
図4に示す薬液注入管3の内腔3bに、
図5~
図6に示すような内挿部材4が設けられていてもよい。すなわち、第1超音波発生部11が薬液注入管3の側壁部3dに設けられており、薬液注入管3の内腔3bに第2内挿部材が配置されており、第2内挿部材の遠位端部に超音波発生部(以下では「第5超音波発生部」と称する)が保持されていてもよい。第5超音波発生部は、第1超音波発生部11と同様に、薬液を拡散させるための第5超音波を発生する部分である。このように第5超音波発生部を設けることにより、薬液が腫瘍全体により一層行き渡りやすくなり、薬液による治療効果を高めることができる。
【0090】
第5超音波の発振周波数や超音波出力は、処置の種類、薬液の種類や用量に応じて適宜設定することができる。第5超音波の発振周波数や超音波出力は、第1超音波と同じであっても異なっていてもよい。第5超音波発生部の構成としては、第1超音波発生部11の説明を参照することができる。
【0091】
第2内挿部材の遠位端部に第5超音波発生部が保持されている場合、第2内挿部材を薬液注入管3に対して最も遠位側に移動させたときに、第2内挿部材の遠位端は、薬液注入管3の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましく、第5超音波発生部の遠位端が、第1超音波発生部11の遠位端よりも遠位側に位置することがより好ましい。これにより、薬液注入管3よりも遠位側の位置で第5超音波発生部により薬液拡散用の第5超音波を発生することができるため、薬液が腫瘍全体に行き渡りやすくなり、薬液による治療効果を高めることができる。
【0092】
超音波制御部20は、第1超音波発生部11に接続され、対象組織の二次元または三次元の像に応じて第1超音波の照射条件を制御するものである。詳細には、第1超音波発生部11で発生する第1超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを制御する。薬液拡散システム1によれば、対象組織の二次元または三次元の像に応じて、第1超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを制御するため、対象組織の状態に応じて薬液を必要な部位に適切に拡散することできる。例えば、腫瘍がいびつな形状をしている場合、腫瘍の硬さが不均一な場合、薬液注入管3を腫瘍に穿刺したときに薬液注入管3の長手軸中心から腫瘍の外縁までの径方向の距離が薬液注入管3の周方向の位置によって異なっている場合等、腫瘍の形状、大きさ、広がりおよび硬さ等の状態に合わせて第1超音波の照射条件を適切に設定することができる。このため、薬液が腫瘍全体に行き渡りやすくなり、薬液による治療効果を高めることができる。また、治療に必要な超音波の照射時間を短くすることが可能であり、患者や術者の負担の軽減に寄与するものとなる。
【0093】
超音波制御部20は、第1超音波発生部11に対して、第1超音波発生部11で発生する超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを時間に対して変動させる指令信号を発することが好ましい。このように超音波の条件を経時的に変化させることによって、薬液の拡散促進効果を高めることができる。対象組織の二次元または三次元の像は、薬液拡散システム1に好ましく含まれる像形成部23、またはシステム1には含まれない外部の装置を用いて取得することができる。超音波制御部20は、取得した対象組織の二次元または三次元の像に応じて第1超音波の照射条件を制御する。
【0094】
超音波制御部20は、第1超音波発生部11に対して、薬液注入管3の長手軸方向または周方向の位置によって第1超音波の強度と発振周波数の少なくともいずれか一方を変化させる指令信号を発してもよい。これにより、腫瘍の状態や、第1超音波の照射前の薬液の腫瘍への浸透度合いに応じて、第1超音波の照射条件を設定することができ、薬液の拡散効果を高めることが可能となる。
【0095】
超音波制御部20は、第1超音波発生部11に対して、超音波の強度分布を薬液注入管3の長手軸中心3fから偏在させる指令信号を発することが好ましい。このように超音波の強度分布を偏在させることにより、薬液を必要な部位に適切に拡散することができる。
図7は、
図2に示した薬液注入管3および第1超音波発生部11を腫瘍100内に穿刺したときの超音波診断画像のイメージ図である。
図7に示すように、超音波制御部20は、薬液注入管3の周方向において、薬液注入管3の長手軸中心3fから腫瘍100の外縁101までの径方向の距離が長いほど第1超音波の強度xを大きくする指令信号を発してもよい。これにより、薬液が腫瘍全体に行き渡りやすくなるため、薬液による治療効果を高めることができる。
【0096】
第1超音波の強度分布が薬液注入管3の長手軸中心3fから偏在するとは、薬液注入管3の周方向の位置によって超音波の強度xが異なっていることを意味している。
図7では、薬液注入管3の軸中心3fから腫瘍100の外縁101までの径方向の距離が長いほど、超音波の強度xが大きくなっているが、超音波の周方向の強度は腫瘍の形状、大きさ、広がりおよび硬さ等の状態に応じて適宜設定することができる。
【0097】
超音波制御部20は、薬液注入管3の周方向において、薬液注入管3の長手軸中心3fから腫瘍100の外縁101までの径方向の距離が長いほど第1超音波の発振周波数を低くする指令信号を発してもよい。このように第1超音波の照射条件を設定することによっても薬液が腫瘍全体に行き渡りやすくなるため、薬液による治療効果を高めることができる。
【0098】
薬液拡散システム1において、超音波制御部20と後述する処理部30の少なくともいずれか一方での各処理を実施するプログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。これにより、コンピュータに上記プログラムをインストールすることができる。上記プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体としては、例えば、CD-ROM等の記録媒体が挙げられる。
【0099】
薬液拡散システム1は、超音波制御部20と後述する処理部30の少なくともいずれか一方において上記プログラムを実行するためのプロセッサを含むことができる。プロセッサには、集積回路に実装されたマイクロプロセッサが含まれる。コンピュータが、プロセッサや後述する記憶装置を含んでいてもよい。
【0100】
超音波制御部20での制御には、オンオフ制御を用いてもよく、可変式PI制御を用いてもよく、また、PID制御を用いてももちろんよい。
【0101】
図8は、
図1に示した薬液拡散システム1における処置フローの一例を示す図を表す。
図1の薬液拡散システム1を用いて、以下手順の処置を行うことができる。
【0102】
薬液注入管3を対象組織に穿刺する(ステップS1)。なお、ステップS1において、第1超音波発生部11が対象組織内に配置されることが好ましい。次いで、薬液を対象組織に注入する(ステップS2)。対象組織の二次元または三次元の像に応じて、超音波制御部20で第1超音波の照射条件を制御する(ステップS3)。ステップS3では、第1超音波発生部11で発生する第1超音波の伝搬方向、強度および発振周波数の少なくともいずれか1つを制御する。ステップS3で設定された照射条件に従って、第1超音波発生部11を用いて第1超音波を対象組織に照射する(ステップS4)。必須ではないが、ステップS4の第1超音波の照射の後、対象組織の二次元または三次元の像を取得してもよい(ステップS5)。ステップS5で取得した像を用いて、薬液の拡散状態を確認することが好ましい(ステップS6)。ステップS6において、薬液の拡散状態が目標値に達していないと判別された場合には、ステップS3に戻って第1超音波の照射条件を制御し、ステップS4以降を実施することが好ましい。ステップS6において、薬液の拡散状態が目標値に達していると判別された場合には、処置を終了する。
【0103】
図1に示すように、薬液拡散システム1は、第1超音波と異なる発振周波数の第2超音波を発生させる第2超音波発生部12をさらに有していてもよい。第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて対象組織の二次元または三次元の像を形成することができる。すなわち、第2超音波を診断用の像の生成に利用することができる。
【0104】
第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて形成された像は、二次元の像でも三次元の像でもよい。また、上記反射波を用いて形成された像は、静止画であってもよく、動画であってもよい。
【0105】
第2超音波発生部12で発生する第2超音波の発振周波数や超音波出力は、処置の種類、薬液の種類や用量に応じて適宜設定することができる。
【0106】
第2超音波の発振周波数は、第1超音波の発振周波数よりも高ければよく、例えば、第2超音波の発振周波数は、20MHz以上であることが好ましく、30MHz以上であることがより好ましく、40MHz以上であることがさらに好ましく、また、100MHz以下であることが好ましく、90MHz以下であることがより好ましく、80MHz以下であることがさらに好ましい。このように発振周波数を設定することにより、診断用の像の生成が行いやすくなる。
【0107】
第2超音波の超音波出力Isptaは、30mW/cm2以上であることが好ましく、50mW/cm2以上であることがより好ましく、100mW/cm2以上であることがさらに好ましく、また、720W/cm2以下であることが好ましく、500W/cm2以下であることがより好ましく、300W/cm2以下であることがさらに好ましい。このように超音波出力を設定することにより、診断用の像の生成が行いやすくなる。
【0108】
第2超音波発生部12は、
図1~
図2に示すように薬液注入管3に設けられていてもよいが、外管5に設けられていてもよく、薬液拡散促進装置2とは別に設けられていてもよい。また、第1超音波発生部11が、第2超音波発生部12を兼ねていてもよい。つまり、第1超音波発生部11が、第1超音波と第2超音波を発生するものでもよい。
【0109】
その他、第2超音波発生部12の構成としては、第1超音波発生部11の説明を参照することができる。
【0110】
第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて形成された二次元または三次元の像に応じて、超音波制御部20は、薬液注入管3に供給される薬液の種類または量を制御することが好ましい。これにより、対象組織に対して適切に薬液を投与することができる。
【0111】
図1に示すように、薬液拡散システム1は、超音波制御部20に接続されており、第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて像を形成する像形成部23と、超音波制御部20に接続されており、像形成部23により形成された像を記憶する記憶部25と、をさらに有していることが好ましい。第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて形成された像により、薬液注入前、薬液注入後、照射後等の対象組織の状態が可視化され、診断に利用することができる。また、記憶部25に診断用の像が記憶されることにより、後述する処理部でのデータ処理に際し、データの読み出しが適宜可能となるため、処置の妥当性の検証やさらなる治療方針の策定等に資することができる。
【0112】
像形成部23は、第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて対象組織の二次元または三次元の像を形成する。像形成部23は、記憶部25に接続されていることが好ましい。これにより、像形成部23で形成された像を記憶部25に送信することができるため、照射条件を設定する際に記憶部25から像を読み出すことが可能となる。なお、薬液拡散システム1に好ましく設けられるプロセッサが像形成部23のプログラムを実行してもよい。図示していないが、像形成部23は、後述する処理部30に接続されていてもよい。これにより、処理部30において、像形成部23で形成された像を用いて、像同士の比較などの対象組織の状態の把握に必要な処理を行うことができる。
【0113】
記憶部25は、コンピュータに含まれるRAMやROMなどの主記憶装置やハードディスク等の補助記憶装置であってもよい。
【0114】
図示していないが、薬液拡散システム1は、第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を受信する受信部と、該受信部に接続されており、第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて形成された像を表示する表示部とをさらに有していてもよい。その場合、像形成部23は受信部に接続されていることが好ましい。これにより、受信部を通じて第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を像形成部23に送信することができる。
【0115】
図1に示すように、薬液拡散システム1は、超音波制御部20に接続されている処理部30をさらに有していることが好ましい。これにより、処理部30で対象組織の状態を把握するための演算や比較等の各種処理を行うことができる。
【0116】
処理部30は、薬液注入前の対象組織の像と、薬液注入後の対象組織の像とを比較するものであり、超音波制御部20は、処理部30での比較結果を用いて、第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。これにより、薬液注入前後の対象組織の状態の比較結果に基づき、適切な照射条件を設定することが可能となる。
【0117】
処理部30は、薬液注入前の対象組織の像と、薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の像とを比較するものであり、超音波制御部20は、処理部30での比較結果を用いて第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。これにより、薬液注入前と、薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の状態の比較結果に基づき、追加の第1超音波の照射が必要であるか否かを判別することができる。
【0118】
処理部30は、薬液注入後であって第1超音波の照射前の対象組織の像と、薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の像を比較するものであり、超音波制御部20は、処理部30での比較結果を用いて第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。これにより、薬液注入後であって第1超音波の照射前後の対象組織の状態の比較結果に基づき、追加の第1超音波の照射が必要であるか否かを判別することができる。
【0119】
処理部30は、薬液注入後であってn回目の第1超音波の照射後の対象組織の像と、薬液注入後であってn+1回目の第1超音波の照射後の対象組織の像とを比較するものであり、超音波制御部20は、処理部30での比較結果を用いて、n+2回目の第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。なお、nは、1以上の整数である。これにより、対象組織の状態に合わせて、n+2回目の第1超音波の照射条件を適切に設定することができる。
【0120】
図9は、
図1に示した薬液拡散システム1における処置フローの他の例を示す図を表す。
図1の薬液拡散システム1を用いて、以下手順の処置を行ってもよい。なお、
図9に示したフローは、第2超音波発生部12によって第2超音波を発生し、第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて二次元または三次元の像を形成し、形成した像を第1超音波の照射条件の制御や薬液の拡散状態の判別に用いる点で、
図8に示したフローと異なっている。
【0121】
薬液注入管3を対象組織に穿刺する(ステップS11)。ステップS11において、第1超音波発生部11および第2超音波発生部12が対象組織内に配置されることが好ましい。次いで第2超音波発生部12によって第2超音波を発生し、第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて二次元または三次元の像を形成する(ステップS12)。これにより、薬液注入前の対象組織の状態を可視化することができる。薬液を対象組織に注入する(ステップS13)。必要に応じて、第2超音波発生部12によって第2超音波を発生し、第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて、薬液注入後の対象組織の二次元または三次元の像を形成してもよい(ステップS14)。超音波制御部20で、薬液注入前と薬液注入後の少なくともいずれかにおける対象組織の二次元または三次元の像に応じて第1超音波の照射条件を制御することが好ましい(ステップS15)。ステップS15で設定された照射条件に従って、第1超音波発生部11を用いて第1超音波を対象組織に照射する(ステップS16)。第2超音波発生部12によって第2超音波を発生し、第2超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて、薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の二次元または三次元の像を形成する(ステップS17)。ステップS17で形成した像を用いて、薬液の拡散状態を確認することが好ましい(ステップS18)。ステップS18において、薬液の拡散状態が目標値に達していないと判別された場合には、ステップS15に戻って第1超音波の照射条件を制御し、ステップS16以降を実施することが好ましい。ステップS18において、薬液の拡散状態が目標値に薬液の拡散状態が目標値に達していると判別された場合には、処置を終了する。
【0122】
図10は、
図1に示した薬液拡散システム1における処置フローの他の例を示す図を表す。
図1の薬液拡散システム1を用いて、以下手順の処置を行ってもよい。
【0123】
図10に示したステップS21~ステップS27は、
図9に示したステップS11~ステップS17と同様のため説明を省略する。
図10に示すように、ステップS27の後は、処理部30において、ステップS22で形成した薬液注入前の対象組織の二次元または三次元の像と、ステップS27で形成した薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の二次元または三次元の像を比較する(ステップS28)。ステップ28において、像の比較結果に基づき、薬液の拡散状態が目標値に達していないと判別された場合には、ステップS25に戻って第1超音波の照射条件を制御し、ステップS26以降を実施することが好ましい。ステップS28において、像の比較結果に基づき、薬液の拡散状態が目標値に達していると判別された場合には、処置を終了する。
【0124】
図11は、
図1に示した薬液拡散システム1の変形例を示すブロック図を表す。
図11に示すように、第2超音波発生部12は薬液注入管3の外に設けられていてもよい。すなわち、薬液拡散システム1が、薬液拡散促進装置2とは別に、第2超音波発生部12を有する診断用超音波発生装置を有していてもよい。
図11の薬液拡散システム1でも、
図1の薬液拡散システム1と同様の流れで処置を行うことができる。なお、
図11では示していないが、薬液拡散システム1は像形成部23を有していてもよい。以降に示す態様についても同様である。
【0125】
図12を参照しながら、
図1や
図11とは異なる構成の薬液拡散システム1について説明する。
図12は、
図1に示した薬液拡散システム1の他の変形例を示すブロック図を表す。
図12に示すように、薬液拡散システム1は、薬液注入管3と、超音波制御部20と、処理部30と、超音波制御部20に接続されているデータ格納部35を有していてもよい。データ格納部35には、第1超音波の照射条件の設定に必要な参照用のデータを格納することができる。データ格納部35は、記憶部25と同様に、コンピュータに含まれるRAMやROMなどの主記憶装置やハードディスク等の補助記憶装置であってもよい。すなわち、主記憶装置や補助記憶装置に記憶部25やデータ格納部35を設けることができる。
【0126】
データ格納部35には、腫瘍の種類に応じた薬液の拡散パターンのデータを備えた拡散パターンテーブルが格納されていることが好ましい。その場合、処理部30は、拡散パターンテーブルの参照結果と、薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の像とを比較するものであり、超音波制御部20は、処理部30での比較結果を用いて第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。これにより、拡散パターンテーブルの参照結果と、薬液注入後であって第1超音波の照射後の対象組織の状態の比較結果に基づき、追加の第1超音波の照射が必要であるか否かを判別することができる。
【0127】
拡散パターンテーブルに格納されている腫瘍の種類のデータとしては、腫瘍が形成されている部位、形状、大きさ、広がり、硬さ等が挙げられる。
【0128】
拡散パターンテーブルに格納されている薬液の拡散パターンのデータとしては、過去の症例において、腫瘍に薬液を注入する前に、診断用の超音波を対象組織に照射したときの反射波を用いて形成された二次元または三次元の像が挙げられる。
【0129】
図12に示すように、薬液拡散システム1は、記憶部25と、データ格納部35を有していてもよい。これにより、記憶部25に記憶された像と、データ格納部35に格納されているデータを比較する処理が可能となる。
【0130】
図12に示すように、薬液拡散システム1は、薬液注入管3の近位部に接続され、薬液注入管3内に薬液を供給する液体供給部40と、超音波制御部20に接続されているデータ格納部35と、をさらに有していてもよい。その場合、データ格納部35は、薬液の種類のデータを備えた薬液テーブルと、過去に診断された腫瘍の状態を示すデータを備えた腫瘍テーブルと、を有し、超音波制御部20は、腫瘍テーブルの参照結果に基づき、薬液テーブルから薬液の種類を選択して、液体供給部40に対して、選択された種類の薬液を薬液注入管3内に供給する指令信号を発することが好ましい。これにより、腫瘍の種類に合った適切な薬液の種類を選択することができるため、薬液拡散効果をより一層高めることができる。
【0131】
液体供給部40は、薬液注入管3の内腔3bに薬液を供給するための部材であり、例えば、シリンジ、またはモーターで制御される注入ポンプを用いることができる。
【0132】
図12に示すように、薬液拡散システム1がデータ格納部35を有している場合、データ格納部35は、第1超音波の発振周波数のデータを備えた周波数テーブルをさらに有することが好ましい。その場合、超音波制御部20は、腫瘍テーブルの参照結果に基づき、周波数テーブルから第1超音波の発振周波数の値を選択して、第1超音波発生部11に対して、選択された発振周波数の第1超音波を発生する指令信号を発することが好ましい。これにより、腫瘍の種類に合った適切な第1超音波の発振周波数を選択することができるため、対象組織内での薬液拡散効果をより一層高めることができる。
【0133】
図13は、
図12に示した薬液拡散システム1における処置フローの一例を示す図を表す。
図12の薬液拡散システム1を用いて、以下手順の処置を行うことができる。
【0134】
図13に示したステップS31~ステップS37は、
図9に示したステップS11~ステップS17と同様のため説明を省略する。
図13に示すフローにおいて、
図9のフローと異なっているのは、処理部30において、データ格納部35に格納されている腫瘍の種類に応じた薬液の拡散パターンのデータを備えた拡散パターンテーブルの参照結果と、ステップS37で形成した薬液注入後かつ第1超音波照射後の像を比較しているところである(ステップS38)。ステップS38での比較結果に基づき、薬液の拡散状態が目標値に達していないと判別された場合には、ステップS35に戻って第1超音波の照射条件を制御し、ステップS36以降を実施することが好ましい。ステップS38での比較結果に基づき、薬液の拡散状態が目標値に達していると判別された場合には、処置を終了する。
【0135】
図14を参照しながら、
図1や
図11とは異なる構成の薬液拡散システム1について説明する。
図14は、
図1に示した薬液拡散システム1のさらに他の変形例を示すブロック図を表す。
図14に示すように、薬液拡散システム1は、超音波制御部20に接続されている計測部45をさらに有していてもよい。その場合、計測部45は、薬液注入前の像から、腫瘍の形状、大きさ、広がりおよび硬さの少なくともいずれか1つを計測するものであり、超音波制御部20は、計測部45での計測結果を用いて第1超音波の照射条件を制御することが好ましい。これにより、腫瘍の状態に合わせて適切に第1超音波の照射条件を設定することができるため、対象組織内での薬液拡散効果を高めることができる。
【0136】
計測部45は、薬液注入前の対象組織の二次元または三次元の像を用いて、第1超音波を照射する前の腫瘍の形状、大きさ、広がりおよび硬さを解析する部分であることが好ましい。その場合、薬液拡散システム1に好ましく設けられるプロセッサが計測部45のプログラムを実行してもよい。
【0137】
計測部45は、腫瘍の形状、大きさ等の各種パラメータを直接計測する機器であってもよい。例えば、腫瘍の硬さを直接計測する機器としては、例えば、超音波硬さ計を挙げることができる。第1超音波発生部11が第1超音波とは異なる、硬さの測定に適した範囲の周波数の超音波を発生させることにより、第1超音波発生部11が計測部45を兼ねる構成とすることができる。
【0138】
薬液拡散システム1が、超音波制御部20に接続されている計測部45をさらに有している場合、計測部45は、薬液注入前の像から、腫瘍の形状、大きさ、広がりおよび硬さの少なくともいずれか1つを計測するものであり、超音波制御部20は、計測部45での腫瘍の計測結果を用いて、第1超音波発生部11に対して、薬液注入管3の周方向の位置によって第1超音波の強度と発振周波数の少なくともいずれか一方を変化させる指令信号を発することが好ましい。これにより、腫瘍の状態に合わせて適切に第1超音波の照射条件を設定することができるため、対象組織内での薬液拡散効果をより一層高めることができる。
【0139】
薬液注入管3の周方向において、腫瘍が硬いほど第1超音波発生部11で発生する超音波の強度を大きくしてもよい。これにより、薬液が腫瘍の硬い部分に行き渡りやすくなるため、薬液による治療効果を高めることができる。
【0140】
図14に示すように、薬液拡散システム1は、第1超音波と異なる発振周波数であって対象組織を加熱するための第3超音波を発生させる第3超音波発生部13をさらに有していることが好ましい。温熱効果の発現により、対象組織内での薬液拡散効果や免疫増強効果をより一層高めることができる。
【0141】
第3超音波の発振周波数や超音波出力は、処置の種類、薬液の種類や用量に応じて適宜設定することができる。例えば、第3超音波の発振周波数は、第2超音波の発振周波数よりも低ければよく、例えば、10kHz以上、100kHz以上、あるいは1MHz以上、また、100MHz以下、10MHz以下、5MHz以下に設定することも許容される。このように発振周波数を設定することによって温熱効果を発現することができる。
【0142】
その他、第3超音波発生部13の構成としては、第1超音波発生部11の説明を参照することができる。
【0143】
第1超音波発生部11が、第1超音波と異なる発振周波数の第2超音波を発生させる第2超音波発生部12と、第3超音波発生部13を兼ねていてもよい。すなわち、第1超音波発生部11が、第1超音波と、第1超音波と異なる発振周波数であって診断用の像形成に用いる第2超音波と、第1超音波と異なる発振周波数であって対象組織を加熱するための第3超音波を発生させてもよい。これにより、第1超音波(治療用超音波)、第2超音波(診断用超音波)、第3超音波(温熱用超音波)を発生させるために個別に超音波発生部を設ける必要がない。
【0144】
図14に示すように、薬液拡散システム1は、薬液注入管3の近位部に接続され、薬液注入管3内に薬液を供給する液体供給部40と、液体供給部40に接続されており、薬液を冷却させる冷却部50と、を有していることが好ましい。これにより、冷却部50によって温度が調整された薬液を薬液注入管3内に供給することができるため、薬液の過度な加熱を防ぐことができる。
【0145】
冷却部50は、薬液を直接冷やしてもよいが、薬液が収納されている容器を冷やすことが好ましい。冷却部50としては、容器の周囲にフィンを形成して、送風機により空冷する冷却器、ヒートポンプ型の冷却器、ペルチェ素子による冷却器等を用いることができる。
【0146】
本願は、2019年11月18日に出願された日本国特許出願第2019-207836号および日本国特許出願第2019-207837号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年11月18日に出願された日本国特許出願第2019-207836号および日本国特許出願第2019-207837号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0147】
1:薬液拡散システム
2:薬液拡散促進装置
3:薬液注入管
3a:穿刺部、3b:内腔、3c:開口、3d:側壁部、3e:開口縁、3f:長手軸中心、3g:凹部
4:内挿部材
4A:シャフト、4B:支持部材
5:外管
9:第1把持部
10:第2把持部
11:第1超音波発生部
11A:振動子、11AB:一振動子型探触子の振動子、11B:吸音材、11C:音響整合層、11d:回転軸
12:第2超音波発生部
13:第3超音波発生部
20:超音波制御部
23:像形成部
25:記憶部
30:処理部
35:データ格納部
40:液体供給部
45:計測部
50:冷却部
100:腫瘍
101:外縁
x:第1超音波の強度