(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
C12C 11/00 20060101AFI20241204BHJP
C12C 11/02 20060101ALI20241204BHJP
C12C 12/04 20060101ALI20241204BHJP
C12G 3/021 20190101ALI20241204BHJP
C12G 3/025 20190101ALI20241204BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20241204BHJP
C12H 3/00 20190101ALI20241204BHJP
【FI】
C12C11/00 A
C12C11/02
C12C12/04
C12G3/021
C12G3/025
C12G3/04
C12H3/00
(21)【出願番号】P 2022517672
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2021016206
(87)【国際公開番号】W WO2021220914
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2020080705
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠一
(72)【発明者】
【氏名】早川 雄悟
(72)【発明者】
【氏名】岸本 智之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 央行
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-239460(JP,A)
【文献】特表2013-524857(JP,A)
【文献】BRAUINDUSTRIE,71, Jg.,1986年,pp.746-753
【文献】Brewer's Friend, XXX (online),2019年11月21日,pp.1-2,retrieved on 2024.07.30, retrieved from the internet <https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/print/913410>
【文献】BRAUINDUSTRIE,1986年,71, Jg.,pp.590-595
【文献】日本醸造協会雑誌,1976年,vol.71, no.7,pp.505-510
【文献】Brewing Tools: Specific Gravity-Plato Calculator (online),2020年04月12日,p.1,retrieved on 2024.07.30, retrieved from the internet <https://web.archive.org/web/20200412063015/https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/>
【文献】Science, Basic Beer Alcohol (online),2017年09月12日,pp.1-7,retrieved on 2024.07.30, retrieved from the internet <https://www.brewersjournal.info/science-basic-beer-alcohol-extract-determinations/>
【文献】J. Inst. Brew.,2015年,vol.121,pp.113-121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 1/00-13/10
C12G 3/00-3/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールを0.50
(v/v)%以上1.
0(v/v)%
未満、および、マルトースを5.8(w/w)%以下含み、リアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下であり、
pHが2.6以上4.3未満である、ビールテイスト飲料
(但し、原材料としてレモネードを用いるビールテイスト飲料を除く。)。
【請求項2】
エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満、および、マルトースを5.8(w/w)%以下含み、リアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下であり、
オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上であり、
pHが2.6以上4.3未満である、ビールテイスト飲料。
【請求項3】
マルトースを0.2~5.8(w/w)%含む、
請求項1
または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
pHが2.7以上4.2以下である、請求項1
~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
麦由来成分を含む、請求項1~
4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
ホップ由来成分を含む、請求項1~
5のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
蒸留酒を含有する、請求項1~
6のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
酸味付与物質を含有する、請求項1~
7のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項9】
糖液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程、および
pHを調整する工程、
を有する、請求項1~
8のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、
マルトースを0.2(w/w)%以上残存する段階で酵母を取り除き発酵工程を終了する、ビールテイスト飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
一方で、近年の消費者の健康志向から、アルコール濃度を低減させたローアルコールビールに対する需要が拡大している。しかし、ローアルコールビールは、通常のビールよりも味が全体的に薄く感じられる傾向にあり、平たんな味になりやすい。
一般的に、香味に厚みを付与するために、添加剤を配合することによって香味を改善する方法が知られている。たとえば、特許文献1(特開2019-208453号公報)には、ヒドロキシ酸エステル類を配合し、かつヒドロキシ酸エステル類の濃度(質量)に対する甘味度の比を特定の範囲内に調整することにより、エキス分を増大させることなく、のどへのひっかかりを増大させられるノンアルコールビールが記載されている。
一般的なビールの製造における発酵工程では、糖やアミノ酸などが酵母に代謝され、エタノールやエステル類、高級アルコール類などが酵母によって産生され、これらの成分がビールらしい風味を付与する。しかし、一般的に、エタノール含有量が0.00%のノンアルコールビールテイスト飲料は発酵工程を用いずに製造されるため、エステル類、高級アルコール等の香料を添加して発酵感を付与することがあるが、このような香料の添加だけではビールらしい発酵感を再現することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の好ましい態様のビールテイスト飲料は、エタノール含有量が低く、ビールテイスト飲料らしい発酵感および後味のすっきりさが優れた飲料およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エタノールを0.40~1.5(v/v)%、マルトースを5.8(w/w)%以下含み、pHが2.6以上4.3未満である、ビールテイスト飲料、および、当該ビールテイスト飲料の製造方法を提供する。すなわち、本発明には、以下の態様の発明が含まれる。
[1]
エタノールを0.40~1.5(v/v)%、および、マルトースを5.8(w/w)%以下含み、
pHが2.6以上4.3未満である、ビールテイスト飲料。
[2]
マルトースを0.2~5.8(w/w)%含む、[1]に記載のビールテイスト飲料。
[3]
エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満含み、pHが2.7以上4.2以下である、[1]または[2]に記載のビールテイスト飲料。
[4]
麦由来成分を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[5]
ホップ由来成分を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[6]
蒸留酒を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[7]
酸味付与物質を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[8]
糖液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程、および
pHを調整する工程、
を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、
マルトースを0.2(w/w)%以上残存する段階で酵母を取り除き発酵工程を終了する、ビールテイスト飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様のビールテイスト飲料は、アルコール度数が低く、ビールテイスト飲料らしい発酵感および後味のすっきりさが優れた飲料となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.ビールテイスト飲料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、エタノールを0.40~1.5(v/v)%、および、マルトースを5.8(w/w)%以下含有し、pHが2.6以上4.3未満である。これによって、エタノールを含まないノンアルコールビールテイスト飲料に比べて発酵感を感じ、後味のすっきりさが優れた飲料を提供できる。
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料をいう。そのため、「ビールテイスト飲料」には、麦芽、ホップ、及び水を原料として、これらを、酵母を用いて発酵させて得られる麦芽発酵飲料であるビールだけでなく、エステルや高級アルコール(例えば、酢酸イソアミル、酢酸エチル、n-プロパノール、イソブタノール、アセトアルデヒド、カプロン酸エチル、リナロール、4-ビニルグアイアコール)等を含むビール香料が添加され、ビール風味を有する炭酸飲料をも包含する。
本明細書において、「ビール」とは、麦芽、ホップ、及び水を原料として、これらを、酵母を用いて発酵させて得られる飲料をいい、具体的には、平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達で定義されたものを意味する。
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、上面発酵酵母(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces Cerevisiae)等)や下面発酵酵母を用いて発酵工程を経た発酵ビールテイスト飲料であってもよく、発酵工程を経ない非発酵ビールテイスト飲料であってもよい。
【0008】
なお、上記のビールテイスト飲料は、たとえば、酵母を添加して発酵工程を経た後、当該発酵工程で生じたアルコールの一部を除去して製造された発酵ビールテイスト飲料、酵母を添加して発酵工程を経た後、アルコールが所定の値になるように醗酵を途中で止めた微醗酵ビールテイスト飲料、発酵工程を経ずにエタノール等を添加してビール様の風味をもつように調製した非発酵ビールテイスト飲料であってもよい。
これらの中でも、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、発酵ビールテイスト飲料であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のエタノール含有量は、0.40~1.5(v/v)%であるが、発酵感を向上させる観点から、ビールテイスト飲料のエタノール含有量の上限は、好ましくは1.3(v/v)%未満、より好ましくは1.1(v/v)%未満、さらに好ましくは1.0(v/v)%未満、よりさらに好ましくは0.9(v/v)%未満、特に好ましくは 0.8(v/v)%未満であり、また、0.75(v/v)%未満、0.70(v/v)%未満としてもよい。また、ビールテイスト飲料のエタノール含有量の下限は、好ましくは0.42(v/v)%以上、より好ましくは0.45(v/v)%以上、さらに好ましくは0.48(v/v)%以上、特に好ましくは0.50(v/v)%以上であり、また、0.55(v/v)%以上、0.60(v/v)%以上、または0.65(v/v)%以上としてもよい。
本明細書において、エタノール含有量は、体積/体積基準の百分率(v/v)%で示されるものとする。また、飲料のエタノール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、たとえば、振動式密度計によって測定することができる。
エタノール含有量の調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ、糖液等)の種類、原材料の量、酵素の種類、酵素の添加量、酵素の添加のタイミング、仕込槽で糖化時間、仕込槽でのタンパク分解時間、仕込槽でのpH、仕込工程(麦芽投入から酵母添加前での麦汁製造工程)でのpH、pH調整の際に使用する酸の添加量、pH調整のタイミング(仕込時、発酵時、発酵完了時、ビール濾過前、ビール濾過後など)、麦汁を調製する際(糖化時含む)の各温度領域の設定温度及び保持時間、発酵前液のオリジナルエキス濃度、発酵工程でのオリジナルエキス濃度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、二酸化炭素濃度等)、スピリッツや醸造アルコールなどの添加等を適宜設定して行うことができる。
【0010】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のマルトース含有量は、後味のすっきりさ向上の観点から、また、マルトースとpHとのバランスを図り発酵感を向上させることができるという観点から、マルトースを0.2~5.8(w/w)%含むが、ビールテイスト飲料のマルトース含有量の上限は、好ましくは4.8(w/w)%以下、より好ましくは4.5(w/w)%以下、さらに好ましくは4.2(w/w)%以下、よりさらに好ましくは3.9(w/w)%以下、よりさらに好ましくは3.6(w/w)%以下、よりさらに好ましくは3.3(w/w)%以下、
よりさらに好ましくは3.0(w/w)%以下、よりさらに好ましくは2.7(w/w)%以下、よりさらに好ましくは2.4(w/w)%以下、特に好ましくは2.1(w/w)%以下であり、また、1.8(w/w)%以下、1.5(w/w)%以下、1.2(w/w)%以下、または1.0(w/w)%以下としてもよい。また、ビールテイスト飲料のマルトース含有量の下限は、好ましくは0.3(w/w)%以上、より好ましくは0.4(w/w)%以上、さらに好ましくは0.5(w/w)%以上、特に好ましくは0.6(w/w)%以上であり、また、0.8(w/w)%以上、1.0(w/w)%以上、1.2(w/w)%以上、1.4(w/w)%以上、または1.6(w/w)%以上としてもよい。
本明細書において、マルトースの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定できるにより測定することができる。
マルトースの含有量の調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ、糖液等)の種類、麦芽の粉砕粒度、麦芽の粉砕様式(湿式粉砕、乾式粉砕など)、麦芽粉砕時の湿度(調湿の程度)、麦芽粉砕時の温度、麦芽粉砕の際に使用するミルの種類、原材料の量、酵素の種類、酵素の添加量、酵素の添加のタイミング、酵素分解の時間、仕込槽で糖化時間、仕込槽でのpH、仕込工程(麦芽投入から酵母添加前での麦汁製造工程)でのpH、pH調整の際に使用する酸の添加量、pH調整のタイミング(仕込時、発酵時、発酵完了時、ビール濾過前、ビール濾過後など)、麦汁を調製する際(糖化時含む)の各温度領域の設定温度及び保持時間、麦汁濾過の時間、麦汁濾過時の温度、麦汁濾過時のpH、麦汁濾過での麦汁回収量、麦汁濾過時のスパージング水の量、麦汁濾過時のスパージング水のpH、麦汁濾過時のスパージング水の温度、発酵前液のオリジナルエキス濃度、発酵工程でのオリジナルエキス濃度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、二酸化炭素濃度等)等を適宜設定して行うことができる。
【0011】
一般的に、エタノール含有量が一般的なビールテイスト飲料よりも低い飲料は、発酵によって得られる有機酸の含有量が低くなりやすいため、ビールらしい後味のすっきり感が不足しやすいが、本発明の一態様のビールテイスト飲料はpHを2.6以上4.3未満とすることによって、ビールらしい後味のすっきり感を付与することができる。
ビールテイスト飲料のpHの上限は、好ましくは4.2以下、より好ましくは4.1以下、よりさらに好ましくは4.0以下、よりさらに好ましくは3.9以下、さらに好ましくは3.8以下であり、また、3.7以下、3.6以下、3.5以下、3.4以下、3.3以下、または3.2以下であってもよい。また、ビールテイスト飲料のpHの下限は、好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上であり、また、3.0以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上、3.4以上、または3.5以上であってもよい。
pHの調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ、糖液等)の種類、原材料の量、酵素の種類、酵素の添加量、酵素の添加のタイミング、仕込槽で糖化時間、仕込槽でのタンパク分解時間、仕込槽でのpH、仕込工程(麦芽投入から酵母添加前での麦汁製造工程)でのpH、pH調整の際に使用する酸の種類(乳酸、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸など)、pH調整の際に使用する酸の添加量、pH調整のタイミング(仕込時、発酵時、発酵完了時、ビール濾過前、ビール濾過後など)、麦汁を調製する際(糖化時含む)の各温度領域の設定温度及び保持時間、発酵前液のオリジナルエキス濃度、発酵工程でのオリジナルエキス濃度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、二酸化炭素濃度等)等を適宜設定して行うことができる。
【0012】
本明細書において、オリジナルエキスは原麦汁エキスと同義である。オリジナルエキスは改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.5エキス関係計算法」により計算することができる。計算に必要なアルコールは同書籍の「8.3.6アルコライザー法」、真正(性)エキスは0014に記載の方法、外観(仮性)エキスは同書籍の「8.1.4アルコライザー法」から比重を求め「7.2エキス」に記載のエキス表から算出することができる。なお外観(仮性)エキスは前述のエキス表のエキスと同義である。
オリジナルエキス濃度の調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ、糖液等)の種類、麦芽の粉砕粒度、麦芽の粉砕様式(湿式粉砕、乾式粉砕など)、麦芽粉砕時の湿度(調湿の程度)、麦芽粉砕時の温度、麦芽粉砕の際に使用するミルの種類、原材料の量、酵素の種類、酵素の添加量、酵素の添加のタイミング、酵素分解の時間、仕込槽で糖化時間、仕込槽でのタンパク分解時間、仕込槽でのpH、仕込工程(麦芽投入から酵母添加前での麦汁製造工程)でのpH、pH調整の際に使用する酸の添加量、pH調整のタイミング(仕込時、発酵時、発酵完了時、ビール濾過前、ビール濾過後など)、麦汁を調製する際(糖化時含む)の各温度領域の設定温度及び保持時間、麦汁濾過の時間、麦汁濾過時の温度、麦汁濾過時のpH、麦汁濾過での麦汁回収量、麦汁濾過時のスパージング水の量、麦汁濾過時のスパージング水のpH、麦汁濾過時のスパージング水の温度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、二酸化炭素濃度等)、スピリッツや醸造アルコールなどの添加等を適宜設定して行うことができる。
【0013】
リアルエキスとは、飲料を(酵母や蛋白凝固物など不溶物がある場合はこれを濾別したうえで)穏やかに加熱して水分、アルコール、二酸化炭素、その他の揮発成分をすべて蒸発させたとき、蒸発せずに乾固して残る固形物をいう。
本明細書において、リアルエキスは真正(性)エキスと同義である。リアルエキスの測定は文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.4.3 アルコライザー法」にしたがって実施する。
リアルエキス濃度の調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ、糖液等)の種類、麦芽の粉砕粒度、麦芽の粉砕様式(湿式粉砕、乾式粉砕など)、麦芽粉砕時の湿度(調湿の程度)、麦芽粉砕時の温度、麦芽粉砕の際に使用するミルの種類、原材料の量、酵素の種類、酵素の添加量、酵素の添加のタイミング、酵素分解の時間、仕込槽で糖化時間、仕込槽でのタンパク分解時間、仕込槽でのpH、仕込工程(麦芽投入から酵母添加前での麦汁製造工程)でのpH、pH調整の際に使用する酸の添加量、pH調整のタイミング(仕込時、発酵時、発酵完了時、ビール濾過前、ビール濾過後など)、麦汁を調製する際(糖化時含む)の各温度領域の設定温度及び保持時間、麦汁濾過の時間、麦汁濾過時の温度、麦汁濾過時のpH、麦汁濾過での麦汁回収量、麦汁濾過時のスパージング水の量、麦汁濾過時のスパージング水のpH、麦汁濾過時のスパージング水の温度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、二酸化炭素濃度等)、スピリッツや醸造アルコールなどの添加等を適宜設定して行うことができる。
【0014】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の色は、特に限定されないが、通常のビールのような琥珀色や黄金色、黒ビールのような黒色、または、無色透明であってもよく、あるいは着色料などを添加して、所望の色を付けてもよい。飲料の色は、肉眼でも判別することができるが、全光線透過率や色度等によって規定してもよい。
【0015】
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、飲料が容器に詰められた態様であればよく、容器の例としては、たとえば、ビン、ペットボトル、缶、または樽が挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶、ビンまたはペットボトルが好ましい。
【0016】
1.1 原材料
本発明の一態様のビールテイスト飲料の主な原材料は、水と共に麦芽を用いてもよく、また、麦芽を用いなくてもよい。さらにホップを用いてもよく、その他に、蒸留酒、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料または苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味付与物質等を用いてもよい。
【0017】
原材料として麦芽を用いる場合、当該麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種子を発芽させて乾燥させ、除根したものをいい、産地や品種は、いずれのものであってもよい。
本発明の一態様においては、用いる麦芽としては、大麦麦芽が好ましい。大麦麦芽は、日本のビールテイスト飲料の原料として最も一般的に用いられる麦芽の1つである。大麦には、二条大麦、六条大麦などの種類があるが、いずれを用いてもよい。さらに、通常麦芽のほか、色麦芽なども用いることができる。なお、色麦芽を用いる際には、種類の異なる色麦芽を適宜組み合わせて用いてもよいし、一種類の色麦芽を用いてもよい。
【0018】
また、麦芽と共に、麦芽以外の穀物を用いてもよい。そのような穀物としては、たとえば、麦芽には該当しない麦(大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等)、米(白米、玄米等)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、豆(大豆、えんどう豆等)、そば、ソルガム、粟、ひえ、およびそれらから得られたデンプン、これらの抽出物(エキス)等が挙げられる。
【0019】
ビールテイスト飲料の原材料に麦芽を用いない場合には、炭素源を含有する液糖、麦芽以外の上述の穀物等のアミノ酸含有材料としての窒素源を用いことが好ましい。
【0020】
本発明の一態様で用いるホップの形態としては、たとえば、ペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキス等が挙げられる。また、用いるホップは、イソ化ホップ、還元ホップ等のホップ加工品を用いてもよい。
ホップの添加量としては、適宜調製されるが、飲料全量に対して、好ましくは0.0001~1質量%である。
【0021】
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール成分として、予め調製された蒸留酒を含むことができる。このような蒸留酒としては、特に制限されるものではないが、たとえば、原料アルコール、スピリッツ、ウォッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎などが挙げられる。
ここで、スピリッツとは、麦、米、そば、とうもろこし等の穀物を原料として、麦芽又は必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵させた後、さらに蒸留して得られる酒類を意味する。
【0022】
甘味料としては、穀物由来のデンプンを酸または酵素等で分解した市販の糖化液、市販の水飴等の糖類、三糖類以上の糖、糖アルコール、ステビア等の天然甘味料、人工甘味料等が挙げられる。
これらの糖類の形態は、溶液等の液体であってもよく、粉末等の固体であってもよい。
また、デンプンの原料穀物の種類、デンプンの精製方法、および酵素や酸による加水分解等の処理条件についても特に制限はない。たとえば、酵素や酸による加水分解の条件を適宜設定することにより、マルトースの比率を高めた糖類を用いてもよい。その他、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース、トレハロース、マルトトリオースおよびこれらの溶液(糖液)等を用いることもできる。
また、人工甘味料としては、たとえば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース等が挙げられる。
【0023】
水溶性食物繊維としては、たとえば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム分解物、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナン等が挙げられ、安定性や安全性等の汎用性の観点から、難消化性デキストリンまたはポリデキストロースが好ましい。
【0024】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、苦味は、ホップ等によって付与することが好ましいが、ホップと共に、もしくは、ホップに代えて、苦味料または苦味付与剤を用いてもよい。
苦味料または苦味付与剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に苦味付与剤として用いられるものが使用でき、たとえば、ニガヨモギ、マンネンロウ、レイシ、姫茴香、杜松実、セージ、迷迭香、マンネンタケ、月桂樹、クワシン、ナリンジン、アブシンチン、ニガヨモギ抽出物、柑橘抽出物、ニガキ抽出物、コーヒー抽出物、茶抽出物、ゴーヤ抽出物、ハス胚芽抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、レイシ抽出物、ローレル抽出物、セージ抽出物、キャラウェイ抽出物、ナリンジン、アブシンチン等が挙げられる。
【0025】
酸化防止剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に酸化防止剤として用いられるものが使用でき、たとえば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、およびカテキン等が挙げられる。
【0026】
香料としては、特に限定されず、一般的なビール香料を用いることができる。ビール香料は、ビール様の風味付けのために用いるものである。
ビール香料としては、エステルや高級アルコール等が挙げられ、具体的には、酢酸エチル、酢酸イソアミル、n-プロパノール、イソブタノール、カプロン酸エチルおよびアセトアルデヒド等が挙げられる。
【0027】
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに酸味付与物質を含有することが好ましい。マルトースと共に酸味付与物質を含有することで、発酵感と後味のすっきり感をさらに向上させることができる。
酸味付与物質としては、酸味を付与するものであれば特に限定されないが、たとえば、リン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、ピルビン酸、ピログルタミン酸、醸造酢、それらの塩を用いることができる。これらの酸味付与物質の中でも、リン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、醸造酢、それらの塩が好ましい。また、酸味付与物質として、2以上の成分を併用してもよい。
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、酸味付与物質の含有量は、後味のすっきり感を向上させる観点から、酸味付与物質が酸度0.01~0.4%であることが好ましい。「酸度」とは、日本農林規格(平成18年8月8日農水告第1127号)に定められた酸度の測定方法に基づいて算出されるものを意味する。
【0028】
1.2 炭酸ガス
本発明の一態様のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスは、炭酸水との混和によって加えてもよく、または原料液に炭酸ガスを直接添加してもよい。
【0029】
本発明のビールテイスト飲料の炭酸ガス濃度は、好ましくは0.30(w/w)%以上、より好ましくは0.35(w/w)%以上、更に好ましくは0.40(w/w)%以上で、より更に好ましくは0.42(w/w)%以上、特に好ましくは0.45(w/w)%以上であり、また、好ましくは0.80(w/w)%以下、より好ましくは0.70(w/w)%以下、更に好ましくは0.60(w/w)%以下、より更に好ましくは0.57(w/w)以下、特に好ましくは0.55(w/w)%以下である。
なお、本明細書において、炭酸ガス濃度は、対象となる飲料が入った容器を時々振りながら20℃の水槽に30分間以上浸して、当該飲料が20℃になるよう調整した後に、ガスボリューム測定装置(例えば、GVA-500(京都電子工業株式会社製)等)を用いて測定することができる。
ビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスの量は、飲料の炭酸ガス圧によって表されるが、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されない。典型的には、飲料の炭酸ガス圧の上限は5.0kg/cm2、4.5kg/cm2、または4.0kg/cm2であり、下限は0.20kg/cm2、0.50kg/cm2、または1.0kg/cm2であり、これらの上限および下限のいずれを組み合わせてもよい。たとえば、飲料の炭酸ガス圧は、0.20kg/cm2以上5.0kg/cm2以下、0.50kg/cm2以上4.5kg/cm2以下、または、1.0kg/cm2以上4.0kg/cm2以下であってよい。
本明細書において、ガス圧とは、特別な場合を除き、容器内におけるガス圧をいう。
圧力の測定は、当業者によく知られた方法、たとえば20℃にした試料をガス内圧計に固定した後、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達したときの値を読み取る方法を用いて、または市販のガス圧測定装置を用いて測定することができる。
【0030】
1.3 その他の添加物
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、様々な添加物を添加してもよい。
そのような添加物としては、たとえば、着色料、泡形成剤、発酵促進剤、酵母エキス、ペプチド含有物等のタンパク質系物質、アミノ酸等の調味料が挙げられる。
着色料は、飲料にビール様の色を与えるために使用するものであり、カラメル色素などを用いることができる。泡形成剤は、飲料にビール様の泡を形成させるため、あるいは飲料の泡を保持させるために使用するものであり、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーン、大豆などの植物タンパク、およびペプチド含有物、ウシ血清アルブミン等のタンパク質系物質、酵母エキスなどを適宜使用することができる。
発酵促進剤は、酵母による発酵を促進させるために使用するものであり、たとえば、酵母エキス、米や麦などの糠成分、ビタミン、ミネラル剤などを単独または組み合わせて使用することができる。
【0031】
2. ビールテイスト飲料の製造方法
本発明の一態様のビールテイスト飲料は発酵工程を含む発酵ビールテイスト飲料と発酵工程を含まない非発酵ビールテイスト飲料を含む。
以下、発酵ビールテイスト飲料と非発酵ビールテイスト飲料の製造方法を説明する。
【0032】
2.1 発酵ビールテイスト飲料の製造方法
本発明の一態様の発酵ビールテイスト飲料の製造方法としては、特に制限はなく、たとえば、下記工程(1)~(2)を有する方法が挙げられる。
・工程(1):水および麦芽等の各種原材料を含む混合物を糖化処理して発酵原料液を調製する工程。
・工程(2):前記発酵原料液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程。
また、本発明の一態様の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法において、必要に応じて、さらに下記工程(3)~(5)の1以上を有してもよい。
・工程(3):マルトース含有量を調整する工程。
・工程(4):エタノール含有量を調整する工程。
・工程(5):pHを調整する工程。
以下、上記の各工程について説明する。
【0033】
<工程(1)>
工程(1)は、水および麦芽等の各種原材料を含む混合物を糖化処理して発酵原料液を調製する工程である。
原材料には穀物を用いることが好ましく、麦、麦芽を用いることがより好ましい。麦芽比率は特に限定されないが、上限値は好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下、よりさらに好ましくは60%以下であり、また、下限値は好ましくは10%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは17.5%以下、よりさらに好ましくは20%以下であり、特に好ましくは22.5%以上となるように調整されることが好ましい。
発酵原料液の調製方法としては、水および麦芽等の原材料を仕込釜または仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を添加して混合物を調製した後、糖化処理して得る方法が挙げられる。その後、得られた発酵原料液は、ろ過して煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク等の固形分を取り除くことが好ましい。
【0034】
また、糖化処理を供する混合物には、水および麦芽以外に、ホップ、食物繊維、甘味料、酸化防止剤、苦味付与剤、香料、酸味付与物質、色素等を加えてもよい。
これらは、糖化処理を行う前に加えてもよく、糖化処理の途中で加えてもよく、糖化処理の終了後に加えてもよい。また、これらは、次工程のアルコール発酵後に加えてもよい。
【0035】
本工程において、原材料を加えた前記混合物は、加温し、原材料の澱粉質を糖化させる。
糖化処理の温度および時間は、使用する麦芽の種類や、麦芽比率、水および麦芽以外の原材料、使用する酵素の種類や量等によって適宜調整する。
【0036】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で糖化処理して得られた発酵原料液に、酵母を添加し、アルコール発酵を行う工程である。
本工程で用いる酵母は、製造すべき発酵飲料の種類、目的とする香味や発酵条件等を考慮して適宜選択することができ、上面発酵酵母を用いてもよく、下面発酵酵母を用いてもよい。
【0037】
酵母は、酵母懸濁液のまま発酵原料液に添加してもよいし、遠心分離あるいは沈降により酵母を濃縮したスラリーを発酵原料液に添加してもよい。また、遠心分離の後、完全に上澄みを取り除いたものを添加してもよい。酵母の発酵原料液への添加量は適宜設定できるが、たとえば、5×106cells/ml~1×108cells/ml程度である。
【0038】
アルコール発酵を行う際の発酵条件は、適宜設定することができるが、最終的に得られるビールテイスト飲料中のマルトース含有量が0.2~5.8(w/w)%となるように設定する。発酵速度が速いと短時間でマルトースの含有量が減少しエタノール含有量が増加するので、通常よりも低い温度で発酵させることが好ましい。発酵温度は好ましくは21℃以下、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは9℃以下、よりさらに好ましくは5℃以下、よりさらに好ましくは4℃以下、よりさらに好ましくは3℃以下、よりさらに好ましくは2℃以下、よりさらに好ましくは1.75℃以下、特に好ましくは1.5℃以下である。
また、発酵時間が長いと、マルトースが減少しエタノール含有量が増加するので、通常よりも短い時間で発酵させることが好ましい。発酵時間の下限値は好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは15時間以上、よりさらに好ましくは20時間以上、よりさらに好ましくは25時間以上、よりさらに好ましくは30時間以上、特に好ましくは35時間以上である。また、発酵時間の上限値は好ましくは720時間以下、より好ましくは480時間以下、さらに好ましくは360時間以下、よりさらに好ましくは240時間以下、特に好ましくは200時間以下である。
【0039】
工程(2)のアルコール発酵後は、ろ過機等で酵母を取り除く。
アルコール発酵工程の前後で、必要に応じて水や香料、酸味付与物質、色素等の添加剤を加える工程を含んでもよい。また、水や香料、酸味付与物質、色素等の添加剤を加える工程において、マルトース含有量、オリジナルエキス濃度、リアルエキス濃度等を調整してもよい。
アルコール発酵工程の後、エタノールを除去することによって、エタノール含有量を減らすことができる。
【0040】
<工程(3)、工程(4)、工程(5)>
工程(3)、工程(4)および工程(5)は、工程(1)または工程(2)の中で、また、工程(1)終了後の工程(2)の前後で行ってもよい。ただし、最終的に製造される飲料中の含有量を正確に調整する観点から、工程(1)終了後であって、工程(2)開始前に行うことが好ましい。
なお、工程(3)、工程(4)および工程(5)の順序は、特に制限はなく、どの工程から行ってもよい。
【0041】
工程(3)において、調整前の飲料中のマルトース含有量を測定し、その測定値の基づき、マルトースまたはマルトースを含む原材料を添加、もしくは水を加えて希釈して、マルトース含有量の上述の範囲となるように調整を行うことが好ましい。工程(2)において、発酵を途中で停止させることによって、マルトース含有量を調整させることが好ましい。
なお、調整前の飲料中の原材料に由来するマルトースの存在によって、すでにマルトース含有量が所望の範囲内である場合には、本工程によるマルトースの添加や水を加えて希釈するといった操作は不要である。
【0042】
工程(4)において、エタノール含有量は、工程(2)の発酵条件を制御すること、蒸留酒等のエタノールを含む原材料を添加することとうによって調整できるが、工程(2)において、発酵を途中で停止させることによって、エタノール含有量を調整させることが好ましい。
【0043】
工程(5)において、調整前の飲料中のpHを測定し、その測定値の基づき、リン酸、乳酸、醸造酢等を添加、もしくは水を加えて希釈して、pHの上述の範囲となるように調整を行うことが好ましい。なお、調整前の飲料のpHが所望の範囲内である場合には、本工程によるpHの調整は不要である。
【0044】
このようにして得られたビールテイスト飲料は、所定の容器に充填され、製品として市場に流通する。
ビールテイスト飲料の容器詰め方法としては、特に限定されず、当業者に周知の容器詰め方法を用いることができる。容器詰め工程によって、ビールテイスト飲料は容器に充填・密閉される。容器詰め工程には、いずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、上述のとおりである。
【0045】
2.2 非発酵ビールテイスト飲料の製造方法
本発明の一態様の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法としては、特に制限はなく、たとえば、下記工程(1)~(2)を有する方法が挙げられる。
・工程(1):各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、および固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、飲料前液を得る工程。
・工程(2):前記飲料前液に、炭酸ガスを加える工程。
また、本発明の一態様の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法において、必要に応じて、さらに下記工程(3)~(5)の1以上を有してもよい。
・工程(3):マルトース含有量を調整する工程。
・工程(4):エタノール含有量を調整する工程。
・工程(5):pHを調整する工程。
以下、上記の各工程について説明する。
【0046】
<工程(1)>
工程(1)は、各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、および固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、飲料前液を得る工程である。
たとえば、各種原材料として、麦芽を用いる場合には、水および麦芽を含む各種原材料を仕込釜または仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を添加する。麦芽以外の各種原材料としては、ホップ、食物繊維、甘味料、酸化防止剤、苦味付与剤、香料、酸味付与物質、色素等を加えてもよい。
各種原材料の混合物は、加温し、原材料の澱粉質を糖化させて糖化処理を行う。糖化処理の温度および時間は、使用する麦芽の種類や、麦芽比率、水および麦芽以外の原材料等によって適宜調整する。糖化処理後に、濾過を行い、糖化液が得られる。
【0047】
なお、この糖化液は煮沸処理を行うことが好ましい。
この煮沸処理を行う際に、原材料としてホップや苦味料等を用いる場合には、これらを加えることが好ましい。ホップや苦味料等は、糖化液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
その後、清澄タンクにて凝固タンパク等の固形分を取り除くための固形分除去処理を行うことが好ましい。このようにして、飲料前液が得られる。
なお、上記の糖化液の代わりに、麦芽エキスに温水を加えたものに、ホップや苦味料等を加えて煮沸処理を行い、飲料前液を調製してもよい。
【0048】
また、各種原材料として、麦芽を使用しない場合には、炭素源を含有する液糖、麦または麦芽以外のアミノ酸含有原料としての窒素源、ホップ、食物繊維、甘味料、酸化防止剤、苦味付与剤、香料、酸味付与物質、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製し、その液糖溶液に対して煮沸処理を行い、飲料前液を調製してもよい。
ホップを用いる場合には、煮沸処理前に加えてもよく、液糖溶液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
【0049】
一方で、本発明の一態様の製造方法において、上記の発酵工程およびアルコールを除去する工程を行わない方法であってもよい。
【0050】
<工程(2)>
工程(2)は、記飲料前液に、炭酸ガスを加える工程である。
炭酸ガスを加える方法について、炭酸飲料を製造する際に適用される公知の方法を用いることができる。公知の方法を用いて、炭酸ガス圧が上述の範囲となるように調整されることが好ましい。
【0051】
<工程(3)、工程(4)、工程(5)>
工程(3)、工程(4)および工程(5)は、工程(1)の糖化処理の前後、煮沸処理の前後、および固形分除去処理の前後のいずれに行ってもよく、また、工程(1)終了後の工程(2)の前後で行ってもよい。ただし、最終的に製造される飲料中の含有量を正確に調整する観点から、工程(1)終了後であって、工程(2)開始前に行うことが好ましい。
なお、工程(3)、工程(4)および工程(5)の順序は、特に制限はなく、どの工程から行ってもよい。
【0052】
工程(3)において、調整前の飲料中のマルトース含有量を測定し、その測定値の基づき、マルトースまたはマルトースを含む原材料を添加、もしくは水を加えて希釈して、マルトース含有量の上述の範囲となるように調整を行うことが好ましい。なお、調整前の飲料中の原材料に由来するマルトースの存在によって、すでにマルトース含有量が所望の範囲内である場合には、本工程によるマルトースの添加や水を加えて希釈するといった操作は不要である。
【0053】
工程(4)において、エタノールの含有量は、たとえば、蒸留酒等のエタノールを含む原材料を添加することで調整する。
【0054】
工程(5)は、発酵ビールテイスト飲料の製造方法の工程(5)と同様である。
【0055】
これらの工程後、貯酒工程およびろ過工程等の当業者に周知のビールテイスト飲料の製造で行われる工程を行ってもよい。
また、ビールテイスト飲料の容器詰め方法は発酵ビールテイスト飲料の製造方法と同様である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。
【0057】
[実施例1~13、比較例1~5]
<飲料の調製>
粉砕した大麦麦芽および多糖分解酵素を、52℃で保持された温水100Lが入った仕込槽に投入した後、45~55℃の温度領域で5分~120分、60℃~85℃の温度領域で5分~120分保持しながら、段階的に昇温して、糖化液を調製した。例えば、実施例1では、52℃で40分保持し、続いて80℃で40分間保持して段階的に昇温した。各種酵素の活性を鑑みて、乳酸を用いて、大麦麦芽投入時の原料液のpHをpH5.50に調整した。その後、濾過して麦芽粕を除去し、麦汁を得た。得られた麦汁に、表1に記載されたオリジナルエキス濃度になるように液糖や水を添加し、さらにホップを添加して煮沸を行った。煮沸後の麦汁を固液分離処理し、得られた清澄な麦汁を冷却し、酵母を添加して、表1に記載されたエタノール含有量とマルトース含有量になるように、発酵温度、発酵時間、多糖分解酵素の添加量や添加のタイミングを調整して発酵液を調製し、当該発酵液を濾過して、ビールである試験用飲料をそれぞれ調製した。また、飲料の最終的なpHはリン酸を添加して調整した。
なお、各実施例および比較例においては、酵素の種類、添加量および添加のタイミング、糖化液を調製する際の各温度領域の設定温度、保持時間、発酵温度、発酵時間等の発酵条件等を適宜設定し、表1に示すpH、エタノール含有量、マルトース含有量、オリジナルエキス濃度、リアルエキス濃度となるようにそれぞれ調整した。
【0058】
<官能評価>
得られた飲料について、日頃から訓練を受けた8人のパネラーが、約4℃に冷却した各飲料の「ビールテイスト飲料らしい発酵感」および「ビールテイスト飲料らしい後味のすっきりさ」について、下記のスコア基準に基づき、3(最大値)~1(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコアにて評価し、8人のパネラーのスコアの平均値を算出した。結果を表1に示す。評価に際しては、「ビールテイスト飲料らしい発酵感」が下記基準「2」に該当するサンプル、および、「ビールテイスト飲料らしい後味のすっきりさ」が下記基準「2」に該当するサンプルを予め用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。また、表1のいずれの官能評価においても、同じ飲料に対して、各パネラー間での2.0以上のスコアの値の差異は確認されなかった。
【0059】
[ビールテイスト飲料らしい醗酵感]
・「3」:非常に良い。
・「2」:良い。
・「1」:悪い。
そして、8人のパネラーの平均値を基に、以下の基準で評価をし、2.0以上を合格とした。
【0060】
[ビールテイスト飲料らしい後味のすっきりさ]
・「3」:非常に良い。
・「2」:良い。
・「1」:悪い。
そして、8人のパネラーの平均値を基に、以下の基準で評価をし、2.0以上を合格とした。
【0061】
[ビールテイスト飲料の総合評価]
各パネラーが試飲した際の、「ビールテイスト飲料らしい醗酵感」および「ビールテイスト飲料らしい後味のすっきりさ」に基づき、下記基準によって3段階で総合評価を行った。
・「A」:「ビールテイスト飲料らしい醗酵感」および「ビールテイスト飲料らしい後味のすっきりさ」の評価の両者が2.5以上。
・「C」:「ビールテイスト飲料らしい醗酵感」および「ビールテイスト飲料らしい後味のすっきりさ」の評価のどちらか一方が2.0未満。
・「B」:「A」および「C」に該当しない。
【0062】
【0063】
表1~3より、実施例1~13のビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料らしい発酵感および後味のすっきりさが感じられ、総合評価も高かった。これに対して、比較例1~5のビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料らしい発酵感または後味のすっきりさが感じられにくい飲料であった。