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特許7598406エアロゾル吸引器、その制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】エアロゾル吸引器、その制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/53 20200101AFI20241204BHJP
【FI】
A24F40/53
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023092657
(22)【出願日】2023-06-05
(62)【分割の表示】P 2020196314の分割
【原出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2023101832
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 剛志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 創
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-68708(JP,A)
【文献】特表2017-514463(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150195(WO,A1)
【文献】特開平7-183050(JP,A)
【文献】国際公開第2018/166925(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00~47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル源からエアロゾルを発生させるための誘導加熱式のヒータへ放電可能な電源と、
エアロゾル生成の要求を検出可能であって前記電源から前記誘導加熱式のヒータへの放電を制御する制御部と、
前記電源の電圧の値を取得するセンサと、を備えるエアロゾル吸引器であって、
前記制御部は、前記エアロゾル生成の要求を契機として、前記センサからの出力値に基づき、前記電源の劣化又は故障を検出する、エアロゾル吸引器。
【請求項2】
請求項1に記載のエアロゾル吸引器であって、
前記制御部は、前記電源の電圧の値を前記センサから取得する、エアロゾル吸引器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアロゾル吸引器であって、
前記故障は、前記電源の電圧の降下量が所定の値よりも大きいことを含む、エアロゾル吸引器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のエアロゾル吸引器であって、
前記故障は、前記電源の電圧の降下量が所定の値よりも小さいことを含む、エアロゾル吸引器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のエアロゾル吸引器であって、
前記故障は、前記電源から前記誘導加熱式のヒータへの放電の開始前の前記電源の電圧に少なくとも部分的に基づいて検出される、エアロゾル吸引器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のエアロゾル吸引器であって、
前記故障は、前記電源から前記誘導加熱式のヒータへの放電の開始後の前記電源の電圧に少なくとも部分的に基づいて検出される、エアロゾル吸引器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエアロゾル吸引器であって、
LEDを備え、
前記制御部は、前記故障の検出に応じて、前記LEDに報知を行わせる、エアロゾル吸引器。
【請求項8】
エアロゾル源からエアロゾルを発生させるための誘導加熱式のヒータへ放電可能な電源と前記電源の電圧の値を取得するセンサとを備えるエアロゾル吸引器の制御方法であって、
エアロゾル生成の要求を検出することと、
前記エアロゾル生成の要求を契機として、前記センサからの出力値に基づき、前記電源の劣化又は故障を検出することと、
を含む、エアロゾル吸引器の制御方法。
【請求項9】
エアロゾル源からエアロゾルを発生させるための誘導加熱式のヒータへ放電可能な電源と前記電源の電圧の値を取得するセンサとを備えるエアロゾル吸引器の制御部に、
エアロゾル生成の要求を検出することと、
前記エアロゾル生成の要求を契機として、前記センサからの出力値に基づき、前記電源の劣化又は故障を検出することと、
を行わせるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル吸引器、その制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のエアロゾル発生装置では、エアロゾル発生装置の使用中の電気エネルギー供給源の端子間での電圧を測定し、これを電圧の閾値と比較して任意の時点で閾値電圧を下回っていないかどうかを監視する。しかしながら、電圧降下の測定のみでは、電池の再充電が単に必要なだけか、交換が要求されるほどに電池が劣化しているのか判断することができない。そのため、特許文献1のエアロゾル発生装置では、使用記録のステータスから電圧降下を追跡し、電池の交換が必要なときにユーザに発信することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-514463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエアロゾル発生装置では、電池の劣化判断に時間を要する。そのため、より短時間で電池の故障判断又は劣化判断を行う制御方法が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、より短時間で電源の劣化状態又は故障状態を適切に把握することができる仕組みを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある観点によれば、エアロゾル源からエアロゾルを発生させるための誘導加熱式のヒータへ放電可能な電源と、エアロゾル生成の要求を検出可能であって前記電源から前記誘導加熱式のヒータへの放電を制御する制御部と、前記電源の電圧の値を取得するセンサと、を備えるエアロゾル吸引器であって、前記制御部は、前記エアロゾル生成の要求を契機として、前記センサからの出力値に基づき、前記電源の劣化又は故障を検出する、エアロゾル吸引器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より短時間で電源の故障状態又は劣化状態を適切に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の電源ユニットが装着されたエアロゾル吸引器用の斜視図である。
図2図1のエアロゾル吸引器の他の斜視図である。
図3図1のエアロゾル吸引器の断面図である。
図4】電源ユニットの斜視図である。
図5】電源ユニットのブロック図である。
図6】エアロゾル吸引器の電気回路図である。
図7】スイッチがオフ状態のときの図6のエアロゾル吸引器の電気回路図を簡素化した電気回路図である。
図8】スイッチがオン状態のときの図6のエアロゾル吸引器の電気回路と等価な等価回路図である。
図9】開回路電圧及び閉回路電圧と電源の残量との関係を示すグラフである。
図10】開回路電圧と閉回路電圧との差異と、内部抵抗との関係を説明する説明図である。
図11】劣化診断制御の制御フロー図である。
図12図11の劣化診断制御のタイミングチャートである。
図13】第1変形例の劣化診断制御の制御フロー図である。
図14】第2変形例の劣化診断制御の制御フロー図である。
図15】第3変形例の劣化診断制御の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のエアロゾル吸引器用の電源ユニットについて説明するが、先ず、電源ユニットが装着されたエアロゾル吸引器について、図1図3を参照しながら説明する。
【0010】
(エアロゾル吸引器)
エアロゾル吸引器1は、燃焼を伴わずに香味を吸引するための器具であり、所定方向(以下、長手方向Aと呼ぶ)に沿って延びる棒形状を有する。エアロゾル吸引器1は、長手方向Aに沿って電源ユニット10と、第1カートリッジ20と、第2カートリッジ30と、がこの順に設けられている。第1カートリッジ20は、電源ユニット10に対して着脱可能であり、第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20に対して着脱可能である。言い換えると、第1カートリッジ20及び第2カートリッジ30は、それぞれ交換可能である。
【0011】
(電源ユニット)
本実施形態の電源ユニット10は、図3及び図4に示すように、円筒状の電源ユニットケース11の内部に電源12、充電器13、制御部50、各種センサ等を収容する。電源12は、充電可能な二次電池、電気二重層キャパシタ等であり、好ましくは、リチウムイオン電池である。
【0012】
電源ユニットケース11の長手方向Aの一端側(第1カートリッジ20側)に位置するトップ部11aには、放電端子41が設けられる。放電端子41は、トップ部11aの上面から第1カートリッジ20に向かって突出するように設けられ、第1カートリッジ20の負荷21と電気的に接続可能に構成される。
【0013】
また、トップ部11aの上面には、放電端子41の近傍に、第1カートリッジ20の負荷21に空気を供給する空気供給部42が設けられている。
【0014】
電源ユニットケース11の長手方向の他端側(第1カートリッジ20と反対側)に位置するボトム部11bには、電源12を充電可能な外部電源60(図6参照)と電気的に接続可能な充電端子43が設けられる。充電端子43は、ボトム部11bの側面に設けられ、USB端子、microUSB端子、Lightning端子の少なくとも1つが接続可能である。
【0015】
なお、充電端子43は、外部電源60から送電される電力を非接触で受電可能な受電部であってもよい。このような場合、充電端子43(受電部)は、受電コイルから構成されていてもよい。非接触による電力伝送(Wireless Power Transfer)の方式は、電磁誘導型でもよいし、磁気共鳴型でもよい。また、充電端子43は、外部電源60から送電される電力を無接点で受電可能な受電部であってもよい。別の一例と
して、充電端子43は、USB端子、microUSB端子、Lightning端子の少なくとも1つが接続可能であり、且つ上述した受電部を有していてもよい。
【0016】
また、電源ユニットケース11には、ユーザが操作可能な操作部14が、トップ部11aの側面に充電端子43とは反対側を向くように設けられる。より詳述すると、操作部14と充電端子43は、操作部14と充電端子43を結ぶ直線と長手方向Aにおける電源ユニット10の中心線Lの交点について点対称の関係にある。操作部14は、ボタン式のスイッチ、タッチパネル等から構成され、ユーザの使用意思を反映して制御部50及び各種センサを起動/遮断する際等に利用される。操作部14の近傍には、制御部50及びパフ動作を検出する吸気センサ15が設けられている。
【0017】
充電器13は、充電端子43に近接して配置され、充電端子43から電源12へ入力される充電電力を制御する。充電器13は、充電端子43に接続される充電ケーブルに搭載された交流を直流に変換するインバータ61等(図6参照)からの直流を大きさの異なる直流に変換するコンバータ、電圧計、電流計、プロセッサ等を含む。
【0018】
制御部50は、図5に示すように、パフ(吸気)動作を検出する吸気センサ15、電源12の電圧を測定する電圧センサ16、温度センサ17等の各種センサ装置、操作部14、及びパフ動作の回数又は負荷21への通電時間等を記憶するメモリー18に接続され、エアロゾル吸引器1の各種の制御を行う。吸気センサ15は、コンデンサマイクロフォンや圧力センサ等から構成されていてもよい。制御部50は、具体的にはプロセッサ(コンピュータ)である。このプロセッサの構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路である。制御部50の詳細については後述する。
【0019】
また、電源ユニットケース11には、内部に外気を取り込む不図示の空気取込口が設けられている。なお、空気取込口は、操作部14の周囲に設けられていてもよく、充電端子43の周囲に設けられていてもよい。
【0020】
(第1カートリッジ)
第1カートリッジ20は、図3に示すように、円筒状のカートリッジケース27の内部に、エアロゾル源22を貯留するリザーバ23と、エアロゾル源22を霧化する電気的な負荷21と、リザーバ23から負荷21へエアロゾル源を引き込むウィック24と、エアロゾル源22が霧化されることで発生したエアロゾルが第2カートリッジ30に向かって流れるエアロゾル流路25と、第2カートリッジ30の一部を収容するエンドキャップ26と、を備える。
【0021】
リザーバ23は、エアロゾル流路25の周囲を囲むように区画形成され、エアロゾル源22を貯留する。リザーバ23には、樹脂ウェブや綿等の多孔体が収容され、且つ、エアロゾル源22が多孔体に含浸されていてもよい。エアロゾル源22は、グリセリン、プロピレングリコール、水などの液体を含む。
【0022】
ウィック24は、リザーバ23から毛管現象を利用してエアロゾル源22を負荷21へ引き込む液保持部材であって、例えば、ガラス繊維や多孔質セラミックなどによって構成される。
【0023】
負荷21は、電源12から放電端子41を介して供給される電力によって燃焼を伴わずにエアロゾル源22を霧化する。負荷21は、所定ピッチで巻き回される電熱線(コイル)によって構成されている。なお、負荷21は、エアロゾル源22を霧化してエアロゾルを発生可能な素子であればよく、例えば、発熱素子、又は超音波発生器である。発熱素子としては、発熱抵抗体、セラミックヒータ、及び誘導加熱式のヒータ等が挙げられる。
【0024】
エアロゾル流路25は、負荷21の下流側であって、電源ユニット10の中心線L上に設けられる。
【0025】
エンドキャップ26は、第2カートリッジ30の一部を収容するカートリッジ収容部26aと、エアロゾル流路25とカートリッジ収容部26aとを連通させる連通路26bと、を備える。
【0026】
(第2カートリッジ)
第2カートリッジ30は、香味源31を貯留する。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20側の端部が第1カートリッジ20のエンドキャップ26に設けられたカートリッジ収容部26aに着脱可能に収容される。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20側とは反対側の端部が、ユーザの吸口32となっている。なお、吸口32は、第2カートリッジ30と一体不可分に構成される場合に限らず、第2カートリッジ30と着脱可能に構成されてもよい。このように吸口32を電源ユニット10と第1カートリッジ20とは別体に構成することで、吸口32を衛生的に保つことができる。
【0027】
第2カートリッジ30は、負荷21によってエアロゾル源22が霧化されることで発生したエアロゾルを香味源31に通すことによってエアロゾルに香味を付与する。香味源31を構成する原料片としては、刻みたばこ、たばこ原料を粒状に成形した成形体を用いることができる。香味源31は、たばこ以外の植物(例えば、ミント、漢方、ハーブ等)によって構成されてもよい。香味源31には、メントールなどの香料が付与されていてもよい。
【0028】
本実施形態のエアロゾル吸引器1では、エアロゾル源22と香味源31と負荷21とによって、香味が付加されたエアロゾルを発生させることができる。つまり、エアロゾル源22と香味源31は、エアロゾルを発生させるエアロゾル生成源と言うことができる。
【0029】
エアロゾル吸引器1に用いられるエアロゾル生成源の構成は、エアロゾル源22と香味源31とが別体になっている構成の他、エアロゾル源22と香味源31とが一体的に形成されている構成、香味源31が省略されて香味源31に含まれ得る物質がエアロゾル源22に付加された構成、香味源31の代わりに薬剤等がエアロゾル源22に付加された構成等であってもよい。
【0030】
このように構成されたエアロゾル吸引器1では、図3中、矢印Bで示すように、電源ユニットケース11に設けられた不図示の取込口から流入した空気が、空気供給部42から第1カートリッジ20の負荷21付近を通過する。負荷21は、ウィック24によってリザーバ23から引き込まれたエアロゾル源22を霧化する。霧化されて発生したエアロゾルは、取込口から流入した空気と共にエアロゾル流路25を流れ、連通路26bを介して第2カートリッジ30に供給される。第2カートリッジ30に供給されたエアロゾルは、香味源31を通過することで香味が付与され、吸口32に供給される。
【0031】
また、エアロゾル吸引器1には、各種情報を報知する報知部45が設けられている(図5参照)。報知部45は、発光素子によって構成されていてもよく、振動素子によって構成されていてもよく、音出力素子によって構成されていてもよい。また、報知部45は、発光素子、振動素子及び音出力素子のうち、2以上の素子の組合せであってもよい。報知部45は、電源ユニット10、第1カートリッジ20、及び第2カートリッジ30のいずれに設けられてもよいが、電源ユニット10に設けられることが好ましい。例えば、操作部14の周囲が透光性を有し、LED等の発光素子によって発光するように構成される。
【0032】
(電気回路)
続いて、電源ユニット10の電気回路について図6を参照しながら説明する。
電源ユニット10は、電源12と、放電端子41を構成する正極側放電端子41a及び負極側放電端子41bと、充電端子43を構成する正極側充電端子43a及び負極側充電端子43bと、電源12の正極側と正極側放電端子41aとの間及び電源12の負極側と負極側放電端子41bとの間に接続される制御部50と、電源12の電圧を測定する電圧センサ16と、充電端子43と電源12との電力伝達経路上に配置される充電器13と、電源12と放電端子41との電力伝達経路上に配置されるスイッチ19と、を備える。スイッチ19は、例えばMOSFETにより構成され、制御部50がゲート電圧を調整することによって開閉制御される。制御部50は、例えば、制御部50を流れる微弱電流の変化によって、充電端子43に外部電源60が接続されたことを判定することができる。
【0033】
図6に示した電源ユニット10の電気回路図では、制御部50と電圧センサ16は別体となっている。これに代えて、制御部50が電源12の電圧を測定する機能を有していてもよい。また、図6に示した電源ユニット10の電気回路では、スイッチ19は電源12の正極側と正極側放電端子41aの間に設けられている。このような所謂プラスコントロールに代えて、スイッチ19は負極側放電端子41bと電源12の負極側に設けられるマイナスコントロールであってもよい。
【0034】
(制御部)
次に制御部50の構成について、より具体的に説明する。
制御部50は、図5に示すように、エアロゾル生成要求検出部51と、電源状態診断部52と、電力制御部53と、報知制御部54と、を備える。
【0035】
エアロゾル生成要求検出部51は、吸気センサ15の出力結果に基づいてエアロゾル生成の要求を検出する。吸気センサ15は、吸口32を通じたユーザの吸引により生じた電源ユニット10内の圧力変化の値を出力するよう構成されている。吸気センサ15は、例えば、不図示の取込口から吸口32に向けて吸引される空気の流量(すなわち、ユーザのパフ動作)に応じて変化する気圧に応じた出力値(例えば、電圧値又は電流値)を出力する圧力センサである。
【0036】
電源状態診断部52は、電源12の劣化状態(State of Health)又は故障状態を取得する。電源状態診断部52は、電源12の劣化状態又は故障状態に加えて、電源12の蓄電量(State of Charge)を取得することができる。電源状態診断部52における劣化診断制御及び故障診断制御については後述する。
【0037】
報知制御部54は、各種情報を報知するように報知部45を制御する。例えば、報知制御部54は、電源状態診断部52からの電源12の劣化診断に基づいて電源12の交換タイミングを報知するように報知部45を制御してもよく、電源状態診断部52からの電源12の蓄電量診断に基づいて電源12の充電タイミングを報知するように報知部45を制御してもよい。また、報知制御部54は、第2カートリッジ30の交換タイミングの検出に応じて、第2カートリッジ30の交換タイミングを報知するように報知部45を制御してもよい。報知制御部54は、メモリー18に記憶されたパフ動作の回数又は負荷21への累積通電時間に基づいて、第2カートリッジ30の交換タイミングを報知する。
【0038】
電力制御部53は、エアロゾル生成要求検出部51がエアロゾル生成の要求を検出した際に放電端子41を介した電源12の放電を、スイッチ19のオン/オフによって制御する。
【0039】
電力制御部53は、負荷21によってエアロゾル源が霧化されることで生成されるエア
ロゾルの量が所望範囲に収まるように、言い換えると、電源12から負荷21に供給される電力量が一定範囲となるように制御する。具体的に説明すると、電力制御部53は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によってスイッチ19のオン/オフを制御する。これに代えて、電力制御部53は、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)制御によってスイッチ19のオン/オフを制御してもよい。
【0040】
電力制御部53は、負荷21への電力供給を開始してから所定期間が経過した場合に、電源12から負荷21に対する電力供給を停止してもよい。言い換えると、電力制御部53は、ユーザが実際にパフ動作を行っているパフ期間内であっても、パフ期間が所定期間を超えた場合に、電源12から負荷21に対する電力供給を停止する。所定期間は、ユーザのパフ期間のばらつきを抑制するために定められる。電力制御部53は、電源12の蓄電量に応じて、1回のパフ動作においるスイッチ19のオン/オフのデューティ比を制御する。例えば、電力制御部53は、電源12から負荷21に電力を供給するオン時間の間隔(パルス間隔T1、図12参照)を制御したり、電源12から負荷21に電力を供給するオン時間の長さ(パルス幅T2、図12参照)を制御したりする。
【0041】
また、電力制御部53は、充電端子43と外部電源60との電気的な接続を検出し、充電端子43を介した電源12の充電を制御する。
【0042】
ここで、エアロゾル吸引器1に使用される電源12では、放電と充電とが繰り返し行われることで内部抵抗が増大し、これにより電源12が劣化する。電源12が劣化すると、電源12の満充電容量が減少し、エアロゾルの吸引に十分な電力を蓄電できない虞がある。そのため、電源12の劣化状態を適切に把握する必要がある。
【0043】
(劣化診断制御)
そこで、電源状態診断部52は、以下で説明する劣化診断制御により、電源12の劣化状態を取得する。一般的に電源12の劣化状態は、新品の電源の満充電容量に対する、劣化品の満充電容量の比で表されることが多い。しかし、電源12の満充電容量を正確に取得することは難しいため、電源状態診断部52による劣化診断制御は、電源12の内部抵抗に基づいて電源12の劣化状態を取得する。なお、以下で説明する劣化診断制御等は、これらを実行可能なプログラムとして電源ユニット10に読み込まれ、電源ユニット10によって実行されてもよい。
【0044】
先ず、電源12の内部抵抗Rについて、電源12としてリチウムイオン電池の場合を例に図7図10を参照しながら説明する。
【0045】
図7は、スイッチ19がオフ状態のときの図6のエアロゾル吸引器1の電気回路図を簡素化したものである。スイッチ19がオフ状態のときの電圧センサ16の測定値、即ち、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)は、電源12の起電力EBattに等しい。
【0046】
図8は、スイッチ19がオン状態のとき(電気回路が閉回路を構成するとき)の図6のエアロゾル吸引器1の電気回路と等価な等価回路図である。符号CBattは電源12と等しい起電力を有するコンデンサであり、符号Rimpはリチウムイオンが電極間を移動する際に受ける電極間における電極間内部抵抗であり、符号CEDLは電極界面における電気二重層容量を示すコンデンサであり、符号REDLはリチウムイオンが電極と電解液との界面を移動する際の反応抵抗である。反応抵抗REDL及び電気二重層コンデンサCEDLが、コンデンサCBatt及び電極間内部抵抗Rimpの下流に並列に設けられることで、電極間内部抵抗Rimpは、直流(DC)成分を構成し、反応抵抗REDLは一
次遅れ(AC)成分を構成する。
【0047】
スイッチ19がオン状態のときの電圧センサ16の測定値、即ち、閉回路電圧CCV(Closed Circuit Voltage)は、電源12の起電力から電極間内部抵抗Rimpによる損失及び反応抵抗REDLによる損失を差し引いたものである。
【0048】
したがって、図9に示すように、電源12の残量が同じでも開回路電圧OCV>閉回路電圧CCVの関係が成立する。図9は、LITHIUM COBALT SPINEL OXIDE: A STRUCTURAL AND ELECTROCHEMICAL STUDY(ERIKA MEZA et al, J. Chil. Chem. Soc, 53, No 2 (2008), pages: 1494-1497)で開示された、スピネル型のLi1+xCoを正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池の放電に伴う開回路電圧OCVと閉回路電圧CCVの関係である。縦軸は、開回路電圧OCVと閉回路電圧CCVの電圧値を示していて、上に行くほど高い電圧値になる。横軸は、正極活物質におけるリチウムの量を示していて、右に行くほど多い量になる。すなわち右に行くほど、蓄電容量の残量が減少し、放電した電力の積算量が増大することになる。
【0049】
この関係を縦軸に電圧、横軸に時間をとって表現したのが図10のグラフである。図8で示された等価回路より、閉回路電圧CCVの時間変化は、以下の(1)式と(2)式で表される。
【数1】
(2)式において、Rloadは、負荷21の電気抵抗値を示す。
【0050】
スイッチ19のオン直後は、一次遅れ成分である反応抵抗REDLを無視できる。言い換えると、スイッチ19のオン直後、即ちt=0のとき、開回路電圧OCVと閉回路電圧CCVとの差は、電極間内部抵抗Rimpによる電圧降下に依存する。
【0051】
これを式で表すと、(1)式と(2)式から(3)式で表される。
【数2】
【0052】
一方、tが(1)式と(2)式の一次遅れ成分の緩和時間(時定数)であるREDLとCEDLの積より十分に大きい場合、開回路電圧OCVと閉回路電圧CCVとの差は、電極間内部抵抗Rimpによる電圧降下と反応抵抗REDLによる電圧降下との和に起因する。
【0053】
これを式で表すと、(1)式と(2)式から(4)式で表される。
【数3】
【0054】
なお、一般的にREDLとCEDLは十分に小さな値である。したがって、スイッチ19を閉じてから比較的早いタイミングで、(4)式の関係が(近似的には)成立する点に留意されたい。
【0055】
電源状態診断部52は、電源12の開回路電圧OCVと電源12の閉回路電圧CCVとに基づいて内部抵抗Rを取得する。閉回路電圧CCVは、例えば電圧センサ16により取得される実測値である。
【0056】
閉回路電圧CCVは、回路を閉じてから時間が十分に経過した後(t=t1)の実測値であってもよく、回路を閉じてから時間が十分に経過する前(t<t1)の実測値であってもよい。閉回路電圧CCVを、回路を閉じてから時間が十分に経過する前(t<t1)の実測値とすることで、閉回路電圧CCVをより早く取得できる。この場合は、電源状態診断部52は、取得した内部抵抗Rと比較する閾値として、閉回路電圧CCVの一次遅れ成分である反応抵抗REDLを考慮せずに直流成分である電極間内部抵抗Rimpによる電圧降下のみに基づいて設定される閾値を用いる。本実施形態では、一例として回路を閉じた直後の閉回路電圧CCVを用いてもよい。
【0057】
一方、閉回路電圧CCVを、回路を閉じてから時間が十分に経過した後(t=t1)の実測値とすることで、閉回路電圧CCVを精度よく取得できる。この場合は、電源状態診断部52は、取得した内部抵抗Rと比較する閾値として、閉回路電圧CCVの一次遅れ成分である反応抵抗REDLを考慮して電極間内部抵抗Rimpによる電圧降下と反応抵抗REDLによる電圧降下との和に基づいて設定される閾値を用いる。なお、閉回路電圧CCVは、実測値に限らず、推定値を用いてもよい。閉回路電圧CCVを推定することで、閉回路電圧CCVの実測を不要にできる。閉回路電圧CCVは一次遅れ系の振舞いをするため、完全な定常状態に落ち着くまでには、非常に長い時間が掛かる。便宜上、本実施形態では、回路を閉じてから緩和時間経過後又は緩和時間に所定の値を加えた時間経過後の閉回路電圧CCVを用いてもよい。
【0058】
また、電源状態診断部52は、閉回路電圧CCVを取得する際に、エアロゾルを発生させるために負荷21へ放電する際の電流よりも小さい電流を用いて閉回路電圧CCVを取得してもよく、内部抵抗Rを導出する際に電流値を定数としてもよい。電流値を実測値する場合、不図示の電流センサを用いて測定することができる。小さな電流を用いて閉回路電圧CCVを取得すれば、実際の電流値と(3)式や(4)式で定数として扱われるIとのズレを小さくすることができる。また、閉回路電圧CCV取得時にエアロゾルが発生することを抑制することができる。
【0059】
閉回路電圧CCVを取得する際に、エアロゾルを発生させるために負荷21へ放電する際の電流よりも小さい微小電流を流すことで閉回路電圧CCVを取得する際の電力消費を低減できる。また、内部抵抗Rを導出する際に電流値を定数することで、電流値の実測を不要にできる。例えば、定電流制御中に閉回路電圧CCVを取得することで電流値として定数を用いることができる。この結果、電流センサが不要になるため、エアロゾル吸引器1のサイズ、重量、コストを低減することができる。
【0060】
次に、劣化診断制御の制御フローについて図11及び図12を参照しながら説明する。
先ず、エアロゾル生成要求検出部51は、吸気センサ15の出力結果に基づいてエアロゾル生成の要求を検出する(ステップS1)。ユーザからのエアロゾル生成の要求を契機として電源12の劣化状態を取得することで、劣化判定の結果をユーザに認識させることができる。
【0061】
エアロゾル生成要求検出部51がエアロゾル生成の要求を検出した場合、開回路電圧O
CVを取得し(ステップS2)、エアロゾル生成要求検出部51がエアロゾル生成の要求を検出しない場合、ステップS1の処理を繰り返す。ステップS2で開回路電圧OCVを取得した後は、スイッチ19をオン状態にして(ステップS3)、閉回路電圧CCVを取得し(ステップS4)、続いて電流値を取得する(ステップS5)。なお、ステップS4は、ステップS5の後に実行されてもよい。
【0062】
電流値を取得した後、(1)式又は(2)式から内部抵抗R(Rimp、又は、Rimp+REDL)を導出し、導出した内部抵抗Rと閾値Th1を比較する(ステップS6)。その結果、内部抵抗Rが閾値Th1よりも小さいとき(ステップS6のYes)、電源状態診断部52は電源12が正常な状態にあると判断し(ステップS7)、電力制御部53はエアロゾルを生成するためにPWM制御を実施する(ステップS8)。一方、内部抵抗Rが閾値Th1以上であるとき(ステップS6のNo)、電源12が劣化していると判断し(ステップS9)、報知制御部54はユーザに電源12の交換が必要であることを報知する(ステップS10)。
【0063】
ステップS4で、取得した閉回路電圧CCVがスイッチ19のオン直後、即ちt=0のときであれば、内部抵抗Rは電極間内部抵抗Rimpであるので、閾値Th1は電極間内部抵抗Rimpによる電圧降下に基づいて設定される閾値である。一方、取得した閉回路電圧CCVが緩和時間を経過した後、即ちt=t1以降であれば、内部抵抗Rは電極間内部抵抗Rimpと反応抵抗REDLとの和であるので、閾値Th1は電極間内部抵抗Rimpによる電圧降下と反応抵抗REDLによる電圧降下との和に基づいて設定される閾値である。
【0064】
このように電源12の劣化診断制御をユーザからのエアロゾル生成の要求を契機として、エアロゾルの生成前に行うことで、劣化した電源12の使用を回避できる。なお、ステップS3において閉回路電圧CCVを取得するためのスイッチ19のオンは、他の用途、ここでは、閉回路電圧CCVを負荷21へ放電する際のPWM制御に用いることで、電源12の劣化診断のためだけに回路に電流を流すことを回避できる。
【0065】
以下、上記した劣化診断制御の変形例について説明するが、図11と同一のステップについては説明を省略する。
【0066】
(第1変形例の劣化診断制御)
また、電源状態診断部52は、上記したように内部抵抗Rを導出する際に電流値を定数とすることができる。電流値を定数とする場合、図13に示すように、ステップS4において閉回路電圧CCVを取得した後、電流値を取得するステップS5を実施せずに次の処理(ステップS6a)に移行することができる。なお、電流値を取得しない場合、内部抵抗Rを導出してもよく、内部抵抗Rを導出しなくてもよい。
【0067】
内部抵抗Rを導出する場合、開回路電圧OCVと閉回路電圧CCVとの差を定数で割った値に基づいて内部抵抗Rを導出し、図11のステップS6と同様に導出した内部抵抗Rと閾値Th1と比較する。
【0068】
一方、内部抵抗Rを導出しない場合、開回路電圧OCVと閉回路電圧CCVの差と、この電流値を閾値Th1に積算した閾値Th2と、を比較してもよい。このように、内部抵抗Rを導出しなくても、電源12の放電時における電気パラメータ(閉回路電圧CCV)と電源12の非放電時における電気パラメータ(開回路電圧OCV)との差異に基づいて電源12の劣化状態を取得してもよい。これによっても、電源12の劣化状態を適切に把握することができる。なお、閉回路電圧CCVを取得する際に電源12が放電する電流値を予め測定しておき、これを定数に用いてもよい。
【0069】
閾値Th2は、電源12の劣化時状態にある場合のみ内部抵抗Rが取り得る値に電流値と見做される定数を掛けた値であってもよい。このように設定される閾値Th2を予めメモリー18に記録しておけば、ステップS6における除算処理が不要になるため、ステップS6aの処理を高速化することができる。
【0070】
(第2変形例の劣化診断制御)
また、内部抵抗Rが温度依存性を有することから、電源状態診断部52は、温度センサ17から電源12の温度を取得し、電源12の温度情報に基づいて閾値を設定してもよい。図14に示す実施形態では、ステップS2で開回路電圧OCVを取得した後、ステップS3でスイッチ19をオン状態にする前に温度TBattを取得する(ステップS21)。なお、電源12の温度の取得は、これに限らずいつでも可能である。電源12の温度を取得した後、ステップS6bにおいては、導出した内部抵抗Rと電源12の温度に基づいて設定された閾値Th3とを比較する。即ち、電源12の温度が低いときは内部抵抗Rも大きくなるため、電源12の温度が低いほど閾値Th3を大きくする。このように内部抵抗Rの温度依存性を考慮することで、より適切に電源12の劣化を取得することができる。
【0071】
本実施形態では、温度TBattを用いて閾値Th3を補正した。これに代えて、ステップS6bにおいて導出される内部抵抗Rを補正してもよい。一例として、電源12の温度が低いときは、電流値Iを大きくする、又は内部抵抗Rに1より小さい所定の係数を掛ける補正を行ってもよい。内部抵抗Rの補正量は、電源12の温度が低いほど大きいことが好ましい。即ち、電源12の温度が低いほど、電流値Iを大きくする、又は内部抵抗Rに掛ける所定の係数を小さくすることが好ましい。
【0072】
なお、温度センサ17は、電源12の近くに配置されていることが好ましいが、電源12から離れて配置されていてもよい。この場合、電源12の温度TBattとして、電源12と温度センサ17との距離を考慮して温度センサ17の測定値を補正してもよい。
【0073】
(第3変形例の劣化診断制御)
また、電源状態診断部52は、取得した開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVの少なくとも一方を他の用途に用いてもよい。ここでは、取得した開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVを、電源12の蓄電量(SOC)判定に使用する場合を例示する。図15に示す実施形態では、ステップS2で開回路電圧OCVを取得した後、取得した開回路電圧OCVを、充電が必要な値である閾値Th4(図9参照)と比較する(ステップS20)。その結果、開回路電圧OCVが閾値Th4以下の場合(ステップS20でNo)の場合、報知制御部54はユーザに電源12の充電が必要であることを報知する(ステップS11)。
【0074】
また、ステップS4で閉回路電圧CCVを取得した後、取得した閉回路電圧CCVを、充電が必要な値である閾値Th5(図9参照)と比較する(ステップS40)。その結果、開回路電圧OCVが閾値Th5以下の場合(ステップS40でNo)の場合、報知制御部54はユーザに電源12の充電が必要であることを報知する(ステップS11)。これにより、電源12の劣化判定とともに蓄電量判定を行うことができる。なお、図15に示す実施形態では、取得した開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVを、電源12の蓄電量判定に使用する場合を例示したが、いずれか一方のみを電源12の蓄電量判定に用いてもよく、他の用途に用いてもよい。
【0075】
他の用途の一例として、取得した開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVを、前述したPWM制御におけるデューティ比やPFM制御におけるオフ時間の設定に用いてもよい。
【0076】
(故障診断制御)
また、電源状態診断部52は、電源12の劣化だけでなく故障を診断してもよい。前述した通り、内部抵抗値は、電源12の劣化が進行するに従って増大する。ところで、電源12が故障した場合には、電源12の内部抵抗は極端に大きな値や小さな値を示すことがある。一例として、電源12が短絡(ショート)した場合には、過大な電流が流れ得るため、内部抵抗は極端に小さな値を示す。また別の一例として、電源12の電解液が減少又は枯渇した場合には、電流が殆ど流れないため、電源12の内部抵抗は極端に大きな値を示す。
【0077】
この現象を利用し、電源状態診断部52は、新品の電源12が取り得る内部抵抗値よりも小さな内部抵抗値を検出した場合は、短絡(ショート)などによる電源12の故障を検知してもよい。また、電源状態診断部52は、劣化検知を行う閾値よりも十分に大きな内部抵抗値を検出した場合は、電解液の減少や枯渇などによる電源12の故障を検知してもよい。
【0078】
報知制御部54は、電源状態診断部52からの電源12の故障検知に基づいて電源12の交換タイミングを報知するように報知部45を制御してもよい。
【0079】
なお、本発明は、上記した実施形態に限らず、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0080】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0081】
(1)
エアロゾル源(エアロゾル源22)からエアロゾルを発生させるための負荷(負荷21)へ放電可能な電源(電源12)と、
前記電源を制御する制御部(制御部50)と、を備えるエアロゾル吸引器(エアロゾル吸引器1)用の電源ユニット(電源ユニット10)であって、
前記制御部は、
前記電源の内部抵抗(内部抵抗R)に基づいて前記電源の劣化状態又は故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0082】
(1)によれば、電源の劣化につれて電源の内部抵抗が増大することを利用して、電源の内部抵抗を取得することで、より短時間で電源の劣化状態又は故障状態を適切に把握することができる。
【0083】
(2)
(1)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、前記電源の開回路電圧(開回路電圧OCV)と前記電源の閉回路電圧(閉回路電圧CCV)とに基づいて前記内部抵抗を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0084】
(2)によれば、電源の開回路電圧と電源の閉回路電圧とを取得することで、容易に電源の内部抵抗を導出することができる。
【0085】
(3)
(2)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記閉回路電圧は実測値であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0086】
(3)によれば、電圧計により取得した電源の閉回路電圧を用いるため、推定値を用いる場合と比べて内部抵抗の導出の精度を向上することができる。
【0087】
(4)
(3)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記閉回路電圧は、回路を閉じてから所定時間(緩和時間)経過した後の実測値であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0088】
(4)によれば、閉回路電圧が安定した後に閉回路電圧を測定することで、閉回路電圧を精度よく取得できる。
【0089】
(5)
(3)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、前記閉回路電圧の一次遅れ成分を考慮せずに設定される閾値と、前記内部抵抗との比較に基づいて前記電源の劣化状態又は故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0090】
(5)によれば、閉回路電圧が安定する前であっても閉回路電圧の一次遅れ成分を考慮せずに劣化判定又は故障判定する際の閾値を設定することで、より早く且つ正確に電源の劣化状態又は故障状態を取得することができる。
【0091】
(6)
(3)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、前記内部抵抗の直流成分のみに基づき設定される閾値と、前記内部抵抗との比較に基づいて前記電源の劣化状態又は故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0092】
(6)によれば、内部抵抗の直流成分のみに基づき設定される閾値と内部抵抗との比較に基づいて劣化判定又は故障判定することで、より早く且つ正確に電源の劣化状態又は故障状態を取得することができる。
【0093】
(7)
(3)から(6)のいずれかに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、前記エアロゾルを発生させるために前記負荷へ放電する際の電流よりも小さい電流を用いて前記閉回路電圧を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0094】
(7)によれば、微小電流を用いて閉回路電圧を取得する際の電力消費を低減できる。また、閉回路電圧の取得時にエアロゾルが発生することを抑制できる。
【0095】
(8)
(2)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記閉回路電圧は推定値であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0096】
(8)によれば、閉回路電圧を推定することで、閉回路電圧の実測を不要にできる。従って、電力消費を低減できると共に、閉回路電圧の取得時にエアロゾルが発生することを抑制できる。
【0097】
(9)
(2)から(8)のいずれかに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、
前記開回路電圧と前記閉回路電圧との差を定数で割った値に基づいて前記内部抵抗を導出する、
又は、前記開回路電圧と前記閉回路電圧との差と、前記電源が劣化状態又は故障状態にある場合のみ前記内部抵抗が取り得る値に定数を掛けた値との比較に基づいて、前記電源の劣化状態又は故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0098】
(9)によれば、内部抵抗を導出する際に電流値を定数とすることで、電流値の実測を不要にできる。これにより、電流センサが不要になるため、エアロゾル吸引器の重量、コスト、サイズを低減できる。さらに、内部抵抗の導出等をより高速に行うことができる。
【0099】
(10)
(9)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記定数は、前記閉回路電圧を取得する際に前記電源が放電する電流値に基づいて設定されるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0100】
(9)によれば、定数は閉回路電圧を取得する際に電源が放電する電流値に基づいて設定されるので、内部抵抗の導出等をより精度よく行うことができる。
【0101】
(11)
(1)から(10)のいずれかに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、エアロゾル生成の要求を契機として、前記劣化状態又は前記故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0102】
(11)によれば、ユーザからのエアロゾル生成の要求を契機として電源の劣化状態を取得することで、劣化判定の結果をユーザに認識させることができる。また、過度に劣化判定を行うことで生じ得る電力消費を抑制しつつも、適切なタイミングで劣化判定を行うことができる。
【0103】
(12)
(1)~(11)のいずれかに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、エアロゾルの生成前に前記劣化状態又は前記故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0104】
(12)によれば、エアロゾルの生成前に劣化状態又は故障状態を取得することで、劣化した電源の使用を回避できる。
【0105】
(13)
(1)から(12)のいずれかに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、前記電源の温度に基づいて設定される閾値と前記内部抵抗との比較、又は、閾値と前記電源の温度に基づいて補正される前記電源の内部抵抗との比較に基づいて、前記電源の劣化状態又は故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0106】
(13)によれば、内部抵抗の温度依存性を考慮することで、より適切に電源の劣化状態又は故障状態を取得することができる。
【0107】
(14)
(13)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記電源の温度に基づいて設定される前記閾値又は前記電源の温度に基づいて前記電源の内部抵抗を補正する補正量は、前記電源の温度が低いほど大きいエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0108】
(14)によれば、電源の温度が低いほど劣化判定又は故障判定の際の閾値又は補正量を大きくすることで、低温時の内部抵抗の増加を考慮してより適切に電源の劣化状態又は故障状態を取得することができる。
【0109】
(15)
(2)から(9)のいずれかに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、前記開回路電圧及び前記閉回路電圧の少なくとも一方を他の用途に用いるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0110】
(14)によれば、取得した開回路電圧及び/又は閉回路電圧を他の用途に用いることで、電源の劣化判定又は故障判定のためだけに回路に電流を流すことを回避できる。
【0111】
(16)
(15)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記他の用途は、前記電源の蓄電量判定であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0112】
(16)によれば、取得した開回路電圧及び/又は閉回路電圧を電源の蓄電量判定に用いることで、電源の劣化判定とともに蓄電量判定を行うことができる。
【0113】
(17)
(15)に記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記他の用途は、前記エアロゾルを発生させるために前記負荷へ放電する際のPWM制御又はPFM制御であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0114】
(17)によれば、閉回路電圧を負荷へ放電する際のPWM制御又はPFM制御に用いることで、電源の劣化判定又は故障判定のためだけに回路に電流を流すことを回避できる。
【0115】
(18)
エアロゾル源(エアロゾル源22)からエアロゾルを発生させるための負荷(負荷21)へ放電可能な電源(電源12)を備えるエアロゾル吸引器(エアロゾル吸引器1)用の電源ユニット(電源ユニット10)の制御方法であって、
前記電源の内部抵抗に基づいて前記電源の劣化状態又は故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニットの制御方法。
【0116】
(18)によれば、電源の劣化につれて電源の内部抵抗が増大することを利用して、電源の内部抵抗を導出することで、より短時間で電源の劣化状態又は故障状態を適切に把握することができる。
【0117】
(19)
エアロゾル源(エアロゾル源22)からエアロゾルを発生させるための負荷(負荷21)へ放電可能な電源(電源12)を備えるエアロゾル吸引器(エアロゾル吸引器1)用の電源ユニット(電源ユニット10)の制御プログラムであって、
前記電源の内部抵抗に基づいて前記電源の劣化状態又は故障状態を取得する制御ステップをコンピュータに実行させるためのエアロゾル吸引器用の電源ユニットの制御プログラム。
【0118】
(19)によれば、電源の劣化につれて又電源の故障によって電源の内部抵抗が増大することを利用して、電源の内部抵抗を導出することで、より短時間で電源の劣化状態又は
故障状態を適切に把握することができる。
【0119】
(20)
エアロゾル源(エアロゾル源22)からエアロゾルを発生させるための負荷(負荷21)へ放電可能な電源(電源12)と、
前記電源を制御する制御部(制御部50)と、を備えるエアロゾル吸引器(エアロゾル吸引器1)用の電源ユニット(電源ユニット10)であって、
前記制御部は、
前記電源の放電時における電気パラメータ(閉回路電圧CCV)と前記電源の非放電時における電気パラメータ(開回路電圧OCV)との差異に基づいて前記電源の劣化状態又は故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0120】
(20)によれば、電源の放電時における電気パラメータと電源の非放電時における電気パラメータとの差異に基づいて電源の劣化状態又は故障状態を取得することで、電源の劣化状態又は故障状態を適切に把握することができる。
【0121】
(21)
エアロゾル源(エアロゾル源22)からエアロゾルを発生させるための負荷(負荷21)へ放電可能な電源(電源12)を備えるエアロゾル吸引器用の電源ユニット(電源ユニット10)の制御方法であって、
前記電源の放電時における電気パラメータ(閉回路電圧CCV)と前記電源の非放電時における電気パラメータ(開回路電圧OCV)との差異に基づいて前記電源の劣化状態又は故障状態を取得するエアロゾル吸引器用の電源ユニットの制御方法。
【0122】
(21)によれば、電源の放電時における電気パラメータと電源の非放電時における電気パラメータとの差異に基づいて電源の劣化状態又は故障状態を取得することで、電源の劣化状態又は故障状態を適切に把握することができる。
【0123】
(22)
エアロゾル源(エアロゾル源22)からエアロゾルを発生させるための負荷(負荷21)へ放電可能な電源(電源12)を備えるエアロゾル吸引器(エアロゾル吸引器1)用の電源ユニット(電源ユニット10)の制御プログラムであって、
前記電源の放電時における電気パラメータ(閉回路電圧CCV)と前記電源の非放電時における電気パラメータ(開回路電圧OCV)との差異に基づいて前記電源の劣化状態又は故障状態を取得する制御ステップをコンピュータに実行させるためのエアロゾル吸引器用の電源ユニットの制御プログラム。
【0124】
(22)によれば、電源の放電時における電気パラメータと電源の非放電時における電気パラメータとの差異に基づいて電源の劣化状態又は故障状態を取得することで、電源の劣化状態又は故障状態を適切に把握することができる。
【0125】
(1)及び(18)~(22)によれば、電源の内部抵抗に基づいて電源の劣化状態又は故障状態を取得することで、若しくは、電源の放電時における電気パラメータと電源の非放電時における電気パラメータとの差異に基づいて電源の劣化状態又は故障状態を取得することで、電源の劣化状態又は故障状態を適切に把握することができる。従って、電源の交換を適切なタイミングでユーザなどに促せるため、電源を新品のものと交換することなく使用できる期間を最大化できるという省エネルギー効果を有する。
【符号の説明】
【0126】
1 エアロゾル吸引器
10 電源ユニット
12 電源
21 負荷
22 エアロゾル源
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15