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特許7598425エレベータ調速機の摩擦力調整機構およびエレベータの摩擦力調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】エレベータ調速機の摩擦力調整機構およびエレベータの摩擦力調整方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/04 20060101AFI20241204BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B66B5/04 B
B66B5/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023141695
(22)【出願日】2023-08-31
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】安達 理久也
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-507626(JP,A)
【文献】国際公開第2019/224881(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/56111(WO,A1)
【文献】特開2004-359404(JP,A)
【文献】特開2004-315128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/04
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ調速機の高摩擦材被覆ロープが巻き掛けられる調速機シーブの回転を停止するために、固定フランジの円筒部に対して回転可能に設けられたラチェットに作用する摩擦力を調整するための摩擦力調整機構であって、
前記固定フランジの前記円筒部に螺合したリングナットの外周縁に設けられた係合部と、
調整治具と、
を備え、
前記調整治具は、治具本体と、前記治具本体に設けられた係合棒であって、前記エレベータ調速機の筐体の筐体貫通孔および前記調速機シーブのシーブ貫通孔を通って前記係合部に係合可能な係合棒と、を含む、
エレベータ調速機の摩擦力調整機構。
【請求項2】
前記治具本体は、円板状に形成され、
前記係合棒は、前記治具本体の前記調速機シーブに対向する面から延びている、
請求項1に記載のエレベータ調速機の摩擦力調整機構。
【請求項3】
前記治具本体の前記調速機シーブとは反対側の面に、取っ手が設けられている、
請求項2に記載のエレベータ調速機の摩擦力調整機構。
【請求項4】
前記治具本体に、前記調速機シーブの回転軸の端面に設けられた端面凸部が嵌合する嵌合孔が設けられている、
請求項2または3に記載のエレベータ調速機の摩擦力調整機構。
【請求項5】
前記筐体貫通孔および前記シーブ貫通孔は、前記調速機シーブの周方向に延びるように円弧状に形成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のエレベータ調速機の摩擦力調整機構。
【請求項6】
前記治具本体は、細長板状に形成され、
前記係合棒は、前記治具本体の一方の端部に設けられるとともに、前記治具本体の前記調速機シーブに対向する面から延びている、
請求項1に記載のエレベータ調速機の摩擦力調整機構。
【請求項7】
前記治具本体の他方の端部であって、前記調速機シーブとは反対側の面に、取っ手が設けられている、
請求項6に記載のエレベータ調速機の摩擦力調整機構。
【請求項8】
請求項1に記載の前記エレベータ調速機の摩擦力調整機構を用いて前記摩擦力を調整するための摩擦力調整方法であって、
前記調整治具の前記係合棒を、前記筐体貫通孔および前記シーブ貫通孔を通って前記係合部に係合させる工程と、
前記調整治具を操作して前記リングナットを回動させることにより、前記摩擦力を調整する工程と、
を備えた、エレベータ調速機の摩擦力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施の形態は、エレベータ調速機の摩擦力調整機構およびエレベータの摩擦力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの昇降路内を昇降する乗りかごが速度超過した場合に乗りかごを停止させるための調速機が知られている。調速機は、ガバナとも称されており、乗りかごが速度超過した場合に、乗りかごの昇降に連動して走行する調速機ロープが巻き掛けられた調速機シーブの回転を停止させる。調速機シーブの回転が停止すると、調速機ロープの走行が停止し、調速機ロープに連結された非常止め装置が作動する。非常止め装置は、乗りかごの昇降を案内するガイドレールに、乗りかごを停止させる。
【0003】
調速機は、シーブ回転停止機構と、ロープ把持機構と、を備えている場合がある。このような調速機において乗りかごが速度超過した場合、シーブ回転停止機構は調速機シーブの回転を停止させ、ロープ把持機構は、調速機ロープを押圧して把持する。このことにより、調速機ロープの走行が停止する。
【0004】
一方、ロープ把持機構を用いることなく、調速機ロープの走行を停止させるトラクション式の調速機が知られている。トラクション式の調速機は、調速機ロープと調速機シーブとの間の摩擦力を高めるように構成されている。このことにより、シーブ回転停止機構によって調速機シーブの回転が停止した場合に、摩擦力によって調速機ロープの走行が停止する。
【0005】
調速機ロープと調速機シーブとの間の摩擦力を高めるために、調速機ロープの外表面が高摩擦材で被覆されている場合がある。しかしながら、調速機シーブの回転が急激に停止すると、高摩擦材に大きな力が生じ、高摩擦材の被覆が剥がれるおそれがある。このことを防止するために、調速機シーブの回転停止時に調速機シーブをある程度回転させている。
【0006】
より具体的には、シーブ回転停止機構は、調速機シーブに設けられた爪と、ラチェットと、によって主に構成されており、爪がラチェットに係合することにより、調速機シーブの回転を停止させている。ラチェットは、摩擦材で挟まれるとともに皿ばねに押し付けられており、この皿ばねの反発力を利用した摩擦力がラチェットに作用している。このため、調速機シーブがある程度回転可能となるように、ラチェットに作用する摩擦力の調整が行われている。
【0007】
ラチェットに作用する摩擦力の調整は、調速機シーブなどの部品を取り外すことによって行われる。このため、摩擦力の調整作業が複雑になり、多くの作業時間を費やしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-171468号公報
【文献】特開2017-100865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実施の形態は、摩擦力の調整作業を簡易化して、調整作業時間を短縮することができるエレベータ調速機の摩擦力調整機構およびエレベータ調速機の摩擦力調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施の形態によるエレベータ調速機の摩擦力調整機構は、エレベータ調速機の高摩擦材被覆ロープが巻き掛けられる調速機シーブの回転を停止するために、固定フランジの円筒部に対して回転可能に設けられたラチェットに作用する摩擦力を調整するためのき機構である。摩擦力調整機構は、固定フランジの円筒部に螺合したリングナットの外周縁に設けられた係合部と、調整治具と、を備えている。調整治具は、治具本体と、治具本体に設けられた係合棒であって、エレベータ調速機の筐体の筐体貫通孔および調速機シーブのシーブ貫通孔を通って係合部に係合可能な係合棒と、を含んでいる。
【0011】
実施の形態によるエレベータ調速機の摩擦力調整方法は、上述したエレベータ調速機の摩擦力調整機構を用いて摩擦力を調整するための方法である。摩擦力調整方法は、調整治具の係合棒を、筐体貫通孔およびシーブ貫通孔を通って係合部に係合させる工程と、調整治具を操作してリングナットを回動させることにより、摩擦力を調整する工程と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施の形態によるエレベータ装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、図1に示す調速機ロープの一例を示す断面図である。
図3図3は、図1の調速機本体を示す外形斜視図である。
図4図4は、図3の調速機本体のラチェットを示す背面図である。
図5図5は、図3のA-A線断面図である。
図6図6は、第1の実施の形態による調速機の摩擦力調整機構を示す斜視図である。
図7図7は、図6の摩擦力調整機構を示す背面斜視図であって、リングナットを示す図である。
図8図8は、図6のハンドルを示す背面斜視図である。
図9図9は、図6の調速機本体を、筐体の正面壁を省略して示す正面図である。
図10図10は、第2の実施の形態による調速機の摩擦力調整機構を示す斜視図である。
図11図11は、図10の摩擦力調整機構を示す背面斜視図であって、リングナットを示す図である。
図12図12は、図10のレバーを示す背面斜視図である。
図13図13は、図10の調速機本体を、筐体の正面壁を省略して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態におけるエレベータ調速機の摩擦力調整機構およびエレベータ調速機の摩擦力調整方法について説明する。ここではまず、本実施の形態によるエレベータ装置について説明する。
【0014】
図1に示すように、エレベータ装置1は、昇降路2内に配置された乗りかご3および釣合錘4を備えている。乗りかご3と釣合錘4は、主ロープ5を介して連結されている。主ロープ5は、巻上機6に設けられたトラクションシーブ6aに巻き掛けられている。巻上機6が主ロープ5を巻き上げることにより、乗りかご3および釣合錘4が昇降する。主ロープ5は、反らせシーブ7にも巻き掛けられている。巻上機6は、昇降路2の上方に設けられた機械室8内に設置されている。機械室8には、図示しないエレベータ制御装置が設置されている。エレベータ制御装置は、巻上機6を含むエレベータ装置1の全体を制御する装置である。例えば、エレベータ制御装置は、乗場呼び、およびかご呼びに応じて巻上機6の運転を制御し、乗りかご3を呼び登録された階床の乗場に着床させる。
【0015】
なお、エレベータ装置1は、図1に示す形態に限られることはない。例えば、いわゆる機械室レスのエレベータ装置であってもよい。すなわち、機械室8を設けることなく、巻上機6やエレベータ制御装置を昇降路2の上部等に設けるようにしてもよい。また、主ロープ5に釣合錘4が連結されずに、乗りかご3に連結された主ロープ5を巻上機6が巻き上げるまたは繰り出すようにしてもよい。この場合においても、巻上機6は、主ロープ5を介して乗りかご3を昇降させることができる。すなわち、エレベータ装置1は、釣合錘4を備えていないエレベータ装置であってもよい。
【0016】
図1に示すように、エレベータ装置1は、エレベータの調速機(以下、単に調速機20と記す)と、非常止め装置9と、を備えている。非常止め装置9は、乗りかご3の下部に取り付けられている。非常止め装置9は、後述する調速機ロープ21に連結されている。乗りかご3が速度超過して調速機ロープ21の走行が停止した場合に非常止め装置9は作動し、乗りかご3の昇降を案内するガイドレール(図示せず)に乗りかご3を停止させる。
【0017】
以下、本実施の形態による調速機20について説明する。調速機20は、乗りかご3が速度超過した場合に乗りかご3を停止させるための装置である。図1に示す例においては、調速機20が機械室8に設けられているが、エレベータ装置1が機械室レスタイプである場合には、昇降路2の上部等に設けられていてもよい。本実施の形態による調速機20は、調速機ロープ21と調速機シーブ32との間の摩擦力によって、調速機シーブ32の回転を停止した場合に調速機ロープ21の走行を停止できるように構成されている。このような調速機20は、トラクション式の調速機とも称される。
【0018】
図1に示すように、調速機20は、調速機ロープ21と、テンショナ26と、調速機本体30と、を備えている。
【0019】
図1に示すように、調速機ロープ21は、前記乗りかご3に連結されており、乗りかご3の昇降に連動して走行する。より具体的には、調速機ロープ21は、乗りかご3の下部に取り付けられた上述の非常止め装置9に、連結部材10を介して連結されている。このことにより、調速機ロープ21は、乗りかご3の昇降と同期して走行するように構成されている。
【0020】
図2に示すように、上述した調速機ロープ21の外表面は、高摩擦材23の被覆で形成されている。調速機ロープ21は、高摩擦材被覆ロープとも称される。
【0021】
より具体的には、調速機ロープ21は、ロープ本体22と、ロープ本体22に被覆された高摩擦材23と、を含んでいる。ロープ本体22の構成は特に限られることはない。図2に示す例では、ロープ本体22は、芯鋼24と、芯鋼24の周囲に配置された複数のストランド25と、を含んでいる。ストランド25は、鋼製の素線を撚り合わせることにより形成されている。高摩擦材23は、ストランド25の周囲に形成されている。高摩擦材23は、隣り合う2つのストランド25の間の隙間に入り込んでいてもよく、芯鋼24とストランド25との間の隙間に入り込んでいてもよい。高摩擦材23の被覆方法は任意である。
【0022】
高摩擦材23は、後述する調速機シーブ32のシーブ溝32aとの間での摩擦力を高めることができる材料であれば、任意の材料で作製されていてもよい。高摩擦材23は、樹脂材料で構成されていてもよい。樹脂材料の例としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、シリコン樹脂等を挙げることができる。高摩擦材23は、耐摩耗性に優れるとともに高摩擦係数を有するポリウレタンであってもよい。高摩擦材23は、合成樹脂に限られることはなく、天然ゴムなどの天然樹脂であってもよい。
【0023】
調速機シーブ32は、金属材料で形成されている。金属材料は、例えば、鉄鋼材料または鋳鉄材料であってもよい。調速機シーブ32のシーブ溝32aには、樹脂材料は被覆されていない。
【0024】
図1に示すように、テンショナ26は、昇降路2の底部に配置されており、調速機ロープ21に張力を負荷している。テンショナ26は、テンションシーブ27と、テンション錘28と、を含んでいる。テンションシーブ27に調速機ロープ21が巻き掛けられており、テンション錘28は、テンションシーブ27に取り付けられている。テンション錘28の重量によって、調速機ロープ21に張力が負荷され、調速機ロープ21と調速機シーブ32との間の摩擦力を高めている。本実施の形態による調速機20においては、後述するように調速機ロープ21の外表面に形成された高摩擦材23の被覆によって摩擦力が高められている。このため、テンション錘28の重量を、調速機ロープ21の外表面に高摩擦材23の被覆が形成されていない場合のテンション錘28の重量よりも小さくしてもよい。
【0025】
図3および図4に示すように、調速機本体30は、筐体31と、調速機シーブ32と、安全装置33と、シーブ回転停止機構34と、を含んでいてもよい。
【0026】
筐体31は、機械室8の床に固定されていてもよい。筐体31は、調速機シーブ32を回転可能に支持している。
【0027】
図5に示すように、調速機シーブ32は、回転軸35を介して筐体31に回転可能に支持されている。調速機シーブ32に、上述した調速機ロープ21(図1参照)が巻き掛けられている。調速機シーブ32は、調速機ロープ21が挿入されるシーブ溝32aを含んでいる。図3および図6に示すように、調速機シーブ32に、一対の振子36が取り付けられている。振子36は、振子36の重心に対して偏芯した位置で調速機シーブ32に回動可能に支持されている。
【0028】
安全装置33は、乗りかご3が速度超過した場合に巻上機6の駆動を停止させるように構成されている。より具体的には、安全装置33は、乗りかご3の速度が、通常速度よりも大きい第1の速度に達した場合に作動して、巻上機6の駆動を停止する。例えば、図3および図4に示すように、安全装置33は、作動子37と、リミットスイッチ38と、を含んでいてもよい。作動子37は、調速機シーブ32の振子36に取り付けられており、調速機シーブ32と一体に回転する。
【0029】
作動子37は、調速機シーブ32の回転数が第1の回転数に達した場合に、遠心力によって外周側に移動する。このことにより、作動子37は、リミットスイッチ38と接触する。リミットスイッチ38は信号を発信して、巻上機6の駆動を停止させるとともに巻上機6のブレーキを作動させる。第1の回転数は、上述した第1の速度に対応しており、通常運転時の調速機シーブ32の回転数よりも大きい。
【0030】
シーブ回転停止機構34は、乗りかご3が速度超過した場合に調速機シーブ32の回転を停止するように構成されている。より具体的には、乗りかご3の速度が、第1の速度よりも大きい第2の速度に達した場合に作動して、調速機シーブ32の回転を停止する。例えば、図4に示すように、シーブ回転停止機構34は、爪39と、ラチェット40と、を含んでいてもよい。爪39は、調速機シーブ32の振子36に取り付けられており、調速機シーブ32と一体に回転する。
【0031】
爪39は、調速機シーブ32の回転数が第2の回転数に達した場合に、遠心力によって内周側に移動する。このことにより、爪39は、ラチェット40に係合する。ラチェット40には、摩擦力が作用している。この摩擦力の詳細については後述する。このため、爪39がラチェット40に係合することにより、調速機シーブ32の回転が拘束されて停止する。第2の回転数は、上述した第2の速度に対応しており、第1の回転数よりも大きい。
【0032】
ラチェット40に摩擦力を作用させている構造について図5を用いて説明する。
【0033】
図3および図5に示すように、筐体31は、背面壁31aと正面壁31bとを含んでおり、背面壁31aに、ハブ50が固定されている。ハブ50は、固定フランジの一例である。ハブ50は、背面壁31aに当接するハブフランジ51と、ハブフランジ51から延びる第1ベアリングホルダ52と、を含んでいる。第1ベアリングホルダ52は、円筒部の一例である。第1ベアリングホルダ52は、ハブ50から正面側に延びている。第1ベアリングホルダ52は第1ベアリング53を保持しており、第1ベアリング53を介して、上述した回転軸35の一端部を回転可能に支持している。回転軸35の他端部は、第2ベアリングホルダ54に保持された第2ベアリング55を介して第2ベアリングホルダ54に回転可能に支持されている。
【0034】
第2ベアリングホルダ54は、筐体31の正面壁31bに支持されている。第2ベアリングホルダ54は、正面壁31bに溶接されていてもよい。図3に示すように、正面壁31bは、ボルト31cを用いて背面壁31aに固定されている。より具体的には、筐体31は、調速機20の正面側に配置された複数の取付座31d(図6参照)を含んでおり、各取付座31dにボルト31cで取り付けられている。正面壁31bは、調速機シーブ32を正面から部分的に覆っている。
【0035】
図3および図5に示すように、回転軸35の端面には、端面凸部35aが設けられている。端面凸部35aは、回転軸35の正面側の端面に形成されている。端面凸部35aは、第2ベアリングホルダ54の開口部54aから露出されており、第2ベアリングホルダ54から突出している。端面凸部35aは、円柱状に形成されていてもよい。端面凸部35aの一部に平坦状の切欠が形成されていてもよい。
【0036】
図5に示すように、上述したラチェット40は、調速機シーブ32とハブ50のハブフランジ51との間に配置されている。ラチェット40は開口部40aを含んでおり、開口部40aに、第1ベアリングホルダ52が貫通している。ラチェット40は、第1ベアリングホルダ52に対して回転可能になっている。開口部40aは、第1ベアリングホルダ52に嵌合していてもよい。
【0037】
ラチェット40は、皿ばね59に押し付けられている。より具体的には、ラチェット40と上述したハブフランジ51との間に、皿ばね59が介在されている。ラチェット40と皿ばね59との間に、第1シム60が介在されている。ラチェット40と第1シム60との間には、上述した摩擦リング61が介在されている。皿ばね59、第1シム60および摩擦リング61は、第1ベアリングホルダ52が貫通する開口部(図示せず)を含んでおり、各々がリング状に形成されている。摩擦リング61は、ラチェット40に作用する摩擦力を高めることができる材料であれば、任意の材料で作製されていてもよい。摩擦リング61は、樹脂材料で構成されていてもよい。
【0038】
ラチェット40に対してハブフランジ51とは反対側に、リングナット62が配置されている。リングナット62は、第1ベアリングホルダ52が貫通する開口部62a(図7参照)を含んでいる。リングナット62は、第1ベアリングホルダ52に螺合している。より具体的には、リングナット62の内周面に雌ネジが形成され、第1ベアリングホルダ52の外周面に雄ネジが形成されて、雌ネジと雄ネジが噛み合っている。リングナット62を回動させることにより、ラチェット40をハブフランジ51に押し付ける力を強めたり弱めたりすることができる。リングナット62とラチェット40との間に第2シム63が介在されている。ラチェット40と第2シム63との間には、摩擦リング61が介在されている。このことにより、ラチェット40は、2つの摩擦リング61に挟まれている。摩擦リング61および第2シム63は、第1ベアリングホルダ52が貫通する開口部(図示せず)を含んでおり、各々がリング状に形成されている。
【0039】
次に、本実施の形態によるエレベータ調速機の摩擦力調整機構70について説明する。摩擦力調整機構70は、ラチェット40に作用する摩擦力を調整するための機構である。
【0040】
図6および図7に示すように、摩擦力調整機構70は、リングナット62に設けられた複数の凹部71と、ハンドル72と、を備えている。凹部71は係合部の一例である。ハンドル72は調整治具の一例である。
【0041】
図7に示すように、凹部71は、上述したリングナット62の外周縁に設けられている。凹部71は、外周側に開口するように形成されている。複数の凹部71は、周方向に等間隔に形成されていてもよい。隣り合う2つの凹部71の間に、凸部73が形成されている。リングナット62は、歯のサイズが比較的大きい歯車のような形状を有している。
【0042】
図6図8に示すように、ハンドル72は、治具本体74と、係合棒75と、取っ手76と、を含んでいる。
【0043】
治具本体74は、円板状に形成されている。ハンドル72の係合棒75をリングナット62の凹部71に係合させた場合に、治具本体74は、調速機シーブ32に対してリングナット62とは反対側に配置されている。
【0044】
係合棒75は、治具本体74に設けられている。治具本体74の一方の面から延びている。図7に示すように、係合棒75は、治具本体74の調速機シーブ32に対向する面から延びている。
【0045】
図7および図8に示すように、係合棒75は、先端に設けられた係止片75aを含んでいてもよい。係止片75a が、凹部71に挿入されて凸部73に当接することにより、係合棒75が凹部71に係合可能になっていてもよい。しかしながら、係合棒75は、係止片75a を含んでいなくてもよい。この場合、係合棒75の先端の少なくとも一部が凹部71に挿入されて係合棒75が凹部71に係合可能であれば、係合棒75の構成は任意である。
【0046】
図8に示すように、治具本体74から2つの係合棒75が延びていてもよい。2つの係合棒75は、治具本体74の中心に対して、点対称の位置に配置されていてもよい。この場合、2つの係合棒75は、治具本体74の中心に対して180°離れた位置に配置されていてもよい。
【0047】
図6図8に示すように、取っ手76は、治具本体74の係合棒75とは反対側の面に設けられており、当該面から延びている。図6に示すように、取っ手76は、治具本体74の調速機シーブ32とは反対側の面に設けられている。
【0048】
図6および図8に示すように、治具本体74に、嵌合孔77が設けられていてもよい。嵌合孔77に、上述した回転軸35の端面凸部35aが嵌合可能になっている。嵌合孔77は、治具本体74の中心に配置されている。嵌合孔77は、円形状に形成されており、端面凸部35aに対して回動可能になっている。
【0049】
図3に示すように、上述した筐体31の正面壁31bに、筐体貫通孔78が設けられている。筐体貫通孔78は、回転軸35の軸方向(図9の紙面に垂直な方向)で見たときに、リングナット62の凹部71と重なる位置に配置されている。筐体貫通孔78は、ハンドル72の係合棒75が挿入可能になっている。
【0050】
筐体貫通孔78は、調速機シーブ32の周方向に延びるように円弧状に形成されていてもよい。正面壁31bには、4つの筐体貫通孔78が設けられていてもよい。4つの筐体貫通孔78は、調速機シーブ32の周方向に等間隔に配置されていてもよい。
【0051】
図9に示すように、上述した調速機シーブ32に、シーブ貫通孔79が設けられている。シーブ貫通孔79は、回転軸35の軸方向(図9の紙面に垂直な方向)で見たときに、リングナット62の凹部71と重なる位置に配置されている。各シーブ貫通孔79は、回転軸35の中心に対して、各筐体貫通孔78および凹部71と同じ半径方向位置に配置されている。シーブ貫通孔79は、ハンドル72の係合棒75が挿入可能になっている。
【0052】
シーブ貫通孔79は、調速機シーブ32の周方向に延びるように円弧状に形成されていてもよい。調速機シーブ32には、2つのシーブ貫通孔79が設けられていてもよい。2つのシーブ貫通孔79は、調速機シーブ32の中心に対して点対称の位置に配置されていてもよい。
【0053】
次に、本実施の形態によるエレベータ調速機の摩擦力調整方法について説明する。
【0054】
まず、ロープ張力除去工程として、調速機ロープ21の張力を除去する。このことにより、調速機ロープ21を調速機シーブ32から浮かすことができ、摩擦力調整の作業性向上を図ることができる。例えば、図示しない調速機スタンドに調速機ロープ21を引っ掛けることで、調速機ロープ21の張力を除去してもよい。
【0055】
次に、ハンドル取付工程として、図6に示すように、ハンドル72の係合棒75を、リングナット62の凹部71に係合させる。この場合、2つの係合棒75を、筐体31の正面壁31bの対応する筐体貫通孔78および調速機シーブ32の対応するシーブ貫通孔79を通って凹部71に挿入させる。そして、2つの係合棒75を、対応する凹部71に係合させる。また、ハンドル72の治具本体74に設けられた嵌合孔77に、回転軸35の端面凸部35aを嵌合させる。
【0056】
次に、調整工程として、ハンドル72を操作する。より具体的には、ハンドル72を回動させる。このことにより、リングナット62を回動させて、ラチェット40に作用する摩擦力を調整することができる。ハンドル72を回動させる際、ハンドル72の係合棒75は、筐体貫通孔78およびシーブ貫通孔79の形状に沿って周方向に移動する。そして、係合棒75を凹部71から一旦抜き出し、筐体貫通孔78およびシーブ貫通孔79に重なっている他の凹部71であってハンドル72の回動方向とは反対方向に位置する他の凹部71に係合棒75を係合させてハンドル72を回動させる。そして、ハンドル72を更に回動させて係合棒75が筐体貫通孔78およびシーブ貫通孔79の形状に沿って周方向に移動する。このような操作を繰り返すことにより、リングナット62を回動させて、摩擦力を調整することができる。
【0057】
調整工程の詳細を、上述した雄ネジおよび雌ネジが右ネジである場合を例にとって説明する。ハンドル72を時計回りに回動させることにより、ラチェット40をハブフランジ51に押し付ける力を強めることができる。このことにより、上述した皿ばね59の反発力が強まり、ラチェット40に作用する摩擦力を増大することができる。一方、ハンドル72を反時計回りに回動させることにより、ラチェット40をハブフランジ51に押し付ける力を弱めることができる。このことにより、上述した皿ばね59の反発力が弱まり、ラチェット40に作用する摩擦力を低減することができる。
【0058】
摩擦力の調整は、調速機シーブ32の回転を停止させるとともに、高摩擦材23の被覆が剥がれることを防止できるように行われる。例えば、ラチェット40がハブ50に回転不能に支持されているとすると、ラチェット40が調速機シーブ32の回転を停止させる際、調速機シーブ32の回転が急激に停止する。この場合、調速機ロープ21の高摩擦材23の被覆に大きな力が生じ、高摩擦材23の被覆が剥がれる可能性が生じる。このため、上述のようにラチェット40に作用する摩擦力を調整することにより、ラチェット40をある程度回転させることができ、高摩擦材23の被覆に大きな力が生じることを防止できる。
【0059】
調整工程の後、ハンドル取外工程として、ハンドル72が取り外される。より具体的には、係合棒75を凹部71、筐体貫通孔78およびシーブ貫通孔79から抜き出すことにより、ハンドル72を取り外すことができる。
【0060】
ハンドル取外工程の後、ロープ張力付与工程として、調速機ロープ21を上述した調速機スタンドから取り外して、調速機ロープ21に張力を付与する。このことにより、調速機20を復旧させることができる。
【0061】
このように本実施の形態によれば、ハブ50の第1ベアリングホルダ52に螺合したリングナット62の外周縁に設けられた凹部71に、ハンドル72の係合棒75が係合している。係合棒75は、軸方向で見たときに凹部71と重なる筐体貫通孔78およびシーブ貫通孔79を通って凹部71に係合している。このことにより、ラチェット40の摩擦力を調整する際に、調速機シーブ32などの部品の分解作業を減らすことができる。また、リングナット62の凹部71に係合させた状態でハンドル72を回動させることにより、リングナット62を回動させることができる。このことにより、リングナット62をハブ50に押し付ける力を調整することができ、ラチェット40に作用する摩擦力を調整することができる。このため、摩擦力の調整作業を簡易化させることができ、調整作業時間を短縮することができる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、ハンドル72の係合棒75は、治具本体74の調速機シーブ32に対向する面から延びている。このことにより、係合棒75は、筐体31の正面壁31bに設けられた筐体貫通孔78および調速機シーブ32に設けられたシーブ貫通孔79を通ってリングナット62の凹部71に係合させることができる。このため、ハンドル72を回動させることにより、リングナット62を回動させて摩擦力を調整することができ、摩擦力の調整作業を簡易化させることができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、ハンドル72の治具本体74の調速機シーブ32とは反対側の面に、取っ手76が設けられている。このことにより、取っ手76を把持してハンドル72を容易に回動させることができる。このため、摩擦力の調整作業を簡易化させることができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、治具本体74の嵌合孔77に、調速機シーブ32の回転軸35の端面に設けられた端面凸部35aが回動可能に嵌合する。このことにより、ハンドル72は、端面凸部35aを支点として回動させることができ、ハンドル72の操作を安定化させることができる。このため、摩擦力の調整作業を簡易化させることができ、調整作業時間を短縮することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、筐体31の正面壁31bに設けられた筐体貫通孔78および調速機シーブ32に設けられたシーブ貫通孔79は、調速機シーブ32の周方向に延びるように円弧状に形成されている。このことにより、リングナット62の凹部71に対する係合棒75の周方向の位置調整を容易に行うことができ、係合棒75を凹部71に容易に係合させることができる。このため、摩擦力の調整作業を簡易化させることができる。
【0066】
(第2の実施の形態)
次に、図10図13を用いて、第2の実施の形態によるエレベータ調速機の摩擦力調整機構およびエレベータ調速機の摩擦力調整方法について説明する。
【0067】
図10図13に示す第2の実施の形態においては、調整治具の治具本体が細長板状に形成され、治具本体の一方の端部に係合棒が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1図9に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図10図13において、図1図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
図10および図11に示すように、本実施の形態による摩擦力調整機構70は、リングナット62に設けられたナット歯車部80と、レバー81と、を備えている。ナット歯車部80は係合部の一例である。レバー81は調整治具の一例である。
【0069】
図11に示すように、ナット歯車部80は、上述したリングナット62の外周縁に設けられている。ナット歯車部80は、リング状に形成されている。
【0070】
図10図12に示すように、レバー81は、治具本体74と、係合棒75と、取っ手76と、を含んでいる。
【0071】
治具本体74は、細長板状に形成されている。ハンドル72の係合棒75をリングナット62のナット歯車部80に係合させた場合に、治具本体74は、調速機シーブ32に対してリングナット62とは反対側に配置されている。
【0072】
本実施の形態による係合棒75は、治具本体74の一方の端部に設けられている。係合棒75は、治具本体74の一方の面から延びている。図11に示すように、係合棒75は、治具本体74の調速機シーブ32に対向する面から延びている。
【0073】
図11および図12に示すように、係合棒75は、先端に設けられたレバー歯車部82を含んでいてもよい。レバー歯車部82が、ナット歯車部80に噛み合うことにより、係合棒75がナット歯車部80に係合可能になっていてもよい。
【0074】
図10図12に示すように、取っ手76は、治具本体74の他方の端部に設けられている。取っ手76は、治具本体74の係合棒75とは反対側の端部に配置されている。取っ手76は、治具本体74の係合棒75とは反対側の面に設けられており、当該面から延びている。
【0075】
図10に示すように、本実施の形態による筐体貫通孔78は、回転軸35の軸方向で見たときに、リングナット62のナット歯車部80と重なる位置に配置されている。筐体貫通孔78は、レバー81の係合棒75が挿入可能になっている。筐体貫通孔78は、調速機シーブ32の周方向に延びるように円弧状に形成されていてもよい。
【0076】
図13に示すように、本実施の形態によるシーブ貫通孔79は、回転軸35の軸方向で見たときに、リングナット62のナット歯車部80と重なる位置に配置されている。各シーブ貫通孔79は、回転軸35の中心に対して、各筐体貫通孔78およびナット歯車部80と同じ半径方向位置に配置されている。シーブ貫通孔79は、レバー81の係合棒75が挿入可能になっている。
【0077】
本実施の形態によるシーブ貫通孔79は、円形状に形成されていてもよい。本実施の形態においても、調速機シーブ32には、2つのシーブ貫通孔79が設けられていてもよい。2つのシーブ貫通孔79は、調速機シーブ32の中心に対して点対称の位置に配置されていてもよい。
【0078】
エレベータ調速機20のラチェット40の摩擦力を調整する際には、レバー81の係合棒75を、リングナット62のナット歯車部80に係合させる。この場合、係合棒75は、筐体31の正面壁31bのいずれか1つの筐体貫通孔78を通るとともに調速機シーブ32のいずれか1つのシーブ貫通孔79を通ってナット歯車部80に到達させる。そして、係合棒75のレバー歯車部82をナット歯車部80に噛み合わせる。その後、レバー81を操作する。より具体的には、レバー81を回転させることにより、リングナット62を回動させて、ラチェット40に作用する摩擦力を調整することができる。本実施の形態においては、調速機ロープ21は、調速機シーブ32に巻き掛けられた状態で摩擦力を調整してもよいが、調速機ロープ21の張力を除去した状態で摩擦力を調整してもよい。
【0079】
このように本実施の形態によれば、ハブ50の第1ベアリングホルダ52に螺合したリングナット62の外周縁に設けられたナット歯車部80に、レバー81の係合棒75が係合している。係合棒75は、軸方向で見たときにナット歯車部80と重なる筐体貫通孔78およびシーブ貫通孔79を通ってナット歯車部80に係合している。このことにより、ラチェット40の摩擦力を調整する際に、調速機シーブ32などの部品の分解作業を減らすことができる。また、リングナット62のナット歯車部80に係合させた状態でレバー81を回転させることにより、リングナット62を回動させることができる。このことにより、リングナット62をハブ50に押し付ける力を調整することができ、ラチェット40に作用する摩擦力を調整することができる。このため、摩擦力の調整作業を簡易化させることができ、調整作業時間を短縮することができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、レバー81の係合棒75は、治具本体74の調速機シーブ32に対向する面から延びている。このことにより、係合棒75は、筐体貫通孔78およびシーブ貫通孔79を通ってリングナット62のナット歯車部80に係合させることができる。このため、レバー81を回転させることにより、リングナット62を回動させて摩擦力を調整することができ、摩擦力の調整作業を簡易化させることができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、レバー81の治具本体74の調速機シーブ32とは反対側の面に、取っ手76が設けられている。このことにより、取っ手76を把持してレバー81を容易に回転させることができる。このため、摩擦力の調整作業を簡易化させることができる。
【0082】
以上述べた実施の形態によれば、摩擦力の調整作業を簡易化して、調整作業時間を短縮することができる。
【0083】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
20:調速機、21:調速機ロープ、31:筐体、32:調速機シーブ、35:回転軸、35a:端面凸部、40:ラチェット、50:ハブ、52:第1ベアリングホルダ、62:リングナット、70:摩擦力調整機構、71:凹部、72:ハンドル、74:治具本体、75:係合棒、76:取っ手、77:嵌合孔、78:筐体貫通孔、79:シーブ貫通孔、80:ナット歯車部、81:レバー、82:レバー歯車部
【要約】
【課題】摩擦力の調整作業を簡易化して、調整作業時間を短縮することができるエレベータ調速機の摩擦力調整機構を提供する。
【解決手段】
摩擦力調整機構は、固定フランジの円筒部に螺合したリングナットの外周縁に設けられた係合部と、調整治具と、を備えている。調整治具は、治具本体と、治具本体に設けられた係合棒であって、筐体貫通孔およびシーブ貫通孔を通って係合部に係合可能な係合棒と、を含んでいる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13