IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

特許7598437ロープ弛み形成装置、及び、ロープ弛み形成方法
<>
  • 特許-ロープ弛み形成装置、及び、ロープ弛み形成方法 図1
  • 特許-ロープ弛み形成装置、及び、ロープ弛み形成方法 図2
  • 特許-ロープ弛み形成装置、及び、ロープ弛み形成方法 図3
  • 特許-ロープ弛み形成装置、及び、ロープ弛み形成方法 図4
  • 特許-ロープ弛み形成装置、及び、ロープ弛み形成方法 図5
  • 特許-ロープ弛み形成装置、及び、ロープ弛み形成方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ロープ弛み形成装置、及び、ロープ弛み形成方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20241204BHJP
   B66B 7/10 20060101ALI20241204BHJP
   B66B 5/04 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B7/10
B66B5/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023204943
(22)【出願日】2023-12-04
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】安井 丈人
(72)【発明者】
【氏名】河合 竜希
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-197118(JP,A)
【文献】特開2008-222339(JP,A)
【文献】特開平07-157231(JP,A)
【文献】特表2007-536186(JP,A)
【文献】特開2018-197143(JP,A)
【文献】特開2017-222430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
B66B 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープ弛み形成補助装置と、
固定具と、
を備え、
前記ロープ弛み形成補助装置は、
ガバナシーブにかけ回されたガバナロープの前記ガバナシーブの一側及び他側を上下方向に延びる第1ロープ部分及び第2ロープ部分によって規定される仮想平面に対面して配置される基部と、
前記基部から前記仮想平面に向けて第1方向に突出し前記基部に対して移動不能な第1突出部及び第2突出部であって、上下方向に互いから離間して配置された第1突出部及び第2突出部と、
前記基部から前記仮想平面に向けて前記第1方向に突出する第3突出部であって、上下方向における前記第1突出部と前記第2突出部との間に配置され、上下方向と交差し且つ前記仮想平面に平行な第2方向に、前記基部に対して移動可能な第3突出部と、
前記基部に支持され、前記第3突出部を前記基部に対して前記第2方向に移動させる移動部材と、
を備え、
前記第3突出部は、第1位置と第2位置との間を前記第2方向に前記基部に対して移動可能であり、
前記第1位置は、前記第3突出部が前記第1突出部及び前記第2突出部から前記第2方向に離間する位置であり、
前記第2位置は、前記第3突出部が少なくとも部分的に前記第1突出部と前記第2突出部との間に配置される位置、又は、前記第1突出部及び前記第2突出部に対して前記第1位置とは反対側の位置であり、
前記固定具は、前記第1ロープ部分及び前記第2ロープ部分を前記基部に固定する、
ロープ弛み形成装置。
【請求項2】
各突出部は、前記基部に接続された本体部と、前記第1方向に延びる回転軸線の周りを前記本体部に対して回転可能なローラと、を有し、
前記第1突出部及び前記第2突出部の前記本体部は、前記基部に固定されており、
前記第3突出部の前記本体部は、前記基部に対して前記第2方向に移動可能である、請求項1に記載のロープ弛み形成装置。
【請求項3】
前記ローラの外周面には、前記ローラの周方向に沿って延びて前記ガバナロープを少なくとも部分的に収容するロープ溝が形成されている、請求項2に記載のロープ弛み形成装置。
【請求項4】
ガバナシーブに巻きかけられたガバナロープを、請求項に記載のロープ弛み形成装置を用いて弛ませる弛み形成方法であって、
前記第1ロープ部分が前記第1突出部及び前記第2突出部と前記第3突出部との間を上下方向に直線状に延びるように、前記第3突出部を前記第1位置に配置する工程と、
前記第3突出部を前記第1位置から前記第2位置に移動させて、前記第1ロープ部分を前記第1突出部及び前記第2突出部と前記第3突出部との間で湾曲させる工程と、
前記第2ロープ部分を、前記基部に固定する工程と、
前記第1ロープ部分を湾曲させる工程の後に、前記第1ロープ部分を、その湾曲した部分に対して前記ガバナシーブの側とは反対側で、前記基部に固定する工程と、
前記第1ロープ部分及び前記第2ロープ部分を前記基部に固定した後に前記第3突出部を前記第1位置に戻す工程と、
を備えた、ロープ弛み形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、ロープ弛み形成補助装置、ロープ弛み形成装置、及び、ロープ弛み形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、乗りかごの昇降時における調速を目的としてガバナ装置が設置されている。乗りかごが所定の速度を超えた過速状態となると、ガバナ装置は、エレベータを駆動するための電源を遮断するとともに、ガバナロープを把持して乗りかごの非常止め装置を作動させる。このように、ガバナ装置は安全上重要な機器である。エレベータの定期検査では、ガバナ装置の動作点検は重要な検査事項となっている。
【0003】
ガバナ装置の動作点検のためには、ガバナシーブを空転させられるようにする必要がある。ガバナロープは、乗りかごの移動といっしょに走行し、これによりガバナシーブが回転する。ガバナシーブを空転させるためには、ガバナロープを外さなければならない。ガバナロープには、テンショナシーブによって張力が付与されている。このため、例えば特開2020-006485号公報に開示されているように、特殊な器具を用いてガバナロープを引き上げ、ガバナシーブから外している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-006485号公報
【文献】特開2016-102015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガバナロープは、例えば次のようにして引き上げられる。ガバナロープにかかる張力が小さい場合、作業員がガバナロープに取り付けられたハンドバイスを手で掴み、ハンドバイスをガバナベース上に引き上げる。或いは、バンドバイスを、治具を用いてガバナベース上に引き上げる。ここで、ガバナベースは、ガバナシーブを含むガバナ装置を支持するものである。
【0006】
ハンドバイスを手で掴んでガバナロープを引き上げる場合、作業員がハンドバイスとガバナベースとの間に指を挟む虞がある。また、治具を用いてハンドバイスを引き上げる場合、作業員はガバナ装置の動作点検のために治具を持ち運ぶ必要があるが、このことは動作点検作業を煩雑にしている。
【0007】
特開2016-102015号公報には、テンショナシーブを移動させてガバナロープを弛ませることが可能なガバナシステムが開示されている。しかしながら、このようなガバナシステムは、構成が複雑である。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、単純な構成でガバナロープを弛ませることが可能な装置及びガバナロープを弛ませる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態によるロープ弛み形成補助装置は、
ガバナシーブにかけ回されたガバナロープの前記ガバナシーブの一側及び他側を上下方向に延びる第1ロープ部分及び第2ロープ部分によって規定される仮想平面に対面して配置される基部と、
前記基部から前記仮想平面に向けて第1方向に突出し前記基部に対して移動不能な第1突出部及び第2突出部であって、上下方向に互いから離間して配置された第1突出部及び第2突出部と、
前記基部から前記仮想平面に向けて前記第1方向に突出する第3突出部であって、上下方向における前記第1突出部と前記第2突出部との間に配置され、上下方向と交差し且つ前記仮想平面に平行な第2方向に、前記基部に対して移動可能な第3突出部と、
を備え、
前記第3突出部は、第1位置と第2位置との間を前記第2方向に前記基部に対して移動可能であり、
前記第1位置は、前記第3突出部が前記第1突出部及び前記第2突出部から前記第2方向に離間する位置であり、
前記第2位置は、前記第3突出部が少なくとも部分的に前記第1突出部と前記第2突出部との間に配置される位置、又は、前記第1突出部及び前記第2突出部に対して前記第1位置とは反対側の位置である。
【0010】
また、本実施の形態によるロープ弛み形成装置は、
上記ロープ弛み形成補助装置と、
前記第1ロープ部分及び前記第2ロープ部分を前記基部に固定する固定具と、
を備える。
【0011】
また、本実施の形態によるロープ弛み形成方法は、ガバナシーブに巻きかけられたガバナロープを、上記ロープ弛み形成装置を用いて弛ませる方法であって、
前記第1ロープ部分が前記第1突出部及び前記第2突出部と前記第3突出部との間を上下方向に直線状に延びるように、前記第3突出部を前記第1位置に配置する工程と、
前記第3突出部を前記第1位置から前記第2位置に移動させて、前記第1ロープ部分を前記第1突出部及び前記第2突出部と前記第3突出部との間で湾曲させる工程と、
前記第2ロープ部分を、前記基部に固定する工程と、
前記第1ロープ部分を湾曲させる工程の後に、前記第1ロープ部分を、その湾曲した部分に対して前記ガバナシーブの側とは反対側で、前記基部に固定する工程と、
前記第1ロープ部分及び前記第2ロープ部分を前記基部に固定した後に前記第3突出部を前記第1位置に戻す工程と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態によるロープ弛み形成装置の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、ロープ弛み形成補助装置の斜視図である。
図3図3は、図1に示すロープ弛み形成装置を用いたロープ弛み形成方法を説明するための図である。
図4図4は、図1に示すロープ弛み形成装置を用いたロープ弛み形成方法を説明するための図である。
図5図5は、図1に示すロープ弛み形成装置を用いたロープ弛み形成方法を説明するための図である。
図6図6は、図3に対応する図であって、変形例によるロープ弛み形成装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する符号を付した矢印により共通する方向を示している。いくつかの図面において、図面の紙面に垂直な矢印を、例えば図1に示すように、円の中に点を設けた記号により示した。
【0014】
ガバナ装置1は、エレベータの乗りかごが走行する昇降路内に設けられている。図1に示すように、ガバナ装置1は、ガバナシーブ2と、ガバナシーブ2を支持するフレーム2aと、ガバナシーブ2の下方に設けられたテンショナシーブ(不図示)と、ガバナシーブ2及びテンショナシーブに巻きかけられたガバナロープ3と、を含む。ガバナロープ3には、テンショナシーブによって上下方向に張力が付与されている。
【0015】
ガバナロープ3は、ガバナシーブ2とテンショナシーブとの間を上下方向に延びる第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5を含む。第1ロープ部分4は、ガバナシーブ2及びテンショナシーブの一側を延びる。第2ロープ部分5は、ガバナシーブ2及びテンショナシーブの他側を延びる。ガバナ装置1の作動状態において、第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5は、テンショナシーブによって付与される張力によって直線状に延びる。言い換えると、ガバナ装置1の作動状態において、第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5は、上下方向に直線状に延びる。
【0016】
図1及び図2に、ガバナロープ3の第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5によって規定される仮想平面Pを、一点鎖線で示す。第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5は、仮想平面P内を延びる。
【0017】
ところで、ガバナ装置の動作点検のために、ガバナシーブからガバナロープを取り外す必要がある。ガバナロープをガバナシーブから取り外すためには、ガバナシーブの周りでガバナロープを弛ませる必要がある。この点を考慮して、本実施の形態のガバナ装置1は、ガバナロープ3を弛ませるためのロープ弛み形成装置10を備える。図2に示すように、ロープ弛み形成装置10は、ロープ弛み形成補助装置20(以下、単に「補助装置20」とも呼ぶ)と、固定具41,42とを備える。補助装置20は、基部21と、第1~第3突出部31~33と、を備える。
【0018】
基部21は、仮想平面Pに対面している。図示された例では、基部21は、昇降路内における乗りかごの昇降を案内するガイドレールRに固定されている。基部21は、第1~第3突出部31~33を支持する中央部22と、中央部22の上縁に接続する上端部23と、中央部22の下縁に接続する下端部24と、を含む。中央部22は平板状であり、仮想平面Pに概ね平行である。したがって、中央部22は、上下方向に平行であり、且つ、第1及び第2ロープ部分4,5が並ぶ方向D2(以下、「第2方向D2」とも呼ぶ)に平行である。上端部23は、中央部22の上縁から仮想平面Pに向けて、中央部22に垂直な方向D1(以下、「第1方向D1」とも呼ぶ)に延び出している。下端部24は、中央部22の下縁から仮想平面Pに向けて、第1方向D1に延び出している。図2に示すように、上端部23及び下端部24には、第1及び第2ロープ部分4,5が通過する切欠25が形成されている。図示された例では、上端部23の上面にフレーム2aが設置されており、フレーム2aがガバナシーブ2を回転可能に保持している。言い換えると、基部21は、フレーム2aを介してガバナシーブ2を支持している。
【0019】
第1~第3突出部31~33は、それぞれ、中央部22から仮想平面Pに向けて突出している。第1~第3突出部31~33は、中央部22から第1方向D1に突出している。第1方向D1は、仮想平面Pと概ね垂直な方向である。第1及び第2突出部31,32は、中央部22に対して移動不能である。第1及び第2突出部31,32は、上下方向に互いから離間している。第3突出部33は、上下方向における第1及び第2突出部31,32の間に配置されている。第3突出部33は、中央部22に対して第2方向D2に移動可能である。第2方向D2は、上下方向と交差し且つ仮想平面Pに平行な方向である。
【0020】
図示された例では、中央部22には、第2方向D2に延びるガイド部材37が設けられており、第3突出部33はガイド部材37に沿って移動可能である。また、第3突出部33は、移動部材38によって第2方向に移動される。図示された例では、移動部材38は、第2方向D2に延びるジャッキボルトである。ジャッキボルト38は、中央部22に対して固定されたナット39と螺合している。ジャッキボルトを回転させることで、ジャッキボルトは中央部22に対して第2方向D2に移動する。ジャッキボルト38の先端に第3突出部33が接続されており、第3突出部33は、ジャッキボルト38と共に第2方向D2に移動する。
【0021】
第3突出部33は、第1位置(図1参照)と第2位置(図3参照)との間を第2方向D2に移動可能である。図1に示すように、第3突出部33が第1位置にあるとき、第3突出部33は、第1突出部31及び第2突出部32から第2方向D2に離間する。図3に示すように、第3突出部33が第2位置にあるとき、第3突出部33は、少なくとも部分的に第1突出部31と第2突出部32との間に配置される。ガバナ装置1の作動時は、第3突出部33は第1位置に配置され、第3突出部33と第1及び第2突出部31,32との間を第1ロープ部分4が上下方向に直線状に延びる。ガバナ装置1の動作点検時に、第3突出部33は、第1位置から第2位置に移動される。これにより、図3に示すように、第1ロープ部分4は、第3突出部33によって第2方向D2に押され、第1突出部31と第2突出部32との間で湾曲する。このため、第3突出部33が第2位置に配置されている場合、第1ロープ部分4の軌道が長くなる。
【0022】
図2に示すように、各突出部31~33は、それぞれ、基部21の中央部22に接続された本体部34と、本体部34に支持されたローラ35とを有する。ローラ35は、本体部34に対して回転可能である。本体部34は、基部21の中央部22から仮想平面Pに向けて第1方向D1に突出している。ローラ35は、本体部34の先端に取り付けられている。ローラ35は、第1方向D1に沿った回転軸線の周りを回転可能である。第1及び第2突出部31,32の本体部34は、中央部22に固定されている。第3突出部33の本体部34は、中央部22に対して第2方向D2に移動可能である。図示された例では、第3突出部33の本体部34は、第2方向D2に移動可能にガイド部材37に保持されている。また、第3突出部33の本体部34は、移動部材38に接続されている。
【0023】
各ローラ35は、その外周面において第1ロープ部分4に接触する。突出部31~33の第1ロープ部分4と接触する部分が回転することにより、突出部31~33と第1ロープ部分4との間に働く摩擦力が低減し、突出部31~33及び/又はガバナロープ3が摩擦によって損傷する虞が抑制される。
【0024】
また、各ローラ35の外周面には、ロープ溝36が形成されている。ロープ溝36は、ローラ35の周方向に沿って延び、第1ロープ部分4を少なくとも部分的に収容する。これにより、第3突出部33を第1位置から第2位置に移動させる際に、第1ロープ部分4が第1~第3突出部31~33から外れる虞が抑制される。
【0025】
各突出部31~33は、さらに、ローラ35の回転を止めるストッパSを有していてよい。図示された例では、ストッパSは第1方向D1に延びるボルトである。ボルトSは、本体部34に形成されたネジ孔と螺合している。ローラ35は、ボルトSの頭部と本体部34との間に配置されて、ボルトSの周りを回転可能である。ボルトSを回してボルトSの頭部と本体部34とでローラ35を挟むことにより、本体部34に対するローラ35の回転を防止することができる。
【0026】
固定具41,42は、ガバナロープ3を基部21に対して固定可能である。図示された例では、固定具41,42は基部21の下端部24に取り付けられ、第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5を下端部24に固定する。固定具41,42は、第1ロープ部分4を、上下方向において突出部31~33よりもガバナシーブ2から離れた位置で、基部21に固定する。
【0027】
第3突出部33を第1位置から第2位置に移動させて、第1ロープ部分4を第1突出部31と第2突出部32との間で湾曲させた状態で、固定具41,42で第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5を基部21に固定することにより、第3突出部33を第2位置から第1位置に戻しても、第1ロープ部分4が第1突出部31と第2突出部32との間で湾曲した状態を維持することができる。すなわち、第3突出部33を第1位置に戻した後も、第1ロープ部分4にはテンショナシーブによる張力が付与されず、第1ロープ部分4は第1突出部31と第2突出部32との間で弛んだ状態になる。これにより、ガバナロープ3をガバナシーブ2から取り外すことができる。
【0028】
次に、ガバナシーブ2に巻きかけられたガバナロープ3を、上述したロープ弛み形成装置10を用いてガバナシーブ2から取り外す方法について説明する。
【0029】
まず、図1に示すように、ガバナ装置1の作動時において、第3突出部33は第1位置に配置されている。このとき、ガバナロープ3は固定具41,42によって基部21に固定されていない。したがって、ガバナロープ3の第1及び第2ロープ部分4,5には、その全長に亘って、テンショナシーブから張力が付与されている。これにより、第1及び第2ロープ部分4,5は、上下方向に直線状に延びている。特に、第1ロープ部分3は、第3突出部33と、第1及び第2突出部31,32との間を、上下方向に直線状に延びている。
【0030】
次に、ガバナ装置1の動作点検時にガバナロープ3をガバナシーブ2から取り外すために、ガバナシーブ2の周囲でガバナロープ3を弛ませる。具体的には、図3に示すように、固定具42で第2ロープ部分5を基部21に固定する。その後、移動部材38を操作して、第3突出部33を第1位置から第2位置に移動させる。これにより、第1ロープ部分4が第3突出部33によって押されて、第1及び第2突出部31,32の間で湾曲する。
【0031】
次に、図4に示すように、固定具41を用いて第1ロープ部分4を基部21に固定する。より具体的には、第1ロープ部分4を、その湾曲した部分に対してガバナシーブ2とは反対側で、基部21に固定する。図示された例では、第1ロープ部分4を、突出部31~33の下方で基部21に固定する。第1及び第2ロープ部分4,5が固定具41,42によって固定されていることで、第1ロープ部分4の湾曲した部分には、テンショナシーブによる張力が付与されない。
【0032】
次に、図5に示すように、固定具41,42で第1及び第2ロープ部分4,5を基部21に固定したまま、移動部材38を操作して第3突出部33を第2位置から第1位置に移動させる。上述したように、第1ロープ部分4の湾曲した部分にはテンショナシーブによる張力が付与されないので、第1ロープ部分4は第1突出部31と第2突出部32との間で弛んだ状態になる。
【0033】
次に、ガバナロープ3のガバナシーブ2に巻きかけられた部分を引き上げて、ガバナロープ3をガバナシーブ2から取り外す。以上により、ガバナロープ3がガバナシーブ2から取り外される。
【0034】
なお、固定具42による第2ロープ部分5の基部21への固定は、第3突出部33を第1位置から第2位置に移動させた後に行われてもよい。
【0035】
また、上述した例では、第3突出部33の第2位置は、第3突出部33が少なくとも部分的に第1突出部31と第2突出部32との間に配置される位置であるが、これに限られない。図6に示すように、第2位置は、第1突出部31及び第2突出部32に対して第1位置とは反対側の位置であってもよい。
【0036】
以上に説明した一実施の形態及びその変形例のロープ弛み形成補助装置20は、基部21と第1~第3突出部31~33とを有する。基部21は、ガバナシーブ2にかけ回されたガバナロープ3の第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5によって規定される仮想平面Pに対面して配置される。第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5は、それぞれ、ガバナシーブ2の一側及び他側を上下方向に延びる。第1及び第2突出部31,32は、基部21から仮想平面Pに向けて第1方向D1に突出している。第1及び第2突出部31,32は、基部21に対して移動不能である。第1及び第2突出部31,32は、上下方向に互いから離間して配置されている。第3突出部33は、基部21から仮想平面Pに向けて第1方向D1に突出する。第3突出部33は、上下方向における第1突出部31と第2突出部32との間に配置されている。第3突出部33は、第2方向D2に基部21に対して移動可能である。第2方向D2は、上下方向と交差する方向であって、仮想平面Pに平行な方向である。第3突出部33は、第1位置と第2位置との間を第2方向D2に基部21に対して移動可能である。第1位置は、第3突出部33が第1突出部31及び第2突出部32から第2方向D2に離間する位置である。第2位置は、第3突出部33が少なくとも部分的に第1突出部31と第2突出部32との間に配置される位置、又は、第1突出部31及び第2突出部32に対して第1位置とは反対側の位置である。このような補助装置20を用いてガバナロープ3を湾曲させた後、ガバナロープ3を湾曲した状態で基部22に固定することで、ガバナロープ3をガバナシーブ2の周りで容易に弛ませることができる。また、作業員が怪我をする虞が少なく、治具を持ち運ぶ必要も無い。
【0037】
以上に説明した一実施の形態及びその変形例において、各突出部31~33は、基部21に接続された本体部34と、第1方向D1に延びる回転軸線の周りを本体部34に対して回転可能なローラ35と、を有する。第1突出部31及び第2突出部32の本体部34は、基部21に固定されている。第3突出部33の本体部34は、基部21に対して第2方向D2に移動可能である。この場合、第3突出部33を第1位置から第2位置に移動させる際、ガバナロープ3をローラ35に接触させることで、ガバナロープ3と第1~第3突出部31~33のローラ35との間に働く摩擦力を低減させることができる。この結果、ガバナロープ3及びローラ35が損傷する虞を低減させることができる。
【0038】
以上に説明した一実施の形態及びその変形例において、ローラ35の外周面には、ローラ35の周方向に沿って延びてガバナロープ3を少なくとも部分的に収容するロープ溝36が形成されている。この場合、第3突出部33を第1位置から第2位置に移動させる際に、ガバナロープ3が第1~第3突出部31~33のローラ35から外れる虞を低減させることができる。
【0039】
以上に説明した一実施の形態及びその変形例において、ロープ弛み形成補助装置20は、基部21に支持され、第3突出部33を基部21に対して第2方向に移動させる移動部材38を更に備える。この場合、第3突出部33を第1位置と第2位置との間で容易に移動させることができる。
【0040】
以上に説明した一実施の形態及びその変形例のロープ弛み形成装置10は、上述したロープ弛み形成補助装置20と、第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5を基部21に固定する固定具41,42を備える。このようなロープ弛み形成装置10によれば、ガバナロープ3をガバナシーブ2の周りで容易に弛ませることができる。また、作業員が怪我をする虞が少なく、治具を持ち運ぶ必要も無い。
【0041】
以上に説明した一実施の形態及びその変形例のロープ弛み形成方法は、ガバナシーブ2に巻きかけられたガバナロープ3を、ロープ弛み形成装置10を用いて弛ませる方法であって、第1ロープ部分4が第1突出部31及び第2突出部32と第3突出部33との間を上下方向に直線状に延びるように、第3突出部33を第1位置に配置する工程を備える。また、上記ロープ弛み形成方法は、第3突出部33を第1位置から第2位置に移動させて、第1ロープ部分4を第1突出部31及び第2突出部32と第3突出部33との間で湾曲させる工程を備える。また、上記ロープ弛み形成方法は、第2ロープ部分5を基部21に固定する工程を備える。また、上記ロープ弛み形成方法は、第1ロープ部分4を湾曲させる工程の後に、第1ロープ部分4を、その湾曲した部分に対してガバナシーブ2の側とは反対側で、基部21に固定する工程を備える。また、上記ロープ弛み形成方法は、第1ロープ部分4及び第2ロープ部分5を基部21に固定した後に第3突出部33を第1位置に戻す工程を備える。このようなロープ弛み形成方法によれば、ガバナロープ3をガバナシーブ2の周りで容易に弛ませることができる。また、作業員が怪我をする虞が少なく、治具を持ち運ぶ必要も無い。
【0042】
本発明の実施形態といくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内でこれらの実施形態及び変形例を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:ガバナ装置、2:ガバナシーブ、3:ガバナロープ、4:第1ロープ部分、5:第2ロープ部分、10:ロープ弛み形成装置、20:ロープ弛み形成補助装置、21:基部、31:第1突出部、32:第2突出部、33:第3突出部、34:本体部、35:ローラ、38:移動部材、41:固定具、42:固定具
【要約】      (修正有)
【課題】単純な構成でガバナロープを弛ませることが可能な装置及びガバナロープを弛ませる方法を提供する。
【解決手段】ロープ弛み形成補助装置20は、基部21と第1~第3突出部31~33とを有する。第1及び第2突出部31,32は、基部21に対して移動不能である。第3突出部33は、基部21から第1方向D1に突出する。第3突出部33は、上下方向における第1突出部31と第2突出部32との間に配置されている。第3突出部33は、第2方向D2に基部21に対して移動可能である。第3突出部33は、第1位置と第2位置との間を第2方向D2に基部21に対して移動可能である。第1位置は、第3突出部33が第1突出部31及び第2突出部32から第2方向D2に離間する位置である。第2位置は、第3突出部33が少なくとも部分的に第1突出部31と第2突出部32との間に配置される位置である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6