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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】表示デバイス、表示デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20241204BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241204BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20241204BHJP
   H10K 50/115 20230101ALI20241204BHJP
   H10K 50/818 20230101ALI20241204BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20241204BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20241204BHJP
   H10K 71/20 20230101ALI20241204BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20241204BHJP
【FI】
G09F9/30 309
G09F9/00 338
G09F9/30 308Z
G09F9/30 338
G09F9/30 349Z
H05B33/14 Z
H10K50/115
H10K50/818
H10K50/844
H10K59/122
H10K71/20
H10K77/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023509910
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013243
(87)【国際公開番号】W WO2022208596
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】張 柏
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212398(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111063260(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0013980(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106549021(CN,A)
【文献】特開2020-087935(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111508374(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0059814(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0051150(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0057550(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/30
G09F 9/00
H05B 33/14
H10K 50/115
H10K 50/818
H10K 50/844
H10K 59/122
H10K 71/20
H10K 77/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板と、
前記基板上の、側面の少なくとも一部に逆テーパー面を有する凸部と、
自己修復材を含む封止層とを備え、
前記凸部の側面と、前記凸部が形成された面とにより形成された凹部空間を有し、
前記封止層が、前記凸部の上面および側面と、前記凹部空間の下面とを覆い、
前記凹部空間の側面の少なくとも一部が前記逆テーパー面である表示デバイス。
【請求項2】
前記封止層は、前記基板の側から順に、前記凸部の上面および側面と前記凹部空間の下面とを覆う無機封止膜と、前記無機封止膜の上層の有機封止膜とを積層して含み、
前記有機封止膜が前記自己修復材を含む請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項3】
前記自己修復材が、互いに結合する複数の感光性結合基を有する感光性ポリマーを含み、
複数の前記感光性結合基のそれぞれの結合は、光の照射に伴うラジカル化により切断され、
切断された前記感光性結合基の切断端が互いに近接することにより、前記感光性結合基が互いに再結合する請求項1または2に記載の表示デバイス。
【請求項4】
前記凹部空間の下面上に形成された金属層をさらに備えた請求項2または3に記載の表示デバイス。
【請求項5】
前記逆テーパー面において可視光の少なくとも一部が反射または散乱される請求項1から4の何れか1項に記載の表示デバイス。
【請求項6】
前記凹部空間の側面を形成する前記逆テーパー面と、前記凹部空間の下面とのなす角度が、少なくとも1つの前記凹部空間において同一である請求項1から5の何れか1項に記載の表示デバイス。
【請求項7】
さらに、2つの電極と、当該2つの電極の間の機能層とをそれぞれ含む、複数の発光素子と、
前記複数の発光素子の間に形成され、前記発光素子のそれぞれを分離するバンクとを備えた請求項1から6の何れか1項に記載の表示デバイス。
【請求項8】
前記凸部の少なくとも一部を、前記バンクの上面に備えた請求項7に記載の表示デバイス。
【請求項9】
前記凸部の少なくとも一部は、前記バンクの一部である請求項7に記載の表示デバイス。
【請求項10】
少なくとも一つの前記凸部が有する前記側面のうち、前記逆テーパー面と異なる面の少なくとも一部が順テーパー面であり、
前記凸部よりも、該凸部の前記順テーパー面の側に、前記発光素子を備えた請求項9に記載の表示デバイス。
【請求項11】
可撓性を有する基板上に、側面の少なくとも一部が逆テーパー面である凸部を形成することにより、前記凸部の側面と、前記凸部が形成された面とにより形成され、側面の少なくとも一部が前記逆テーパー面である凹部空間を形成する凸部形成工程と、
前記凸部の上面および側面と、前記凹部空間の下面とを覆い、自己修復材を含む封止層を形成する封止層形成工程とを含む表示デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記封止層形成工程は、
前記凸部の上面および側面と前記凹部空間の下面とを覆う無機封止膜を成膜する無機封止膜成膜工程と、
前記無機封止膜の上層に、前記自己修復材を含む有機封止膜を成膜する有機封止膜成膜工程とを備えた請求項11に記載に表示デバイスの製造方法。
【請求項13】
2つの電極と、当該2つの電極の間の発光層とをそれぞれ含む、複数の発光素子を形成する発光素子形成工程と、
前記複数の発光素子の間に形成され、前記発光素子のそれぞれを分離するバンクを形成するバンク形成工程とをさらに含む請求項11または12に記載の表示デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記バンク形成工程の後に、前記凸部形成工程を実行し、
前記凸部形成工程において、前記凸部を前記バンク上に形成する請求項13に記載の表示デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層型の発光素子を備えた表示デバイス、および、当該表示デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、表示装置が備えたフレキシブル基板の一部を折り曲げる技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2017-187705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する表示装置のように、折り曲げ可能な表示デバイスにおいては、当該表示デバイスの折り曲げによって、フレキシブル基板上の部材に、クラック等の不良が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る表示デバイスは、可撓性を有する基板と、前記基板上の、側面の少なくとも一部に逆テーパー面を有する凸部と、自己修復材を含む封止層とを備え、前記凸部の側面と、前記凸部が形成された面とにより形成された凹部空間を有し、前記封止層が、前記凸部の上面および側面と、前記凹部空間の下面とを覆い、前記凹部空間の側面の少なくとも一部が前記逆テーパー面である。
【0006】
また、上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る表示デバイスの製造方法は、可撓性を有する基板上に、側面の少なくとも一部が逆テーパー面である凸部を形成することにより、前記凸部の側面と、前記凸部が形成された面とにより形成され、側面の少なくとも一部が前記逆テーパー面である凹部空間を形成する凸部形成工程と、前記凸部の上面および側面と、前記凹部空間の下面とを覆い、自己修復材を含む封止層を形成する。
【発明の効果】
【0007】
フレキシブル基板上の部材にクラック等の不良を生じにくくした上、当該不良が生じた場合であっても、当該不良を修復する機能を、表示デバイスに付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る表示デバイスの概略断面図である。
図2】実施形態1に係る表示デバイスの概略平面図である。
図3】実施形態1に係る表示デバイスの平面拡大図である。
図4】実施形態1に係る表示デバイスの断面の一部拡大図である。
図5】実施形態1に係る自己修復材による、有機封止層の修復機構について示す工程断面図である。
図6】実施形態1に係る表示デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図7】実施形態1に係る表示デバイスの製造工程における工程断面図である。
図8】実施形態1に係る表示デバイスの製造工程における他の工程断面図である。
図9】実施形態1に係る表示デバイスの製造工程における他の工程断面図である。
図10】実施形態2に係る表示デバイスの概略断面図である。
図11】実施形態2に係る表示デバイスの断面の一部拡大図である。
図12】実施形態2に係る表示デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図13】実施形態2に係る表示デバイスの製造工程における工程断面図である。
図14】実施形態2に係る表示デバイスの製造工程における他の工程断面図である。
図15】実施形態3に係る表示デバイスの概略断面図である。
図16】実施形態3に係る表示デバイスの断面の一部拡大図である。
図17】実施形態3に係る表示デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図18】実施形態3に係る表示デバイスの製造工程における工程断面図である。
図19】実施形態4に係る表示デバイスの概略断面図である。
図20】実施形態4に係る表示デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図21】実施形態4に係る表示デバイスの製造工程における工程断面図である。
図22】実施形態4に係る表示デバイスの製造工程における他の工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
<表示デバイスの概要>
図2は、本実施形態に係る表示デバイス2の概略平面図である。図2に示すように、本実施形態に係る表示デバイス2は、後述する各サブ画素からの発光が取り出すことにより表示を行う表示領域DAと、当該表示領域DAの周囲を囲う額縁領域NAとを備える。額縁領域NAにおいては、表示デバイス2の各発光素子を駆動するための信号が入力される端子Tが形成されている。
【0010】
図3は、図2に示す概略平面図の、表示領域DAの一部領域である、領域Aについて拡大して示す図である。図1は、本実施形態に係る表示デバイス2の概略断面図であり、特に、図3における、B-C線矢視断面図である。なお、図3においては、後に詳述する画素およびサブ画素についてより明確に図示するために、後に詳述する封止層8および陰極14の図示を省略している。また、図3においては、後に詳述する凸部22と金属層26との関係をより明確に図示するために、凸部22の上面22Tに形成された金属層26の図示を省略している。
【0011】
平面視において表示領域DAと重畳する位置において、本実施形態に係る表示デバイス2は複数の画素を備える。また、各画素は、複数のサブ画素を備える。図1に示す表示デバイス2の概略断面図には、表示デバイス2が備える複数の画素のうち、画素Pについて示している。特に、画素Pは、赤色サブ画素SPRと、緑色サブ画素SPGと、青色サブ画素SPBとを備える。
【0012】
本実施形態に係る表示デバイス2は、可撓性を有する基板上に複数の発光素子を備えた、フレキシブルの表示デバイスである。例えば、図1に示すように、本実施形態に係る表示デバイス2は、可撓性を有する基板4と、基板4上の発光素子層6と、発光素子層6を覆う封止層8とを備える。
【0013】
例えば、基板4は、PETフィルム等を含む、可撓性を有するフィルム基板上に、図示しないTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)を形成した構造を有する。さらに、基板4上には、可撓性を有する発光素子層6および封止層8が形成される。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2は、基板4または封止層8の少なくとも一方を内側として折り曲げることが可能である、フレキシブルの表示デバイスを実現する。
【0014】
なお、本明細書においては、後に詳述する、発光素子層6の発光層12から陽極10への方向を「下方向」、発光層12から陰極14への方向を「上方向」として記載する。
【0015】
<発光素子>
発光素子層6は、基板4側から順に、陽極10と、機能層としての発光層12と、陰極14とを備える。換言すれば、発光素子層6は、発光層12を、陽極10と陰極14との二電極間に備える。基板4の上層に形成された発光素子層6の陽極10は、上述したサブ画素ごとに島状に形成され、基板4のTFTのそれぞれと電気的に接続されている。
【0016】
本実施形態において、発光素子層6は、発光素子を複数備え、特に、サブ画素のそれぞれに1つずつ発光素子を備える。本実施形態においては、例えば、発光素子層6は、発光素子として、赤色サブ画素SPRに赤色発光素子6Rを、緑色サブ画素SPGに緑色発光素子6Gを、青色サブ画素SPBに青色発光素子6Bをそれぞれ備える。以降、本明細書において、特段の説明がない限り、『発光素子』とは、発光素子層6が含む、赤色発光素子6R、緑色発光素子6G、および、青色発光素子6Bの何れを指す。
【0017】
ここで、陽極10、および発光層12のそれぞれは、サブ画素ごとに個別に形成されている。特に、本実施形態においては、陽極10は、赤色発光素子6R用の陽極10R、緑色発光素子6G用の陽極10G、および青色発光素子6B用の陽極10Bを含む。また、発光層12は、赤色光を発する赤色発光層12R、緑色光を発する緑色発光層12G、および青色光を発する青色発光層12Bを含む。一方、陰極14は、複数のサブ画素に対し共通に形成されている。
【0018】
したがって、本実施形態において、赤色発光素子6Rは、陽極10Rと、赤色発光層12Rと、陰極14とからなる。また、緑色発光素子6Gは、陽極10Gと、緑色発光層12Gと、陰極14とからなる。さらに、青色発光素子6Bは、陽極10Bと、青色発光層12Bと、陰極14とからなる。
【0019】
ここで、青色光とは、例えば、400nm以上500nm以下の波長帯域に発光中心波長を有する光である。また、緑色光とは、例えば、500nm超600nm以下の波長帯域に発光中心波長を有する光のことである。また、赤色光とは、例えば、600nm超780nm以下の波長帯域に発光中心波長を有する光のことである。
【0020】
なお、本実施形態に係る発光素子層6は、上記構成に限られず、陽極10および陰極14の間の機能層に、さらに追加の層を備えていてもよい。例えば、発光素子層6は、陽極10と発光層12との間の機能層として、発光層12に加えて、正孔注入層、または、正孔輸送層の少なくとも一方をさらに備えていてもよい。また、発光素子層6は、発光層12と陰極14との間に、電子輸送層、または電子注入層の少なくとも一方をさらに備えていてもよい。
【0021】
陽極10および陰極14は導電性材料を含み、発光層12と電気的に接続されている。陽極10と陰極14とのうち、表示デバイス2の表示面に近い電極は半透明電極である。
【0022】
陽極10は、例えばAg-Pd-Cu合金上にITO(Indium Tin Oxide,インジウムスズ酸化物)が積層された構成を有する。上記構成を有する陽極10は、例えば、発光層12から発せられた光を反射する反射性電極である。したがって、発光層12から発せられた光のうち、下方向に向かう光が、陽極10によって反射される。
【0023】
これに対して、陰極14は、例えば半透明のMg‐Ag合金によって構成されている。つまり、陰極14は、発光層12から発せられた光を透過する透過性電極である。したがって、発光層12から発せられた光のうち、上方向に向かう光が、陰極14を透過する。このように、表示デバイス2は、発光層12から発せられた光を上方向に出射できる。
【0024】
以上のとおり、表示デバイス2においては、発光層12から上方向に発せられた光、および下方向に発せられた光の両方を、陰極14(上方向)へと向かわせることができる。すなわち、表示デバイス2は、トップエミッション型の表示デバイスとして構成されている。
【0025】
また、本実施形態において、半透明電極である陰極14は、発光層12から発せられた光を、一部反射する。この場合、反射電極である陽極10と、半透明電極である陰極14との間において、発光層12から発せられた光のキャビティが形成されてもよい。陽極10と陰極14との間においてキャビティを形成することにより、発光層12から発せられた光の色度を改善することができる。
【0026】
なお、上述した陽極10と陰極14との構成は一例であり、別の構成を有していてもよい。例えば、表示デバイス2の表示面に近い電極が陽極10であってもよい。この場合、当該陽極10は半透明電極であってもよく、陰極14が反射電極であってもよい。これにより、表示デバイス2は、発光層12から上方向に発せられた光、および下方向に発せられた光の両方を、陽極10(下方向)へと向かわせることができる。すなわち、表示デバイス2は、ボトムエミッション型の表示デバイスとして構成されていてもよい。
【0027】
発光層12は、陽極10から輸送された正孔と、陰極14から輸送された電子との再結合が発生することにより、光を発する層である。発光層12は、例えば、有機発光材料、あるいは、無機発光材料を含んでいてもよい。発光層12が有機発光材料を含む場合、各発光素子は、OLED(Organic Light-Emitting Diode)素子であってもよい。また、例えば、発光層12が、無機発光材料を含む場合、発光層12は、発光体として、量子ドット材料を備えていてもよい。この場合、各発光素子は、QLED(Quantum dot Light-Emitting Diode)素子であってもよい。
【0028】
なお、本実施形態に係る表示デバイス2は、基板4側に陽極10を備えた発光素子を備えるが、これに限られない。例えば、本実施形態に係る表示デバイス2が備える発光素子層6は、基板4側から順に、陰極14、発光層12、および、陽極10を、積層して備えていてもよい。この場合、陰極14はサブ画素ごとに島状に形成された画素電極であり、陽極10は複数のサブ画素に対し共通に形成された共通電極である。
【0029】
本実施形態に係る表示デバイス2は、さらに、基板4の上面4T上に、バンク16を備える。バンク16は、例えば、ポリイミドを含む塗布可能な樹脂材料を含み、平面視において、互いに隣接するサブ画素の境界を跨ぐ位置に形成される。このため、バンク16により、発光素子層6は、赤色発光素子6R、緑色発光素子6G、および青色発光素子6Bに区画される。特に、陽極10は、バンク16によって、陽極10R、陽極10G、および陽極10Bに分離される。なお、バンク16は、図1に示すように、陽極10のそれぞれの周囲端部を覆う位置に形成されていてもよい。
【0030】
また、バンク16は、塗布可能な感光性樹脂を含む。特に、本実施形態において、バンク16は、ポジ型の感光性樹脂を含んでいる。バンク16は、それぞれ側面16Sを有する。ここで、バンク16は、基板4側から封止層8側に向かって、平面視における面積が、おおよそ次第に小さくなるように形成される。このため、側面16Sの法線方向のうち、バンク16の内部側へ向かう方向は、バンク16が形成されている面である基板4の上面4Tの平面方向よりも、封止層8から基板4に向かう方向となる。
【0031】
ある特定部材が側面を有し、当該特定部材がある特定面上に形成される場合に、当該側面の外表面側と、当該特定面とのなす角度が鈍角であるとする。この場合、本明細書においては、当該側面を順テーパー面であるとする。例えば、上底の面積に比べて下底の面積が大きい正四角錐台において、当該正四角錐台の側面は全て順テーパー面となる。
【0032】
本実施形態において、バンク16は基板4の上面4T上に形成される。また、バンク16の側面16Sの外表面側と上面4Tとがなす角度は鈍角となる。したがって、バンク16の側面16Sは順テーパー面である。ゆえに、本実施形態において、各発光素子が順テーパー面を側面に有するバンク16によって区画されることから、当該各発光素子は、順テーパー面の側壁の間に形成される。
【0033】
<封止層>
封止層8は、発光素子層6およびバンク16を覆い、表示デバイス2が備える各発光素子を封止する。封止層8は、発光素子層6側から順に、無機封止膜18と、有機封止膜20とを含む。封止層8は、表示デバイス2の封止層8側の外部から、水分等を含む異物が発光素子層6等に浸透することを低減する。
【0034】
無機封止膜18は、例えば、CVDにより形成され、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは酸窒化シリコン膜、またはこれらの積層膜により構成される。有機封止膜20は、例えば、ポリイミド等を含む塗布可能な樹脂材料により構成される。さらに、本実施形態に係る有機封止膜20は、後に詳述する自己修復材を含む。無機封止膜18の厚みは、例えば、1μm以上3μm以下である。有機封止膜20の厚みは、例えば、1μm以上20μm以下である。
【0035】
本実施形態に係る封止層8は、上述した構造に限られず、例えば、有機封止膜20上にさらに第2の無機封止膜を含んでいてもよい。この場合、有機封止膜20は、第2の無機封止膜の成膜性を向上させるバッファ層としても機能する。
【0036】
<凸部>
本実施形態に係る表示デバイス2は、さらに、バンク16と封止層8との間に、凸部22を備える。特に、本実施形態に係る凸部22は、平面視において、画素Pの外側に形成される。このため、凸部22は、画素Pの外側に位置するバンク16の上面16T上に形成されている。
【0037】
凸部22は、例えば、可視光の少なくとも一部を吸収または反射する材料を含む。例えば、凸部22は、カーボン粒子を含む黒色の樹脂材料を含んでいてもよい。また、凸部22は、塗布可能な感光性樹脂を含む。特に、本実施形態において、凸部22は、ネガ型の感光性樹脂を含んでいる。凸部22の、バンク16の上面16Tからの厚みは、例えば、1μm以上5μm以下である。
【0038】
凸部22は、それぞれ側面22Sを有する。ここで、凸部22は、基板4側から封止層8側に向かって、平面視における面積が、おおよそ次第に大きくなるように形成される。このため、側面22Sの法線方向のうち、凸部22の外部側へ向かう方向は、凸部22が形成されている面であるバンク16の上面16Tの平面方向よりも、封止層8から基板4に向かう方向となる。
【0039】
ある特定部材が側面を有し、当該特定部材がある特定面上に形成される場合に、当該側面の外表面側と、当該特定面とのなす角度が鋭角であるとする。この場合、本明細書においては、当該側面を逆テーパー面であるとする。例えば、上底の面積に比べて下底の面積が小さい正四角錐台において、当該正四角錐台の側面は全て逆テーパー面となる。
【0040】
本実施形態において、凸部22はバンク16の上面16T上に形成される。また、凸部22の側面22Sの外表面側と上面16Tとがなす角度は鋭角となる。したがって、凸部22の側面22Sは逆テーパー面である。
【0041】
<凹部空間>
本実施形態において、凸部22は複数形成されている。このため、凸部22の間には、凸部22が形成される面であるバンク16の上面16Tと、凸部22の側面22Sとによって、凹部空間24が形成される。凹部空間24のより詳細な構造について、図4を参照して説明する。図4は、凹部空間24および当該凹部空間24の周囲について拡大した概略拡大図であり、図1における領域Dの概略拡大図である。
【0042】
凹部空間24の側面である側面22Sは逆テーパー面であるため、基板4の平面視において、凹部空間24は、封止層8側から基板4側に向かって次第に広くなる。例えば、図4に示すように、凹部空間24は、その側断面においても、封止層8側から基板4側に向かって次第に広くなる構造を有する。さらに、表示デバイス2は、凹部空間24の内部に位置するバンク16の上面16Tと、凸部22の上面22Tとに、金属層26を有する。本実施形態において、金属層26は、単一層または複数の金属、あるいは、複数の金属の合金を含み、可視光の少なくとも一部を反射する。
【0043】
例えば、金属層26は、陰極14と同一の材料を含む。この場合、陰極14の形成の際に、陰極14の材料を含む金属層を、表示デバイス2の表示領域DAの全面に渡って形成することにより、金属層26は、陰極14の形成工程と同時に形成することが可能である。この場合、凹部空間24の内部に位置する金属層26は、例えば、凸部22の上面22Tの端部において、陰極14の材料を含む金属層が段切れすることにより形成される。
【0044】
なお、凹部空間24の側面および下面である、凸部22の側面22Sおよびバンク16の上面16Tは、封止層8によって覆われている。特に、凹部空間24の側面および下面は、無機封止膜18と接し、凹部空間24の内部において、無機封止膜18は、有機封止膜20と接する。このため、凹部空間24の内部において、無機封止膜18および有機封止膜20の外形は、凹部空間24の内部形状に沿った凹部形状を有する。
【0045】
例えば、凹部空間24の側面および下面に接する無機封止膜18は、CVD法等による無機封止膜18の成膜の際に、凹部空間24の側面である側面22S上まで、無機封止膜18の材料を回り込ませることにより形成できる。また、凹部空間24において無機封止膜18と接する有機封止膜20は、塗布による有機封止膜20の材料の成膜を実行することにより形成できる。
【0046】
<凹部空間による、封止層の破断の低減>
凹部空間24は、上述した通り、封止層8側から基板4側に向かって次第に広くなる構造を有する。このため、表示デバイス2が、基板4を内側に折り曲げられた場合、凸部22同士の封止層8側が離れる方向に凸部22同士が動くため、凹部空間24は広がる。また、表示デバイス2が、封止層8を内側に折り曲げられた場合、凸部22同士の封止層8側が近接する方向に凸部22同士が動くため、凹部空間24は小さくなる。
【0047】
したがって、表示デバイス2が折り曲げられた際、表示デバイス2の、発光素子層6および封止層8を含む各層に生じる応力は、上述した、凹部空間24の周囲における凸部22の動きを実現するための力に分散される。ゆえに、表示デバイス2は、凹部空間24により、基板4上の発光素子層6および封止層8を含む各層に生じる応力を低減し、当該各層の破断等の不良の発生を低減する。
【0048】
また、上述した凸部22の動きにより、表示デバイス2が折り曲げられた際、封止層8に生じる応力は、凹部空間24の内部に集中する。このため、表示デバイス2が折り曲げられた際、封止層8の破断が生じた場合であっても、当該破断は凹部空間24の内部に集中する。したがって、各画素の外側に位置する凹部空間24の内部に封止層8の破断を含む不良が集中するため、当該不良が表示デバイス2による表示に影響を及ぼしにくくなる。
【0049】
なお、本実施形態において、凸部22は、平面視における画素Pの外側に形成される。換言すれば、本実施形態に係る各発光素子は、何れも、側面に順テーパー面を有するバンク16の間に形成される。
【0050】
ここで、本実施形態に係る表示デバイス2が、基板4側よりも封止層8側へ、各発光素子からの光を取り出すトップエミッション型の表示デバイス2であるとする。この場合、発光素子が形成される、バンク16の間の空間は、基板4側と比較して、光を取り出す封止層8側において、平面視における面積が増大する。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2は、当該表示デバイス2をトップエミッション型とした場合に、バンク16が、各発光層12からの光を遮蔽することを低減し、各発光素子からの光の取り出し効率の低下を防止する。
【0051】
本実施形態において、凹部空間24の側面である凸部22の側面22Sと、凹部空間24の下面であるバンク16の上面16Tとのなす角度は、少なくとも1つの凹部空間24において同一であってもよい。具体的には、図4に示すように、図4に向かって左側に位置する凸部22の側面22Sと、バンク16の上面16Tとのなす第1角度θ1は、図4に向かって右側に位置する凸部22の側面22Sと、バンク16の上面16Tとのなす第2角度θ2と同一であってもよい。
【0052】
なお、本明細書において、「二つの角度が同一」とは、厳密に角度が同一であることを指さず、互いに角度がわずかに異なっていてもよい。例えば、同一の製造条件により、同一の材料から製造された、互いに異なる凸部22同士の側面22Sのそれぞれが、バンク16の上面16Tと成す角度は、差異が凸部22の製造過程において生じる誤差程度であれば、同一とみなしてもよい。
【0053】
<自己修復材>
次いで、本実施形態に係る有機封止膜20が含む自己修復材について、図5を参照し、より詳細に説明する。図5は、有機封止膜20が含む自己修復材により、破断した有機封止膜20が修復する機構を説明するための工程断面図である。図5においては、有機封止膜20が、例えば、凹部空間24の内部において、第1有機封止膜20Aと第2有機封止膜20Bとに破断したとする。
【0054】
図5に示す、第1有機封止膜20Aと第2有機封止膜20Bとは、自己修復材として、感光性ポリマーを有する。感光性ポリマーは、例えば、二つの感光性結合基が互いに結合することにより形成された、複数の結合部20Fと、当該結合部20F同士を接続する結合鎖20Cとを備える。
【0055】
結合部20Fが含む二つの感光性結合基は、可視光を照射されることによりラジカル化し、互いの結合を切断する。一方、結合部20Fが含む感光性結合基は、他の感光性結合基と近接することにより、互いに再結合する。なお、二つの感光性結合基の再結合は、元の結合部20Fが含む二つの感光性結合基とは異なる感光性結合基同士においても生じる。
【0056】
例えば、第1有機封止膜20Aは、第2有機封止膜20Bとの破断により形成された第1破断面20ASから露出する、第1感光性結合基20FAと第2感光性結合基20FBとを含む。当該第1感光性結合基20FAと第2感光性結合基20FBとが結合することにより、第1破断面20ASから露出する結合部20Fが形成される。また、第2有機封止膜20Bは、第1有機封止膜20Aとの破断により形成された第2破断面20BSから露出する、第3感光性結合基20FCと第4感光性結合基20FDとを含む。当該第3感光性結合基20FCと第4感光性結合基20FDとが結合することにより、第2破断面20BSから露出する結合部20Fが形成される。
【0057】
第1有機封止膜20Aは、第2有機封止膜20Bとの破断の修復工程においては、図5の反応過程R2に示すように、第1破断面20ASから露出する結合部20Fと、第2破断面20BSから露出する結合部20Fとに、可視光VLが照射される。実際には、可視光VLは、表示デバイス2の外部からの外光であってもよい。
【0058】
可視光VLが照射された結合部20Fが含む感光性結合基は、ラジカル化反応により、互いの結合を切断する。このため、図5の反応過程R4に示すように、第1破断面20ASから露出する結合部20Fは、第1感光性結合基20FAと第2感光性結合基20FBとに切断される。また、第2破断面20BSから露出する結合部20Fは、第3感光性結合基20FCと第4感光性結合基20FDとに切断される。
【0059】
以上により、第1感光性結合基20FAと第2感光性結合基20FBとのそれぞれは、第1破断面20ASから露出する結合部20Fの切断端となる。また、第3感光性結合基20FCと第4感光性結合基20FDとのそれぞれは、第2破断面20BSから露出する結合部20Fの切断端となる。
【0060】
次に、例えば、表示デバイス2が、基板4側を内側に折り曲げられた状態から元の略平板の状態に戻ること等により、第1破断面20ASと第2破断面20BSとが互いに接触し、接合部20Jが形成されたとする。この場合、例えば、図5の反応過程R6に示すように、第1感光性結合基20FAと第4感光性結合基20FDとが近接し、互いに再結合する場合がある。また、例えば、図5の反応過程R6に示すように、第2感光性結合基20FBと第3感光性結合基20FCとが近接し、互いに再結合する場合がある。
【0061】
この場合、図5の反応過程R6に示すように、第1感光性結合基20FAと第4感光性結合基20FDとの結合により形成された結合部20Fと接続する結合鎖20Cの少なくとも一方は、接合部20Jを横断する。また、図5の反応過程R6に示すように、第2感光性結合基20FBと第3感光性結合基20FCとの結合により形成された結合部20Fと接続する結合鎖20Cの少なくとも一方は、接合部20Jを横断する。
【0062】
上記のように、接合部20Jを横断する結合鎖20Cにより、第1有機封止膜20Aと第2有機封止膜20Bとは結合される。このため、有機封止膜20が備える自己修復材により、第1有機封止膜20Aと第2有機封止膜20Bとの破断が自己修復される。
【0063】
なお、凸部22の側面22Sと、バンク16の上面16Tとのなす角度が、ある凹部空間24において同一である場合、当該凹部空間24の内部の有機封止膜20に生じる応力は、凹部空間24の中央部分に集中する。したがって、当該凹部空間24の内部の有機封止膜20に生じる破断についても、凹部空間24の中央部分に集中するため、上記構成により、より効率的に有機封止膜20の破断を修復することができる。
【0064】
上述した、有機封止膜20の修復機構を実現するための自己修復材は、例えば、下記化学式にて示す、感光性結合基としてチウラム基を有するポリウレタンであってもよい。
【0065】
【化1】
あるいは、有機封止膜20の修復機構を実現するための自己修復材は、例えば、下記化学式にて示す、感光性結合基としてジセレニド基を有するポリスチレンであってもよい。
【0066】
【化2】
上述した、有機封止膜20の修復機構は、第1有機封止膜20Aと第2有機封止膜20Bとのそれぞれの破断面への可視光の照射と、当該破断面同士の接触により実現する。このため、例えば、有機封止膜20の、自己修復材による自己修復は、表示デバイス2の湾曲と、元の状態への復帰との過程において自然に生じる。
【0067】
また、上述した自己修復材による修復過程は、可逆性を有する。したがって、有機封止膜20へのクラック等の不良が複数回発生した場合においても、有機封止膜が含む自己修復材による自己修復は、その都度生じることとなる。ゆえに、上述した自己修復材は、有機封止膜20の不良の修復をより効率的に行える。
【0068】
本実施形態において、有機封止膜20の破断は、上述した通り、凹部空間24の内部においてより発生しやすい。ここで、凹部空間24は、下面上に、少なくとも一部の可視光を反射する金属層26を備えている。このため、凹部空間24の内部において有機封止膜20の破断が生じた場合、当該破断により形成された破断面に、金属層26により反射された可視光が照射される蓋然性が高まる。したがって、本実施形態に係る金属層26より、凹部空間24の内部において生じた有機封止膜20の破断が、より効率的に修復される。
【0069】
凹部空間24の側面である、凸部22の側面22Sは、少なくとも一部の可視光を反射または散乱してもよい。この場合、凸部22の側面22Sにおいて反射または散乱した可視光が、凹部空間24の内部の有機封止膜20に照射される蓋然性が高まる。本実施形態に係る凸部22により、凹部空間24の内部において生じた有機封止膜20の破断が、より効率的に修復される。
【0070】
<表示デバイスの製造方法の概要>
次いで、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法について、図6から図9を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法について示すフローチャートである。図7から図9は、図6のフローチャートに示す各工程を説明するための表示デバイス2の工程断面図である。図7から図9のそれぞれにおいては、図1に示す表示デバイス2の断面と対応する断面を示す。
【0071】
本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、はじめに、基板4を形成する(ステップS2)。基板4は、例えば、可撓性を有するフィルム基板上に、サブ画素ごとにTFTを形成することにより形成される。なお、ステップS2において、必ずしも基板4の形成を完了する必要はない。例えば、はじめに硬直なガラス基板上にTFTを形成した後、後述する形成方法に沿って、当該ガラス基板上に発光素子層6および封止層8の形成を実行した後、ガラス基板の剥離およびフィルム基板の貼り付けを行うことにより、基板4を形成してもよい。
【0072】
次いで、陽極10を形成する(ステップS4)。陽極10は、例えば、上述したように、スパッタ法等によって、導電性材料をサブ画素に対し共通に成膜したのち、当該導電性材料の薄膜をサブ画素ごとにパターニングすることにより形成してもよい。本実施形態に係るステップS4においては、赤色サブ画素SPR、緑色サブ画素SPG、および青色サブ画素SPBのそれぞれに対応する位置に、陽極10R、陽極10G、および陽極10Bをそれぞれ形成する。
【0073】
<バンクの形成>
次いで、バンク16の形成工程を実施する。バンク16の形成工程においては、はじめに、ポジ型の感光性樹脂を含むバンク材料28を、基板4および陽極10の上面に塗布形成する(ステップS6)。バンク材料28は、コーターによる塗布、または、スピンコートによる塗布等の塗布方法により塗布してもよい。
【0074】
次いで、塗布したバンク材料28に対する光照射を行う、露光工程を実施する(ステップS8)。ステップS8においては、はじめに、塗布したバンク材料28の、基板4側と反対の側の上方に、紫外線を遮蔽する遮蔽部と、紫外線を透過する透過部とを備えたフォトマスク30を設置する。ここで、フォトマスク30は、平面視において、各陽極10を含む、各サブ画素と重なる位置に透過部を備える。例えば、フォトマスク30は、各サブ画素と重なる位置に開口を有した、紫外線を遮蔽する膜状部材であってもよい。フォトマスク30は、例えば、基板4の上面と平行に設置する。
【0075】
バンク材料28の上方にフォトマスク30を設置した後、バンク材料28の、フォトマスク30側のさらに上方から、紫外線UVを照射する。ここで、紫外線UVは、基板4の上面およびフォトマスク30のそれぞれの略法線方向と平行な方向に照射する。このため、平面視において、フォトマスク30の透過部と重なる位置においてのみ、バンク材料28に紫外線UVが照射される。
【0076】
次いで、露光されたバンク材料28の現像を行い(ステップS10)、バンク16を形成する。バンク材料28は、ポジ型の感光性樹脂を含むため、バンク材料28は、紫外線UVを照射された部分が、特性の現像液に対する溶解性を獲得する。したがって、露光されたバンク材料28を、当該現像液によって洗浄することにより、平面視において各陽極10と重なる位置に形成されたバンク材料28のみが除去され、残存したバンク材料28がバンク16となる。
【0077】
ここで、一般に、フォトマスクの開口を透過した光は、当該開口の端部において散乱される。このため、フォトマスクの開口を透過した光は、当該フォトマスクの近傍においては、平面視において、当該開口の周囲に若干拡散して照射される。このため、フォトマスクを介して物体に光を照射した場合、当該物体の、フォトマスクの開口に近い位置においては、平面視において、開口よりも若干広い位置に、より強く光が照射される。
【0078】
換言すれば、ある開口を透過した光が特定の物体に照射される面積は、当該開口と物体との距離が長くなるほど狭くなり、照射される光の強度も低下する傾向にある。このため、ステップS8において、平面視において、フォトマスク30の透過部を透過した紫外線UVが照射される、バンク材料28の面積は、フォトマスク30の下方側に向かって次第に狭くなる。また、紫外線UVが照射されたバンク材料28の露光強度に関しても、フォトマスク30の下方側に向かって次第に低くなる。
【0079】
したがって、バンク材料28の、紫外線UVを照射された部分は、バンク材料28の、フォトマスク30側から基板4側に向かって小さくなる。また、当該部分における露光強度についても、バンク材料28の、フォトマスク30側から基板4側に向かって低くなる。ゆえに、ステップS10において、紫外線UVを照射された部分を現像液により除去した場合、残存するバンク16は、上面16Tから基板4側に向かって次第に大きくなる。上記事情から、ポジ型の感光性材料を含むバンク材料28から、側面に順テーパー面を有するバンク16を形成できる。
【0080】
なお、バンク材料28を現像液によって洗浄する際、露光されなかったバンク材料28についても、少量が現像液に溶解してもよい。この場合、バンク材料28の膜減りにより、バンク16の厚みが低減する。このため、バンク材料28の塗布膜厚は、当該バンク16の厚みの低減を考慮して決定してもよい。
【0081】
次いで、バンク16から露出する各陽極10と重なる位置に、発光層12を形成する(ステップS12)。発光層12の形成は、赤色発光層12R、緑色発光層12G、および青色発光層12Bのそれぞれの発光材料を、メタルマスクを用いた蒸着により形成することにより実行してもよい。あるいは、発光層12の形成は、各発光層の発光材料の層の成膜とパターニングとを、発光色ごとに実行することにより実行してもよい。
【0082】
<凸部の形成>
次いで、凸部22の形成工程を実施する。凸部22の形成工程においては、はじめに、ネガ型の感光性樹脂を含む凸部材料32を、基板4および陽極10の上面に塗布形成する(ステップS14)。凸部材料32は、バンク材料28と同一の手法により塗布してもよい。
【0083】
次いで、塗布した凸部材料32に対する光照射を行う、露光工程を実施する(ステップS16)。ステップS16においては、はじめに、塗布した凸部材料32の、基板4側と反対の側の上方に、フォトマスク34を設置する。フォトマスク34は、例えば、透過部の位置を除き、フォトマスク30と同一の構成を備えていてもよい。例えば、フォトマスク34は、平面視において、画素Pの外側に位置するバンク16と重なる位置に透過部を備える。フォトマスク34は、例えば、バンク16の上面16Tと平行に設置する。
【0084】
凸部材料32の上方にフォトマスク34を設置した後、凸部材料32の、フォトマスク34側のさらに上方から、紫外線UVを照射する。ここで、紫外線UVは、基板4の上面およびフォトマスク34のそれぞれの略法線方向と平行な方向に照射する。このため、平面視において、フォトマスク34の透過部と重なる位置においてのみ、凸部材料32に紫外線UVが照射される。
【0085】
次いで、露光された凸部材料32の現像を行い(ステップS18)、凸部22を形成する。凸部材料32は、ネガ型の感光性樹脂を含むため、凸部材料32は、紫外線UVを照射された部分が、特性の現像液に対する難溶性を獲得する。したがって、露光された凸部材料32を、当該現像液によって洗浄することにより、平面視において、画素Pの外側に位置するバンク16と重なる位置に形成された凸部材料32の一部のみが残存し、残存した凸部材料32が凸部22となる。
【0086】
上述した理由と同一の理由から、ステップS16においても、平面視において、フォトマスク34の透過部を透過した紫外線UVが照射される、凸部材料32の面積は、フォトマスク34の下方側に向かって次第に狭くなり、照射される光の強度も低下する。したがって、凸部材料32の、紫外線UVを照射された部分は、凸部材料32の、フォトマスク34側から基板4側に向かって小さくなる。また、当該部分における露光強度についても、凸部材料32の、フォトマスク34側から基板4側に向かって低くなる。
【0087】
ゆえに、ステップS18において、残存する凸部22は、紫外線UVを照射された部分であるため、凸部22は、上面22Tからバンク16の上面16T側に向かって次第に小さくなる。上記事情から、ネガ型の感光性材料を含む凸部材料32から、逆テーパー面である側面22Sを有する凸部22を形成できる。
【0088】
これにより、凸部22の形成と併せて、少なくとも一部が逆テーパー面の側面22Sであり、バンク16の上面16Tを下面とする、バンク16と凸部22とにより形成された凹部空間24が形成される。凸部材料32に、ネガ型の感光性樹脂を採用することにより、当該凸部材料32に対する、一般的な手法を用いたフォトリソグラフィにより、凸部22の側面22Sを逆テーパー面とすることができる。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、凸部22の側面22Sを逆テーパー面とするための、特定の操作を必要としないため、製造工程が簡素化する。
【0089】
また、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、凸部22を、バンク16上に形成する。このため、凸部22の形成位置に多少のずれが生じた場合においても、表示デバイス2による表示に影響を及ぼしにくい。具体的に、凸部22の形成工程においては、凸部22の形成位置のアライメントを、バンク16の形成工程における、バンク16の形成位置のアライメント程度まで厳密にする必要がない。ゆえに、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、凸部22の形成工程が易化する。
【0090】
<陰極および封止層の形成>
次いで、陰極14を形成する(ステップS20)。陰極14は、例えば、スパッタ法または蒸着法等により、画素Pを含む表示領域DAの全面に金属の薄膜を成膜することにより形成できる。ここで、平面視において、凸部22が形成されるバンク16と重なる位置においても、金属の薄膜を成膜することにより、凸部22の上面22T上と凹部空間24の内部とに位置する金属層26が、陰極14と併せて形成される。
【0091】
これにより、陽極10、発光層12、および陰極14が形成され、発光素子層6の形成が完了する。これに伴い、赤色サブ画素SPR、緑色サブ画素SPG、および青色サブ画素SPBのそれぞれに対応する位置に、赤色発光素子6R、緑色発光素子6G、および青色発光素子6Bがそれぞれ形成される。
【0092】
次いで、陰極14の、基板4と反対の側の上方から、CVD法等による無機材料の薄膜の成膜により、無機封止膜18を形成する(ステップS22)。ここで、無機封止膜18は、凹部空間24の側面および下面を含む、凸部22の側面22Sおよびバンク16の上面16Tにおいても無機材料の薄膜を回り込ませて成膜する。これにより、ステップS22において、凹部空間24の側面および下面を覆う無機封止膜18を形成する。
【0093】
次いで、無機封止膜18の、基板4と反対の側の上方から、コーターを使用した塗布またはスピンコート法等による、自己修復材を含む有機材料の塗布により、有機封止膜20を形成する(ステップS24)。有機封止膜20を塗布形成することにより、容易に凹部空間24の側面および下面を覆う有機封止膜20が形成できる。以上により、図1に示す表示デバイス2が製造される。
【0094】
なお、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法おいては、バンク形成工程の後、発光層形成工程、次いで、凸部形成工程を、この順に実行する例について説明を行った。しかしながら、これに限られず、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法おいては、バンク形成工程の後、凸部形成工程、次いで、発光層形成工程を、この順に実行してもよい。
【0095】
この場合、発光層12の形成の前に、凸部形成工程における、凸部材料32に対する露光および現像を実行できる。このため、上記製造方法によれば、凸部形成工程における、凸部材料32に対する露光および現像の際に、発光層12へのダメージが生じることを防止することができる。
【0096】
<実施形態1のまとめおよび補遺>
本実施形態に係る表示デバイス2は、バンク16の上面16T上に位置する凸部22により形成された凹部空間24を有する。これにより、本実施形態に係る表示デバイス2は、基板4の湾曲に伴い、基板4上の各部材に生じる応力を、凹部空間24により緩和することができ、各発光素子における不良の発生を低減する。
【0097】
また、本実施形態に係る表示デバイス2においては、自己修復材を有する有機封止膜20を含む封止層8が、凸部22の上面22Tと、当該凸部22により形成された凹部空間24の側面および下面を覆う。このため、本実施形態に係る表示デバイス2は、凹部空間24内の有機封止膜20に発生した、クラック等を含む不良を自己修復し、封止層8および当該封止層8よりも下層の各部への、水分を含む異物の侵入を低減する。
【0098】
本実施形態に係る表示デバイス2は、各発光素子を区画するバンク16の上面に、凸部22を備える。上記構成により、凸部22によって形成された凹部空間24は、各発光素子と隣接しない。したがって、上記構成により、凹部空間24中において、有機封止膜20へのクラック等を含む不良が生じた場合においても、各発光素子への、水分を含む異物の侵入が、より効率よく低減する。
【0099】
〔実施形態2〕
<凸部の形成位置の変更例、および、金属層の変形例>
図10は、本実施形態に係る表示デバイス2の側断面図であり、図1に示す断面と対応する断面を示す断面図である。図11は、本実施形態に係る凹部空間24および当該凹部空間24の周囲における概略拡大図であり、図10に示す領域Eについての概略拡大図である。なお、本明細書において、同一の機能を有する各部材には、同一の名称および参照符号を付し、構成の差異がない限り、同じ説明は繰り返さない。
【0100】
本実施形態に係る表示デバイス2は、前実施形態に係る表示デバイス2と比較して、凸部22を、バンク16の上面16T上に備える代わりに、基板4の上面4T上に備える。これに伴い、表示デバイス2の平面視における画素Pの外側においては、バンク16が一部形成されていない位置が存在し、当該位置の一部に凸部22が形成されている。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2は、前実施形態に係る表示デバイス2において、平面視における画素Pの外側に位置するバンク16を、凸部22とした構造を有すると見なすことができる。
【0101】
図10に示すように、凸部22は、例えば、バンク16と対向する側面22Sが、バンク16の側面と接するように形成されていてもよい。また、凸部22は、例えば、互いに接触するバンク16の厚みと、略同一の厚みを有していてもよい。
【0102】
上記構成により、凸部22の間に形成された凹部空間24は、側面に、凸部22の側面22Sを有し、下面に、凸部22が形成される面である基板4の上面4Tを有する。換言すれば、本実施形態に係る凹部空間24は、基板4の上面4T上に形成される。
【0103】
また、本実施形態に係る表示デバイス2は、前実施形態に係る表示デバイス2と比較して、凹部空間24の内部において、基板4の上面4Tと金属層26との間に、さらに、金属層36を備える。金属層36は、例えば、各発光素子の陽極10の何れかの材料と同一の材料を含む。
【0104】
上記を除き、本実施形態に係る表示デバイス2は、前実施形態に係る表示デバイス2と同一の構成を備える。例えば、本実施形態に係る表示デバイス2が、凸部22を、表示デバイス2の平面視における画素Pの外側に備える点については、前実施形態に係る表示デバイス2と同一である。また、本実施形態に係る凸部22は、形成位置を除き、前実施形態に係る凸部22と同一の構成を備えている。このため、凹部空間24の側面である、凸部22の側面22Sは逆テーパー面である。
【0105】
本実施形態に係る表示デバイス2は、凸部22および凹部空間24を、基板4の上面4T上に備える。換言すれば、本実施形態に係る凸部22は、バンク16が形成された位置に形成されており、バンク16の一部であると見なすことができる。
【0106】
このため、本実施形態においては、凹部空間24が形成される位置においては、バンク16が形成されていないため、表示デバイス2の膜厚が低減する。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2は、表示デバイス2の湾曲に伴う、凹部空間24および当該凹部空間24の周囲に生じる応力をさらに低減し、凹部空間24の周囲における、クラックを含む不良の発生を低減する。
【0107】
また、本実施形態において、凹部空間24の内部には、金属層26に加えて、金属層36を備える。また、金属層36は、本実施形態に係る各発光素子の反射電極である陽極10の何れかの材料と同一の材料を含む。したがって、本実施形態においては、凹部空間24の内部における有機封止膜20の破断により形成された破断面に、可視光が照射される蓋然性をさらに高めることができる。
【0108】
本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法について、図12から図14を参照して説明する。図12は、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法について示すフローチャートである。図13および図14は、図12のフローチャートに示す各工程を説明するための表示デバイス2の工程断面図である。図13および図14のそれぞれにおいては、図10に示す表示デバイス2の断面と対応する断面を示す。なお、本明細書において、前述した製造工程と同一の手法により実行できる製造工程については、その詳細については繰り返し説明せず、省略する場合がある。
【0109】
本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、はじめに、前実施形態におけるステップS2と同一の方法により、基板4を形成する。次いで、前実施形態におけるステップS4と同一の方法により、陽極10を形成する。ここで、本実施形態においては、図13のステップS4に示すように、陽極10の形成と併せて、金属層36の形成を実行する。
【0110】
金属層36は、例えば、陽極10の形成工程における、導電性材料の薄膜のパターニングにおいて、平面視における画素Pの形成位置の外側においても、一部導電性材料の薄膜を残存させることにより形成してもよい。当該方法により、金属層36を、陽極10の形成工程と同一の工程において製造することができ、個別に金属層36を形成する必要がない。したがって、上記方法により、表示デバイス2の製造工程の複雑化と、当該製造工程におけるタクトタイムの延長とを低減できる。
【0111】
次いで、前実施形態におけるステップS6と同一の方法により、ポジ型の感光性樹脂を含むバンク材料28を、基板4および陽極10の上面に塗布形成する。次いで、前実施形態におけるステップS8と同一の方法により、塗布したバンク材料28に対する露光を実施する。
【0112】
ここで、本実施形態に係るステップS8においては、平面視において金属層36と重なる位置においても透光部を有するフォトマスク38を使用して、バンク材料28の露光を実行する。これにより、前実施形態におけるステップS10と同一の方法により、露光されたバンク材料28の現像を行うことにより、金属層36の周囲においても、バンク材料28が除去され、本実施形態に係るバンク16が形成される。
【0113】
次いで、前実施形態におけるステップS14、ステップS16、およびステップS18のそれぞれと同一の方法により、ネガ型の感光性樹脂を含む凸部材料32の塗布形成、露光、および現像を実施する。ここで、本実施形態に係るステップS16においては、平面視において、バンク16と重ならない位置に透光部を有するフォトマスク40を使用して、凸部材料32の露光を実行する。これにより、当該凸部材料32の現像により、基板4の上面4T上に形成された凸部22が形成される。
【0114】
次いで、前実施形態におけるステップS12、ステップS20、ステップS22、およびステップS24を順に実行することにより、図10に示す表示デバイス2が製造できる。このため、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、発光層12の形成に先立って、凸部22の形成工程を実行する。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、凸部22の形成工程における、凸部材料32の現像等による、発光層12へのダメージの発生を防止することができる。
【0115】
〔実施形態3〕
<バンクを凸部と同一とした例>
図15は、本実施形態に係る表示デバイス2の側断面図であり、図1に示す断面と対応する断面を示す断面図である。図16は、本実施形態に係る赤色発光素子6Rおよび当該赤色発光素子6Rの周囲における概略拡大図であり、図15に示す領域Fについての概略拡大図である。
【0116】
本実施形態に係る表示デバイス2は、前実施形態に係る表示デバイス2と比較して、バンク16の代わりに、凸部22を、基板4の上面4T上に備える。換言すれば、本実施形態に係る表示デバイス2は、前実施形態に係る表示デバイス2において、各発光素子を区画するバンクを、凸部22と同一としたとみなすことができる。このため、本実施形態に係る表示デバイス2は、平面視における画素Pの内側においても、凸部22を備えている。
【0117】
このため、図15および図16に示すように、本実施形態に係る表示デバイス2は、平面視における画素Pの内側にいても、凸部22の間に形成された凹部空間24を有する。さらに、表示デバイス2は、各凹部空間24の内部に、各発光素子を備えている。本実施形態においては、各凹部空間24の下面上に、陽極10と、発光層12と、陰極14とを備える。このため、本実施形態においては、各凹部空間24が、金属層26および金属層36に代えて、陽極10および陰極14を備えると見なすことができる。
【0118】
上記を除き、本実施形態に係る表示デバイス2は、前実施形態に係る表示デバイス2と同一の構成を備える。例えば、本実施形態に係る凸部22は、形成位置を除き、前実施形態に係る凸部22と同一の構成を備えている。このため、凹部空間24の側面である、凸部22の側面22Sは逆テーパー面である。
【0119】
本実施形態に係る表示デバイス2は、各発光素子を区画するバンクとして、凸部22を有する。また、本実施形態に係る表示デバイス2は、当該凸部22により形成された、凹部空間24のそれぞれの内部に、表示デバイス2が備える発光素子をそれぞれ備える。このため、本実施形態に係る表示デバイス2は、各発光素子が形成された領域においても、基板4の湾曲に伴い、基板4上の各部材に生じる応力を、凹部空間24により緩和することができ、各発光素子への不良の発生をより効率よく低減する。
【0120】
また、本実施形態に係る表示デバイス2が備える各発光素子は、例えば、透過電極である陰極14と比較して、反射電極である陽極10を、より基板4側に備える。この場合、図15および図16からも明らかであるように、内部に発光素子の何れかを含む凹部空間24においては、陰極14よりも基板4側に陽極10を備える。
【0121】
上記構成により、表示デバイス2は、基板4側から封止層8側に向かって、各発光素子からの光を取り出す、トップエミッション型の表示デバイスとなる。この場合、平面視において発光素子と重なる位置における有機封止膜20の破断が発生した場合、当該破断により生じた破断面に対し、外光のみならず、当該発光素子の発光層12からの光が照射される。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2は、発光素子と重なる位置における有機封止膜20の不良についても、より効率的に修復することができる。
【0122】
なお、本実施形態に係る表示デバイス2は、前実施形態に係る表示デバイス2が備える全てのバンク16を、凸部22と同一とした構造を有するが、これに限られない。例えば、本実施形態に係る表示デバイス2は、前実施形態に係る表示デバイス2が備えるバンク16のうち、各画素Pの、平面視において最外縁に位置するバンク16のみを、凸部22とした構造を有していてもよい。
【0123】
この場合、当該凸部22の間には、当該画素Pに形成された、赤色発光素子6R、緑色発光素子6G、および青色発光素子6Bが位置する。したがって、上記構成においては、各凹部空間24の内部に、複数の発光素子を含む構造となる。このように、本実施形態に係る表示デバイス2は、各凹部空間24の内部に、単一の発光素子を含む構造に限られず、複数の発光素子を備えていてもよい。
【0124】
また、本実施形態に係る表示デバイス2は、封止層8側よりも基板4側へ、各発光素子からの光を取り出すボトムエミッション型の表示デバイス2であってもよい。本実施形態において、発光素子が形成される、凸部22の間の空間は、封止層8側と比較して、光を基板4側において、平面視における面積が増大する。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2は、ボトムエミッション型である場合に、凸部22が、各発光層12からの光を遮蔽することを低減し、各発光素子からの光の取り出し効率の低下を防止する。
【0125】
本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法について、図17および図18を参照して説明する。図17は、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法について示すフローチャートである。図18は、図17のフローチャートに示す各工程を説明するための表示デバイス2の工程断面図である。図18においては、図15に示す表示デバイス2の断面と対応する断面を示す。
【0126】
本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、はじめに、前実施形態におけるステップS2およびステップS4と同一の製造工程を順に実行し、基板4、陽極10、および金属層36の形成を実行する。次いで、本実施形態においては、バンク16の形成工程を省略し、凸部22の形成工程を実行する。
【0127】
本実施形態に係る凸部22の形成工程においては、前実施形態におけるステップS14、ステップS16、およびステップS18のそれぞれと同一の方法により、ネガ型の感光性樹脂を含む凸部材料32の塗布形成、露光、および現像を実施する。ここで、本実施形態に係るステップS16においては、平面視において、各陽極10および金属層36と重なる位置に透光部を有するフォトマスク42を使用して、凸部材料32の露光を実行する。これにより、当該凸部材料32の現像により、各陽極10および金属層36の間のそれぞれに、凸部22が形成される。
【0128】
次いで、前実施形態におけるステップS12、ステップS20、ステップS22、およびステップS24を順に実行することにより、図15に示す表示デバイス2が製造できる。
【0129】
本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、バンク16の形成工程を省略する。換言すれば、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、前述までの各実施形態における、バンク16の形成工程を、凸部22の形成工程と同一としたと見なすことができる。
【0130】
これにより、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、バンク16の形成工程を別途実行する方法と比較して、製造工程が簡素化し、さらに、バンク16の形成に使用する材料の消費が必要ない。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法により、当該表示デバイス2の製造工程における、タクトタイムの短縮と製造コストの低減とを実現する。
【0131】
〔実施形態4〕
<順テーパー面を有する凸部>
図19は、本実施形態に係る表示デバイス2の側断面図であり、図1に示す断面と対応する断面を示す断面図である。
【0132】
本実施形態に係る表示デバイス2は、実施形態2に係る表示デバイス2において、凸部22と接するバンク16を、凸部22とした構造を有する。このため、図19に示すように、本実施形態に係る凸部22の側面22Sは、逆テーパー面である第1側面22SAと、順テーパー面である第2側面22SBとを有している。換言すれば、本実施形態に係る側面22Sは、逆テーパー面のみならず、一部に順テーパー面を有している。
【0133】
特に、本実施形態に係る表示デバイス2は、図19に示すように、凸部22の側面22Sの第2側面22SB側に、画素Pが形成されている。換言すれば、本実施形態に係る表示デバイス2は、凸部22の側面22Sの順テーパー面側に、各発光素子を備えている。特に、本実施形態においては、凸部22は、表示デバイス2が備える発光素子のうち、青色発光素子6Bと隣接し、当該青色発光素子6Bの側に第2側面22SBを有する。
【0134】
一方、凸部22の側面22Sは、順テーパー面側とは反対の側、換言すれば、平面視における画素Pの外側に、第1側面22SAを備えている。このため、本実施形態に係る表示デバイス2は、凸部22の第1側面22SA側、換言すれば、平面視における画素Pの外側に、凹部空間24を備えている。
【0135】
したがって、本実施形態に係る表示デバイス2に形成された凹部空間24は、前述の各実施形態に係る表示デバイス2に形成された凹部空間24と同じく、側面に、第1側面22SAを含む、逆テーパー面を有する。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2は、基板4の湾曲に伴い、基板4上の各部材に生じる応力を、凹部空間24により緩和することができ、各発光素子における不良の発生を低減する。
【0136】
加えて、本実施形態において、凸部22の側面22Sは、順テーパー面である第2側面22SBをさらに有し、発光素子側に第2側面22SBを有する。このため、本実施形態に係る表示デバイス2は、凸部22と隣接する発光素子についても、順テーパー面の側壁の間に備える。したがって、本実施形態に係る表示デバイス2は、当該表示デバイス2をトップエミッション型とした場合に、凸部22が、当該凸部22と隣接する発光素子が含む発光層12からの光を遮蔽することを低減する。
【0137】
本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法について、図20から図22を参照して説明する。図20は、本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法について示すフローチャートである。図21および図22は、図20のフローチャートに示す各工程を説明するための表示デバイス2の工程断面図である。図21および図22のそれぞれにおいては、図19に示す表示デバイス2の断面と対応する断面を示す。
【0138】
本実施形態に係る表示デバイス2の製造方法においては、はじめに、実施形態2におけるステップS2およびステップS4と同一の製造工程を順に実行し、基板4、陽極10、および金属層36の形成を実行する。次いで、実施形態2におけるステップS6、ステップS8、およびステップS10のそれぞれと同一の方法により、ポジ型の感光性樹脂を含むバンク材料28の塗布形成、露光、および現像を実施する。
【0139】
ここで、本実施形態に係るステップS8においては、平面視において、陽極10Bと金属層36との間に、遮光部を有していないフォトマスク46を用いて露光を行う。したがって、本実施形態に係るバンク16の形成工程においては、陽極10Bの、金属層36側の周囲端部を覆う位置には、バンク16が形成されない。
【0140】
次いで、上述した各実施形態におけるステップS14と同一の方法により、ネガ型の感光性材料を含む凸部材料32の塗布形成を実行する。次いで、当該凸部材料32に対する露光を実施する。ここで、本実施形態においては、ステップS14に次いで、例えば、平面視において、陽極10Bと金属層36との間に透光部を有するフォトマスク48を設置し、凸部材料32に対する1回目の露光を実行する(ステップS26)。特に、ステップS26においては、フォトマスク48の上方から、基板4の上面4Tの法線方向に対し、金属層36側から陽極10B側に向かう方向に傾斜した方向に向かって、紫外線UVを照射する。
【0141】
次いで、例えば、平面視において、金属層36よりも、さらに陽極10Bと反対の側に透光部を有するフォトマスク50を設置し、凸部材料32に対する2回目の露光を実行する(ステップS28)。特に、ステップS28においては、フォトマスク48の上方から、基板4の上面4Tの法線方向に対し、陽極10B側から金属層36側に向かう方向に傾斜した方向に向かって、紫外線UVを照射する。
【0142】
次いで、上述した各実施形態におけるステップS18と同一の方法により、凸部材料32の現像を実行する。ここで、ステップS26およびステップS28により、凸部材料32は、平面視において、陽極10Bと金属層36との間、および、金属層36よりもさらに陽極10Bと反対の側において露光されている。
【0143】
加えて、露光された凸部材料32のうち、平面視において、陽極10Bと金属層36との間に位置する部分は、紫外線UVが照射される上方側から、基板4側に向かう方向において、金属層36側から陽極10B側に向かう方向に露光される。したがって、ステップS18により、平面視における陽極10Bと金属層36との間には、金属層36側に逆テーパー面である第1側面22SAを有し、陽極10B側に順テーパー面である第2側面22SBを有する第2側面22SBを有する凸部22が形成される。
【0144】
さらに、露光された凸部材料32のうち、平面視において、金属層36よりもさらに陽極10Bと反対の側に位置する部分は、紫外線UVが照射される上方側から、基板4側に向かう方向において、陽極10B側から金属層36側に向かう方向に露光される。したがって、ステップS18により、平面視における金属層36よりもさらに陽極10Bと反対の側には、金属層36側に逆テーパー面である第1側面22SAを有する凸部22が形成される。なお、図示の簡単のために、図22においては省略しているが、平面視における金属層36よりもさらに陽極10Bと反対の側に位置する凸部22は、金属層36よりもさらに陽極10Bと反対の側に、順テーパー面である第2側面22SBを有している。
【0145】
次いで、前実施形態におけるステップS12、ステップS20、ステップS22、およびステップS24を順に実行することにより、図19に示す表示デバイス2が製造できる。
【0146】
本実施形態においては、凸部22の形成工程において、感光性材料に対するフォトリソグラフィにより凸部22を形成する。さらに、本実施形態においては、当該フォトリソグラフィにおける露光工程において、基板4の上面4Tの法線方向から傾斜した方向に対し、紫外線UVの照射を行う。これにより、同一の凸部材料32から、逆テーパー面である第1側面22SAと、順テーパー面である第2側面22SBとを、双方備えた凸部22を形成することができる。
【0147】
また、本実施形態においては、第1側面22SAおよび第2側面22SBを双方有する凸部22の形成を、上述の通り、基板4の上面4Tの法線方向から傾斜した方向に対し、紫外線UVの照射を行う露光工程によって実現する。したがって、凸部材料32は、ネガ型の感光性材料に代えて、ポジ型の感光性材料を採用してもよい。この場合、例えば、ステップS26およびステップS28においては、それぞれ、フォトマスク48とフォトマスク50との、遮光部と透光部とが反転したフォトマスクを使用した露光を実行することにより、本実施形態に係る凸部22を形成できる。ただし、ステップS26およびステップS28の双方において、ポジ型の凸部材料32の、凸部22を形成する位置に対し、露光が行われないよう、ステップS26およびステップS28のそれぞれにおいて、フォトマスクの遮光部を適宜追加することが望ましい。
【0148】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0149】
2 表示デバイス
4 基板
6 発光素子層
8 封止層
10 陽極
12 発光層
14 陰極
16 バンク
18 無機封止膜
20 有機封止膜
22 凸部
24 凹部空間
26、36 金属層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22