IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アステック インターナショナル リミテッドの特許一覧

特許7598448電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路
<>
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図1
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図2
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図3
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図4
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図5
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図6
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図7
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図8
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図9
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図10
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図11
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図12
  • 特許-電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023512660
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2020111051
(87)【国際公開番号】W WO2022040908
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】521227078
【氏名又は名称】アステック インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディン,チュンユー
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ル,カイトン
(72)【発明者】
【氏名】リャン,ボ
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-288986(JP,A)
【文献】特開2007-166779(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107070190(CN,A)
【文献】特開2007-202285(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0126753(US,A1)
【文献】特開2007-250826(JP,A)
【文献】特開2019-009940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 - 7/98
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/52 - 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルクコンデンサを含む電源回路と、
前記バルクコンデンサを加熱するために前記電源回路に結合された補助回路であって、スイッチング装置を含む補助回路と、
該補助回路に結合された制御回路であって、前記バルクコンデンサが放電および充電することを可能にして前記バルクコンデンサに関連する温度を上昇させ、前記バルクコンデンサに関連する等価直列抵抗の値を低減させるための前記スイッチング装置を制御する制御信号を生成するように構成された制御回路と
を備え、
前記補助回路が、第1の巻線および第2の巻線を有する誘導装置を含み、前記第1の巻線が、前記電源回路の前記バルクコンデンサと前記補助回路の前記スイッチング装置との間に結合される、電力変換器。
【請求項2】
前記スイッチング装置がオンすると、前記バルクコンデンサが前記第1の巻線に放電するように結合される、請求項に記載の電力変換器。
【請求項3】
前記補助回路が、前記誘導装置の前記第2の巻線と前記電源回路の前記バルクコンデンサとの間に結合されたダイオードを含む、請求項に記載の電力変換器。
【請求項4】
前記スイッチング装置がオフすると、前記第2の巻線が、前記ダイオードを介して前記バルクコンデンサを充電するように結合される、請求項に記載の電力変換器。
【請求項5】
前記誘導装置がトランスを含み、前記第1の巻線が前記トランスの一次巻線であり、前記第2の巻線が前記トランスの二次巻線である、請求項に記載の電力変換器。
【請求項6】
前記誘導装置が結合インダクタを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項7】
前記制御回路が、固定デューティサイクルを有する前記制御信号を生成するように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項8】
前記補助回路が、開ループフライバックコンバータトポロジを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項9】
前記電源回路が電力を受け取ることに応答して、前記制御回路が前記スイッチング装置を制御するための前記制御信号を生成するように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項10】
前記バルクコンデンサのパラメータが定められた閾値を超えることに応答して、前記制御回路が、前記制御信号の生成を停止するように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項11】
前記制御信号がPWM制御信号である、請求項1から10のいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項12】
前記制御信号が可変周波数を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項13】
前記電源回路がブリッジ整流回路を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項14】
前記電源回路が力率補正回路を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項15】
前記制御回路が、アナログ回路および/またはデジタル回路を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換器におけるバルクコンデンサ加熱回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この節では、必ずしも従来技術ではない本開示に関連する背景情報を提供する。
【0003】
電力変換器は、入力電圧と電流を出力電圧と電流に変換する。電力コンバータは、一般に、コンバータの入力および/または出力の近くに配置された1つまたは複数のバルクコンデンサを含む。バルクコンデンサは、一般に、例えば、負荷過渡、入力電源過渡などに起因する大きな電圧偏差を防止するために使用される。
【発明の概要】
【0004】
この節では、本開示の概要を提供するが、その全範囲またはその特徴のすべての包括的な開示ではない。
【0005】
本開示の一態様によれば、電力変換器は、バルクコンデンサを有する電源回路と、バルクコンデンサを加熱するために電源回路に結合された補助回路と、補助回路に結合された制御回路とを含む。補助回路はスイッチング装置を含む。制御回路は、バルクコンデンサが放電および充電することを可能にしてバルクコンデンサに関連する温度を上昇させバルクコンデンサに関連する等価直列抵抗の値を低減させるためのスイッチング装置を制御する制御信号を生成するように構成される。
【0006】
さらなる態様および適用可能な領域が、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。本開示の様々な態様は、個別に、または1つもしくは複数の他の態様と組み合わせて実施することができることを理解されたい。本明細書の説明および特定の例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していないことも理解されたい。
【0007】
本明細書で説明される図面は、選択された実施形態のみの例示を目的としており、すべての可能な実施態様ではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の1つの例示的な実施形態による、バルクコンデンサを有する電源回路と、バルクコンデンサを加熱するために電源回路に結合された補助回路とを含む電力変換器のブロック図である。
図2図1のバルクコンデンサの等価回路の電気接続図である。
図3】別の例示的な実施形態による、バルクコンデンサを有する電源回路と、トランス、ダイオード、およびバルクコンデンサに充放電させるように制御可能なスイッチング装置を有する補助回路とを含む電力変換器の電気接続図である。
図4】さらに別の例示的な実施形態による、図3のバルクコンデンサに関連する電流のグラフである。
図5】別の例示的な実施形態による、図3のスイッチング装置を流れる電流のグラフである。
図6】さらに別の例示的な実施形態による、図3のダイオードを流れる電流のグラフである。
図7】別の例示的な実施形態による、結合インダクタ、ダイオード、およびバルクコンデンサに充放電させるように制御可能なスイッチング装置を有する補助回路を含む電力変換器の電気接続図である。
図8】さらに別の例示的な実施形態による、電源回路のバルクコンデンサを加熱するための、さらにスナバ回路を含む補助回路の電気接続図である。
図9】別の例示的な実施形態による、AC/DCブースト力率補正(PFC:Power Factor Correction)トポロジを有する電源回路および図3の補助回路を含む電力変換器の電気接続図である。
図10】さらに別の例示的な実施形態による、AC/DCブリッジレスブーストPFCトポロジを有する電源回路および図3の補助回路を含む電力変換器の電気接続図である。
図11】別の例示的な実施形態による、トーテムポールブリッジレスブーストPFCトポロジを有する電源回路および図3の補助回路を含む電力変換器の電気接続図である。
図12】さらに別の例示的な実施形態による、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulated)制御信号を生成するための制御回路の電気接続図である。
図13】別の例示的な実施形態による可変周波数変調(VFM:Variable-Frequency Modulation)制御信号を生成するための制御回路の電気接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面のうちのいくつかの図を通して、対応する参照番号は対応する(しかし必ずしも同一ではない)部分および/または特徴を示す。
【0010】
例示的な実施形態は、本開示が徹底したものであり当業者に範囲を十分に伝えるように提供される。本開示の実施形態の完全な理解が得られるよう、特定の構成要素、装置、および方法の例など、多数の特定の詳細が説明される。特定の詳細が用いられる必要がないこと、例示的な実施形態が多くの異なる形態で具体化され得ること、およびそのいずれもが本開示の範囲を限定するように解釈されるべきではないことは、当業者には明らかであろう。いくつかの例示的な実施形態では、周知のプロセス、周知の装置構造、および周知の技術は詳細には説明されない。
【0011】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことを意図してもよい。「備える(comprises)」、「備えた(comprising)」、「含んだ(including)」、および「有した(having)」という用語は包括的であり、したがって、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。本明細書に記載された方法のステップ、手順、および動作は、実行の順序として具体的に特定されない限り、必ずしも説明または図示された特定の順序でそれらの実行を必要とすると必ずしも解釈されるべきではない。追加のまたは代替のステップが使用されてもよいことも理解されたい。
【0012】
第1、第2、第3などの用語は、様々な要素、構成要素、領域、層および/または部分を説明するために本明細書で使用される場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、層および/または部分は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層または部分を別の領域、層または部分と区別するためだけに使用されてもよい。「第1」、「第2」などの用語、および他の数字用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって明確に示されない限り、順序を意味しない。したがって、以下で説明する第1の要素、構成要素、領域、層または部分は、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層または部分と呼ぶことができる。
【0013】
「内側(inner)」、「外側(outer)」、「真下(beneath)」、「下(below)」、「下方(lower)」、「上(above)」、「上方(upper)」などの空間的に相対的な用語は、本明細書では、図に示されたある要素または特徴と別の要素または特徴との関係を説明するのに説明を容易にするために使用されることがある。空間的に相対的な用語は、図に示されている向きに加えて、使用中または動作中の装置の異なる向きを含むことが意図されてもよい。例えば、図中の装置がひっくり返された場合、他の要素または特徴の「下(below)」または「真下(beneath)」と記載された要素は、先の他の要素または特徴の「上(above)」に置かれる。したがって、用語例「下(below)」は、上と下の両方の向きを含むことができる。装置は、他の方向に向けられ(90度または他の向きに回転され)てもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0014】
次に、添付図面を参照して例示的な実施形態をより完全に説明する。
【0015】
本開示の1つの例示的な実施形態による電力変換器が図1に示されており、全体として参照番号100で示されている。図1に示すように、電力変換器100は、電源回路102と、補助回路104と、制御回路106とを含む。電源回路102は、バルクコンデンサ108を含む。補助回路104は、バルクコンデンサ108を加熱するために電源回路102に結合されている。図示のように、補助回路104はスイッチング装置110を含む。制御回路106は補助回路104に結合されている。制御回路106は、バルクコンデンサ108が放電および充電することを可能にしてコンデンサ108に関連する温度を上昇させバルクコンデンサ108に関連する等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)の値を低減させるためのスイッチング装置110を制御する制御信号112を生成するように構成される。
【0016】
バルクコンデンサ108のような電解コンデンサは、通常いくつかの要素を含む。例えば、図2は、図1のバルクコンデンサ108の等価回路を示す。図示のように、バルクコンデンサ108は、キャパシタンスCと、キャパシタンスCと並列の抵抗Rと、ESR220と、等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series inductance)222とを含む。抵抗Rは、バルクコンデンサの誘電体の絶縁抵抗を表す。ESR220とESL222は、キャパシタンスCと抵抗Rとに直列であり、それぞれバルクコンデンサ108内の抵抗性要素と誘導性要素との組み合わせを表す。
【0017】
いくつかの例では、バルクコンデンサ108および/または本明細書に開示した他のバルクコンデンサのいずれか1つは、大きなキャパシタンスを有することができる(例えば、図2のキャパシタンスC)。コンデンサ108の容量は、電力コンバータ100の電圧偏差を低減するのに役立てることができる。例えば、電圧偏差は、一般に、キャパシタンスが増加するにつれて低減する。したがって、バルクコンデンサ108および/または本明細書に開示した他のバルクコンデンサのいずれか1つは、例えば100μF~1mFを超える範囲のキャパシタンスを有することができる。
【0018】
バルクコンデンサ108に関連するESR(例えば、図2のESR220)は、温度に依存することがある。例えば、バルクコンデンサ108の周囲温度が低下(または上昇)すると、そのESR値が上昇(または低下)することがある。例えば、低温環境(例えば、摂氏-25度未満、摂氏-25度~摂氏20度、摂氏20度を超える温度など)では、電力コンバータ100が起動され、バルクコンデンサ108の周囲温度が上昇すると、コンデンサのESRが大幅に経時変化する可能性がある。そのような例では、バルクコンデンサ108の周囲温度が上昇するにつれ、コンデンサのESRは10倍変化する可能性がある。いくつかの例では、摂氏-40度でのバルクコンデンサ108のインピーダンス比は、摂氏20度でのインピーダンス比よりも10倍以上高くなる場合がある。
【0019】
電力コンバータ100が低温環境下で起動すると、増加したESRが電力コンバータ100の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、電力コンバータ100が低温環境で始動すると、コンバータ100は、ESRの増加に(少なくとも部分的に)よりバルクコンデンサ108で大きなリップル電圧を受ける可能性がある。これは、例えば、バルクコンデンサ108が電力コンバータ100の出力に結合される(例えば、出力バルクコンデンサの)場合に起こる可能性がある。場合によっては、この大きなリップル電圧により、出力電圧調整精度の低下、過電圧保護回路の起動、制御ループの不安定性などが起きる可能性がある。他の例では、例えば、バルクコンデンサ108が電力コンバータ10の入力に結合されている(例えば、入力バルクコンデンサの)場合に、ESRの増加により、フィルタ効果を低下させる可能性がある高周波ノイズがバルクコンデンサ108の両端間に起きる恐れがある。
【0020】
しかし、コンデンサ108を強制的に充放電させることにより、バルクコンデンサ108のESR値を低下させることができる。例えば、コンデンサ108の充電/放電は、バルクコンデンサ108内の電解質を活性化し、コンデンサ108に関連する温度を経時的に上昇させることができる。この温度変化は、例えば、充放電の頻度に基づいてもよい。温度が上昇する結果として、コンデンサ108のESR値は、適切なレベルまで低減することができる。ESR値が低減されることにより、コンデンサ108の両端間でのリップル電圧、ノイズなどを最小化することができる。
【0021】
図1の例では、補助回路のスイッチング装置110をバルクコンデンサ108に結合して、バルクコンデンサを強制的に充放電させることができる。このような例では、バルクコンデンサ108は、スイッチング装置110の状態に基づいて充放電されてもよい。このように、(生成された制御信号112により)スイッチング装置110がオンとオフすると、バルクコンデンサ108は(例えば、電圧源として、)充放電することができる。例えば、バルクコンデンサ108は、スイッチング装置110がオフである(例えば、その開放状態にある)ときに充電し、スイッチング装置110がオンである(例えば、その閉状態にある)ときにその蓄積エネルギーを放電することができる。したがって、バルクコンデンサ108は、スイッチング装置110がオフのときに充電電流を受け取ることができ、スイッチング素子110がオンのときに、バルクコンデンサ108は、放電電流を供給することができる。このような例では、コンデンサ108は、スイッチング装置110のスイッチング周期ごとに一回充放電してもよい。
【0022】
いくつかの例では、電力コンバータ100のパラメータに基づいて補助回路104を作動させて、コンデンサ108を加熱(例えば予熱)するための充電/放電プロセスを開始することができる。例えば、低温環境において電力コンバータ100が電源投入されると、制御回路106は、電力コンバータ100が入力電力を受け取ることに応答して、スイッチング装置110を制御するための制御信号112を生成することができる。例えば、制御回路106は、電力コンバータ100のパラメータ(例えば、入力電流、入力電圧など)を感知し、感知したパラメータに応答して制御信号112の生成を開始することができる。そのような例では、バルクコンデンサ108は、入力電力で最初に充電されてもよい。
【0023】
制御回路106は、バルクコンデンサ108のパラメータが定められた閾値を超えることに応答して、スイッチング装置110を制御するための制御信号112の生成を停止することができる。このような例では、スイッチング装置110をオフとすることができ、補助回路104の動作を停止させて、コンデンサ108を加熱するための充電/放電プロセスを停止することができる。例えば、ESRとコンデンサ108に関連した温度との関係は既知としてもよい。そのような例では、制御回路106は、コンデンサ108に関連した温度を感知し、その温度が定められた値(例えば、摂氏10度、摂氏20度、摂氏30度など)を超えて上昇した場合に制御信号112の生成を停止することができる。そのような例では、先の定められた温度は、コンデンサ108に関連する所望のESRに基づいて決定されてもよい。他の例では、制御回路106は、コンデンサのESR値を決定し(例えば、感知された電流に基づいて)、そのESR値が定められた値(例えば、0.1オーム、0.09オームなど)を下回る(例えば、超過する)ときに制御信号112の生成を停止することができる。さらに他の例では、制御回路106は、バルクコンデンサ108の充電および/または放電の回数が定められた閾値を超えると、制御信号112の生成を停止することができる。
【0024】
バルクコンデンサ108は、電力コンバータ100が始動期間に入る前に加熱され(例えば、予熱され)てもよい。したがって、低温環境で電力コンバータ100が電源投入されると、電力コンバータ100が始動期間(例えば、コンバータの実効キャパシタンスが充電されてコンバータが所望の安定した出力電圧を供給することが可能となる期間)に入る前にコンデンサ108を加熱してコンデンサのESRを所望の値まで低下させることができる。他の例では、加熱プロセスは、始動プロセスの一部(例えば、始動プロセスの最初の部分)であってもよい。コンデンサ108が所望の温度に加熱される(例えば、そのESRが所望の値まで低下する)と、電力コンバータ100は、その始動プロセスに入ること、それを継続すること等が可能となる。
【0025】
スイッチング装置110に供給される制御信号112は、任意の適切な周波数を有することができる。周波数は固定であっても可変であってもよい。例えば、制御信号112は、設定された周波数または変化する周波数を有していてもよい。制御信号112が変化する周波数を有する例では、制御回路106は、可変周波数変調(VFM:Variable-Frequency Modulation)制御を提供してもよい。周波数は、バルクコンデンサ108の高周波充電/放電を確実にするのに適した値(例えば、10kHz~1MHzの範囲)を有してもよい。その結果、コンデンサ108に関連する温度が所望の値に達するように、バルクコンデンサ108を所望の回数だけ充電/放電することができる。
【0026】
さらに、制御信号112は、固定または可変のデューティサイクルを有することができる。例えば、スイッチング装置110のオン時間(例えば、コンデンサ108の放電時間)とスイッチング装置110のオフ時間(例えば、コンデンサ108の充電時間)とを固定としてもよい。そのような例では、スイッチング装置110の状態に基づいてコンデンサ108に供給される充電電流およびコンデンサ108によって供給される放電電流は、充電/放電サイクルごとに実質的に一定にすることができる。他の例では、デューティサイクルは変化してもよい。そのような例では、制御信号はパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulated)信号であってもよい。
【0027】
制御信号112(したがって、スイッチング装置110)のオン時間とオフ時間ならびに充電電流と放電電流は、出力電圧が確立される前にコンデンサ108が十分に加熱されることを確保するよう、様々なパラメータに基づいて決定することができる。例えば、パラメータは、コンデンサ108の電荷容量、電源始動時間(例えば、入力電圧が受けた時から出力電圧が確立される時までの時間)などを含むことができる。
【0028】
いくつかの例では、図1の補助回路104は、スイッチング装置110に加えて1つまたは複数の構成要素を含むことができる。例えば、図3は、バルクコンデンサC1を有する電源回路302と、スイッチング装置、誘導装置およびダイオード(例えば、整流ダイオード)D7を有する補助回路304とを含む電力コンバータ300を示す。いくつかの例では、誘導装置(例えば、トランス、結合インダクタなど)は、絶縁を可能にする限り、物理的に小さい装置であってもよい。
【0029】
図3の特定の例では、スイッチング装置はMOSFET Q4として示され、誘導装置はトランスTX1として示されている。他の例では、他の適切なスイッチング装置および/または誘導装置を使用することができる。補助回路304は、図1の電源回路102および/またはバルクコンデンサを有する別の他の適切な電源回路と共に使用可能である。
【0030】
図3の例では、補助回路304のMOSFET Q4、トランスTX1およびダイオードD7は、フライバックコンバータトポロジで構成されている。より具体的には、補助回路304は、開ループフライバックコンバータトポロジを有する。このように、図3の例では、補助回路304のMOSFET Q4はフィードバックなしで制御される。
【0031】
図示のように、トランスTX1の一次巻線P1は、バルクコンデンサC1とMOSFET Q4との間に結合されている。具体的には、図3の例では、一次巻線P1は、MOSFET Q4のドレイン端子に結合されている。MOSFET Q4のソース端子は基準電圧(例えば、接地)に結合されている。図示のように、ダイオードD7は、トランスTX1の二次巻線S1とバルクコンデンサC1との間に結合されている。具体的には、二次巻線S1はダイオードD7のアノードに結合され、バルクコンデンサC1はダイオードD7のカソードに接続されている。
【0032】
図3の特定の例では、バルクコンデンサC1と補助回路304の構成要素とは、コンデンサC1が充放電することを確実にするように結合される。例えば、図3に示すように、バルクコンデンサC1は、MOSFET Q4がオンすると、トランスの一次巻線P1への電圧源として放電するように結合される。この間、バルクコンデンサC1からの電流は、一次巻線P1およびMOSFET Q4を通って基準電圧まで放電される。その結果、一次巻線電流が増加し、トランスTX1はエネルギーを蓄積する。
【0033】
さらに、図3に示すように、トランスTX1の二次巻線S1は、MOSFET Q4がオフすると、バルクコンデンサC1を充電するように結合される。例えば、MOSFET Q4がオフのとき、トランスの一次巻線P1に蓄積されたエネルギーは、二次巻線S1に伝達される。この間、二次巻線S1のエネルギーが放電され、二次巻線S1からダイオードD7を通ってコンデンサC1に流れる電流が、バルクコンデンサC1を充電させる。
【0034】
バルクコンデンサC1の充電/放電プロセスを図4図6に示す。例えば、図4図6は、コンデンサ電流I_C1、MOSFET Q4に流れる電流I_Q4、およびダイオードD7に流れる電流I_D7、それぞれのグラフ400,500,600を示す。図示のように、グラフ400,500,600は、バルクコンデンサC1の充電および放電サイクルに対応する連続した期間T1、T2、T3を含む。具体的には、期間T1はコンデンサC1の放電サイクルに対応し、期間T2はコンデンサC1の次の充電サイクルに対応し、期間T3はコンデンサC1のもう1つの放電サイクルに対応する。
【0035】
例えば、MOSFET Q4は、期間T1の間オンである。この期間の間、コンデンサC1は、その蓄積したエネルギーを放出することで、図4に示すように電流I_C1がコンデンサから流れる。コンデンサ電流は、図5の期間T1の間に増加する電流I_Q4によって示されるように、MOSFET Q4(また上述のように一次巻線P1)を通して流れる。期間T1の間、図6に示すように、ダイオードD7には電流が流れない。
【0036】
MOSFET Q4は、期間T2の間オフである。このため、図5に示すように、MOSFET Q4には電流が流れない。期間T2の間、上述したように、トランスTX1に蓄積されたエネルギーが解放されてコンデンサC1に戻るため、ダイオード電流I_D7およびコンデンサ電流I_C1は急増し、次いで、時がたつにつれ減少する(図6および図7を参照)。このように、この期間中、コンデンサC1は、トランスTX1に蓄えられたエネルギーから充電される。
【0037】
期間T3の間、上述したように、MOSFET Q4が再びオンし、一次巻線P1およびMOSFET Q4を通ってバルクコンデンサC1が再び放電される。バルクコンデンサC1のこの充電/放電プロセスは、必要に応じて繰り返してもよい。
【0038】
MOSFET Q4は、任意の適切な制御回路によって制御されてもよい。図3の特定の例では、電力コンバータ300は、MOSFET Q4を制御するための信号源V4によって表される制御回路を含む。そのような例では、信号源V4は、抵抗器R3を介してMOSFET Q4のゲート端子に制御信号を供給することができる。いくつかの例では、信号源V4によって供給される制御信号は、上述したように、任意の適切な周波数および/または固定もしくは可変のデューティサイクルを有することができる。
【0039】
いくつかの例では、電力コンバータ300の1つまたは複数のパラメータに基づいて、補助回路304を作動および/または停止して、バルクコンデンサC1の充電/放電プロセスを開始および/または停止することができる。例えば、信号源V4は、上述したように、電力コンバータ300が入力電力を受け取ることに応答してその制御信号を生成するように制御されてもよい。そのような例では、バルクコンデンサ108は、最初に入力電力で充電され、次にMOSFET Q4がオンするときに放電されてもよい。さらに、バルクコンデンサ108のパラメータが定められた閾値を超過する(例えば、超えて増加するおよび/または下回って低下する)ことに応答して、信号源V4は、その制御信号の生成を停止するように制御されてもよい。バルクコンデンサ108に関連するパラメータは、例えば、温度、ESR値、充電および/または放電の回数などであってもよい。信号源V4がその制御信号の生成を停止すると、MOSFET Q4はオフ(例えば、開放)のままであり、補助回路304は動作が停止される。
【0040】
さらに、図3の電力コンバータ300は、入力電圧と電流を出力電圧と電流に変換するための1つまたは複数の構成要素を含むことができる。例えば、図3に示すように、電源回路302は、4つのダイオードD6、D8、D9、D10を有するオプションの整流回路314を含む。図3の例では、ダイオードD6,D8,D9,D10は、交流電源V3からの交流電力を直流電力に変換するフルブリッジ構成で構成されている。他の例では、別の適切な整流回路を使用することができる。図3には示されていないが、電源回路302は、1つまたは複数の電力スイッチング装置、インダクタ、コンデンサなどをさらに含んでもよい。
【0041】
いくつかの例では、図3の補助回路304は、上で説明したような別の適切な誘導装置を含むことができる。例えば、図7には、図3の電源回路302と制御回路(例えば、信号源V4)と、図3のMOSFET Q4およびダイオードD7、ならびに結合インダクタCIを含む補助回路704とを含む電力コンバータ700が示されている。補助回路704は、電源回路302内のバルクコンデンサC1を加熱するための図3の補助回路304と同様に機能する。例えば、バルクコンデンサC1は、MOSFET Q4がオンのときに電圧源として結合インダクタの巻線W1に放電し、MOSFET Q4がオフのときに結合インダクタの巻線W2から(さらにダイオードD7を通って)流れる電流で充電することができる。
【0042】
他の例では、本明細書に開示した補助回路のいずれか1つは、電圧スパイクを抑制するためのスナバ回路を含むことができる。例えば、図8は、本明細書に開示した電源回路のいずれか1つ、および/または別の適切な電源回路と共に使用することができる補助回路804を示す。図8の補助回路804は、図3の補助回路304と実質的に同様であるが、トランスTX1の一次巻線P1の両端に結合されたスナバ回路840を含む。図示のように、スナバ回路840は、コンデンサC2、抵抗器R2、およびダイオードD2を含む。コンデンサC2と抵抗器R2とは並列に結合されており、コンデンサC2と抵抗器R2との並列接続と一次巻線P1との間にはダイオードD2が結合されている。図8の例では、コンデンサC2は、例えば、MOSFET Q4が状態を変化させることに起因する電圧スパイクによって発生するエネルギーを吸収することができる。
【0043】
さらに、本明細書に開示する補助回路のいずれか1つは、少なくとも1つのバルクコンデンサを有する任意の適切な電力変換器(例えば、スイッチング電力変換器)に使用することができる。例えば、補助回路は、AC/DC、DC/ACおよび/またはDC/DC電力変換を提供するために、例えばバック、ブースト、バックブーストなどのトポロジのような様々なコンバータトポロジを有する電源回路と共に使用することができる。いくつかの例では、電源回路のブーストトポロジはPFC回路を含んでもよい。例えば、図9図11は、様々なブーストPFCトポロジを有する電源回路902、1002、1102と、図3の補助回路304と、補助回路304のMOSFET Q4を制御するための図3の制御回路(例えば、信号源V4)とを含む電力変換器900、1000、1100を示す。具体的には、図9の電源回路902はAC/DCブースト力率補正(PFC:Power Factor Correction)トポロジを有し、図10の電源回路1002はAC/DCブリッジレスブーストPFCトポロジを有し、図11の電源回路1102はトーテムポールブリッジレスブーストPFCトポロジを有する。図10の電源回路1002において、ダイオードD6,D7,D8,D9の一部または全部を、希望するならMOSFET(例えば、SiC MOSFET)に置き換えてもよい。さらに、図11の電源回路1102において、MOSFET Q1、Q5の一部または全部を、希望するならダイオードに置き換えてもよい。
【0044】
さらに、本明細書に開示する制御回路は、補助回路内のスイッチング装置を制御するための制御信号を生成するための任意の適切な回路を含むことができる。例えば、制御回路は、アナログ制御回路、デジタル制御回路、またはハイブリッド制御回路(例えば、デジタル制御回路とアナログ回路)を含んでもよい。デジタル制御回路は、1つまたは複数の種類のデジタル制御回路で実装されてもよい。例えば、デジタル制御回路はそれぞれ、例えば、デジタルシグナルコントローラ(DSC)、デジタルシグナルプロセッシング(DSP)、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向けIC(ASIC:Application-Specific IC)などのデジタルコントローラを含むことができる。
【0045】
いくつかの例では、制御回路は、上述のようにPWM制御またはVFM制御を実現することができる。例えば、図12はPWM制御を採用した制御回路1206を示し、図13はVFM制御を採用した制御回路1306を示している。いくつかの例では、制御回路1206は、図12に示すように、トランジスタQ10、Q11を駆動するための信号を供給する論理構成要素U3を含むことができる。同様に、制御回路1306は、図13に示すように、トランジスタQ8、Q9を駆動するためのクロック信号CLK(例えば、50%のデューティサイクルを有する)を供給する電圧制御発振器(VCO:Voltage-Controlled Oscillator)1350を含むことができる。
【0046】
制御回路1206、1306のいずれか1つを使用して、本明細書に開示する補助回路のいずれか1つにおけるスイッチング装置を制御することができる。例えば、図12のトランジスタQ10,Q11を、論理構成要素U3により制御することで、図3の補助回路304内のMOSFET Q4を制御するためのPWM制御信号を生成する。さらに、図13のトランジスタQ8,Q9を、VCO1350により制御することで、図3の補助回路304内のMOSFET Q4を制御するためのVFM制御信号を生成する。
【0047】
さらに、制御回路1206、1306は、それらの関連する補助回路の動作を停止させることができる。そのような例では、制御回路1206、1306は、補助回路の動作を停止させるためのイネーブル信号を受信、生成などをすることができる。例えば、図12の論理構成要素U3および図13のVCO1350は、イネーブル信号によって作動することができる。イネーブル信号が供給されない場合、論理構成要素U3およびVCO1350の動作を停止することができる。その結果、図12および図13のトランジスタQ8,Q9,Q10,Q11を駆動するための信号が供給されず、トランジスタQ8,Q9,Q10,Q11は、MOSFET Q4を制御するための制御信号を生成しない。このような例では、MOSFET Q4はオフのままとなり、補助回路304の動作を停止させて充電/放電プロセスを停止することができる。
【0048】
本明細書に開示した補助回路を使用することにより、電力コンバータ内のバルクコンデンサを短時間で効果的に加熱することができる。少なくとも部分的にその加熱により、バルクコンデンサ(例えば、電解コンデンサ)に関連するESR値を低減することができる。その結果、高いESR値(例えば、低温環境における)に起因する電力コンバータ内のリップル電圧、ノイズなどを最小限に抑えることができる。このように、補助回路により、過電圧保護の起動の防止、出力リップルの過剰仕様の削減、制御ループの安定性の向上が可能となる。
【0049】
実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提供されている。網羅的であること、または本開示を限定することを意図するものではない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されず、該当する場合には、交換可能であり、具体的に図示または説明されていなくても、選択された実施形態で使用することができる。同じことは、また多くの方法で変更されてもよい。そのような変形は、本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、すべてのそのような修正は、本開示の範囲内に含まれるよう意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13