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特許7598449音響装置、音響装置の制御方法およびプログラム
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  • 特許-音響装置、音響装置の制御方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】音響装置、音響装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
H04R3/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023516998
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017187
(87)【国際公開番号】W WO2022230170
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 実
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-76625(JP,A)
【文献】特開2012-34154(JP,A)
【文献】国際公開第2012/081054(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のチャンネルで再生される第一の楽曲と、第二のチャンネルで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するクロスフェーダーを備える音響装置であって、
前記第一の楽曲および前記第二の楽曲を構成する複数のパートにつき、前記クロスフェーダーの位置に応じ前記各パートのミキシングカーブを設定する設定部と、
前記ミキシングカーブに応じて、前記複数の各パートの前記音量バランスを制御する再生制御部とを備える音響装置。
【請求項2】
前記複数のパートは、前記第一の楽曲および前記第二の楽曲の各パートを楽曲分離したパートを含む、請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記複数のパートは、ドラム音のうち、少なくともバスドラム音に対応するパートを含む、請求項1または請求項2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記複数のパートのうち、第一のパートについて第一のミキシングカーブを設定し、前記第一のパートとは異なる第二のパートについて前記第一のミキシングカーブとは異なる第二のミキシングカーブを設定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項5】
前記第一のミキシングカーブは、前記音量バランスが徐々に変化するカーブであり、前記第二のミキシングカーブは、前記音量バランスが急峻に変化するカーブである、請求項4に記載の音響装置。
【請求項6】
前記第一のミキシングカーブまたは前記第二のミキシングカーブは、前記第一の楽曲および前記第二の楽曲の一方の音量が徐々に変化するとともに、他方の前記音量が急峻に変化するカーブである、請求項4に記載の音響装置。
【請求項7】
第一のチャンネルで再生される第一の楽曲と、第二のチャンネルで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するクロスフェーダーを備える音響装置の制御方法であって、
前記第一の楽曲および前記第二の楽曲を構成する複数のパートにつき、前記クロスフェーダーの位置に応じ前記各パートのミキシングカーブを設定するステップと、
前記ミキシングカーブに応じて、前記複数の各パートの前記音量バランスを制御するステップと
を含む音響装置の制御方法。
【請求項8】
第一のチャンネルで再生される第一の楽曲と、第二のチャンネルで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するクロスフェーダーを備える音響装置であって、
前記第一の楽曲および前記第二の楽曲を構成する複数のパートにつき、前記クロスフェーダーの位置に応じ前記各パートのミキシングカーブを設定する設定部と、
前記ミキシングカーブに応じて、前記複数の各パートの前記音量バランスを制御する再生制御部を備える音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置、音響装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DJコントローラー等のDJ機器は複数のデッキを備え、それぞれのデッキで楽曲を再生しつつ、デッキ間の音声出力を切り替えることにより、再生中の楽曲から他の楽曲への切り替えが行われている。DJ機器における楽曲の切り替えに際しては、DJ機器に設けられた複数のデッキの音量を調節するクロスフェーダーが用いられるが、自然な切り替えを行うためには巧みなユーザー操作が必要となる。
そこで、楽曲の切り替えを支援するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1の音響機器では、周波数帯域に着目して出力レベルを調整することにより、楽曲をミキシングする際の違和感の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6171503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した楽曲の切り替えに際しては、切り替え前後の楽曲のテンポを合わせる操作、再生中の楽曲に各種エフェクトを適用する操作、次に再生する楽曲の再生開始位置を選ぶ頭出し操作、クロスフェーダーによる切り替え操作等を楽曲リズムに合わせて正確に行う必要がある。このような一連の操作を行うためには、音楽に関する知識や経験が必要であるため、そのような知識や経験が少ないユーザーは楽曲の切り替えを伴うDJプレイを楽しむことが難しいという問題があった。
そこで、本発明は、音楽に関する知識や経験が少ないユーザーであっても、楽曲の切り替えにおいて簡便な操作で好ましい切り替え動作を行うことが可能な音響装置、音響装置の制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]第一のチャンネルで再生される第一の楽曲と、第二のチャンネルで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するクロスフェーダーを備える音響装置 であって、第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数パートにつき、クロスフェーダーの位置に応じ各パートのミキシングカーブを設定する設定部と、ミキシングカーブに応じて、複数の各パートの音量バランスを制御する再生制御部とを備える音響装置。
[2]複数のパートは、第一の楽曲および第二の楽曲の各パートを楽曲分離したパートを含む、[1]に記載の音響装置。
[3]複数のパートは、ドラム音のうち、少なくともバスドラム音に対応するパートを含む、[1]または[2]に記載の音響装置。
[4]設定部は、複数のパートのうち、第一のパートについて第一のミキシングカーブを設定し、第一のパートとは異なる第二のパートについて第一のミキシングカーブとは異なる第二のミキシングカーブを設定する、[1]から[3]のいずれかに記載の音響装置。
[5]第一のミキシングカーブは、音量バランスが徐々に変化するカーブであり、第二のミキシングカーブは、音量バランスが急峻に変化するカーブである、[4]に記載の音響装置。
[6]第一のミキシングカーブまたは第二のミキシングカーブは、第一の楽曲および第二の楽曲の一方の音量が徐々に変化するとともに、他方の音量が急峻に変化するカーブである、[4]に記載の音響装置。
[7]第一のチャンネルで再生される第一の楽曲と、第二のチャンネルで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するクロスフェーダーを備える音響装置の制御方法であって、第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートにつき、クロスフェーダーの位置に応じ各パートのミキシングカーブを設定するステップと、ミキシングカーブに応じて、複数の各パートの音量バランスを制御するステップとを含む音響装置の制御方法。
[8]第一のチャンネルで再生される第一の楽曲と、第二のチャンネルで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するクロスフェーダーを備える音響装置であって、第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートにつき、クロスフェーダーの位置に応じ各パートのミキシングカーブを設定する設定部と、ミキシングカーブに応じて、複数の各パートの前記音量バランスを制御する再生制御部を備える音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【0006】
上記の構成によれば、第一のチャンネルで再生される第一の楽曲と、第二のチャンネルで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するクロスフェーダーを備える音響装置であって、第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートにつき、クロスフェーダーの位置に応じ各パートのミキシングカーブを設定し、設定したミキシングカーブに応じて、複数の各パートの音量バランスを制御することによって、音楽に関する知識や経験が少ないユーザーであっても、楽曲の切り替えにおいて簡便な操作で好ましい切り替え動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態における音響装置を示す模式図である。
図2A】ミキシングカーブの例を示す図である。
図2B】ミキシングカーブの例を示す別の図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る音響装置の概略的な機能構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態における楽曲の切り替え処理について説明する模式図である。
図5】本発明の第1の実施形態における楽曲の切り替え処理について説明する別の模式図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る音響装置の制御方法を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態に係る音響装置の概略的な機能構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る音響装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における音響装置を示す模式図である。
本実施形態に係る音響装置1は、楽曲を再生する2つのプレイヤー2Aおよび2Bと、プレイヤー2Aおよび2Bを制御するミキサー3とが一体化したDJシステムである。具体的に、音響装置1は、ユーザーが操作をすることによって音響再生装置及び音響再生制御装置として機能し、楽曲を再生するとともに、再生中の楽曲に対して各種エフェクトを適用する。エフェクトには、例えばディレイ、エコー、リバーブ、またはループなどと呼ばれるエフェクトを楽曲に適用してエフェクト音を再生するエフェクト、および原音を加工して再生するエフェクト等が含まれる。
【0010】
音響装置1は、図1に示すように、プレイヤー2Aおよび2Bにそれぞれ設けられた操作部21Aおよび21Bと、ミキサー3に設けられた操作部31とを備える。
操作部21Aは、プレイヤー2Aに対するユーザー操作を受け付け、操作部21Bは、プレイヤー2Bに対するユーザー操作を受け付ける。また、操作部31は、ミキサー3に対するユーザー操作を受け付ける。
【0011】
操作部21Aは、ジョグダイヤル211A、テンポスライダー212A、キューボタン213A、プレイ/ポーズボタン214A、及びパフォーマンスパッド215Aを含む。
【0012】
より具体的には、ジョグダイヤル211Aは回転操作子であり、プレイヤー2Aで再生中の楽曲の再生方向や再生速度を設定する際に用いられる。テンポスライダー212Aは、プレイヤー2Aで再生中の楽曲の再生速度を調整する。キューボタン213Aは、楽曲の所定の位置をキューポイントとして設定する際に押下される。プレイ/ポーズボタン214Aは、プレイヤー2Aで楽曲の再生を開始、または停止する際に押下される。パフォーマンスパッド215Aは、再生制御に関する各種機能を割り当てることができる汎用性操作子である。
【0013】
操作部21Bは、操作部21Aと同様に、ジョグダイヤル211B、テンポスライダー212B、キューボタン213B、プレイ/ポーズボタン214B、及びパフォーマンスパッド215Bを含む。
音響装置1は、例えば、プレイヤー2Aの操作部21Aに対してユーザーによる操作が行われると、プレイヤー2Aにロードされた楽曲を再生するとともに、必要に応じて再生中の楽曲に対してエフェクトを適用する。プレイヤー2Bについても同様である。
【0014】
ミキサー3は、ユーザー操作に従って、プレイヤー2Aおよび2B間の楽曲再生の切り替え、各チャンネルの音量調整、及び、エフェクトを適用した再生を実行する。
ミキサー3の操作部31は、エフェクト選択つまみ311Aおよび311B、エフェクト量調整つまみ312Aおよび312B、チャンネルフェーダー313Aおよび313B、クロスフェーダー314、ミキシングカーブ調節ノブ315を含む。
【0015】
より具体的には、エフェクト選択つまみ311Aおよび311Bは、それぞれプレイヤー2Aおよび2Bで再生中の楽曲に適用するエフェクトを選択する際に用いられる。エフェクト量調整つまみ312Aおよび312Bは、それぞれプレイヤー2Aおよび2Bで再生中の楽曲に適用するエフェクトの深さ、大きさ等のパラメータを調整する際に用いられる。チャンネルフェーダー313Aおよび313Bは、それぞれプレイヤー2Aおよび2Bで再生中の楽曲の出力音量レベルを調整する際に用いられる。
【0016】
クロスフェーダー314は、第一のチャンネルであるプレイヤー2Aで再生される第一の楽曲と、第二のチャンネルであるプレイヤー2Bで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するための操作子である。
ミキシングカーブ調節ノブ315は、3つのノブを備える。そして、ミキシングカーブ調節ノブ315は、第一の楽曲および第二の楽曲の音量バランスを調節するクロスフェーダー314の動作位置と上述した音量バランスとの関係を示すミキシングカーブの設定に用いられる。本実施形態では、クロスフェーダー314の操作位置と上述した音量バランスとの関係を示すミキシングカーブの設定に用いられ、以下で説明するミキシングカーブ設定部を構成する。
【0017】
図2Aおよび図2Bは、ミキシングカーブ調節ノブ315によって設定されるミキシングカーブの例を示す。図2Aは、上述した音量バランスが徐々に変化するミキシングカーブを示す。ミキシングカーブ調節ノブ315によってクロスフェーダー314にこのようなミキシングカーブが設定された場合、クロスフェーダー314の操作位置を左から右、または右から左に変更すると、上述した音量バランスが徐々に変化する、いわゆるフェードインおよびフェードアウトによって楽曲の切り替えを行うことができる。
一方、図2Bは、上述した音量バランスが急峻に変化するミキシングカーブを示す。ミキシングカーブ調節ノブ315によってクロスフェーダー314にこのようなミキシングカーブが設定された場合、クロスフェーダー314の操作位置を左から右、または右から左に変更すると、ミキシングカーブの立ち上がり位置及び立下り位置で上述した音量バランスが急峻に変化することによって、いわゆるカットインおよびカットアウトに近い感覚で楽曲の切り替えが行われる。なお、図2Bにおいて、ミキシングカーブの立ち上がり位置および立下り位置は、それぞれカットインのタイミングおよびカットアウトのタイミングに相当する。ミキシングカーブ調節ノブ315によるミキシングカーブの設定処理の詳細については後述する。
なお、操作部21A、21B、および操作部31は、上述した各構成に加えて、ユーザーによる接触位置を検出するタッチパネル等をさらに備えてもよい。
【0018】
図3は、第1の実施形態に係る音響装置における処理部の概略的な機能構成を示すブロック図である。
音響装置1は、それぞれ上述した各部の他、図3に示すように、楽曲データ格納部4と、制御部5と、音声出力部6とを含む。上記の各部の機能は、例えばコンピュータのハードウェア構成を備える音響装置において、プロセッサがプログラムに従って動作することによって実現される。以下、各部の機能についてさらに説明する。
【0019】
楽曲データ格納部4は、HDD(Hard Disk Drive)またはフラッシュメモリー等により、楽曲データを格納可能に構成されている。楽曲データ格納部4には、複数の楽曲の楽曲データがMP3形式等の所定の形式で格納されている。楽曲データは、音声情報に加えて、例えば、楽曲のBPM、アートワーク、タイトル、アーティスト名、アルバム名、キー、DJプレイ回数及びジャンル等の情報をタグ情報として含む。楽曲データ格納部4に格納される楽曲データには、再生位置の情報であるタイムスタンプが対応付けられる。
【0020】
本実施形態において、楽曲データ格納部4に格納され、音響装置1において再生可能な楽曲データは、予め複数のパートへの分離処理が施されている。本実施形態において、楽曲データから分離される複数のパートは、楽曲データによって再生される楽曲のパートごとの音に対応する。ここで、楽曲のパートは、例えば、ボーカルまたは各楽器の音に対応し、単純な例ではボーカル、ギター、ベース、ドラムの4つのパートによって楽曲が構成される。さらに、例えばドラムにおけるバスドラム、スネアドラム、ハイハットなどのように楽器の種類ごとにさらにパートを細分化して分離することも有用である。この場合、分離対象の楽曲データから、バスドラム、スネアドラム、ハイハットの各パートへの直接的な分離処理が施されてもよいし、ドラムのパートを楽曲分離することによって各パートへの段階的な分離処理が施されてもよい。いずれの場合も、楽曲のパートは、楽曲を構成する各パートを楽曲分離したパート、例えば、楽曲を構成する各パートをさらに細分化し楽器を構成する一部分のパートを含む。このような複数のパートへの分離処理については、公知の各種の技術を利用可能であるため詳細な説明は省略する。
以下では、一例として、ボーカル音のパート、ドラム音のパート、およびベース音のパートの3つのパートへの分離処理が行われた楽曲データが楽曲データ格納部4に格納されているものとして説明を行う。なお、ベース音のパートとは、全体からボーカル音のパートおよびドラム音のパートを除いたパートを示す。なお、音響装置1は、既に分離処理が施された楽曲データを外部から取得してもよいし、未分離の楽曲データを複数のパートに分離する処理を実行する機能部分をさらに有してもよい。また、楽曲の切り替え区間についてのみ、分離処理が施された楽曲データを利用し、それ以外の区間については、未分離の楽曲データを利用する構成としてもよい。
【0021】
制御部5は、例えば通信インターフェース、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、及び、作業領域となるメモリーによって音響装置1に実装され、音響装置1の動作を制御する。制御部5は、プロセッサがメモリーに格納された、又は通信インターフェースを介して受信されたプログラムに従って動作することによって実現される受付部51と、ミキシングカーブ設定部52と、第1再生部53と、第2再生部54とを含む。
【0022】
受付部51は、操作部21A、21B、および操作部31に対するユーザー操作を検出して、ユーザー操作を受け付ける。そして、受付部51は、ユーザー操作の内容を示す情報を制御部5内の各部に供給する。
ミキシングカーブ設定部52は、カーブの異なる複数のミキシングカーブを予め記憶し、ミキシングカーブ調節ノブ315に対するユーザー操作に応じて、楽曲データの複数のパートにつきクロスフェーダー314の位置に応じミキシングカーブを設定する。
なお、ミキシングカーブ調節ノブ315によるミキシングカーブの設定は、例えば、ミキシングカーブ調節ノブ315が備える3つのノブのそれぞれに、上述したボーカル音のパート、ドラム音のパート、およびベース音のパートをアサインし、各ノブの操作量に応じてミキシングカーブの曲率を指定することによって行われてもよいし、他の方法で行われてもよい。例えば、ミキシングカーブの設定は、予め記憶された複数のミキシングカーブから何れかのミキシングカーブを楽曲データの複数のパートのそれぞれについて選択する形で行われてもよい。この場合、音響装置1においてミキシングカーブを設定する操作子は、ミキシングカーブのパターンを提示するディスプレイと、パターンの選択を受け付けるタッチパネルまたはボタンなどを含んでもよい。
また、ミキシングカーブの設定は、ミキシングカーブそのものではなく、ミキシングカーブを選択したことによって実現される楽曲の切り替え結果を楽曲データの複数のパートごとに指定する形で行われてもよい。楽曲の切り替え結果は、例えば、フェードインおよびフェードアウトで楽曲の切り替えを行うタイミング、フェードインおよびフェードアウトで切り替え後の楽曲が聴取され始めてから切り替え前の楽曲が聴取されなくなるまでの時間、フェードインおよびフェードアウトの中間点で均等になったときのそれぞれの楽曲の音量、カットインおよびカットアウトで楽曲の切り替えを行うタイミング、および切り替え後の楽曲のカットインから切り替え前の楽曲のカットアウトまでの時間等を含む。
【0023】
ミキシングカーブの設定においては、楽曲の切り替えの対象となる楽曲データについて、キューポイント等と関連付けて、上述した楽曲の切り替え結果を指定することにより、対象の楽曲データの特徴に応じた楽曲の切り替えが可能となる。このような詳細な設定は、例えば音響装置1に設けられたディスプレイおよびタッチパネルや、音響装置1に接続されたコンピュータを利用したりして演奏前に実施されてもよい。
ミキシングカーブ設定部52においては、複数のパートのうち、すべてのパートについてカーブの異なるミキシングカーブが設定されてもよいし、2以上のパートについて同一のミキシングカーブが設定されてもよい。
【0024】
第1再生部53は、操作部21Aおよび操作部31に対するユーザー操作に応じて、プレイヤー2Aにおける楽曲の再生を行い、音声信号を音声出力部6に出力する。同様に、第2再生部54は、操作部21B、および操作部31に対するユーザー操作に応じて、プレイヤー2Bにおける楽曲の再生を行い、音声信号を音声出力部6に出力する。なお、クロスフェーダー314が操作された場合、第1再生部53および第2再生部54は、ミキシングカーブ設定部52により設定されたミキシングカーブに応じて、第一の楽曲と第二の楽曲との音量バランスを複数のパートごとに調節することにより、プレイヤー2Aおよびプレイヤー2Bにおける楽曲を切り替えて再生する。
【0025】
なお、音響装置1は、通信インターフェースを備え、外部記憶装置およびコンピュータ等に記憶された楽曲データを、図示しない通信インターフェースを介して取得し、楽曲データ格納部4に格納する構成としてもよい。この場合、音響装置1には楽曲データ格納部4が含まれず、外部記憶装置が楽曲データ格納部4として機能する。
音声出力部6は、スピーカ端子またはヘッドフォン端子等の音声出力端子を備え、第1再生部53および第2再生部54により再生された楽曲の音声信号を音声情報として出力する。
【0026】
以上説明した音響装置1におけるクロスフェーダー314による楽曲の切り替え時の制御部5の動作について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る音響装置による楽曲の切り替え部分における1曲目(第一の楽曲)の楽曲データ、および2曲目(第二の楽曲)の楽曲データの例を示す。
従来、楽曲の切り替えに際しては、楽曲全体の音に対してクロスフェーダーに単一のミキシングカーブが設定されていた。そのため、クロスフェーダーに音量バランスが徐々に変化するミキシングカーブが設定され、フェードインおよびフェードアウトによって楽曲の切り替えが行われる場合、例えば、ドラム音については、第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音が重複して再生される区間が発生し、第一の楽曲と第二の楽曲との間のBPM差やドラムパターン等が相違してドラム音のピークに差異があると、切り替え時のドラム音がユーザーに違和感および不快感を与える場合があった。
また、クロスフェーダーに音量バランスが急峻に変化するミキシングカーブが設定され、カットインおよびカットアウトによって楽曲の切り替えが行われる場合、楽曲全体が突然変わることになり、ユーザーに唐突な印象を与えるという問題があった。
【0027】
図5は、第1の実施形態に係る音響装置による楽曲の切り替え処理について説明する模式図である。以下では、一例として、プレイヤー2Aからプレイヤー2Bへの楽曲の切り替えを例に挙げて説明する。
図5の例では、各パートに下記に示すミキシングカーブが設定されている。
ボーカル音のパート:第一の楽曲-フェードアウト、第二の楽曲-カットイン
ベース音のパート:第一の楽曲-フェードアウト、第二の楽曲-フェードイン
ドラム音のパート:第一の楽曲-カットアウト、第二の楽曲-カットイン
【0028】
ボーカル音のパートについては、メロディーや歌詞があることによって聴取者に連続性をもって捉えられることが多いパートであるため、カットインおよびカットアウトによって楽曲の切り替えを行うと、ユーザーに唐突な印象を与える場合がある。そこで、上記の例ではボーカル音のパートについて、第一の楽曲をフェードアウトし、第一の楽曲の音量が十分小さくなったタイミングで第二の楽曲をカットインすることにより、違和感を緩和しつつ、第二の楽曲の開始を鮮烈に演出することが可能となる。
ボーカル音のパートのミキシングカーブの設定に際しては、クロスフェーダー314の一方の端に相当する操作位置P1からクロスフェーダー314の他方の端に相当する操作位置P2において第一の楽曲をフェードアウトし、操作位置P2より操作位置P1寄りの操作位置P3において第二の楽曲をカットインする設定が行われる。なお、第二の楽曲のボーカル音のパートのカットインに関して、ユーザーの操作によっては、クロスフェーダー314の操作位置とカットインにふさわしい楽曲データ上の時刻にズレが発生する可能性がある。そこで、第二の楽曲のボーカル音のパートのカットインについては、予めキューポイントを設定しておき、操作位置P3の近傍で、キューポイントに合わせてカットインする構成としてもよい。また、例えば、ボーカル検出技術やリリック表示技術など公知の楽曲解析処理を行い、操作位置P3の近傍で、歌詞の切れ目や歌い出し等、カットインにふさわしいタイミングでカットインする構成としてもよい。
【0029】
ベース音のパートは、メロディー(ベースライン)があることによって聴取者に連続性をもって捉えられることが多いパートであるため、カットインおよびカットアウトによって楽曲の切り替えを行うと、ユーザーに唐突な印象を与える場合がある。その一方で、ベース音のパートには歌詞がないため、例えばそれぞれの楽曲のキーが同じ、またはキーの相性が良ければ重なって聞こえてもボーカル音のパートのような違和感はないことが多い。そこで、ベース音のパートについては、第一の楽曲をフェードアウトするとともに、第二の楽曲をフェードインすることにより、違和感なく自然に楽曲の切り替えを行うことが可能となる。また、ベース音のパートについてはカットインおよびカットアウトを適用しないことにより、楽曲の切り替え時に無音状態が発生するのを防ぐ効果も期待できる。
ベース音のパートのミキシングカーブの設定に際しては、操作位置P1から操作位置P2にかけて第一の楽曲をフェードアウトするとともに第二の楽曲をフェードインする設定が行われる。
【0030】
ドラム音のパートについては、音量のレベルが大きく、また楽曲ごとにパターンが異なり、さらには特にバスドラムにおけるアタック音からピーク音までのディレイが楽曲ごとに大きく異なる。そのため、ドラム音のパートについてフェードインおよびフェードアウトによって楽曲の切り替えを行うと、上述したようにユーザーに違和感および不快感を与える場合がある。一方、ドラム音のパートにはメロディーや歌詞がないため、聴取者に連続性をもって捉えられることは少ない。そこで、ドラム音のパートについては、第一の楽曲をカットアウトするとともに、第二の楽曲をカットインすることにより、違和感を緩和しつつ、楽曲の切り替えを行うことが可能となる。
ドラム音のパートのミキシングカーブの設定に際しては、操作位置P1と操作位置P2との間の操作位置P4において第一の楽曲をカットアウトするとともに、第二の楽曲をカットインする設定が行われる。なお、第二の楽曲のカットインに関しては、第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のタイミングによっては、ドラム音が重複したり、不自然なリズムでカットインおよびカットアウトが行われたりする可能性がある。そこで、第二の楽曲のドラム音のパートのカットインについては、拍位置検出や小節位置検出、ドラム音のパートのアタック検出などの技術を用いて、第二の楽曲におけるドラム音の適切な位置から再生させることにより、より自然な切り替え動作を行うことができる。
【0031】
再び図5を参照して、プレイヤー2Aでの楽曲の再生中に、時刻t1でクロスフェーダー314の操作が開始されると、制御部5は、ミキシングカーブ設定部52により設定されたミキシングカーブに応じて、プレイヤー2Aで再生中の第一の楽曲およびプレイヤー2Bで次に再生する第二の楽曲のそれぞれについて、各パートの音量バランスを制御する。第1再生部53は、第一の楽曲のうち、ボーカル音のパートおよびベース音のパートの音量を徐々に下げ、第2再生部54は、第二の楽曲のうち、ベース音のパートの音量を徐々に上げる。
時刻t2において、クロスフェーダー314が操作位置P4に操作されると、第1再生部53は、第一の楽曲のうち、ドラム音のパートをカットアウトし、第2再生部54は、第二の楽曲のうち、ドラム音のパートをカットインする。この時、第2再生部54は、上述したように、操作位置P4にクロスフェーダー314が操作されてから所定の時間が経過してからカットインしてもよい。
【0032】
時刻t3において、クロスフェーダー314が操作位置P3に操作されると、第2再生部54は、第二の楽曲のうち、ボーカル音のパートをカットインする。この時、第2再生部54は、上述したように、予め設定されたキューポイントに合わせてカットインしてもよいし、時刻t3の近傍で、予め設定されたキューポイント、およびボーカル検出技術やリリック表示技術など公知の楽曲解析処理に基づく歌詞の切れ目や歌い出し等、カットインにふさわしいタイミングでカットインしてもよい。
時刻t4において、クロスフェーダー314が操作位置P2に操作されることにより、楽曲の切り替え処理が終了する。
【0033】
以上説明したように、プレイヤー2Aからプレイヤー2Bへの楽曲の切り替えを行う際に、ユーザーがクロスフェーダー314を操作すると、ボーカル音のパートについては、フェードアウトおよびカットインで楽曲の切り替えが行われ、ベース音のパートについては、フェードアウトおよびフェードインで楽曲の切り替えが行われ、ドラム音のパートについては、カットアウトおよびカットインで楽曲の切り替えが行われる。つまり、楽曲を構成するパートのそれぞれについて、予め好適なミキシングカーブを設定しておくことにより、ユーザーがクロスフェーダー314を操作するだけで、楽曲の切り替えにおいて好ましい切り替え動作を実現することができる。特に、簡便な操作で、各パートの特性を鑑みた自然な楽曲の切り替えや、演出効果の高い楽曲の切り替えを実現することができる。
【0034】
なお、図5の例で示したミキシングカーブは、一例であり、この例に限定されない。例えば、図5の例では、各パートに異なるミキシングカーブを設定する例を示したが、2以上のパートに同じミキシングカーブを設定してもよい。また、図5の例では、ボーカル音のパートおよびドラム音のパートについて、異なるタイミングでカットインおよびカットアウトするミキシングカーブを設定する例を示したが、同じタイミングでカットインおよびカットアウトするミキシングカーブを設定してもよい。
【0035】
次に、図6のフローチャートを参照して、第1の実施形態における音響装置の制御方法について説明する。
図6には、受付部51がミキシングカーブ調節ノブ315に対する操作を受け付けた時に開始される処理のフローチャートが示されている。
まず、ミキシングカーブ設定部52が第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートのそれぞれについてミキシングカーブを設定する(ステップS101)。
そして、クロスフェーダー314が操作されると(ステップS102YES)、第1再生部53および第2再生部54は、クロスフェーダー314の操作位置と、ミキシングカーブ設定部52により設定されたミキシングカーブとに応じて、各パートの音量バランスを制御することにより、プレイヤー2Aおよびプレイヤー2Bにおける楽曲の再生を行う(ステップS103)。
第1再生部53および第2再生部54は、クロスフェーダー314の操作が終了する(ステップS104YES)までステップS103の処理を継続する。
なお、図5および図6では、プレイヤー2Aからプレイヤー2Bへの楽曲の切り替えを例に挙げて説明したが、プレイヤー2Bからプレイヤー2Aへの楽曲の切り替えについても同様の処理が行われる
【0036】
以上で説明したような本発明の第1の実施形態によれば、第一のチャンネルで再生される第一の楽曲と、第二のチャンネルで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するクロスフェーダーを備える音響装置において、第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートにつき、クロスフェーダーの位置に応じ各パートのミキシングカーブを設定し、設定したミキシングカーブに応じて、複数の各パートの音量バランスを制御する。したがって、楽曲を構成する複数のパートのそれぞれについて、特性に応じたミキシングカーブをアサインすることができる。また、切り替え前後の楽曲の選択において、音楽に関する知識や経験を必要としない。また、音楽に関する知識や経験が少ないユーザーであっても、楽曲の切り替えにおいて簡便な操作で好ましい切り替え動作を行うことができる。したがって、知識や経験が少ないユーザーであっても、楽曲の切り替えを伴うDJプレイを楽しむことができる。
また、本発明の第1の実施形態によれば、複数のパートは、第一の楽曲および第二の楽曲の各パートを楽曲分離したパートを含む。したがって、各パートの詳細に応じて、特性に応じたミキシングカーブを設定することができる。
【0037】
また、本発明の第1の実施形態によれば、複数のパートは、ドラム音のうち、少なくともバスドラム音に対応するパートを含む。したがって、ユーザーに違和感および不快感を与える可能性が高いドラム音のパートについて、その特性を生かした楽曲の切り替えを行うことができる。なお、ドラム音のパートにおいては、バスドラム、スネアドラム、ハイハットをそれぞれ分離し、それぞれの特性を生かした楽曲の切り替えを行うことが有用である。バスドラム音のパートを分離し、その特性を生かした楽曲の切り替えを行うことは特に有用である。
また、本発明の第1の実施形態によれば、複数のパートのうち、第一のパートについて第一のミキシングカーブを設定し、第一のパートとは異なる第二のパートについて第一のミキシングカーブとは異なる第二のミキシングカーブを設定する。したがって、楽曲を構成する複数のパートのそれぞれについて、特性に応じた切り替えタイミングおよび切り替え方法を設定することができる。
また、本発明の第1の実施形態によれば、第一のミキシングカーブは、音量バランスが徐々に変化するカーブであり、第二のミキシングカーブは、音量バランスが急峻に変化するカーブである。したがって、楽曲を構成する複数のパートごとに、好適な楽曲の切り替え方法を設定することができる。
また、本発明の第1の実施形態によれば、第一のミキシングカーブまたは第二のミキシングカーブは、第一の楽曲および第二の楽曲の一方の音量が徐々に変化するとともに、他方の音量が急峻に変化するカーブである。したがって、楽曲を構成する複数のパートごとに、好適な楽曲の切り替え方法を設定することができる。
【0038】
なお、第1の実施形態で説明した操作子は一例であり、本実施形態に限定されない。例えば、クロスフェーダー314に代えて、チャンネルフェーダー313Aおよび313Bによって楽曲の切り替えを行う場合にも、本発明を同様に適用することができる。また、例えば、音響装置1の既存の操作子に、クロスフェーダー314で説明した機能と同様の機能をアサインしてもよいし、クロスフェーダー314以外に専用の操作子を音響装置1に備え、クロスフェーダー314で説明した機能と同様の機能をアサインしてもよい。
さらに、クロスフェーダー314等の操作子に限定されず、GUI(Graphical User Interface)等によりソフトウェア的に構成される操作子についても同様に本発明を適用することができる。さらに、オートミックス処理等、操作子を必要としないプログラム的な楽曲の切り替え(クロスフェード動作)にも同様に本発明を適用することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の部分については説明を省略する。
図7は、第2の実施形態に係る音響装置の概略的な機能構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る音響装置10は、DJアプリケーショを実行するコンピュータ、スマートフォン、およびタブレット端末により構成される。
音響装置10は、操作部11、表示部12、楽曲データ格納部13、制御部14、および音声出力部15の各部を含む。各部の機能は、例えばコンピュータのハードウェア構成を備える音響装置10において、プロセッサがプログラムに従って動作することによって実現される。以下、各部の機能についてさらに説明する。
操作部11は、キーボートやタッチパネルなどを備え、第1の実施形態の操作部21A、21B、および操作部31と同様に、ユーザー操作を受け付ける。表示部12は、ディスプレイを備える。楽曲データ格納部13は、第1の実施形態の楽曲データ格納部4と同様であるため説明を省略する。
【0040】
制御部14は、第1の実施形態と同様に、プロセッサがメモリーに格納された、又は通信インターフェースを介して受信されたプログラムに従って動作することによって実現されるミキシングカーブ設定部141と、第1再生部142と、第2再生部143とを含む。
ミキシングカーブ設定部141は、楽曲データの複数のパートのそれぞれにミキシングカーブを設定する。なお、第1の実施形態のミキシングカーブ設定部52では、クロスフェーダー314の操作位置と第一の楽曲および第二の楽曲の音量バランスとの関係を示すミキシングカーブを設定する例を示した。しかし、本実施形態において、ミキシングカーブ設定部141は、楽曲データの複数のパートのそれぞれについて、第一の楽曲および第二の楽曲の音量バランスを調節する際の位置と音量バランスとの関係を示すミキシングカーブを設定する。本実施形態における第一の楽曲および第二の楽曲の音量バランスを調節する際の位置は、例えば、自動で楽曲の切り替えを行うオートミックス処理における位置(時刻)を示し、このミキシングカーブは、第1の実施形態で説明した各ミキシングカーブと同様の特徴を有する。
【0041】
ミキシングカーブ設定部141におけるミキシングカーブの設定は、第1の実施形態と同様に、予め記憶された複数のミキシングカーブから何れかのミキシングカーブを楽曲データの各パートについて選択する形で行われてもよい。また、第1の実施形態と同様に、ミキシングカーブそのものではなく、ミキシングカーブを選択したことによって実現される楽曲の切り替え結果を楽曲データの各パートについて指定する形で行われてもよい。
第1再生部142および第2再生部143は、それぞれ第1の実施形態の第1再生部53および第2再生部54と同様の機能構成を有する。
音声出力部15は、スピーカ端子またはヘッドフォン端子等の音声出力端子を備え、第1再生部142および第2再生部143により再生された楽曲の音声信号を音声情報として出力する。
【0042】
なお、音響装置10は、通信インターフェースを備え、外部記憶装置およびコンピュータ等に記憶された楽曲データを、図示しない通信インターフェースを介して取得し、楽曲データ格納部13に格納する構成としてもよい。この場合、音響装置10には楽曲データ格納部13が含まれず、外部記憶装置が楽曲データ格納部13として機能する。
また、音響装置10の少なくとも一部を、インターネット通信網や、無線によって通信可能に接続されたサーバ(例えば、クラウドサーバ)装置に分離して実装してもよい。
【0043】
次に、図8のフローチャートを参照して、第2の実施形態における音響装置の制御方法について説明する。
図8には、オートミックス処理の開始指示を受け付けた時に開始される処理のフローチャートが示されている。なお、オートミックス処理に関しては、予めミキシングカーブ設定部141が第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートの各パートにミキシングカーブを設定する。
オートミックス処理が開始されると(ステップS201YES)、第1再生部142および第2再生部143は、ミキシングカーブ設定部141により設定されたミキシングカーブに応じて、各パートの音量バランスを制御することにより、プレイヤー2Aおよびプレイヤー2Bにおける楽曲の再生を行う(ステップS202)。
第1再生部142および第2再生部143は、オートミックス処理が終了する(ステップS203YES)までステップS202の処理を継続する。
【0044】
以上で説明したような本発明の第2の実施形態によれば、クロスフェーダー部材を備えない音響装置においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、オートミックス処理においては、カットインおよびカットアウト等のタイミングの設定を詳細かつ簡便に行うことができるとともに、例えば、第一の楽曲と第二の楽曲のテンポ(BPM)の差に応じて第二の楽曲のテンポ(BPM)を調整するなど、より自由度の高い楽曲の切り替えを行うことができる。
【0045】
なお、上記の各実施形態では、第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートとして、ボーカル音のパート、ドラム音のパート、およびベース音のパートの3つのパートを例示したが、これは一例であり、これらの実施形態に限定されない。例えば、ピアノ音のパートなど、上述した3つのパート以外のパートについても同様の処理を行うことが可能である。
【0046】
また、上記の各実施形態で説明したミキシングカーブは一例であり、これらの実施形態に限定されない。例えば、左右非対称なミキシングカーブ等についても、同様に利用することが可能である。
【0047】
また、上記のような機能をもった音響装置は上記の各実施形態で説明した例に限らず、例えばミキサー、ミキサー機能を備えたDJコントローラー等であってもよい。また、DJ機器およびDJアプリケーションに限らず、音楽アプリケーションやインターネットを利用したストリーミングサービス等に本発明を適用してもよい。このような場合、例えばプレイリスト等を利用した自動再生等に、本発明を適用可能である。
また、上記の各実施形態では2つのプレイヤー2Aおよび2Bを有する2チャンネルの音響装置が説明されたが、例えば4チャンネルの音響装置でも同様の機能が実現可能である。また、本発明はDJ機器に限らず、一般的なミキサーや電子楽器、さらにはDAW(Digital Audio Workstation)やDTM(Desk Top Music)といった音響装置にも適用可能である。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
1,10…音響装置、2A,2B…プレイヤー、3…ミキサー、4,13…楽曲データ格納部、5,14…制御部、6,15…音声出力部、11,21A,21B,31…操作部、51…受付部、52,141…ミキシングカーブ設定部、53,142…第1再生部、54,143…第2再生部、211A,211B…ジョグダイヤル、212A,212B…テンポスライダー、213A,213B…キューボタン、214A,214B…プレイ/ポーズボタン、215A,215B…パフォーマンスパッド、311A,311B…エフェクト選択つまみ、312A,312B…エフェクト量調整つまみ、313A,313B…チャンネルフェーダー、314…クロスフェーダー、315…ミキシングカーブ調節ノブ。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8