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特許7598456ジルコニア樹脂型分散液、UV硬化型接着剤、その調製方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ジルコニア樹脂型分散液、UV硬化型接着剤、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20241204BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20241204BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20241204BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241204BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241204BHJP
   C08L 51/10 20060101ALI20241204BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20241204BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241204BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08F20/18
C08F292/00
C08K3/013
C08L33/04
C08L51/10
C09J4/02
C09J11/04
C01G25/02
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023523661
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2022119074
(87)【国際公開番号】W WO2023216486
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】202210491296.6
(32)【優先日】2022-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519094927
【氏名又は名称】山東国瓷功能材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG SINOCERA FUNCTIONAL MATERIAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋 錫濱
(72)【発明者】
【氏名】馬 海洋
(72)【発明者】
【氏名】艾 遼東
(72)【発明者】
【氏名】奚 洪亮
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231949(JP,A)
【文献】特開2013-184830(JP,A)
【文献】特開2016-175804(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146409(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/175159(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/173574(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113773691(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/44
C08F 20/18
C08F 20/30
C08F 292/00
C08K 3/013
C08L 33/04
C08L 51/10
C09J 4/02
C09J 11/04
C01G 25/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質ジルコニア粒子と樹脂とを含み、
前記改質ジルコニア粒子の表面に水素結合供与基を有し、前記改質ジルコニア粒子を形成するジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が1~20wt%であり、
前記ジルコニア粒子の表面の水素結合供与基は、改質剤により導入された改質剤由来部分であり、
前記改質剤は、3,6-ジオキサオクタン二酸、HO-PEG3-CH2COOH、チオジプロピオン酸および3,3′-ジチオジプロピオン酸の少なくとも1種を含み、
前記樹脂は、フェノキシベンジルアクリレート、4-ビフェニルメチルアクリレート、ベンジルアクリレートおよびo-フェニルフェノキシエチルアクリレートの少なくとも1種を含む
ことを特徴とするジルコニア樹脂型分散液。
【請求項2】
前記ジルコニア粒子の粒径D90は、1~30nmである
ことを特徴とする請求項1に記載のジルコニア樹脂型分散液。
【請求項3】
ジルコニア粒子を有機溶剤に入れて混合し、そして改質剤、カオトロピック剤を添加してジルコニア粒子を改質し、溶液Aを得るステップ(a)と、
溶液Aと樹脂とを混合し、そして蒸発により有機溶剤を除去し、ジルコニア樹脂型分散液を得るステップ(b)とを含み、
前記溶液Aには表面に水素結合供与基を有する改質ジルコニア粒子が含まれる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のジルコニア樹脂型分散液の調製方法。
【請求項4】
前記有機溶剤は、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、ハロゲン化炭化水素系有機溶剤およびシクロアルカン系有機溶剤の少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項に記載のジルコニア樹脂型分散液の調製方法。
【請求項5】
前記有機溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートである
ことを特徴とする請求項に記載のジルコニア樹脂型分散液の調製方法。
【請求項6】
前記ジルコニア粒子と有機溶剤の質量比は、1:1~4である
ことを特徴とする請求項に記載のジルコニア樹脂型分散液の調製方法。
【請求項7】
前記ジルコニア粒子と有機溶剤の質量比は、1:2である
ことを特徴とする請求項に記載のジルコニア樹脂型分散液の調製方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)において改質剤の添加量がジルコニア粒子の質量の10~30wt%である
ことを特徴とする請求項に記載のジルコニア樹脂型分散液の調製方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)においてカオトロピック剤の添加量がジルコニア粒子の質量の1~10wt%である
ことを特徴とする請求項に記載のジルコニア樹脂型分散液の調製方法。
【請求項10】
前記カオトロピック剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリコ一ルオレ一ト、ポリエチレングリコールラウレートおよびポリエチレングリコールステアレートの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項に記載のジルコニア樹脂型分散液の調製方法。
【請求項11】
前記ジルコニア樹脂型分散液における改質ジルコニア粒子の含有量が50~78wt%である
ことを特徴とする請求項に記載のジルコニア樹脂型分散液の調製方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載のジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂とを含み、
前記ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の溶解パラメータの差が0.8以下である
ことを特徴とするUV硬化型接着剤。
【請求項13】
前記ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の混合質量比は、0.5~3:1である
ことを特徴とする請求項12に記載のUV硬化型接着剤。
【請求項14】
前記ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の混合質量比は、1:1である
ことを特徴とする請求項12に記載のUV硬化型接着剤。
【請求項15】
前記アルコキシビスフェノールA樹脂は、エトキシ化(2)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(8)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(20)ビスフェノールAジアクリレートおよびエトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレートの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項12に記載のUV硬化型接着剤。
【請求項16】
前記アルコキシビスフェノールA樹脂は、エトキシ化(20)ビスフェノールAジアクリレート樹脂である
ことを特徴とする請求項12に記載のUV硬化型接着剤。
【請求項17】
前記アルコキシビスフェノールA樹脂は、EO変性ビスフェノールAジアクリレートである
ことを特徴とする請求項12に記載のUV硬化型接着剤。
【請求項18】
光学薄膜の調製において、請求項1または2に記載のジルコニア樹脂型分散液を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学薄膜調製技術の分野に属し、特に、ジルコニア樹脂型分散液、UV硬化型接着剤、その調製方法および使用に関する。
関係出願の相互参照
【0002】
本出願は、2022年05月07日に中国専利局に提出された、出願番号が202210491296.6であり、名称が「ジルコニア樹脂型分散液、UV硬化型接着剤、その調製方法および使用」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本出願に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、ジルコニア粒子分散体と透明樹脂または薄膜とを組み合わせることにより得た樹脂型ジルコニア分散液は、光学分野においてよく適用されている。例えば、ジルコニア樹脂型分散液を利用して調製できた輝度向上フイルムおよび反射防止フイルムなどの光学フイルムは、LCD表示器に使用され、画面の輝度および解像度を高めることができる。上記の使用において、このような材料は、比較的高い屈折率および比較的低い粘度が要求されるだけでなく、光学フイルムの表面に均一に塗布可能なUV硬化型接着剤を調製できるように、樹脂と混合した後の樹脂との良好な相溶性も要求される。したがって、市場の要求を満たすため、樹脂と混合した後の樹脂との相溶性が良好でありながら、光透過率が比較的高いジルコニア樹脂型分散液を調製することはとても重要である。
【0004】
今まで、いくつかの樹脂型分散液が調製できたが、ほとんど樹脂との相溶性が劣る問題があるため、表示関連分野に使用されるときにその効果に影響を与える。例えば、特許CN106268394Bにはジルコニア分散液およびその樹脂組成物の調製方法が開示され、ジルコニア水分散液の含有量が20重量%以上である場合、400nmの波長における透過率が35%以上であり、800nmの波長における透過率が95%以上であり、25℃の温度における粘度が20mPa・s以下である。しかしながら、その開示にはジルコニア樹脂型分散液の相溶性および安定性に関する内容が言及されなかった。実際の製造において、実験により、上記のジルコニア分散液の、アルコキシビスフェノールA樹脂(BPA樹脂)との相溶性が比較的劣ることが示されている。
【0005】
ジルコニア樹脂型分散液は、有機-無機複合系であり、各成分が互いに影響し、影響因子が複雑である。その相溶性および安定性がその下流側の使用にとって重要であるため、プロセスが簡単で、系における各指標の調和が取れ、相溶性および安定性が良好である樹脂型分散液を開発することは、下流側の生産にとって重要である。
【0006】
これに鑑みて、本開示を提出する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、従来技術に存在する技術的問題の1つを少なくとも改善できる、ジルコニア樹脂型分散液およびその調製方法を提供することを目的とする。
【0008】
本開示の上記の目的の少なくとも1つを実現するため、特に下記の技術案を採用する。
【0009】
本開示は、ジルコニア樹脂型分散液を提供する。前記ジルコニア樹脂型分散液は、主に改質ジルコニア粒子と樹脂とから構成され、前記改質ジルコニア粒子の表面に水素結合供与基を有し、前記改質ジルコニア粒子を形成するジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が1~20wt%である。
【0010】
任意で、前記ジルコニア粒子の表面の水素結合供与基は、主に改質剤により導入され、前記改質剤の一般式は、R-A-X(I)であり、式(I)において、Rは、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基、置換もしくは無置換の芳香環、置換もしくは無置換のアクリロイルオキシ基であり、Aは、アルコキシ基セグメント、スルフィドセグメントまたは芳香族エーテルセグメントであり、Xは、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基である。
【0011】
好ましくは、前記改質剤は、3,6‐ジオキサオクタン二酸、HO-PEG3-CH2COOH(CAS番号:51951-05-4)、チオジプロピオン酸および3,3′-ジチオジプロピオン酸の少なくとも1種を含む。
【0012】
任意で、前記樹脂は、フェノキシベンジルアクリレート、4-ビフェニルメチルアクリレート、ベンジルアクリレートおよびo-フェニルフェノキシエチルアクリレートの少なくとも1種を含む。
【0013】
好ましくは、前記ジルコニア粒子の粒径(D90)は、1~30nmである。
【0014】
本開示は、上記のジルコニア樹脂型分散液の調製方法をさらに提供する。前記調製方法は、ジルコニア粒子を有機溶剤に入れて均一に混合し、そして改質剤、カオトロピック剤を添加してジルコニア粒子を改質し、溶液Aを得るステップ(a)と、溶液Aと樹脂とを均一に混合し、そして蒸発により有機溶剤を除去し、ジルコニア樹脂型分散液を得るステップ(b)とを含み、前記溶液Aには表面に水素結合供与基を有する改質ジルコニア粒子が含まれる。
【0015】
任意で、前記有機溶剤は、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、ハロゲン化炭化水素系有機溶剤およびシクロアルカン系有機溶剤の少なくとも1種を含み、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0016】
好ましくは、前記ジルコニア粒子と有機溶剤の質量比は、1:1~4であり、1:2が好ましい。
【0017】
任意で、前記ステップ(a)において改質剤の添加量がジルコニア粒子の質量の10~30wt%である。
【0018】
好ましくは、前記ステップ(a)においてカオトロピック剤の添加量がジルコニア粒子の質量の1~10wt%である。
【0019】
より好ましくは、前記カオトロピック剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリコ一ルオレ一ト、ポリエチレングリコールラウレートおよびポリエチレングリコールステアレートの少なくとも1種を含む。
【0020】
任意で、前記ジルコニア樹脂型分散液における改質ジルコニア粒子の含有量が50~78wt%である。
【0021】
本開示は、UV硬化型接着剤をさらに提供する。前記UV硬化型接着剤は、主に上記のジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂とを均一に混合することにより調製されるものであり、前記ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の溶解パラメータの差が0.8以下である。
【0022】
好ましくは、前記ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の混合質量比は、0.5~3:1であり、1:1が好ましい。
【0023】
任意で、前記アルコキシビスフェノールA樹脂は、エトキシ化(2)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(8)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(20)ビスフェノールAジアクリレートおよびエトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート樹脂の少なくとも1種を含み、エトキシ化(20)ビスフェノールAジアクリレート樹脂が好ましい。
【0024】
より好ましくは、前記アルコキシビスフェノールA樹脂は、EO変性ビスフェノールAジアクリレート(Bisphenol A (EO)20 Diacrylate、CAS番号:64401-02-1、商品名:KOMERATE D200)である。
【0025】
本開示は、光学薄膜の調製における、上記のジルコニア樹脂型分散液および上記のUV硬化型接着剤のそれぞれの使用を提供する。
【0026】
従来技術に比べて、本開示は、下記の有益な効果を有する。
【0027】
本開示に係るジルコニア樹脂型分散液について、前記ジルコニア樹脂型分散液は、主に改質ジルコニア粒子と樹脂とから構成され、前記改質ジルコニア粒子の表面に水素結合供与基を有し、前記ジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が1~20wt%である。上記のジルコニア樹脂型分散液における改質ジルコニア粒子は、表面への水素結合供与基の導入によれば、ジルコニア粒子の脂溶性を高めることができるとともに、水素結合供与基とアルコキシビスフェノールA樹脂(BPA樹脂)との間で水素結合が互いに作用するので、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂との相溶性および安定性を高めることができる。
【0028】
本開示に係るジルコニア樹脂型分散液の調製方法について、前記調製方法は、まずジルコニア粒子を有機溶剤に入れて均一に混合し、そして改質剤、カオトロピック剤を添加してジルコニア粒子を改質し、溶液Aを得、さらに溶液Aと樹脂とを均一に混合し、そして蒸発により有機溶剤を除去し、ジルコニア樹脂型分散液を得る。上記の調製方法は、直接最も簡単なプロセスによりジルコニア粉体を有機溶剤に添加することができ、プロセスのステップを大幅に減らし、コストを削減することができ、プロセスが簡単で、操作が容易であるメリットを有する。
【0029】
本開示に係るUV硬化型接着剤は、主に上記のジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂とを均一に混合することにより調製されるものであり、前記ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の溶解パラメータの差が0.8以下である。したがって、ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂とは、相溶性および安定性が良好である。
【0030】
本開示に係るジルコニア樹脂型分散液、UV硬化型接着剤は、光学薄膜の調製に広く使用されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施例を参照しながら、本開示の技術案を明瞭かつ完全に説明する。説明する実施例は、本開示の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではない。本開示の実施例をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施例も、本開示の保護範囲に属する。
【0032】
本開示の一局面として、ジルコニア樹脂型分散液を提供する。前記ジルコニア樹脂型分散液は、主に改質ジルコニア粒子と樹脂とから構成される。
【0033】
前記改質ジルコニア粒子の表面に水素結合供与基を有し、前記改質ジルコニア粒子を形成するジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が1~20wt%である。
【0034】
本開示に係るジルコニア樹脂型分散液は、主に改質ジルコニア粒子と樹脂とから構成される。前記改質ジルコニア粒子の表面に水素結合供与基を有し、前記ジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が1~20wt%である。上記のジルコニア樹脂型分散液における改質ジルコニア粒子は、表面への水素結合供与基の導入により、ジルコニア粒子の脂溶性を高めることができるとともに、水素結合供与基とアルコキシビスフェノールA樹脂(BPA樹脂)との間で水素結合が互いに作用するので、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂との相溶性および安定性を高めることができる。
【0035】
本開示の好ましい一実施形態において、前記ジルコニア粒子の表面の水素結合供与基は、主に改質剤により導入される。
【0036】
前記改質剤の一般式は、R-A-X(I)であり、式(I)において、Rは、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基、置換もしくは無置換の芳香環、置換もしくは無置換のアクリロイルオキシ基であり、Aは、アルコキシ基セグメント、スルフィドセグメントまたは芳香族エーテルセグメントであり、Xは、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基である。
【0037】
好ましくは、前記改質剤は、3,6‐ジオキサオクタン二酸、HO-PEG3-CH2COOH(CAS番号:51951-05-4)、チオジプロピオン酸および3,3′-ジチオジプロピオン酸の少なくとも1種を含む。
【0038】
好ましい一実施形態として、上記の改質剤のグラフトは、ジルコニア粒子の脂溶性を高めることができるとともに、ジルコニアの表面に水素結合供与基を導入することができる。水素結合供与基とBPA樹脂との間で水素結合が互いに作用するので、水素結合供与基とBPA樹脂との相溶性を高めることができる。
【0039】
本開示の好ましい一実施形態において、前記樹脂は、フェノキシベンジルアクリレート(Phenoxy benzyl acrylate、CAS番号:409325-06-0)、4-ビフェニルメチルアクリレート(4-Biphenylylmethyl acrylate、CAS番号:54140-58-8)、ベンジルアクリレート(Benzylacrylate)およびo-フェニルフェノキシエチルアクリレート(o-phenylphenol EO Acrylate)の少なくとも1種を含む。
【0040】
本開示の好ましい一実施形態において、前記ジルコニア粒子の粒径(D90)は、1~30nmである。
【0041】
好ましい一実施形態として、上記のジルコニア粒子は、粒径(D90)が1~30nmであり、水素結合供与基を含む改質剤の作用により、BPA樹脂との相溶性が良好で、溶解パラメータの差が0.1~0.8である。混合して得た系は、安定性が高く、常温遮光の条件下で7ヶ月以上静置しても析出現象の発生がない。
【0042】
本開示の一局面として、上記のジルコニア樹脂型分散液の調製方法を提供する。前記調製方法は、下記のステップを含む。
【0043】
ステップ(a)において、ジルコニア粒子を有機溶剤に入れて均一に混合し、そして改質剤、カオトロピック剤を添加してジルコニア粒子を改質し、溶液Aを得、前記溶液Aには表面に水素結合供与基を有する改質ジルコニア粒子が含まれる。
【0044】
ステップ(b)において、溶液Aと樹脂とを均一に混合し、そして蒸発により有機溶剤を除去し、ジルコニア樹脂型分散液を得る。
【0045】
本開示に係るジルコニア樹脂型分散液の調製方法は、まずジルコニア粒子を有機溶剤に入れて均一に混合し、そして改質剤、カオトロピック剤を添加してジルコニア粒子を改質し、溶液Aを得、さらに溶液Aと樹脂とを均一に混合し、そして蒸発により有機溶剤を除去し、ジルコニア樹脂型分散液を得る。上記の調製方法において、最も簡単な作業で直接にジルコニア粉体を有機溶剤に入れるので、プロセスのステップを大幅に減らし、コストを削減することができ、プロセスが簡単で、操作が容易であるメリットを有する。
【0046】
本開示の好ましい一実施形態において、前記有機溶剤は、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、ハロゲン化炭化水素系有機溶剤およびシクロアルカン系有機溶剤の少なくとも1種を含み、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0047】
好ましくは、前記ジルコニア粒子と有機溶剤の質量比は、1:1~4であり、例えば、1:1、1:2、1:3または1:4であり、1:2が好ましい。
【0048】
本開示の好ましい一実施形態において、前記ステップ(a)において改質剤の添加量がジルコニア粒子の質量の10~30wt%であり、ジルコニア粒子の質量に対する改質剤の質量の代表的であり非限定的な質量分率が10wt%、12wt%、15wt%、18wt%、20wt%、22wt%、25wt%、28wt%または30wt%である。
【0049】
本開示の好ましい一実施形態において、前記ステップ(a)においてカオトロピック剤の添加量がジルコニア粒子の質量の1~10wt%であり、ジルコニア粒子の質量に対するカオトロピック剤の質量の代表的であり非限定的な質量分率が1wt%、2wt%、5wt%、8wt%または10wt%である。
【0050】
本開示の好ましい一実施形態において、前記カオトロピック剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリコ一ルオレ一ト、ポリエチレングリコールラウレートおよびポリエチレングリコールステアレートの少なくとも1種を含む。
【0051】
好ましい一実施形態として、前記樹脂型分散液におけるカオトロピック剤成分がジルコニアの表面にグラフトしている基およびBPA樹脂のそれぞれと水素結合を形成することができ、ある程度で「媒体を可溶化させる」の役割を果たすことができ、したがって、ジルコニアのBPA樹脂との相溶性を高めることができる。
【0052】
カオトロピック剤は、添加量がナノジルコニアの含有量の1~10wt%であり、系全体に遊離しており、ジルコニアの表面にグラフトしている基およびBPAのそれぞれと水素結合を形成することができ、ある程度で「媒体を可溶化させる」の役割を果たすことができ、したがって、ジルコニアのBPA樹脂との相溶性を高めることができる。
【0053】
なお、本開示に係る改質剤およびカオトロピック剤の含有量を適正範囲にコントロールしなければならない。含有量が低すぎると期待される効果が得られず、含有量が高すぎると逆効果となり、無駄な経済的な損失を招いてしまう。
【0054】
本開示の好ましい一実施形態において、前記ジルコニア樹脂型分散液における改質ジルコニア粒子の含有量が50~78wt%であり、改質ジルコニア粒子の代表的であり非限定的な質量分率が50wt%、52wt%、55wt%、58wt%、60wt%、62wt%、65wt%、68wt%、70wt%、72wt%、75wt%または78wt%である。
【0055】
本開示の一局面として、UV硬化型接着剤を提供する。前記UV硬化型接着剤は、主に上記のジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂とを均一に混合することにより調製されるものである。
【0056】
前記ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の溶解パラメータの差が0.8以下である。
【0057】
本開示に係るUV硬化型接着剤は、主に上記のジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂とを均一に混合することにより調製されるものである。前記ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の溶解パラメータの差が0.8以下である。したがって、ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂は、相溶性および安定性が良好である。
【0058】
なお、2つの系の溶解パラメータが近似または等しい場合、2つの系の互いのブレンドに有利であり。一般的に、2つの系の溶解パラメータの差が0.8未満である場合に2つの系のブレンド効果が良好であると考えられる。そして、水素結合作用は、系の溶解パラメータに影響を与える主な指標であり、2つの系の水素結合の相互作用が強い場合、2つの系のブレンド、混和効果に寄与できる。本開示では、ジルコニア粒子の表面に水素結合を形成できる水素結合供与基を導入することにより、ジルコニアとBPA樹脂との間で水素結合が互いに作用する。水素結合力が主にジルコニアの表面に導入する水素結合供与基の数によって決められる。水素結合供与基の数が多いほど、ジルコニアとBPA樹脂との間で形成される水素結合が多くなり、これによって、水素結合力が強くなり、2つの系の溶解パラメータの差が小さくなり、2つの系の相溶性をよく一層向上させることができる。
【0059】
上記の好ましい実施形態において、前記ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の混合質量比は、0.5~3:1であり、例えば、0.5:1、1:1、2:1または3:1であり、1:1が好ましい。
【0060】
好ましい一実施形態として、上記のジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の溶解パラメータの差が0.1~0.8である。上記のジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂とを1:1の質量比で混合して得た系は、混和性も安定性も良好で、常温遮光の条件下で7ヶ月以上静置しても析出現象の発生がない。
【0061】
本開示の好ましい一実施形態において、前記アルコキシビスフェノールA樹脂は、エトキシ化(2)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(8)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(20)ビスフェノールAジアクリレートおよびエトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート樹脂の少なくとも1種を含み、エトキシ化(20)ビスフェノールAジアクリレート樹脂が好ましい。
【0062】
より好ましくは、前記アルコキシビスフェノールA樹脂は、EO変性ビスフェノールAジアクリレート(Bisphenol A (EO)20 Diacrylate、CAS番号:64401-02-1、商品名:KOMERATE D200)である。
【0063】
本開示の一局面として、光学薄膜の調製における、上記のジルコニア樹脂型分散液および上記のUV硬化型接着剤のそれぞれの使用を提供する。
【0064】
本開示に係るジルコニア樹脂型分散液、UV硬化型接着剤は、光学薄膜の調製に広く使用されることができる。
【0065】
以下、実施例を参照しながら本開示の技術案をさらに説明する。
【0066】
なお、本開示の下記の実施例および比較例に使用されたBPA樹脂は、KOMERATE D200である。
【0067】
実施例1
【0068】
UV硬化型接着剤の調製方法は、下記のステップを含む。
【0069】
(1)ジルコニア粉体を1:2の質量比でエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶剤に入れ、20min撹拌して分散させ、そして上記の系に3,6‐ジオキサオクタン二酸(添加量がジルコニアの含有量の30%であった)、ポリオキシエチレングリコ一ルオレ一ト(添加量がジルコニアの含有量の1%であった)を添加して改質を行い、溶液Aを得た。
【0070】
前記溶液Aには表面に水素結合供与基を有する改質ジルコニア粒子が含まれていた。
【0071】
(2)溶液Aとフェノキシベンジルアクリレート(PBA)とを均一に混合し、そして回転蒸発により有機溶剤を除去し、ジルコニア樹脂型分散液を得た。
【0072】
前記回転蒸発のパラメータは、65℃、5mbar、2時間であった。
【0073】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が12%であることが分かった。
【0074】
(3)ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で均一に混合し、ジルコニア分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.63であり、ジルコニア分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0075】
実施例2
【0076】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてカオトロピック剤のポリオキシエチレングリコ一ルオレ一トの添加量がジルコニアの含有量の5%であったこと以外、そのほかのステップが実施例1と同じであった。
【0077】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が20%であった。
【0078】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.1であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0079】
実施例3
【0080】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてカオトロピック剤のポリオキシエチレングリコ一ルオレ一トの添加量がジルコニアの含有量の10%であった以外、そのほかのステップが実施例1と同じであった。
【0081】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が15%であった。
【0082】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.33であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0083】
実施例4
【0084】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)において改質剤の3,6‐ジオキサオクタン二酸の添加量がジルコニアの含有量の10%であったこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0085】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が1%であった。
【0086】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.8であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0087】
実施例5
【0088】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)において改質剤の3,6‐ジオキサオクタン二酸の添加量がジルコニアの含有量の20%であったこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0089】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が8%であった。
【0090】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.68であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0091】
実施例6
【0092】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてHO-PEG3-CH2COOH(CAS番号:51951-05-4)を改質剤として使用し、前記HO-PEG3-CH2COOH(CAS番号:51951-05-4)の添加量がジルコニアの含有量の30%であったこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0093】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が16%であった。
【0094】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.27であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0095】
実施例7
【0096】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてチオジプロピオン酸を改質剤として使用し、前記チオジプロピオン酸の添加量がジルコニアの含有量の30%であったこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0097】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が13%であった。
【0098】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.45であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0099】
実施例8
【0100】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)において3,3′-ジチオジプロピオン酸を改質剤として使用し、前記3,3′-ジチオジプロピオン酸の添加量がジルコニアの含有量の30%であったこと以上、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0101】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が6%であった。
【0102】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.74であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0103】
実施例9
【0104】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてポリエチレングリコールラウレートをカオトロピック剤として使用し、前記ポリエチレングリコールラウレートの添加量がジルコニアの含有量の5%であったこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0105】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が12%であった。
【0106】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.56であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0107】
実施例10
【0108】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてポリエチレングリコールステアレートをカオトロピック剤として使用し、前記ポリエチレングリコールステアレートの添加量がジルコニアの含有量の5%であったこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0109】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が15%であった。
【0110】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.32であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0111】
実施例11
【0112】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてラウリル硫酸ナトリウムをカオトロピック剤として使用し、前記ラウリル硫酸ナトリウムの添加量がジルコニアの含有量の5%であったこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0113】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が14%であった。
【0114】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.4であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0115】
実施例12
【0116】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップ(2)において4-ビフェニルメチルアクリレート(BPMA)を樹脂として使用したこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0117】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が18%であった。
【0118】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.16であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0119】
実施例13
【0120】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップ(2)においてベンジルアクリレート(BZA)を樹脂として使用したこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0121】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が16%であった。
【0122】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.3であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0123】
実施例14
【0124】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップ(2)においてo-フェニルフェノキシエチルアクリレート(OPPEA)を樹脂として使用したこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0125】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が18%であった。
【0126】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が0.18であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、均一状態で相溶し、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、析出現象の発生がなかった。
【0127】
比較例1
【0128】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてカオトロピック剤であるポリオキシエチレングリコ一ルオレ一トを使用しなかったこと以外、そのほかのステップが実施例1と同じであった。
【0129】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が0.8%であった。
【0130】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が1.12であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、相溶性が劣り、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、ジルコニアの析出が発生した。
【0131】
比較例2
【0132】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)において3,6‐ジオキサオクタン二酸の添加量がジルコニアの含有量の5%であった以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0133】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が0.1%であった。
【0134】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が1.43であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、相溶性が劣り、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、ジルコニアの析出が発生した。
【0135】
比較例3
【0136】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)において3,6‐ジオキサオクタン二酸の添加量がジルコニアの含有量の35%であった以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0137】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が0.5%であった。
【0138】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が1.28であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、相溶性が劣り、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、ジルコニアの析出が発生した。
【0139】
比較例4
【0140】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてポリオキシエチレングリコ一ルオレ一トの添加量がジルコニアの含有量の15%であったこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0141】
測定により、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が0.7%であった。
【0142】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が1.21であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、相溶性が劣り、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、ジルコニアの析出が発生した。
【0143】
比較例5
【0144】
UV硬化型接着剤の調製方法は、ステップの(1)においてスベリン酸を改質剤として使用し、前記スベリン酸の添加量がジルコニアの含有量の30%であったこと以外、そのほかのステップが実施例2と同じであった。
【0145】
スベリン酸には水素結合供与基が含まれないため、前記ジルコニア樹脂型分散液におけるジルコニア粒子の表面における水素結合供与基のグラフト量が0であった。
【0146】
ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂の溶解パラメータの差が1.52であり、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂とを1:1の混合質量比で混合したあと、相溶性が劣り、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、ジルコニアの析出が発生した。
【0147】
具体的に、上記の実施例1~14および比較例1~5の相溶性に関する技術的効果は、下記の表に示されている。
【0148】
【表1】

【0149】
上記の実験結果から分かるように、本開示の実施例1~14によるUV硬化型接着剤において、ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂の溶解パラメータの差が0.8以下である。したがって、ジルコニア樹脂型分散液とアルコキシビスフェノールA樹脂とは、相溶性および安定性が良好である。これに対して、カオトロピック剤を使用しなかった比較例1、改質剤には水素結合供与基が含まれない比較例5、改質剤の添加量がジルコニア粒子の質量の10~30wt%ではなく、またはカオトロピック剤の添加量がジルコニア粒子の質量の1~10wt%ではなかった比較例2~4の場合、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂との相溶性が劣り、そして、常温遮光の条件下で7ヶ月静置したあと、ジルコニアの析出が発生した。したがって、安定性も相溶性も優れる技術的効果を奏することができなかった。
【0150】
具体的な実施例を用いて本開示を説明したが、本開示の精神および範囲を逸脱しない限り、変更や変化を行ってもよい。したがって、特許請求の範囲は、本開示の範囲に属するすべての当該変更や変化を含む。
【0151】
産業上の利用可能性
【0152】
本開示に係るジルコニア樹脂型分散液における改質ジルコニア粒子は、表面への水素結合供与基の導入によれば、ジルコニア粒子の脂溶性を高めることができるとともに、水素結合供与基とアルコキシビスフェノールA樹脂(BPA樹脂)との間で水素結合が互いに作用するので、ジルコニア樹脂型分散液とBPA樹脂との相溶性および安定性を高めることができ、産業上、UV硬化型接着剤および光学薄膜の調製に使用されることができる。