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特許7598461切り換え可能な変速機構の変速比を切り換える方法、制御装置および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】切り換え可能な変速機構の変速比を切り換える方法、制御装置および車両
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20241204BHJP
【FI】
B62M6/45
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023526162
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021079622
(87)【国際公開番号】W WO2022100999
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】102020214163.0
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】レイシグ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マネヴァルト,メルリン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】バウムゲルトナー,ダニエル
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209969(JP,A)
【文献】特開2017-154722(JP,A)
【文献】特表2009-515769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45 ー 6/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)を駆動する電気モータ(111)を備える前記車両(100)の切り換え可能な変速機構(120)の変速比を切り換える方法であって、
-前記電気モータ(111)によりモータトルク(M)を発生させる方法ステップ(210)と、
-間近に迫ったギヤチェンジを確認する方法ステップ(230)と、
-発生させる前記モータトルクの量を、確認した前記ギヤチェンジに応じて減少させる方法ステップ(250)と、
-発生させる前記モータトルク(M)の前記量を減少させる前記方法ステップ(250)後、予め設定した期間(T)中、切り換え可能な前記変速機構(120)の前記変速比を間近に迫った前記ギヤチェンジに基づいて変更する方法ステップ(260)と、
を備える方法において、
-予め設定した前記期間(T)中に、前記電気モータ(111)により少なくとも1つのモータトルクインパルス(I1,I2)を発生させるステップ(270)、
を実施することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記車両(100)は、付加的にボトムブラケット軸(104)を備え、前記ボトムブラケット軸(104)は、クランク(105)に結合されており、本方法は、付加的に、-前記ボトムブラケット軸(104)の回転角度位置および/または、前記クランク(105)のポジションおよび/または、前記車両(100)の運転者によるトルクおよび/または前記ボトムブラケット軸(104)の回転数を検出するステップ(240)、
-検出した前記ボトムブラケット軸(104)の前記回転角度位置および/または検出した前記クランク(105)の前記ポジションおよび/または検出した前記車両(100)の運転者によるトルクおよび/または検出した前記ボトムブラケット軸(104)の回転数に応じて、発生させる前記モータトルク(M)を減少させる時点(t0)を確定するステップ(241)、
-発生させる前記モータトルク(M)の前記量を付加的に、確定した前記時点(t0)に応じて減少させるステップ(250)および/または
-切り換え可能な前記変速機構(120)の前記変速比を付加的に、確定した前記時点(t0)に応じて変更するステップ(260)、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記変速比を変更(260)する、予め設定した前記期間(T)中、2つ、3つまたは4つのモータトルクインパルス(I1,I2)を発生させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
予め設定した前記期間(T)中の、発生させた前記モータトルクインパルス(I1,I2)により、結果として、前記減少の直前に発生させた前記モータトルク(M)の量に対して50パーセント以下の量的な偏差を有する平均のトルク(φM)を生じさせる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
予め設定した前記期間(T)中、前記モータトルク(M)が減少されている少なくとも2つの減少期間(R)の合計は、発生させる前記モータトルクインパルス(I1,I2)の少なくとも1つのインパルス継続時間(ID)の合計以下である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
予め設定した前記期間(T)中に発生させる前記モータトルクインパルス(I1,I2)の前記量は、一定である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
予め設定した前記期間(T)中に発生させる前記モータトルクインパルス(I1,I2)の前記量は、変化する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
予め設定した前記期間(T)の継続時間および/または発生させる前記モータトルクインパルス(I1,I2)の数を、前記期間(T)の前に検出した前記車両(100)の速度に応じて、かつ/または、前記期間(T)の前に検出した前記車両(100)の運転者の足漕ぎ周波数に応じて、かつ/または、前記期間(T)の前に検出した、切り換え可能な前記変速機構(120)の前記変速比に応じて適合する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
間近に迫った前記ギヤチェンジを確認する前記方法ステップ(230)を、ギヤチェンジスイッチ(133)によって検出された、前記車両(100)の運転者からの入力に応じて実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
間近に迫った前記ギヤチェンジを確認する前記方法ステップ(230)を、切り換え可能な前記変速機構(120)のボーデンケーブル(121)および/または切り換え可能な前記変速機構(120)に設けられたギヤチェンジ検出センサ(134)により実施する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
間近に迫った前記ギヤチェンジを確認する前記方法ステップ(230)をトルクセンサ(130)により検出した前記車両(100)の運転者によるトルクおよび/または回転数センサ(131)により検出した前記車両(100)の運転者の足漕ぎ周波数に応じて実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
記モータトルク(M)を減少させる時点(t0)および/または、予め設定した前記期間(T)に関する情報を表示するステップ(280)を更に含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
車両(100)用の制御装置(113)であって、前記制御装置(113)は、請求項1から12までのいずれか1項記載の、切り換え可能な前記変速機構(120)の前記変速比を切り換える方法を実施するように構成されている、制御装置(113)
【請求項14】
り換え可能な変速機構(120)と、駆動用の電気モータ(111)と、請求項13記載の制御装置(113)とを備える、車両(100)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の切り換え可能な変速機構の変速比を切り換える方法に関する。本発明は、この方法を実施するように構成されている制御装置、およびこの制御装置を備える車両にも関する。
【背景技術】
【0002】
車両としての自転車のハブ内装シフト機構は、負荷下では切り換わらないことが多い。一部では、このような自転車用ハブ内装シフト機構は、ハブにおけるトルクがほぼゼロであるときのみ、切り換え可能である。駆動モータを備える車両としての二輪車、例えば電動自転車あるいはE-バイクは、通例、運転中、略常時、トルクを、ハブ内装シフト機構あるいは内装変速機構を有するそれぞれのハブに加えている。電動自転車の場合、運転中、正弦形の運転者トルクあるいは運転者トルクが、典型的には、モータトルクと重畳され、モータトルクは、例えば検出される運転者トルクに応じて発生される。発生されるモータトルクは、ペダルの停止に対して、時間的に後追いする、あるいは急には止まらない。ギヤチェンジが、電動自転車においてそれにもかかわらず実施され得るように、典型的には、ギヤチェンジ希望あるいはギヤチェンジ信号が検出または認識されると、モータトルクは、短く、例えば0.5秒の期間、減少されるか、または完全にオフにされる。モータトルク減少のこの時間継続は、任意には短縮されない。それというのも、さもなければギヤチェンジがもはや高信頼性には実施され得ないからである。
【0003】
特許文献1は、電気モータを備える車両のシフト装置を開示している。電気モータは、ギヤシフト機構のギヤが入れられているとき、人力による駆動を補助し、シフト装置は、制御部を有し、制御部は、電気モータにより提供される駆動トルクをギヤシフト機構のギヤチェンジ時に減じるように形成されている。
【0004】
特許文献2は、電気式の補助駆動部と、ギヤシフト機構とを備える自転車を運転する方法であって、シフトプロセスを特定し、かつ電気式の補助駆動部を、ギヤシフト機構の部品の損傷を回避すべく、放出されるトルクが適合されるように、動作制御する方法を開示している。
【0005】
特許文献3は、補助力モータと、多段のハブ内装シフト機構とを備える自転車用の自転車駆動部であって、シフト部を操作している間は、補助力モータの通電が減じられるか、またはオフにされる、自転車駆動部を開示している。
【0006】
特許文献4は、駆動補助モータと、マイクロコンピュータとを有する自転車駆動装置を開示している。マイクロコンピュータのギヤシフト制御セクションは、ギヤシフト指令を受け、出力制御セクションに、モータの出力をストップするか、または減じるように指示する。
【0007】
しかし、上で引用した文献により提案されるモータトルク減少は、運転者によって、通例は、不都合に感じ取られてしまう。それというのも、モータトルクによる運転者の補助が、あからさまな時間、減少されるか、または欠落してしまうからである。さらに、時には、好ましくないジャークが結果として生じてしまうことがある。特に急傾斜地において、力中断は、さらに、受け入れがたい速度減少に至らしめ、事故の原因ともなりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102010017412号明細書
【文献】独国特許出願公開第102012219991号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013215783号明細書
【文献】独国特許出願公開第102012107939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、駆動モータを備える車両、特に電動自転車用のギヤシフトプロセスを改善することであって、車両あるいは電動自転車は、好ましくは、ハブ内装シフト機構の形態の、切り換え可能な変速機構を備えている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題は、本発明により独立請求項1、13および14に応じて解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、車両の切り換え可能な変速機構あるいはギヤシフト機構の変速比を切り換える方法に関する。車両、特に電動自転車は、さらに、車両を駆動する電気モータを備えている。切り換え可能な変速機構、有利には内装変速機構、あるいはギヤシフト機構、特にホイールのハブに配置されるギヤシフト機構、あるいはハブ内装シフト機構は、有利には、切り換え可能な遊星機構を有している。本方法は、電気モータによりモータトルクを発生させることで開始する。モータトルクは、有利には、検出される、所望の推進のための運転者の入力あるいは操作に応じて発生、例えば、車両のアクセルペダルにおける検出される入力に応じて、かつ/または車両のハンドルの回転式グリップにおける検出される入力に応じて、かつ/または車両のボトムブラケット軸における検出される運転者トルクおよび/もしくは検出される運転者の足漕ぎ周波数に応じて発生され得る。さらに、さらなるステップにおいて、間近に迫ったギヤチェンジの確認を実施する。このとき、特に電気的なギヤチェンジ信号が発生される。続いて、発生させるモータトルクの量を、確認した間近に迫ったギヤチェンジに応じて、電気モータの動作制御により減少させる。このとき、発生させるモータトルクの量を、有利には、特に少なくとも短時間ゼロに減少させる。発生させるモータトルクの量の減少により、特にロータの回転数も減少させ、特にゼロに下げる。発生させるモータトルクの量の減少を、電気モータの動作制御の終了により、もしくは電気モータの能動的な通電のオフにより、または減少されたモータトルクを発生させる電気モータの動作制御もしくは通電の適合により実施する。発生させるモータトルクの量の減少後、予め設定した期間中、切り換え可能な変速機構の変速比を、変更するかあるいは切り換える。換言すれば、予め設定した期間中に、ギヤシフト機構の別のギヤを入れる。本発明により、変速比を変更する予め設定した期間中に、電気モータにより少なくとも1つのモータトルクインパルスを発生させる。有利には、モータトルクインパルスは、車両を駆動する、以前に発生されたモータトルクと、同じ回転方向を有している。本発明により、したがって、結果として、変速比を変更するあるいは切り換える予め設定した期間中の平均のトルクが、減少されたモータトルクの量より大きい、特に、モータトルクインパルスにより、予め設定した期間中の平均のトルクが、ゼロより大きい、という利点が生じる。これにより、運転者に、変速比を変更する予め設定した期間中も、これにより力補助が提供され、これにより、シフトプロセス時の車両のジャークの減少が、結果として生じる。さらに、電動自転車にとって受け入れがたい急斜面における速度減少は、回避される。有利には、少なくとも1つのモータトルクインパルスは、車両を駆動する、以前に発生されたモータトルクと同じ回転方向を有し、かつ/または少なくとも1つのモータトルクインパルスは、車両を駆動する、以前に発生されたモータトルクとは逆向きの回転方向を有している。これにより、結果として、ギヤチェンジが高信頼性に行われるというさらなる利点が生じる。それというのも、短時間の無負荷のフェーズが、予め設定した期間中に、かつ発生させるモータトルクインパルスにより、チェーンのリズミカルな載荷および除荷を結果として生じ、これにより変速機構が、短時間、往復運動あるいは振動するように励起されるからである。この振動は、切り換え可能な変速機構、特にハブ内装シフト機構のギヤチェンジを、特に、ゼロに減少されたモータトルクとの比較において、補助する。結果として、予め設定した期間を従来技術と比較して短縮することができるという利点も生じる。本発明により、結果として、運転者に、モータトルクインパルスにより結果として生じる平均のトルクが提供されるため、予め設定した期間を従来技術と比較して延長することができるという利点も生じる。延長された予め設定した期間は、有利には、さらに、変速比の高信頼性の無負荷での切り換えあるいは無負荷での変更を、それが複数の変速比に跨がるものであっても許容する。
【0012】
本発明の特に好ましい一構成において、車両、特に電動自転車は、付加的にボトムブラケット軸あるいはクランク軸を備えている。ボトムブラケット軸あるいはクランク軸は、クランクおよび有利にはペダルに結合されている。車両は、これにより特に、ペダルに対する運転者の踏力をボトムブラケット軸の回転に変換し、ボトムブラケット軸における運転者トルクあるいは足漕ぎトルクと、ボトムブラケット軸の回転とを、車両を駆動するために発生させるように構成されている。本構成において、本方法は、付加的に、ボトムブラケット軸の回転位置もしくは回転角度位置の検出ならびに/またはボトムブラケット軸におけるクランクの少なくとも1つのポジションおよび/もしくは運転者トルクおよび/もしくはボトムブラケット軸の回転数の検出を含んでいる。続いて、発生させるモータトルクを減少させる時点を、検出したボトムブラケット軸の回転角度位置および/または検出したクランクのポジションおよび/または検出した運転者トルクおよび/または検出したボトムブラケット軸の回転数に応じて確定する。ペダルリング時あるいはペダルの回動時の踏力は、典型的には、周期的に時間推移にわたって変動し、上側または下側の死点の領域で消失する。この確定する、発生させるモータトルクを減少させる時点は、特に、ボトムブラケット軸を中心とするクランク回転のこの上側の点もしくは死点および/または下側の点もしくは死点に対する予め設定した角度オフセットを有するクランクポジションを表す。換言すれば、この確定する時点は、ペダルが略垂直にあるため、運転者が、典型的には、ペダルに踏力をまったく加えないか、または減少された踏力しか加えない、ボトムブラケット軸の回転角度位置あるいはクランクのポジションを表す。この確定する時点により表される、検出される運転者トルクが消失する回転角度位置は、典型的には、ペダルが略垂直にあるため、ボトムブラケット軸を中心とするクランクの回転の、車両の高さ方向軸線に関して下側の点および/または上側の点の領域に存在する。発生させるモータトルクの減少を、続いて付加的に、確定した時点に応じて実施する。代替的または付加的に、切り換え可能な変速機構の変速比の変更を、本構成では付加的に、確定した時点に応じて実施する。本構成により、有利には、発生させるモータトルクを減少させ、変速比を変更する時点を、運転者の足漕ぎ周波数あるいはケイデンスに応じて確定する。本構成では、負荷下での切り換えが高信頼性に回避され、すなわち、加えられる運転者の踏力にもかかわらず、少なくともほぼ無負荷での切り換えが可能とされる。この特に好ましい構成では、換言すれば、未来における無負荷の状態が予測され、好ましくは、下側の死点および/または上側の死点におけるボトムブラケット軸の回転角度位置および/またはクランクのポジションを実際にセンサで検出することは、回避される。確定する、未来における無負荷の状態の時点は、特に、この時点を、付加的に、検出した足漕ぎ周波数あるいはボトムブラケット軸の回転数あるいはケイデンスに応じて確定するとき、特に、検出した運転者トルクに応じて高信頼性に予測することができる。それというのも、運転者の足漕ぎ挙動は、通常、クランクが一回転している間、急には止まらない、あるいは踏力は、切り換え直前には、典型的には、急激に増加しないからである。これにより、結果として、発生させるモータトルクを減少させる、比較的ソフトな、かつ時間的に調整されたあるいは正確な電気モータの動作制御が実施されることができ、その結果、運転者が、変速比の切り換えあるいは変更をペダルにおいてほとんど知覚しないという利点が生じる。さらに、有利には、ボトムブラケット軸の回転角度位置および/またはクランクのポジションは、それほど正確に検出しなくてもよくなり、これによりコストが節減される。
【0013】
本発明の好ましい一構成では、予め設定した期間中、2つ、3つまたは4つのモータトルクインパルスを発生させる。本構成では、予め設定した期間中の、発生させたモータトルクインパルスにより結果として生じる平均のトルクを高め、ひいては運転者を、変速比を高信頼性に変更しながら、改良した形で力補助することが可能である。
【0014】
有利には、予め設定した期間中の、発生させたモータトルクインパルスにより、結果として、減少の直前に発生させたモータトルクの量に対して50パーセント以下の量的な偏差を有する平均のトルクを生じさせる。特に好ましくは、予め設定した期間中の、発生させたモータトルクインパルスにより結果として生じる平均のトルクの偏差は、減少の直前に発生させたモータトルクの量に対して30パーセント以下である。この別の構成では、運転者を、有利には、変速比を高信頼性に変更しながら、増強した形で力補助する。
【0015】
さらなる一構成において、予め設定した期間中、モータトルクが減少されている少なくとも2つの減少期間あるいは減少時間継続の合計は、発生させるモータトルクインパルスの少なくとも1つのインパルス継続時間の合計以下である。換言すれば、予め設定した期間中、モータトルクインパルスの少なくとも1つのインパルス継続時間の時間的な合算は、モータトルクが減少、特にゼロに減少されている減少期間の時間的な合算以上である。このさらなる構成により、予め設定した期間中の、発生させたモータトルクインパルスにより結果として生じる平均のトルクを、付加的に高める。運転者を、変速比を高信頼性に変更しながら、改良した形で力補助する。
【0016】
別の一構成において、予め設定した期間中に発生させるモータトルクインパルスの量は、一定である。本構成により、結果として、有利には、運転者に予期される車両の挙動が生じる。
【0017】
別の一構成において、予め設定した期間中に発生させるモータトルクインパルスの量は、変化する。本構成により、結果として、有利には、予め設定した期間中の高められた平均のトルクと、変速比のより信頼性の高い変更とが生じる。
【0018】
別のさらなる一構成では、予め設定した期間の継続時間および/または発生させるモータトルクインパルスの数を、検出した車両の速度に応じて、かつ/または検出した運転者の足漕ぎ周波数に応じて、かつ/または検出した目下入れられている変速比に応じて適合する。これにより、変速比の変更の信頼性は、極端な条件時にも高められる。さらに、このさらなる構成において、本方法は、様々な走行状況に最適に適合され得る。
【0019】
さらに、間近に迫ったギヤチェンジの確認を、運転者の操作あるいは入力を検出するように構成されているギヤチェンジスイッチにより実施するようになっていてもよい。検出する入力は、変速比を変更したいという希望を表す。換言すれば、ギヤチェンジスイッチ、例えばギヤシフト機構のシフトレバーの操作に基づいて、間近に迫ったギヤチェンジを確認し、あるいは電気的なギヤチェンジ信号を発生させる。間近に迫ったギヤチェンジのこの種の確認は、有利には、高速かつ効率的である。
【0020】
代替的な一構成では、間近に迫ったギヤチェンジを、切り換え可能な変速機構のボーデンケーブルおよび/または切り換え可能な変速機構に設けられたギヤチェンジ検出センサにより検出あるいは確認する。ギヤチェンジ検出センサは、間近に迫ったギヤチェンジをボーデンケーブルの動きにより検出するように構成されている。間近に迫ったギヤチェンジのこの種の確認は、有利には、容易にあらゆる種類の切り換え可能な変速機構およびギヤシフトレバーあるいはギヤチェンジスイッチに転用可能である。
【0021】
別の一構成では、間近に迫ったギヤチェンジを自動または半自動で、ボトムブラケット軸における、トルクセンサにより検出した運転者の運転者トルクおよび/または回転数センサにより検出した運転者の足漕ぎ周波数に基づいて確認し、あるいはギヤチェンジ信号を発生させる。有利には、トルクセンサおよび/または回転数センサにより、運転者の短い足漕ぎ休止および/または運転者トルクに関する第1の閾値の上回りもしくは下回りおよび/またはボトムブラケット軸の回転数に関する第2の閾値の上回りもしくは下回りが検知されると、必要とされるギヤチェンジもしくはギヤチェンジ希望を検出もしくは確認し、またはギヤチェンジ信号を発生させる。間近に迫ったギヤチェンジのこの種の確認は、有利には、容易にあらゆる種類の切り換え可能な変速機構およびシフトレバーに転用可能である。さらに、本構成では、間近に迫ったギヤチェンジを確認する付加的なセンサが必要とされない。それというのも、車両としての例えば電動自転車は、通例、ボトムブラケット軸における運転者トルクを検出するトルクセンサおよび/または回転数センサを備えているからである。
【0022】
本発明の別の任意選択的な一構成では、運転者に、発生させるモータトルクを減少させる確定した時点について、および/または変速比を変更する予め設定した期間について、情報を表示する。表示する情報は、例えば、発生させるモータトルクを減少させる間近に迫った確定した時点および/または予め設定した期間の継続時間および/または予め設定した期間の残りのフロー継続時間を可視化でき、その結果、運転者は、この方法を良好に理解し、かつ動作制御の個々の方法ステップあるいは種類に対して準備が整う。
【0023】
本発明は、車両用の制御装置にも関する。制御装置は、切り換え可能な変速機構の変速比を切り換える本発明に係る方法を実施するように構成されている。
【0024】
さらに本発明は、車両、特に電動自転車であって、車両は、切り換え可能な変速機構と、車両を駆動する電気モータと、本発明に係る制御装置とを備える、車両に関する。
【0025】
さらなる利点は、図面と関連付けた実施例の以下の説明から看取可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】車両としての電動自転車を示す図である。
図2】ブロック線図としての本方法のフローチャートである。
図3】電動自転車の運転中のトルク推移のグラフである。
図4】従来技術による切り換え時のトルク推移のグラフである。
図5】切り換え時の本発明によるトルク推移の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、車両100としての電動自転車を概略的に示してある。車両100は、ホイールとしてフロントホイール101とリヤホイール102とを備え、かつハンドル103を備えている。さらに車両100は、ボトムブラケット軸104を備え、ボトムブラケット軸104は、両側でそれぞれクランク105によりペダル106に結合されている。ボトムブラケット軸104の領域には、駆動モータとしての電気モータ111を有する駆動ユニット110が配置されている。代替的には、電気モータ111を有する駆動ユニット110は、フロントホイール101のホイールハブに、またはリヤホイール102のホイールハブに配置されていてもよい。電気モータ111には、バッテリ112により電流あるいは電力が供給される。力伝達のために、車両100は、駆動ユニット110にドリブンピニオン107あるいはチェーンリングを備えている。ドリブンピニオン107は、結合要素108、例えばチェーンまたはベルトによりリヤホイール102のホイールハブに結合されている。リヤホイール102のホイールハブには、ギヤシフト機構あるいは切り換え可能な変速機構120が配置されており、変速機構120は、例えば3~14段の切り換え可能なそれぞれ異なる変速比を有している。切り換え可能な変速機構120は、それゆえ本実施例では、ハブ内装シフト機構として構成されている。切り換え可能な変速機構120は、簡単な一実施の形態では、有利には、ギヤシフトレバーあるいはギヤチェンジスイッチ133と、ボーデンケーブル121とを用いた運転者の入力により、切り換えられるように構成されている。切り換え可能な変速機構120の変速比の変更は、手動で実施され得るが、代替的には、半自動または自動で実施されてもよい。ギヤチェンジ信号の任意選択的な自動の発生は、運転パラメータ、例えば車両の速度に応じて、かつ/または運転者の走行パラメータ、例えば検出される運転者トルクおよび/もしくは運転者のケイデンスに応じて実施される。ギヤチェンジ信号の任意選択的な半自動の発生は、運転パラメータ、例えば車両の速度に応じて、かつ/または運転者の走行パラメータ、例えば検出される運転者トルクおよび/もしくは運転者のケイデンスに応じて、ならびに検出される、車両100の運転者の、変速比あるいはギヤを変更したいという希望を表す入力に基づいて実施される。運転者によりボトムブラケット軸104に加えられる運転者トルクおよび/または電気モータ111により発生されるモータトルクは、まずドリブンピニオン107に伝達され、そして結合要素108により、リヤホイール102のホイールハブに設けられた切り換え可能な変速機構120に伝達される。さらに車両100は、任意選択的なセンサ:運転者トルクを検出するトルクセンサ130と、ボトムブラケット軸104の回転数あるいは運転者のケイデンスを検出する回転数センサ131と、ボトムブラケット軸104を中心とするクランク105の回転に関する、クランク105の角度位置あるいはポジションを検出する回転角度センサ132とを備えている。センサとして、さらに、車両100のハンドル103には、ギヤシフトレバーあるいはギヤチェンジスイッチ133が配置されている。ギヤチェンジスイッチ133は、変速比を選択あるいは変更する運転者の入力を検出するように構成されている。さらに車両100は、任意選択的なギヤチェンジ検出センサ134を備えていてもよく、ギヤチェンジ検出センサ134は、切り換え可能な変速機構120に至るボーデンケーブル121の動きを、運転者のギヤチェンジ信号として検出するように構成されている。さらに車両は、速度センサを備えていてもよいし(図示せず)、かつ/または車両の速度を場所データに基づいて確認してもよい。後者の場合、場所データは、例えば全地球航法衛星システム(例えばGPS、ガリレオ(Galileo)、GLONASS、北斗(Beidou))の無線コードにより、アンテナを用いて特定される。さらに車両100は、任意選択的に表示装置140あるいはHMIあるいはディスプレイを備えている。表示装置140は、車両の運転者に情報を表示するように構成されている。車両100の駆動ユニット110は、さらに制御装置113を備えている。制御装置113は、電気モータ111を動作制御するとともに、切り換え可能な変速機構120の変速比を切り換える本発明に係る方法を実施するように構成されている。
【0028】
図2には、本方法のフローチャートをブロック線図として概略的に示してある。まず、ステップ210において、車両100の電気モータによりモータトルクを発生させる。車両100としての電動自転車の場合、有利には、モータトルクを、検出した運転者トルクおよび/または検出した運転者の足漕ぎ周波数もしくは検出した運転者のケイデンスに応じて発生させる。任意選択的なステップ221において、運転者トルクを検出する。この検出221は、特にトルクセンサにより、例えば、ボトムブラケット軸104に対して同軸に配置される中空軸における逆磁歪効果に基づいて実施される。任意選択的なステップ222において、運転者の足漕ぎ周波数あるいはケイデンスを、特に回転数センサにより検出する。回転数センサは、ボトムブラケット軸104の一回転を、クランクの回転に基づいて、クランク105の一回転につき少なくとも一度検出するように構成されている。さらに任意選択的には、図1および2には示さないが、ボトムブラケット軸を中心とする回転時のクランクの角度位置あるいはボトムブラケット軸104の回転の角度ポジションを検出してもよい。さらに任意選択的には、車両の速度の検出223を実施してもよい。車両の速度は、例えば、フロントホイール101および/またはリヤホイール102に設けられた回転数センサまたは少なくとも1つのリードセンサにより検出してもよい。代替的または付加的に、車両の速度は、場所センサあるいはアンテナを用いた全地球航法衛星システム(例えばGPS、ガリレオ、GLONASS、北斗)の受信した無線コードに応じて確認してもよい。さらに任意選択的なステップ224において、ギヤチェンジ希望を表すギヤチェンジスイッチ133による運転者の入力を検出する。代替的には、任意選択的なステップ225において、切り換え可能な変速機構120のボーデンケーブル121に設けられたギヤチェンジ検出センサ134により、かつ/または切り換え可能な変速機構120に設けられたギヤチェンジ検出センサ134により、その都度1つの間近に迫ったギヤチェンジを表すボーデンケーブルの動きまたは歯車もしくはチェーンの動きを検出してもよい。ステップ230において、間近に迫ったギヤチェンジを確認する。間近に迫ったギヤチェンジの確認230は、好ましくは、ステップ224において検出した入力に応じて実施される。代替的または付加的に、間近に迫ったギヤチェンジは、ステップ225において検出した動きに基づいて、かつ/またはステップ221において検出した運転者トルクに基づいて、かつ/またはステップ222において検出した足漕ぎ周波数に基づいて、かつ/またはステップ223において検出した車両の速度に基づいて実施される。特に好ましくは、任意選択的なステップ240において、ボトムブラケット軸104の回転角度位置および/またはクランク105の少なくとも1つのポジションを確認あるいは検出し、続いてステップ241において、発生させるモータトルクを減少させる時点を、検出したボトムブラケット軸104の回転角度位置および/または検出したクランク105のポジションに応じて確定する。その後、ステップ250において、発生させるモータトルクの量を、確認した間近に迫ったギヤチェンジに応じて、少なくとも減少させる。発生させるモータトルクの量のこの減少260は、好ましくは、付加的に、確定した時点に応じて実施される。発生させるモータトルクの量の減少後、ステップ260において、切り換え可能な変速機構120の変速比を、予め設定した期間中に変更する。切り換え可能な変速機構の変速比の変更260は、付加的に、確定した時点に応じて実施されてもよい。本発明により、変速比を変更する予め設定した期間中、ステップ270において、電気モータにより少なくとも1つのモータトルクインパルスを発生させる。有利には、ステップ270において、2つ、3つまたは4つのモータトルクインパルスを発生させる。予め設定した期間中のモータトルクインパルスの発生270により、結果として、高められた平均のトルクが生じる。この平均のトルクは、特に、減少の直前に発生させたモータトルクの量に対して50パーセント以下の量的な偏差を有している。有利には、予め設定した期間中に存在する、モータトルクが減少されている少なくとも2つの減少期間の合計は、ステップ270において発生させるモータトルクインパルスの少なくとも1つのインパルス継続時間の合計以下である。予め設定した期間中に発生させるモータトルクインパルスの量は、好ましくは、一定である。代替的には、発生させるモータトルクインパルスの量は、予め設定した期間中、変化する。予め設定した期間の継続時間および/または発生させるモータトルクインパルスの数は、任意選択的に、検出した車両の速度に応じて、かつ/または検出した運転者の足漕ぎ周波数に応じて、かつ/または切り換え可能な変速機構の目下入れられている変速比に応じて適合され得る。さらに運転者に、任意選択的なステップ280において、発生させるモータトルクを減少させる確定した時点について、および/または変速比を変更する予め設定した期間について、情報を表示してもよい。
【0029】
図3には、走行中の電動自転車の運転中の典型的なトルク推移のグラフを概略的に示してあり、このとき、シフトプロセスは存在していない。運転者によりペダルに対して、周期的に交番するように、ペダルに対する踏力によって加えられる運転者トルクFMは、電気モータにより発生されるモータトルクMに重畳される。換言すれば、モータトルクMと運転者トルクとは、少なくとも1つの出力部、特に駆動ユニット110のドリブンピニオン107において合計され、これらのトルクの合計で結合要素108およびリヤホイール102に伝達される。結果として平均のトルクφMが生じる。モータトルクMは、トルクセンサにより検出される運転者トルクFMに応じて適合あるいは発生されることができ、この発生は、特に、複数の周期にわたって平均される運転者トルクφFMに基づいて実施される。それゆえ、発生されるモータトルクMの推移は、図3に示すように、典型的には、検出される運転者トルクFMの推移と比べて大幅に一定である。説明のために、複数の時点t1,t2,t3,t4,t5およびt6を示してあり、これらの時点t1,t2,t3,t4,t5およびt6において、ここでは、例えばそれぞれ、モータトルクMの略同じ量が発生される。ボトムブラケット軸に対して運転者により加えられる運転者トルクは、右左のペダルに対する運転者の踏力に基づく。運転者トルクは、例えば、運転者トルクFM1が加えられる時点t1から、運転者トルクFM2が加えられる時点t2まで上昇し、時点t2で、加えられる運転者トルクFMの最大値に到達する。時点t2から時点t3まで、加えられる運転者トルクは、ゼロまで下降する。それというのも、時点t3で、ペダルは、典型的には、ボトムブラケット軸あるいはクランク軸を中心とするペダル回転に関して、上側の点および下側の点の領域にあるからである。上側の点および/または下側の点(死点ともいう)におけるペダルの位置関係は、大きな踏力を伝達することを運転者に許容しない。それというのも、運転者は、典型的には、ボトムブラケット軸の上方に座っているから、あるいは踏力は、実質的に上方からペダルに対して加えられるからである。上側の点および/または下側の点におけるペダルの位置関係から、運転者トルクは、運転者トルクFMの最大の量が、ペダルが水平にある時点t4で加えられるまで、典型的には、連続的に上昇する。続いて運転者トルクは、時点t4と時点t5との間で再び連続的に時点t5まで下降し、時点t5で改めて、加えられる運転者トルクの量がゼロに近似する。ペダルの1回の完全な回転あるいはボトムブラケット軸の完全な一回転は、時点t2から、改めて運転者トルクFMの量の最大値が加えられる時点t6までの期間に相当する。換言すれば、運転者のペダルリングが均一であるとき、ボトムブラケット軸の完全な一回転につき、あるいはそれぞれのペダルの完全な一回転中に、運転者トルクFMの量の2回の最小値と、2回の最大値とが存在している。典型的には、運転者により、60~120回転毎分が達成される。加えられる運転者トルクFMと、加えられる運転者の足漕ぎ周波数あるいはボトムブラケット軸104における発生される回転数とは、ボトムブラケット軸とリヤホイール102との間の目下の変速比に基づいている。運転者トルクFMと、発生されるモータトルクMとから合計されるトルクは、有利には、少なくとも1つの切り換え可能な変速機構120によりリヤホイール102に伝達される。切り換え可能な変速機構の切り換え時には、したがって、結果として、トルク推移における飛躍的変化が生じる。
【0030】
図4には、従来技術による切り換え時のトルク推移のグラフを概略的に示してある。多くの切り換え可能な変速機構120は、トルクが連続的にかかっているときは、切り換え不能である。特にこのことは、多くのハブ内装シフト機構に当てはまる。例えば運転者によるシフトレバーの操作によって、所望のギヤチェンジが確認されたとき、かかっているモータトルクと、周期的に加えられる運転者トルクとのために、直には切り換え不能である。したがって、従来技術における方法は、例えば、ボトムブラケット軸104に結合されているトルクセンサにより、閾値ΔFM以下の運転者トルクFMまたは上側の点および下側の点の領域におけるクランクのポジションが検出されるまで、待機する。続いて時点410で、発生させるモータトルクを量M1からゼロに減少させる。モータトルクを減少させている、時点410から時点420まで進行する予め設定した期間T中に、変速比を変更するあるいは切り換える。この予め設定した期間は、例えば0.5秒である。時点410と時点420との間で、本実施例では、モータトルクを発生させない。時点410で、さらにペダルは、ボトムブラケット軸104を中心とするペダルの回転に関して上側の点および下側の点の領域にあり、その結果、運転者トルクは、ペダル106に対して運転者によりまったく加えられ得ないか、またはほとんど加えられ得ない。したがって、切り換え可能な変速機構120の無負荷での切り換えが、予め設定した期間T中に可能とされる。時点420で、すなわち、予め設定した期間Tの経過後、改めてモータトルク、例えば量470のモータトルクを発生させる。運転者の、時点420後に加えられる運転者トルクFMは、切り換え後、変速比の変更に基づいて、切り換え前の時点405での最大量450とは異なる最大量460を有している。相応に、結果として、例えばダウンシフト時には、拡大された足漕ぎ周波数が、図4に示すように生じる。換言すれば、図4に示す例では、切り換え後の、時点430と時点440との間の、ボトムブラケット軸の完全な一回転の継続時間は、減少された変速比に基づいて短縮される。
【0031】
図5には、切り換え時の本発明によるトルク推移に関する一例のグラフを概略的に示してある。まず、時点510まで、運転者が、運転者トルクFMをペダル106あるいはボトムブラケット軸104に対して加え、かつ電気モータ111により、量M2のモータトルクが発生される。ステップ430において、所望のギヤチェンジが確認されたとき、通例、かかっているモータトルクと、周期的に加えられる運転者トルクとのために、直には切り換え不能である。したがって本方法は、例えば閾値ΔFM以下の運転者トルクFMが検出されるまで、待機する。代替的に有利には、発生させるモータトルクを減少させる時点510あるいはt0を、例えば、検出した運転者トルクおよび/または検出したボトムブラケット軸の回転数に応じて確定するようになっていてもよい。発生させるモータトルクMを減少させる時点510あるいはt0の確定241は、例えば、検出している運転者トルクの最後のゼロ通過の時点501で、または検出している運転者トルクの最大値の最後の通過の時点502で、または検出している運転者トルクの推移の別の時点で、検出した運転者トルクおよび/または検出したボトムブラケット軸の回転数に応じて、すなわち予測的に実施される。続いて、ステップ250において、発生させるモータトルクを減少、特に量をゼロに減少させる。換言すれば、有利には、電気モータの動作制御を、電気モータ111が時点510の後、まず、予め設定した期間Tの始期に、モータトルクを発生させないように適合する。本発明により、続いて、発生させるモータトルクMの量の減少250後の、予め設定した期間T中、切り換え可能な変速機構120の変速比を変更し、ステップ270により、電気モータにより少なくとも1つのモータトルクインパルスI1を発生させる。図5に示す例では、2つのモータトルクインパルスI1,I2を、予め設定した期間T中に発生させる。1つのモータトルクインパルスI1を時点530で発生させ、別の1つのモータトルクインパルスI2を時点531で発生させる。モータトルクインパルスI1,I2は、本実施例では、同じインパルス継続時間IDおよび同じ量を有しており、このとき、インパルス量は、それぞれ、時点510での、ステップ250の前の、発生させたモータトルクの量M2と、加えられた運転者トルクとからなる合計の量に相当する。予め設定した期間T中のインパルスの数、インパルス継続時間IDおよびモータトルクインパルスの量は、例えば目下のもしくは未来の変速比に応じて、または車両の速度に応じて可変である。発生させるモータトルクインパルスI1,I2は、予め設定した期間T中の平均のトルクを高め、かつ付加的に変速比の変更を補助する。それというのも、パワートレーン内のコンポーネントの、モータトルクインパルスI1,I2により惹起される振動が、切り換え可能な変速機構の切り換え時の機械的な動作を促進するからである。予め設定した期間Tの経過後、時点540から、改めてモータトルクを発生させ、このとき、量550は、時点510での、減少250の前の、発生させたモータトルクの量M2と相違していても、同じであってもよい。図5の実施例において、時点540から、例えば、発生させるモータトルクの量M2から量550へと下降する推移が予定されていてもよい(図示せず)。
【符号の説明】
【0032】
100 車両
101 フロントホイール
102 リヤホイール
103 ハンドル
104 ボトムブラケット軸
105 クランク
106 ペダル
107 ドリブンピニオン
108 結合要素
110 駆動ユニット
111 電気モータ
112 バッテリ
113 制御装置
120 ギヤシフト機構、変速機構
121 ボーデンケーブル
130 トルクセンサ
131 回転数センサ
132 回転角度センサ
133 ギヤシフトレバー、ギヤチェンジスイッチ
134 ギヤチェンジ検出センサ
140 表示装置
210 ステップ
221 ステップ
222 ステップ
223 ステップ
224 ステップ
225 ステップ
230 ステップ
240 ステップ
241 ステップ
250 ステップ
260 ステップ
270 ステップ
280 ステップ
405 時点
410 時点
420 時点
430 時点
440 時点
450 最大量
460 最大量
470 モータトルクの量
501 時点
502 時点
510 時点
530 時点
531 時点
540 時点
550 モータトルクの量
FM 運転者トルク
FM1 運転者トルク
FM2 運転者トルク
I1 モータトルクインパルス
I2 モータトルクインパルス
ID インパルス継続時間
M モータトルク
M1 モータトルクの量
M2 モータトルクの量
T 期間
t0 時点
t1 時点
t2 時点
t3 時点
t4 時点
t5 時点
t6 時点
ΔFM 閾値
φFM 平均される運転者トルク
φM 平均のトルク
図1
図2
図3
図4
図5