(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】クランプディスクを備えた緯糸供給装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/27 20060101AFI20241204BHJP
D03D 47/38 20060101ALI20241204BHJP
D03D 49/50 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
D03D47/27
D03D47/38
D03D49/50
(21)【出願番号】P 2023529080
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2021078060
(87)【国際公開番号】W WO2022106122
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】102020214451.6
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591021578
【氏名又は名称】リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】LINDAUER DORNIER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】ラルス、エラー
(72)【発明者】
【氏名】フランク、ザイフリート
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-131847(JP,A)
【文献】特開2019-039122(JP,A)
【文献】特開平07-189077(JP,A)
【文献】実開平06-079781(JP,U)
【文献】独国特許発明第102018215395(DE,B3)
【文献】中国特許出願公開第101314881(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105274712(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 47/27
D03D 47/38
D03D 49/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機(1)において複数の緯糸(2a~h)を提供し、レピア(50)に有効な緯糸(2)を選択的に供給する緯糸供給装置(10)であって、
a)回転駆動可能なカラー選択ディスク(20)であって、その外周面に配置された、その都度少なくとも1本の緯糸(2a~h)を収容する複数の穴(21a~h)を備えたカラー選択ディスク(20)と、
b)回転駆動可能なクランプディスク(40)であって、その外周面に配置され、閉鎖位置においてその都度少なくとも1本の緯糸(2a~h)を保持する複数のクランプ(41a~h)を備えたクランプディスク(40)と、
c)前記カラー選択ディスク(20)と前記クランプディスク(40)との間に配置された差出しニードル(30)であって、供給すべき少なくとも1本の前記有効な緯糸(2)は、該差出しニードル(30)を介して、差出し位置(11)から、引渡し位置(13)において前記レピア(50)へと引渡し可能であり、有効なクランプ(41)が、引渡し後に開放位置にもたらされ、前記差出し位置(11)は、前記カラー選択ディスク(20)と前記有効なクランプ(41)とが前記クランプディスク(40)と一緒に差出し回転位置(12)へと回転させられることにより前記少なくとも1本の有効な緯糸(2)が到達可能な位置である、差出しニードル(30)と
を有する、緯糸供給装置(10)。
【請求項2】
前記クランプ(41a~h)が、少なくとも1つのアクチュエータ(49,49a~h,49’)を介して操作可能であることを特徴とする、請求項1記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項3】
前記アクチュエータ(49)が、定置に配置されていて、かつ前記差出し回転位置(12)にその都度位置する有効なクランプ(41)が操作可能であることを特徴とする、請求項2記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項4】
収容回転位置(14)に位置する前記有効なクランプ(41)が、第2のアクチュエータ(49’)を介して操作可能であることを特徴とする、請求項2または3記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項5】
各クランプ(41a~h)に固有のアクチュエータ(49a~h)が対応配置されており、該アクチュエータ(49a~h)が、前記クランプディスク(40)に相対回動不能に取り付けられていることを特徴とする、請求項2記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項6】
前記クランプ(41a~h)が、通常の状態において閉じられたクランプとして構成されていることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項7】
前記クランプ(41a~h)が、それぞれ1つのばね(48)により前記閉鎖位置に保持され、かつ前記クランプ(41a~h)のクランプ力が、それぞれの前記ばね(48)のばね力を介して調節可能であることを特徴とする、請求項6記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアクチュエータ(49,49a~h,49’)が、前記クランプ(41a~h)を空気的、電子的、機械的または磁気的に操作することを特徴とする、請求項2から6までのいずれか1項記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1本の有効な緯糸(2)を緯糸挿入後に、前記少なくとも1本の有効な
緯糸(2)が取り出された前記有効なクランプ(41)内に戻す糸戻し器(15)が設けられていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項10】
前記レピア(50)への前記少なくとも1本の有効な緯糸(2)の引渡し後に前記クランプ(41a~h)を清浄化するクランプクリーナ(47)が設けられていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項11】
前記カラー選択ディスク(20)と前記クランプディスク(40)とが、互いに平行に、特に1つの共有の回転軸線(24,42)に対して同心的に配置されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項12】
前記緯糸(2a~h)が、前記カラー選択ディスク(20)と前記クランプディスク(40)との間で互いに平行に延びていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項13】
前記クランプディスク(40)が、電動モータ、特にステッピングモータまたはサーボモータにより回転駆動可能であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項14】
前記カラー選択ディスク(20)が、前記クランプディスク(40)に対して同期的に駆動されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の緯糸供給装置(10)。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の緯糸供給装置(10)を備えた織機(1)。
【請求項16】
クランプディスク(40)が、経糸(5)に対して平行に配置されていることを特徴とする、請求項15記載の織機(1)。
【請求項17】
クランプディスク(40)と経糸(5)との間に、前記経糸(5)に対して平行に緯糸鋏(60)が配置されており、該緯糸鋏(60)が電子的または機械的に制御されていることを特徴とする、請求項15または16記載の織機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機において複数の緯糸を提供し、かつ緯糸挿入のためのレピアに緯糸を選択的に供給する緯糸供給装置と、緯糸供給装置を備えた織機とに関する。
【0002】
織機、特にレピア織機では、緯糸は、織機の挿入側からレピアにより杼口へと挿入される。その際に通常は複数の緯糸が保持され、これらの緯糸はそれぞれの織りパターンに応じて交互に挿入される。
【0003】
国際公開第2020/052822号からは、緯糸カラー選択装置を備えた織機が公知である。この緯糸カラー選択装置により、複数の緯糸が選択された順序でレピアに供給可能である。このためには、緯糸カラー選択装置が糸ガイドを有しており、糸ガイドは、その外周面に糸ガイド穴を有している。差出しニードルにより、差し出されるべき緯糸がグリッパに供給される。
【0004】
この場合、緯糸は例えば捕捉耳(Fangleiste)において保持される。しかし、この捕捉耳は、完成したテキスタイルにおいて除去されなければならず、したがって破棄部分である、という欠点を有している。これは、織布の製造のために必要となる材料使用を増大させる。
【0005】
さらに、欧州特許出願公開第3425094号明細書に基づき、グリッパ織機のための緯糸操作装置が公知である。提供された各緯糸は、選択アームの閉じられた穴によってガイドされている。この選択アームにより緯糸がグリッパに供給される。各緯糸のためのクランプグリッパが支持体上に組み付けられており、支持体は、回転軸線を中心として旋回可能である。緯糸は、各選択アームから集束点に向かって集束し、その後に緯糸は再び支持体上の対応するクランプへと扇形に拡開する。この場合、支持体の回転軸線は、緯糸の収束点を通って延びている。
【発明の概要】
【0006】
これに対して、本発明の課題は、提供時の緯糸の変向および糸屑を減じる緯糸供給装置を提供することにある。
【0007】
この課題は、独立請求項に記載の本発明に係る緯糸供給装置ならびにこのような緯糸供給装置を備えた織機により解決される。本発明の好適な実施形態は、各従属請求項から明らかである。
【0008】
織機において複数の緯糸を提供し、レピアに有効な緯糸を選択的に供給する緯糸供給装置は、本発明によれば、回転駆動可能なカラー選択ディスクであって、その外周面に配置された、その都度少なくとも1本の緯糸を収容する複数の穴を備えたカラー選択ディスクを有している。さらに本発明に係る緯糸供給装置は、回転駆動可能なクランプディスクであって、その外周面に配置され、閉鎖位置においてその都度少なくとも1本の緯糸を保持する複数のクランプを備えたクランプディスクを含んでいる。カラー選択ディスクとクランプディスクとの間には、差出しニードルが配置されており、供給すべき少なくとも1本の有効な緯糸は、差出しニードルを介して、差出し位置から、引渡し位置においてレピアへと引渡し可能である。差出し位置は、カラー選択ディスクと有効な1つのクランプとがクランプディスクと一緒に差出し回転位置へと回転させられることにより少なくとも1本の有効な緯糸が到達可能な位置である。さらに、有効なクランプは、有効な緯糸を解放するために、クランプがレピアへの緯糸の引渡し後に位置する開放位置にもたらされてよい。
【0009】
通常、各穴によって単に1本の緯糸しか収容されない。しかし、織りパターンに応じて、2本以上の緯糸を1つの穴から差出しニードルによりレピアに供給し、レピアから緯糸挿入時に導入することが可能である。しかしこのことは、個別の緯糸の位置が緯糸挿入時の織布においてねじれなしである必要がない場合にのみ可能である。このような場合、カラー選択ディスクの各穴が、1本よりも多くの緯糸を収容することができる。しかしわかり易くするために、以下では本発明を、穴毎に1本の緯糸に関してのみ説明するが、この構成は穴毎に複数の緯糸、つまり緯糸群の場合にも当てはまるものとする。このような緯糸ガイドにより、簡単な形式で二重緯糸が導入可能である。
【0010】
しかし2本の緯糸がねじれなしに1回の二重緯入れにおいて挿入されることが望ましい場合には、2本の緯糸は好適には別個の穴においてガイドされなければならない。このような場合、差出しニードルは2倍の収容穴、すなわち2本の緯糸を別個に収容するための二重凹設部を有している。これにより、2つの穴からそれぞれ唯1本の緯糸が、1回の行程で唯1つの差出しニードルによりレピアに差し出される。1回の二重緯入れにおいて2本の緯糸をねじれなしに導入するためのレピアは、例えば独国特許発明第102018222722号明細書に記載されている。二重緯入れのための有効な両緯糸は、クランプディスクの唯1つの有効なクランプに保持されていて、緯糸挿入後にも再び同一の有効なクランプにおいてクランプされる。したがってクランプディスクは通常、カラー選択ディスクが有している穴の個数の半分の個数のクランプしか有していない。通常、隣り合う穴からのそれぞれ2本の緯糸、つまり隣り合う2本の緯糸がグループ化されて、1つのクランプにおいて保持される。これにより、1回の二重緯入れにおいて挿入される緯糸の組み合わせは、糸ガイドにより規定されている。
【0011】
カラー選択ディスクは、或る構成では、複数の部分ディスク、特に2つの部分ディスクを備えた複数部分から成るカラー選択ディスクとして形成されている。両部分ディスクは、通常、1つの共通の回転軸線を中心として互いに依存せずに回転可能である。このためには、各部分ディスクが、通常は固有の駆動装置を有している。部分ディスクは、軸方向に相前後して配置されていてよく、または同一の平面内に位置していてもよい。例えば、部分ディスクは、軸方向で相前後して配置されており、好適には2つの部分ディスクが、互いに異なる部分円直径を有しており、これらの部分円直径上に穴が配置されている。したがって、例えば後方の第1の部分ディスクが、前方の第2の部分ディスクよりも大きな部分円直径を有している。第2の部分ディスクの穴内に保持された緯糸を貫通ガイドするために、第1の部分ディスクは、例えば第2のディスクの穴の部分円直径上に曲がった溝を有していて、かつ有効な緯糸を差し出すために、この溝から半径方向外方に向かって延びる溝を有している。両部分ディスクが1つの平面内に配置されている場合、特に両部分ディスクの穴は、1つの共通の旋回平面内で旋回可能である。部分ディスクが、1つの共通の旋回軸線を中心として旋回可能である限り、両部分ディスクはクランク状屈曲部を有していてよく、これにより、両部分ディスクの支承部が、軸方向で互いにずらされて配置されていて、それにもかかわらず穴は1つの共通の旋回平面に位置している。複数の部分ディスクを備えたカラー選択ディスクは、例えば冒頭で引用した国際公開第2020/052822号に記載されている。
【0012】
カラー選択ディスクの穴は、好適には開いた穴として形成されている。これに関して、開いた穴とは、特に、緯糸が穴から半径方向外方に向かって取り出され得ると理解することができ、つまり開いた穴は、特にカラー選択ディスクの外周面に設けられた半径方向の刻み目として形成されている。好適には、有効な緯糸と称することができる、供給すべき少なくとも1本の緯糸だけが、対応する穴から差出し回転位置において取出し可能である。残りの緯糸は、それぞれの開いた穴内に位置固定されている。差出し回転位置に位置する、有効な緯糸の開いた穴は、有効な穴とも称される。有効な穴を除く全ての穴は、例えばスライドガイドディスクの形態のラッチによって機械的に閉じられていてよい。これらの穴は、好適には、カラー選択ディスクの回転点を中心として、予め規定された1つの同一の部分円直径上に配置されていて、半径方向外方に向かって開いている。スライドガイドディスクは、カラー選択ディスクの回転点を中心とした部分円直径上に周方向の切欠きを有している。スライドガイドディスクは、差出し回転位置の領域においてのみ、半径方向外方に向かった切欠きを有しており、この切欠きはスライドガイドディスクの外縁にまで達して、有効な緯糸を解放する。代替的な或る構成では、例えば開いたそれぞれの穴が固有の閉鎖体を有している。この閉鎖体は、それぞれの穴を通常の状態では閉じ、有効な穴だけが、差出し回転位置への回転時に開く。開いた穴としてではなく、穴は、閉じた穴としても形成可能である。閉じた穴では、有効な緯糸はレピアへの供給時および緯糸挿入時にも、穴によってガイドされ、この穴内に保持される。
【0013】
クランプディスクは、通常、カラー選択ディスクもしくは部分ディスクの穴の総数に対応する個数のクランプ、またはねじれなしの二重緯入れの場合には穴の総数の半分に対応する個数のクランプを有している。したがって、提供すべき各緯糸は、糸蓄え器もしくは蓄えボビンからカラー選択ディスクの穴を介してクランプディスクの対応するクランプにまで延びている。カラー選択ディスクとクランプディスクとの間で、緯糸は直接的な経路を辿って、特に変向なしに延びている。供給すべき有効な緯糸が位置するクランプは、同じ有効な緯糸が位置する有効な穴と同様に、有効なクランプとも称される。供給すべき有効な緯糸を、提供された複数の緯糸から選択するために、カラー選択ディスクおよびクランプディスクは、有効なクランプと有効な穴とが差出し回転位置に位置し、ひいては有効な糸が差出し位置に位置する回転位置へと回転させられる。クランプディスクおよびカラー選択ディスクのこの回転位置は、各クランプもしくは穴の差出し回転位置のために異なっている。なぜならば、対応するクランプおよび穴によって保持された緯糸は、差出しニードルにより収容されるためには、常に同じ差出し位置にもたらされなければならないからである。差出し位置は、差出しニードルの収容位置によって規定され、唯1つの凹設部を備えた差出しニードルの場合、提供される多数の各緯糸のために同一である。2つの凹設部を備えたダブルフォークでは、第1の有効な緯糸および第2の有効な緯糸のためにそれぞれ1つの差出し位置が存在している。
【0014】
供給すべき少なくとも1本の有効な緯糸が差出し位置に位置する回転位置にカラー選択ディスクおよびクランプディスクを回転させた後に、差出しニードルは、カラー選択ディスクとクランプディスクとの間で少なくとも1本の有効な緯糸を収容し、少なくとも1本の有効な緯糸をその引渡し位置にもたらす。この引渡し位置からレピアが有効な緯糸を収容する。このためには、差出しニードルの前面に、好適には凹設部または二重凹設部が形成されており、凹設部または二重凹設部は、1本の緯糸もしくは2本の緯糸を収容して確実に一緒に運ぶ。差出しニードルは、差出し位置において有効な緯糸を収容するための差出しニードルの収容位置から、少なくとも1本の緯糸をレピアへの引渡し位置にもたらすための差出しニードルの引渡し位置に至るまで、並進運動させられるか、または1つの円軌道上で回転運動させられてよい。
【0015】
有効なクランプは、レピアへの有効な緯糸の引渡し後に開放位置にもたらされており、これにより、少なくとも1本の有効な緯糸を緯糸挿入のために解放することができる。クランプの開放は、レピアへの引渡し中に、またはレピアへの引渡し後に行うことができる。
【0016】
クランプは、好適にはアクチュエータを介して操作可能である。特に、クランプは、緯糸が確実にクランプされる閉鎖位置から開放位置へとアクチュエータによって移行可能である。第1の構成では、アクチュエータは、緯糸供給装置において定置に配置されている。アクチュエータは、差出し回転位置にその都度位置する有効なクランプが操作可能であるように構成されている。アクチュエータによってクランプを閉鎖位置から開放位置に、かつ/または開放位置から閉鎖位置にもたらすことができる。定置のアクチュエータを備えた構成は、少なくとも1つのアクチュエータを含んでいる。この場合、クランプは、クランプディスクの回転時に定置のアクチュエータに対して相対的に回転する。差出し回転位置では、有効なクランプは少なくとも開かれていて、これにより緯糸は解放され、かつ挿入され得る。唯1つのアクチュエータの場合、クランプの差出し回転位置は、クランプの収容回転位置に相当し、これにより有効なクランプは、緯糸挿入前に有効な緯糸を解放し、かつ緯糸挿入後に有効な緯糸を収容するために、アクチュエータによって開放位置へもたらされている。差出し回転位置および収容回転位置は、有効な緯糸が緯糸挿入後にクランプによって収容され得るようにするために、結合点の近傍に位置している。
【0017】
好適には、緯糸供給装置は、定置の第2のアクチュエータを有している。定置の第2のアクチュエータは、好適には、差出し回転位置とは異なる収容回転位置に位置するクランプが操作可能であるように配置されている。収容回転位置は、差出し回転位置に対して、織布の結合点または織布の結合点に沿った直線に向かう方向に回転させられている。2つのアクチュエータを備えた構成では、有効なクランプの差出し回転位置が最適化されており、織布の結合点から、レピアの運動軌道の方向に向かって離れるように回転させられている。有効な緯糸は、挿入後に、有効なクランプにより収容回転位置において収容される。このクランプは、緯糸が緯糸挿入前に差出し回転位置において取り出されたクランプと同じクランプである。有効なクランプは、緯糸挿入中に、織布の結合点の方向に向かって回転させられる。有効なクランプがレピアへの有効な緯糸の引渡し時にレピアのより近傍に位置決めされている最適化された差出し回転位置によって、有効なクランプとレピアクランプとの間の間隔は短縮されており、これによりレピアクランプにおける糸の突出が減じられる。これにより、有効な緯糸での緯糸挿入時に引渡し側レピアから受取り側レピアに引き渡され、織布を越えて引き出される糸突出部の形態の糸屑が減じられる。
【0018】
唯1つの定置のアクチュエータを使用する場合、有効なクランプを緯糸挿入前に開き、かつ緯糸挿入後に有効な緯糸が再び収容された後に、有効な緯糸を確実にクランプするためにこの有効なクランプを閉じることで十分である。クランプを操作するために少なくとも2つの定置のアクチュエータを使用する場合、有効なクランプは、緯糸挿入前に、緯糸の引渡しのために差出し回転位置において開かれ、再び閉じられ、次いで収容回転位置において、緯糸挿入後に緯糸を収容するために新たに開かれ、収容された緯糸をクランプするために再び閉じられる。
【0019】
代替的な或る構成では、各クランプに固有のアクチュエータが対応配置されている。この構成では、アクチュエータは、クランプディスクに相対回動不能に取り付けられており、クランプディスクの回転時にクランプと一緒に回転する。アクチュエータの個数は、クランプの個数に一致する。その限りでは、各クランプのための固有のアクチュエータを備えた構成は、それぞれのクランプの操作がクランプディスクもしくはクランプの離散的な回転位置、特に差出し回転位置および/または収容回転位置に限定されているのではなく、むしろクランプディスクの回転工程中のクランプの操作も実現可能であるという利点を有している。さらに、クランプは、回転中でも、例えば緯糸挿入前の引渡しと緯糸挿入後の収容との間にも、開いたままにすることができ、このことは、開放工程および閉鎖工程の回数ひいては個別の構成部材の機械的な負荷および場合によってはサイクルタイムを減じる。
【0020】
好適には、クランプが、通常の状態において閉じられたクランプとして構成されている。このクランプは、通常、「常時閉(normally-closed)」クランプとも称される。このためには、クランプが閉じたまま保持され、緯糸を確実にクランプするように、予荷重力がクランプに加えられる。好適には、クランプが、ばねによって閉鎖位置に保持される。このばねは特にコイルばねである。クランプのクランプ力は、ばねのばね力もしくはばねの予荷重を介して調節可能である。ばねの予荷重の変化によって、クランプ力が調節可能であり、このことは特に、種々異なる緯糸ならびに緯糸材料および緯糸の太さにおいて必要となり得る。1本の緯糸の代わりに、クランプ毎に2本以上の緯糸を確実に保持することが望ましい場合も、クランプ力の変化が必要となり得る。
【0021】
少なくとも1つのアクチュエータが、クランプを好適には空気的、電気的、機械的または磁気的に操作する。アクチュエータの種類もしくはアクチュエータによるクランプの操作は、アクチュエータが定置のアクチュエータであるか、相対回動不能なアクチュエータであるかとは無関係である。相対回動不能なアクチュエータの場合、アクチュエータはクランプ内に組み込まれていてよい。
【0022】
好適には、緯糸を緯糸挿入後に有効なクランプ、つまり緯糸が取り出されたクランプ内に戻す糸戻し器がさらに設けられている。糸戻し器として、特に挿入後に緯糸を確実にクランプ内に、つまり特にクランプのクランプ領域内へとガイドし、これによって緯糸を確実にクランプする装置が働く。このためには、糸戻し器は、例えば鎌状の領域を有している。この鎌状の領域において緯糸が収容され、ガイドされる。鎌状の領域は、円弧状に形成されていても、または例えばU字形またはV字形に形成されていてもよい。収容領域は、戻し工程中、特にクランプの方向への運動を実施する。この場合、糸戻し器の収容領域は、例えば円形または楕円形の運動軌道上で特に往復動し、挿入された緯糸は、専ら運動軌道の領域にわたってガイドされる。
【0023】
好適な或る構成では、緯糸供給装置が、緯糸の引渡し後もしくは収容前にクランプを清浄化するクランプクリーナを有している。これに応じて、クランプクリーナは、このクランプクリーナがクランプの開放位置において操作可能であり、かつ開放位置においてクランプを清浄化するように、配置されている。クランプクリーナは、アクチュエータと同様に緯糸供給装置において定置に配置されていてよい。好適には、クランプクリーナは、有効なクランプがクランプディスクの差出し回転位置もしくは収容回転位置において清浄化可能であるように配置されている。この差出し回転位置が収容回転位置とは異なる場合、クランプクリーナは、差出し回転位置または収容回転位置のいずれかに形成可能である。代替的には、クランプクリーナは、クランプディスクもしくは各クランプに相対回動不能に配置されている。この場合、各クランプにクランプクリーナが配置されているので、これによって緯糸引渡しと緯糸収容との間における、有効なクランプの開放位置での清浄化が可能にされる。特に好適には、クランプクリーナは、クランプの空気的な操作、つまり少なくとも1つの空気的なアクチュエータと組み合わせられている。アクチュエータのために提供される圧縮空気を、クランプクリーナのために使用することができる。クランプクリーナは、好適にはアクチュエータの構成に応じて定置にまたは相対回動不能に構成されている。クランプ清浄化時に、汚れ、例えば残糸または糸屑がクランプから除去されるので、緯糸の確実なクランプが保証される。
【0024】
好適には、カラー選択ディスクとクランプディスクとが、互いに平行に配置されている。さらに有利には、カラー選択ディスクの回転軸線とクランプディスクの回転軸線とが、互いに一致して配置されている、つまり、カラー選択ディスクとクランプディスクとが、1つの共通の回転軸線に対して同心的に配置されている。好適には、クランプディスクのクランプと、カラー選択ディスクの穴とは、さらに好適には同一である部分円直径上に配置されている。
【0025】
好適な或る構成では、緯糸は、カラー選択ディスクとクランプディスクとの間で互いに平行に延びている。いずれの場合も個別の緯糸は、緯糸が、有効な緯糸とは異なり、有効な緯糸挿入に関与していない受動的な緯糸である限り、カラー選択ディスクの穴からクランプディスクのクランプへ向かって直接かつまっすぐに、つまり変向なしに延びている。つまり例えば有効な緯糸は、差出しニードルによって引渡し位置にもたらされることにより、差出しニードルの凹設部を中心として変向される。
【0026】
好適には、クランプディスクおよび/またはカラー選択ディスクが、電動モータ、特にステッピングモータまたはサーボモータによって回転駆動される。好適には、クランプディスクもカラー選択ディスクも、固有の駆動装置、つまり特に固有の電動モータを有している。さらに好適には、カラー選択ディスクはクランプディスクに対して同期的に駆動もしくは回転させられる。このことは、緯糸の変向ひいては緯糸への負荷をも減じ、これは、織布における欠陥箇所の減少をもたらす。
【0027】
カラー選択ディスクとクランプディスクとの同期的な駆動は、代替的には唯1つの駆動装置により実現され得る。この駆動装置は、カラー選択ディスクもクランプディスクも駆動する。カラー選択ディスクとクランプディスクとは、通常、少なくとも、後続の緯糸挿入のために先行する緯糸挿入時とは異なる緯糸が必要とされる場合に回転させられる。好適には、カラー選択ディスクの回転は、連続する2回の緯糸挿入の間に行われる。クランプディスクの場合、さらに、緯糸が引き渡された位置とは別の位置において収容されることが望ましい場合に、クランプディスクを緯糸引渡しと緯糸収容との間に回転させることが必要となり得る。このことは、差出し回転位置が受取り回転位置と異なっている場合に当てはまる。
【0028】
本発明には、上述の緯糸供給装置を備えた織機がさらに含まれている。好適には、緯糸供給装置のクランプディスクが、織布の経糸に対して平行に配置されている。
【0029】
好適には、クランプディスクと経糸との間に、さらに好適には経糸に対して平行に、緯糸鋏が配置されている。緯糸鋏は、特に電子式にまたは機械的に制御される。好適には、制御は、固有の駆動装置を介して、特に固有の電動モータを介して、または例えば補助駆動装置としての機械的な伝動装置を介して、織機の主駆動装置により行われる。
【0030】
本発明の好適な実施形態および詳細を、以下に図面につき記載する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】織機における本発明に係る緯糸供給装置の第1の実施形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した本発明に係る緯糸供給装置の詳細図である。
【
図3】本発明に係るクランプディスクの第1の実施形態を示す図である。
【
図4】本発明に係るクランプディスクの第2の実施形態を示す図である。
【
図5】本発明に係る緯糸供給装置の第2の実施形態を示す図である。
【
図6】二重緯糸をねじれなしに導入する本発明に係る緯糸供給装置の第3の実施形態を示す図である。
【
図7】二重ディスクを備えた本発明に係る緯糸供給装置の第4の実施形態を示す図である。
【0032】
図1および
図2は、織布3と、本発明に係る緯糸供給装置10と、を備えた織機1の領域を示しており、
図2は、
図1に示した織機の部分領域を第2の状態で示している。緯糸供給装置10を介して、レピア50に、複数の緯糸2a~hから、導入すべき有効な緯糸2が供給され、レピア50から織布3を製造するための杼口4内に導入される。緯糸供給装置10内には、本実施例では8本の緯糸2a~hが蓄えられており、レピア50に選択的に供給され得る。種々異なる緯糸2a~hは、特に異なる材料から成る緯糸もしくは種々異なるカラーの緯糸および/または種々異なる太さの緯糸である。織機1の個別のシャフトの予め規定された閉口位置または開口位置に関連した、緯糸2a~hの予め規定された供給順序により、織布3は、予め規定された構造もしくは予め規定されたパターンで織ることができる。
【0033】
緯糸供給装置10は、選択的な供給のために、カラー選択ディスク20、クランプディスク40およびカラー選択ディスク20とクランプディスク40との間に配置された差出しニードル30を有している。カラー選択ディスク20はその外径部に、外方に向かって開いた8つの穴21a~hを有している。穴の個数は少なくとも、レピア50に個別に供給されるべき緯糸2a~hもしくは緯糸束の数に相当する。開いた穴21a,21c~hは、スライドガイドディスク22の形態のラッチによって閉鎖され、これにより緯糸2a,2c~hを、対応する開いた穴21a,21c~hから引き出すことはできない。カラー選択ディスク20は
図1および
図2では、回転位置12bに位置しており、これにより、開いた穴21bが差出し回転位置12に位置しており、スライドガイドディスク22によって閉鎖されていない開いた有効な穴21を成す。このためには、スライドガイドディスク22は、円弧状のスライドガイド溝25を有しており、このスライドガイド溝25の外縁部は、有効な緯糸2を解放するために開口を有している。したがって、導入すべき有効な緯糸2、図示の例では緯糸2bが、
図1に示したように収容位置31に位置する差出しニードル30によって収容され、かつ差出しニードルにより、レピア50への引渡しのための引渡し位置32に至るまでガイドされ得る。このためには差出しニードル30は、導入すべき緯糸を収容するために、その前面に凹設部33を有している。引渡し位置32にもたらされた有効な緯糸2は、レピア50によってそのレピアクランプ51を用いて捕捉され、杼口4内に導入され得る。
【0034】
緯糸供給装置10のクランプディスク40は、部分円直径上に、カラー選択ディスク20の開いた穴21a~hの個数に相当する個数のクランプ41a~hを含んでいる。本実施例では、カラー選択ディスク20は、8つの開いた穴21a~hを含んでいて、かつクランプディスク40は8つのクランプ41a~hを含んでおり、開放した各穴21a~hもしくは各クランプ41a~hは、複数の緯糸2a~hのうちそれぞれ1本の緯糸により占められる。したがって、各緯糸2a~hは、その都度対応配置された1つの開いた穴21a~hを通って延びており、その都度対応配置されたクランプ41a~h内でクランプされている。クランプディスク40は、カラー選択ディスク20と同様に回転位置12bで示されているので、クランプ41bおよび穴21bは、差出し回転位置12に位置し、緯糸2bは差出し位置11に位置している。
【0035】
緯糸供給装置10は、定置の2つのアクチュエータ49,49’をさらに有しており、第1のアクチュエータ49は、差出し回転位置12に位置する有効なクランプ41が操作可能であるように配置されており、第2のアクチュエータ49’は、収容回転位置14に位置する有効なクランプ41が操作可能であるように配置されている。この差出し回転位置12は、2つのアクチュエータ49,49’に基づいて収容回転位置14とは異なっていることにより、レピア50に向かう方向で最適化されている。したがって、これによって有効なクランプ41とレピア50との間の間隔が短縮されるので、レピア50における糸突出部6は短縮される。
【0036】
クランプディスク40のクランプ41a~hにおける緯糸2a~hの取付けにより、個別の緯糸2a~hを、捕捉耳なしに保持し、差出しニードル30のために、規定された予荷重を加えながら提供することができる。カラー選択ディスク20は、第1のサーボモータ23を介して回転駆動可能である。クランプディスク40は、クランプディスク駆動装置としての第3のサーボモータ46を介して回転駆動可能である。差出しニードル30は、第2のサーボモータ34を介して並進駆動可能であり、これにより、この差出しニードル30は、有効な緯糸2を、差出し位置11から引渡し位置13にもたらすことができる。
【0037】
図示の実施例では、クランプディスク40は、織布3の経糸5に対して平行に配置されている。緯糸2a~hがクランプディスク40においてクランプ41a~hにより保持されている部分円直径は、カラー選択ディスク20の開いた穴21a~hが位置する部分円直径に実質的に一致している。カラー選択ディスク20の回転軸線24は、クランプディスク40の回転軸線42に対して傾いた直線を形成する。
【0038】
複数の緯糸2a~hのうち1本を選択して杼口4内に導入するために、まずカラー選択ディスク20も、クランプディスク40も複数の回転位置12a~hのうち1つの回転位置にもたらされ、これにより、導入すべき有効な緯糸2が差出し位置11に位置している。カラー選択ディスク20とクランプディスク40とは、同期的に回転させられる。個別のクランプ41a~hは、予め規定された角度で互いにずらされてクランプディスク40上に取り付けられている。個別のクランプ41a~h間のピッチは、一定であってよく、または変化してよい。その都度複数のクランプ41a~hのうち1つのクランプに保持された緯糸2a~hを差出し位置11にもたらすために、クランプディスクを各回転位置12a~hに回転させなければならない。このことは、カラー選択ディスク20および穴21a~hにも同様に当てはまる。
図1および
図2において、緯糸2bが有効な緯糸2であり、カラー選択ディスク20もクランプディスク40も、回転位置12bに位置するものとして図示されている。
【0039】
導入すべき緯糸2は、差出し位置11から引渡し位置13へと、差出しニードル30によってもたらされる。引渡し位置13では、導入すべき緯糸2はレピア50により収容される。このためにはレピア50は、導入すべき緯糸2を、開放されたレピアクランプ51によって捕捉し、次いでレピアクランプ51が閉じられて、導入すべき緯糸2を確実に一緒に運ぶ。レピア50への有効な緯糸2の引渡し後に、アクチュエータ49により有効なクランプ41が開かれ、緯糸2を杼口4内に挿入するために解放する。引渡し後のレピア50のこのような位置は、
図2に示されている。導入すべき緯糸2は、レピアクランプ51内に位置固定されている。図示のレピア50は、緯糸2を織布3の、挿入側としての左側において収容し、織布中心へと移行させる引渡し側レピアである。織布中心で緯糸2は、右側の受取り側レピア(図示せず)に引き渡される。受取り側レピアのレピアクランプは、レピア50のレピアクランプ51内に係合し、有効な緯糸2を固定する。次いで有効な緯糸2が、杼口4全体を通って搬送される。緯糸挿入後に、導入すべき緯糸2は、この緯糸2が取り出された対応する有効なクランプ41内に導入され、クランプされる。同様に、緯糸2は、この緯糸2が取り出された有効な穴21内に戻るように導入される。有効なクランプ41により導入された緯糸2を収容するために、クランプ41は時計回り方向で、緯糸2bのための収容回転位置14へと回転させられる。対応する有効なクランプ41内において緯糸2がクランプされた後に、緯糸2は緯糸鋏60により切断される。付加的には、有効な緯糸2は受取り側レピアのクランプから解放される。
【0040】
緯糸挿入が行われた後に、緯糸供給装置10を介して、同じ緯糸2bまたは別の緯糸2a,2c~hのうち1本の緯糸を後続の緯糸挿入のために選択し、レピア50に引き渡すことができる。
【0041】
図3は、本発明によるクランプディスク40の第1の実施形態を示している。クランプディスク40は、部分円直径上に8つのクランプ41a~hを有している。個別のクランプ41a~hは、本実施形態ではそれぞれ同一の角度αだけ互いにずらされている。クランプ41bは、開いて図示されており、クランプディスク40は、回転位置12bに位置しているので、クランプ41bは、差出し回転位置12に位置している。クランプ41a~hの個数は、実施形態に応じて変化してよく、特に、織布3のために必要とされる種々異なる緯糸2a~hの本数に依存している。
【0042】
クランプ41a~hは、同一に構成されている。例示的に、クランプ41a~hの構造をクランプ41aによって説明する。クランプ41aは、基体44を含んでおり、この基体44は、クランプディスク40に固定されていて、この基体44内に、クランプ要素45が支承されている。クランプ要素45は、基体44内のブシュ内で並進可能に支承されているシャフトを有している。クランプ41aは、「常時閉」クランプとして構成されており、通常の状態では閉じられている。このためには、クランプエレメント45には、コイルばね48によって基体44に向かって予荷重が加えられる。コイルばね48の力を介して、クランプ41aのクランプ力が調節可能である。
【0043】
閉鎖位置から開放位置へクランプ41a~hをもたらすために、緯糸供給装置10は、クランプ要素45を操作するための2つのアクチュエータ49,49’を含んでいる。
図3に示された実施形態では、2つのアクチュエータ49,49’は、緯糸供給装置10に定置で配置されている。定置とは、本明細書では、アクチュエータ49,49’がクランプディスク40と一緒に回転しないことであると理解される。第1のアクチュエータ49は、差出し回転位置12に位置する有効なクランプ41が操作可能であるように配置されている。
図3では、クランプディスクが回転位置12bで示されている。このため、アクチュエータ49によりクランプ41bが操作され、閉鎖位置からコイルばね48のばね力に抗して開放位置にもたらされる。アクチュエータ49は、駆動装置を含んでいる。
図3に示した実施形態は、第2のアクチュエータ49’をさらに有している。第2のアクチュエータ49’は、有効なクランプ41が収容回転位置14において操作可能であるように、定置に配置されている。差出し回転位置12は、収容回転位置14に対して、有効な緯糸2の緯糸ラインもしくは結合点から離れて、緯糸挿入のラインの方向に回転させられている。図中、収容回転位置14に対する差出し回転位置12は、反時計回り方向に回転させられている。
【0044】
レピア50への有効な緯糸2の引渡し時と、緯糸挿入後の有効な緯糸2の収容時との互いに異なる回転位置により、織布3の右側、つまり緯糸供給装置10とは反対の側における糸突出部6もしくは屑長さが減じられる。
【0045】
図4に示した実施形態では、
図3に示した実施形態とは異なり、各クランプ41a~hに固有のアクチュエータ49a~hが対応配置されている。このためには、アクチュエータ49a~49hは、定置に配置されているのではなく、クランプディスク40に相対回動不能に結合されている、つまりクランプディスク40と一緒に回転するように結合されている。したがってアクチュエータ49a~hも、クランプ41a~hと同様にクランプディスク40と一緒に回転する。クランプ41a~hにそれぞれ1つのアクチュエータ49a~hを対応配置させることは、有効なクランプ41の開閉時のフレキシビリティを高め、結果として時間削減にもなり得る。
図4では、クランプ41bがアクチュエータ49bにより開放位置にもたらされていて、有効なクランプ41を成す。
図3に示した実施形態では、有効なクランプ41は、緯糸挿入のために2回開放させられる。一方では、クランプが、引渡しのために緯糸挿入前に、つまり特にレピア50が有効な緯糸2をクランプした場合に、アクチュエータ49により開放され、再び閉鎖される。他方では、有効なクランプ41が、新たに緯糸を収容するためにアクチュエータ49’により開放され、再び閉鎖される。これとは異なり、
図4に示した実施形態による有効なクランプ41は、緯糸挿入の前の引渡しと、緯糸挿入後の有効な緯糸2の収容と、の間で開かれたままであってよい。なぜならば、アクチュエータ49a~hがクランプ41a~hと一緒に回転するからである。さらに
図3に示した実施形態では、クランプ41a~hの操作は、離散的な2つの回転位置に限定されているのに対して、
図4に示した実施形態では、クランプ41a~hはあらゆる回転位置において操作可能である。したがって、例えばクランプディスク40の回転中にクランプ41a~hの操作も行うことができる。
【0046】
図5には、クランプディスク40およびクランプ41a~hを備えた、本発明に係る緯糸供給装置10の第2の実施例が示されている。クランプ41a~hは、
図4に示したクランプディスク40の実施形態と同様に、クランプディスク40に相対回動不能に取り付けられている。クランプ41a~hの構造および機能形式は、
図3に示した実施形態に実質的に相当する。
図3とは異なり、緯糸供給装置10は唯1つの定置のアクチュエータ49を有している。したがって差出し回転位置12は、収容回転位置14にも一致する。緯糸供給装置10は、付加的にクランプクリーナ47を有しており、このクランプクリーナ47により、有効なクランプ41のクランプ領域において、圧縮空気を用いて、留まっている残糸もしくは糸屑が吹き飛ばされ、これにより有効な緯糸2の確実なクランプが常に可能である。クランプクリーナ47は、例示的にクランプ部41bの領域においてブロー管の形態で示されている。クランプクリーナ47は、本実施形態では収容回転位置14の領域において定置に配置されており、この収容回転位置は、図示の実施形態では差出し回転位置12をも成す。
【0047】
さらに、
図5に示す実施形態では、糸戻し器15が図示されている。糸戻し器は、有効な緯糸2が、織布3内へ緯糸挿入後に有効なクランプ41、ここではクランプ41bのクランプ領域に確実にもたらされるように配置されている。糸戻し器15は、筬7と協働し、これにより、糸戻し器15と筬7とが、挿入された有効な緯糸を有効なクランプ41内に戻す。糸戻し器は、駆動装置16を有している。糸戻し器15および筬7の運動は、2つの運動矢印によって概略的に示唆されている。
【0048】
図6は、二重緯糸をねじれなしに導入する本発明に係る緯糸供給装置10の第3の実施形態を示している。カラー選択ディスク20は、8つの開いた穴21a~hを含んでいて、クランプディスク40は4つのクランプ41a~dを有している。各クランプ41a~dは、相対回動不能な、つまりクランプディスク40と一緒に回転するアクチュエータ49a~dにより操作可能である。隣り合う穴においてガイドされるそれぞれ2本の緯糸は、クランプ内に保持されている。したがって、穴21aからの緯糸21aと、穴21bからの緯糸2bと、がクランプ41a内に保持されている。したがって両緯糸2a,bは、クランプ41aから穴21a,bまで扇形に延びている。同じことは、緯糸2c,d、緯糸2e,fおよび緯糸2g,hにも当てはまり、これらの緯糸2c,2d、緯糸2e,fおよび緯糸2g,hは、それぞれ穴21c,d、穴21e,fおよび穴21g,h内にガイドされて、クランプ41b,41cおよび41d内で保持されている。差出しニードル30は、ダブルフォークを備えて形成されていて、2つの凹設部33を有している。両凹設部33は、隣り合う2本の有効な緯糸2が、差出しニードル30によって収容位置31において捕捉され、かつ引渡し位置32にもたらされ得るように、離間して配置されている。図示の図面では、緯糸2a,bは、引渡し位置13に位置する有効な緯糸2であり、差出しニードル30は引渡し位置32に位置している。レピア50は、有効な両緯糸2がレピアクランプ51内にクランプされ、ねじれなしに杼口4内に導入されるように構成されている。二重緯糸の挿入後に、有効な両緯糸2は、筬7(図示せず)によって再び有効なクランプ41内にもたらされ、かつこのクランプ41によってクランプされる。
【0049】
図7には、2つの部分ディスク20’,20’’を有するカラー選択ディスク20を備えた本発明に係る緯糸供給装置10の第4の実施形態が示されている。2つの部分ディスク20’,20’’を備えたこのような配置は、通常、ダブルディスクとも呼ばれる。緯糸供給装置10は、
図1に示した実施形態と同様に、8つのクランプ41a~hを備えたクランプディスク40を有しており、クランプディスク40内に、緯糸2a~hのうち1本の緯糸がそれぞれ保持されており、かつ緯糸供給装置10が、定置の2つのアクチュエータ49,49’を有している。
図1に示した実施形態とは異なり、カラー選択ディスク20は、2つの部分ディスク20’,20’’から成っており、これらの部分ディスク20’,20’’は、互いに独立して回転可能であり、それぞれ1つの固有の部分ディスク駆動装置23’,23’’を有している。両部分ディスク20’,20’’は、互いに平行に配置されていて、平行な旋回平面において1つの共通の回転軸線24を中心として旋回可能である。織布3の挿入側のための定義が左側、反対に位置する側のための定義が右側として考慮される場合、緯糸挿入は左側から右側に向かって行われる。緯糸挿入方向における第1の部分ディスク20’が、織布3の左側から離れており、後側の部分ディスクとも称される。第2の部分ディスク20’’は、緯糸挿入方向において織布3の左側に面しており、前側の部分ディスクと称される。第1の部分ディスク20’は、第2の部分ディスク20’’よりも大きな直径を有している。第1の部分ディスク20’の開いた8つの穴21’a~hは、部分円直径Dに配置されている。第2の部分ディスク20’’の開いた4つの穴21’’a~dは、部分円直径d上に配置されている。部分円直径Dは、部分円直径dよりも大きい。カラー選択ディスク20は、全部で12個の開いた穴を有しており、これらの穴のうち8個の穴のみがそれぞれ8本の緯糸2a~2hのうち1本の緯糸によって占められている。カラー選択ディスク20、つまりここでは部分ディスク20’,20’’に設けられた開いた穴の個数および占められる穴の個数も、概して実施形態および用途に応じて変化させることができる。
【0050】
第1の部分ディスク20’は、第2の部分ディスク20’’の開いた穴21’’a~d内に保持された緯糸のための貫通部26をさらに有している。貫通部26は、円弧形の溝として形成されていて、半径方向外側に向かって延びる出口を有しており、これによって、有効な緯糸2を、この緯糸2が開いた穴21’’a~dのうち1つの穴内に保持されている場合、差出しニードル30によりレピア50へと差し出すことができる。出口は、図示の実施例では、第1の部分ディスク20’において中心に、2つの開いた穴21’d,21’eの間に配置されている。スライドガイドディスク22は、第1の部分ディスク20’の緯糸のための円弧形のスライドガイド溝25の他に、第2の部分ディスク20’’の緯糸のための第2の円弧形のスライドガイド溝25’を有している。2つの部分ディスク20’,20’’を備えたカラー選択ディスク20の構成により、有効な緯糸2を選択するためにカラー選択ディスク20を回転させる必要がある最大の角度範囲が減じられるか、または同じ回転角度のままで、穴の個数が増大させられる。このことは特に、二重緯糸をねじれなしに導入する緯糸供給装置10においても有利であり得る。
【符号の説明】
【0051】
1 織機
2 有効な緯糸
2a~h 緯糸
3 織布
4 杼口
5 経糸
6 糸突出部
7 筬
10 緯糸供給装置
11 有効な緯糸の差出し位置
12 差出し回転位置
12a~h 回転位置
13 有効な緯糸の引渡し位置
14 収容回転位置
15 糸戻し器
16 糸戻し器の駆動装置
20 カラー選択ディスク
20’ 第1の部分ディスク
20’’ 第2の部分ディスク
21 有効な穴
21a~h 開いた穴
21’a~h 第1の部分ディスクの開いた穴
21’’a~d 第2の部分ディスクの開いた穴
22 スライドガイドディスクの形態のラッチ
23 第1のサーボモータ
23’ 第1の部分ディスク駆動装置
23’’ 第2の部分ディスク駆動装置
24 カラー選択ディスクの回転軸線
25,25’ スライドガイド溝
26 貫通部
30 差出しニードル
31 差出しニードルの収容位置
32 差出しニードルの引渡し位置
33 凹設部
34 第2のサーボモータ
40 クランプディスク
41 有効なクランプ
41a~h クランプ
42 クランプディスクの回転軸線
44 基体
45 クランプ要素
46 第3のサーボモータ
47 クランプクリーナ
48 コイルばね
49,49’ 定置のアクチュエータ
49a~h 相対回動不能なアクチュエータ
50 レピア
51 レピアクランプ
60 緯糸鋏